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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182218
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱調理用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20221201BHJP
   B65D 51/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D51/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089669
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】599031249
【氏名又は名称】ダイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】真柴 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐夏
【テーマコード(参考)】
3E013
3E084
【Fターム(参考)】
3E013BA07
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF08
3E013BF22
3E013BF33
3E013BG15
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084GA08
3E084KA02
(57)【要約】
【課題】電子レンジによって加熱調理される容器の蓋体において、形成する蒸気放出部の形成面積を小さくすると共に、比較的低い容器内圧でも作動可能で、大気圧下では確実に閉状態を維持可能とするようにする。
【解決手段】蓋体は、2つ以上の線状スリットが1つの環形状を構成するように形成された蒸気放出部を有し、前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向両端部は隣り合う線状スリットの延在方向端部と所定距離を隔てて対向している。前記線状スリットの対向している部分の各々の長さは、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの10%以上50%以下であるのが好ましい。また、対向する前記線状スリット間の各々の距離は、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの25%以下であるのが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジによって加熱調理される容器の蓋体であって、
2つ以上の線状スリットが1つの環形状を構成するように形成された蒸気放出部を有し、
前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向両端部は隣り合う線状スリットの延在方向端部と所定距離を隔てて対向していることを特徴とする電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項2】
前記線状スリットの対向している部分の各々の長さが、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの10%以上50%以下である請求項1記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項3】
対向する前記線状スリット間の各々の距離が、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの25%以下である請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項4】
前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向一方端部は、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状内方に位置し、延在方向他方端部は、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状外方に位置する請求項1~3のいずれかに記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項5】
前記蒸気放出部は、3つ以上の前記線状スリットが1つの環形状を構成するように形成されている請求項4記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項6】
前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向両端部はいずれも、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状内方又は環形状外方に位置する請求項1~3のいずれかに記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項7】
前記蒸気放出部は、6つ以上の前記線状スリットが1つの環形状を構成するように形成されている請求項6記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項8】
