(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182261
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ガスメータ
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20221201BHJP
G01F 15/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
G01F15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089728
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】冨田 堅哉
(72)【発明者】
【氏名】高鍬 光臣
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CC13
2F030CE13
2F030CF05
2F030CF11
2F030CH01
(57)【要約】
【課題】メータケースを金型成形するときに、遮断弁の取り付け部分の型抜きが容易となるガスメータを提供する。
【解決手段】本実施形態のガスメータ10は、アルミのダイキャスト品であるメータケース11内の始端部屋30を構成する弁装着壁14に、遮断弁20を固定するための雌螺子孔40,41が設けられ、雌螺子孔40,41又はそれらの下孔を内側に配置する肉盛り突部42と突出部19Bが始端部屋30内に突出している。また、メータケース11には、始端部屋30を後方と下方で開放する型抜き開口44,46が形成され、これら型抜き開口44,46を通して、肉盛り突部42及び突出部19Bの外面全体が視認可能となっている。これにより、メータケース11を金型成形する際のアンダーカットを小さくして、肉盛り突部42と突出部19Bの駄肉を少なくし、遮断弁20の取り付け部分の空間が拡大されて圧力損失を低減することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ又は樹脂の射出成形品であるメータケースに設けられて横方向に並ぶ複数の部屋に含まれる始端部屋と終端部屋とから上方に1対の接続管が延び、それら1対の接続管にガス管が接続されて前記始端部屋から前記終端部屋へと流れるガスの流量を計測するガスメータであって、
前記メータケースのうち前記始端部屋の横方向の一側壁を貫通し、遮断弁の弁体が挿入される側部貫通孔と、
前記メータケースに形成され、前記横方向と直交する四方のうち少なくとも二方で前記始端部屋を開放する複数の型抜き開口と、
前記複数の型抜き開口を閉塞する複数の蓋体と、
前記一側壁から前記始端部屋内に突出し、前記遮断弁の固定用フランジを螺子止めするための複数の雌螺子孔又はそれらの下孔を内側に有し、前記複数の型抜き開口を通して側面の全体を視認可能な複数の肉盛り突部と、を備えるガスメータ。
【請求項2】
前記肉盛り突部の数は2であり、それらは、上下方向に対して傾斜した方向で前記側部貫通孔を挟んだ2箇所に配置され、
前記型抜き開口及び前記蓋体の数は、それぞれ2つである請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記メータケースは、断面略四角形をなして横方向に延び、
前記複数の部屋のうち前記始端部屋以外の全ては、前面開口を有しかつ共通の前面蓋により前記前面開口を閉塞され、
前記始端部屋は、下面と後面とに前記型抜き開口を有し、前記蓋体により閉塞されている請求項2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記側部貫通孔を有する前記一側壁は、前記メータケースの一側面より内側に位置して、前記始端部屋の隣に、前記遮断弁の前記固定用フランジ及び駆動源を含んだ本体部を収容する弁収容部屋が備えられ、
前記弁収容部屋は、前記前面蓋で閉塞される前面開口と、前記メータケースの一側面に開口しかつ側面蓋にて閉塞される側面開口とを有する請求項3に記載のガスメータ。
【請求項5】
請求項3又は4の請求項に記載のガスメータの製造方法であって、
