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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182180
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20221201BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221201BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01D53/047
B01J20/26 A
B01J20/34 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089577
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】上代 洋
(72)【発明者】
【氏名】川尻 喜章
(72)【発明者】
【氏名】矢嶌 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤木 淳平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 有矢
(72)【発明者】
【氏名】小島 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉本 冴生
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB11
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CG01
4D012CH03
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA22
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066GA14
(57)【要約】
【課題】ゲート型多孔性高分子錯体を用いるPSAシステムにおけるスリッピングオフ現象を軽減して、ガス回収率を向上させ、高効率、高純度のガスを得るガス分離方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ゲート型多孔性高分子錯体を含むガス吸着材を充填した吸着塔および複数種のガスを含む混合ガスを吸着塔に供給するガス供給手段を少なくとも含むガス分離装置を用いるガス分離方法において、複数種のガス中の吸着対象ガスの吸着開始ゲート圧に対する吸着塔の入口での吸着対象ガスの分圧との比が、1.3より大きく、400以下であることを特徴とするガス分離方法。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート型多孔性高分子錯体を含むガス吸着材を充填した吸着塔および複数種のガスを含む混合ガスを前記吸着塔に供給するガス供給手段を少なくとも含むガス分離装置を用いるガス分離方法において、
前記複数種のガス中の吸着対象ガスの吸着開始ゲート圧に対する前記吸着塔の入口での前記吸着対象ガスの分圧との比が、1.3より大きく、400以下であることを特徴とするガス分離方法。
【請求項2】
前記ゲート型多孔性高分子錯体の吸着完了ゲート圧と脱着完了ゲート圧の圧力差が、2kPa~8000kPaであることを特徴とする請求項1に記載のガス分離方法。
【請求項3】
前記ゲート型多孔性高分子錯体が、ELM類、カゴメ類、MIL類、CID類であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲート現象を示す多孔性高分子錯体(以下、単に「ゲート型多孔性高分子錯体」ともいう)を用いたガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素や窒素等の産業上、重要なガスを製造する方法として、固体吸着材を用いて、圧力スウィング吸着(PSA: Pressure Swing Adsorption)システムが広く普及している。これは、例えば、二種のガスの混合物からそれぞれのガスを分離する場合に、二種のガスに対する吸着力に差がある固体吸着材を吸着塔に充填し、混合ガスを導入すると一方のガスが選択的に吸着される。その結果、気相には、吸着されなかったガスが多く残るため、これを減圧して吸着されたガスを回収するという原理に基づいている。このためにはゼオライトや活性炭などの、いわゆる多孔体と呼ばれる固体吸着材が広く利用され、酸素生成PSA、窒素生成PSA他、広く普及している(特許文献1)。
【0003】