1つの線状スリットの長さが5mm以上40mm以下である請求項1~7のいずれかに記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項9】
前記2つ以上の線状スリットが構成する前記環形状が四角形状または円形状である請求項1~8のいずれかに記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項10】
前記2つ以上の線状スリットが同一の形状で直線の途中部が折り曲げられた形状である請求項9記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【請求項11】
前記2つ以上の線状スリットが同一の円弧形状である請求項9記載の電子レンジ加熱調理用容器の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レンジ加熱調理用容器の蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパーなどではプラスチック製の容器に食品を収容した各種弁当や調理済み食品が数多く販売されている。ここで使用される容器は、食品等を収容可能な上面開口の容器本体と、この容器本体の上面開口に着脱自在に取り付けられた蓋体とから構成され、容器本体内に食品が収容された後、容器本体の開口に蓋体が取り付けられ、容器本体と蓋体とがフィルム包装材で固定される。そして、容器本体と蓋体とがフィルム包装材で固定されたままで電子レンジで加熱される。
【0003】
このような用途に用いられる電子レンジ加熱調理用の容器では、容器本体内に収容した食品の液汁等が外部に漏れないように密閉性を確保する必要がある。また、電子レンジで加熱した際に発生する蒸気で容器本体及び蓋体が過度に膨張したり破裂しないように、発生した蒸気を容器から外に放出させる必要もある。そこで蓋体に弁や孔部から構成される蒸気放出部を設けて、発生した蒸気を容器から外に放出している。
【0004】
一方で、弁や孔部から構成される蒸気放出部を蓋体に設けた場合には、弁や孔部から埃や虫、異物等が容器内に侵入することを防止する必要がある。
【0005】
そこで本出願人は、蓋体の天板部に容器本体側に窪んだ凹部を設け、凹部の底面に複数本の切込みを設けて、切込みと切込みとの間の橋状部が容器内部の圧力によって上方に持ち上げられ、これにより形成された隙間から容器内部の蒸気が外部に放出される蓋体を提案した(特許文献1)。
【0006】
また特許文献2にも、蓋体の天面部に下側へ湾曲した底面を有する凹部が下側に向けて凹設され、凹部の底面に上側へ突出して高く形成された高台部が形成され、高台部には、直線状のスリットが間隔をあけて複数形成され、隣り合うスリット間であって且つスリットの両端部付近に変形抑制リブが形成された蓋体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-81612号公報
【特許文献2】特開2019-167158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、蓋体の意匠性の向上等の観点から、蓋体に形成される蒸気放出部の面積はできるだけ小さくすることが求められている。また、蓋体の蒸気放出部は比較的低い容器内圧でも作動する一方、非加熱状態(大気圧下)では完全に閉状態となっていることも求められている。
【0009】
本発明はこのような要望に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子レンジによって加熱調理される容器の蓋体において、蓋体に形成される蒸気放出部が形成面積が小さく、比較的低い容器内圧でも作動可能で、大気圧下では確実に閉状態を維持可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明の一実施形態に係る電子レンジ加熱調理用容器の蓋体(以下、単に「蓋体」と記すことがある。)は、電子レンジによって加熱調理される容器の蓋体であって、2つ以上の線状スリットが1つの環形状を構成するように形成された蒸気放出部を有し、前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向両端部は隣り合う線状スリットの延在方向端部と所定距離を隔てて対向していることを特徴とする。
【0011】
前記構成の蓋体において、前記線状スリットの対向している部分の各々の長さが、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの10%以上50%以下であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成の蓋体において、対向する前記線状スリット間の各々の距離が、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さの25%以下であるのが好ましい。
【0013】
また前記構成の蓋体において、前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向一方端部が、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状内方に位置し、延在方向他方端部が、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状外方に位置するようにしてもよい。ここで、前記蒸気放出部は、3つ以上の前記線状スリットが1つの環形状を構成するように形成されているのが好ましい。