前記メータケースを射出成形するためのダイキャスト又は射出成形の成形金型に、前記メータケースの上下方向に相当する第1可動方向で互いに接近及び離間する1対の第1開閉部と、前記メータケースの前後方向に相当する第2可動方向で互いに接近及び離間する1対の第2開閉部とを設けておき、一方の前記第1開閉部と一方の前記第2開閉部との協働により前記複数の肉盛り突部を成形するガスメータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緊急時にガスの供給を遮断する遮断弁を備えるガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスメータとして、遮断弁が取り付けられる鋳物のメータケースを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-144000号公報(段落[0020]、[0023]及び
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のガスメータに対し、メータケースをアルミのダイキャスト品や樹脂の射出成形品とした場合に、遮断弁の取り付け部分においてアンダーカットを避けるための肉盛り部分が大きくなって圧力損失が生じるという問題があり、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、アルミ又は樹脂の射出成形品であるメータケースに設けられて横方向に並ぶ複数の部屋に含まれる始端部屋と終端部屋とから上方に1対の接続管が延び、それら1対の接続管にガス管が接続されて前記始端部屋から前記終端部屋へと流れるガスの流量を計測するガスメータであって、前記メータケースのうち前記始端部屋の横方向の一側壁を貫通し、遮断弁の弁体が挿入される側部貫通孔と、前記メータケースに形成され、前記横方向と直交する四方のうち少なくとも二方で前記始端部屋を開放する複数の型抜き開口と、前記複数の型抜き開口を閉塞する複数の蓋体と、前記一側壁から前記始端部屋内に突出し、前記遮断弁の固定用フランジを螺子止めするための複数の雌螺子孔又はそれらの下孔を内側に有し、前記複数の型抜き開口を通して側面の全体を視認可能な複数の肉盛り突部と、を備えるガスメータである。
【0006】
請求項2の発明は、前記肉盛り突部の数は2であり、それらは、上下方向に対して傾斜した方向で前記側部貫通孔を挟んだ2箇所に配置され、前記型抜き開口及び前記蓋体の数は、それぞれ2つである請求項1に記載のガスメータである。
【0007】
請求項3の発明は、前記メータケースは、断面略四角形をなして横方向に延び、前記複数の部屋のうち前記始端部屋以外の全ては、前面開口を有しかつ共通の前面蓋により前記前面開口を閉塞され、前記始端部屋は、下面と後面とに前記型抜き開口を有し、前記蓋体により閉塞されている請求項2に記載のガスメータである。
【0008】
請求項4の発明は、前記側部貫通孔を有する前記一側壁は、前記メータケースの一側面より内側に位置して、前記始端部屋の隣に、前記遮断弁の前記固定用フランジ及び駆動源を含んだ本体部を収容する弁収容部屋が備えられ、前記弁収容部屋は、前記前面蓋で閉塞される前面開口と、前記メータケースの一側面に開口しかつ側面蓋にて閉塞される側面開口とを有する請求項3に記載のガスメータである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4の請求項に記載のガスメータの製造方法であって、前記メータケースを射出成形するためのダイキャスト又は射出成形の成形金型に、前記メータケースの上下方向に相当する第1可動方向で互いに接近及び離間する1対の第1開閉部と、前記メータケースの前後方向に相当する第2可動方向で互いに接近及び離間する1対の第2開閉部とを設けておき、一方の前記第1開閉部と一方の前記第2開閉部との協働により前記複数の肉盛り突部を成形するガスメータの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のガスメータでは、アルミ又は樹脂の射出成形品であるメータケース内に、上流側の接続管から下方向に流れ込んできたガスを受け入れて横方向へと導く始端部屋が備えられ、始端部屋の横方向の一側壁には、遮断弁の弁体が挿入される側部貫通孔と、遮断弁の固定用フランジを螺子止めするための複数の雌螺子孔が設けられると共に、これら複数の雌螺子孔又はそれらの下孔を内側に配置する複数の肉盛り突部が始端部屋に突出するように設けられている。そして、本開示のガスメータでは、メータケースに、横方向と直交する四方のうち少なくとも二方で始端部屋を開放する複数の型抜き開口を備えていて、これら複数の型抜き開口を通して複数の肉盛り突部の側面の全体を視認可能に構成されている。この構造により、メータケースを金型成形する際のアンダーカットを小さくして肉盛り部分を減らすことができ、遮断弁の取り付け部分の空間が拡大されて圧力損失を低減することができる。
