(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182303
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221201BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089796
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】吉野 隆晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AF93
2C057AG29
2C057AG41
2C057AG99
2C057AN01
2C057AP25
2C057AQ06
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】圧電層のクラックへの液体の侵入を抑制し、かつ、接着剤の余剰分を適切に捕捉できるようにする。
【解決手段】流路基板21と圧電層62との間に、圧力室30を封止する封止部材23が設けられている。さらに、流路基板21の表面21aに、接着領域Xから非接着領域Yに向かう延在方向に延び、接着領域Xと非接着領域Yとに跨る第1溝81と、非接着領域Yにおいて延在方向と交差する交差方向に延び、第1溝81に接続する第2溝82とが形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル及び前記ノズルに連通する圧力室をそれぞれ含む複数の個別流路が形成された流路基板であって、前記圧力室が開口した表面を有する流路基板と、
前記表面に接着剤を介して接着され、前記圧力室を封止する封止部材と、
前記封止部材の前記流路基板と反対側の面に接着剤を介して接着された圧電層、及び、前記圧電層の前記封止部材と反対側の面に形成された複数の個別電極であって、前記表面と直交する直交方向に前記複数の圧力室のそれぞれと重なる複数の個別電極を有するアクチュエータ基板と、を備え、
前記封止部材は、前記圧電層と異なる材料からなり、
前記表面は、前記封止部材が接着される接着領域と、前記封止部材が接着されない非接着領域と、を有し、
前記表面に、
前記接着領域から前記非接着領域に向かう延在方向に延び、前記接着領域と前記非接着領域とに跨る、第1溝と、
前記非接着領域において前記延在方向と交差する交差方向に延び、前記第1溝に接続する、第2溝と、
が形成されていることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記接着領域の全周に亘って、複数の前記第1溝と、前記第2溝とが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記非接着領域に、前記複数の個別流路と連通する開口が形成されており、
前記開口と前記接着領域との間に、前記第1溝及び前記第2溝が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記流路基板は、前記表面を有する第1プレートと、前記第1プレートの前記表面と反対側の裏面に積層された第2プレートと、を含み、
前記第1溝は、前記第1プレートに形成された貫通孔で構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路基板は、前記表面を有する第1プレートと、前記第1プレートの前記表面と反対側の裏面に積層された第2プレートと、を含み、
前記第1溝は、前記第1プレートの前記表面に形成された第1凹部で構成され、
前記第1凹部と大気とに連通する大気連通孔がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2溝は、前記第1プレートに形成された貫通孔で構成され、
前記第1プレートの前記裏面に、前記延在方向に延び、前記接着領域と前記非接着領域とに跨る、第2凹部が形成されており、
前記第2凹部は、前記第2溝に接続することを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記直交方向に重ならないことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第2凹部は、前記大気連通孔に連通することを特徴とする、請求項6又は7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記流路基板は、前記表面を有する第1プレートと、前記第1プレートの前記表面と反対側の裏面に積層された第2プレートと、を含み、
