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特開2022-182296ゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182296
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20221201BHJP
   A63B 45/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A63B37/00 314
A63B37/00 328
A63B37/00 618
A63B45/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089776
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 祐希
(72)【発明者】
【氏名】南馬 昌司
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、下記(i)成分及び(ii)成分
(i)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体の架橋物からなる平均粒子径が300μm未満の微粒子、及び
(ii)熱可塑性樹脂
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1-ブテン単位の群から選択される単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボール用材料、その製造方法及び該ゴルフボール用材料を用いたゴルフボールを提供する。
【効果】本発明のゴルフボール用材料は、ソフトで反発弾性に優れ、成形加工性も良好である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)成分及び(ii)成分
(i)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体の架橋物からなる平均粒子径が300μm未満の微粒子、及び
(ii)熱可塑性樹脂
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1-ブテン単位の群から選択される単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボール用材料。
【請求項2】
上記(ii)成分である熱可塑性樹脂が、酸含有共重合体、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる樹脂である請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項3】
上記(i)成分である多元共重合体に対する、上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上であり、上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下であり、上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項4】
上記非共役オレフィン単位がエチレン単位である請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項5】
上記(i)成分である多元共重合体が、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合された共重合体である請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項6】
(i)成分と(ii)成分との合計量に対する(ii)成分の含有量が、20~80質量%である請求項1~5のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項7】
材料硬度がショアD硬度で25~65である請求項1~6のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項8】
ゴルフボールのカバー材として用いられる請求項1~7のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項9】
(a1)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体であって、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1-ブテン単位の群から選択される単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上である多元共重合体を用い、これに架橋剤を添加し、多元共重合体の架橋物を得る工程と、
(a2)上記多元共重合体の架橋物を粉砕して平均粒子径が300μm未満の微粒子を得る工程と、
(a3)熱可塑性樹脂と上記微粒子とを混錬する工程と
を具備し、上記(a1)~(a3)の工程により請求項1記載のゴルフボール用材料を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項10】
(a3)工程の熱可塑性樹脂が、酸含有共重合体、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる樹脂である請求項9記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項11】
(a1)工程の多元共重合体において、該多元共重合体に対する、上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上であり、上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下であり、上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である請求項9又は10記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項12】
上記非共役オレフィン単位がエチレン単位である請求項9~11のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項13】
(a3)工程において、熱可塑性樹脂と微粒子との混合割合が、熱可塑性樹脂:微粒子(質量比)で20~80:80~20である請求項9~12のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項14】
