(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182331
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089838
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521233736
【氏名又は名称】台湾三墾電気股▲分▼有限公司
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 岳樹
(72)【発明者】
【氏名】廖 振宇
(72)【発明者】
【氏名】中野 利浩
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS02
5H730AS11
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG05
5H730FG22
5H730VV03
5H730VV06
5H730XC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイナミック負荷変動に対する応答性を改善したスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】交流入力電力ACを所望の直流出力電力に変換してLED負荷2に供給するスイッチング電源装置1であって、オンオフ制御されるスイッチング素子であるスイッチング素子Q1と、LED負荷2に直列に接続され、インピーダンスを可変制御することでLED負荷2に流れる電流リプルを低減するリプル電流低減回路5と、LED負荷2とリプル電流低減回路5との接続点Bにおけるフィードバック電圧V
FB
2に基づきスイッチング素子Q1をオンオフ制御する制御回路4と、を具備する。制御回路4は、調光信号の応答を所定時間の間不感させて出力電圧V
outを初期電圧まで上昇させ、所定時間経過後にフィードバック電圧V
FB
2の電圧リプルの大きさに応じて設定した目標平均電圧で、フィードバック電圧V
FB
2を平均値制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力電力を所望の直流出力電力に変換してLED負荷に供給するスイッチング電源
装置であって、
オンオフ制御されるスイッチング素子と、
前記LED負荷に直列に接続され、インピーダンスを可変制御することで前記LED負
荷に流れる電流リプルを低減するリプル電流低減回路と、
前記LED負荷と前記リプル電流低減回路との接続点におけるフィードバック電圧に基
づき前記スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路と、を具備し、
前記制御回路は、調光信号に基づき前記LED負荷に流れる電流を可変制御することで
前記LED負荷の照度を調光する調光演算器と、
前記フィードバック電圧の電圧リプルの大きさに応じて設定した目標平均電圧で、前記
フィードバック電圧を平均値制御し、前記調光演算器からの調光目標値の増加を検出して
前記調光目標値の不感時間を設け、前記不感時間帯に前記LED負荷とリプル電流低減回
路の電圧を所定の目標電圧まで上昇させ、かつ、前記不感時間経過後に前記調光目標値に
基づき制御を行うことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記調光演算器からの調光目標値の減少を検出して前記演算信号の不
感時間を設け、前記不感時間帯に前記LED負荷とリプル電流低減回路の電圧を所定の目
標電圧まで上昇させ、かつ、前記不感時間経過後に前記調光目標値に基づき制御を行うこ
とを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記調光演算器からの調光目標値を徐々に変化させて目標値に到達さ
せながら制御を行うことを特徴とする請求項1乃至2項記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記目標平均電圧で前記フィードバック電圧を平均値制御に移行した
後、前記フィードバック電圧のボトム電圧を検出し、検出したボトム電圧が予め設定され
た基準ボトム電圧になるように前記目標平均電圧を補正することを特徴とする請求項1乃
