(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182366
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】トイレ用設備
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
E03D9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089884
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩和
(72)【発明者】
【氏名】小池 英也
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JC03
2D038KA01
2D038KA27
(57)【要約】
【課題】非接触式リモコンの誤操作を防止する。
【解決手段】トイレ用設備Aは、トイレ室10に配置され、便器装置15の使用者が着座状態で利用することが可能なトイレ付帯設備30,32と、トイレ付帯設備30,32の利用時における使用者の上肢の通過エリアから外れた位置に配置され、空中に結像された空中操作部25を有し、空中操作部25が操作されることによって便器装置15を制御する非接触式リモコンと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室に配置され、便器装置の使用者が着座状態で利用することが可能なトイレ付帯設備と、
前記トイレ付帯設備の利用時における使用者の上肢の通過エリアから外れた位置に配置され、空中に結像された空中操作部を有し、前記空中操作部が操作されることによって前記便器装置を制御する非接触式リモコンと、を備えているトイレ用設備。
【請求項2】
前記空中操作部が前記トイレ付帯設備の少なくとも一つよりも上方に配置されている請求項1記載のトイレ用設備。
【請求項3】
前記空中操作部が、前記便器装置に着座した使用者から見て、前記トイレ付帯設備よりも前方に配置されている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のトイレ用設備。
【請求項4】
前記トイレ付帯設備と前記非接触式リモコンが、前記トイレ室の壁面に並ぶように配置されており、
前記トイレ付帯設備の少なくとも一つの奥行寸法が、前記壁面から前記空中操作部の前端までの奥行寸法よりも大きく設定されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトイレ用設備。
【請求項5】
前記トイレ付帯設備が、接触式リモコンである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトイレ用設備。
【請求項6】
前記接触式リモコンは、前記トイレ室を構成する複数の壁面のうち、前記非接触式リモコンが取り付けられている壁面とは異なる壁面に配置されている請求項5に記載のトイレ用設備。
【請求項7】
前記トイレ付帯設備が紙巻き器である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のトイレ用設備。
【請求項8】
前記トイレ付帯設備が手摺りである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のトイレ用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トイレ用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トイレ装置の便座電動開閉ユニットを、リモコン装置の非接触スイッチの操作によって制御する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリモコン装置は、装置本体の前方に手をかざすと、非接触スイッチが操作される。そのため、紙巻き器や手摺り等のトイレ用設備を利用するときに、リモコン装置を避けて手を伸ばしても、手が意図せずに非接触スイッチを通過し、リモコン装置を誤操作することが懸念される。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、非接触式リモコンの誤操作を防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトイレ用設備は、トイレ室に配置され、便器装置の使用者が着座状態で利用することが可能なトイレ付帯設備と、前記トイレ付帯設備の利用時における使用者の上肢の通過エリアから外れた位置に配置され、空中に結像された空中操作部を有し、前記空中操作部が操作されることによって前記便器装置を制御する非接触式リモコンと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本開示を具体化した実施形態1を、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態1のトイレ用設備Aは、便器装置15が設置されたトイレ室10内に配置されるものである。トイレ用設備Aは、トイレ室10の右壁面12に取り付けられる非接触式リモコン20と、同じく右壁面12に取り付けられるトイレ付帯設備30,33,35とを備えている。