一般に、ゼオライトや活性炭などの既存の多孔体は、いわゆるIUPACの吸着等温線の6分類で分類可能である。すなわち、既存の多孔体は、圧力上昇に応じてガス吸着力が増加する特性を有しており、既存のPSAシステムは、このような特性に最適化されている。一方で、IUPACの6分類では分類できない、特殊な吸着等温線を示す材料が発表されている。これらは、金属イオン、配位子から形成される多孔性高分子錯体(PCP: Porous Coordination Polymer)の一種で、ゲート型多孔性高分子錯体、柔軟性多孔性高分子錯体などと呼ばれ、これらが示す特殊なガス吸着挙動はゲート現象、ゲート吸着と呼ばれている。
【0004】
ゲート現象とは、ゲート型多孔性高分子錯体を吸着材とした場合、主として、その構造が変化することで、ガスの吸着量が急激に変化する現象である。ガス圧が低圧の場合は、ゲート型多孔性高分子錯体はガスをほとんど吸着しないが、ガス圧が一定値(吸着開始ゲート圧と呼ばれる)に達すると、ゲート型多孔性高分子錯体の構造が変化(例えば、積層構造がずれる、層間が広がる等)して、ガス分子がその構造内に取り込まれる。このため、吸着開始ゲート圧を境にガス吸着量は急激に増加する。この現象は、吸着開始ゲート圧以下では、ゲート型多孔性高分子錯体とガス分子が別々に存在している方がエネルギー的に安定であるが、吸着開始ゲート圧以上では、ゲート型多孔性高分子錯体とガス分子が別々に存在しているよりも、ガス分子がゲート型多孔性高分子錯体の内部に取り込まれる方が、より安定な包摂体を形成し、エネルギー的に有利になるため為と考えられている。
【0005】
ガス放出では逆の現象が生じる。すなわち、ガス圧が一定の圧(脱着開始ゲート圧)以下に下がると、ゲート型多孔性高分子錯体に取り込まれていたガス分子が放出され、元のゲート型多孔性高分子錯体の構造に戻ろうとする為、ガスの放出が急激に生じる。すなわち、このようなゲート現象は、ゲート型多孔性高分子錯体構造の柔軟性に基づいており、この様な柔軟性を有していない既存の多孔体であるゼオライトや活性炭等では、ゲート現象は生じない。ゲート現象は、ゲート型多孔高性分子錯体特有の現象である。
【0006】
このゲート現象を、ガス分離に適用した場合、主として2つの大きなメリットがある。第1のメリットは、ガスの吸着、放出が急激に生じることによる、高効率のガス分離である。既存の多孔体は、ガス圧と吸着量が概ね比例する様な吸着等温線を示す。この様な吸着材に吸着されたガスを全量回収する為には、大きな圧力変動が必要となる。これに対し、ゲート現象を示すゲート型多孔性高分子錯体では、ゲート圧をまたいで圧力変動させることでガス回収ができるため、非常に小さな圧力変動で吸着されたガスを回収することができる(図1)。
吸着ガス回収の際の圧力変動は、使用する電力コストに直結している。すなわち、小さな圧力変動で吸着ガスを回収することができるゲート型多孔性高分子錯体は、低コストでガスを、分離することができる材料である。
【0007】
第2のメリットは、ガス分離効率の高さである。前述の通り、ゲート型多孔性高分子錯体のガス吸着は、従来のような、吸着材の細孔の中に吸着されるガス分子が取りこまれるという単純なメカニズムでは無く、ゲート型多孔性高分子錯体と吸着されるガス分子が、一定ガス圧(吸着開始ゲート圧)以上で、ゲート型多孔性高分子錯体と安定な包摂体を形成するというメカニズムに基づいている。既存の多孔体吸着材の場合、二種類のガスと異なる親和性を有していても、細孔が存在している以上、親和性の低いガスも細孔内に取りこまれる共吸着現象が生じやすい。これに対し、ゲート型多孔性高分子錯体は、共吸着現象によって、親和性が低いガス分子も一緒に取りこむと、包摂体の安定性が低下するため、親和性が高いガスを選択的に取りこみ、より安定な包摂体を形成しようとする特性を有している。このため、ゲート型多孔性高分子錯体は、ガス選択性が高く、これをPSAシステムに適用した場合、高回収率、高効率で高純度な分離ガスを製造することができる。
【0008】
しかし、実際にこのゲート型多孔性高分子錯体をPSAシステムに適用した場合、スリッピングオフ(slipping off)現象と呼ばれる問題が生じ、吸着対象ガスの回収率が低下することがある。スリッピングオフ現象とは、PSA装置にガスを圧入した際、吸着させたい成分がゲート型多孔性高分子錯体に吸着されずそのままPSA装置から流れ出てしまう現象を指す。これは、吸着対象ガスの分圧が低圧(吸着開始ゲート圧以下)の場合にそのガスをほとんど吸着しないというゲート型多孔性高分子錯体が有する特性に起因している。また、吸着対象ガスの分圧が吸着開始ゲート圧より高くても、吸着対象ガスの回収率が低い(約0.4)場合がある。これは、PSA装置のガス入口付近では、吸着対象ガスの分圧が高く(吸着開始ゲート圧以上)、ゲート吸着現象が生じるが、入口付近で吸着しきれなかった吸着対象ガスはガス出口に向かって流れる。この吸着しきれなかったガスは、入口付近で吸着されたガスの分だけ吸着対象ガスの分圧が低圧になり、吸着開始ゲート圧以下となるため、出口付近で吸着されることなくそのままPSA装置外へ流れ出る。このスリッピングオフ現象が生じると、結果として吸着されるべきガスが流出するため回収率が下がってしまう。
