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  • 特開-シリコーン重合体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018228
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】シリコーン重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/14 20060101AFI20220120BHJP
   C08G 77/06 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08G77/14
C08G77/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121184
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀利
(72)【発明者】
【氏名】関 浩康
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246BA26X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246FA081
4J246FA131
4J246FA441
4J246FB271
4J246FE27
4J246FE32
4J246GA01
4J246GA02
4J246GA13
4J246GB02
4J246GD08
4J246HA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】室温で液体状態を保つことができ、ケイ素含量が高いため、硬く、耐エッチング性が高い塗膜が得られるシリコーン重合体を提供する。
【解決手段】ケイ素含量が91~99%であって、テトラアルコキシシラン由来の構造のうち、下記構造(Q1)及び(Q2)の合計の比率が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体。


(*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含量が91~99%であって、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、下記式(Q1)から(Q4)で表される構造中のそれぞれのケイ素原子が与えられるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
((Q1)~(Q4)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。ただし、Rはケイ素原子を含まないものとする。*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
【請求項2】
下記式(II)で表されるq‘の値が0.2以上である請求項1記載のシリコーン重合体。
q‘=(q4)/(q1+q2+q3+q4) (II)
【請求項3】
下記一般式
【化5】
(式中、xとyの合計は100であり、yは65~99である)
で表される請求項1または2に記載のシリコーン重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のシリコーン重合体と溶媒を含有する膜形成用組成物。
【請求項5】
下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、第四級アンモニウム化合物と、水の存在下で加水分解させた後、陽イオン交換樹脂と接触させて、シリコーン重合体を製造するシリコーン重合体の製造方法であって、シリコーン重合体が、ケイ素含量が91~99%であって、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、下記式(Q1)から(Q4)で表される構造中のそれぞれのケイ素原子が与えられるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体の製造方法。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
((Q1)~(Q4)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。ただし、Rはケイ素原子を含まないものとする。*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
【請求項6】
下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物、第四級アンモニウム化合物、および、水を含有する反応液を、陽イオン交換樹脂が充填された槽に流通させて、陽イオン交換樹脂と接触させる請求項5に記載のシリコーン重合体の製造方法
【請求項7】
下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物の総量を100モル%としたとき、
一般式で表される化合物が
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
60~90モル%である請求項6に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項8】
第四級アンモニウム化合物の使用量が、下記一般式で表される化合物、RSi(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式(2)で表される化合物
Si(OR ・・・・・(2)
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物のアルコキシル基の総量1モルに対して、0.002~2モルである請求項6または7に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項9】
第四級アンモニウム化合物が、水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物である請求項5~8のいずれかに記載のシリコーン重合体の製造方法
【請求項10】
水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物が、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドである請求項9記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項11】