至3項記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、調光信号によって前記LED負荷を流れるLED電流が小さくなるほ
ど、低い前記目標平均電圧に設定することを特徴とする請求項1乃至3項記載のスイッチ
ング電源装置。
【請求項6】
前記制御回路は、入力電圧が大きいほど、低い前記目標平均電圧に設定することを特徴
とする請求項1乃至3項記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流入力電力を所望の直流出力電力に変換してLED負荷に供給するスイッ
チング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、以下に示す特許文献1によって、簡素な電源構成でLED負荷に流れる電
流の電流リプルを小さくするスイッチング電源装置を提供した。特許文献1では、LED
負荷に直列に接続されリプル電流低減回路として、MOSFET等で構成された可変イン
ピーダンス素子を備えたフィードバック型定電流制御回路を用いている。この構成により
、LED負荷の両端電圧を一定にし、LED負荷に流れる電流の電流リプルを低減するよ
うに制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、LED負荷とリプル電流低減回路との接続点におけるフィードバック電
圧V
FBの平均電圧が予め設定された目標平均電圧V
refになるようにスイッチング素
子をオンオフ制御することにより直流出力電力を所定値に制御している。このフィードバ
ック電圧V
FBは、
図7に示すように、出力電圧V
OUTと同様の電圧リプル(電圧変動
)を含む。そして、フィードバック電圧V
FBの電圧リプルは、
図7(a)、(b)に示
すように、負荷の大きくなるほど大きくなり、
図7(c)、(d)に示すように、出力コ
ンデンサの劣化に伴って大きくなる。
【0005】
そして、
図7(d)に示すようにフィードバック電圧V
FBが電圧リプルによって可変
インピーダンス素子が定電流動作できない電圧以下に下がると、LED負荷の両端電圧が
必要な電圧を維持できなくなり、結果としてLED負荷に流れる電流値が周期的に下がっ
てちらつきとして目に見えてしまう。従って、可変インピーダンス素子が定電流制御を行
う事ができる最低限の電圧や各種バラつき(目標平均電圧V
ref等)、そして、過渡動
作時におけるフィードバック電圧V
FBのアンダーシュートを考慮して設定した動作マー
ジン電圧V
Mを設定し、この動作マージン電圧V
Mをフィードバック電圧V
FBが下回ら
ないように、目標平均電圧V
refが設定される。
【0006】
しかしながら、このように設定された目標平均電圧V
refは、出力コンデンサのある
程度の劣化や最大負荷時の電圧リプルが大きい状態を見越して設定することになる。従っ
て、出力コンデンサが劣化していない場合や、軽負荷時や中負荷時の電圧リプルが小さい
状態では、
図7(a)、(b)に示すように、フィードバック電圧V
FBが動作マージン
よりもかなり余裕を持った高い電圧で推移することになり、その余裕分が電源損失となっ
てしまうという問題点があった。
また、調光機能を備えたスイッチング電源装置では、例えば調光数%などの深調光から
80%あるいは100%調光から10%に明るさを可変した場合、急激な負荷変動を伴う
ためスイッチング電源装置のフィードバック制御の応答が追い付かず前述の動作マージン
V
Mを割り込み、明るさのちらつきが出てしまう問題を生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、その課題を解決し、電源効率をさ
らに改善するとともに、調光に伴うダイナミック負荷変動の影響によるちらつきを無くす
ことのできるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチング電源装置は、交流入力電力を所望の直流出力電力に変換してLE
D負荷に供給するスイッチング電源装置であって、オンオフ制御されるスイッチング素子
と、前記LED負荷に直列に接続され、インピーダンスを可変制御することで前記LED
負荷に流れる電流リプルを低減するリプル電流低減回路と、前記LED負荷と前記リプル
電流低減回路との接続点におけるフィードバック電圧に基づき前記スイッチング素子をオ
ンオフ制御する制御回路と、を具備し、前記制御回路は、調光信号に基づき前記LED負
