(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182310
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089808
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和生
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB22
3H106DB32
3H106DC02
3H106EE34
3H106GB10
3H106KK20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体流路の大口径化に伴い、ソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくしても、ソレノイドバルブの重量化を抑制でき、ソレノイドバルブの磁性特性の変化を抑制できるソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】付勢部材23によって開口部方向へ付勢されており、ソレノイド21に通電することにより励磁されて付勢部材23の付勢方向とは反対方向に吸引される、可動コア部22の外周部に設けられたプランジャ24と、を備えたソレノイド部20と、ソレノイド部20の先端部に設けられ、プランジャ24と接続された、開口部13を閉塞可能なシール部材31と、シール部材31を可動コア部方向から支持する支持部32と、を備えた弁部30と、を有するソレノイドバルブ1であり、弁部30が、ソレノイド部20よりも外方向に延出した延出部33を有し、延出部33における支持部32の少なくとも一部が樹脂で形成されているソレノイドバルブ1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドに通電することにより可動する可動コア部と、前記可動コア部の外周部に設けられ、流体の流通する流路の開口部方向へ付勢された付勢部材と、前記付勢部材によって前記開口部方向へ付勢されており、前記ソレノイドに通電することにより励磁されて前記付勢部材の付勢方向とは反対方向に吸引される、前記可動コア部の外周部に設けられたプランジャと、を備えたソレノイド部と、
前記ソレノイド部の先端部に設けられ、前記プランジャと接続された、前記開口部を閉塞可能なシール部材と、前記シール部材を前記可動コア部方向から支持する支持部と、を備えた弁部と、
を有するソレノイドバルブであり、
前記弁部が、前記ソレノイド部よりも外方向に延出した延出部を有し、前記延出部における支持部の少なくとも一部が樹脂で形成されているソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記支持部が、前記プランジャにインサート成形されている請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記支持部が、樹脂からなる請求項1または2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記支持部が、少なくとも前記開口部の縁に対応する部位に設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記シール部材が、前記開口部の全面を閉塞する形状である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記シール部材が、前記開口部の縁に沿って前記開口部を閉塞する形状である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項7】
前記支持部が、前記シール部材の延出部における全面を支持する形状である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項8】
前記支持部に貫通孔が設けられ、前記シール部材に設けられた凸部が前記貫通口に挿入されて、前記支持部に前記シール部材が接続されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項9】
前記支持部を形成する樹脂が、ガラスファイバを含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【請求項10】
前記支持部が、前記シール部材と一体成形されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相の流体や液相の流体の流量制御を行うソレノイドバルブ(電磁弁)に関するものであり、特に、流体流量の大流量化に対応可能なソレノイドバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種製品における機能向上や新たな機能の付加にともない、製品中に流通する流体の流量が増大化していく傾向がある。従って、流体の流通する流路には、流体流量の増大化にともない、大きな流体圧力がかかり、大きな流体圧力を抑制するために流路の大口径化や流路の設計変更が要求されることがある。
【0003】
