(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182275
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】樹脂材とゴム材の接着方法、及びその方法を用いてなる樹脂材とゴム材の複合製品
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20221201BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20221201BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20221201BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20221201BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J5/02
B32B25/08
B05D7/02
B05D7/24 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089744
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】長塚 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石渡 莉奈
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA59
4D075AB01
4D075BB12Y
4D075CA13
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4D075DB39
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4F100AK01A
4F100AK18A
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4F100JL11
4J040JA01
4J040MA10
4J040MA12
4J040MB05
4J040PA15
4J040PA17
4J040PA29
(57)【要約】
【課題】樹脂材とゴム材の接着強度を向上させ、より剥離が生じにくい複合製品とするゴム材と樹脂材の接着方法、及びその方法を用いた樹脂材とゴム材の複合製品を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂材1とゴム材3の接着方法であって、樹脂材1の表面を粗面に処理する表面処理工程と、処理された粗面1aに接着剤2を塗布する接着剤塗布工程と、樹脂材1の接着剤塗布面にゴム材3を加硫接着する加硫接着工程とからなり、特に接着剤塗布工程では、超音波照射等による振動環境下において樹脂材1に接着剤2を塗布する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材とゴム材の接着方法であって、
前記樹脂材の表面を粗面に処理する表面処理工程と、
前記処理された粗面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記樹脂材の接着剤塗布面にゴム材を加硫接着する加硫接着工程とからなり、
前記接着剤塗布工程は、振動環境下において前記樹脂材に前記接着剤を塗布することを特徴とする樹脂材とゴム材の接着方法。
【請求項2】
前記接着剤塗布工程は、振動発生装置の上方に振動板を介して前記樹脂材が載置され、前記樹脂材が振動されるなか前記接着剤が塗布されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂材とゴム材の接着方法。
【請求項3】
前記接着剤塗布工程は、振動発生装置の上方に振動槽が載置され、前記振動槽に入れた前記接着剤に前記樹脂材が浸漬された状態で、前記樹脂材が振動されるなか接着剤が塗布されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂材とゴム材の接着方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の樹脂材とゴム材の接着方法を用いて、樹脂材とゴム材を加硫接着することを特徴とする樹脂材とゴム材の複合製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材とゴム材を接着する方法、及びその方法を用いて樹脂材とゴム材を加硫接着させてなる樹脂材とゴム材の複合製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂材とゴム材を接着させてなる複合製品において、その接着方法には、
