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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182356
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G05B13/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089871
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 恩敬
(72)【発明者】
【氏名】徳田 勇也
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA29
5H004KD62
(57)【要約】
【課題】制御部の誤動作や故障などの不具合発生を早期に検知し、制御部に不具合が発生した場合でも制御安全性が確保できる操作量を出力する制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】機械学習による制御技術に基づいて状態モデルを出力する1つの学習部と、状態モデルに基づいて操作量を演算する複数の制御部と、制御部の内部ストレージに保存されている状態モデルを学習部からの状態モデルに更新するモデル更新部と、複数の制御部から1つの制御部を選び、その操作量を制御対象に出力する操作量選定部と、制御部に不具合を検知する異常検知部を備えたことを特徴とする制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習による制御技術に基づいて状態モデルを出力する1つの学習部と、前記状態モデルに基づいて操作量を演算する複数の制御部と、前記制御部の内部ストレージに保存されている状態モデルを学習部からの状態モデルに更新するモデル更新部と、複数の前記制御部から1つの制御部を選び、その操作量を制御対象に出力する操作量選定部と、前記制御部に不具合を検知する異常検知部を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記モデル更新部は、前記操作量選定部に選ばれていない前記制御部の中から1つの制御部を選び、1つずつ順番に制御部内部の状態モデルを前記学習部からの状態モデルに更新することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記操作量選定部は、制御対象に出力している前記制御部による操作量を、制御対象に出力していない前記制御部による操作量と比較し、制御対象に出力している前記制御部による操作量と同じ操作量が無い、かつ制御対象に出力していない前記制御部による操作量が同じ値である場合、制御対象に出力していない前記制御部による操作量の中から1つ選定し、選定した操作量を制御対象に出力することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記異常検知部は、複数の前記制御部からの操作量を比較し、同じ操作量を出力する制御部が2つ以上ない、かつ、全ての制御部の状態モデルが更新中でない場合、異常が発生したと判断することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
機械学習による制御技術に基づいて状態モデルを作成し、状態モデルに基づいて操作量を複数の制御系統により演算し、複数の制御系統で使用する状態モデルを学習した状態モデルに更新し、複数の前記制御系統の1つを選び、その操作量を制御対象に出力し、複数の前記制御系統に不具合を検知することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法であって、
複数の制御系統で使用する状態モデルを学習した状態モデルに更新するに際し、制御対象の制御に選ばれていない前記制御系統の1つを選び、1つずつ順番に制御系統内部の状態モデルを前記学習した状態モデルに更新することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の制御方法であって、
制御対象に出力している操作量を、制御対象に出力していないその他の操作量と比較し、制御対象に出力している操作量と同じ操作量が無い、かつ、その他の操作量中で2つ以上同じ値である場合、2つ以上同じ値である操作量の中で1つ選定し、その操作量を制御対象に出力することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の制御方法であって、