【0011】
しかも、請求項2のガスメータのように、肉盛り突部の数を2として、2つの肉盛り突部を上下方向に対して傾斜した方向で側部貫通孔を挟む位置に配置すれば、肉盛り突部の並び方向で分割される比較的簡単な形状の金型で成形することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガスメータの斜視図
【
図5】(A)弁装着壁に形成された雌螺子孔の正面図、(B)
図5(A)のA-A切断面における雌螺子孔の断面図
【
図11】型抜き開口が1つだけ設けられたメータケースの肉盛り突部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図10を参照して、本実施形態のガスメータ10について説明する。本実施形態のガスメータ10は、超音波を利用して燃料ガスの流量を計測する、所謂、ガスメータであって、ガス管99の途中に接続されるメータケース11に、遮断弁20(
図2参照),計測管50(
図3参照)、整流器70(
図3参照)等を収容して備える。
【0014】
メータケース11は、例えばアルミのダイキャスト品であって、横方向に延びた略直方体状のダクト部12を有する。以下、ダクト部12が延びる第1の水平方向を「横方向H1」といい、それと直交する第2の水平方向を「前後方向H2」という。また、前後方向H2のうち後述する前面フランジ16を有する側を「前側」等といい、その反対側を「後側」等ということとする。
【0015】
図2に示すように、ダクト部12のうち前方から見て左側(以下、単に「左側」といい、その反対側を単に「右側」という)に側面開口10Kを備えたフード部13が備えられ、フード部13の四隅には、面取り傾斜壁35が備えられている。さらに、フード部13の左端部からは四角形のフード部フランジ36が四方に張り出している。フード部フランジ36には、側面開口10Kより一回り大きな環状のOリング溝37が形成されると共に、Oリング溝37より外側の四隅に螺子孔が形成されている。そして、Oリング溝37にOリング(図示せず)が収容された状態で、板状の側面蓋15がフード部フランジ36に宛がわれて螺子止めされている。これにより、フード部13の側面開口10Kが密閉される。
【0016】
フード部13とダクト部12との間は、弁装着壁14によって区画されている。また、ダクト部12内は、
図3に示すように、弁装着壁14側から横方向H1に順番に並ぶ第1~第3の仕切壁25,26,27により、同じく順番に並ぶ、始端部屋30、流入部屋31、中間部屋32及び終端部屋33に区画されている。
【0017】
ダクト部12の上面の左右の両端部には、1対の接続管23,24が突設されて始端部屋30と終端部屋33とに連通している。そして、始端部屋30に連通する一方の接続管23に燃料ガスの供給元側のガス管99(
図2参照)が接続される一方、終端部屋33に連通する他方の接続管24に燃料ガスの使用者側のガス管99が接続される。
【0018】
図3に示すように、弁装着壁14には円形の側部貫通孔14Aが形成され、第1仕切壁25には、その側部貫通孔14Aと横方向H1で対向する位置に、側部貫通孔14Aより小さい円形の貫通孔25Aが形成されている。また、
図2に示すように、遮断弁20の固定フランジ20Fがフード部13側の弁装着壁14の開口縁に図示しないパッキンを挟んで宛われ、弁装着壁14に形成された雌螺子孔40,41に螺子N1(
図5(B)参照)を螺合することにより固定されている。これにより、遮断弁20の弁体21が始端部屋30に収容されると共に、フード部13内は、遮断弁20の駆動源22及び固定用フランジ20Fが収容される弁収容部屋13Kになっている。そして、遮断弁20の通電状態で、弁体21が貫通孔25Aから離間し(
図3の状態)、非通電状態になると、弁体21が貫通孔25Aを閉塞する。弁装着壁14の雌螺子孔40,41及び雌螺子孔40,41を備える弁装着壁14によりその一部が形成される始端部屋30の詳細な構造については後で詳説する。
【0019】
メータケース11の前面には、
図4に示すように、前面フランジ16が備えられている。前面フランジ16は、外縁部が横長の長方形をなし、ダクト部12から上下に張り出し、横方向H1の左端部がフード部13と一体になっている。また、前面フランジ16の前面には、外縁部を除く全体を段付き状に陥没させて陥没部19が形成され、その陥没部19内に、弁収容部屋13K、流入部屋31、中間部屋32及び終端部屋33の前面全体を開放する前面開口17が形成されている。
【0020】
流入部屋31には、前面開口17から整流器70が収容されていて(