1層又は複数層からなるコアと該コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記カバーの少なくとも1層が、請求項1~8のいずれか1項記載のゴルフボール用材料により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボールに関し、特に、コアを被覆する1層又は2層以上のカバーが被覆されるゴルフボールにおけるカバー各層(中間層又は最外層)の材料として好適に用いられるゴルフボール用材料及びこれを用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトなフィーリングと高い反発性とを兼ね備えたゴルフボールを実現するために、アイオノマー樹脂に、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等の水添芳香族ビニル系エラストマーを添加したものが提案されている。例えば、特開2001-95948号公報(特許文献1)及び特開2001-32763号公報(特許文献2)には、アイオノマー樹脂に、SEBS等の熱可塑エラストマー及び粘着付与材を配合した樹脂組成物が提案されている。
【0003】
しかしながら、アイオノマー樹脂にSEBSを添加すると、ソフトなフィーリングを付与することができるものの、SEBSの添加量が多いと反発性を下げる弊害が生じる。
【0004】
また、アイオノマー樹脂組成物に脂肪酸を加えることにより、アイオノマー樹脂組成物中の酸を完全に中和させる材料がゴルフボール用材料として提案されている。例えば、特開2001-120686号公報(特許文献3)及び特開2001-348467号公報(特許文献4)には、アイオノマー樹脂組成物に脂肪酸及び塩基性無機金属化合物を配合した高中和アイオノマー樹脂材料が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記の高中和アイオノマー樹脂材料は高い反発性を示すものの、ソフト化が十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-95948号公報
【特許文献2】特開2001-32763号公報
【特許文献3】特開2001-120686号公報
【特許文献4】特開2001-348467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ソフトで反発弾性に優れるゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボール材料として、酸含有共重合体等の熱可塑性樹脂に対して、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体の架橋物からなる平均粒子径が300μm未満の微粒子を混合させることにより、硬度が低くても予想外に反発弾性を高く維持できると共に加工成形性が良好である、更には、この材料をカバーに用いてゴルフボールを構成した場合に、ソフト感を十分に付与しつつ、反発弾性に優れて高い飛び性能が得られるゴルフボールを提供することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボール用材料、その製造方法及びゴルフボールを提供する。
1.下記(i)成分及び(ii)成分
(i)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体の架橋物からなる平均粒子径が300μm未満の微粒子、及び
(ii)熱可塑性樹脂
を含有してなり、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1-ブテン単位の群から選択される単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、且つ、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上であることを特徴とするゴルフボール用材料。
2.上記(ii)成分である熱可塑性樹脂が、酸含有共重合体、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる樹脂である上記1載のゴルフボール用材料。
3.上記(i)成分である多元共重合体に対する、上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上であり、上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下であり、上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である上記1又は2記載のゴルフボール用材料。
4.上記非共役オレフィン単位がエチレン単位である上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール用材料。
5.上記(i)成分である多元共重合体が、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合された共重合体である上記1~4のいずれかに記載のゴルフボール用材料。
6.(i)成分と(ii)成分との合計量に対する(ii)成分の含有量が、20~80質量%である上記1~5のいずれかに記載のゴルフボール用材料。
7.材料硬度がショアD硬度で25~65である上記1~6のいずれかに記載のゴルフボール用材料。
8.ゴルフボールのカバー材として用いられる上記1~7のいずれかに記載のゴルフボール用材料。
9.(a1)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体であって、上記共役ジエン単位がブタジエン単位を含み、上記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1-ブテン単位の群から選択される単位を含み、上記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含み、上記多元共重合体に対する上記共役ジエン単位の含有量が5質量%以上である多元共重合体を用い、これに架橋剤を添加し、多元共重合体の架橋物を得る工程と、
(a2)上記多元共重合体の架橋物を粉砕して平均粒子径が300μm未満の微粒子を得る工程と、
(a3)熱可塑性樹脂と上記微粒子とを混錬する工程と
を具備し、上記(a1)~(a3)の工程により上記1記載のゴルフボール用材料を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