陽イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換樹脂である請求項5~9のいずれかに記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項12】
陽イオン交換樹脂を、第四級アンモニウム化合物1.0当量に対して、1.0~10.0当量使用する請求項5~11のいずれかに記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項13】
沸点100℃以下のアルコールの存在下で、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を加水分解する請求項6~12のいずれかに記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項14】
沸点100℃以下のアルコールの使用量が、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物に対して、1.0~10重量倍である請求項13記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~3のいずれかに記載のシリコーン重合体を基板に塗布した後、加熱する膜の形成方法。
【請求項16】
請求項15に記載の膜の形成方法によって得られる膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
室温で液体状態を保つことができ、ケイ素含量が高いため、硬く、耐エッチング性が高い塗膜が得られるシリコーン重合体を提供する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン重合体は、有機化合物と無機化合物とが分子レベルで組み合わさった、有機-無機ハイブリッド材料であり、柔軟性や加工性といった有機材料の特長と、耐熱性・耐候性や耐薬品性といった無機材料の特長を併せ持つ素材であるため、近年盛んに研究されている。
【0003】
中でも半導体用素子等を製造する際のパターン成型においては、リソグラフィー技術、エッチング技術等を適用する反転パターン形成の際、シリコーン重合体をレジスト下層膜として用いることが提案されている。シリコーン重合体の中でも特に、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン由来の構造が多く、ケイ素含量が高い場合、微細なレジスト下層膜パターンへの埋め込み性及びレジスト下層膜パターンを酸素系ガスエッチング等で除去する際のエッチング耐性に優れることが知られていた。
【0004】
アルコキシシランを原料として、レジスト下層膜に用いるシリコーン重合体を得る場合、一般的に酸や塩基が触媒として用いられる。塩基の中でも、特に第四級アンモニウム化合物を触媒として用いた場合、シリコーン重合体が安定で粘度の変化がないため、スピンコーティングした場合、均一な塗膜が得られる。さらに、得られた塗膜の機械的強度が優れることが知られていた(特許文献1~3参照)。これらの特性は、第四級アンモニウム化合物が、酸触媒や他の塩基触媒と異なり、アルコキシ基が加水分解して生じたシラノール基とイオン対を形成し平衡となるため、例えば籠型構造と呼ばれる特異な高次構造を形成しやすいこと(特許文献1~4参照)と関連すると考えられている。
【0005】
一方で、第四級アンモニウム化合物を触媒としてシリコーン重合体を得る場合、中和や水洗が必要である。基材に塗布して膜を得るためには、シリコーン重合体は、縮合活性基であるシラノール基をある程度含有する必要があるが、第四級アンモニウム化合物を触媒に用いる場合、シラノール基とイオン対を形成するため、そのままでは加熱しても縮合しない。そのため、酸で第四級アンモニウム化合物を中和し、水洗によって中和に生じた塩等を除去する。
【0006】
しかしながら、ケイ素含量が高いシリコーン重合体は、極性が高いため水に溶解しやすく、水層と油層が分離せずシリコーン重合体が得られないことがある。また、水層と油層が分離しても、油層からシリコーン重合体が水層に分配して除去されてしまうため、シリコーン重合体の収率が極端に悪くなり、実質的に工業的に使用できないという課題があった。従って、室温で安定であって、ケイ素含量が高いシリコーン重合体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4530113号公報
【特許文献2】特許第6256775号公報
【特許文献3】特許第6511927号公報
【特許文献4】特許第4409397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
室温で液体状態を保つことができ、ケイ素含量が高いため、硬く、耐エッチング性が高い塗膜が得られるシリコーン重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリコーン重合体は、ケイ素含量が91~99%であって、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、下記式(Q1)から(Q4)で表される構造中のそれぞれのケイ素原子が与えられるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体である。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
((Q1)~(Q4)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。ただし、Rはケイ素原子を含まないものとする。*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、第四級アンモニウム化合物と、水の存在下で加水分解させた後、陽イオン交換樹脂と接触させて、シリコーン重合体を製造するシリコーン重合体の製造方法であって、シリコーン重合体が、ケイ素含量が91~99%であって、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、下記式(Q1)から(Q4)で表される構造中のそれぞれのケイ素原子が与えられるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体の製造方法である。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