図3(a)に示すように、樹脂材1の表面に例えばレーザー照射による表面処理を施し、その処理面を粗面(細かな凹凸面)1aとする表面処理工程(1)と、
図3(b)に示すように、表面材処理工程(1)の後、樹脂材の処理面である粗面1aに接着剤2を塗布する接着剤塗布工程(2)と、
図3(c)に示すように、接着剤塗布工程(2)の後、樹脂材1の接着剤の上にゴム材3を加硫接着する加硫接着工程(3)と、の三工程を経る接着方法がある。
このような樹脂とゴムの加硫接着方法は従来から行われており、特にゴム材との加硫接着不足に起因する接着剥離を防止する目的において、例えば特許文献1に記載のように、表面処理工程において樹脂材の表面の平均な表面粗さを0.1以上とする表面処理を施し、その後、当該処理面に接着剤を塗布してゴム材を加硫接着する方法がある。
【0003】
しかるに、このような加硫接着方法では、たとえ表面粗さを0.1以上として加硫接着したとしてもそれだけではゴム材と樹脂材との強固な接着を十分に確保することができず複合製品に剥離が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、樹脂材とゴム材の接着強度を向上させ、より剥離が生じにくい複合製品とするゴム材と樹脂材の接着方法、及びその方法を用いてなる樹脂材とゴム材の複合製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する第一の発明は、樹脂材とゴム材の接着方法であって、
前記樹脂材の表面を粗面に処理する表面処理工程と、
前記処理された粗面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記樹脂材の接着剤塗布面にゴム材を加硫接着する加硫接着工程とからなり、
前記接着剤塗布工程は、振動環境下において樹脂材に接着剤を塗布することを特徴とする。
第二の発明は、第一の発明において、前記接着剤塗布工程は、振動発生装置の上方に振動板を介して前記樹脂材が載置され、前記樹脂材が振動されるなか前記接着剤が塗布されることを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明において、前記接着剤塗布工程は、振動発生装置の上方に振動槽が載置され、前記振動槽に入れた前記接着剤に前記樹脂材が浸漬された状態で、前記樹脂材が振動されるなか前期接着剤が塗布されることを特徴とする。
第四の発明は、前記第一の発明乃至第三の発明のいずれかに記載の樹脂材とゴム材の接着方法を用いて、樹脂材とゴム材を加硫接着してなる樹脂材とゴム材の複合製品である。
【0007】
このような樹脂材とゴム材の接着方法において、接着剤塗布工程において、振動発生装置による振動環境下で樹脂材に振動を加えることで、接着剤が樹脂材の粗面の凹部のさらに深くまで入り込むように塗布され、これによって樹脂材と接着剤の接着保持力が一段と向上し、その結果、樹脂材とゴム材の接着がより強固になされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂材とゴム材の接着強度を向上させ、より剥離が生じにくい複合製品とするゴム材と樹脂材の接着方法、及びその方法を用いてなる樹脂材とゴム材の複合製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の樹脂材とゴム材の接着方法の接着剤塗布工程において、振動板を用いた実施形態1を示す概略図である。
【
図2】本発明の樹脂材とゴム材の接着方法の接着剤塗布工程において、振動槽を用いた実施形態2を示す概略図である。
【
図3】従来技術の樹脂材とゴム材の接着方法の全工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、樹脂材の表面を粗面に処理する表面処理工程(1)と、その処理面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程(2´)と、樹脂材の接着剤塗布面にゴム材を加硫接着する加硫接着工程(3)と、からなり、特に接着剤塗布工程(2´)は、超音波照射による振動環境下で樹脂材に接着剤を塗布することを特徴とする樹脂材とゴム材の接着方法である。このような工程を経る結果、樹脂材とゴム材とからなる複合製品が出来上がる。
【0011】
先ず、従来技術の
図3(a)に示した表面処理工程(1)と同じく、平板状の樹脂材1の表面に炭酸ガスレーザー処理を施し、その処理面を細かな凹凸部が形成された粗面1aとする。このような表面処理をすることは、粗面とする以外に樹脂材1の表面に付着するゴミやオイル等の付着物を除去させ、接着工程の前処理となる脱脂洗浄が不要となる効果がある。