前記第2溝は、前記第1プレートに形成された貫通孔で構成され、
前記表面に、
複数の前記第2溝が、前記交差方向に互いに離隔して配置され、
前記交差方向に互いに隣接する2つの前記第2溝を連結する第1連結溝であって、凹部で構成される第1連結溝がさらに形成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記非接着領域において前記第2溝よりも前記延在方向の下流側に、前記交差方向に延びる第3溝がさらに形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第3溝は、前記第1プレートに形成された貫通孔で構成され、
前記表面に、
複数の前記第3溝が、前記交差方向に互いに離隔して配置され、
前記交差方向に互いに隣接する2つの前記第3溝を連結する第2連結溝であって、凹部で構成される第2連結溝がさらに形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第2溝及び前記第1連結溝を含む溝群と、前記第3溝及び前記第2連結溝を含む溝群とが、前記第1プレートの前記表面に形成された凹部で構成される第3連結溝によって互いに連結されていることを特徴とする、請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記非接着領域において前記第2溝よりも前記延在方向の上流側に、前記第2溝よりも前記延在方向の長さが短い第4溝であって、前記交差方向に延び、複数の前記第1溝を繋ぐ第4溝がさらに形成されていることを特徴とする、請求項9~12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
複数の前記第1溝が、前記圧力室の長さよりも短い間隔をあけて、前記交差方向に互いに離隔して配置されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を介して互いに接着された流路基板、封止部材及びアクチュエータ基板を備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流路ユニット(流路基板)の表面にインク封止膜(封止部材)が接着され、インク封止膜の表面に圧電層が接着された構成が示されている。特許文献1によると、インク封止膜(封止部材)は、インク透過性の低い材料、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されたものを好適に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、流路基板と圧電層との間に封止部材が設けられているため、仮に圧電層にクラックが生じたとしても、圧電層のクラックに液体が侵入せず、クラックへの液体の侵入による不具合(電極層のショート等)を回避できる。
【0005】
しかしながら、流路基板の表面に封止部材が接着され、さらに封止部材の表面に圧電層が接着されることで、接着剤の総量が多くなり、接着剤の余剰分がこれら部材の間から大量にはみ出し得る。この場合、他の部材(例えば、流路基板、封止部材及びアクチュエータ基板の接着に用いられる加圧装置)に接着剤が付着する問題が生じ得る。加圧装置に接着剤が付着すると、当該加圧装置を用いて流路基板等の積層体に対して別部材を組み付ける際に、加圧装置に付着した接着剤によって、積層体に対する別部材の位置合わせが困難になり得る。
【0006】
そこで、流路基板の表面に、接着剤の余剰分を捕捉するための溝を設けることが考えられる。しかし、当該溝の構成によっては、接着剤の余剰分を適切に捕捉することができず、上述した問題が生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、圧電層のクラックへの液体の侵入を抑制できると共に、接着剤の余剰分を適切に捕捉できる、液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、ノズル及び前記ノズルに連通する圧力室をそれぞれ含む複数の個別流路が形成された流路基板であって、前記圧力室が開口した表面を有する流路基板と、前記表面に接着剤を介して接着され、前記圧力室を封止する封止部材と、前記封止部材の前記流路基板と反対側の面に接着剤を介して接着された圧電層、及び、前記圧電層の前記封止部材と反対側の面に形成された複数の個別電極であって、前記表面と直交する直交方向に前記複数の圧力室のそれぞれと重なる