((Q1)~(Q4)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。ただし、Rはケイ素原子を含まないものとする。*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
【発明の効果】
【0020】
本発明のシリコーン重合体は、塗膜としたときに鉛筆硬度が4H以上の硬い塗膜が得られる。硬い塗膜は耐傷性が高く、耐エッチング性に優れる。
【0021】
本発明のシリコーン重合体は、ゲル化せず、有機溶媒に可溶なポリマが得られる。さらに安定性が高く、分子量が変化しづらい。
【0022】
本発明のシリコーン重合体を含有するシリコーン重合体組成物は、スピンコーティング等の一般的な塗膜方法によって塗膜可能である。また、本発明のシリコーン重合体を含有するシリコーン重合体組成物は、基板に塗布した場合、基板上に薄膜を形成することができ、熱をかけることで基板上に熱硬化フィルムを作成することができる。このように形成した熱硬化フィルムは、透明性と耐熱性に優れた特性を有していることから、半導体やディスプレイの保護膜およびレジスト下層膜などに使用することができる
また、本発明のシリコーン重合体は、原料に金属が含まれないため、ディスプレイや半導体といった電子情報材料に好適に用いる事ができる。
【0023】
また、本発明のシリコーン重合体は、電子情報材料分野に限らず、塗料や接着剤等、幅広い分野に応用できる。
【0024】
さらに、本発明のシリコーン重合体の製造方法は、水洗が不要なため、水層と油層が分離しない。
【0025】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、水層と油層が分離した場合であっても、シリコーン重合体が水層に分配し除去されることによる収率の低下がない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1のシリコーン重合体の29Si-NMR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のシリコーン重合体は、ケイ素含量が91~99%である。ケイ素含量とはシリコーン重合体に含まれるシロキサン結合(Si-O-Si)の割合である。
【0028】
ケイ素含量は、例えば、以下のようにして求められる。メチルトリメトキシシランと正珪酸メチルを加水分解、縮合して得たシリコーン重合体について、29Si-NMR測定を行い、メチルトリメトキシシランが加水分解縮合してなるT構造由来のシグナルが30%、正珪酸メチルが加水分解縮合してなるQ構造由来のシグナルが70%であった場合、見かけの物質量は62.19g/molである。そのうち、T構造中に含まれるメチル基の物質量は4.50g/molである。シラノール基の存在は無視して、すべてシロキサン結合であると仮定した場合、ケイ素含量は下記式で求められ、92.8%である。
(1-4.50/62.19)×100
本明細書において、29Si-NMRによって求められるシグナルの積分値は、例えばブルカー社製の核磁気共鳴装置を使用して測定した値である。
【0029】
本発明のシリコーン重合体のケイ素含量は、91~99%であり、より好ましくは91~98%、さらに好ましくは91~97%である。ケイ素含量が91%以上であれば硬い塗膜が得られ、99%以下であれば室温で液体状態を保つことができるので、好ましい。
【0030】
本発明のシリコーン重合体は、(Q1)で表される構造、および/または、(Q2)で表される構造を有する。本発明のシリコーン重合体は、(Q3)で表される構造、および/または、(Q4)で表される構造を有する。
【0031】
【化9】
【0032】
(Q1)において、Rは、水素原子、または、ケイ素原子を含まない1価の有機基である。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基である。Rは、より好ましくは、メチル基、エチル基である。
(Q1)において、*はケイ素原子に結合する部位を示す。
【0033】
【化10】
【0034】
(Q2)において、Rは、水素原子、または、ケイ素原子を含まない1価の有機基である。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基である。Rは、より好ましくは、メチル基、エチル基である。
(Q2)において、*はケイ素原子に結合する部位を示す。
【0035】
【化11】
【0036】
(Q3)において、Rは、水素原子、または、ケイ素原子を含まない1価の有機基である。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基である。Rは、より好ましくは、メチル基、エチル基である。(Q3)において、*はケイ素原子に結合する部位を示す。
【0037】
【化12】
【0038】
(Q4)において、Rは、水素原子、または、ケイ素原子を含まない1価の有機基である。Rは、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基である。Rは、より好ましくは、メチル基、エチル基である。(Q4)において、*はケイ素原子に結合する部位を示す。
【0039】
本発明のシリコーン重合体は、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、29Si-NMRで求められる(Q1)で表される構造を示すケイ素原子が与えるシグナルの積分値をq1、29Si-NMRで求められる(Q2)で表される構造を示すケイ素原子が与えるシグナルの積分値をq2、29Si-NMRで求められる(Q3)で表される構造を示すケイ素原子が与えるシグナルの積分値をq3、29Si-NMRで求められる(Q4)で表される構造を示すケイ素原子が与えるシグナルの積分値をq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が、0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下である。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
上記qの値は、0.15以下であり、好ましくは、0.1~0.15、より好ましくは、0.1~0.12である。qの値が0.15以下であると、シリコーン重合体の保存安定性が高く、塗膜としたときにより硬い塗膜が得られる。
【0040】
本発明のシリコーン重合体は、下記式(II)で表されるq‘の値が0.2以上であることが好ましい。式(II)中のq1~q4は、式(I)と同義である。