【0012】
レーザー照射処理の種類には、炭酸ガスレーザー以外に、液体レーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどが想定される。いずれの処理方法も樹脂材1にレーザーを照射することにより樹脂材1の表面が活性化され表面の結合を切断することによって細かい凹凸部からなる粗面1aが形成されて表面積が拡張されるため、接着力を増加させることができる。また、このようなレーザー処理のメリットとして、レーザーの種類、強度(光子数)を容易に制御可能である。
なお、表面処理手段としては、レーザー処理の他に、ブラスト処理、プラズマ処理、コロナ処理なども適用可能である。
【0013】
この内、ブラスト処理は、水(湿式法)と圧縮空気流(乾式法)の方法があって、混入させた細粒状の投射材を樹脂材1の表面に吹付け、その処理面を細かな凹凸面の粗面にするものである。この投射材の種類、粒径、噴射圧を変えることで表面粗さを適宜処理することができる。
【0014】
また、プラズマ処理、コロナ処理は、表面がエッチングされて目的の粗面(細かな凹凸面)にするとともに表面層の親水性化あるいは疎水性化等の化学処理も同時に行ない表面形状を接着させるものである。
【0015】
本実施形態における樹脂材1は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフッ素樹脂系の板状物又は表面にフッ素樹脂を塗布した板状物である。なお、これに限定されるものではなく、例えば、フッ素樹脂系のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の他に、テトラフルオロエチレン/へキサフルオロプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)なども可能である。
【0016】
次に、
図3(b)と同様の接着剤塗布工程(2´)により、樹脂材1の粗面処理した粗面1aに接着剤2を塗布する。
本実施形態において接着剤塗布工程(2´)は、後述の超音波振動発生装置4を用いて、超音波照射による振動環境の下で接着剤2を塗布するようにした。これにより、樹脂材1とゴム材3との接着強度が向上し、より剥離が生じにくくなる効果を奏する(後述の剥離試験結果を参照)。
上記の接着剤2を塗布する方法には、例えば、粗面1a上にスプレーする方法、樹脂材1を浸漬する方法、粗面1a上に刷毛で塗布する方法等が挙げられるが、必要に応じて適当な方法を選択する。
【0017】
接着剤2としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、シリコン樹脂などの各種樹脂材を主成分として含有する加硫接着剤2(以下、単に接着剤2という。)が用いられる。本実施形態においての接着剤2は、株式会社東洋科学研究所製の商品名「メタロック」(登録商標、以下省略)を用いている。なお、使用する接着剤2の種類や塗布量は、接着剤塗布工程(2´)で用いる樹脂材1の種類、必要とされる接着力等に応じて適宜決定される。
【0018】
最終工程は、
図3(c)に示すように、上記の接着剤塗布工程(2´)を経た樹脂材1にゴム材3を接着する加硫接着工程(3)となる。
この加硫接着工程は、樹脂材1における接着剤2の上にゴム材3を加硫接着させる工程である。これにより樹脂材1とゴム材3の複合製品となる。加硫接着方法は、本実施形態では、金型の凹部(キャビティ)に接着された樹脂材1とゴム材3を入れて圧縮成形機で加圧して硬化させるコンプレッション成型を用いているが、例えば、インジェクション成型(射出成形)など一般的な加硫成形手段であっても本実施範囲である。
【0019】
上記の説明のとおり、本発明では、樹脂材とゴム材の接着方法である樹脂材の表面を粗面に処理する表面処理工程(1)と、その処理面に、超音波振動発生装置4を稼働させて樹脂材1を振動させて接着剤を塗布する接着剤塗布工程(2´)と、樹脂材1の接着剤塗布面にゴム材3を加硫接着する加硫接着工程(3)と、を経ることで、樹脂材1とゴム材3を加硫接着してなる複合製品が提供される。
【0020】
本発明では、接着剤塗布工程(2´)に特別な技術的特徴を有するため、ここでは、超音波振動発生装置4上に載置した樹脂材1にスプレーにより塗布する実施形態1と、接着剤2を入れた振動槽6に樹脂材1を浸漬して塗布する実施形態2について、それぞれ詳しく説明する。なお、本接着剤塗布工程(2´)は、超音波振動による実施形態で説明を行うが、超音波以外の振動でも実施可能であり超音波振動に本発明が限定されるものではない。また、本発明は、スプレーにより塗布する実施形態1と、接着剤2を入れた振動槽6に樹脂材1を浸漬して塗布する実施形態2に何ら限定されるものではない。