【0009】
このスリッピングオフ現象を解決するために、特許文献2では、吸着カラムを二つ直列に接続したPSAシステムを提案している。この二つのカラムのうち片方にはゲート型多孔性高分子錯体が、もう片方には既存の多孔体が充填されている。このシステムではゲート型多孔性高分子錯体が充填されたカラムからスリッピングオフ現象により流出した吸着されるべきガスを、既存の多孔体が充填されたカラムで吸着することによりガス流出を防いでいる。
【0010】
このシステムには次に示す問題がある。第1は設備コストの高さである。吸着カラムを二つ用意する必要があるため、一つのカラムで吸着を行う一般的なPSAシステムと比較して設備コストが大きくなることである。
【0011】
第2は設備耐用年数の低下問題である。二種の吸着材はそれぞれ耐用年数が異なるが、設備交換は耐用年数が低い方に合わせて行う必要があり、単一カラムで吸着を行うPSAシステムと比較して頻繁な交換が求められる。設備交換は生産システム全体を止めて行うことからコストが高く、頻繁な交換は生産性の低下に直結する。
【0012】
第3は、既存の多孔体に吸着されたガスを脱着するためのエネルギーの増加である。スリッピングオフ現象は吸着開始ゲート圧以下の低濃度のガスが流出する現象である。このため、これを捕捉する既存の多孔体は強い吸着力を有していなければならない。このように吸着力が強い吸着剤から吸着されたガスを脱着するのにはエネルギーを多く消費することになる。この結果としてゲート型多孔性高分子錯体を用いるPSAシステムの特徴である省エネルギー性が損なわれる可能性がある。
このため、ゲート型多孔性高分子錯体を利用したPSAシステムは未だ実用化されておらず、本課題も解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-061244号公報
【特許文献2】特開2020-018995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ゲート型多孔性高分子錯体を用いるPSAシステムにおけるスリッピングオフ現象を軽減して、ガス回収率を向上させ、高効率、高純度のガスを得るガス分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、ゲート型多孔性高分子錯体を用いるPSAシステムにおいて、以下に示す三点の手法によりスリッピングオフ現象を軽減し、ガス回収率を向上させることを検討した。
【0016】
第1の手法は、PSAシステムの吸着カラムのガス出口から流出するガスを回収し、これを入口側に戻して再度加圧を行い吸着させてガス回収率を高める手法である。
【0017】
この手法によるガス分離装置は、図4に示すような出口ガスの再利用システムを有する。これは吸着カラムから排出される出口ガスをタンクに貯留し、それをコンプレッサーにより再度加圧して吸着カラム入口へフィードバックを行うことで吸着対象ガスを再吸着させる。これにより吸着カラム出口からの吸着対象ガスガス流出を防ぎ、吸着対象ガスの回収率を向上させることが可能となる。
【0018】
ガス分離装置は図5に示す手順(1)~(4)の繰り返しにより運用される。なお点線は吸着カラム内における吸着対象成分のガス分圧の大きさを示す。まず手順(1)では、前サイクルの手順(3)でタンク内に貯蔵した低濃度ガスをコンプレッサーにより吸着カラムへ圧入する。この際、カラム内の一部(入口付近)でガス吸着が起きる。なお1サイクル目では手順(1)を行わない。次に手順(2)で原料ガスをカラムに圧入する。この際、出口からスリッピングオフによるガスの漏出が始まる頃に手順(3)に切り替える。手順(3)ではこの漏出ガスをタンクに貯蔵する。タンク内には手順(1)で使用する低濃度ガスが補給される。タンク内のガス吸着量が飽和に達する頃に手順(4)に移行する。ここではまず大気圧までカラムを減圧し、その後真空ポンプを用いてカラム内のガス圧がゲート圧以下になるまで減圧しガスの脱着を行う。ガスの脱着が完了し次第、手順(1)に戻る。
これは流出ガスを循環させる手法であるが、循環させることによりシステム全体が複雑になる。
【0019】
第2の手法は、PSAシステムを、ゲート型多孔性高分子錯体を含む第1、第2の2つの吸着カラムから構成し、第1吸着カラムを常温または加熱し、第2吸着カラムを冷却することで、ゲート圧を適切に制御する手法である。これは、第2カラムのゲート材を冷却することにより吸着性を高めて、流出ガス量を低減しようとするものである。
