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特開2022-182277情報処理装置、情報処理方法および自律移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182277
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および自律移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221201BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089746
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤橋 遼太
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】計算コストを抑制しながらも高精度に環境認識を行い得るようにする。
【解決手段】自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する。例えば、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合に2次元でのデータ蓄積を行うように設定する。また、例えば、3次元でのデータ蓄積の解像度を、X,Y,Zの3軸における軸方向毎に、あるいは高さに応じて、設定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部を備える
情報処理装置。
【請求項2】
前記蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合に2次元でのデータ蓄積を行うように設定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、X,Y,Zの3軸における軸方向毎に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、高さに応じて設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の走行面付近の高さ部分、または空中、頭上の障害物に対応する高さ部分では、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が脚である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、前記脚が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が脚である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、前記脚の置き場を判断できる解像度に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が車輪である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、前記車輪が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が車輪である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、走行面の連続性を判断できる解像度に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記蓄積方法設定部は、既知環境にある場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、前記既知環境に対応した解像度に設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記蓄積方法設定部は、未知環境にある場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、デフォルトの解像度に設定する
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度の変更が必要な特定環境が検出された場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、前記特定環境に応じた解像度に変更設定する
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記蓄積方法設定部は、前記タスク内容で特定される対象物が検出された場合、該対象物に対応した部分では、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された前記測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する手順を有する
情報処理方法。
【請求項17】
測距データを取得するセンサ部と、
駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、前記測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部と、
前記蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された前記測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部と、
前記障害部検出部の障害物検出結果に基づいて移動を制御する移動制御部を備える
自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報処理装置、情報処理方法および自律移動体に関し、詳しくは自律移動のための測距データの蓄積に係る情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットなどの自律移動体が移動するには、空間の立体的な構造から移動可能か否かの判断が必要となる。従来、空間の立体的な構造を認識する環境認識技術として、“Voxel grid”、“mesh”、“height map”などが提案されている。
【0003】
“Voxel grid”や“mesh”は、3次元環境認識技術であって、周囲の環境を3次元で認識する必要があるため、計算コストが高く他のシステムの性能低下につながる。一方、“height map”は、2.5次元環境認識技術であって、3次元環境認識技術に比べれば計算コストを抑制できるものの、「くぐる」などの動作ができない。例えば、特許文献1には、3次元環境認識技術および2.5次元環境認識技術についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-011880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本技術の目的は、計算コストを抑制しながらも高精度に環境認識を行い得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の概念は、
自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部を備える
情報処理装置にある。
【0007】
本技術において、蓄積方法設定部により、自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法が設定される。
【0008】