【0021】
[実施形態1]
先ず実施形態1の接着剤塗布工程(2´)は、超音波振動発生装置4の上方に振動板5を介して樹脂材1が載置され、樹脂材1が振動されるなか接着剤2が塗布される。具体的には、
図1に示すように、超音波振動発生装置4の上方に樹脂材1の底面よりやや大きい所定の板状の振動板5が載置され、その振動板5の上面には、平板状の樹脂材1が表面処理した粗面1aを上側にして載置される。超音波振動発生装置4は、内部に超音波振動子が備えられており、この超音波振動子から上面に向かって超音波が照射され、その照射された超音波が振動板5を介して樹脂材1が振動される構造を有している。
ここでは、スプレー噴射による接着剤2の塗布であるため、後述する接着剤2を入れた振動槽6に浸漬する実施形態2と対比して超音波振動発生装置4本体への重量負荷が軽くなる。また、振動板5の底面が樹脂材1の底面よりも広いことから樹脂材1の粗面1aの全面に渡って行き届いて超音波が照射され照射漏れが無くなる。
【0022】
そして、上記のとおり樹脂材1が載置された後、超音波振動発生装置4の電源を入れて稼働させ振動板5を介して樹脂材1をも振動させる。その樹脂材1が振動されるなかで、スプレーにより接着剤2を表面処理した粗面1aに吹きかける。このように、超音波振動発生装置4からの超音波照射による振動環境下において樹脂材1に接着剤2を吹きかけ、接着剤2が乾燥する前に振動を加えることで、スプレーの噴射力と相俟って接着剤2が樹脂材1の表面処理された粗面1aの凹部のさらに奥深くまで入り込むように塗布される。これにより、樹脂材1と接着剤2の接着保持力が一段と向上し、その結果、樹脂材1とゴム材3の接着がより強固となる。
【0023】
なお、本実施形態1では、下方に備えられた超音波振動発生装置4からの超音波照射による振動環境下において樹脂材1に接着剤2を吹きかけているが、超音波照射装置4を樹脂材1の上方や左右両側から超音波照射ができるような位置に備えた構成であっても構わない。例えば、振動板を介して直接的に樹脂材を振動させるのではなく、振動板を用いず、いわゆるホーン方式による超音波振動発生装置の超音波照射も想定される。
【0024】
本実施形態における超音波振動発生装置4により照射される超音波周波数は38kHzに設定され、このような超音波周波数は接着剤2が樹脂材1の表面処理された細かい粗面1aの凹部に深くまで入り込むのに適している。すなわち、超音波周波数による振動がスプレー噴射された接着剤2が粗面1a上で細かく攪拌され樹脂材1の粗面処理面の凹部内でも加速的に接着を促す効果を奏する。このような接着剤塗布工程(2´)では、超音波照射による振動環境の下での接着剤2の塗布するような工程内容を加えるだけで、従来の接着剤塗布工程(2)よりもさらにゴム材3と樹脂材1を強固に接着させることができる。なお超音波周波数は38kHzに設定しているが、樹脂材1の種類、接着剤2及び粗面状態等に応じて適宜決定される。例えば、樹脂材1の粗面1aに向けて照射される超音波周波数を変化(スイープ)させて適切な選択を行うことができる。また、振動板5の部材は、軽量で振動が良く伝導する金属製のステンレス板を用いているが、これに限定されるものではない。
【0025】
[実施形態2]
次に、実施形態2の接着剤塗布工程(2´)は、超音波振動発生装置4の上方に振動槽6が載置され、この振動槽6に入れた接着剤2に樹脂材1が浸漬された状態で、樹脂材1が振動されるなかで接着剤2が塗布される。具体的には、
図2に示すように、樹脂材1の厚みより十分に大きい深さ寸法を有する断面視凹状(枡状)の振動槽6の底面に、平板状の樹脂材1が表面処理した粗面1aを上側にして載置される。振動槽6には、樹脂材1の粗面1aが十分に浸る量の接着剤2が入っており、この接着剤2に樹脂材1が浸漬された状態で、超音波振動発生装置4を稼働させ振動槽6を介して樹脂材1及び接着剤2をも振動させる。
【0026】
すなわち、超音波振動発生装置4の内部に備えられた超音波振動子から上面に向かって超音波が照射され、その超音波照射によって振動槽6を介して樹脂材1及び接着剤2が振動される。このような振動によって、接着剤2の樹脂材1への重み圧力も相俟ってむらがなく接着剤2が樹脂材1の表面処理された粗面1aの全体の凹部のさらに奥深くまで入り込み、その結果、樹脂材1と接着剤2の接着保持力が一段と向上し、樹脂材1とゴム材3の接着がより強固となる。また、振動槽6の底面が樹脂材1の底面よりも広いことから樹脂材1の粗面1aの全面に渡って超音波照射することができる。
よって、従来技術の振動を加えない環境下での接着剤2の塗布ではなくて、振動槽6内の接着剤2への浸漬による塗布であることから、接着剤2が樹脂材1の表面処理された細かい粗面1aの凹部のさらに奥深くまで入り込むように確実に塗布することができる。