複数の個別電極を有するアクチュエータ基板と、を備え、前記封止部材は、前記圧電層と異なる材料からなり、前記表面は、前記封止部材が接着される接着領域と、前記封止部材が接着されない非接着領域と、を有し、前記表面に、前記接着領域から前記非接着領域に向かう延在方向に延び、前記接着領域と前記非接着領域とに跨る、第1溝と、前記非接着領域において前記延在方向と交差する交差方向に延び、前記第1溝に接続する、第2溝と、が形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド3を含むプリンタ1の概略平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態においてプレート41の表面41aに形成された第1凹部281aを示す、
図4に対応する拡大図である。
【
図7】本発明の第2実施形態においてプレート41の裏面41bに形成された第2凹部282を示す、
図4に対応する拡大図である。
【
図8】本発明の第2実施形態において第1凹部281aと第2凹部282との関係を示す、
図4に対応する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るヘッド3は、
図1に示すように、プリンタ1に適用される。プリンタ1は、ヘッド3を保持しつつ走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動可能なキャリッジ2と、ヘッド3及びキャリッジ2の下方において用紙Pを支持するプラテン6と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構4とを備えている。ヘッド3の下面には、複数のノズル31が形成されている。
【0011】
キャリッジ2は、それぞれ走査方向に延びる一対のガイドレール7,8に支持されており、キャリッジモータ(図示略)の駆動によりガイドレール7,8に沿って走査方向に移動する。
【0012】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン6及びキャリッジ2を挟む位置に配置された2つのローラ対11,12を含む。ローラ対11,12は、搬送モータ(図示略)の駆動により、用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0013】
ヘッド3は、
図2及び
図3に示すように、複数のノズル31が形成された流路基板21と、流路基板21の表面21aに配置されたアクチュエータ基板22と、流路基板21とアクチュエータ基板22との間に配置された封止部材23とを含む。
【0014】
流路基板21は、
図3に示すように、鉛直方向に積層された8枚のプレート41~48で構成されている。
【0015】
プレート41には、複数の圧力室30が形成されている。プレート48には、複数のノズル31が形成されている。プレート41の表面41aが流路基板21の表面21aに該当し、プレート48の裏面48bが流路基板21の裏面21bに該当する。プレート41の表面41aに複数の圧力室30が開口し、プレート48の裏面48bに複数のノズル31が開口している。プレート41の裏面41b(表面41aと反対側の面)に、プレート42が積層されている。
【0016】
プレート43~46には、4本の共通流路29(
図2参照)が形成されている。プレート42,43には、圧力室30毎に、圧力室30と共通流路29とを連通させる連通路35が形成されている。プレート42~47には、圧力室30毎に、圧力室30とノズル31とを接続する接続路36が形成されている。
【0017】
4本の共通流路29は、
図2に示すように、それぞれ搬送方向に延び、走査方向に並んでいる。共通流路29は、搬送方向に配列された複数の圧力室30で構成される圧力室列毎に設けられている。4つの圧力室列は、走査方向に並んでいる。各共通流路29から、各圧力室列に属する複数の圧力室30に、連通路35(
図3参照)を介してインクが供給される。そして後述のようにアクチュエータ基板22の各アクチュエータが変形することで、圧力室30内のインクに圧力が付与され、接続路36を通ってノズル31からインクが吐出される。
【0018】
このように、流路基板21には、4本の共通流路29と、各共通流路29に連通する複数の個別流路32(ノズル31及び圧力室30を含む流路であり、共通流路29の出口から連通路35、圧力室30及び接続路36を介してノズル31に至る流路)とが形成されている。
【0019】
流路基板21には、さらに、それぞれチューブ等を介してインクタンク9(