前記制御系統の操作量を比較し、同じ操作量を出力する制御系統が2つ以上ない場合、異常が発生したと判断することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習による制御技術を用いた制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御装置の制御精度向上、及び制御装置設定値の削減を目的に、機械学習による制御技術を用いた制御装置(以降、学習ベース制御装置)が適用されている。例えば、特許文献1などが挙げられる。学習ベース制御装置は一般的に、制御部と学習部を有し、制御部は状態モデルに基づいて計算した操作量をアクチュエータに出力し、学習部はセンサ信号に基づいて状態モデルを生成し、また所定時間ごとに制御部内の状態モデルを学習部が生成した状態モデルに更新する処理を繰り返す。
【0003】
一方、学習ベース制御装置に用いられる状態モデルはモデルを定義するためのデータサイズが大規模となる場合が多く、状態モデルの更新処理において、上書き失敗などの誤動作、メモリ(ハードウェア)の故障などの不具合が発生するポテンシャルが高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-106466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情を考慮したものであり,制御部の誤動作や故障などの不具合発生を早期に検知し、制御部に不具合が発生した場合でも制御安全性が確保できる操作量を出力する制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のことから本発明においては、「機械学習による制御技術に基づいて状態モデルを出力する1つの学習部と、状態モデルに基づいて操作量を演算する複数の制御部と、制御部の内部ストレージに保存されている状態モデルを学習部からの状態モデルに更新するモデル更新部と、複数の制御部から1つの制御部を選び、その操作量を制御対象に出力する操作量選定部と、制御部に不具合を検知する異常検知部を備えたことを特徴とする制御装置」としたものである。
【0007】
また本発明においては、「機械学習による制御技術に基づいて状態モデルを作成し、状態モデルに基づいて操作量を複数の制御系統により演算し、複数の制御系統で使用する状態モデルを学習した状態モデルに更新し、複数の制御系統の1つを選び、その操作量を制御対象に出力し、複数の制御系統に不具合を検知することを特徴とする制御方法」としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、学習ベース制御装置の不具合を入出力信号より検知することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る制御装置の構成例を示す図。
図2】本発明の実施例1に係るモデル更新部のフローチャートの一例を示す図。
図3】本発明の実施例1に係る操作量選定部のフローチャートの一例を示す図。
図4】本発明の実施例1に係る異常検知部のフローチャートの一例を示す図。
図5】制御部に異常が発生しない場合の制御装置の処理内容を示す図。
図6】制御対象に操作量を出力していない制御部が故障した場合の制御装置の処理内容を示す図。
図7】制御対象に操作量を出力している制御部が故障した場合の制御装置の処理内容を示す図。
図8】制御部のデータが改ざんされた場合の制御装置の処理内容を示す図。
図9】本発明の実施例2に係る制御装置の構成例を示す図。
図10】本発明の実施例2に係る異常検知部のフローチャートの一例を示す図。
図11】制御部に異常が発生しない場合の制御装置の処理内容を示す図。
図12】制御部が故障した場合の制御装置の処理内容を示す図。
図13】制御部のデータが改ざんされた場合の制御装置の処理内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1に係る制御装置の構成例を示している。図1において、制御装置1は、制御対象2に設置されているセンサ等により取得された状態量3を入力として受け、操作量を計算し、制御対象2に出力する。
【0012】
制御装置1は、状態量3を入力として状態モデルを生成する学習部11、学習部11の出力により、制御部13の状態モデルを更新するモデル更新部12、状態モデルにより操作量を演算する制御部13(13A、13B、13C)、3つの制御部13A、13B、13Cの中で1つを選び、その操作量を制御対象2に出力する操作量選定部14、3つの制御部13A、13B、13Cの操作量を比較し、制御部の異常を検知する異常検知部15を主たる構成要素として構成されている。
【0013】
このうち学習部11は、制御対象2の状態量3に基づいて、機械学習による制御技術に用いられる状態モデルを生成する。また、モデル更新部12を通して制御部13A、13B、13Cのいずれかに状態モデルを出力する。学習部11に用いられる機械学習による制御技術、及び、状態モデルの形式は、公知の方式のものが適用可能であり、例えば、特許文献1に開示されているものを使用することができる。