【0009】
以下の説明において、トイレ室10及び便器装置15の前後方向については、便器装置15の便座16に着座した使用者(図示省略)の正面側を前側、使用者の背中側を後側と定義する。
図1及び
図2における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1にあらわれる向きを、そのまま上方及び下方と定義する。左右の方向については、便座16に着座した使用者から見た向きを、左方及び右方と定義する。
【0010】
トイレ室10は、後壁面11と右壁面12と左壁面13とを有する。便器装置15は、後壁面11に固定されている。便器装置15は、右壁面12及び左壁面13との間に所定の間隔を空けて、後壁面11から前方へ突出している。便器装置15は、各種電動装置(図示省略)を備えている。電動装置としては、シャワー洗浄装置、シャワー温度設定装置、シャワー位置設定装置、便座開閉装置、便座温度設定装置、便蓋開閉装置、便器洗浄装置等がある。
【0011】
非接触式リモコン20は、右壁面12に設置されている。非接触式リモコン20は、箱形のリモコン本体21を有する。非接触式リモコン20は、リモコン本体21の正面22を左方に向け、リモコン本体21の背面23を右壁面12に重ねた状態で取り付けられている。非接触式リモコン20の奥行き方向は、リモコン本体21の正面22及び背面23と直角な方向であり、右壁面12と直角な方向である。非接触式リモコン20は、リモコン本体21の背面側部分を右壁面12の内部に埋め込んだ状態で取り付けてもよい。
【0012】
非接触式リモコン20は、箱形のリモコン本体21内に液晶ディスプレイ(図示省略)を収容し、リモコン本体21の正面22に特殊なプレートを配置したものである。リモコン本体21の正面22の下端縁からは、赤外線によって検知を行う横長の操作用センサ24が、水平方向へ板状に突出している。液晶ディスプレイに表示された操作部の画像がプレートを通過すると、リモコン本体21の外部に、二次元平面状の空中操作部25が結像される。
【0013】
非接触式リモコン20をリモコン本体21の正面22と正対するように見たときに、空中操作部25は横長の長方形をなす。非接触式リモコン20をリモコン本体21の正面22と平行となるように前方から見たときに、空中操作部25は、水平方向及び鉛直方向に対して斜めをなす。空中操作部25は、斜め左上方から見たときに正対する向きに傾いている。空中操作部25のうち奥行き方向においてリモコン本体21の正面22に最も近い最近端26は、空中操作部25の上端縁である。空中操作部25のうち奥行き方向においてリモコン本体21の正面22から最も遠い最遠端27は、空中操作部25の下端縁である。奥行き方向において、空中操作部25は、操作用センサ24の突出端とリモコン本体21の正面22との間に配置されている。
【0014】
空中操作部25は、リモコン本体21に触れずに操作するために空中に結像されたものである。空中操作部25の最近端26の位置は、奥行き方向においてリモコン本体21の正面22から所定間隔を空けて離隔した位置に設定される。リモコン本体21の正面22と空中操作部25の最近端26との間の所定間隔は、空中操作部25を操作しようとしたときに指がリモコン本体21に触れる虞のない間隔である。
【0015】
空中操作部25には、便器装置15に設けた各種電動装置を制御するための複数のスイッチ28が表示されている。空中操作部25を操作するときには、操作したいスイッチ28へ指を移動させる。操作用センサ24が指の位置を検出することによって、操作対象のスイッチ28が特定され、便器装置15の電動装置が制御される。
【0016】
トイレ付帯設備は、一対の紙巻き器30と、手摺り32と、接触式リモコン35とを含む。一対の紙巻き器30は、同じ高さで前後に隣り合うように並んで配置されている。上下方向において、紙巻き器30は、閉じた状態の便蓋17よりも高い位置に配置されている。前側の紙巻き器30は、便器装置15の前端よりも前方に配置されている。後側の紙巻き器30は、便器装置15の前端部と同じ位置に配置されている。紙巻き器30は、便器装置15に対して右方へ離隔した位置に配置されている。