【0014】
また前記構成の蓋体において、前記2つ以上の線状スリットの各々の延在方向両端部がいずれも、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状内方又は環形状外方に位置するようにしてもよい。ここで、前記蒸気放出部は、6つ以上の前記線状スリットが1つの環形状を構成するように形成されているのが好ましい。
【0015】
また前記構成の蓋体において、1つの線状スリットの長さが5mm以上40mm以下であるのが好ましい。
【0016】
また前記構成の蓋体において、前記2つ以上の線状スリットが構成する前記環形状が四角形状または円形状であるのが好ましい。
【0017】
また前記構成の蓋体において、前記2つ以上の線状スリットが同一の形状で、直線の途中部が折り曲げられた形状であるのが好ましい。
【0018】
また前記構成の蓋体において、前記2つ以上の線状スリットが同一の円弧形状であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る蓋体では、従来よりも蒸気放出部の形成面積当たりの蒸気放出量が多いので、蒸気放出部の形成面積を従来よりも小さくできる。また蒸気排出部は容器内圧が比較的小さい段階でも作動可能である。そしてまた蒸気排出部は非加熱状態(大気圧下)では確実に閉状態を保持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電子レンジ加熱調理用容器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す蒸気放出部4aの拡大平面図である。
図3】蒸気放出部4aから蒸気が噴き出した状態を示す斜視図である。
図4】蒸気放出部の他の形態を示す拡大平面図である。
図5】蒸気放出部から蒸気が噴き出した状態を示す斜視図である。
図6】蒸気放出部の他の形態を示す拡大平面図である。
図7】蒸気放出部から蒸気が噴き出した状態を示す斜視図である。
図8】蒸気放出部の他の形態を示す拡大平面図である。
図9】蒸気放出部から蒸気が噴き出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る蓋体について図に基づいてさらに説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書におけるX方向、Y方向、上下方向はこれらの図に示すX方向、Y方向、上下方向をそれぞれ意味するものとする。
【0022】
(第1実施形態)
図1に、電子レンジ加熱調理用容器Vの一例を示す。この図に示す電子レンジ加熱調理用容器Vは、上面開口の逆円錐台形状を有する容器本体1と、容器本体1の上面開口を封鎖する蓋体2とを備える。容器本体1は、円板形状の底壁11と、底壁11の周縁から半径方向外方に向かって上方に傾斜する周壁12とを有する。そして容器本体1の周壁12の上部には、蓋体2を取り外し可能に装着するための第1係合部13が設けられている。底壁11、周壁12及び第1係合部13は、例えば発泡性を有する耐熱性樹脂を金型で熱成形することによって一体に成形されている。
【0023】
一方、蓋体2は、円形状の天壁21と、天壁21の周縁から半径方向外方に向かって下方に傾斜する外周壁22と、外周壁22の下周端から半径方向外方に略水平に延出するフランジ部23と、フランジ部23の外周部に形成された、容器本体の第1係合部13に気密に係合する第2係合部24とを備える。天壁21の平面視における略中央部には、四角形状の凹部25が形成されている。そして、凹部25の底面25aの略中央部には、屈曲した4つの線状スリットが四角環状に配置された蒸気放出部4aが設けられている。天壁21、外周壁22、フランジ部23、第2係合部24、凹部25は、容器本体1と同様に、例えば耐熱性の樹脂を金型で熱成形することによって一体に成形されている。
【0024】
蓋体2の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂が使用できる。また、これらの樹脂に発泡剤を加えたもの、あるいは前記樹脂を延伸させたものも使用できる。容器内が外から内容物の状態を視認可能とする観点からは透明性を有するものが好ましい。
【0025】
容器本体1には、電子レンジで加熱調理されることでそのまま食べることができる麺類、ご飯、食材などが内容物として収容された後、蓋体2によって容器本体1の上面開口が気密に封鎖され、さらに必要により容器Vの外周が樹脂フィルムなどで包装される。
【0026】
図2に蓋体2の凹部25の底面25aに形成された蒸気放出部4aの平面図を示す。蒸気放出部4aは、直線の中央が直角に折り曲げられた同一形状の4つのスリット41a~41dが四角環状を形成するように配置されてなる。具体的には、4つの線状スリット41a~41dの各々の延在方向両端部は隣り合う線状スリットの延在方向端部と所定距離Dを隔てて長さNに渡って対向し、線状スリット41a~41dの各々の延在方向一方端部は、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状内方に位置し、延在方向他方端部は、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも環形状外方に位置するように配置されている。