例えば、自動車のHEV化に起因したエンジン作動頻度の低下などにより、エンジン内の負圧発生時にキャニスタからエンジンへ供給する気化燃料の流量が増大する傾向にある。気化燃料の大流量化に伴って、キャニスタとエンジンを繋いでいる気化燃料の流路の圧力脈動が増加し、流路の支持点を通じて車体へ伝達する振動も増加するなどの問題があった。気化燃料の大流量化に対応するために、気化燃料の流路に接続したソレノイドバルブの導入ポートや導出ポートを大口径化して、伝播する圧力脈動を低減することは可能である。しかしながら、ソレノイドバルブの導入ポートや導出ポートの大口径化に伴い、ソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくする必要があり、ソレノイドバルブが重量化してしまうという問題があった。また、弁部のサイズを大きくすることにより、ソレノイドバルブの磁性特性が変化してソレノイドバルブ全体にわたって設計変更が必要となるという問題があった。
【0004】
そこで、ソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくすることなく、流体流路の圧力脈動の増加を防止するために、流入ポート内に流体を分岐させる板状部材を設けて、弁体の開閉に伴って発生する圧力波を前記板状部材で分解することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1では、流入ポート内に、別途、板状部材を設ける必要があるので、ソレノイドバルブの構造が複雑化し、また、ソレノイドバルブの製造が煩雑であるという問題があった。また、流入ポート内に、別途、板状部材を設ける構造では、流入ポートが依然として、大口径化されていないので、増大化する流体流量の制御に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、流体流路の大口径化に伴い、ソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくしても、ソレノイドバルブの重量化を抑制でき、また、ソレノイドバルブの磁性特性の変化を抑制できるソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]ソレノイドに通電することにより可動する可動コア部と、前記可動コア部の外周部に設けられ、流体の流通する流路の開口部方向へ付勢された付勢部材と、前記付勢部材によって前記開口部方向へ付勢されており、前記ソレノイドに通電することにより励磁されて前記付勢部材の付勢方向とは反対方向に吸引される、前記可動コア部の外周部に設けられたプランジャと、を備えたソレノイド部と、
前記ソレノイド部の先端部に設けられ、前記プランジャと接続された、前記開口部を閉塞可能なシール部材と、前記シール部材を前記可動コア部方向から支持する支持部と、を備えた弁部と、
を有するソレノイドバルブであり、
前記弁部が、前記ソレノイド部よりも外方向に延出した延出部を有し、前記延出部における支持部の少なくとも一部が樹脂で形成されているソレノイドバルブ。
[2]前記支持部が、前記プランジャにインサート成形されている[1]に記載のソレノイドバルブ。
[3]前記支持部が、樹脂からなる[1]または[2]に記載のソレノイドバルブ。
[4]前記支持部が、少なくとも前記開口部の縁に対応する部位に設けられている[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[5]前記シール部材が、前記開口部の全面を閉塞する形状である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[6]前記シール部材が、前記開口部の縁に沿って前記開口部を閉塞する形状である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[7]前記支持部が、前記シール部材の延出部における全面を支持する形状である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[8]前記支持部に貫通孔が設けられ、前記シール部材に設けられた凸部が前記貫通口に挿入されて、前記支持部に前記シール部材が接続されている[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[9]前記支持部を形成する樹脂が、ガラスファイバを含む[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
[10]前記支持部が、前記シール部材と一体成形されている[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のソレノイドバルブ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、シール部材と前記シール部材を支持する支持部を備えた弁部がソレノイド部よりも外方向に延出した延出部を有していることにより、流体流路の大口径化に伴い、従来のソレノイド部を用いたままソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくすることができるので、従来のソレノイド部を用いたまま流体流路の大口径化に対応することができる。また、本発明のソレノイドバルブによれば、前記延出部において、支持部の少なくとも一部が樹脂で形成されていることにより、ソレノイドバルブの磁性特性の変化を抑制しつつ、ソレノイドバルブの重量化を抑制することができる。