例えば、蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合に2次元でのデータ蓄積を行うように設定する、ようにされてもよい。これにより、環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0009】
また、例えば、蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する、ようにされてもよい。これにより、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0010】
この場合、例えば、蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度を、X,Y,Zの3軸における軸方向毎に設定する、ようにされてもよい。これにより、解像度を細かくする必要がある軸方向の解像度のみを細かく設定し、その他の軸方向の解像度は粗く設定でき、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0011】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度を、高さに応じて設定する、ようにされてもよい。これにより、解像度を細かくする必要がある高さ部分のみを細かく設定し、その他の高さ部分は粗く設定でき、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0012】
例えば、蓄積方法設定部は、自律移動体の走行面付近の高さ部分、または空中、頭上の障害物に対応する高さ部分では、3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する、ようにされてもよい。この場合、自律移動体の走行面付近の高さ部分、または空中、頭上の障害物に対応する高さ部分の環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0013】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、自律移動体の駆動機構が脚である場合、3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、脚が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、脚が乗り越えられる高さの判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0014】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、自律移動体の駆動機構が脚である場合、3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、脚の置き場を判断できる解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、脚の置き場の判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0015】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、自律移動体の駆動機構が車輪である場合、3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、車輪が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、車輪が乗り越えられる高さの判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0016】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、自律移動体の駆動機構が車輪である場合、3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、走行面の連続性を判断できる解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、走行面の連続性の判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0017】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、既知環境にある場合、3次元でのデータ蓄積の解像度を、既知環境に対応した解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0018】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、未知環境にある場合、3次元でのデータ蓄積の解像度を、デフォルトの解像度に設定する、ようにされてもよい。これにより、ある程度の精度での環境認識を行うことが可能となる。
【0019】
例えば、蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度の変更が必要な特定環境が検出された場合、3次元でのデータ蓄積の解像度を、特定環境に応じた解像度に変更設定する、ようにされてもよい。これにより、特定環境の環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0020】
また、この場合、例えば、蓄積方法設定部は、タスク内容で特定される対象物が検出された場合、この対象物に対応した部分では、3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する、ようにされてもよい。これにより、タスク内容で特定される対象物の認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0021】
また、例えば、蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部をさらに備える、ようにされてもよい。この場合、障害物検出部は、計算コストを抑制しながらも高精度に障害物検出、つまり環境認識を行うことが可能となる。
【0022】
このように本技術においては、自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定するものであり、計算コストを抑制しながらも高精度に環境認識を行うことが可能となる。
【0023】
また、本技術の他の概念は、
自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する手順を有する
情報処理方法にある。
【0024】
また、本技術の他の概念は、
測距データを取得するセンサ部と、
駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、前記測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部と、
前記蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された前記測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部と、
前記障害部検出部の障害物検出結果に基づいて移動を制御する移動制御部を備える
自律移動体にある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】2D(2.5次元環境認識)モードおよび3D(3次元環境認識)のデータ蓄積方法を説明するための図である。
図2】3次元でのデータ蓄積における軸方向毎の解像度の切り替えについて説明するための図である。