【0017】
手摺り32は、前後方向の横バー33と、横バー33の前端から上方へ延びる縦バー34とからなる。横バー33は、前後一対の紙巻き器30の上端面に沿うように配置されている。横バー33は、閉じた状態の便蓋17よりも上方に配置されている。横バー33の後端は便器装置15の前端よりも後方に位置し、横バー33の前端は便器装置15の前端よりも前方に位置する。横バー33は、便器装置15に対して右方へ離隔した位置に配置されている。右壁面12と直角な方向を、奥行き方向と定義する。奥行き方向において、紙巻き器30は横バー33よりも便器装置15側へ突き出ている。
【0018】
接触式リモコン35の正面には、便器装置15に設けた各種電動装置に対応した複数のスイッチ(図示省略)と、各スイッチの近傍に配置された複数の点字表示(図示省略)とが設けられている。スイッチを指で操作すると、便器装置15の各電動装置を作動させたり停止させたりすることができる。視覚障害者は、点字表示に触れてスイッチの種別と位置を確認することによって、接触式リモコン35を操作し、便器装置15の各電動装置を作動させたり停止させたりすることができる。
【0019】
トイレ付帯設備30,33,35は、非接触式リモコン20と同じく、トイレ室10の右壁面12に取り付けられている。右壁面12には、トイレ付帯設備としての一対の紙巻き器30と、トイレ付帯設備としての手摺り32とが設置されている。トイレ室10の左壁面13には、トイレ付帯設備としての接触式リモコン35が設置されている。
【0020】
右壁面12における非接触式リモコン20の取付け位置は、上下方向においては紙巻き器30及び横バー33よりも上方の位置である。前後方向において、非接触式リモコン20は、後側の紙巻き器30の後端よりも前方の位置から、後側の紙巻き器30の後端よりも後方の位置に至る領域に配置されている。即ち、紙巻き器30の後端部と非接触式リモコン20前端部とが、前後方向において同じ領域に位置している。右壁面12から空中操作部25の最遠端27までの奥行寸法D1(
図4参照)は、紙巻き器30の奥行寸法D2(
図2参照)よりも小さい。
【0021】
便器装置15の使用者が、着座した状態で紙巻き器30のトイレットペーパー31を使用するときには、右手を斜め右上方へ移動させる。右手を移動させる前は、右手が、腿や膝の上に載せられている状態、及び下肢の右方へ垂れ下げた状態のいずれか一方の状態であるとする。この場合、右手を紙巻き器30に接近させるのに伴って、上肢のうち肘から右手の先までの部位が、肘関節を支点として上方へ揺動する。
【0022】
左手で紙巻き器30を利用する場合は、左手を右方へ大きく伸ばしながら、斜め上方へ移動させる。この場合、左手の動きに伴って、上肢のうち肩関節から左手の先までの部位が、肩関節を支点として斜め右上方へ揺動するとともに、肘関節を伸ばす。
【0023】
左右いずれの手で利用する場合も、上肢が移動するエリアは、上下方向においては紙巻き器30の上端よりも下方の領域であり、前後方向においては便器装置15の後端から前側の紙巻き器30の前端までの領域である。この領域は、便器装置15の使用者が着座状態で紙巻き器30を利用する際に、使用者の上肢が通過するエリアである。非接触式リモコン20は紙巻き器30よりも上方に配置されているので、紙巻き器30を利用するときの上肢の移動エリアは、非接触式リモコン20よりも下方の領域のみである。
【0024】
便器装置15の使用者が、着座した状態で横バー33を使用するときには、右手を斜め右上方へ移動させる。右手の動きに伴って、上肢のうち肘から右手の先までの部位が、肘関節を支点として上方へ揺動する。このときに上肢が移動するエリアは、上下方向においては横バー33よりも下方の領域であり、前後方向においては便器装置15の後端から横バー33の前端までの領域である。この領域は、便器装置15の使用者が着座状態で手摺り32の横バー33を利用する際に、使用者の上肢が通過するエリアである。非接触式リモコン20は横バー33よりも上方に配置されているので、横バー33を利用するときの上肢の移動エリアは、非接触式リモコン20よりも下方の領域のみである。
【0025】
空中操作部25は、空中操作部25と正対する方向からは適正に視認することができる。空中操作部25を正対方向に対して斜め方向から見ようとしても、視認することはできない。したがって、紙巻き器30や横バー33を利用しようとしたときに、手や腕が空中操作部25を通過して、非接触式リモコン20が誤操作されてしまうことが懸念される。しかし、紙巻き器30及び横バー33のいずれを利用するときも、上肢が空中操作部25を通過しないので、非接触式リモコン20が誤操作されることがない。