q‘=(q4)/(q1+q2+q3+q4) (II)
式(II)で表されるq‘の値は、0.25以上がより好ましい。一方、上記q’の値は、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。q‘の値が0.7以下であるとシリコーン重合体の保存安定性が高く、塗膜としたときにより硬い塗膜が得られる。式(II)で表されるq‘値は、より好ましくは、0.2~0.7であり、さらにより好ましくは、0.25~0.6である。
【0041】
本発明のシリコーン重合体は、好ましくは、一般式
【0042】
【化13】
【0043】
(式中、xとyの合計は100であり、yは65~90である)
で表される。
【0044】
本発明のシリコーン重合体は、より好ましくは、yが68~90であり、さらにより好ましくは、70~90である。yが65以上であれば硬い塗膜が得られ、99以下であれば室温で液体状態を保つことができる。
【0045】
本発明のシリコーン重合体の重量平均分子量は、6000以下であり、好ましくは、1000~6000であり、更に好ましくは、1500~5500である。
【0046】
また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った分散度(Mw/Mn)は、2.0~6.0が好ましく、より好ましくは、2.5~5.5である。
【0047】
本明細書において、シロキサン樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用して測定し、標準ポリスチレン換算により求める事が出来る。
【0048】
本発明のシリコーン重合体では、シリコーン重合体の高次構造が、籠型であっても良い。
【0049】
本発明のシリコーン重合体は、溶媒に溶解してもよい。溶媒としては、アルコール系溶媒、高沸点溶媒が用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、高沸点溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等である。
【0050】
本発明のシリコーン重合体は、溶媒と混合して、シリコーン重合体と溶媒を含有する膜形成用組成物とすることができる。
【0051】
本発明のシリコーン重合体は、基板に塗布した後、加熱して、膜を形成することができる。
【0052】
本発明のシリコーン重合体は、好ましくは、シリコーン重合体と溶媒を含有する膜形成用組成物とした後、基板に塗布し、加熱して、膜を形成することができる。
【0053】
本発明のシリコーン重合体で、塗膜を得る一般的な方法を次に記載する。
【0054】
塗膜の作製は、シリコーン重合体を基板上にスピンコートして薄膜を形成し、これを加熱することで塗膜を得る。基板としては、例えばガラス、シリコンウェハ、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンテレフタレートなど樹脂が挙げられる。
【0055】
次に基板上に形成された薄膜をホットプレートやインキュベーターに入れて加熱することにより、溶媒を除去するとともに、シリコーン重合体の加水分解、縮重合反応させることで、塗膜を作製する。
【0056】
一般に膜の作製においては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上に加熱する。
【0057】
本発明のシリコーン重合体を用いて形成した膜は、鉛筆硬度が4H以上の硬い塗膜であり、耐傷性が高く、耐エッチング性に優れる。
【0058】
本発明のシリコーン重合体の製造方法にて得たシリコーン重合体は、上述の通り、簡便に塗膜が得られることから、半導体やディスプレイなどに好適に用いられる。
【0059】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および、下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を、第四級アンモニウム化合物と、水の存在下で加水分解させた後、陽イオン交換樹脂と接触させて、シリコーン重合体を製造するシリコーン重合体の製造方法であって、シリコーン重合体が、ケイ素含量が91~99%であって、29Si-NMRで求められるシグナルのうち、下記式(Q1)から(Q4)で表される構造中のそれぞれのケイ素原子が与えられるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.15以下であり、重量平均分子量が6,000以下であるシリコーン重合体の製造方法である。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【0060】
【化14】
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
((Q1)~(Q4)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。ただし、Rはケイ素原子を含まないものとする。*はケイ素原子に結合する部位を示す。)
一般式において、
Si(OR4-a
Rは、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができ、特に、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1~5であり、これらのアルキル基は、鎖状でも、分岐していてもよく、さらに、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。R1 の1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1~5であり、これらのアルキル基は、鎖状でも、分岐していてもよく、さらに、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
【0065】
一般式で表される化合物
Si(OR4-a