【0027】
このような構成の蒸気放出部4aは、4つの線状スリット41a~41dの、四角環形状の内方に位置する部分で囲まれた略四角形状の昇降部5aと、隣り合う線状スリットの対向部分すなわち隣り合う線状スリットで挟まれた直線状の橋状部61a~61dとを有するとみることもできる。後述するように、容器Vの内圧が高くなると昇降部5cは上方に移動する。そして4つの橋状部61a~61dの一方端は、略四角形状の昇降部5aの4つの角部で接続し、他方端は凹部25の底面25aに接続し、4つの橋状部61a~61dは昇降部5aが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に移動するよう機能する。昇降部5aは容器Vの内圧が高くなれば上方に移動し内圧が低くなれば下方に移動する。容器内圧が大気圧になれば昇降部5aおよび橋状部61a~61dは凹部25の底面25aと同一平面に位置するようになる。
【0028】
なお、電子レンジで加熱調理された際に、昇降部5aが上方に移動した状態で所定時間保持されて、橋状部61a~61dが塑性変形して加熱調理後に昇降部5aが元の状態(凹部25の底面25aと面一)に戻らないことは許容される。一般に、加熱調理後は容器内容物が食に供されるため蓋体2は容器本体1から外されるからである。
【0029】
ここで、本発明の蓋体2では、線状スリット41a~41dの対向している部分の各々の長さNは、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さLの10%以上50%以下であるのが好ましい。線状スリットの対抗部分の各々の長さNが線状スリットの長さLの10%未満であると、昇降部5aの上方への移動可能距離が短く容器内の蒸気を外部に放出するための開口部が十分には形成されないおそれがある。また昇降部5aが上方に移動する容器内圧が高くなりすぎるおそれがある。一方、線状スリットの対抗部分の各々の長さNが線状スリットの長さLの50%を超えると、輸送や保管などの非加熱時に昇降部5aが自重によって下方に下がり蓋部2に開口が生じるおそれがある。線状スリットの対向している部分の各々の長さNの好ましい範囲は線状スリットの長さLの15%以上50%以下である。線状スリットの対向している部分の長さNは、線状スリットの対向している部分の各々で異なっていてもよいが、昇降部5aが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に円滑に移動する観点からは、線状スリットの対向している部分の各々の長さNは同じであるのが好ましい。
【0030】
また対向する線状スリット間の距離Dが、対向部分において環形状外方に位置する線状スリットの長さLの25%以下であるのが好ましい。対向する線状スリット間の距離Dが線状スリットの長さLの25%を超えると容器内圧が高くなっても昇降部5aが十分に外方に移動せず容器V内の蒸気を外部に円滑に排出できないおそれがある。対向する線状スリット間の距離Dのより好ましい上限値は線状スリットの長さLの40%である。また、対向する線状スリット間の距離Dの好ましい下限値は線状スリットの長さLの5%である。対向する線状スリット間の距離Dは、線状スリットの対向している部分の各々で異なっていてもよいが、昇降部5aが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に円滑に移動する観点からは、対向する線状スリット間の距離Dは同じであるのが好ましい。
【0031】
図3に蒸気放出部4aから蒸気が噴き出した状態を示す斜視図を示す。容器Vの内圧が高まると、昇降部5aは橋状部61a~61dによって凹部25の底面25aに対して略平行状態を維持しながら上方向に移動する。これにより凹部25の底面25aと昇降部5aとの間に開口部80が形成される。開口部80は、橋状部61a~61dの厚みを無視すれば、凹部25の底面25aと昇降部5aとの間の全周わたって開口し、従来の線状の開口部に比べて小さな形成面積で効率的に容器内の蒸気を外部に放出することが可能となる。また、容器内圧が高くなれば昇降部5aはより上方に移動し昇降部5aと凹部25の底面25aとの間の開口面積が大きくなって容器内の蒸気の放出が一層促進される。
【0032】
線状スリットの形成数は4つに限定されるものではなく2つ以上であればよい。ただし、本実施形態の場合には3つ以上であるのが好ましい。前述のように、昇降部5aは凹部25の底面25aに対して略平行状態で上方に移動し保持されるのが蒸気の効率的放出の点から好ましいところ、線状スリットが2つの場合は昇降部5aを支持する橋状部が昇降部5aの向かい合う2箇所にしか形成されず昇降部5aの前記平行状態が保持されにくく、線状スリットが3つ以上であれば、昇降部5aを支持する橋状部が3箇所以上形成されるので昇降部5aの前記平行状態が安定して保持される。
【0033】
1つの線状スリットの長さLに特に限定はないが、電子レンジで加熱される容器の蓋体2の大きさを考慮すると5mm以上40mm以下であるのが好ましい。線状スリットの長さLが5mm未満であると蒸気放出部4aによって容器内の蒸気を円滑に放出できないおそれがある。一方、線状スリットの長さLが40mmを超えると容器の意匠性が低下するおそれがある。線状スリットの長さLのより好ましい範囲は12mm以上30mm以下である。