図3】3次元でのデータ蓄積における軸方向毎の解像度の切り替えの一例(段差検出例)を示す図である。
図4】3次元でのデータ蓄積における軸方向毎の解像度の切り替えの一例(坂道検出例)を示す図である。
図5】3次元でのデータ蓄積における高さでの解像度の切り替えについて説明するための図である。
図6】3次元でのデータ蓄積における高さでの解像度の切り替えの一例(段差、坂道検出例)を示す図である。
図7】実施の形態としての自律移動体の構成例を示すブロック図である。
図8】データ蓄積方法設定部、データ蓄積部.障害物検出部および障害物マップ生成部における一連の処理を示すフローチャートである。
図9】データ蓄積方法設定部における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定の処理手順の一例を示す図である。
図10】データ蓄積方法設定部における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定の処理手順の他の一例を示す図である。
図11】データ蓄積方法設定部における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定の処理手順の他の一例を示す図である。
図12】データ蓄積方法設定部における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定の処理手順の他の一例を示す図である。
図13】コンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0027】
<1.実施の形態>
[本技術に関する説明]
本技術は、計算コストを抑制しながらも高精度に環境認識を行い得るようにすることを目的とするものであり、そのための種々のアプローチについて、説明する。
【0028】
まず、アプローチとして、何を切り替えるかという観点がある。この場合、例えば、以下の項目が一例として考えられる。
(1)必要に応じて、軸毎の解像度を切り替える
(2)必要に応じて、越えられる高さまで細かい解像度で認識する
(3)走行環境によって解像度を切り替える
(4)必要に応じて、3D(3次元環境認識)モードまたは2D(2.5次元環境認識)モードに切り替える
【0029】
また、アプローチとして、何をトリガに切り替えるかという観点がある。この場合、例えば、以下の項目が一例として考えられる。ここで、(1)~(4)は事前情報として与えられ、(5)は移動時(走行時)に判断される。
(1)移動体の条件(機構、性能)
(2)タスク内容
(3)予めツールで人がエリアを指定する
(4)既存の地図に埋め込まれた情報を利用する
(5)坂や崖などの存在を認識する認識器を導入する
【0030】
アプローチの具体例について説明する。
【0031】
「アプローチ1」
アプローチ1としての、3Dモードと2Dモードの切り替えについて説明する。
【0032】
2D(2.5次元環境認識)モードの場合、図1(a)に示すように、自律移動体の周辺に2次元グリッドが設定され、それぞれの2次元グリッド対応して、その2次元グリッドに対応する所定数の測距データの中のZ方向の最大値(高さ情報)を持つように、データ蓄積が行われる。以下、これを、適宜、2次元(2D)でのデータ蓄積、と呼ぶことにする。
【0033】
3Dモードの場合、図1(b)に示すように、自律移動体の周辺に3次元グリッドが設定され、それぞれの3次元グリッド対応して、その3次元グリッドに測距データが属するか否かを示す情報を持つように、データ蓄積が行われる。以下、これを、適宜、3次元(3D)でのデータ蓄積、と呼ぶことにする。
【0034】
2Dモードで環境認識を充分に行い得るときは、計算コスト、データ量削減のため、2次元(2D)でのデータ蓄積を行うことが考えられる。
【0035】
3Dモードでの環境認識が必要な場合として、例えば、以下が考えられる。
(1)走行面を検出する場合
(2)物をつかむなど、物体形状を認識する場合
(3)トンネルをくぐるなど空中の物体を検出する場合
(4)坂道を検出する場合
【0036】
2Dモードでの環境認識でもよい場合として、例えば、以下が考えられる。
(1)屋内など平面であることが分かっている場合
(2)坂道を移動中の場合(坂道を検出するまでは3D)
【0037】
「アプローチ2」
アプローチ2としての、3次元でのデータ蓄積における軸方向毎の解像度の切り替えについて説明する。ロボットや車両のように地上を移動(走行)する自律移動体では、特に地面に垂直な方向(Z軸方向)の障害物(段差)などに警戒する必要がある。
【0038】
図2(a)は、3次元でのデータ蓄積における解像度が粗い場合、つまり3次元グリッドのサイズが大きい場合を示している。この場合には、環境認識の精度は低いが、計算コストは低くできる。図2(b)は、3次元でのデータ蓄積における解像度が細かい場合、つまり3次元グリッドのサイズが小さい場合を示している。この場合には、環境認識の精度は高いが、計算コストは高くなる。
【0039】
図2(c)は、3次元でのデータ蓄積における解像度に関して、精度が要求される軸方向、この例ではZ軸方向の解像度のみを細かくした場合を示している。この場合、精度が要求される軸方向では環境認識の精度を充分に確保でき、かつ3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、図2(b)の場合と比べて、計算コストを抑制することが可能となる
【0040】
図3は、段差検出を例にしたものである。図3(a)は、3次元グリッドのサイズが大きい場合、従って解像度が粗い場合を示している。この場合、大きな段差と小さな段差に対応した3次元グリッドのZ方向位置は同一であることから、乗り越えられる段差と乗り越えられない段差の判断ができないものとなる。
【0041】
図3(b)は、3次元グリッドのサイズが小さい場合、従って解像度が細かい場合を示している。この場合、大きな段差と小さな段差に対応した3次元グリッドのZ方向位置は段差の大きさに対応したものとなることから、乗り越えられる段差と乗り越えられない段差の判断は可能となるが、計算コストが高くなる。
【0042】
図3(c)は、精度が要求される地面に垂直な方向(Z軸方向)の解像度のみを細かくした場合を示している。この場合、図3(b)の場合と同様に段差の高さを精度よく判断でき、かつ図3(b)の場合に比べて全体の3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、計算コストを抑制することが可能となる。
【0043】
図4は、坂道検出を例にしたものである。図4(a)は、3次元グリッドのサイズが大きい場合、従って解像度が粗い場合を示している。この場合、坂道の表面に対応した3次元グリッドのZ方向位置は全て同一であることから、坂道と平地との判断ができないものとなる。
【0044】
図4(b)は、3次元グリッドのサイズが小さい場合、従って解像度が細かい場合を示している。この場合、坂道の表面に対応した3次元グリッドのZ方向位置はその表面の位置に対応したものとなることから、坂道と平地との判断は可能となるが、計算コストが高くなる。
【0045】
図4(c)は、精度が要求される地面に垂直な方向(Z軸方向)の解像度のみを細かくした場合を示している。この場合、図4(b)の場合と同様に坂道を精度よく判断でき、かつ図4(b)の場合に比べて全体の3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、計算コストを抑制することが可能となる。
【0046】
「アプローチ3」