【0010】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、弁部の支持部がソレノイド部のプランジャにインサート成形されていることにより、従来のソレノイド部を用いても、弁部の延出部とソレノイド部との接続安定性が向上する。
【0011】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、支持部が樹脂からなることにより、ソレノイドバルブの重量化をより確実に抑制することができる。
【0012】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、支持部が、少なくとも、流体流路の開口部の縁に対応する部位に設けられていることにより、流体流路が大口径化されていても、流体流路の開口部に対するシール部材の封止性が確実に向上する。
【0013】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、支持部がシール部材の全面を支持する形状であることにより、流体流路が大口径化されていても、流体流路の開口部に対するシール部材の封止性がさらに確実に向上する。
【0014】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、支持部を形成する樹脂がガラスファイバを含むことにより、支持部の機械的強度が向上して、大口径化した流体流路に対するシール部材の封止性がさらに確実に向上しつつ、支持部の耐久性が向上する。
【0015】
本発明のソレノイドバルブの態様によれば、支持部がシール部材と一体成形されていることにより、延出部を有する弁部全体の機械的強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブ全体を説明する側面断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブの支持体を説明する平面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係るソレノイドバルブについて、図面を用いながら説明する。まず、本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブについて説明する。なお、
図1は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブ全体を説明する側面断面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドバルブの支持体を説明する平面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るソレノイドバルブ1は、流体Fの流通する上流側の配管(図示せず)に接続され、流体Fがソレノイドバルブ1へ流入する流体流路である流入ポート10と、流体Fの流通する下流側の配管(図示せず)に接続され、流体がソレノイドバルブ1から流出する流体流路である流出ポート11と、流入ポート10と流出ポート11に連通し、流体Fの流通する流路12に形成された開口部13と、ソレノイド(電磁石)21と、ソレノイド21に通電することにより可動する可動コア部22を備えたソレノイド部20と、ソレノイド部20の先端に設けられ、流路12の開口部13を閉塞可能なシール部材31を備えた弁部30と、を備えている。ソレノイドバルブ1内部では、流体Fは、流入ポート10から流路12へ流通し、流路12から流路12の開口部13を介して流出ポート11へ流通することで、ソレノイドバルブ1の上流側の配管からソレノイドバルブ1の下流側の配管へ流体Fが流通する。
【0019】
弁部30のシール部材31が、流路12の開口部13を閉塞、すなわち、流路12の開口部13をシールすることで、開口部13が封止されて、流路12から流出ポート11への流体Fの流通が停止される。従って、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13をシールすることで、ソレノイドバルブ1の上流側の配管からソレノイドバルブ1の下流側の配管へ流体Fが流通することが停止される。一方で、弁部30のシール部材31が、流路12の開口部13を開放、すなわち、流路12の開口部13のシール状態を解除することで、流路12から流出ポート11への流体Fの流通が開始される。従って、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13を開放することで、ソレノイドバルブ1の上流側の配管からソレノイドバルブ1の下流側の配管へ流体Fが流通する。上記から、弁部30のシール部材31が、流路12の開口部13の閉塞と開放を繰り返すことで、配管を流通する流体Fの流通量を制御することができる。
【0020】