【0014】
制御部13(13A、13B、13C)は、内部ストレージに状態モデルを有し、その状態モデルに基づいて、操作量を演算する。また、操作量選定部14を通して選択した1つの制御部の出力により制御対象2に操作量を出力する。内部ストレージの状態モデルは、モデル更新部12より学習部11から出力された最新の状態モデルに適宜更新される。状態モデルに基づいて操作量を演算する方法は、公知の方式のものが適用可能であり、例えば、特許文献1に開示されているものを使用することができる。
【0015】
モデル更新部12は、制御部13(13A、13B、13C)の3つの中で1つを選び、選んだ制御部の状態モデルが保存されている内部ストレージに、学習部11の出力(新たな状態モデル)を上書きする。モデル更新部12の特徴は、制御対象2に操作量を出力していない制御部の中で1つを選び、順番に制御部を更新することである。
【0016】
このようなモデル更新部12の処理を図2のフローチャートを用いて一例を説明する。
【0017】
まず、処理ステップS201にて、学習部11が新たな状態モデルを生成して出力したか(YES)否か(NO)を判断し、新たな状態モデルが出力された場合(YES)は、処理ステップS202に進む。一方、学習部11が新たな状態モデルを出力していない場合(NO)は、処理ステップS201を繰り返す。
【0018】
処理ステップS202では、処理ステップS201の後、新たな状態モデルに更新されなかった制御部がある場合は、その中から1つの制御部を選び、処理ステップS203に進む。一方、全ての制御部が新たな状態モデルに更新された場合は、処理ステップS201に戻る。
【0019】
処理ステップS203では、処理ステップS202で選ばれた制御部(以降、制御部iという)が制御対象2に操作量を出力していない場合(YES)は、処理ステップS204に進む。一方、制御部iが制御対象2に操作量を出力している場合(NO)は、処理ステップS202に戻る。
【0020】
処理ステップS204では、制御部i内部の状態モデルを、学習部11の出力に上書きする。上書き終了後、処理ステップS202に戻る。また上書き中には、制御部の状態モデルが更新中であることを、後述する図1の異常検知部15に通知する。
【0021】
以上に述べた処理によれば、学習部11が新たな状態モデルを出力した場合、制御対象2に操作量を出力していない制御部の中で1つずつ選び、順番に制御部内部の状態モデルを学習部11の出力に更新することができる。
【0022】
図1に戻り、操作量選定部14は、制御部13A、13B、13Cの3つから出力された操作量を受け、操作量の中で1つを選定し、選定した操作量を制御対象2に出力する。操作量選定部14の特徴は、操作量3つを比較して2つ以上同じ操作量が有れば、その操作量の中から1つを選定することである。このような操作量選定部14の処理を図3のフローチャートを用いて一例を説明する。
【0023】
図3の処理ではまず、処理ステップS401で、現時刻で選定されている操作量(以降、操作量i)をその他の操作量らと比較し、その他の操作量らの中に操作量iと同じ操作量が無い場合(NO)は、処理ステップS402に進む。一方、その他の操作量らの中に操作量iと同じ操作量が一つ以上ある場合(YES)は、処理ステップS401を繰り返す。
【0024】
処理ステップS402では、その他の操作量らを比較し、その中で同じ操作量が2つ以上ある場合(YES)は、処理ステップS403に進む。一方、全ての操作量が異なる場合(NO)は処理ステップS404に進む。
【0025】
処理ステップS403では、同じ値が2つ以上ある操作量の中から1つを選定し、その操作量を制御対象2に出力する。操作量切り替え後、処理ステップS401に戻る。
【0026】
処理ステップS404では、全ての操作量が異なることを、後述する異常検知部15に通知する。
【0027】
以上に述べた処理によれば、操作量iと同じ操作量が無く、かつ、操作量iを除いた操作量の中で同じ値が2つ以上ある場合、その中から選定された操作量に操作量iを切り替えて制御対象2に出力することができる。
【0028】
異常検知部15は、モデル更新部12と操作量選定部14から通知を受け、制御部13らから出力された操作量らが全て異なり、かつ全ての制御部13の状態モデルが更新中でない場合、制御部13A、13B、13Cのいずれかに異常が発生したと判断し、管理者に知らせる。
【0029】
このような異常検知部15の処理を図4のフローチャートを用いて一例を説明する。
【0030】