荷に流れる電流を可変制御することで前記LED負荷の照度を調光する調光演算器と、前
記フィードバック電圧の電圧リプルの大きさに応じて設定した目標平均電圧で、前記フィ
ードバック電圧を平均値制御し、前記調光演算器からの調光目標値の増加を検出して前記
調光目標値の不感時間を設け、前記不感時間帯に前記LED負荷とリプル電流低減回路の
電圧を所定の目標電圧まで上昇させ、かつ、前記不感時間経過後に前記調光目標値に基づ
き制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、調光信号に大きな変化があった場合でも、LED負荷とリプル電流低
減回路の動作電圧を確保することで、ちらつきを生じずに安定した調光を行える。また、
フィードバック電圧VFB2の電圧リプルが小さい動作環境では、目標平均電圧を低い値
に設定することができ、電源効率を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスイッチング電源装置の実施の形態の構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に示す演算器の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すスイッチング電源装置における調光信号DIMの大幅な変化の条件下での各部位の波形である。
【
図4】本発明に係るスイッチング電源装置の実施の形態をバックブーストコンバータで構成した例を示す回路図である。
【
図5】
図4に示す制御ICの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示すスイッチング電源装置における出力電圧及びフィードバック電圧の波形図である。
【
図7】従来のスイッチング電源装置における出力電圧及びフィードバック電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態に
おいて、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0012】
本実施の形態のスイッチング電源装置は、交流入力電力を直流出力電力に変換してLE
D負荷に供給するスイッチング電源装置であって、LED負荷に直列に接続されリプル電
流低減回路として、MOSFET等で構成された可変インピーダンス素子を備えたフィー
ドバック型定電流制御回路を用い、LED負荷および直列に接続されたリプル電流低減回
路の出力電圧Voutを起動時に予め設定された目標電圧まで上昇させ、目標電圧に到達
後、LED負荷とリプル電流低減回路との接続点におけるフィードバック電圧VFB2の
平均電圧を、フィードバック電圧VFB2の電圧リップルの大きさに応じて変化させる。
【0013】
(実施の形態)
実施の形態のスイッチング電源装置1は、直列接続されたn個のLED素子(LED2
1~LED2n)からなるLED負荷2を駆動するフライバック型コンバータであり、図
1を参照すると、整流回路DBと、トランスTRと、スイッチング素子Q1と、整流平滑
回路3と、制御回路4と、リプル電流低減回路5と、補助電源6とを備えている。
【0014】
整流回路DBは、周知のダイオードブリッジ回路であり、交流入力電源ACに接続され
、交流入力電力を一方向の脈流に整流し、トランスTRに出力する。
【0015】
トランスTRは、一次巻線W1と二次巻線W2と三次巻線W3とを備えている。一次巻
線W1の一端は、整流回路DBに接続され、他端は、スイッチング素子Q1のドレイン端
子に接続されている。二次巻線W2の両端間には、整流平滑回路3が接続され、三次巻線
W3の両端間には、補助電源6が接続されている。
【0016】
スイッチング素子Q1は、制御回路4で生成された駆動信号(PWM信号)により駆動
されるFET(Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transi
stor)等の素子で構成される。本実施の形態では、スイッチング素子Q1をMOSFET
として説明する。スイッチング素子Q1のソース端子は接地され、ゲート端子は制御回路
4のVG端子に接続されている。
【0017】
整流平滑回路3は、ダイオードD1及びコンデンサC1から構成され、ダイオードD1
のカソードとコンデンサC1の一端との接続点AがLED負荷2を構成するLED21の