アプローチ3としての、3次元でのデータ蓄積における高さでの解像度の切り替えについて説明する。ロボットや車両のように地上を移動(走行)する自律移動体では、走行面付近(足元付近)は細かく情報を得たいが、それ以上のところでは障害物を避けられる程度の解像度でよい。
【0047】
図5(a)は、3次元でのデータ蓄積における解像度が粗い場合、つまり3次元グリッドのサイズが大きい場合を示している。この場合には、環境認識の精度は低いが、計算コストは低くできる。図5(b)は、3次元でのデータ蓄積における解像度が細かい場合、つまり3次元グリッドのサイズが小さい場合を示している。この場合には、環境認識の精度は高いが、計算コストは高くなる。
【0048】
図5(c)は、3次元でのデータ蓄積における解像度に関して、ある高さまでの解像度のみを細かくした場合を示している。この場合、精度が要求される高さでは環境認識の精度を充分に確保でき、かつ3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、図5(b)の場合と比べて、計算コストを抑制することが可能となる。
【0049】
図6(a)は、走行面の段差や坂道の検出を例にしたものであり、走行面付近の高さ部分の解像度のみ細かくした場合を示している。この場合、走行面の段差や坂道を精度よく判断でき、かつ全体の3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、計算コストを抑制することが可能となる。
【0050】
なお、図6(b)は、空中、頭上の障害物検出を例にしたものであり、空中、頭上の障害物に対応する高さ部分の解像度のみを細かくした場合を示している。この場合、空中、頭上の障害物を精度よく判断でき、かつ全体の3次元グリッドの個数、従ってデータ個数を抑制でき、計算コストを抑制することが可能となる。
【0051】
「アプローチ4」
アプローチ4としての、3次元でのデータ蓄積における移動(走行)環境による解像度の切り替えについて説明する。
【0052】
屋内環境や路面が舗装されていて、凹凸がほとんどない環境では、解像度を粗くする。また、路面が不整地であれば、解像度を細かくする。この場合、自律移動体が移動(走行)する路面の事前情報に基づいて、あるいは、センサデータから路面の状況を検出して、解像度を切り替えることができる。
【0053】
また、最初は解像度を細かく設定するが、自律移動体の走行に影響がないものしか検出されない場合には解像度を粗くして、計算コストを抑えることが考えられる。また、例えば人などの障害物をセンサデータから直接検出する検出器を導入することで、蓄積データでは路面の状況だけを認識すればよくなるので、路面以外の部分では解像度を粗くすることが可能となる。
【0054】
「自律移動体の走行制御装置の構成」
図7は、実施の形態としての自律移動体100の構成例を示している。この自律移動体100は、事前情報記憶部101と、自己位置推定部102と、センサ部103と、環境・タスク対象物認識部104と、データ蓄積方法設定部105と、データ蓄積部106と、障害物検出部107と、障害物マップ生成部108と、走行制御部109を有している。
【0055】
事前情報記憶部101は、事前情報を記憶する。事前情報として、例えば、自律移動体100の駆動機構や移動性能の情報、タスク内容の情報、事前自図の情報、などがある。なお、事前情報としては、ここにあげるものに限定されるものではなく、その他の情報がさらにあってもよい。
【0056】
駆動機構の情報は、例えば脚とか車輪とかを示す情報である。移動性能の情報は、例えばどの程度の高さの段差までは乗り越えられるとか、どの程度の穴であれば落ちることがないので認識しなくてもよいとかを示す情報である。
【0057】
また、タスク内容の情報は、自律移動体100が行う移動以外に行う動作を示す情報であり、少なくともその動作に係る物体(タスク対象物)の情報を含んでいる。例えば、自律移動体100がドアを開けるという動作を行う場合には、対象物はドアノブである。また、例えば、自律移動体100がマニピュレータで物を把持して運ぶという動作を行う場合には、タスク対象物は把持する物である。また、例えば、自律移動体100が、ある人物を見つけてその人物についていくという動作を行う場合には、タスク対象物はある人物である。
【0058】
事前地図の情報は、自律移動体が移動する範囲の位置情報である。この事前地図の情報には、例えば、位置に関連付けて、この位置は3Dモードではなく2Dモードでよいというような情報が埋め込まれている。また、この事前地図の情報には、自律移動体100が既に移動している位置であって、3Dモード対象の位置に関しては、既知環境として、その移動の際に決定された3次元でのデータ蓄積における解像度の情報が埋め込まれている。この事前地図は、自律移動体100の移動に伴って、未知環境が既知環境に変化するように更新されていく。
【0059】
自己位置推定部102は、IMU(Inertial Measurement Unit)やGPS(Global Positioning System)などの取得情報に基づいて、自律移動体100の自己位置を推定する。センサ部103は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)、デプスカメラ、ToF(Time Of Flight)、イメージセンサなどの種々のセンサを含んでいる。
【0060】
環境・タスク対象物認識部104は、センサ部103に含まれる例えばイメージセンサの出力を解析して、自律移動体101の周辺環境を認識し、さらには自律移動体101のタスク内容に係る対象物(タスク対象物)を検出する。なお、タスク内容に係る対象物の情報は、上述したように事前情報記憶部101に存在する。
【0061】
データ蓄積方法設定部105は、周期的に、自律移動体100の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、センサ部103に含まれるLiDAR等の測距センサで得られる測距データの蓄積方法を設定する。このデータ蓄積方法設定部105には、事前情報記憶部101に記憶されている各種情報、自己位置推定部102で推定された自己位置の情報、環境・タスク対象物認識部104で得られる周辺環境やタスク対象物の認識情報などが、蓄積方法を決定するための参照情報として与えられる。
【0062】
データ蓄積方法設定部105は、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合には2次元でのデータ蓄積を行うように設定する。また、データ蓄積方法設定部105は、3次元でのデータ蓄積を行うように設定する場合、さらにその3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する。なお、データ蓄積方法設定部105におけるデータ蓄積方法の設定についてはさらに後述する。
【0063】
データ蓄積部106は、周期的に、センサ部103に含まれるLiDAR等の測距センサで得られた測距データを、データ蓄積方法設定部105で設定された方法で蓄積する。すなわち、データ蓄積方法として2次元でのデータ蓄積が設定された場合には、LiDAR等の測距センサで得られる測距データは2次元の統合処理を経て2次元(2D)でのデータ蓄積が行われる(図1(a)参照)。また、データ蓄積方法として3次元でのデータ蓄積が設定された場合には、さらに設定された解像度に基づき、LiDAR等の測距センサで得られる測距データは3次元の統合処理を経て3次元(3D)でのデータ蓄積が行われる(図1(b)参照)。
【0064】
障害物検出部107は、データ蓄積部106における蓄積データに基づいて、障害物を検出する。この場合、2次元(2D)でのデータ蓄積が行われている位置では2次元での障害物検出が行われ、3次元(3D)でのデータ蓄積が行われている位置では3次元での障害物検出が行われる。