の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリ-sec-ブトキシシラン、エチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリ-iso-プロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、n-プロピルトリフェノキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、i-プロピルトリフェノキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、n-ブチルトリフェノキシシラン、sec-ブチルトリメトキシシラン、sec-ブチルトリエトキシシラン、sec-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、sec-ブチル-トリフェノキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、t-ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリ-iso-プロポキシシラン、フェニルトリ-n-ブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジメチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジメチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジメチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジメチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジエチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジエチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジエチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジエチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-フェノキシシラン、ジ-iso-プロピルジメトキシシラン、ジ-iso-プロピルジエトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-フェノキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニル-ジ-エトキシシラン、ジフェニル-ジ-n-プロポキシシラン、ジフェニル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジフェニル-ジ-n-ブトキシシラン、ジフェニル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジフェニル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0066】
化合物として好ましい化合物は、
Si(OR4-a
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが工業的に入手しやすく好ましい。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0067】
一般式において、
Si(OR
で表される1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1~5であり、これらのアルキル基は、鎖状でも、分岐していてもよく、さらに、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アリール基は、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。 一般式
Si(OR
で表される化合物は、具体的には、テトラメトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が用いられる。中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが工業的に入手しやすく好ましい。
【0068】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物の総量を100モル%としたとき、一般式
Si(OR
で表される化合物が60~95モル%であることが好ましく、より好ましくは65~90モル%であり、更に好ましくは70~90モル%である。一般式
Si(OR
で表される化合物が、50モル%以上であると、硬い塗膜が得られるため好ましい。
【0069】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、第四級アンモニウム化合物の存在下反応を行う。第四級アンモニウム化合物は、水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物であることが好ましい。
【0070】
第四級アンモニウム化合物としては、例えば、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシメチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムフルオライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラn-ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラn-プロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラn-プロピルアンモニウムアイオダイド、トリメチルフェニルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシト゛、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムチオシアネート、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0071】