図3参照)、燃料ガスの流れの均一化が図られている。また、第2及び第3の仕切壁26,27には、
図4に示すように、前面開口17側が開口した矩形状の1対の切欠部29が備えられている。この1対の切欠部29に、角筒状をなした計測管50の両端寄り位置が嵌合されて、計測管50が横方向H1に延びて流入部屋31と終端部屋33との間を連絡している(
図3参照)。また、計測管50には、図示しない1対の超音波素子が内蔵され、一方の超音波素子から送波された超音波が燃料ガスを伝播して他方の超音波素子に受波される伝搬時間に基づいて、回路基板98(
図1参照)上の制御回路がガスの使用量を演算する。
【0021】
図2に示すように、前面開口17は、前面開口17より一回り大きな長方形の板状をなす前面蓋18によりその外周部をメータケース11に螺子止めされて閉塞される。このとき、前面蓋18の内面には、図示しないパッキンが敷設され、弁収容部屋13Kと流入部屋31との間、流入部屋31と中間部屋32との間、中間部屋32と終端部屋33との間が気密状態に区画される。
【0022】
前面蓋18のうち中間部屋32に対向する部分には、ケーブル挿通孔18Aが形成され、計測管50の超音波素子の図示しないケーブルがケーブル挿通孔18Aを通して前面蓋18の前側に引き出されている。また、前面蓋18のうち弁収容部屋13Kに対向する部分には、ケーブル挿通孔18Bが備えられ、そのケーブル挿通孔18Bを通して遮断弁20の図示しないケーブルが前面蓋18の前側に引き出されている。なお、陥没部19には始端部屋30に連通する図示しない連通孔が形成されて、その連通孔を塞ぐように図示しない圧力センサが取り付けられている。
【0023】
陥没部19には、前面蓋18の前側に回路基板98が重ねて取り付けられている。そして、回路基板98を覆うように前面カバー81が取り付けられている(
図1参照)。回路基板98には、超音波素子、遮断弁20、圧力センサが接続されると共に、前面カバー81内に収容された図示しない電池が電源として回路基板98に接続されている。そして、回路基板98に実装された制御回路により、前述の如く超音波素子を利用して燃料ガスの流量が計測される。
【0024】
また、回路基板98のスイッチを介して遮断弁20が給電されていて通常は弁体21が貫通孔25Aから離間されている。そして、圧力センサにてガス圧の異常が検出されると遮断弁20への通電が遮断され、弁体21が貫通孔25Aを閉塞する。また、回路基板98には、震動検出器も実装されていて、その震動検出器が基準値以上の揺れを検出したときにも遮断弁20への通電が遮断されて貫通孔25Aが閉塞される。
【0025】
さて、本実施形態では、ガス供給元のガス管99からダクト部12内に流入した燃料ガスは、
図3に示すように、メータケース11内で一方の接続管23内を下方に向かって始端部屋30に流れこみ、始端部屋30で横方向H1に向きを変えて流入部屋31、計測管50、終端部屋33の順に燃料ガスが流れ、他方の接続管24内を上方に向かい、燃料ガスの使用者側のガス管99へと流れ出ていく。つまり、始端部屋30内に流入した燃料ガスの流路は、一方の接続管23から下方に向かう縦流路F1と、この縦流路F1の下端から横方向H1に向かう横流路F2とで構成される。そして、メータケース11の弁装着壁14のうち横流路F2と対向する位置に遮断弁20が取り付けられる側部貫通孔14Aが形成されている。
【0026】
弁装着壁14には、前述したように、遮断弁20の固定用フランジ20Fを固定するための雌螺子孔40,41が側部貫通孔14Aを挟むように形成されている(
図2参照)。具体的には、雌螺子孔40,41は、
図5(A)に示すように、前後方向H2と平行でかつ側部貫通孔14Aの中心を通る線を側部貫通孔14Aの中心に対して後側に45度傾斜した架空の螺子配置軸J1上に対向配置されている。そして、
図5(B)に示すように、雌螺子孔40,41は、螺合される螺子N1の先端が始端部屋30に露出しないようになっている。
【0027】
具体的には、雌螺子孔40とその下孔は、弁装着壁14のうち始端部屋30側を向く内面14Nに突出形成された肉盛り突部42の内側に配置されている。肉盛り突部42は、
図6に示すように、螺子配置軸J1に対して線対称な形状をなしていて、
