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  • 特開-ボイラ強制冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182249
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ボイラ強制冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20221201BHJP
   F22D 11/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F22B35/00 K
F22D11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089712
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】西 真一郎
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021CA10
3L021DA14
3L021FA13
(57)【要約】
【課題】排水を削減することが可能なボイラ強制冷却方法を提供する。
【解決手段】水を加熱して蒸気を生成するボイラ2と、脱気器41からの水をボイラ2に送る給水ポンプ43と、給水ポンプ43からボイラ2への水の流量を調節する給水流量調節弁44と、給水ポンプ43からの水を脱気器41に還流させるミニマム流路51と、ボイラ2を空冷するFDF7と、を備えた火力発電設備1において、給水流量調節弁44を閉じた状態で、ボイラ2の温度が所望温度に達するまでFDF7でボイラ2を空冷する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して蒸気を生成するボイラと、
脱気器からの水を前記ボイラに送る給水ポンプと、
前記給水ポンプから前記ボイラへの水の流量を調節する給水流量調節弁と、
前記給水ポンプからの水を前記脱気器に還流させるミニマム流路と、
前記ボイラを空冷する空冷装置と、
を備えた火力発電設備において、前記ボイラを強制的に冷却するためのボイラ強制冷却方法であって、
前記給水流量調節弁を閉じた状態で、前記ボイラの温度が所望温度に達するまで前記空冷装置で前記ボイラを空冷する、
ことを特徴とするボイラ強制冷却方法。
【請求項2】
前記給水ポンプを停止して前記給水流量調節弁を閉じる、
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ強制冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備におけるボイラを強制的に冷却するためのボイラ強制冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備では、ボイラで水を加熱してその蒸気を蒸気タービンに送り込むことで、蒸気タービンを回転させて発電を行っている。このような火力発電設備は、負荷に応じて休止させたり点検のために休止させたりすることがあり、その場合、ボイラ内への燃料供給を停止して消火し、ボイラを強制冷却する必要がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、従来、通風系統によってボイラを冷却・空冷し、その後、ボイラドラム圧力が所定値まで低下すると、ボイラドラムのブロー弁を開放してボイラ水の入れ替えによりボイラを冷却・水冷していた。つまり、脱気器からの水を給水ポンプでボイラドラムに送ってボイラを水冷するとともに、通風系統による空冷を継続する。この際、給水ポンプから吐出される水をすべてボイラドラムに送ると、大量の水を排水処理しなければならないばかりでなく、ブロー弁の容量(最大吐出し量)が小さいとブロー弁から水を排出できなくなってしまう。このため、給水ポンプからの水の一部のみをボイラドラムに送り、残量を脱気器に還流させる、というミニマムフロー運転が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-112017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来、ボイラの強制冷却を行う場合、空冷とともにボイラ水の入れ替えを行っていたため、大量の排水が発生し、排水処理装置に大きな負荷がかかっていた。
【0006】