10.(a3)工程の熱可塑性樹脂が、酸含有共重合体、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる樹脂である上記9記載のゴルフボール用材料の製造方法。
11.(a1)工程の多元共重合体において、該多元共重合体に対する、上記共役ジエン単位の含有量が10質量%以上であり、上記非共役オレフィン単位の含有量が90質量%以下であり、上記芳香族ビニル単位の含有量が30質量%以下である上記9又は10記載のゴルフボール用材料の製造方法。
12.上記非共役オレフィン単位がエチレン単位である上記9~11のいずれかに記載のゴルフボール用材料の製造方法。
13.(a3)工程において、熱可塑性樹脂と微粒子との混合割合が、熱可塑性樹脂:微粒子(質量比)で20~80:80~20である上記9~12のいずれかに記載のゴルフボール用材料の製造方法。
14.1層又は複数層からなるコアと該コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記カバーの少なくとも1層が、上記1~8のいずれかに記載のゴルフボール用材料により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボール用材料は、ソフトで反発弾性に優れるものであり、そのうえ、混錬加工性に優れている。本発明のゴルフボール用材料をカバーに用いたゴルフボールはゴルファーにとって競技上優位である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1~3及び比較例1~3,6,7におけるゴルフボール用材料のショアD硬度と反発弾性率との関係を示すグラフである。
図2】実施例4,5及び比較例6,7におけるゴルフボール用材料のショアD硬度と反発弾性率との関係を示すグラフである。
図3】実施例6~8及び比較例10~12におけるゴルフボール用材料のショアD硬度と反発弾性率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用材料は、下記(i)及び(ii)の各成分を含有することを特徴とする。
(i)共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体の架橋物からなる平均粒子径が300μm未満の微粒子、及び
(ii)熱可塑性樹脂
【0013】
(i)成分における多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する。この多元共重合体は、特許第6780827号明細書に記載された多元共重合体であり、以下のように説明される。
【0014】
<共役ジエン単位>
多元共重合体は、共役ジエン単位を含有する。共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。多元共重合体は、単量体として共役ジエン化合物を用いて重合され得るものであるため、例えば公知であるEPDMのような非共役ジエン化合物を用いて重合してなる共重合体に比べ、架橋特性に優れる。共役ジエン化合物には、ブタジエン単位が含まれる。ブタジエン単位は、ブタジエン化合物に由来する構成単位であり、ブタジエン化合物として具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。また、多元共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位を含むことが好ましく、より好ましくは、1,3-ブタジエン単位のみからなることである。
【0015】
また、多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。なお、このような共役ジエン単位全体におけるシス-1,4結合含有量が高い多元共重合体は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いることで、得ることができる。一方、共役ジエン単位全体におけるビニル結合(1,2ビニル結合、3,4ビニル結合など)含有量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが特に好ましい。また、上記共役ジエン単位全体におけるトランス-1,4結合含有量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。なお、シス-1,4結合、トランス-1,4結合、ビニル結合のそれぞれの含有量は、1H-NMR及び13C-NMRの測定結果から、積分比によって求めることができる。
【0016】
共役ジエン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、多元共重合体は、共役ジエン単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。共役ジエン単位の含有量は、多元共重合体全体の5質量%以上であることを要件とするものであり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、共役ジエン単位の含有量は、多元共重合体全体の80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
<非共役オレフィン単位>
多元共重合体は、非共役オレフィン単位を含有する。非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。非共役オレフィン化合物としては、エチレン、プロピレン及び1-ブテンの群から選ばれる。特に、ゴルフボール用材料の反発弾性及びソフトを十分に付与するために、非共役オレフィン単位は、エチレン単位であることが好適である。
【0018】
非共役オレフィン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、上記多元共重合体は、非共役オレフィン単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。非共役オレフィン単位の含有量は、多元共重合体全体の20質量%を超え、90質量%未満であることが好適であり、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~80質量%、最も好ましくは45~75質量%である。
【0019】
<芳香族ビニル単位>