【0027】
また、本実施形態2は前述の実施形態1と同じく、超音波振動発生装置4により照射される超音波周波数は38kHzに設定され、このような超音波周波数は接着剤2が樹脂材1の表面処理された細かい粗面1aの凹部に深くまで入り込むのに適している。
このように、接着剤塗布工程(2´)において、超音波振動発生装置4により照射される超音波周波数の振動環境の下において接着剤2の塗布するように工程内容を実施するだけ、従来の接着剤塗布工程(2)よりもさらにゴム材3と樹脂材1とを超音波振動が振動槽6内の接着剤2が攪拌され粗面1aの凹部内でも加速的に接着を促され強固に接着させることができる。
【0028】
なお、樹脂材1の粗面1aに照射される周波数や照射印加される時間は、樹脂材1の種類、接着剤2及び粗面1aの状態等に応じて適宜決定される。例えば、樹脂材1の粗面1aに向けて照射される超音波周波数を変化(スイープ)させて適切な選択を行う。
また、振動槽6の大きさについても、樹脂材1の大きさに応じて適宜決定され、その振動槽6の部材は、軽量で振動が良く伝導する金属製のステンレスを用いているが、これに限定されるものではない。
【0029】
なお、本実施形態2では、下方に備えられた超音波振動発生装置4による超音波照射による振動環境下において樹脂材1に接着剤2を塗布しているが、超音波照射装置4を樹脂材1の上方や左右両側から超音波照射できるような位置に備えた構成であっても構わない。例えば、振動槽を直接的に振動させるのではなく、いわゆるホーン方式による超音波振動発生装置の超音波照射も想定される。
【0030】
また、実施形態1の振動板5と実施形態2の振動槽6を上下または左右に組み合わせた実施形態も可能である。この場合には、振動させる対象が振動板5と振動槽6とに増えることから超音波振動発生装置4による超音波の照射パワーを一段と強くする必要がある。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。実施形態では振動発生装置の好適な例として超音波振動発生装置を採用したが、他にも例えば電磁式振動発生装置やモーターバイブレーターなど、種々の振動発生手段に代えることができる。さらにその他の構成においても、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0032】
[剥離試験]
上述の加硫接着方法の内、振動槽6に入れた接着剤2に樹脂材1を浸漬する実施形態2の方法について、超音波振動発生装置4を稼働させて樹脂材1を振動させた試験と、振動無しの試験について、剥離強度を測定し接着状態を評価した。
本剥離試験方法は、180度剥離試験用(JIS K6854-2)の治具を用いて、上記の複合製品を固定し、引張強度により接着力を比較した。試験方法の条件は次のとおりである。
・樹脂材:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
・ゴム材:フッ素ゴム
・接着剤:株式会社東洋科学研究所製のメタロック
・接着剤塗布:樹脂材を接着剤に浸漬
・レーザー:炭酸ガスレーザー
・超音波周波数:38kHz
・印加時間:30sec
・加硫接着方法:コンプレッション成型
・剥離試験方法:180度剥離試験法(JIS K6854-2)準拠
その剥離試験の結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
表1において、横軸Aに示すのは、実施形態2の構成において、超音波振動発生装置4による振動を加えていない従来の接着剤塗布工程(2)を経て製作された複合製品の試験片の結果であり、これに対し横軸Bに示すのは、同じく実施形態2の構成において、超音波振動発生装置4による超音波振動を加えた本発明による接着剤塗布工程(2´)を経て製作された複合製品の試験片の結果である。縦軸は、剥離強度の数値(単位:N/mm)を示している。
【0035】
上記剥離試験より、実施形態2の詳細な説明のとおり、ゴム材3と樹脂材1との良好な接着性が確認された。具体的には、表1の対比に示されているとおり、接着剤2に樹脂材1を浸漬しただけで振動無しの試験片Aの剥離強度は、約1.17N/mmであるのに対し、接着剤2に樹脂材1を浸漬して振動ありとした試験片Bの剥離強度は、約1.29N/mmである。
したがって、振動ありは振動無しに比べ十分な接着を確保することができ、樹脂材1とゴム材3の接着強度が向上し、より剥離が生じにくくなる複合製品が提供できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0036】
1 樹脂材
1a 粗面(凹凸部)
2 接着剤
3 ゴム材
4 超音波振動発生装置
5 振動板
6 振動槽