まず、処理ステップS501では、操作量選定部14から通知を受け、制御部らから出力された操作量らが全て異なると判断した場合(YES)は、処理ステップS502に進む。一方、操作量選定部14から通知を受けていない場合(NO)は、処理ステップS501を繰り返す。
【0031】
処理ステップS502では、モデル更新部12から通知を受け、全ての制御部の状態モデルが更新中でないと判断した場合(YES)は、処理ステップS503に進む。一方、制御部の状態モデルのいずれかが更新中であると判断した場合(NO)は、処理ステップS501に戻る。
【0032】
処理ステップS503では、制御部13A、13B、13Cのいずれかに異常が発生したことを管理者に知らせる。管理者に知られる方法は、画面表示、メッセージ送信など、公知の方法であればよい。
【0033】
以上に述べた処理によれば、制御部らから出力された操作量らが全て異なり、かつ、全ての制御部の状態モデルが更新中でない場合、制御部13A、13B、13Cのいずれかに異常が発生したことを管理者に知らせることができる。
【0034】
以上に述べた、学習部11、モデル更新部12、制御部13A、13B、13C、操作量選定部14、異常検知部15を含む制御装置1の処理を、時間経過にそって説明する。
【0035】
まず図5を用いて、制御部13A、13B、13Cが正常で、学習部11から新たな状態モデルが出力され、制御部13A、13B、13Cの状態モデルが更新される処理を説明する。
【0036】
図5には、制御部に異常が発生しない場合の制御装置の処理内容を示している。図5では、横軸に学習部11、制御部13(A、B、C)、操作量選定部14、異常検知部15におけるその時点での状態を示し、縦軸に0から10までの時刻を示している。なおこの記述において、S(0)、S(1)は学習部からのモデルSであり、そのカッコ内記号0,1はモデル型番であり、モデル型番1のものが最新モデルであることを意味している。またモデルに付した記号*は、この記号を付した制御部の出力が選定されていることを表している。
【0037】
以下の説明にあたり、まず初期状態では、制御部13A、13B、13Cの状態モデルがS(0)と同じであり、操作量選定部14では制御部13Aが選ばれ、制御部13Aの操作量が制御対象2に出力されていたものとする。これに対し、時刻0において、学習部11が新たな状態モデルS(1)を出力した。
【0038】
この変化を受けて時刻1では、モデル更新部12で制御部13Bが選ばれ、制御部13Bの状態モデルがS(0)からS(1)に更新開始した。モデル更新部12の処理を具体的に説明すると、まず、処理ステップS201で学習部11から新たな状態モデルが出力されたと判断した。処理ステップS202に進み、制御部13Aを選び、処理ステップS203に進んだ。処理ステップS203では、制御部13Aが制御対象2に操作量を出力していると判断し、処理ステップS202に戻った。再び処理ステップS202では、制御部13Bを選び、処理ステップS203に進んだ。処理ステップS203では、制御部13Bが制御対象2に操作量を出力していないと判断し、処理ステップS204に進んだ。処理ステップS204では、制御部13Bの状態モデルS(0)が学習部11の出力S(1)と異なると判断し、処理ステップS205に進み、状態モデル更新作業を開始し、かつ、異常検知部15に状態モデルを更新中であることを通知した。
【0039】
時刻2で、制御部13Bの状態モデルの更新作業が終了した。その後、処理ステップS205から処理ステップS202に進み、制御部13Cを選び、制御部13Bの場合と同様に、処理ステップS203、処理ステップS204に進み、時刻4において、制御部13Cに対する状態モデル更新作業を開始した。
【0040】
時刻4において、一方、操作量選定部14では、処理ステップS401にて制御部13Aの操作量をその他の操作量(制御部13B、13Cの操作量)と比較し、同じ値がないと判断した。処理ステップS402に進み、制御部13B、13Cの操作量を比較し、異なる(同じ操作量が2つ以上ない)と判断し、処理ステップS404に進み、異常検知部15に通知する。異常検知部15では、操作量選定部14から通知を受け、処理ステップS501にて全ての操作量が異なると判断し、処理ステップS502に進んだ。処理ステップS502では、モデル更新部12から受けた通知から制御部のいずれかが更新中であると判断し、処理ステップS501に戻り、管理者への通知はなかった。
【0041】
時刻5において、制御部13Cの状態モデルの更新作業が終了した。操作量選定部14では、処理ステップS402にて、制御部13B、13Cの操作量を比較し、同じ値であると判断し、処理ステップS403に進んだ。時刻6において処理ステップS403にて、制御対象2に出力する操作量が制御部13Aから制御部13Bに切り替わった。
【0042】