【0065】
障害物マップ生成部108は、障害物検出部107で検出された障害物に基づいて、障害物マップを生成する。この場合、2次元での障害物検出が行われた場合には2次元での障害物マップが生成され、3次元での障害物検出が行われた場合には、3次元での障害物マップが生成される。
【0066】
走行制御部109は、障害物マップ生成部108で生成された障害物マップに基づいて、自律移動体100の移動(走行)を制御する。なお、走行制御部109は、自律移動体100のタスク内容に係る対象物に対する動作についても、この障害物マップに基づいて制御する。例えば、自律移動体100がドアを開けるという動作を行う場合には、障害物マップに基づいてタスク対象物であるドアノブを精度よく認識し、自律移動体100がドアノブを適切に操作してスムーズにドアを開けるように制御する。
【0067】
「データ蓄積方法の設定などの詳細」
図8のフローチャートは、データ蓄積方法設定部105、データ蓄積部106.障害物検出部107および障害物マップ生成部108における一連の処理を示している。
【0068】
ステップST1において、データ蓄積方法設定部105は、3次元でのデータ蓄積を行うか2次元でのデータ蓄積を行うかを判断する。この場合、データ蓄積方法設定部105は、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合には2次元でのデータ蓄積を行うように設定する。これにより、環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0069】
3次元でのデータ蓄積の要否を判断は、例えば、事前地図に位置に対応づけて埋め込まれている3Dモードではなく2Dモードでよいというような情報に基づいて行われる。なお、この判断を、環境・タスク対象物認識部104からの自律移動体100の周辺環境の認識情報に基づいて判断することも可能である。例えば、データ蓄積方法設定部105は、自律移動体100が屋内などの平面部分等を移動している場合には2次元でのデータ蓄積を行うように判断できる。
【0070】
まず、ステップST1で3次元でのデータ蓄積を行うように設定される場合、ステップST2の処理に移る。このステップST2において、データ蓄積方法設定部105は、さらに、3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する。この場合、データ蓄積方法設定部105は、自律移動体100の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容などに基づいて、3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する。このように3次元でのデータ蓄積の解像度を設定することで、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0071】
ステップST2の処理の後、ステップST3の処理に移る。また、ステップST1で2次元でのデータ蓄積を行うように設定される場合、ステップST3の処理に移る。このステップST3において、データ蓄積部106は、センサ部103の測距センサで得られた測距データを、ステップST1,ST2においてデータ蓄積方法設定部105で設定された方法で蓄積する。
【0072】
次に、ステップST4において、障害物検出部107は、データ蓄積部106で蓄積された蓄積データに基づいて障害物を検出する。この場合、2次元(2D)でのデータ蓄積が行われた場合には2次元での障害物検出が行われ、3次元(3D)でのデータ蓄積が行われた場合には3次元での障害物検出が行われる。上述したように3次元でのデータ蓄積が必要ない場合には2次元でのデータ蓄積が行われ、また3次元でのデータ蓄積においても必要に応じて解像度が設定されてデータ蓄積が行われるので、計算コストを抑制しながらも高精度に障害物検出、つまり環境認識を行うことが可能となる。
【0073】
次に、ステップST5において、障害物マップ生成部108は、障害物検出部107で検出された障害物に基づいて、障害物マップを生成する。この場合、2次元での障害物検出が行われた場合には2次元での障害物マップが生成され、3次元での障害物検出が行われた場合には3次元での障害物マップが生成される。
【0074】
図9のフローチャートは、データ蓄積方法設定部105における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定(図8のステップST2参照)の処理手順の一例を示している。
【0075】
この例は、3次元でのデータ蓄積の解像度を、X,Y,Zの3軸における軸方向毎に設定する例である。このように軸方向毎に設定することで、解像度を細かくする必要がある軸方向の解像度のみを細かく設定し、その他の軸方向の解像度は粗く設定でき、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0076】
まず、データ蓄積方法設定部105は、ステップST11において、処理を開始する。そして、データ蓄積方法設定部105は、ステップST12において、3次元でのデータ蓄積の解像度をデフォルトの解像度に設定する。因みに、このデフォルトの解像度では、3次元グリッドのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のサイズは等しく、3次元グリッドは立方体形状である。
【0077】
次に、データ蓄積方法設定部105は、ステップST13において、自律移動体100の駆動機構は脚であるか車輪であるかを判断する。この場合、事前情報記憶部101に記憶されている駆動機構の情報に基づいて判断される。
【0078】
駆動機構が脚であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST14において、デフォルトの解像度で自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できるか否かを判断する。この場合、自律移動体100が乗り越えられる高さは、事前情報記憶部101に記憶されている移動性能の情報に基づいて認識される。
【0079】
自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できないとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST15において、自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できる程度まで、Z軸方向(垂直方向)の解像度を細かくする方向に、従って3次元グリッドのZ軸方向のサイズを小さくする方向に変更する。このようにZ軸方向の解像度を自律移動体100、つまりその脚が乗り越えられる高さを判断できる程度に設定することで、脚が乗り越えられる高さの判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0080】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST15の処理の後、ステップST16の処理に移る。なお、ステップST14で、デフォルトの解像度で自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できるとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちにステップST16の処理に移る。