【0020】
この手法によるガス分離装置は、加熱・冷却によりスリッピングオフ現象を軽減するシステムを有する。図6に示す装置は常温の吸着カラムAと低温高圧の吸着カラムBを接続した装置である。点線はカラム内の吸着対象ガスの分圧の大きさを示し、カラムAおよびBにおけるゲート圧をそれぞれ[Pgate,A]、[Pgate,B]とする。このとき、ゲート型多孔性高分子錯体のゲート圧は、低温で低下するため[Pgate,A]>[Pgate,B]となる。カラム内の吸着開始ゲート圧以上のガスは吸着されるため、カラムAから漏出するゲート圧[Pgate,A]より低い分圧の吸着対象ガスを、カラムBでは吸着対象ガスの分圧が[Pgate,B]になるまで吸着することができる。このため、カラムA一本のみでPSAを行うよりも、スリッピングオフするガス量を低減することができる。
【0021】
またこの手法は圧力制御によってスリッピングオフ現象による流出ガスを軽減するシステムを有する。図6においては、カラムA、B間にコンプレッサーを設置し、カラムA出口のガスを再加圧してカラムBに流入させる操作を行うことで更にスリッピングオフするガス量を低減することが可能となる。
【0022】
この手法は、前述の特許文献2の説明でも述べたように、吸着カラムを2つ用意し、これらに寿命が異なる吸着材を充填することは、設備コストが上昇すること、材の寿命が異なることに由来して設備全体の耐用年数の低下が生じる。
【0023】
第3の手法は、PSAシステムのカラムの入口において、吸着対象ガスの分圧を吸着開始ゲート圧以上に高めることで、流入させるガスの全体量に対して流出するガス量を低下させる手法である。この手法を用いると、予想外にガスの回収率が上昇した。
【0024】
本発明は、以下のとおりである。
(1)ゲート型多孔性高分子錯体を含むガス吸着材を充填した吸着塔および複数種のガスを含む混合ガスを前記吸着塔に供給するガス供給手段を少なくとも含むガス分離装置を用いるガス分離方法において、
前記複数種のガス中の吸着対象ガスの吸着開始ゲート圧に対する前記吸着塔の入口での前記吸着対象ガスの分圧との比が、1.3より大きく、400以下であることを特徴とするガス分離方法。
(2)前記ゲート型多孔性高分子錯体の吸着完了ゲート圧と脱着完了ゲート圧の圧力差が、2kPa~8000kPaであることを特徴とする前記(1)に記載のガス分離方法。
(3)前記ゲート型多孔性高分子錯体が、ELM類、カゴメ類、MIL類、CID類であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のガス分離方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス分離方法は、ゲート型多孔性高分子錯体を用いたPSAシステムが従来抱えているスリッピングオフ現象による吸着対象ガスの回収率低下の問題を解決し、吸着対象ガスの高効率・高純度・高回収率を実現する。本発明に係るガス分離装置としては、圧力スイング吸着方式(PSA方式)のガス分離装置が挙げられる。具体的な方式としては真空スウィング吸着(VSA:Vacuum Swing Adsorption)または圧力スウィング吸着(PSA)いずれも好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】既存の固体吸着材と、ゲート型多孔性高分子錯体から成る吸着材の、ガス圧力とガス吸着量との関係を示すグラフ。
図2】本発明に用いるゲート型多孔性高分子錯体から成る吸着材の各ゲート圧力を表した図。
図3】ELM-11を例にして、ゲート係数を説明する図。
図4】出口ガスの再利用によるスリッピングオフ軽減システムの図。
図5図4に示すシステムの運用方法
図6】加熱・冷却によるスリッピングオフ軽減システムの図。
図7】本発明のガス分離方法をシミュレーションしたプロセスの操作の概念図。
図8】実施例で用いたELM-11の吸着等温式。シミュレーションで用いたELM-11の吸脱着等温モデル(1)。
図9】シミュレーションで用いたELM-11の吸脱着等温モデル(2)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るゲート型多孔性高分子錯体は、ゲート型の等温線を示す材料である。ゲート型等温線とは、主として多孔性高分子錯体の構造変化により、図2に示すような変曲点を示す吸着等温線および脱着等温線を意味する。ゲート型多孔性高分子錯体の等温線は、図2に示すように、吸着開始ゲート圧力、吸着完了ゲート圧力、ゲート吸着量、脱着開始ゲート圧力、脱着完了ゲート圧力、ゲート脱着量で定義される。