時刻7において、一方、モデル更新部12では、処理ステップS202にて制御部13Aを選び、制御部13Cの場合と同様に、処理ステップS203、処理ステップS204に進み、制御部13Aに対する状態モデル更新作業を開始した。
【0043】
時刻8において、制御部13Aの状態モデル更新作業終了後、モデル更新部12では、処理ステップS202に戻った。処理ステップS202で、処理ステップS201の後、全ての制御部の状態モデルを更新したと判断し、処理ステップS201に戻った。
【0044】
以上述べたように、本発明によれば、学習部11が新たな状態モデルを出力した後、制御部13A、13B、13Cの状態モデルを順番に更新でき、制御対象2に出力する操作量をスムーズに切り替えることができる。
【0045】
図6は、制御対象に操作量を出力していない制御部が故障した場合の制御装置の処理内容を示している。次に、図6を用いて、制御対象2に操作量を出力していない制御部の1つが故障した場合、これが検知される処理を説明する。なお、図6の表記は基本的に図5と同じであるが、縦軸の時刻についてiからi+7までの時刻を示している。
【0046】
初期状態では、制御部13A、13Bの状態モデルがS(n)と同じであり、制御部13Cは故障(broken)していたものとする。また、制御部13Aの操作量が制御対象2に出力されていたものとする。そして、時刻iにおいて、学習部11が新たな状態モデルS(n+1)を出力した。
【0047】
時刻i+1で、モデル更新部12で制御部13Bが選ばれ、制御部13Bの状態モデルがS(n)からS(n+1)に更新開始し、時刻i+2で更新終了した。
【0048】
時刻i+3において、操作量選定部14では、処理ステップS404にて、全ての操作量が異なることを異常検知部15に通知した。異常検知部15では、操作量選定部14から通知を受け、処理ステップS501から処理ステップS502に進んだ。処理ステップS502にてモデルが更新中でないと判断し、処理ステップS503に進み、管理者に制御部に異常が発生したことを通知した。
【0049】
時刻i+4、i+5の間、制御部13Cの状態モデルが更新される間は、管理者への異常通知が一時的に止まった。しかし、時刻i+6以降、制御部13Cの状態モデルの更新終了後は、管理者への異常通知が継続する。
【0050】
このように、本発明によれば、制御部の1つが故障した場合、異常が発生したと検知、および通知することができる。また、故障していない制御部の操作量を制御対象2に出力し続けることで、制御安全性を確保することができる。
【0051】
上記では、状態モデルの更新中に制御部が故障した場合など、制御部の中で制御装置2に操作量を出力していない制御部の故障を検知する例を述べた。本発明は上記に限らず、制御装置2に操作量を出力している制御部が故障した場合も、制御安全性を確保し、異常検知および通知ができる。
【0052】
図7は、制御対象に操作量を出力している制御部が故障した場合の制御装置の処理内容を示している。この例では、初期状態(時刻j)で、制御部13A、13B、13Cの状態モデルがS(n)と同じであり、制御部13Cの操作量が制御対象2に出力されていた。時刻j+1において、制御部13Cが故障した。この際に、操作量選定部14では、処理ステップS401、処理ステップS402を経て、処理ステップS403にて制御対象2に出力する操作量を制御部13Aに切り替える処理をした。時刻j+2の状態は、図6に示した時刻iの状態と同じであり、次に学習部11から新たな状態モデルが出力された際に異常が検知および通知される。
【0053】
このように本発明は、制御装置2に操作量を出力している制御部が故障した場合、操作量を他の制御部に切り替えることにより、制御安全性を確保できる。また、次に新たに状態モデルが更新される際に、制御部に異常が発生したことを検知および通知することができる。
【0054】
図8は、制御部のデータが改ざんされた場合の制御装置の処理内容を示す図である。次に、図8を用いて、サイバー攻撃など原因で、1つの制御部の状態モデルが改ざんされた場合、これが検知される処理を説明する。但しここでは縦軸の時間をkからk+9の各時刻で表している。
【0055】
初期状態では、制御部13A、13B、13Cの状態モデルがS(m)と同じであり、制御部13Aの操作量が制御対象2に出力されていたが、制御部13Cの状態モデルがS(X)に改ざんされた。制御対象2に操作量を出力している制御部の状態モデルが改ざんされた場合は、図7で説明したように、操作量選定部14より操作量が切り替わる。時刻kにおいて、学習部11が新たな状態モデルS(m+1)を出力した。
【0056】