【0081】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST16において、デフォルトの解像度で自律移動体100の脚の置き場を判断できるか否かを判断する。自律移動体100の脚の置き場を判断できないとき、ステップST17において、自律移動体100の脚の置き場を判断できる程度まで、X軸方向、Y軸方向(水平方向)の解像度を細かくする方向に、従って3次元グリッドのX軸方向、Y軸方向のサイズを小さくする方向に変更する。このようにX軸方向、Y軸方向の解像度を自律移動体100の脚の置き場を判断できる程度に設定することで、脚の置き場の判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0082】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST17の処理の後、ステップST18において、処理を終了する。
【0083】
また、ステップST13で駆動機構が車輪であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST19において、デフォルトの解像度で自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できるか否かを判断する。この場合、自律移動体100が乗り越えられる高さは、事前情報記憶部101に記憶されている移動性能の情報に基づいて認識される。
【0084】
自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できないとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST20において、自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できる程度まで、Z軸方向(垂直方向)の解像度を細かくする方向に、従って3次元グリッドのZ軸方向のサイズを小さくする方向に変更する。このようにZ軸方向の解像度を自律移動体100、つまりその車輪が乗り越えられる高さを判断できる程度に設定することで、車輪が乗り越えられる高さの判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0085】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST20の処理の後、ステップST21の処理に移る。なお、ステップST19で、デフォルトの解像度で自律移動体100が乗り越えられる高さを判断できるとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちにステップST21の処理に移る。
【0086】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST21において、デフォルトの解像度で走行面の連続性を判断できるか否かを判断する。走行面の連続性を判断できないとき、ステップST22において、走行面の連続性を判断できる程度まで、X軸方向、Y軸方向(水平方向)の解像度を細かくする方向に、従って3次元グリッドのX軸方向、Y軸方向のサイズを小さくする方向に変更する。このようにX軸方向、Y軸方向の解像度を走行面の連続性を判断できる程度に設定することで、走行面の判断に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0087】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST22の処理の後、ステップST18において、処理を終了する。なお、ステップST21で走行面の連続性を判断できるとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちに、ステップST18において、処理を終了する。
【0088】
図10のフローチャートは、データ蓄積方法設定部105における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定(図8のステップST2参照)の処理手順の他の一例を示している。
【0089】
この例は、3次元でのデータ蓄積の解像度を、高さに応じて設定する例である。このように高さに応じて設定することで、解像度を細かくする必要がある高さ部分のみを細かく設定し、その他の高さ部分は粗く設定でき、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0090】
まず、データ蓄積方法設定部105は、ステップST31において、処理を開始する。そして、データ蓄積方法設定部105は、ステップST32において、3次元でのデータ蓄積の解像度をデフォルトの解像度に設定する。
【0091】
次に、データ蓄積方法設定部105は、ステップST33において、段差、坂道等の判断が必要な環境か判断する。この判断は、例えば、環境・タスク対象物認識部104からの自律移動体100の周辺環境の認識情報に基づいて行われる。なお、事前地図に位置に対応づけて段差、坂道等の情報が埋め込まれている場合には、この情報に基づいて判断することも可能である。
【0092】
段差、坂道等の判断が必要な環境であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST34において、走行面付近の高さ部分の解像度を細かくする。これにより、段差、坂道等を高い精度で認識可能となる。この場合、自律移動体100の走行面付近の高さ部分の環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0093】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST34の処理の後、ステップST35の処理に移る。なお、ステップST33で、段差、坂道等の判断が必要な環境でないとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちにステップST35の処理に移る。
【0094】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST35において、空中、頭上の障害物、例えばトンネル、樹木の枝等の検出が必要な環境か判断する。例えば、この判断は、環境・タスク対象物認識部104からの自律移動体100の周辺環境の認識情報に基づいて行われる。なお、事前地図に位置に対応づけて空中、頭上の障害物の情報が埋め込まれている場合には、この情報に基づいて判断することも可能である。
【0095】
空中、頭上の障害物の検出が必要な環境であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST36において、空中、頭上の障害物に対応する所定の高さ部分の解像度を細かくする。これにより、空中、頭上の障害物を高い精度で認識可能となる。この場合、自律移動体100の空中、頭上の障害物に対応する高さ部分の環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0096】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST36の処理の後、ステップST37において、処理を終了する。また、ステップST35で空中、頭上の障害物の検出が必要な環境でないとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちに、ステップST37において、処理を終了する。
【0097】