上記多元共重合体は、芳香族ビニル単位を含有する。芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。芳香族ビニル化合物としては、スチレン化合物が挙げられ、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。上記多元共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むものであり、スチレン単位のみからなることがより好ましい。なお、芳香族ビニル単位における芳香環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0020】
芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、上記多元共重合体は、芳香族ビニル単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。芳香族ビニル単位の含有量は、多元共重合体全体の3~30質量%である。芳香族ビニル単位の含有量が3質量%未満、または30質量%を超えると、共重合体の非共役オレフィン部分の長さを抑制できず、非共役オレフィン結晶由来の耐久性改善に至らない。芳香族ビニル単位の含有量は、多元共重合体全体の3~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが更に好ましい。
【0021】
上記多元共重合体の単量体の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する限り、特に制限はない。多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位の含有量は、所望の効果を得る観点から、多元共重合体全体の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0質量%であることが特に好ましい。
【0022】
多元共重合体は、少なくとも、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体である。また、破壊特性を好ましいものとする観点から、多元共重合体は、単量体として、一種の共役ジエン化合物、一種の非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
そして、多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包括されていることとする。
【0023】
多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有し、主鎖が非環状構造のみからなることを大きな特徴の一つとする。主鎖が環状構造を有すると、破壊特性(特に破壊伸び)が低下する。なお、多元共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その多元共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。更に、多元共重合体は、以下にその製造方法を記述する通り、一の反応容器で行う合成、即ちワンポット合成が可能であり、簡略化されたプロセスによる製造が可能である。
【0024】
多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000であることが好ましく、100,000~9,000,000であることがより好ましく、150,000~8,000,000であることが更に好ましい。多元共重合体のMwが10,000以上であることにより、ゴルフボール材料としての規格的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。なお、上述した重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0025】
多元共重合体の連鎖構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、共役ジエン単位をA、非共役オレフィン単位をB、芳香族ビニル単位をCとした場合において、Ax-By-Cz(x、y、zは1以上の整数である)等の構成をとるブロック共重合体、A、B、Cがランダムに配列する構成をとるランダム共重合体、上記ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなるテーパー共重合体、(A-B-C)w(wは1以上の整数である)等の構成をとる交互共重合体とすることができる。また、多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位が直線的に連鎖した構造(直線構造)であってもよいし、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の少なくともいずれかが分岐鎖を形成して連鎖した構造(分岐構造)であってもよい。なお、多元共重合体が分岐構造である場合には、分岐鎖も二元又は多元とすることができる(即ち、分岐鎖が、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位のうちの少なくとも2つを含むことができる。)。よって、多元共重合体の中でも、二元又は多元の分岐鎖を有する分岐構造である多元共重合体は、幹となる鎖と側鎖とが異なる1種類の単位で形成される従来型のグラフト共重合体と明確に区別することができる。
【0026】
多元共重合体の製造方法や重合工程や用いる重合触媒等の製造条件については、特許第6780827号明細書に記載された内容を採用することができる。なお、上記多元共重合体は、ガドリニウムメタロセン錯体触媒によって重合されたものであることが好適である。
【0027】
本発明の(i)成分については、上述した多元共重合体を架橋剤の添加により架橋させて架橋物を得るものであり、その後、粉砕処理を行うことにより、平均粒子径が300μm未満の微粒子を得ることができる。
【0028】
上記の架橋剤としては、有機過酸化物等のラジカル重合開始剤、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等の共架橋剤などを用いることができる。これら架橋剤の配合量は、上記多元共重合体100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~5質量部である。
【0029】
上記架橋物を得るための条件としては、多元共重合体に架橋剤を添加した組成物を、例えば、100~200℃、1~60分の加熱温度及び加熱時間で成型することにより得ることができる。
【0030】