以降、時刻k+1において、制御部13Bの更新(S(m)⇒S(m+1))を開始し、時刻k+2で更新終了した。時刻k+3において、全ての制御部の操作量操作量が異なり、かつ、モデル更新中でないことから、異常検知部15より管理者へ異常が通知される。k+4において、改ざんされていた制御部13Cも更新され、その後の処理は全ての正常になる。
【0057】
このように、本発明によれば、1つの制御部の状態モデルが改ざんされた場合、管理者に異常通知することができる。
【0058】
また、本発明によれば、制御部の状態モデルの更新を失敗した場合を検知することができる。上記と同じ初期状態で、制御部13Cの更新を失敗した場合、時刻k+3の状態になり、異常検知部15より管理者へ異常が通知される。
【0059】
以上、制御部の不具合として(a)制御部のハードウェアが故障した場合、(b)制御部の状態モデルデータが改ざんされた場合、(c)制御部の状態モデルの更新作業を失敗した場合を挙げ、それぞれの場合の本発明の処理、異常通知について述べた。場合によって異常通知パターンが異なり、このパターンの違いから原因が推定できる。場合(a)は、一時的、その後、継続的な異常通知であり、場合(b)は一時的な異常通知であり、場合(c)は継続的に異常通知である。
【0060】
このように、本発明によれば、操作量の演算作業、および状態モデルの更新作業を繰り返すため、不具合発生のポテンシャルが高い制御部に関し、同じ機能を持つ制御部を3つ以上設け、これらの信号を比較することにより、様々な不具合を検知できる。また信号比較結果に基づいて、信号を切り替えることにより、不具合が発生した場合でも、適切な操作量を出力でき、制御安全性を確保できる。
【実施例0061】
図9は、本発明の実施例2に係る制御装置の構成例を示している。本発明の実施例1との差異は、制御部を4つ有する点、異常検知部15の処理である。他の要素、学習部11、モデルの更新部12、制御部13A,13B、13C、操作量選定部14の特徴、および処理は実施例1と同様である。
【0062】
実施例2は、実施例1と同様に、制御部の不具合が検知でき、不具合が発生した場合でも制御安全性を確保できる。さらなる利点は、実施例1では制御部1つに不具合が発生した場合、新たな状態モデルに更新した制御部から操作量を制御対象2に出力することが困難であるのに対し、実施例2では、制御部1つに不具合が発生した場合でも新たな状態モデルに更新した制御部から操作量を制御対象2に出力することができる。また、正常な制御部3つより、その後新たに状態モデルの更新があった場合に対応できる。
【0063】
異常検知部15の処理の差異を、図10を用いて述べる。実施例1との差異は、モデル更新部12からの通知を不要とし、処理ステップS502がない点である。操作量選定部14から通知を受け、全ての操作量が異なると判断した場合(処理ステップS501)、管理者に通知する(処理ステップS503)
実施例2の処理を、時間経過にそって説明する。図11に、全ての制御部が正常である場合、状態モデルが更新される処理を示し、図12に、1つの制御部が故障した場合、状態モデルが更新される処理を示し、図13に、1つの制御部のデータが改ざんされた場合、状態モデルが更新される処理を示す。
【0064】
図11に示す全ての制御部が正常である場合は、時刻0に新たな状態モデルが出力され、モデルに更新部12より制御部13B、13C,13Dが更新された。時刻6において、操作量選定部14より制御対象2に出力する操作量が制御部13Bに切り替わった。その後、制御部13Aも更新され、更新作業終了となった。
【0065】
図12に示す1つの制御部(制御部13D)が故障した場合は、全ての制御部が正常である場合と同様に時刻2まで進むが、時刻3において、更新前、更新後、更新中、故障と全ての制御部の状態が異なり、全ての操作量が異なったため、異常検知部15より、異常が通知された。その後、制御部13Dが故障していても時刻6において、操作量選定部14より制御対象2に出力する操作量が制御部13Bに切り替わった。
【0066】
図13に示す1つの制御部(制御部13D)のデータが改ざんされた場合は、1つの制御部が故障した場合と同様に、時刻3において、更新前、更新後、更新中、改ざんと全ての制御部の状態が異なり、全ての操作量が異なったため、異常検知部15より、異常が通知された。
【0067】
このように、実施例2によれば、実施例1と同様なことができ、かつ、制御部1つが故障した場合でも、制御部1つが故障した場合でも、新たな状態モデルに更新した制御部から操作量を制御対象2に出力することができ、その後の状態モデルの更新を継続できる。
【符号の説明】
【0068】
1:制御装置
2:制御対象
3:状態量
11:学習部
12:モデル更新部
13A、13B、13C:制御部
14:操作量選定部
15:異常検知部
図1
図2
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図11
図12
図13