アノードに接続され、コンデンサC1の他端が接地されている。なお、コンデンサC1は
、出力コンデンサであり、本実施の形態では、電解コンデンサで構成したが、他のコンデ
ンサでも良い。そして、電解コンデンサの寿命と容量については、一般に電解液が封口部
を介して外部に蒸散する現象が支配的であり、静電容量の減少、損失角の正接の増大とな
って現れる。
【0018】
リプル電流低減回路5は、インピーダンスを可変制御するフィードバック型定電流制御
回路として機能し、可変インピーダンス素子Q2と、検出抵抗Rsと、を備えている。可
変インピーダンス素子Q2は、FET、IGBT、BiTr等の素子で構成される。本実
施の形態では、可変インピーダンス素子Q2をMOSFETとして説明する。
【0019】
可変インピーダンス素子Q2のドレイン端子は、LED負荷2を構成するLED2nの
カソードに接続され、ソース端子は検出抵抗Rsを介して接地され、ゲート端子は制御回
路4のZR端子を介して誤差増幅器AMP1の出力端子に接続されている。
【0020】
検出抵抗Rsと可変インピーダンス素子Q2のソース端子との接続点は、制御回路4の
cc端子を介して誤差増幅器AMP1の反転入力端子に接続されている。検出抵抗Rsは
、LED負荷2に流れるLED電流ILEDを電圧信号に変換して誤差増幅器AMP1に
出力する。
【0021】
調光演算器47は、DIM端子から入力される調光信号に応じたデジタル化された調光
目標値を生成し、DAC48は、調光演算器47によって生成されたデジタル化された調
光目標値をアナログ信号に変換して誤差増幅器AMP1の非反転入力端子に入力する。
【0022】
誤差増幅器AMP1の非反転入力端子は、DAC48からアナログ信号に変換された調
光目標値の信号(参照電圧値VIR)を入力する。
【0023】
誤差増幅器AMP1の出力端子は、可変インピーダンス素子Q2のゲート端子に接続さ
れる。誤差増幅器AMP1は、LED負荷2に流れるLED電流ILEDと基準値(参照
電圧値VIR)とに基づく誤差信号を可変インピーダンス素子Q2に出力する。詳細には
、誤差増幅器AMP1は、LED電流ILEDが基準値(参照電圧値VIR)よりも小さ
くなるほど誤差信号の電圧レベルを大きくし、可変インピーダンス素子Q2のドレイン・
ソース間の抵抗値を低くする。
また、誤差増幅器AMP1は、LED電流ILEDが基準値(参照電圧値VIR)より
も大きくなるほど誤差信号の電圧レベルを小さくし、可変インピーダンス素子Q2のドレ
イン・ソース間の抵抗値を高くするように動作する。
【0024】
すなわち、リプル電流低減回路5の可変インピーダンス素子Q2は、誤差増幅器AMP
1の出力に応じて、LED電流ILEDが基準値(参照電圧値VIR)になるように、ド
レイン・ソース間の抵抗値を連続的に変化させる可変インピーダンス素子として機能する
。これにより、LED電流ILEDに含まれる電流リプルを低減することができる。なお
、リプル電流低減回路5の応答速度は、制御回路4の応答速度よりも高く設定され、好ま
しくは交流入力電源ACの周波数よりも高く設定される。
【0025】
制御回路4は、スタート部41と、内部電源部42と、ADC(アナログデジタルコン
バータ)43と、演算器44と、PWM生成部45と、ドライバ46と、調光演算器47
と、DAC(デジタルアナログコンバータ)48とを備えている。なお、制御回路4は、
全部がデジタル制御回路(ソフトウェアによって動作する回路も含む)でも良く、またそ
の構成要素の一部がデジタル制御回路であっても良く、さらに、全部がアナログ制御回路
であっても良い。
【0026】
スタート部41は、ST端子と抵抗R2とを介して整流回路DBとトランスTRの一次
巻線W1との接続点に接続されていると共に、Vcc端子を介してダイオードD2及びコ
ンデンサC2から構成される補助電源6に接続されている。スタート部41は、起動時に
補助電源6のコンデンサC2を充電し、起動後に補助電源6からの電力を、制御回路4内
の内部電源を生成する内部電源回路(REG)42に供給する。
【0027】
ADC431は、CV1端子を介して、整流平滑回路3の電圧を検出する電圧検出回路
7を構成する抵抗R3とR4の接続点に接続され、該接続点の電圧がフィードバック電圧
VFB1とし入力される。
ADC432は、CV2端子を介して、LED負荷2とリプル低減回路5(可変インピ
ーダンス素子Q2のドレイン端子)の接続点Bに接続され、接続点Bの電圧がフィードバ