そこで本発明は、排水を削減することが可能なボイラ強制冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、水を加熱して蒸気を生成するボイラと、脱気器からの水を前記ボイラに送る給水ポンプと、前記給水ポンプから前記ボイラへの水の流量を調節する給水流量調節弁と、前記給水ポンプからの水を前記脱気器に還流させるミニマム流路と、前記ボイラを空冷する空冷装置と、を備えた火力発電設備において、前記ボイラを強制的に冷却するためのボイラ強制冷却方法であって、前記給水流量調節弁を閉じた状態で、前記ボイラの温度が所望温度に達するまで前記空冷装置で前記ボイラを空冷する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のボイラ強制冷却方法において、前記給水ポンプを停止して前記給水流量調節弁を閉じる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明者は、ボイラ水を入れ替えてボイラを水冷しても、その冷却効果がほとんどない、あるいは小さいことを発見、確認した。すなわち、給水ポンプからの水の一部のみをボイラに送り、残量をミニマム流路で脱気器に還流させる、というミニマムフロー運転を行ってボイラ水を入れ替える場合、給水ポンプの回転入熱(ポンプを介して水が循環することで水に伝わる熱量)によって、脱気器に還流する水の温度(脱気器内の貯水温度)が上昇する。この結果、温度が高い水がボイラに送られ、ボイラの冷却効果がほとんどない、あるいは小さいことを発見、確認した。さらに、本願発明者は、ボイラに水を送らずに空冷のみでボイラを冷却したところ、ボイラ(ボイラ水)の温度が所望温度に達するまでの時間が、空冷と水冷を行う従来の冷却方法と比べて、ほぼ同等時間であることを確認した。
【0010】
そして、請求項1に記載の発明によれば、給水流量調節弁を閉じた状態で、つまり、ボイラに水を送らない状態で(ボイラ水の入れ替えを行わずに)、ボイラの温度が所望温度に達するまで空冷装置のみでボイラを冷却・空冷する。このため、空冷と水冷を行う従来の冷却方法と同等の冷却効果を確保した上で(所望温度に達するまでの時間を従来と同等に維持した上で)、排水を著しく削減することができるものである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、給水ポンプを停止して給水流量調節弁を閉じるため、給水ポンプの駆動に要する動力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態に係る火力発電設備を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る火力発電設備1を示す概略構成図である。この火力発電設備1は、広く運用されている既存の火力発電設備と同等の構成であるが、概略次のような構成となっている。
【0015】
ボイラ2は、化石燃料などによって水を加熱して蒸気を生成し、その蒸気を蒸気タービン31に送り込むことで、蒸気タービン31が回転して発電機32で発電が行われる。また、蒸気タービン31から排出された蒸気が復水器33で復水され、復水ポンプ34で脱気器41に貯水される。
【0016】
脱気器41は、復水器33で除去しきれない復水中の溶存酸素や炭素ガスなどを除去する機器である。この脱気器41からボイラ2に水を送るための給水経路42には、上流側(脱気器41側)から順に、給水ポンプ43、給水流量調節弁44、高圧給水ヒーター45が配設されている。
【0017】
給水ポンプ43は、脱気器41からの水をボイラ2に送るポンプであり、その容量・流量は、火力発電設備1の運転時・発電時に必要な水を十分にボイラ2に供給できるように、大きく設定されている。従って、最低流量も大きく設定され(例えば、100とする)、後述するボイラドラムブロー弁62からの最大流量(例えば、50とする)よりも大きくなっている。
【0018】
給水流量調節弁44は、給水ポンプ43からボイラ2への水の流量を調節する(ボイラドラムのレベル・水位を一定に制御する)弁であり、この弁を閉じるとボイラ2へ給水されないようになっている。高圧給水ヒーター45は、給水ポンプ43から送られた水を加熱してボイラ2に送る加熱器であり、蒸気タービン31から抽気した高圧蒸気などを使用して水を加熱する。
【0019】
一方、給水ポンプ43と給水流量調節弁44の間の給水経路42から脱気器41に延びるミニマム流路51が設けられ、このミニマム流路51にミニマムフロー弁52が配設されている。そして、ミニマムフロー弁52を開くと、ミニマム流路51を介して給水ポンプ43からの水を脱気器41に還流させられるようになっている。
【0020】