図1では、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13を開放している状態なので、ソレノイドバルブ1の上流側の配管からソレノイドバルブ1の下流側の配管へ流体Fが流通する。流体Fは、気相の流体でもよく、液相の流体でもよい。
【0021】
図1、2に示すように、ソレノイドバルブ1のソレノイド部20は、給電部(図示せず)からソレノイド21に通電することにより可動する可動コア部22と、可動コア部22の外周部に設けられ、流体Fの流通する流路12の開口部13方向へ付勢された付勢部材23と、付勢部材23によって開口部13方向へ付勢されている、可動コア部22の外周部に設けられたプランジャ24と、を備えている。ソレノイド部20は、ソレノイド21によって励磁される部位である。ソレノイドバルブ1では、付勢部材23の外周部にプランジャ24が設けられている。従って、可動コア部22を中心に、可動コア部22と付勢部材23とプランジャ24が、略同軸上に配置されている。また、ソレノイドバルブ1では、プランジャ24が、ソレノイド部20の外周面を形成しており、ソレノイド21は、ソレノイド部20の外側に位置している。
【0022】
給電部からソレノイド21に電気が供給されると、ソレノイド部20のプランジャ24は、励磁されて、付勢部材23の付勢方向とは反対方向に位置するソレノイド21に吸引される。一方で、給電部からソレノイド21に電気が供給されていない状態では、プランジャ24は、励磁されずに、付勢部材23の付勢方向に付勢されている。プランジャ24が付勢部材23の付勢方向とは反対方向に吸引されると、プランジャ24が吸引されることに伴い、後述する弁部30が付勢部材23の付勢方向とは反対方向に移動して、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13を開放する。一方で、プランジャ24が、励磁されずに、付勢部材23の付勢方向に付勢されていると、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13に当接して、シール部材31が流路12の開口部13をシールする。
【0023】
付勢部材23としては、例えば、金属製のばね部材やコイルを挙げることができる。プランジャ24の材質としては、例えば、磁性ステンレスを挙げることができる。また、プランジャ24としては、例えば、環状部材が挙げられる。ソレノイド部20では、環状部材であるプランジャ24の内部に、付勢部材23と可動コア部22が収容されている。
【0024】
図1、2に示すように、ソレノイドバルブ1の弁部30は、ソレノイド部20の先端部25に設けられ、流路12の開口部13と対向している。弁部30は、流路12の開口部13を閉塞可能なシール部材31と、シール部材31を可動コア部22の方向、すなわち、流路12の開口部13とは反対の方向から支持する支持部32と、を備えている。ソレノイドバルブ1では、シール部材31は、支持部32を介して、プランジャ24と接続されている。
図2では、
図1と同じく、弁部30のシール部材31が流路12の開口部13を開放しているので、ソレノイドバルブ1の上流側の配管からソレノイドバルブ1の下流側の配管へ流体Fが流通する状態を示している。
【0025】
ソレノイドバルブ1では、流体Fの流量が増大化していることに対応して流路12の径方向の寸法が大型化している。流路12の径方向の寸法が大型化していることに対応して、弁部30は、ソレノイド部20の外周よりも外方向に延出した延出部33を有している。上記から、弁部30は、平面視にてソレノイド部20と重なり合う部位、すなわち、ソレノイド部20に対応した部位である中央部35と、中央部35から外方向に延出した延出部33と、を有している。延出部33は、平面視にてソレノイド部20と重なり合わない部位である。支持部32は、中央部35から延出部33にわたって設けられている。また、シール部材31は、中央部35と延出部33の全体にわたって設けられている。従って、シール部材31は、開口部13の全面を閉塞する形状となっている。弁部30は、シール部材31とシール部材31を支持する支持部32とを備えていることから、延出部33は、シール部材31とシール部材31を支持する支持部32とを備えている態様となっている。
【0026】
なお、「平面視」とは、弁部30の移動方向に対して平行方向且つ弁部30に対向した方向から視認した状態を意味する。
【0027】
延出部33は、流路12の径方向に沿って延出している。延出部33は、平板状の部位となっている。また、延出部33は、流路12の径方向の縁部まで延在している。弁部30が、延出部33を有することにより、大口径化された流路12の開口部13をシールすることができる。従って、弁部30は、流路12をシールするのに必要なシール径と同等、または前記シール径以上の大きさを有している。なお、
図2のソレノイドバルブ1では、弁部30は、流路12のシール径と同等の大きさを有している。
【0028】
弁部30が延出部33を有していることにより、流体Fの流路12の大口径化に対応していない従来のソレノイド部20を用いたまま、流体Fの流路12の大口径化に伴ってソレノイドバルブ1の弁部30のサイズを大きくすることができる。従って、ソレノイドバルブ1は、従来のソレノイド部20を用いたまま、流体Fの流路12の大口径化に対応することができる。
【0029】