図1参照)に連通する2つの供給路27及び2つの帰還路28が形成されている。各供給路27は、走査方向に互いに隣接する2つの共通流路29に連通し、インクタンク9から当該2つの共通流路29にインクを供給する。各帰還路28は、走査方向に互いに隣接する2つの共通流路29に連通し、当該2つの共通流路29からインクタンク9にインクを帰還させる。供給路27は共通流路29の搬送方向の上流側に配置され、帰還路28は共通流路29の搬送方向の下流側に配置されている。
【0020】
供給路27は、
図5に示すように、プレート41~43に形成された貫通孔で構成され、鉛直方向に延びている。供給路27は、上端において流路基板21の表面21aに開口し、下端において共通流路29と連通している。帰還路28も、図示を省略するが、供給路27と同様、プレート41~43に形成された貫通孔で構成され、鉛直方向に延びている。帰還路28は、上端において流路基板21の表面21aに開口し、下端において共通流路29と連通している。
【0021】
アクチュエータ基板22は、
図3に示すように、2つの圧電層61,62と、共通電極52と、複数の個別電極51とを含む。圧電層61,62及び共通電極52は、
図2に示すアクチュエータ基板22の外形を画定し、鉛直方向から見て流路基板21よりも一回り小さい矩形状である。圧電層61,62及び共通電極52は、流路基板21に形成された全ての圧力室30を覆っている。一方、個別電極51は、圧力室30毎に設けられており、圧力室30のそれぞれと鉛直方向(表面21aと直交する直交方向)に重なっている。
【0022】
封止部材23は、
図2に示すように、鉛直方向から見て流路基板21よりも一回り小さくかつアクチュエータ基板22よりも一回り大きい矩形状であり、アクチュエータ基板22の圧電層61,62及び共通電極52と同様、流路基板21に形成された全ての圧力室30を覆っている。
【0023】
複数の個別電極51及び共通電極52は、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。ドライバICは、共通電極52の電位をグランド電位に維持する一方、個別電極51の電位を所定の駆動電位とグランド電位との間で変化させる。このとき、圧電層61において個別電極51と共通電極52とで挟まれた部分(アクチュエータ)が、圧電横効果により面方向に収縮する。これに伴い、アクチュエータ基板22及び封止部材23において圧力室30と鉛直方向に重なる部分が圧力室30に向かって凸となるように変形することにより、圧力室30の容積が減少し、圧力室30内のインクに圧力が付与される。当該インクは、接続路36を通ってノズル31から吐出される。これと同時に、共通流路29内のインクが連通路35を通って圧力室30に供給され、また、インクタンク9から共通流路29にインクが供給される。
【0024】
封止部材23は、圧電層61,62と異なる材料(ステンレス鋼等の、インク透過性の低い材料)からなり、アクチュエータとして機能する部分を有していない。
【0025】
封止部材23は、
図3に示すように、流路基板21の表面21aに接着剤Aを介して接着され、圧力室30を封止している。アクチュエータ基板22の圧電層62は、封止部材23の表面(流路基板21と反対側の面)に、接着剤Bを介して接着されている。接着剤A,Bは、互いに同じ材料からなってよいし、互いに異なる材料からなってもよい。
【0026】
例えば、流路基板21を構成する8枚のプレート41~48を、互いに積層し、加圧装置を用いて接着した後、流路基板21の表面21aに接着剤Aを転写し、封止部材23を配置する。その後、封止部材23の表面に接着剤Bを滴下し、アクチュエータ基板22を配置する。そして、流路基板21、封止部材23及びアクチュエータ基板22の積層体を加圧装置を用いて加圧し、互いに接着する。
【0027】
流路基板21の表面21aは、
図2に示すように、封止部材23が接着される接着領域Xと、封止部材23が接着されない非接着領域Yとを有する。供給路27の開口である供給口27a、及び、帰還路28の開口である帰還口28aは、共に、非接着領域Yに設けられている。
【0028】
表面21aには、接着領域Xの全周に亘って(矩形状の接着領域Xの4辺のそれぞれに)、接着剤A,Bの余剰分を捕捉するための溝80が形成されている。供給口27aと接着領域Xとの間、及び、帰還口28aと接着領域Xとの間のそれぞれに、溝80が設けられている。
【0029】