【0034】
線状スリット41a~41dは、例えば所定形状の刃によって切断形成するのが好ましい。切断後の線状スリットの対向する切断面間に大きな隙間が形成されず、ほこりやゴミ、子ムシなどの容器内への侵入が防止される。また、容器内部の圧力が未だ十分には上昇していないときに線状スリットから内部蒸気が漏れ出るのが抑制されるからである。もちろん、ほこりやゴミ、小ムシなどの容器内への侵入が抑制され、内部蒸気の漏れ出るのが抑制される限りにおいてレーザー加工によって線状スリットは形成されてもよい。
【0035】
(変形例1)
図4に、蒸気放出部の変形例を示す平面図を、図5に蒸気放出部から蒸気が噴き出した状態を示す斜視図をそれぞれ示す。これらの図に示す蒸気放出部4bは、直線の中央が直角に折り曲げられた形状の4つの線状スリット42a~42dが四角環状を形成するように配置されてなる点は第1実施形態の蒸気放出部4aと同じであるが、本変形例では、線状スリット42b,42dの延在方向両端部はいずれも、隣り合う線状スリット42a,42cの延在方向端部よりも四角環状外方に位置する点で相違する。換言すると、線状スリット42a,42cの延在方向両端部はいずれも、隣り合う線状スリット42b,42dの延在方向端部よりも四角環状内方に位置する点で相違する。
【0036】
このような構成の蒸気放出部4bであっても、容器Vの内圧が高まると昇降部5bは上方に移動する。そして4つの橋状部62a~62dの一方端は凹部25の底面25aに接続し、橋状部62a,62dの他方端と橋状部62b,62cの他方端とは昇降部5bの対角部に接続して、昇降部5bが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に移動するよう機能する。第1実施形態と同様に、昇降部5bは容器Vの内圧が高くなれば上方に移動し内圧が低くなれば下方に移動する。容器内圧が大気圧になれば昇降部5bおよび橋状部62a~62dは凹部25の底面25aと同一平面に位置するようになる。
【0037】
ただし、本変形例のような4つの線状スリット42a~42dから構成される蒸気放出部4bでは、昇降部5bは対角の2箇所において橋状部62a,62dと橋状部62b,62cとで支持されるので、凹部25の底面25aに対して略平行状態に安定して支持されにくいことがある。昇降部5bが略平行状態に安定して支持されるためには昇降部5bの少なくとも3カ所において橋状部によって支持されているのがよく、この場合に必要とされる線状スリットの数は6本以上である。
【0038】
なお、線状スリットの長さL、隣り合う線状スリットの対抗部分の各々の長さN、対向する線状スリット間の距離Dの好適範囲は第1実施形態での例示がここでも適用される。
【0039】
(第2実施形態)
図6に、蒸気放出部の第2実施形態を示す平面図を示す。この図に示す蒸気放出部4cは、4つの半円弧状の線状スリット43a~43dが円環形状を形成するように配置されている。具体的には、4つの半円弧状の線状スリット43a~43dの各々の延在方向一方端部が、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも円環形状内方に位置し、延在方向他方端部は、隣り合う線状スリットの延在方向端部よりも円環形状外方に位置するように配置されている。
【0040】
蒸気放出部4cは、4つの線状スリット43a~43dの、円環形状の内方に位置する部分で囲まれた略円形状の昇降部5cと、隣り合う線状スリットの対向部分すなわち隣り合う線状スリットで挟まれた4つの円弧状の橋状部63a~63dとを有するとみることもできる。
【0041】
このような構成の蒸気放出部4cによれば、容器Vの内圧が高くなると昇降部5cは上方に移動する。そして4つの橋状部63a~63dの一方端は、略円板状の昇降部5cの外周に所定間隔(90度)で接続し、他方端は凹部25の底面25aに接続し、4つの橋状部63a~63dは昇降部5cが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に移動するよう機能する。第1実施形態と同様に、昇降部5cは容器Vの内圧が高くなれば上方に移動し内圧が低くなれば下方に移動する。容器内圧が大気圧になれば昇降部5cおよび橋状部63a~63dは凹部25の底面25aと同一平面に位置するようになる。
【0042】
図7に蒸気放出部4cから蒸気が噴き出した状態を示す斜視図を示す。容器Vの内圧が所定圧力に達すると、昇降部5cは橋状部63a~63dによって凹部25の底面25aに対して略平行状態を維持しながら上方向に移動する。これにより凹部25の底面25aと昇降部5cとの間に開口部80が形成される。開口部80は、橋状部63a~63dの厚みを無視すれば、凹部25の底面25aと昇降部5cとの間の全周わたって開口し、従来の線状の開口部に比べて小さな形成面積で効率的に容器内の蒸気を外部に放出することが可能となる。また、容器内圧が高くなれば昇降部5cはより上方に移動し昇降部63a~63dと凹部25の底面25aとの間の開口面積が大きくなって容器V内の蒸気の放出が一層促進される。
【0043】