ソレノイドバルブ1では、上記のように、延出部33には、可動コア部22の方向からシール部材31を支持する支持部32が設けられている。支持部32は、板状部材であり、同じく板状部材であるシール部材31と積層構造を形成している。支持部32は、延出部33においてシール部材31が変形して開口部13に対する封止性が低下することを防止する機能を有する。
【0030】
延出部33において、支持部32は、その少なくとも一部が樹脂で形成されている。延出部33において、支持部32の少なくとも一部が樹脂で形成されていることにより、ソレノイドバルブ1の磁性特性の変化、特に、プランジャ24の磁性特性の変化を抑制しつつ、ソレノイドバルブ1の重量化を抑制することができる。プランジャ24の磁性特性の変化を抑制できるので、従来のソレノイド部20を援用することが可能となる。
【0031】
支持部32は、少なくとも一部が樹脂で形成されていればよく、また、支持部32全体が樹脂からなる態様でもよい。
図2の弁部30では、例示として、支持部32全体が樹脂で形成されている。支持部32が樹脂からなることにより、ソレノイドバルブ1の重量化をより確実に抑制することができる。
【0032】
支持部32は、プランジャ24にインサート成形されている。支持部32がプランジャ24にインサート成形されていることで、支持部32とプランジャ24が一体化され、ひいては、弁部30がソレノイド部20の先端部25に固定されている。支持部32がプランジャ24にインサート成形されている結果、従来のソレノイド部20を用いても、弁部30の延出部33とソレノイド部20との接続安定性が向上する。
【0033】
ソレノイドバルブ1では、支持部32は、少なくとも開口部13の縁14に対応する部位に設けられていればよい。すなわち、支持部32は、少なくとも、平面視において開口部13の縁14と重なり合う位置に設けられていればよい。支持部32が開口部13の縁14に対応する部位に設けられていることにより、流路12が大口径化されていても、流路12の開口部13に対するシール部材31の封止性が確実に向上する。さらに、シール部材31は、開口部13の縁14に対応する部位に、開口部13方向へ突出したシール面34が形成されている。シール面34が形成されていることで、開口部13に対するシール部材31の封止性が確実に向上する。
【0034】
図2に示すように、ソレノイドバルブ1の弁部30では、支持部32が、延出部33の略全体にわたって設けられている。従って、支持部32は、シール部材31の延出部33における略全面を支持する形状である。支持部32が、延出部33の略全体にわたって設けられていることにより、シール部材31の延出部33における撓み等の変形がより確実に防止されるので、流路12が大口径化されていても、流路12の開口部13に対するシール部材31の封止性がさらに確実に向上する。
【0035】
支持部32とシール部材31との接続方法は、特に限定されず、ソレノイドバルブ1の弁部30では、支持部32の縁部に第1の貫通孔41が設けられ、シール部材31の縁部に設けられた凸部43が第1の貫通孔41に挿入されて第1の貫通孔41と嵌合されることで、支持部32にシール部材31が接続されている。シール部材31の縁部に設けられた凸部43が支持部32の縁部に設けられた第1の貫通孔41に挿入、嵌合されていることで、支持部32とシール部材31との接続安定性が得られる。また、
図2に示すように、凸部43には、返し部が設けられているので、支持部32とシール部材31との接続安定性が向上している。また、必要に応じて、さらに、支持部32にシール部材31を焼き付けることで、支持部32がシール部材31と一体成形された状態で、支持部32とシール部材31を接続してもよい。支持部32がシール部材31と一体成形されていることにより、延出部33を有する弁部30全体の機械的強度が向上する。
【0036】
また、ソレノイドバルブ1の弁部30では、シール部材31が可動コア部22と接続されるために、支持部32の中央部には第2の貫通孔42が設けられ、シール部材31の中央部に設けられた突起部44が第2の貫通孔42を貫通している状態となっている。シール部材31の突起部44の先端が可動コア部22の先端と当接していることで、シール部材31が可動コア部22と接続されている。シール部材31が可動コア部22と接続されていることで、ソレノイド部20と弁部30との連動性が向上する。
【0037】
図3に示すように、流路12の開口部13の径方向の形状が略円形であることに対応して、支持部32は、平面視略円形状となっている。支持部32の縁部には、複数の第1の貫通孔41が設けられ、支持部32の中央部には、第2の貫通孔42(
図3では、1つの貫通孔42)が設けられている。
図3では、支持部32の周方向に沿って、略等間隔に4つの第1の貫通孔41が設けられている。なお、図示しないが、開口部13の径方向の形状が略円形であることに対応して、シール部材31も、平面視略円形状となっている。
【0038】
支持部32の肉厚とプランジャ24の肉厚との関係は、特に限定されないが、例えば、支持部32の機械的強度と弁部30の軽量化のバランスの点から、プランジャ24の肉厚に対する支持部32の肉厚は、0.5以上3.0以下が好ましく、0.5以上2.0以下がより好ましく、0.7以上1.0以下が特に好ましい。