溝80は、複数の第1溝81と、複数の第2溝82と、複数の第3溝83と、複数の第4溝84と、複数の第1連結溝91と、複数の第2連結溝92と、複数の第3連結溝93とを含む。
【0030】
複数の第1溝81は、それぞれ、接着領域Xの各辺において、当該辺と直交しかつ接着領域Xから非接着領域Yに向かう延在方向に延び、接着領域Xと非接着領域Yとに跨っている。延在方向は、接着領域Xの4辺において互いに異なる。接着領域Xの4辺のうち、搬送方向上流側の辺では搬送方向の上流側、搬送方向下流側の辺では搬送方向の下流側、走査方向の一方(
図2で左側)の辺では走査方向の一方、走査方向の他方(
図2で右側)の辺では走査方向の他方が、延在方向に該当する。
【0031】
複数の第1溝81は、接着領域Xの各辺に沿って等間隔D(圧力室30の長さLよりも短い間隔)で配置されている。
【0032】
複数の第2溝82は、それぞれ、非接着領域Yにおいて、接着領域Xの各辺と平行な方向(延在方向と交差する交差方向)に延び、第1溝81の延在方向の先端に接続している。第2溝82の幅は、第1溝81の幅よりも大きい。
【0033】
複数の第2溝82は、交差方向に互いに離隔して配置され、第1連結溝91によって互いに連結されている。第1連結溝91は、第2溝82と同様、非接着領域Yにおいて、接着領域Xの各辺と平行な方向(交差方向)に延びている。第1連結溝91の幅は、第2溝82の幅よりも小さく、第1溝81の幅と略同じである。
【0034】
なお、第1連結溝91は、第2溝82と同様、第1溝81の延在方向の先端に接続している。換言すると、第1溝81は、第2溝82に接続するものと、第1連結溝91に接続するものとが存在する。
【0035】
複数の第3溝83は、それぞれ、非接着領域Yにおいて、第2溝82よりも延在方向の下流側で、第2溝82と同様に接着領域Xの各辺と平行な方向(交差方向)に延びている。第3溝83の幅は、第2溝82の幅と略同じである。
【0036】
複数の第3溝83は、交差方向に互いに離隔して配置され、第2連結溝92によって互いに連結されている。第2連結溝92は、第3溝83と同様、非接着領域Yにおいて、第2溝82よりも延在方向の下流側で、接着領域Xの各辺と平行な方向(交差方向)に延びている。第2連結溝92の幅は、第3溝83の幅よりも小さく、第1溝81の幅及び第1連結溝91の幅と略同じである。
【0037】
第2溝82及び第1連結溝91を含む溝群と、第3溝83及び第2連結溝92を含む溝群とが、第3連結溝93によって互いに連結されている。第3連結溝93は、第1溝81と同様に延在方向(接着領域Xの各辺と直交しかつ接着領域Xから非接着領域Yに向かう方向)に延び、第1溝81と略同じ幅を有する。複数の第3連結溝93は、接着領域Xの各辺に沿って、第1溝81と同じ間隔D(
図2参照)で配置されている。第3連結溝93は、接着領域Xの各辺と平行な方向(交差方向)の両端の3つの第3連結溝93を除いて、第2溝82又は第1連結溝91を挟んで第1溝81と延在方向に沿って一列に配置されている。
【0038】
複数の第4溝84は、それぞれ、非接着領域Yにおいて、第2溝82よりも延在方向の上流側において、接着領域Xの各辺と平行な方向(交差方向)に延び、当該辺に沿って配置された複数の第1溝81を繋いでいる。第4溝94の幅は、第1溝81の幅と略同じである。
【0039】
図5に示すように、第2溝82及び第3溝83は、プレート41(第1プレート)に形成された貫通孔で構成されている。また本実施形態では、第1溝81も、プレート41に形成された貫通孔で構成されている。一方、第4溝84及び連結溝91~93は、プレート41の表面41aに形成された凹部で構成されている(
図5の第4溝84、連結溝93参照)。
【0040】
以上に述べたように、本実施形態によれば、流路基板21と圧電層62との間に、圧力室30を封止する封止部材23が設けられている(
図3及び
図5参照)。これにより、仮に圧電層62にクラックが生じたとしても、クラックへのインクの侵入を抑制できる。また、流路基板21の表面21aに、接着領域Xから非接着領域Yに向かう延在方向に延び、接着領域Xと非接着領域Yとに跨る第1溝81と、非接着領域Yにおいて延在方向と交差する交差方向に延び、第1溝81に接続する第2溝82とが形成されている(
図2及び
図4参照)。これにより、第1溝81に沿って接着領域Xから非接着領域Yへと流れた接着剤A,Bの余剰分が、第2溝82に捕捉され、接着剤A,Bの余剰分を適切に捕捉できる(ひいては、接着剤A,Bが他の部材に付着する問題を抑制できる)。
【0041】
接着領域Xの全周に亘って、複数の第1溝81と、第2溝82とが形成されている(