図11のフローチャートは、データ蓄積方法設定部105における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定(図8のステップST2参照)の処理手順の他の一例を示している。
【0098】
まず、データ蓄積方法設定部105は、ステップST41において、処理を開始する。そして、データ蓄積方法設定部105は、ステップST42において、既知環境か否かを判断する。この場合、データ蓄積方法設定部105は、例えば、事前地図に位置に対応づけて、事前情報としての解像度の情報が埋め込まれているとき、自律移動体100が過去に移動したことがある既知環境であると判断する。
【0099】
既知環境であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST43において、3次元でのデータ蓄積の解像度を、事前地図に埋め込まれている事前情報による解像度に設定する。これにより、環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。データ蓄積方法設定部105は、ステップST43の処理の後、ステップST44において、処理を終了する。
【0100】
また、ステップST42で既知環境でないとき、すなわち未知環境であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST45において、3次元でのデータ蓄積の解像度をデフォルトの解像度に設定する。これにより、ある程度の精度での環境認識を行うことが可能となる。
【0101】
次に、データ蓄積方法設定部105は、ステップST46において、解像度の変更が必要な特定環境か否かを判断する。この判断は、例えば、環境・タスク対象物認識部104からの自律移動体100の周辺環境の認識情報に基づいて行われる。例えば、周辺環境が屋外である場合には、解像度を細かく設定しないと危険であるので、解像度の変更が必要な特定環境であると判断される。また、例えば、自律移動体100の周辺に多くの物体が存在する環境である場合には、解像度を細かく設定しないと危険であるので、解像度の変更が必要な特定環境であると判断される。
【0102】
解像度の変更が必要な特定環境であるとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST47において、その特定環境に応じた解像度に変更する。これにより、特定環境の環境認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。データ蓄積方法設定部105は、ステップST47の処理の後、ステップST44において、処理を終了する。また、ステップST46で解像度の変更が必要な特定環境でないとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちに、ステップST44において、処理を終了する。
【0103】
図12のフローチャートは、データ蓄積方法設定部105における3次元(3D)でのデータ蓄積の解像度設定(図8のステップST2参照)の処理手順の他の一例を示している。
【0104】
まず、データ蓄積方法設定部105は、ステップST51において、処理を開始する。そして、データ蓄積方法設定部105は、ステップST52において、3次元でのデータ蓄積の解像度をデフォルトの解像度に設定する。
【0105】
次に、データ蓄積方法設定部105は、ステップST53において、タスク内容による解像度変更をするか否かを判断する。タスク内容による解像度変更をするか否かは、例えば予めユーザにより設定され、その設定情報は事前情報記憶部101に記憶されている。データ蓄積方法設定部105は、事前情報記憶部101に記憶されているユーザ設定情報に基づいて、タスク内容による解像度変更をするか否かを判断する。
【0106】
タスク内容による解像度変更をするとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST54において、環境・タスク対象物認識部104でタスク対象物が検出されたか否かを判断する。タスク対象物が検出されたとき、データ蓄積方法設定部105は、ステップST55において、環境・タスク対象物認識部104で検出されたタスク対象物に対応する部分の解像度を細かくする。これにより、タスク内容で特定される対象物(タスク対象物)の認識の精度に影響を与えることなく、蓄積データ数を抑制して環境認識のための計算コストを抑制することが可能となる。
【0107】
データ蓄積方法設定部105は、ステップST55の処理の後、ステップST56において、処理を終了する。また、ステップST53でタスク内容による解像度変更をしないとき、およびステップST54でタスク対象物が検出されないとき、データ蓄積方法設定部105は、直ちに、ステップST56において、処理を終了する。
【0108】
「ソフトウェアによる処理」
上述の図8図12のフローチャートに示す処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0109】
図13は、コンピュータ400のハードウェア構成例を示すブロック図である。コンピュータ400は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、バス404と、入出力インタフェース405と、入力部406と、出力部407と、記憶部408と、ドライブ409と、接続ポート410と、通信部411を有している。なお、ここで示すハードウェア構成は一例であり、構成要素の一部が省略されてもよい。また、ここで示される構成要素以外の構成要素をさらに含んでもよい。
【0110】
CPU401は、例えば、演算処理装置または制御装置として機能し、ROM402、RAM403、記憶部408、またはリムーバブル記録媒体501に記録された各種プログラムに基づいて各構成要素の動作全般又はその一部を制御する。
【0111】
ROM402は、CPU401に読み込まれるプログラムや演算に用いるデータ等を格納する手段である。RAM403には、例えば、CPU401に読み込まれるプログラムや、そのプログラムを実行する際に適宜変化する各種パラメータ等が一時的または永続的に格納される。
【0112】
CPU401、ROM402、RAM403は、バス404を介して相互に接続される。一方、バス404には、インタフェース405を介して種々の構成要素が接続される。
【0113】
入力部406には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、及びレバー等が用いられる。さらに、入力部406としては、赤外線やその他の電波を利用して制御信号を送信することが可能なリモートコントローラ(以下、リモコン)が用いられることもある。
【0114】
出力部407には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD、又は有機EL等のディスプレイ装置、スピーカ、ヘッドホン等のオーディオ出力装置、プリンタ、携帯電話、又はファクシミリ等、取得した情報を利用者に対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置である。
【0115】
記憶部408は、各種のデータを格納するための装置である。記憶部408としては、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等が用いられる。
【0116】
ドライブ409は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体501に記録された情報を読み出し、またはリムーバブル記録媒体501に情報を書き込む装置である。
【0117】