ック電圧VFB2とし入力される。
そして、ADC431、ADC432は、フィードバック電圧VFB1、VFB2が含
む電圧リプルの周期よりも十分に短い間隔(例えば、20μs)でフィードバック電圧V
FB1、VFB2をサンプリングし、デジタル化された電圧に変換して演算器44に出力
する。
【0028】
演算器44は、
図2を参照すると、初期電圧設定部440と、平均電圧算出部441と、
平均値制御部442と、操作量算出部443と、ボトム電圧検出部444と、ボトム電圧
比較部445と、目標値補正部446、目標値設定部447として機能する。
【0029】
初期電圧設定部440は、起動時に初期設定する初期電圧とADC431から入力され
るフィードバック電圧VFB1とを比較することで、初期電圧とフィードバック電圧VF
B1との誤差を算出し、算出した誤差を誤差信号Vstとして操作量算出部443に出力
する。
ここで初期電圧はLED負荷2とリプル低減回路5とが定電流制御を行う事ができる最
低限の電圧以上に設定されている。
【0030】
平均電圧算出部441は、ADC432から入力されるフィードバック電圧VFB2に
基づき、例えば、交流入力電源ACの1周期毎にフィードバック電圧VFB2の平均電圧
VAveを算出し、算出した平均電圧VAveを平均値制御部442に出力する。
【0031】
操作量算出部443は、起動時において初期電圧近傍までA点の出力電圧が上昇すると
、初期電圧設定部440の誤差信号から平均値制御部442の誤差信号へ切り替える。こ
の切り替え移行時の出力電圧変動を緩やかにしてLED負荷のちらつきなどの誤動作を防
止するために、平均値制御部442からの誤差信号を予め設定された上限値に設定する。
これは、まず起動時に初期電圧設定部440によるフィードバック制御が行われて整流
平滑回路7の接続点Aの出力電圧Voutが初期電圧に向けて上昇していく。出力電圧V
outが初期電圧に到達するまでに平均値制御部442からの誤差信号が予め設定された
上限値に達する。ここで、操作量算出部443は初期電圧設定部440によるフィードバ
ック制御から平均値制御部442によるフィードバック制御へと切り替える。次に、平均
値制御部442の誤差信号を目標平均電圧Vrefと平均電圧VAveとの誤差信号に基
づき上限値から徐々に低下させ、予め設定された下限値に達する。下限値に達した時点で
目標平均電圧Vrefを目標値補正部446からの補正値で補正するように移行させる。
【0032】
操作量算出部443は、まず起動時の初期電圧設定部440から入力される誤差信号に
基づいて、スイッチング素子Q1をオンオフ制御するPWM(パルス幅変調)信号のオン
時間を増減させる操作量Δを算出し、算出した操作量ΔをPWM生成部45に出力する。
算出した操作量Δがほぼゼロの所定の範囲内になると、初期電圧設定部440から入力
される誤差信号を切り離して、平均値制御部442から入力される誤差信号に基づいて、
スイッチング素子Q1をオンオフ制御するPWM(パルス幅変調)信号のオン時間を増減
させる操作量Δを算出し、算出した操作量ΔをPWM生成部45に出力する。
【0033】
ボトム電圧検出部444は、ADC43から入力されるフィードバック電圧VFB2の
ボトム電圧VBを検出する。ボトム電圧検出部444は、例えば、ADC43から入力さ
れるフィードバック電圧VFB2電圧値が、1サンプリング前の電圧値と1サンプリング
後の電圧値とのいずれにも下回った場合、その電圧値をボトム電圧VBとして検出する。
【0034】
ボトム電圧比較部445は、予め設定された基準ボトム電圧VBrefと、ボトム電圧
検出部444によって検出されたボトム電圧VBとを比較し、比較結果を目標値補正部4
46に出力する。なお、基準ボトム電圧VBrefは、各種素子のバラつきや過渡動作時
におけるフィードバック電圧VFB2のアンダーシュートを考慮しても、可変インピーダ
ンス素子である可変インピーダンス素子Q2が定電流制御を行う事ができる最低限の電圧
を上回る値に設定されている。
【0035】
目標値補正部446は、ボトム電圧VBが基準ボトム電圧VBrefを下回っている場
合、平均値制御部442が平均電圧VAveと比較する目標平均電圧Vrefを上げる方
向に補正し、ボトム電圧VBが基準ボトム電圧VBrefを上回っている場合、平均値制
御部442が平均電圧VAveと比較する目標平均電圧Vrefを下げる方向に補正する