次に、上記多元共重合体の架橋物を粉砕して平均粒子径が300μm未満の微粒子を得る。上記多元共重合体の架橋物を所定の平均粒子径を有する微粒子を得るための具体的な手段としては、例えば、フライス盤、ボールミル粉砕機、ローラーミル、ジェットミル、高速回転粉砕機、容器駆動型ミル等の微粉砕機、媒体撹拌ミル等の超微粉砕機などの粉砕手段が挙げられる。粉砕対象物に、圧縮、衝撃、回転等の力を作用することで、対象物を粉砕する。これらの力を適宜調整することで、平均粒子径が300μm未満の微粒子を得ることができる。衝突には、粉砕対象物の粒子同士の衝突させる以外に、粉砕対象物と粉砕媒体を衝突させることも有効である。粉砕機で粒子化する前に、多元共重合体の架橋物を、細かく裁断、切削しても良い。
【0031】
上記のとおり多元共重合体架橋物の微粒子の平均粒子径は300μmであり、好ましくは50~250μmである。この平均粒子径を超えてしまうと、後述する熱可塑性樹脂との混錬加工性が悪くなると共に、高品質なゴルフボールに仕上げることが困難になる場合がある。即ち、本発明では、単に、多元共重合体を後述する熱可塑性樹脂に混合(混錬)するものではなく、多元共重合体の架橋型微粒子としての形態で熱可塑性樹脂と混合させるものである。このため混錬加工性が良好となり、ゴルフボールの製造方法において、成形加工性が良好となり、高品質な材料特性を確実に得ることができ、ひいてはゴルフボールの諸物性を向上させるものである。
【0032】
なお、上記微粒子の平均粒子径については、顕微鏡を用いて計測することができる。例えば、KEYENCE社製のデジタルマイクロスコープ「VHX-2000」を用いて、粒子の長軸を計測し、粒子径とすることができる。
【0033】
次に、上記記載で得た多元共重合体の架橋型微粒子を、本発明の(ii)成分として熱可塑性樹脂を混合させるものである。この場合、上記熱可塑性樹脂としては、ゴルフボール用材料として一般に使用される樹脂材料を用いることができる。具体的には、酸含有共重合体、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる樹脂が例示される。
【0034】
上記の酸含有共重合体とは、その酸がカルボン酸(無水カルボン酸及びその誘導体を含む)、ジカルボン酸(以下、そのハーフエステルカルボン酸も含む)、スルフォン酸、燐酸から選択されるものであり、特に好ましくはカルボン酸である樹脂である。このような酸含有共重合体として具体的には、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、または、オレフィン-α,β不飽和カルボン酸-α,β不飽和カルボン酸エステル共重合体が例示される。
【0035】
上記共重合体のオレフィンは、通常炭素数2個以上、上限として8個以下、特に6個以下のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。また、上記(a)成分の不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特に、アクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。更に、上記共重合体の不飽和カルボン酸エステルとしては、上記の不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適であり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n-アクリル酸ブチル、i-アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0036】
酸含有共重合体は、金属イオンで中和されたものであってもよく、具体的には、上記オレフィン-不飽和カルボン酸(-不飽和カルボン酸エステル)共重合体の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられ、特に、Na+、Li+、Zn++、Mg++、Ca++等が好適に用いられる。このような中和物は公知の方法で得ることができ、例えば、上記共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して中和物を得ることができる。
【0037】
酸含有共重合体としては、公知のものを用いることができる。例えば、市販品としては、酸共重合体として、ニュクレルN1560、同N1214、同N1035、同N2060、同AN4221C、同AN4311、同AN4319(いずれも三井・ダウポリケミカル社製)等を挙げることができる。また、酸共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311、同1855、同1856、同AM7316、同AM7318、同AM7327(いずれも三井・ダウポリケミカル社製)、サーリン7930、同6320、同8660、同8320、同9320、同8120(ダウ・カンパニー製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0038】
上記(ii)成分の熱可塑性樹脂と上記(i)成分の微粒子との混合割合は、質量比で(i):(ii)=20~80:80~20の範囲で行うことが好適である。即ち、(i)成分と(ii)成分との合計量に対する(ii)成分の含有量が20~80質量%の範囲内である。
【0039】
本発明のゴルフボール用材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0040】
本発明のゴルフボール用材料は、例えば、混練型2軸押出機,バンバリー,ニーダー,ラボプラストミル等の各種の混練機を用いて上述した(i)成分、(ii)成分、必要により各種添加剤を全て同時に又は段階的に混合することにより得ることができる。また、製造押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらでも良く、2軸押出機がより好ましい。
【0041】
本発明のゴルフボール用材料の反発弾性率は、JIS-K 6255規格の測定で45%以上であることが好ましくは、より好ましくは49%以上である。上記反発弾性率が小さすぎると、アプローチショット時のボール初速低下が実現できるが、ドライバーショット時の飛距離が著しく低下する。
【0042】
また、材料硬度については、ゴルフボールとして得られるスピン特性やソフト感の点から、ショアD硬度で25以上であることが好ましく、より好ましくは35以上であり、その上限値としては、好ましくは75以下、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。
【0043】
本発明のゴルフボール用材料は、特に、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する多層のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材(中間層及び最外層)として用いることができる。