【0028】
吸着開始ゲート圧力とは、吸着工程において、吸着初期の吸着量-圧力の比例関係が急激に大きくなる(ガスの圧力増分に対し、吸着量増分が急に大きくなる)圧力である。吸着完了ゲート圧力とは、吸着工程において吸着開始ゲート圧力以降の吸着量-圧力の比例関係が急激に小さくなる(ガスの圧力増分に対し、脱着量増分が急に小さくなる)圧力である。ゲート吸着量とは、吸着開始ゲート圧から、吸着完了ゲート圧力の間の吸着量である。また、脱着開始ゲート圧力とは、脱着工程に於いて脱着初期の吸着量-圧力の比例関係が急激に大きくなる(ガスの圧力増分に対し、脱着量増分が急に大きくなる)圧力である。脱着完了ゲート圧力とは、脱着工程に於いて脱着開始ゲート圧力以降の吸着量-圧力の比例関係が急激に小さくなる(ガスの圧力増分に対し、脱着量増分が急に小さくなる)圧力であるである。ゲート脱着量とは、脱着開始ゲート圧力以降、脱着完了ゲート圧力までの脱着量である。吸着開始ゲート圧力、脱着開始ゲート圧力とも、吸着材料と吸着対象ガスとの親和性で変化する、すなわち、親和性が高ければ小さく、低ければ大きくなる。また温度が低ければ親和性が高まるのでゲート圧は低くなる。よって、吸着材料、ガス種、温度により変動するため一義的に圧力を決めることはできない。
【0029】
また、ゲート型多孔性高分子錯体の吸着特性および脱着特性は、以下の2式で定義することができる。
【0030】
式1:吸着ゲート係数=(吸着完了ゲート圧での吸着量-吸着開始ゲート圧での吸着量)/(吸着完了ゲート圧-吸着開始ゲート圧)
式2:脱着ゲート係数=(脱着開始ゲート圧での吸着量-脱着完了ゲート圧での吸着量)/(脱着開始ゲート圧-脱着完了ゲート圧)
注)吸着量は測定ガスの測定温度における吸着量で単位はm(STP)L/gである。
注)圧力はkPaである。
【0031】
ゲート型多孔性高分子錯体として、現在知られているものは、ELM(Elastic Layer-structured metal organic frameworks)類、カゴメ類、MIL類、CID類、その他がある。これらのゲート型多孔性高分子錯体の文献は以下の通りである。ELMは、上代らの、Int. J. Mol. Sci. 2010, 11,3803の文献に示されている。カゴメ類は、佐藤らの、SCIENCE(2014)343、167、及びZaworotkoらの、Chem. Commun., 2004, 2534の文献に示されている。MIL類は、Fereyら、Chem. Soc. Rev., 2009, 38, 1380の文献に示されている。CID類は、Inubushiら、Chem. Commun., 2010, 46, 9229、及びNakagawaら、Chem. Commun., 2010, 46, 4258の文献に示されている。その他の例は、Kitauraら、Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 428の文献に示されている。これらの中でもELM類、カゴメ類、MIL類、CID類が、ゲート現象が明確であり、本発明の効果が高い点で好ましい。
【0032】
ELM-11を例にして、ゲート係数を、図3を用いて説明する。ELM-11の273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線は図3に示す通りである。x軸が、圧力(kPa)であり、y軸が、吸着量(mL(STP)/g)である。この場合、各等温線は、以下の点を通ることから、それらの等温線は下記の式で近似できる。
【0033】
吸着ゲート前吸着等温線:
代表的な通過点1:x=5.23,y=0.188;通過点2:x=27.4,y=0.665であり、近似式y=0.022x+0.0753である。
吸着ゲート後吸着等温線:
代表的な通過点1:x=34.2,y=23.3;通過点2:x=35.2,y=50.7であり、近似式y=27.4x-913である。
【0034】
上記連立方程式を解いて、x(「吸着開始ゲート圧」)=33.4kPa(ゲート前吸着量は1.1mL(STP)/g)である。
同様に等温線から算出された「吸着完了ゲート圧」は、36.0kPaであり、その時点での吸着量は74.4mLである。
上記から吸着ゲート係数=(77.4-1.1)/(36.0-33.4)=29.3と算出される。
同様に脱着開始ゲート圧=28.41kPa(吸着量は75.2mL(STP)/g)である。また、脱着完了ゲート圧=26.20kPa(吸着量は2.71mL(STP)/g)である。
上記から脱着ゲート係数=(75.2-2.71)/(28.41-26.20)=32.8と算出される。
【0035】