図2参照)。この場合、接着領域Xの全周に亘って、接着剤A,Bの余剰分を適切に捕捉できる。
【0042】
供給口27aと接着領域Xとの間、及び、帰還口28aと接着領域Xとの間のそれぞれに、第1溝81及び第2溝82が設けられている(
図2参照)。この場合、接着剤A,Bの余剰分が供給口27aや帰還口28aに流れ込むことが抑制され、供給口27aや帰還口28aが接着剤A,Bで閉塞される等の不具合を回避できる。
【0043】
第1溝81は、プレート41に形成された貫通孔で構成される(
図5参照)。この場合、第1溝81を深く形成でき、より多くの接着剤A,Bの余剰分を接着領域Xから非接着領域Yへと流し、第2溝82に捕捉させることができる。
【0044】
プレート41に形成された貫通孔で構成される複数の第2溝82が、プレート41の表面41aに形成された凹部で構成される第1連結溝91によって互いに連結されている(
図4参照)。第2溝82を所定の長さに亘って設ける場合において、1つの第2溝82を形成すると、貫通孔からなる第2溝82の長さが長くなることで、プレート41の剛性が低下してしまう。この点、本構成によれば、複数の第2溝82を凹部からなる第1連結溝91で連結することで、貫通孔からなる第2溝82それぞれの長さを短くでき、プレート41の剛性の低下を抑制できる。
【0045】
流路基板21の表面21aには、第1溝81及び第2溝82のみでなく、非接着領域Yにおいて第2溝82よりも延在方向の下流側に、交差方向に延びる第3溝83がさらに形成されている(
図4参照)。この場合、第1溝81に沿って接着領域Xから非接着領域Yへと流れた接着剤A,Bの余剰分において、第2溝82に捕捉されず、さらに延在方向の下流側に流れたものを、第3溝83で捕捉することができる。したがって、接着剤A,Bの余剰分をより適切に捕捉することができる(ひいては、接着剤A,Bが他の部材に付着する問題をより確実に抑制できる)。
【0046】
プレート41に形成された貫通孔で構成される複数の第3溝83が、プレート41の表面41aに形成された凹部で構成される第2連結溝92によって互いに連結されている(
図4参照)。第3溝83を所定の長さに亘って設ける場合において、1つの第3溝83を形成すると、貫通孔からなる第3溝83の長さが長くなることで、プレート41の剛性が低下してしまう。この点、本構成によれば、複数の第3溝83を凹部からなる第2連結溝92で連結することで、貫通孔からなる第3溝83それぞれの長さを短くでき、プレート41の剛性の低下を抑制できる。
【0047】
第2溝82及び第1連結溝91を含む溝群と、第3溝83及び第2連結溝92を含む溝群とが、プレート41の表面41aに形成された凹部で構成される第3連結溝93によって互いに連結されている。この場合、接着剤A,Bの余剰分を捕捉する経路が増え、接着剤A,Bの余剰分をより適切に捕捉することができる(ひいては、接着剤A,Bが他の部材に付着する問題をより確実に抑制できる)。
【0048】
流路基板21の表面21aには、第1溝81及び第2溝82のみでなく、非接着領域Yにおいて第2溝82よりも延在方向の上流側に、第2溝82よりも延在方向の長さが短い第4溝84であって、交差方向に延び、複数の第1溝81を繋ぐ第4溝84がさらに形成されている(
図4参照)。この場合、接着剤A,Bの余剰分を捕捉する経路が増え、接着剤A,Bの余剰分をより適切に捕捉することができる(ひいては、接着剤A,Bが他の部材に付着する問題をより確実に抑制できる)。
【0049】
複数の第1溝81は、圧力室30の長さLよりも短い間隔Dをあけて、交差方向に互いに離隔して配置されている(
図2参照)。この場合、第1溝81が密に配置されることで、接着剤A,Bの余剰分の補足効果が高まる(ひいては、接着剤A,Bが他の部材に付着する問題をより確実に抑制できる)。
【0050】
<第2実施形態>
続いて、
図6~
図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド203について説明する。
【0051】
第1実施形態(
図4参照)において、第1溝81は、流路基板21の最上層のプレート41(
図5参照)に形成された貫通孔で構成される。これに対し、第2実施形態(
図6参照)において、第1溝81は、プレート41に形成された第1凹部281で構成される。また、第2実施形態(
図7参照)では、プレート41の裏面41bに第2凹部282が形成されている。
【0052】
第2実施形態(
図6参照)において、各第1溝81(第1凹部281)の延在方向の基端は、大気連通孔283に連通している。大気連通孔283は、プレート41に形成された貫通孔で構成され、接続路(図示略)を介して大気と連通している。