【0044】
なお、本発明のゴルフボール用材料を適用したゴルフボールにおける各構成部材の説明としては以下のとおりである。
【0045】
コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。
【0046】
また、ポリブタジエンは、Nd触媒の希土類元素系触媒,コバルト触媒及びニッケル触媒等の金属触媒により合成することができる。
【0047】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤,ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0048】
上記コアの直径は、そのボールの構造によって適宜選定されるものであり、特に制限はないが、好ましくは20mm以上、より好ましく25mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、上限値としては、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。
【0049】
上記コアとカバー最外層との間には中間層を設けることができる。この場合、上記中間層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で50以上、好ましくは55以上、より好ましくは60以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは70以下、より好ましくは65以下とすることができる。
【0050】
上記カバーのうち最外層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、上限としては、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【0051】
なお、上記カバーの表面には1種又は2種類以上の多数のディンプルを形成することができる。また、上記カバー表面には、更に各種塗料を塗装することができ、この塗料としては、ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、2液硬化型のウレタン塗料、特に、無黄変のウレタン塗料が好適に挙げられる。
【0052】
上記カバーを得るには、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、上記混合物を加熱混合溶融し、射出成形することにより、コアの周囲に所望のカバーを被覆する方法等を採用できる。この場合、カバーの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、これにより、最終的に得られたゴルフボールは、反発性が高く、その上、打感が良好である。また、カバーの形成方法は、上記のほかに、例えば、カバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120~170℃、1~5分間、加圧成形する方法などを採用することもできる。
【実施例0053】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0054】
[実施例1~8、比較例1~12]
下記表1に示す全ての実施例及び比較例に共通するポリブタジエンを主成分とするゴム組成物を用い、152℃で19分間の加硫により、直径38.7mm各例のソリッドコアを作成する。
【0055】
【表1】
【0056】
なお、上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「ポリブタジエン」 JSR社製、商品名「BR51」
・「アクリル酸亜鉛」 日本触媒社製、商品名「ZN-DA85S」
・「有機過酸化物」 ジクミルパーオキサイド、日油社製、商品名「パークミルD」
・「老化防止剤」 大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックNS-6」
・「酸化亜鉛」 堺化学工業社製、商品名「三種酸化亜鉛」
・「ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩」 和光純薬工業社製
・「ジメタクリル酸亜鉛」 和光純薬工業社製
・「水」 純水(正起薬品工業社製)
【0057】
カバー層(中間層及び最外層)の形成
次に、上記で得たコアの周囲に、下記表2に示す樹脂組成物を射出成形法により被覆して、厚さ1.2mm、ショアD硬度「66」の中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)を作製する。
【0058】
【表2】
【0059】
上記表中の詳細は下記の通りである。
「AM7318」 三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
「ハイミラン1706」 三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
「トリメチロールプロパン」 東京化成工業社製
【0060】
次いで、下記表3及び表4に示す樹脂組成物をラボプラストミルで160℃、30分で混錬した後、射出成形法により中間層被覆球体の周囲に被覆して、厚さ0.8mmの最外層が被覆された球体(スリーピースゴルフボール)を作製する。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成される。
【0061】
表3及び表4の材料は下記のとおりである。
「AM7318」 三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
「AM7327」 三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
「ダイアミドE62」ダイセル・エボニック社製のポリアミド12エラストマー
「多元共重合体A」下記の記載内容
「多元共重合体B」下記の記載内容
「架橋型・多元共重合体A」下記の記載内容
「架橋型・多元共重合体B」下記の記載内容
【0062】
多元共重合体A