本発明のガス分離方法に用いることができるゲート型多孔性高分子錯体は、吸着ゲート係数が0.7~75で、脱着ゲート係数が0.4~80であることが好ましい。
吸着ゲート係数が0.7未満である場合は、圧力変動に対する吸着量の変動量が小さすぎ、一般的な吸着材との明確な差が得られず、ゲート型挙動とは言いがたい。また吸着ゲート係数75を超える場合は、圧力変動に対する吸着量の変動量が急峻過ぎ、急激な吸着熱の発生や、急激な特定ガスの吸着による混合ガスの濃度比の急激な変化があり、ガス分離材料としては実用的に使いづらい(制御しづらい)。脱着ゲート係数が0.4未満である場合は、圧力変動に対する吸着量の変動量が小さすぎ、一般的な吸着材との明確な差が得られず、ゲート型挙動とは言いがたい。また脱着ゲート係数が80を超える場合は、圧力変動に対する脱着量の変動量が急峻過ぎ、急激な脱着熱による温度低下や、急激な特定ガスの放出による混合ガスの濃度比の急激な変化があり、ガス分離材料としては実用的に使いづらい(制御しづらい)。
【0036】
本発明のガス分離方法に用いることができるゲート型多孔性高分子錯体では、吸着完了ゲート圧と脱着完了ゲート圧の圧力差が、2kPa~8000kPaであることが好ましい。吸着完了ゲート圧と脱着完了ゲート圧の圧力差が2kPa未満である場合は、吸着圧力と脱着圧力が近接しすぎており、PSA装置で制御仕切れない。一方、8000kPaを超える場合は、吸着圧力と脱着圧力が離れすぎており、このような材料から吸着されたガスを回収するためには非常に大きな圧力変動を行う必要があり、このための電力コストおよび操作時間が大きく、ゲート現象をガス分離に使うメリットが無い。
本発明のガス分離方法に用いることができる特に好ましいゲート型多孔性高分子錯体はELM類、カゴメ類、MIL類、CID類を挙げることができる。
【0037】
これら種々のゲート型多孔性高分子錯体は固有の吸着開始ゲート圧を有し、さらにその吸着開始ゲート圧は温度により変動し得る。ただしスリッピングオフの現象は、吸着塔内で吸着対象ガス分圧が吸着開始ゲート圧以下に低下する現象であることから、これを防止するためには、吸着対象ガスの分圧を、吸着開始ゲート圧よりも一定以上高く設定することでスリッピングオフ現象は軽減が可能である。すなわち、前記の吸着開始ゲート圧が異なる各材料に対しても、吸着開始ゲート圧に対する前記吸着塔の入口での前記吸着対象ガスの分圧との比が、1.3より大きく、400以下であれば、吸着対象ガスに対して優れた回収率を実現することが可能である。
【0038】
本発明に係るゲート型多孔性高分子錯体を充填して成る装置は、様々なガスの分離に適用することができる。ガス種としては、例えば、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アルカン類、アルケン類、アルキン類等が挙げられる。本発明のゲート型多孔性高分子錯体を充填して成る装置をガス分離に適用した場合は、ゲート現象を利用して容易かつ高回収率、高効率で高純度のガスを分離することができる。
【0039】
本発明に係るゲート型多孔性高分子錯体を充填して成るガス分離装置における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特に特別の装置を用いなくてもよく、ガス分離装置に用いられているものを用いることができる。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明のガス高分子金属錯体を用いている限りにおいて、本発明の技術的範囲に包含されるものである。
【0040】
本発明に係るゲート型多孔性高分子錯体を充填してなるガス分離装置を用いるガス分離方法は、複数種のガス中の吸着対象ガスの吸着開始ゲート圧に対する吸着塔の入口での吸着対象ガスの分圧との比が、1.3より大きく、400以下となる分離方法である。吸着開始ゲート圧に対する入口での吸着対象ガスの分圧比が1.3を下回る場合、ゲート吸着現象が生じても、吸着塔内でのスリッピングオフ現象のために、ガス分離を行うことができない。一方、400を超える場合は混合ガスを非常に高圧にする必要があり、電力コストおよび設備コストが大きくなってしまう。
本発明のガス分離方法において、吸着対象ガスの吸着開始ゲート圧に対する吸着塔の入口での吸着対象ガスの分圧との比を、1.3より大きくするための具体的な手段は、吸着塔内のガス圧コントロールに用いられる通常の手段を用いることができる。
【実施例0041】
吸着開始ゲート圧に対する吸着ガス分圧の比と、ガス回収率の変化を、下記の表1に示す。これは二酸化炭素20%、窒素80%の混合気体を温度25℃で供給する、ELM-11を用いるPSAシステムをシミュレートした結果である。ただし、吸着等温モデルに関してはHeftiらが提案したモデル(Faraday Discuss(2016), pp.153~179、 Adsorption 20, 359-371 (2014))を、動的モデルに関してはKoらが用いたモデル(Ind. Eng. Chem. Res. 2005, 44, 21, 8084-8094)を用いた。