【0039】
支持部32を形成する樹脂種としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の点から、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。また、支持部32を形成する樹脂はガラスファイバを含んでいてもよい。支持部32を形成する樹脂がガラスファイバを含むことにより、支持部32の機械的強度が向上して、大口径化した流路12に対するシール部材31の封止性がさらに確実に向上しつつ、支持部32の耐久性が向上する。
【0040】
ガラスファイバの配合量は、特に限定されないが、例えば、ガラスファイバの配合量の下限値は、支持部32の機械的強度を確実に向上させる点から、樹脂100質量部に対して、10質量部が好ましく、30質量部が特に好ましい。一方で、ガラスファイバの配合量の上限値は、支持部32の成形性を確実に向上させる点から、樹脂100質量部に対して、50質量部が好ましく、40質量部が特に好ましい。
【0041】
シール部材31の材料としては、例えば、ゴム部材が挙げられる。ゴム部材の材料種としては、例えば、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が挙げられる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るソレノイドバルブについて説明する。第2実施形態に係るソレノイドバルブは、第1実施形態に係るソレノイドバルブと主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態に係るソレノイドバルブと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、
図4は、本発明の第2実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【0043】
第1実施形態に係るソレノイドバルブ1では、支持部32の縁部に第1の貫通孔41が設けられ、シール部材31の縁部に設けられた凸部43が第1の貫通孔41に挿入、嵌合されることで、支持部32にシール部材31が接続されていたが、これに代えて、
図4に示すように、第2実施形態に係るソレノイドバルブ2では、支持部32の縁部に第1の貫通孔は設けられていない態様となっている。
【0044】
従って、ソレノイドバルブ2では、シール部材31の縁部に凸部は設けられていない。一方で、ソレノイドバルブ2でも、支持部32の中央部には第2の貫通孔42が設けられ、シール部材31の中央部には突起部44が設けられている。突起部44が第2の貫通孔42を貫通している状態となっていることで、シール部材31が可動コア部22と接続されている。
【0045】
ソレノイドバルブ2では、例えば、支持部32表面にシール部材31が焼き付けられていることで、支持部32がシール部材31と一体成形されている。支持部32がシール部材31と一体成形されていることで、支持部32にシール部材31が接続、固定されている。また、ソレノイドバルブ2でも、支持部32は、ソレノイド部20のプランジャ24にインサート成形されている。支持部32がプランジャ24にインサート成形されていることで、シール部材31と支持部32とプランジャ24が一体化されている。
【0046】
ソレノイドバルブ2では、支持部32の縁部にシール部材31を接続するための第1の貫通孔が設けられていなくても、支持部32表面にシール部材31が焼き付けられて接続、固定されていることで、支持部32とシール部材31との接続安定性が得られる。
【0047】
次に、本発明の第3実施形態に係るソレノイドバルブについて説明する。第3実施形態に係るソレノイドバルブは、第1、第2実施形態に係るソレノイドバルブと主要な構成要素は共通しているので、第1、第2実施形態に係るソレノイドバルブと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、
図5は、本発明の第3実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【0048】
第1実施形態に係るソレノイドバルブ1、第2実施形態に係るソレノイドバルブ2では、いずれも、シール部材31は、弁部30全体、すなわち、弁部30の中央部35と延出部33に設けられ、シール部材31は流路12の開口部13の全面を閉塞する形状となっていたが、これに代えて、
図5に示すように、第3実施形態に係るソレノイドバルブ3では、弁部30の中央部35には、シール部材31が設けられておらず、延出部33にシール部材31が設けられている態様となっている。
【0049】
上記から、ソレノイドバルブ3では、シール部材31が、流路12の開口部13の縁に沿って開口部13を閉塞する形状となっている。シール部材31は、平面視リング状の部材である。従って、弁部30の中央部35では、流路12の開口部13に対向する支持部32の表面36は、露出している。なお、ソレノイドバルブ3でも、シール部材31には、開口部13の縁14に対応する部位に、開口部13方向へ突出したシール面34が形成されている。
【0050】