中でも好ましくは、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシメチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシメチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラn-ブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシト゛、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムチオシアネート、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルフォネートが好ましく、さらに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、安価で反応制御が容易であり、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドは、一般的に、トリメチルアミン、ジメチルアミンおよびメチルアミンとエチレンオキサイドの付加反応で得られ、原料に金属を使用しないため、金属含量の少ない。特に、水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物である、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドが工業グレードで入手しやすく好ましい。
【0072】
第四級アンモニウム化合物の使用量は、一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および、一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物のアルコキシル基の総量1モルに対して、0.002~2モルが好ましく、0.005~1.0モルがさらに好ましい。
【0073】
第四級アンモニウム塩の金属含量は、5ppm以下が好ましく、より好ましくは1ppm以下、更に好ましくは500ppb以下である。第四級アンモニウム化合物の金属含量が5ppm以下であれば、ディスプレイや半導体といった電子情報材料用途に用いることができる。
【0074】
第四級アンモニウム化合物は、作業性の観点から、添加しやすい水溶液として添加してもよい。
【0075】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、シラン化合物を加水分解、縮重合するために、水が用いられる。水の種類は特に限定されないが、工業用水、市水、井水、蒸留水、イオン交換水および超純水などが用いられる。水は1種類でもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0076】
中でも電気抵抗率が高い、イオン交換水や超純水が好ましく、更には、電気抵抗率が15MΩ・cm以上の超純水が、金属含量が少なく好ましい。
【0077】
水の使用量は、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物のアルコキシル基の総量1当量に対して、好ましくは1.0~15.0当量、より好ましくは1.0~10.0当量にするとよい。更に好ましくは、1.0~5.0当量である。水の量が1.0当量以上の場合、加水分解、縮重合反応が速やかに進行し、15.0当量以下であれば、反応が制御されゲル化しないため好ましい。
【0078】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、反応液を陽イオン交換樹脂と接触させる。陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂でも、弱酸性陽イオン交換樹脂でもよい。通常用いられているもの、例えば市販品の水素型陽イオン交換樹脂、具体的には、例えばAmberlist(オルガノ株式会社)、Lewatit(ランクセス株式会社)、ダイヤイオン(三菱化学株式会社)、Monosphere(ダウ・ケミカル社)等を用いることができる。陽イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0079】
下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および、下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物、第四級アンモニウム化合物、および、水を含有する反応液を、反応液と陽イオン交換樹脂と接触させる方法としては、反応液を、陽イオン交換樹脂を充填したカラム内に流通させる方法や、陽イオン交換樹脂を反応液に添加して攪拌する方法等が挙げられる。その場合、陽イオン交換樹脂は処理後にろ過等で取り除く。
【0080】
下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および、下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物、第四級アンモニウム化合物、および、水を含有する反応液を、陽イオン交換樹脂が充填された槽に流通させて、陽イオン交換樹脂と接触させることが、好ましい。
【0081】
陽イオン交換樹脂の量は、用いた第四級アンモニウム化合物に対して1.0~10.0当量が好ましく、より好ましくは1.1~8.0当量であり、更に好ましくは1.2~5.0当量である。1.0当量以上あれば第四級アンモニウム化合物を除去することができ、10.0当量以下であれば、得られるシリコーン重合体が安定であり、また、イオン交換樹脂を使用する量が少なく経済的に好ましい。
【0082】
反応液を陽イオン交換樹脂と接触させる際の温度は、0~60℃が好ましく、さらに好ましくは5~50℃である。温度が0℃以上であれば、第四級アンモニウム化合物が十分除去され、60℃以下であればシリコーン重合体が安定であり、好ましい。
【0083】
反応液を陽イオン交換樹脂と接触させる時間は、5分~6時間が好ましく、より好ましくは10分~3時間である。接触させる時間が5分以上であれば、十分第四級アンモニウム化合物を除去することができ、6時間以下であればシリコーン重合体が安定で、好ましい。
【0084】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、好ましくは、沸点100℃以下のアルコールの存在下で、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を加水分解する。沸点100℃以下のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。中でもメタノールは、留去しやすく好ましい。沸点100℃以下のアルコールは、2種類以上用いてもよい。
【0085】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、沸点100℃以下のアルコールはの使用量が、下記一般式で表される化合物、
Si(OR4-a
(式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。)
および下記一般式で表される化合物
Si(OR