【0053】
第2凹部282(
図7参照)は、第1凹部281と同様に延在方向(接着領域Xの各辺において、当該辺と直交しかつ接着領域Xから非接着領域Yに向かう方向)に延びる複数の直線部282aと、接着領域Xの各辺と平行な方向(延在方向と交差する交差方向)に互いに隣接する2つの直線部282aを繋ぐ湾曲部282bとを含む。直線部282aは、接着領域Xと非接着領域Yとに跨り、延在方向の先端において第2溝82又は第1連結溝91に接続している。湾曲部282bは、大気連通孔283に連通している。
【0054】
第1凹部281と第2凹部282とは、
図8に示すように、直交方向に重ならない。第2凹部282における交差方向に互いに隣接する2つの直線部282aの間に、第1凹部281が配置されている。また、各第1凹部281に対して延在方向の上流側に、湾曲部282bが配置されている。
【0055】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1溝81がプレート41に形成された第1凹部281で構成されることで、第1溝81を貫通孔で構成する場合(
図5参照)に比べ、プレート41の剛性を確保できる。また、第1凹部281が大気連通孔283を介して大気に連通することで、第1溝81(第1凹部281)における接着剤A,Bの詰まりを防止し、接着剤A,Bの余剰分を第1溝81(第1凹部281)を介して接着領域Xから非接着領域Yへとスムーズに流すことができる。
【0056】
プレート41の表面41aに形成された第1凹部281と、プレート41の裏面41bに形成された第2凹部282とが、共に第2溝82に接続している。これにより、プレート41と封止部材23との間の接着剤A,Bの余剰分(
図5参照)を、第1溝81(第1凹部281)を介して第2溝82に捕捉させるだけでなく、プレート41とプレート42との間の接着剤の余剰分をも、第2凹部282を介して第2溝82に捕捉させることができる。
【0057】
第1凹部281と第2凹部282とは、直交方向に重ならない(
図8参照)。第1凹部281と第2凹部282とが直交方向に重なる場合、プレート41の剛性が低下してしまう。この点、本構成によれば、プレート41の剛性の低下を抑制できる。
【0058】
第2凹部282が、大気連通孔283を介して大気に連通している(
図7参照)。これにより、第2凹部282における接着剤の詰まりを防止し、プレート41とプレート42との間の接着剤の余剰分を接着領域Xから非接着領域Yへとスムーズに流すことができる。
【0059】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0060】
上述の実施形態(
図2参照)では、接着領域Xの全周に亘って溝80が形成されているが、これに限定されない。例えば、供給口27a又は帰還口28aと接着領域Xとの間に溝80が形成され、接着領域Xに対して走査方向の両側には溝80が形成されなくてもよい。
【0061】
上述の実施形態(
図2参照)では、接着領域Xの各辺に沿って複数の第2溝82が互いに離隔して配置されているが、これに限定されない。例えば、接着領域Xの各辺に対して1つの長尺な第2溝が設けられてもよい。また、接着領域Xの全周を囲う環状の第2溝が設けられてもよい。ただし、環状の第2溝を設ける場合は、第2溝を貫通孔で構成すると第2溝を境に部材が分離してしまうため、第2溝を凹部で構成することが好ましい。
【0062】
上述の実施形態(
図2参照)において、延在方向(第1溝81が延びる方向)は、接着領域Xの辺と直交するが、これに限定されず、当該辺と交差すればよい。
【0063】
第3溝83、第4溝84、連結溝91~93等を省略してもよい。
【0064】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 プリンタ
3;203 ヘッド(液体吐出ヘッド)
21 流路基板
21a 表面
22 アクチュエータ基板
23 封止部材
27a 供給口(開口)
28a 帰還口(開口)
30 圧力室
31 ノズル
32 個別流路
41 プレート(第1プレート)
41a 表面
41b 裏面
42 プレート(第2プレート)
51 個別電極
62 圧電層
81 第1溝
82 第2溝
83 第3溝
84 第4溝
91 第1連結溝
92 第2連結溝
93 第3連結溝
281 第1凹部
282 第2凹部
283 大気連通孔
A,B 接着剤
X 接着領域
Y 非接着領域