ソレノイドバルブ3では、支持部32の縁部に第1の貫通孔41が設けられ、平面視リング状のシール部材31に複数の凸部43が設けられている。シール部材31の凸部43が支持部32の第1の貫通孔41に挿入されることで、支持部32にシール部材31が接続されている。
【0051】
ソレノイドバルブ3では、弁部30の中央部35にシール部材31が設けられていなくても、弁部30の中央部35では、支持部32の表面36が、流路12の開口部13を閉塞することができる。また、シール部材31が、流路12の開口部13の縁に沿って開口部13を閉塞することができる。従って、ソレノイドバルブ3でも、弁部30は、流路12の開口部13を閉塞することができる。また、シール面34が形成されていることで、開口部13に対するシール部材31の封止性が確実に向上する。
【0052】
次に、本発明の第4実施形態に係るソレノイドバルブについて説明する。第4実施形態に係るソレノイドバルブは、第1~第3実施形態に係るソレノイドバルブと主要な構成要素は共通しているので、第1~第3実施形態に係るソレノイドバルブと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、
図6は、本発明の第4実施形態に係るソレノイドバルブの弁部とソレノイド部を説明する側面断面図である。
【0053】
第1実施形態に係るソレノイドバルブ1では、支持部32の縁部に第1の貫通孔41が設けられ、シール部材31の縁部に設けられた凸部43が第1の貫通孔41に挿入、嵌合されることで、支持部32にシール部材31が接続され、さらに、支持部32の中央部に第2の貫通孔42が設けられ、シール部材31の中央部に設けられた突起部44が第2の貫通孔42を貫通していることで、シール部材31が可動コア部22と接続されていた。これに代えて、
図6に示すように、第4実施形態に係るソレノイドバルブ4では、支持部32の縁部に第1の貫通孔41は設けられておらず、シール部材31の縁部に凸部43は設けられていない。さらには、支持部32の中央部に第2の貫通孔42は設けられておらず、シール部材31の中央部に突起部44は設けられていない。
【0054】
ソレノイドバルブ4では、支持部32は、中央部35と延出部33の全体にわたって設けられている。また、シール部材31は、中央部35と延出部33の全体にわたって設けられている。平坦状である支持部32の表面36にシール部材31が載置されて、支持部32とシール部材31の積層構造が形成されている。支持部32とシール部材31の接続、固定方法は、特に限定されず、例えば、支持部32にシール部材31を焼き付けて、支持部32とシール部材31を一体化させる方法が挙げられる。
【0055】
ソレノイドバルブ4では、支持部32の可動コア部22と対向した面に、可動コア部22方向へ突出した突出部45が設けられている。ソレノイドバルブ4では、支持部32の突出部45の先端が可動コア部22の先端と当接していることで、支持部32が可動コア部22と接続されている。また、ソレノイドバルブ4では、支持部32の突出部45側面にて、突出部45とプランジャ24がインサート成形されている。突出部45がプランジャ24とインサート成形されていることで、支持部32とプランジャ24が一体化されている。
【0056】
ソレノイドバルブ4では、第1の貫通孔41と第1の貫通孔41に挿入される凸部43、さらには、第2の貫通孔42と第2の貫通孔42に挿入される突起部44が、設けられていなくても、支持部32表面にシール部材31が焼き付けられて接続、固定されていることで、支持部32とシール部材31との接続安定性が得られる。
【0057】
次に、本発明のソレノイドバルブについて、他の実施形態を説明する。上記各実施形態では、シール部材31は、開口部13の縁14に対応する部位に、開口部13方向へ突出したシール面34が形成されていたが、これに代えて、シール面34は形成されていなくてもよい。すなわち、開口部13と対向するシール部材31の面は、平坦面でもよい。また、上記各実施形態では、支持部32は、シール部材31の延出部33における略全面を支持する形状であったが、これに代えて、支持部32は、シール部材31の延出部33の一部領域を支持する形状でもよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、支持部32全体が樹脂で形成されていたが、これに代えて、支持部32の一部が樹脂、他の一部が金属で形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のソレノイドバルブは、流体流路の大口径化に伴い、ソレノイドバルブの弁部のサイズを大きくしても、ソレノイドバルブの重量化を抑制でき、また、ソレノイドバルブの磁性特性の変化を抑制できるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、自動車に搭載されたキャニスタとエンジンを繋いでいる気化燃料の流体流路に設置して、気化燃料の流量を制御する分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3、4 ソレノイドバルブ
20 ソレノイド部
22 可動コア部
23 付勢部材
24 プランジャ
30 弁部
31 シール部材
32 支持部
33 延出部