図7に示すように、略円柱状の円柱部42Aと延長部42Bとを有する。円柱部42Aは、その先端面と外側面との角部は円弧状に面取りされると共に、その外側面と弁装着壁14の側面14Nとの角部も円弧状に面取りされている。また、延長部42Bは、円柱部42から側部貫通孔14A側に螺子配置軸J1上に延びて形成されている。延長部42Bの端面は、側部貫通孔14Aの開口縁に沿った形状をなしている。また、弁装着壁14の内面14Nには、螺子配置軸J1上に沿って延びる突条43Aが形成されている。突条43Aは、肉盛り突部42の円柱部42Aの外側面、先端面及び延長部42Bの先端面にも連続して形成されている。なお、弁装着壁14の内面14Nには、側部貫通孔14の開口縁の上端部から上方にも突条43Bが延びていて(
図6参照)、これら突条43A,43Bは、後述するメータケース11の成形金型60のパーティングラインに配置される。
【0028】
図6に示すように、メータケース11の陥没部19のうち始端部屋30と対向する後面19Aには、側部貫通孔14Aの上下の中間部より上側が後方に突出する段差面19Dが形成されている。これにより、段差面19Dより上側が、始端部屋30内に張り出す突出部19Bとなっている。また、突出部19Bは、側部貫通孔14Aの開口に沿って切り欠かれ、外面には開口縁に沿った曲面19Kが形成されている。そして、突出部19Bのうち、螺子配置軸J1上で曲面19Kと対向する位置に、雌螺子孔41とその下孔が配置されている。なお、突出部19Bも、特許請求の範囲の「肉盛り突部」に相当する。
【0029】
また、突出部19Bの外面のうち曲面19Kより上方が縦流路F1となっている。なお、突出部19Bの外面のうち曲面19Kより上方は、上端に向かうに従って前側に傾斜し、これにより縦流路F1は下流に向かうに従って縮径されている。
【0030】
また、
図6に示すように、メータケース11のうち、始端部屋30と対向する後面と下面には、型抜き開口44,46が形成されている。型抜き開口44は、
図8に示すように、上下方向に長い長方形状をなし、各長辺が、それぞれ弁装着壁14の内面14Nと、第1の仕切壁25のうち始端部屋30を向く側面と面一となって、始端部屋30を後方に開放する。これにより、型抜き開口44を通して、肉盛り突部42の外側面のうち螺子配置軸J1より上方側の全体と、突出部19Bの曲面19K及びその上方全体と、が視認可能となっている。
【0031】
また、型抜き開口46は、
図9に示すように、前後方向H2に長い長方形状をなし、各長辺が、それぞれ弁装着壁14の内面14Nと、第1の仕切壁25のうち始端部屋30を向く側面と面一となって、始端部屋30を下方に開放する。これにより、型抜き開口46を通して、肉盛り突部42の外側面のうち螺子配置軸J1より下方側の全体と、突出部19Bの段差面19D及び曲面19Kの全体と、が視認可能となっている。従って、型抜き開口44,46により、肉盛り突部42の外側面の全体と、突出部19Bの外面全体とが視認可能となっている。
【0032】
なお、型抜き開口44,46からはそれぞれフランジ45,47が四方に張り出している。フランジ45,47には、各開口より一回り大きな環状のOリング溝45A,47Aがそれぞれ形成されると共に、Oリング溝45A,47Aより外側に螺子孔が形成されている。そして、Oリング溝45A,47AにOリング(図示せず)が収容された状態で、図示しない蓋体がフランジ45,47に宛がわれて螺子止めされている。これにより、型抜き開口44,46が密閉される。
【0033】
本実施形態のガスメータ10の構成に関する説明は以上である。
図10には、メータケース11の遮断部屋30の断面と、その断面に対応した成形金型60の断面とが示されている。成形金型60は、メータケース11の上下方向で互いに接近及び離間する第1型60A及び第2型60Bと、前後方向H2で互いに接近及び離間する第3型60C及び第4型60Dとを有してなる。第2型60Bは、第1型60Aに接合した型閉じ位置(
図10に示した位置)から型抜き開口46を介して第1型60Aから離間する。一方、第4型60Dは、第3型60Cに接合した型閉じ位置(
図10に示した位置)から型抜き開口44を介して第3型60Cから離間する。
【0034】
そして、第1型60Aが一方の接続管23から下方に延びる縦流路F1の一部を成形し、第1型60Aと第4型60Dが縦流路F1の一部と横流路F2の一部を成形し、第2型60Bと第4型60Dが横流路F2の一部を成形する。ここで、第2型60Bと第4型60Dのパーティングラインは、螺子配置軸J1上であって、第2型60Bと第4型60Dとの協働により肉盛り突部42及び突出部19Bが形成されるようになっている。なお、第1型60Aと第4型60Dのパーティングラインは、突条43B上となっている。第1型60A及び第2型60Bが特許請求の範囲の「1対の第1開閉部」に相当し、第3型60D及び第4型60Dが特許請求の範囲の「1対の第2開閉部」に相当し、第2型60Bが特許請求の範囲の「一方の第1開閉部」に相当し、第4型60Dが特許請求の範囲の「一方の第2開閉部」に相当する。