【0042】
二酸化炭素と、それ以外のガスの混合ガスの場合、二酸化炭素以外のガスが酸素、アルゴン、ヘリウム、水素、メタンの1種あるいはそれ以上であっても、ELM-11はこれらのガスを吸着しないことは多くの文献により報じられている。よって、これらのガスと二酸化炭素のガスの分離を考える場合も、二酸化炭素と窒素の混合ガスの分離と同様の結果が得られる。
【0043】
吸着開始ゲート圧に対する吸着CO2分圧の比は、表1の例A~例Gにおいて、それぞれ4.87、2.43、1.22、5.73、1.72、4.65、1.55であり、それに対する回収率は、それぞれ、0.863、0.710、0.337、0.890、0.574、0.853、0.498である。この結果より吸着開始ゲート圧に対する吸着ガス分圧の比が大きければ回収率が高まることが確認できる。例Cは、回収率が0.4を下回っているので、比較例とした。
【0044】
【表1】
【0045】
(注)
回収率:投入CO2量に対する回収CO2量の割合であり、以下の式で表される:
【化1】
なお、u[m/s]は、入口における流速、Piは入口における成分iの分圧[Pa]、
Rは、気体定数[J/(kg・K)]、Tは、入口における温度[K]、feed stepは原料ガスをカラムに入れる過程、exhaust stepはCO2をカラムから抜き出す過程を示す。
純度:回収したCO2ガスの純度であり、以下の式で表される:
【化2】
BSF:単位量あたりの吸着材が処理可能なCO2量の逆数を示した指標であり、以下の式で表される:
【化3】
ただし、mPCPは吸着材使用量[kg]、tcycleはPSAの1サイクルあたりの時間[day]を示す。
Power Consumption:単位量あたりのCO2を回収するために使用するエネルギー量であり、以下の式で表される:
【化4】
なお、Pinはカラム入口での全圧[Pa]、Patmは大気圧[Pa]、γは比熱比[-]、Rbedはカラム半径[m]を示す。
【0046】
二酸化炭素40%、窒素60%の混合気体を温度25℃で供給するPSAシステムをシミュレートした結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表1から分かるように、例A(発明例)では、入口吸着CO2分圧を2.0[105Pa](入口吸着CO2分圧/吸着開始ゲート圧=4.87)の条件で、回収ガスの純度の顕著な低下はないままに、例C(比較例)よりも、回収率を2.56倍に向上させられることがわかった。また、BSF(一定のCO2回収量を得るために必要な材料の量)も80%近く低下させることができた。すなわち、多量のガスが回収可能となり、分離効率が大幅に向上する効果が確認できた。このことは、スリッピングオフが軽減されていることを示している。
【0049】
ガスの分離、特にCO2分離は数百万トン/年規模での実施が想定される場合も多い。すなわち、分離コストは高額となり、装置は大型で敷地面積も大きくなる。例えばアミン液を利用する化学吸収法の分離コストは5000円/トン-CO2とも言われるが、100万トンの分離のコストは50億円にもなる。このためCO2分離で分離効率が向上すれば、大幅なコスト削減が見込まれ、また装置が小型化すれば大幅な敷地面積削減が見込まれる。本技術は上記表1の様に回収率やBSFを劇的に改善し、コスト削減や敷地面積削減に寄与する技術と言える。
【0050】
表1に示すシミュレーション結果は、以下のようにして計算した。
例A(発明例)入口吸着CO 2 分圧4.00[10 5 Pa]
本例ではラボスケールの単カラム装置を用いたプロセスを想定する。カラム長は1m、カラム管半径は1.1cmとする。またペレット粒径は3mmで、空隙率34.8%となるよう充填されるものとする。ペレットはELM-11をセルロースに担持させたものであり、その重量比は3:1で、ELM-11の重量は0.293Kgとする。なお管外の気温は298.15Kとする。
【0051】
プロセスの操作手順を図7に示す。まず(a)加圧過程ではカラム出口が封鎖され、入口から排ガスを圧入する。入口圧力は0.25[105Pa]から40秒間をかけて徐々に加圧され20[105Pa]に至る。流入するガスの温度は298.15Kであり、モル分率はCO2が20%、N2が80%とする。この過程は40秒間継続される。次に(b)吸着過程ではカラム出口を開放し、入口からはガスの圧入を続ける。ガス温度およびモル分率は(a)と同様であり、ガス流速は秒速0.302mとする。この過程は84.4秒間継続される。(c)減圧過程ではカラム出口を閉鎖し、入口から減圧およびCO2ガスの回収を行う。入口の圧力は120秒間かけて徐々に0.25[105Pa]まで減圧される。この過程は120秒間継続される。(d)脱着過程では0.25[105Pa]の減圧状態を維持し、入口からCO2ガスの回収を行う。この過程は250秒間継続される。上記の(a)~(d)の操作を10サイクル分繰り返したものをシミュレーション結果とする。