リムーバブル記録媒体501は、例えば、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、HD DVDメディア、各種の半導体記憶メディア等である。もちろん、リムーバブル記録媒体501は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード、または電子機器等であってもよい。
【0118】
接続ポート410は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)、RS-232Cポート、または光オーディオ端子等のような外部接続機器502を接続するためのポートである。外部接続機器502は、例えば、プリンタ、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、またはICレコーダ等である。
【0119】
通信部411は、ネットワーク503に接続するための通信デバイスであり、例えば、有線または無線LAN、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または各種通信用のモデム等である。
【0120】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0121】
以上説明したように、本技術においては、自律移動体100の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定するものであり、計算コストを抑制しながらも高精度に環境認識を行うことが可能となる。
【0122】
<2.変形例>
なお、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0123】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0124】
また、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部を備える
情報処理装置。
(2)前記蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の要否を判断し、不要と判断する場合に2次元でのデータ蓄積を行うように設定する
前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)前記蓄積方法設定部は、3次元でのデータ蓄積の解像度を設定する
前記(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(4)前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、X,Y,Zの3軸における軸方向毎に設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(5)前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、高さに応じて設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(6)前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の走行面付近の高さ部分、または空中、頭上の障害物に対応する高さ部分では、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する
前記(5)に記載の情報処理装置。
(7)前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が脚である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、前記脚が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(8)前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が脚である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、前記脚の置き場を判断できる解像度に設定する
前記(3)または(7)に記載の情報処理装置。
(9)前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が車輪である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるZ軸方向の解像度を、前記車輪が乗り越えられる高さを判断できる解像度に設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(10)前記蓄積方法設定部は、前記自律移動体の駆動機構が車輪である場合、前記3次元でのデータ蓄積のX,Y,Zの3軸におけるX軸方向およびY軸方向の解像度を、走行面の連続性を判断できる解像度に設定する
前記(3)または(9)に記載の情報処理装置。
(11)前記蓄積方法設定部は、既知環境にある場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、前記既知環境に対応した解像度に設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(12)前記蓄積方法設定部は、未知環境にある場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、デフォルトの解像度に設定する
前記(11)に記載の情報処理装置。
(13)前記蓄積方法設定部は、前記3次元でのデータ蓄積の解像度の変更が必要な特定環境が検出された場合、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、前記特定環境に応じた解像度に変更設定する
前記(12)に記載の情報処理装置。
(14)前記蓄積方法設定部は、前記タスク内容で特定される対象物が検出された場合、該対象物に対応した部分では、前記3次元でのデータ蓄積の解像度を、他の部分より細かく設定する
前記(3)に記載の情報処理装置。
(15)前記蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された前記測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部をさらに備える
前記(1)から(14)のいずれかに記載の情報処理装置。
(16)自律移動体の駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、測距データの蓄積方法を設定する手順を有する
情報処理方法。
(17)測距データを取得するセンサ部と、
駆動機構、移動性能、周辺環境、またはタスク内容に基づいて、前記測距データの蓄積方法を設定する蓄積方法設定部と、
前記蓄積方法設定部で設定されたデータ蓄積方法によって蓄積された前記測距データに基づいて障害物を検出する障害物検出部と、
前記障害部検出部の障害物検出結果に基づいて移動を制御する移動制御部を備える
自律移動体。
【符号の説明】
【0125】
100・・・自律移動体
101・・・事前情報記憶部
102・・・自己位置推定部
103・・・センサ部
104・・・環境・タスク対象物認識部
105・・・データ蓄積方法設定部
106・・・データ蓄積部
107・・・障害物検出部
108・・・障害物マップ生成部
109・・・走行制御部
400・・・コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13