【0035】
次に、このガスメータ10の作用効果について説明する。本実施形態のガスメータ10では、アルミのダイキャスト品であるメータケース11内に設けられた始端部屋30内の燃料ガスの流路は、一方の接続管23から下方に向かう縦流路F1と、縦流路F1の下端から横方向H1に向かう横流路F2とで構成される。そして、始端部屋30の一側壁であるメータケース11の弁装着壁14のうち横流路F2と対向する位置に、遮断弁20の弁体21が挿入される側部貫通孔14Aと、遮断弁20の固定用フランジ20Fを螺子止めするための雌螺子孔40,41が設けられると共に、これら雌螺子孔40,41又はそれらの下孔を内側に配置する肉盛り突部42と突出部19Bが始端部屋30内に突出するように設けられている。そして、本実施形態のガスメータ10では、メータケース11に、始端部屋30を後方と下方で開放する型抜き開口44,46を備えていて、これら型抜き開口44,46を通して、肉盛り突部42の外側面と突出部19Bの外面の全体を視認可能に構成されている。この構造により、メータケース11を金型成形する際のアンダーカットを小さくすることができる。従って、肉盛り突部42と突出部19Bの駄肉を少なくすることができ、遮断弁20の取り付け部分の空間が拡大されて圧力損失を低減することができる。
【0036】
ここで、例えば、
図11に示すように、メータケース11Vに、始端部屋30を開放する開口が型抜き開口46のみであった場合、雌螺子孔40又はその下孔を内側に配置する肉盛り突部42Vをアンダーカットを避けて形成しようとすると、肉盛り突部42Vの駄肉が多くなってしまい、圧力損失が大きくなるという問題が生じる。これに対して、本実施形態では、型抜き開口44,46を2つ備えることによって肉盛り突部42の駄肉を小さくして圧力損失を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、肉盛り突部42及び突出部19Bを上下方向に対して傾斜した螺子配置軸J1方向に配置したので、型抜き開口44,46の開口方向に型抜きする第2型60Bと第4型60Dのパーティングラインを螺子配置軸J1上に配置することができ、比較的簡単な形状の金型で成形することできる。
【0038】
また、本実施形態では、始端部屋30内の流路を縦流路F1と横流路F2とで構成し、横流路F2と対向する位置に遮断弁20が取り付けられる構成となっており、弁装着壁14の内面14Nから突出する肉盛り突部42及び突出部19Bの上方が縦流路F1により拡大されている。これによっても、圧力損失を低減することができる。
【0039】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態のガスメータ10では、メータケース11がアルミのダイキャスト品であったが、樹脂の射出成型品であってもよい。
【0040】
(2)前記実施形態のガスメータ10では、型抜き開口44,46は、メータケース11の後面と下面に形成されていたが、メータケース11の前面や上面に形成されていてもよい。
【0041】
(3)前記実施形態のガスメータ10では、雌螺子孔40,41は2つ形成されていたが、3つ以上形成されていてもよい。この場合、型抜き開口44,46の数を増やして、メータケース11の前面や上面にも形成して、雌螺子孔40等を内側に配置する全ての肉盛り突部42等の外側面の全体を視認可能に構成すればよい。
【0042】
(4)前記実施形態のガスメータ10は、超音波素子を利用して燃料ガスの流量を計測する構成になっていたが、流量の計測原理はどのようなものであってもよい。
【0043】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0044】
10 ガスメータ
10K 側面開口
11 メータケース
13K 弁収容部屋
14 弁装着壁(一側壁)
14A 側部貫通孔
15 側面蓋
17 前面開口
18 前面蓋
19B 突出部(肉盛り突部)
20 遮断弁
20F 固定用フランジ
21 弁体
22 駆動源
23,24 1対の接続管
30 始端部屋
33 終端部屋
40,41 雌螺子孔
42 肉盛り突部
44,46 型抜き開口
60 成形金型
60A 第1型(第1開閉部)
60B 第2型(一方の第1開閉部)
60C 第3型(第2開閉部)
60D 第4型(一方の第2開閉部)
99 ガス管
H1 横方向