【0052】
例B(発明例)入口吸着CO 2 分圧2.00[10 5 Pa]
本例では例Aと同じプロセスに対し以下2点の操作条件を変更したものである。1点目は加圧・吸着過程におけるCO2分圧であり、4.00[105Pa]から2.00[105Pa]へ置き換えた。2点目は吸着過程にかける時間であり、84.4秒から169秒に置き換えた。
【0053】
例C(比較例)入口吸着CO 2 分圧1.00[10 5 Pa]
本例は例Bと同様に、例Aと同じプロセスに対し操作条件を変更したものである。加圧・吸着過程における入口吸着CO2分圧を4.00[105Pa]から1.00[105Pa]へ置き換えた。
【0054】
D~Mの例では、例A、B,Cと同様に、入口吸着CO2分圧、原料ガスの温度変えてシミュレートを行った。
例に用いたパラメータをまとめたものを表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
上記のシミュレーションにおける吸着等温モデルに関してはJossらが提案したモデル(Energy Procedia(2017), 114, 2271-2278)を用いた。本手法について以下に示す。ELM-11のCO2吸着は、フレームワーク周りへの吸着とフレームワーク内への吸着の二つから成る。ここで、これらの吸着挙動を表現する以下二つの仮想的な吸着等温式があることを想定する。具体的には圧力に依らず全てのゲートが閉じた状態の吸着等温式をnL、圧力に依らず全てのゲートが開いた状態における吸着等温式をnUとする。ここでELM-11がゲート吸着を行う際、開ゲートの数がCO2分圧に依存して大きくなると仮定すると、実際の吸脱着等温式はnUとnLの間に存在するはずである。この仮定の下、ELM-11の吸脱着等温式は式1で表される(図8)。なおwjは0~1の値をとる重みであり、全体のゲート数に対して開いたゲートの割合を示す。
【0057】
【数1】
【0058】
ここで、jは吸脱着のいずれの過程であるかを示す。nUとnLは式2および式3に示すラングミュア式で表される。
【0059】
【数2】
【0060】
【数3】
【0061】
また、重み関数wjは式4で表される。
【0062】
【数4】
式4中のXjとPstep,jはそれぞれ式5、式6で表される。
【0063】
【数5】
【数6】
ここで、Pstep,jは吸着・脱着におけるゲート圧を示し、Xjは重み関数wjが立ち上がる際の圧力幅を決めるパラメータである。
【0064】
また、ヒステリシス現象により吸脱着等温線が圧力操作条件によって変化する際のモデリングは以下の論文を参考にして行った(Hefti et al. Adsorption 20.2-3 (2014): 359-371)。本モデルでは図9に示すように、操作切り替え時の吸着量のnswitch飽和吸着量nsatに対する比率で、式1に示す等温式を縮小したものを切り替え後の等温式とする。具体的には脱着から吸着へ切り替わる場合の吸着量をnads→des、吸着から脱着へ切り替わる場合の吸着量をndes→adsと定義すると、これらはそれぞれ式7、式8で表わされる。
【0065】
【数7】
【0066】
【数8】
【0067】
シミュレーションに用いた動的モデルに関しては、ゼオライト13Xを用いたCO2回収プロセスに対しKoらが用いたモデル(Ind. Eng. Chem. Res. 2005, 44, 21, 8084-8094)を使用した。ただし、吸脱着の方向および速度を決定する線形駆動力モデルにおける駆動力q*を本案では式9で表す。
【0068】
【数9】
【0069】
式9中のmodeはバイナリ変数であり、加圧・吸着過程では1になり減圧・脱着過程では0となる。これは式10で表される。
【0070】
【数10】
【0071】
また、上記のシミュレーションを実施する上で用いた過程を以下に示す。
1. ガスは理想気体である。
2. 管径方向への温度や圧力、濃度変化は考慮しない。
3. 吸着速度は線形駆動力(LDF)モデルで求められる。
4. 吸着材の密度等の物理的性質は温度により変化しない。
5. 圧力損失はエルガンの式に準じる。
6. 流速変化は全物質収支式により求められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9