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物に対して、1.0~10重量倍が好ましく、より好ましくは1.2~8重量倍であり、更に好ましくは1.5~5重量倍である。沸点100℃以下のアルコールのが0.5重量倍以上であれば、シラン化合物と水が混合しやすくなり、またシリコーン重合体のゲル化が抑制され安定する。20重量倍以下であれば経済的に好ましい。
【0086】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、沸点100℃以下のアルコールの他に、溶媒を加えても良い。溶媒としては、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチルなどの高沸点溶媒を使用することができる。溶媒は、2種類以上用いてもよい。
【実施例0087】
以下実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明する。以下の実施例において、分析には下記装置を使用し、原料は、特に明示しない場合、試薬メーカーから購入した一般的な試薬を用いた。分析には以下の方法を用いた。
【0088】
・分子量測定
東ソー社製HLC-8220GPCシステムを使用し、東ソー社製TSKgel SuperHZ3000、TSKgel SuperHZ2000、TSKgel SuperHZ1000を直列に接続して分析を行った。検出はRI(屈折率計)で行い、リファレンスカラムとしてTSKgelSuperH-RCを1本使用した。展開溶媒には和光純薬社製テトラヒドロフランを使用し、カラムとリファレンスカラムの流速は0.35mL/minで行った。測定温度はプランジャーポンプ、カラム共に40℃で行った。サンプルの調製にはシリコーン重合体約0.025gを10mLのテトラヒドロフランで希釈したものを25μL打ちこむ設定で行った。分子量分布計算には、東ソー社製TSK標準ポリスチレン(A-500、A-1000、A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40、F-80)を標準物質として使用した。
【0089】
・固形分
シリコーン重合体を含む溶液1.0gをアルミカップに精秤し、ホットプレートを用いて175℃で1時間焼成することで、シリコーン重合体を含む溶液1.0gに対する固形分の質量を測定し、シリコーン重合体を含む溶液の固形分濃度(質量%)を算出した。
【0090】
29Si-NMR
シリコーン重合体を、プロピレングリコールモノエチルエーテルに溶解して、固形分9.2%のシリコーン重合体溶液を作成した。シリコーン重合体溶液1.0mlにトリスアセチルアセトナトクロム 約15mgを混合後、密閉型の固体NMR試料管に充填し、SiバックグラウンドフリーのNMRプローブを用いて測定を行った。29Si-NMR測定条件を以下に示す。
装置 ブルカー社製の核磁気共鳴装置 AVANCE 400
測定法 DD/MAS(Dipolar Decoupling)法
測定核周波数 79.4933725MHz(29Si核)
スペ クトル幅 40kHz
パルス幅 4.5秒(90°パルス)
パルス繰り返し時間 ACQTM: 0.0512625秒,PD: 30秒
基 準物質 ヘキサメチルシクロトリシロキサン(外部基準:-9.66ppm)
試料回転数 0.24kHz 。
【0091】
実施例1
100mlのスクリューバイアルにメチルトリメトキシシラン2.45g(0.018mol)、テトラメトキシシラン6.39g(0.042mol)、メタノール26.52g(シラン化合物の3.0重量倍)、イオン交換水4.42gを仕込んだ。更に、マグネチックスターラーの撹拌子を投入し攪拌した。次いで、50%2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液12.82g(0.232モル倍/アルコキシ基)を滴下した。水の仕込量は、事前に仕込んだイオン交換水と、50%2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に同伴する量を合計し2.72モル倍/アルコキシ基である。滴下後、反応液を室温で3時間熟成させた。別途、直径13.5mm、長さ200mmのSUS304製の円筒形のカラムの一端に石英ウールをイオン交換樹脂が流れ出ない程度に充填した後、事前にメタノールで置換した陽イオン交換樹脂(Amberlyst15JWET、オルガノ(株)製)を充填した。筒は2本直列に連結し、充填した陽イオン交換樹脂の量は56cmである。熟成後の反応液を、プランジャーポンプで、イオン交換樹脂が充填されたカラムに28cm/hの速度で圧送した。反応液をすべて移液した後、更にメタノールを送液することで反応液をカラムから押し出した。得られた反応液に等量のプロピレングリコールモノエチルエーテルを加え、減圧濃縮することで無色透明液体であるシリコーン重合体を得た。得られたシリコーン重合体の重量平均分子量は(Mw)は4.760、分散度(Mw/Mn)3.89、固形分濃度は9.2%であった。メチルトリメトキシシランとテトラメトキシシランのモル比、触媒、固形分濃度と重量平均分子量の測定結果を表1にまとめた。
【0092】
【表1】
【0093】
図1に、実施例1のシリコーン重合体の29Si-NMR測定結果を示した。このうち、T1は、メチルトリメトキシラン由来のケイ素原子であり、1つがシロキサン結合を有するもののピークであり、T2は、同様にして2つがシロキサン結合を有するもののピークであり、T3は、同様にして3つがシロキサン結合を有するもののピークである。
【0094】
実施例1のシリコーン重合体の29Si-NMR測定の結果、メチルトリメトキシシランが加水分解縮合してなるT構造由来のシグナルが31%、正珪酸メチルが加水分解縮合してなるQ構造由来のシグナルがQの値は69%であり、シリコーン重合体のケイ素含量は93%であった。また、q1、q2、q3、q4の値はそれぞれ0%、8%、56%および36%であった。測定結果を表2にまとめた。
【0095】
【表2】
【0096】
下記式(I)で表されるqの値は0.08であり、下記式(II)で表されるq‘の値は0.36であった。
q =(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
q‘=(q4)/(q1+q2+q3+q4) (II)
得られたシリコーン重合体を20℃のオーブンで2週間保管し、改めて重量平均分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は5,420で、溶液の粘度に変化なかった。
図1