。なお、目標平均電圧Vrefの補正幅は、予め設定された補正値としても良く、ボトム
電圧VBと基準ボトム電圧VBrefとの差分に基づいて算出された補正値としても良い
。
【0036】
目標値設定部447は、調光演算器47によって生成された基準電圧値を目標平均電圧
Vrefに変換する変換テーブルや変換式を有し、調光演算器47によって生成された調
光電圧値に応じて変換した目標平均電圧Vrefを平均値制御部442に設定する。また
、目標値設定部447はボトム電圧検出部444、ボトム電圧比較部445、目標値補正
部446を介してボトム電圧VBと基準ボトム電圧VBrefとの差分に基づいた補正値
で補正される。目標値設定部447は、調光演算器47によって生成された調光電圧値が
低くLED電流ILEDが低くなるほど、低い目標平均電圧Vrefに変換して設定する
。すなわち、スイッチング電源装置1において、フィードバック電圧VFB2の平均電圧
VAveは、調光信号によって変化する電圧リプルの大小に応じて、電圧リプルが大きく
なるほど高く、電圧リプルが小さくなるほど低くなるように制御される。
【0037】
PWM生成部45は、操作量算出部443からの操作量Δに基づいてオン時間を増減さ
せたPWM信号を生成し、生成したPWM信号によりドライバ46を介してスイッチング
素子Q1をオンオフ制御する。なお、本実施の形態のように、交流入力電源ACの1周期
毎に算出された平均電圧VAveと目標平均電圧Vrefとの誤差に基づいてオン時間の
操作量Δを算出している場合、PWM信号のオン時間は、交流入力電源ACの1周期にお
いて一定となる。
【0038】
調光演算器47は、外部からのPWM変調された調光信号DIMを積分して調光目標値
として目標値設定部447へ出力するとともに、DAC48を介してリプル電流低減回路
5を構成する誤差増幅器AMP1へ参照電圧値VZREFとして出力する。
ここで、調光演算器47は調光信号DIMを積分して調光目標値を生成しているが、調
光信号DIMの変化(増加または減少)があらかじめ定めた値より大きくなった場合、調
光演算器47は初期電圧設定部440に初期電圧設定の指示を送りB接続点(Vout)
を初期電圧まで上昇させる制御を開始する。同時に、調光演算器47はB接続点(Vou
t)が初期電圧まで上昇するまでの時間に相当する不感時間(例えば100ms)を持た
せ、不感時間経過後に調光目標値と参照電圧値VZREFを出力する。
あるいは、調光信号DIMの増加があらかじめ定めた値より大きくなった場合に限り上
記の動作を行い、調光信号DIMの減少があらかじめ定めた値より大きくなった場合には
、不感時間帯の中でB接続点(Vout)を初期電圧まで上昇させる制御を省いてもよい
。
また、調光演算器47をマイコンなどで構成するなどにより、不感時間経過後の調光目
標値と参照電圧値VZREFを出力する。この時、調光目標値と参照電圧値VZREFは
フィルターなどを介して徐々に変化させて目標値または電圧値に到達させることが好まし
い。
これにより、調光信号DIMの変化(増加/減少)が大きくなった場合にリプル電流低
減回路5の動作電圧が下限値を割り込んでLED負荷のちらつきを生じないようにするこ
とができる。
【0039】
図3に
図1に示すスイッチング電源装置1において、調光信号DIMの大幅な変化の開
始(時刻t0)から定常動作(時刻t3)に至るまでの出力電圧V
OUTのシーケンス図
を示す。
図3に示すように時刻t0~t1にかけて出力電圧V
OUTは初期電圧を目標に
制御され、時刻t1にて初期電圧に到達後、平均値制御に移行する。出力電圧V
OUTは
平均値制御の予め設定された目標値の下限値に向けて徐々に低下させる制御を行い、時刻
t2にて目標値の下限値に達する。ここで下限値に達した時刻t2で平均値制御部442
は、目標平均電圧V
refを目標値補正部446からの補正値で補正するように移行させ
る。接続点Aの出力電圧V
OUTはボトム電圧検出部444からの基準ボトム電圧V
Br
ef信号を基にした基準ボトム電圧になるように平均値制御が行われる。
以上のように、調光信号DIMの大幅な変化があると、出力電圧V
OUTの目標値を初
期電圧~平均値制御~基準ボトム電圧の平均値制御に切り替えることで、LED負荷のち
らつき防止をすることができる。特に、平均値制御~基準ボトム電圧の平均値制御に切り
替えることで目標値電圧とフィードバック電圧VFBの差分が大きくならない。これは、