線状スリットの形成数は2つ以上であればよく、本実施形態の場合には3つ以上であるのが好ましい。前述のように、昇降部5cは凹部25の底面25aに対して略平行状態で上方に移動し保持されるのが蒸気の効率的放出の点から好ましいところ、線状スリットが2つの場合は昇降部5cを支持する橋状部が昇降部5cの向かい合う2箇所にしか形成されず昇降部5cの前記平行状態が保持されにくい。一方、線状スリットが3つ以上であれば、昇降部5cを支持する橋状部が3箇所以上形成されるので昇降部5cの前記平行状態が安定して保持される。
【0044】
線状スリットの長さL、隣り合う線状スリットの対抗部分の各々の長さN、対向する線状スリット間の距離Dの好適範囲は第1実施形態での例示がここでも適用される。
【0045】
(変形例2)
図8に、蒸気放出部の変形例を示す平面図を、図9に蒸気放出部4dから蒸気が噴き出した状態を示す斜視図をそれぞれ示す。これらの図に示す蒸気放出部4dは、4つの半円弧状の線状スリット44a~44dが円環形状を形成するように配置されている点は第2実施形態の蒸気放出部4cと同じであるが、本変形例では、線状スリット44a,44cの延在方向両端部はいずれも、隣り合う線状スリット44b、44dの延在方向端部よりも円環状外方に位置する点で相違する。換言すると、線状スリット44b、44dの延在方向両端部はいずれも、隣り合う線状スリット44a,44cの延在方向端部よりも円環状内方に位置する点で相違する。
【0046】
このような構成の蒸気放出部4dであっても、容器Vの内圧が高まると昇降部5dは上方に移動する。橋状部64a,64bと橋状部64c,64dとは昇降部5dの対向部と凹部25の底面25aとを接続して昇降部5dが凹部25の底面25aに対して略平行状態で容器内圧に対応して上方向に移動するよう機能する。
【0047】
ただし、本変形例のような4つの線状スリット44a~44dから構成される蒸気放出部4dでは、昇降部5dは対向しる2箇所において橋状部64a,64bと橋状部64c,64dとで支持されることになるので、凹部25の底面25aに対して略平行状態に安定して支持されにくいことがある。昇降部5dが略平行状態に安定して支持されるためには昇降部5dの少なくとも3カ所において橋状部によって支持されているのがよく、この場合に必要とされる線状スリットの数は6本以上である。
【0048】
なお、線状スリットの長さL、隣り合う線状スリットの対抗部分の各々の長さN、対向する線状スリット間の距離Dの好適範囲は第1実施形態での例示がここでも適用される。
【0049】
(その他)
以上説明した実施形態では蒸気放出部は、蓋体2の天壁21に形成された凹部25の底面25aに形成されていたが、蒸気放出部の形成箇所に特に限定はなく、凹部25のない蓋体2の天壁21に形成してもよいし、外周壁22に形成しても構わない。また、蒸気放出部の形成個数に限定はなく2つ以上設けても勿論構わない。蓋体の形状は上記実施形態のものに限定されるものではなく容器本体1の開口部を封鎖し得る形状であればよい。
【0050】
(実験例1)
図2に示す構成の蒸気放出部で、線状スリットの対向している部分の長さNを2mm~16mmまで2mmごと、対向する線状スリット間の距離Dを2mm~10mmまで2mmごとに変化させて、線状スリットの長さに対する長さNの比率及び距離Dの比率を変化させた蒸気放出部を蓋体に形成し、蒸気放出部の昇降部をプッシュプルゲージを用いて2mm押し込んだときの押込み力(N)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0051】
(実験例2)
図6に示す構成の蒸気放出部で、線状スリットの対向している部分の長さNを2mm~12mmまで2mmごと、対向する線状スリット間の距離Dを2mm~6mmまで2mmごとに変化させて、線状スリットの長さに対する長さNの比率及び距離Dの比率を変化させた蒸気放出部を蓋体に形成し、蒸気放出部の昇降部をプッシュプルゲージを用いて2mm押し込んだときの押込み力(N)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および表2から明らかなように、図2および図6に示される蒸気放出部においても、線状スリットの長さに対する線状スリットの対向している部分の長さNの比率が大きいほど、また線状スリットの長さに対する対向する線状スリット間の距離Dの比率が小さいほど押込み力は弱くなった。すなわち、長さNの比率が大きいほど、そして距離Dの比率が小さいほど、低い容器内圧であっても蒸気放出部は作動可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る蓋体では、従来よりも蒸気放出部の形成面積当たりの蒸気放出量が多いので、蒸気放出部の形成面積を従来よりも小さくできる。また蒸気排出部は容器内圧が比較的小さい段階でも作動可能である。そしてまた蒸気排出部は非加熱状態(大気圧下)では確実に閉状態を保持可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 容器本体
2 蓋体
4a,4b,4c,4d 蒸気放出部
D 線状スリットの対向部分の幅
L 線状スリットの長さ
N 線状スリットの対向している部分の各々の長さ
V 容器
41a~41d 線状スリット
42a~42d 線状スリット
43a~43d 線状スリット
44a~44d 線状スリット
5a,5b,5c,5d 昇降部
61a~61b 橋状部
62a~62b 橋状部
63a~63b 橋状部
64a~64b 橋状部
80 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9