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン95gとトルエン400mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222)0.17mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.187mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。その触媒溶液を上記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン27gを含むトルエン溶液150mLを30分間かけて、その耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃にて6時間分間共重合を行う。その後1,3-ブタジエン27gを含むトルエン溶液150mLを30分間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に70℃で1時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Aを得る。
【0063】
多元共重合体B
十分に乾燥した1,000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン80gとトルエン600mLを加える。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222)0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.275mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.1mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液とする。
その触媒溶液を前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温する。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaでその耐圧ステンレス反応器に投入し、更に1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80mLを8時間かけてその耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で計8.5時間共重合を行う。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させる。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Bを得る。
【0064】
「多元共重合体A」及び「多元共重合体B」の各共重合体については、ブタジエン、エチレン、スチレンの含有率(質量%)を、下記の方法で測定・評価する。
<ブタジエン、エチレン、スチレンの含有率>
各共重合体中のブタジエン、エチレン、スチレンの含有率を1H-NMR法により求める。その結果は下記のとおりである。
・「多元共重合体A」・・・ ブタジエン/エチレン/スチレン=32/49/19(質量%) 重量平均分子量(Mw)375×103
・「多元共重合体B」・・・ ブタジエン/エチレン/スチレン=14/70/16(質量%) 重量平均分子量(Mw)273×103
【0065】
架橋型・多元共重合体Aのパウダー
上記で得た「多元共重合体A」100質量部に対して、有機過酸化物としてジクミルパパーオキサイト1.0質量部を配合した組成物を160℃、30分の条件でシート状に加熱成形する。得られたシート状の架橋成形物をフライス盤及びボールミルを用いて研削・粉砕し、平均粒子径50~200μmの範囲のパウダーを採取する。粒子の大きさは、拡大レンズ付きのCCDカメラで計測し、上記の所定範囲のものを採取する。表中には、「多元A架橋パウダー」と称して記載する。
【0066】
架橋型・多元共重合体Bのパウダー
上記で得た「多元共重合体B」100質量部に対して、有機過酸化物としてジクミルパパーオキサイト1.0質量部を配合した組成物を160℃、30分の条件でシート状に加熱成形する。得られたシート状の架橋成形物をフライス盤及びボールミルを用いて研削・粉砕し、平均粒子径200μm以下のパウダーを採取する。粒子の大きさは、拡大レンズ付きのCCDカメラで計測し、上記の所定範囲のものを採取する。表中には、「多元B架橋パウダー」と称して記載する。
【0067】
上記スリーピースゴルフボールにおけるカバーの材料硬度及び反発弾性率を下記のとおり測定し、下記表3及び表4に示す結果が得られる。
【0068】
カバーの材料硬度(ショアD硬度)
カバーの樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置した。その後、ショアD硬度はASTM D2240-95規格に準拠して計測する。
【0069】
反発弾性率
樹脂材料をプレス機にて厚さ2mmのシート状に成形し、厚さ4mmに重ね合わせて23±1℃に温調した後、トリプソン式反発弾性装置を用いJIS-K 6255(2013)に基づいて測定する(なお、JIS-K 6255規格中に記載の落下角度は30度に調整して上記反発弾性率を測定する。)。
【0070】
混錬時の加工性
各例の樹脂成分をブレンドして混練り時の加工性について下記の基準により評価する。
〔評価〕
〇 ・・・ 混錬性が良好であり、加工性に優れている。
△ ・・・ 混錬時のパウダーがやや分散し難く、加工し難い。
- ・・・ 単体なので混錬は不要である。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
表3及び表4の実施例1~3及び比較例1~3,比較例6,7におけるゴルフボール用材料の材料硬度と反発弾性率との関係を示すグラフを図1に示す。これらの実施例と比較例との違いは、多元共重合体Bをそのままアイオノマー樹脂に配合するか、それとも、架橋型微粒子(パウダー)の形態で配合するかの違いである。その結果、図1に示すように、実施例1~3は、比較例6,7に比べると反発弾性率が高い。
【0074】
また、表3及び表4の実施例4,5及び比較例1,4,8,9におけるゴルフボール用材料の材料硬度と反発弾性率との関係を示すグラフを図2に示す。これらの実施例と比較例との違いは、多元共重合体Aをそのままアイオノマー樹脂に配合するか、それとも、架橋型微粒子(パウダー)の形態で配合するかの違いである。その結果、図2に示すように、実施例4,5は、比較例8,9に比べると反発弾性率が高い。
【0075】
表3及び表4の実施例6~8及び比較例10~12におけるゴルフボール用材料の材料硬度と反発弾性率との関係を示すグラフを図3に示す。これらの実施例と比較例との違いは、多元共重合体Bをそのままポリアミドエラストマーに配合するか、それとも、架橋型微粒子(パウダー)の形態で配合するかの違いである。その結果、図3に示すように、実施例6~8は、比較例10~12に比べると反発弾性率が高い。
図1
図2
図3