平均値制御はスイッチング周期毎に目標平均値が更新されるように制御を行わせて目標平
均値を徐々に下げることができる。すなわち、基準ボトム電圧の平均値制御においては、
目標平均値の更新は交流入力電力の商用周波数周期8~10msとなり、初期電圧から目
標平均値を徐々に下げることが困難なためであり、一旦、平均値制御を介することで安定
して移行できる。
これにより、
図1に示す制御回路4のVcc電圧も出力電圧V
OUT同様に変化するの
で安定した電源電圧を確保できる利点がある。
【0040】
図1に示すスイッチング電源装置1では、フライバック型コンバータの例を説明したが
、本発明は、バックコンバータ、ブーストコンバータ、バックブーストコンバータに適用
しても良く、
図4及び
図5にバックブーストコンバータで構成したスイッチング電源装置
1aを示す。なお、スイッチング電源装置1aにおいて、スイッチング電源装置1と同様
の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0041】
スイッチング電源装置1aは、ダイオードD1として機能する同期整流素子Q3を備え
、制御回路4aは、同期整流素子Q3を駆動するPWM信号を生成するPWM生成部45
aとドライバ46aとを備える。
【0042】
また、制御回路4aには、リプル電流低減回路5を構成する誤差増幅器AMP1が内蔵
されている。
【0043】
図6には、
図1に示す接続点Aの出力電圧Vout及び接続点Bのフィードバック電圧V
FB2の波形が示されている。
図6において、(a)はコンデンサC1の劣化が小さい状態
での中負荷時、(b)はコンデンサC1の劣化が小さい状態での定格負荷時、(c)はコ
ンデンサC1の劣化が大きい状態での定格負荷時、(d)はコンデンサC1の劣化がさら
に大きい状態での定格負荷時におけるそれぞれの出力電圧Vout及びフィードバック電圧
V
FBの波形である。
【0044】
本実施の形態では、
図6(a)~(d)に示すように、電圧リプルの大小に拘わらず、
ボトム電圧V
Bが基準ボトム電圧V
Brefになるように、フィードバック電圧V
FBの
平均値制御が行われる。従って、フィードバック電圧V
FB2の平均電圧V
Aveは、動作
環境によって変化する電圧リプルの大小に応じて、電圧リプルが大きくなるほど高く、電
圧リプルが小さくなるほど低くなるように制御される。
【0045】
これにより、コンデンサC1の劣化が小さく、電圧リプルが小さい場合には、負荷の大
小に拘わりなく全ての領域で電源効率を改善することができる。例えば、
図7(a)、(
b)に示す従来の平均値制御におけるフィードバック電圧V
FBの平均電圧V
Aveは、
中負荷時及び定格負荷時のいずれでも1.5Vであるのに対し、本実施の形態の平均値制
御におけるフィードバック電圧V
FB2の平均電圧V
Aveは、
図6(a)に示す中負荷時
において1.0Vになり、
図6(b)に示す定格負荷時において1.2Vになる。つまり
、中負荷時では、Δ0.5V×LED電流I
LEDだけ電源損失を低減ができ、定格負荷
時では、Δ0.3V×LED電流I
LEDだけ電源損失を低減ができる。
【0046】
また、従来のようにフィードバック電圧V
FBの平均電圧V
Aveを固定する方式では
、
図7(c)、(d)に示すような寿命末期や出力コンデンサの容量のバラつき等が生じ
ても、適切な動作マージンが最終的に確保するように見越して設計する必要があった。こ
れに対し、本実施の形態では、コンデンサC1のバラつきや、コンデンサC1の寿命末期
でも、
図6(c)、(d)に示すようにフィードバック電圧V
FB2のボトム電圧V
Bが基
準ボトム電圧V
Brefに下限値制御されているために安定しており、フィードバック電
圧V
FB2の量産によるバラつきが少ない。つまり、本実施の形態では、電源設計の簡素化
が見込める。
【0047】
さらに、従来のようにフィードバック電圧V
FBの平均電圧V
Aveを固定する方式で
は、出力コンデンサの劣化が大きくなり、
図7(c)、(d)に示すように、フィードバ
ック電圧V
FBが動作マージン電圧V
Mを下回ると、定格電流が取れなかったりちらつき
が発生したりする恐れがある。これに対し、本実施の形態では、出力コンデンサの劣化が
大きくなっても、
図6(c)、(d)に示すようにフィードバック電圧V
FB2のボトム
電圧V
Bが基準ボトム電圧V