例えば、火力発電設備1の起動時に給水ポンプ43の最低流量よりも少ない水量をボイラ2に給水する場合に、給水流量調節弁44とミニマムフロー弁52を開くと、給水ポンプ43からの水の一部がボイラ2に送られ、残量が脱気器41に還流される。また、給水ポンプ43を保護するために、給水流量調節弁44を閉じてミニマムフロー弁52を開くと、給水ポンプ43からの水の全量が脱気器41に還流される。さらに、従来においてボイラ2を強制冷却する(ボイラ水を入れ替る)際には、給水ポンプ43の最低流量がボイラドラムブロー弁62の最大流量よりも大きいため、給水流量調節弁44とミニマムフロー弁52を開くことで、給水ポンプ43からの水の一部(ボイラドラムブロー弁62の最大流量以下の水)がボイラ2に送られ、残量が脱気器41に還流される。
【0021】
また、ボイラ2に空気を送って冷却・空冷する空冷装置としてのFDF(Forced Draft Fan、押込通風機)7が配設されている。さらに、ボイラ2からの排水を排水処理装置63側に送る排水路61にはボイラドラムブロー弁62が設けられ、排水路61およびボイラドラムブロー弁62からの最大流量(最大吐出し量)は、給水ポンプ43の最低流量よりも小さい。
【0022】
次に、このような構成の火力発電設備1において、ボイラ2を強制的に冷却するためのボイラ強制冷却方法について説明する。
【0023】
まず、本願発明者は、従来のようにボイラ水を入れ替えてボイラ2を水冷しても、その冷却効果がほとんどない、あるいは小さいことを発見、確認した。すなわち、ボイラ水を入れ替える場合、上記のように、給水ポンプ43の最低流量がボイラドラムブロー弁62の最大流量よりも大きいなどのため、給水流量調節弁44とミニマムフロー弁52を開いて、給水ポンプ43からの水の一部のみをボイラ2つまりボイラドラムに送り、残量をミニマム流路51で脱気器41に還流させる、というミニマムフロー運転を行う必要がある。しかしながら、給水ポンプ43の回転入熱(ポンプを介して水が循環することで水に伝わる熱量)によって、脱気器41に還流する水の温度(脱気器41内の貯水温度)が上昇する。この結果、温度が高い水がボイラ2に送られ、ボイラ2の冷却効果がほとんどない、あるいは小さいことを発見、確認した。さらに、本願発明者は、ボイラ2に水を送らずにFDF7による空冷のみでボイラ2を冷却したところ、ボイラ2つまりボイラ水の温度が所望温度(例えば、90℃)に達するまでの時間が、空冷と水冷を行う従来の冷却方法と比べて、ほぼ同等時間であることを確認した。
【0024】
このようなことから、本ボイラ強制冷却方法は、ボイラ2の消火後に、給水流量調節弁44とボイラドラムブロー弁62を閉じてボイラ水の入れ替えを行わずに、ボイラ2・ボイラ水の温度が所望温度に達するまで(例えば、90℃以下になるまで)FDF7のみでボイラ2を空冷する。つまり、強制冷却時には、最初から最後までFDF7のみでボイラ2を冷却・空冷する。この際、給水ポンプ43を停止して給水流量調節弁44を閉じるものである。なお、高圧給水ヒーター45も停止する。
【0025】
以上のように、このボイラ強制冷却方法によれば、給水流量調節弁44を閉じた状態で、つまり、ボイラ2に水を送らない状態で(ボイラ水の入れ替えを行わずに)、FDF7のみでボイラ2を冷却・空冷する。このため、空冷と水冷を行う従来の冷却方法と同等の冷却効果を確保した上で(所望温度に達するまでの時間を従来と同等に維持した上で)、排水を著しく(例えば、600トン程度)削減することができるものである。しかも、給水ポンプ43を停止して給水流量調節弁44を閉じるため、給水ポンプ43の駆動に要する動力を削減することができる。
【0026】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、空冷装置がFDF7の場合について説明したが、その他の空冷装置であってもよいし、FDF7による送風量を変えるようにしてもよい。例えば、空冷と水冷を行う従来の冷却方法に比べて、FDF7の送風量を増量してもよい。
【0027】
また、給水ポンプ43や給水流量調節弁44、FDF7などを制御するボイラ強制冷却システムを火力発電設備1に組み入れてもよい。そして、ボイラ2の強制冷却時にこのボイラ強制冷却システムによって、自動的に給水流量調節弁44とボイラドラムブロー弁62を閉じて給水ポンプ43を停止し、ボイラ2(ボイラ水)の温度が所望温度に達するまでFDF7を起動継続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 火力発電設備
2 ボイラ
31 蒸気タービン
32 発電機
33 復水器
34 復水ポンプ
41 脱気器
42 給水経路
43 給水ポンプ
44 給水流量調節弁
45 高圧給水ヒーター
51 ミニマム流路
52 ミニマムフロー弁
61 排水路
62 ボイラドラムブロー弁
63 排水処理装置
7 FDF(空冷装置)
図1