Brefに下限値制御しているため、フィードバック電圧V
FB2のボトム電圧V
Bが基準ボトム電圧V
Brefを大きく超えて下回ることなく、L
ED負荷2を問題なく駆動させることができ、緊急避難的に電源寿命を延長させることが
できる。
【0048】
また、軽負荷時はフィードバック電圧VFB2の電圧リプルが小さくなり、電圧リプル
の検出が困難になることがある。そこで、デミング信号の入力等のフィードバック電圧V
FB2の電圧リプルが小さくなる環境条件において、目標平均電圧Vrefを固定した従来
の平均値制御等の他の制御に切り替えることで安定性を高めても良い。
【0049】
なお、入力電圧を検出し、入力電圧に応じて変換した目標平均電圧Vrefを平均値制
御部442に設定しても良い。この場合、入力電圧が小さい(低い)ほど電圧リプルが大
きくなる。従って、入力電圧が大きい(高い)ほど、低い目標平均電圧Vrefに変換し
て設定する。これにより、フィードバック電圧VFB2の平均電圧VAveは、入力電圧
によって変化する電圧リプルの大小に応じて、電圧リプルが大きくなるほど高く、電圧リ
プルが小さくなるほど低くなるように制御される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態は、交流入力電力ACを所望の直流出力電力に変換
してLED負荷2に供給するスイッチング電源装置1であって、オンオフ制御されるスイ
ッチング素子であるスイッチング素子Q1と、LED負荷2に直列に接続され、インピー
ダンスを可変制御することでLED負荷2に流れる電流リプルを低減するリプル電流低減
回路5と、LED負荷2とリプル電流低減回路5との接続点Bにおけるフィードバック電
圧VFBに基づきスイッチング素子Q1をオンオフ制御する制御回路4と、を具備し、制
御回路4は、フィードバック電圧VFB2の電圧リプルの大きさに応じて設定した目標平
均電圧Vrefで、フィードバック電圧VFBを平均値制御する。
この構成により、フィードバック電圧VFB2の電圧リプルが小さい動作環境では、目
標平均電圧Vrefを低い値に設定することができ、電源効率を改善することができる。
【0051】
さらに、本実施形態において、制御回路4は、フィードバック電圧VFB2のボトム電
圧VBを検出し、検出したボトム電圧VBが予め設定された基準ボトム電圧VBrefに
なるように前記目標平均電圧を補正する。
この構成により、コンデンサC1の劣化が小さく、電圧リプルが小さい場合には、目標
平均電圧Vrefを低い値に補正することができるため、負荷の大小に拘わりなく全ての
領域で電源効率を改善することができる。
【0052】
さらに、本実施形態において、制御回路4は、調光信号に基づきLED負荷に流れる電
流を可変制御することでLED負荷の照度を調光する調光演算器を備える。
調光演算器からの調光目標値の増加を検出して調光目標値の不感時間を設け、この不感
時間帯にLED負荷とリプル電流低減回路の電圧を初期電圧まで上昇させ、かつ、不感時
間経過後に調光目標値に基づき制御を行うため、調光信号の急変に対してLED負荷の照
度のちらつきを生じさせず安定した制御を行える。
【0053】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構
成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の
範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0054】
1、1a スイッチング電源装置
2 LED負荷
3 整流平滑回路
4、4a 制御回路
5 リプル電流低減回路
6 補助電源
7 電圧検出回路
21~2n LED
41 スタート部
42 内部電源部
431、432 ADC
44、44a 演算器
45、45a PWM生成部
46、46a ドライバ
47 調光演算器
48 DAC
440 初期電圧設定部
441 平均電圧算出部
442 平均値制御部
443 操作量算出部
444 ボトム電圧検出部
445 ボトム電圧比較部
446 目標値補正部
447 目標値設定部
AC 交流入力電源
AMP1 誤差増幅器
C1、C2 コンデンサ
D1 ダイオード
DB 整流回路
Q1 スイッチング素子
Q2 可変インピーダンス素子
Q3 同期整流素子
R1~R4 抵抗
Rs 検出抵抗
TR トランス
W1 一次巻線
W2 二次巻線
W3 三次巻線