【0026】
便器装置15には、使用者が便座16に着座しているか否かを検出する着座センサ(図示省略)が設けられている。便座16に着座していないことを着座センサが検出すると、非接触式リモコン20の空中操作部25を操作することは可能であるが、便器装置15が操作信号を受けても一部の電動装置は動作しない。即ち、空中操作部25に指や手を移動させても、一部の電動装置は作動しない。また、接触式リモコン35を操作しても、一部の電動装置は作動しない。ただし、便座16に着座していないときにも必要な便器洗浄操作などの機能だけは作動可能にすることができる。さらに、接触式リモコン35を操作したときには電動装置が作動できるようにすることもできる。
【0027】
本実施形態1のトイレ用設備Aは、トイレ付帯設備としての紙巻き器30、手摺り32及び接触式リモコン35と、非接触式リモコン20とを備えている。紙巻き器30、手摺り32及び接触式リモコン35は、トイレ室10に配置され、便器装置15の使用者が着座状態で利用することが可能な設備である。非接触式リモコン20は、空中に結像された空中操作部25を有する。非接触式リモコン20は、空中操作部25を操作することによって便器装置15を電気制御する。
【0028】
空中操作部25は、紙巻き器30、手摺り32及び接触式リモコン35の利用時における使用者の上肢の通過エリアから外れた位置に配置されている。便器装置15の使用者が着座状態で紙巻き器30、手摺り32及び接触式リモコン35を利用するときに、上肢が非接触式リモコン20の空中操作部25を通過しない。したがって、便座16の着座している使用者が、紙巻き器30、手摺り32及び接触式リモコン35を利用するときに、非接触式リモコン20を誤操作することを防止できる。
【0029】
空中操作部25は紙巻き器30及び手摺り32の横バー33よりも上方に配置されているので、便器装置15に着座した使用者が紙巻き器30や横バー33に向かって上肢を上方へ動かしたときに、上肢が非接触式リモコン20の空中操作部25を通過しない。
【0030】
紙巻き器30の奥行寸法D2が、右壁面12から空中操作部25の最遠端27までの奥行寸法D1よりも大きく設定されているので、便器装置15に着座した使用者が紙巻き器30に向かって上肢を動かしたときに、上肢が非接触式リモコン20の空中操作部25を通過しない。
【0031】
点字表示を有する接触式リモコン35はトイレ付帯設備に含まれる。便器装置15の使用者は、非接触式リモコン20と接触式リモコン35のいずれも操作することができる。接触式リモコン35は、トイレ室10を構成する複数の壁面のうち、非接触式リモコン20が取り付けられている右壁面12とは異なる左壁面13に配置されている。これにより、視覚障害者が、接触式リモコン35を利用する際に非接触式リモコン20を誤操作することを防止できる。
【0032】
<実施形態2>
本開示を具体化した実施形態2を、
図5を参照して説明する。本実施形態2のトイレ用設備Bでは、トイレ付帯設備30,35,39の構成が上記実施形態1とは異なり、トイレ付帯設備30,35,39と非接触式リモコン20の配置が上記実施形態1とは異なっている。トイレ室10、便器装置15、非接触式リモコン20及び接触式リモコン35の構成は、上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0033】
トイレ室10の右壁面12には、非接触式リモコン20と、トイレ付帯設備としての一対の紙巻き器30と、トイレ付帯設備としての棚板39と、トイレ付帯設備としての接触式リモコン35とが設置されている。非接触式リモコン20は、前後方向においては便器装置15の前端よりも前方に配置され、上下方向においては閉じた状態の便蓋17よりも上方に配置されている。
【0034】
一対の紙巻き器30は、同じ高さで前後に隣り合うように並んで配置されている。一対の紙巻き器30は、閉じた状態の便蓋17よりも高い位置に配置されている。前後方向において、前側の紙巻き器30は、便器装置15の前端を含む領域に配置されている。後側の紙巻き器30は、便器装置15の前端よりも後方の位置に配置されている。一対の紙巻き器30は、便器装置15に対して右方へ離隔した位置に配置されている。
【0035】
一対の紙巻き器30は、非接触式リモコン20の後方に隣り合うように並んで配置されている。非接触式リモコン20と一対の紙巻き器30は、双方の上端を同じ高さに揃えた状態で、前後方向に並んでいる。便座16に着座している使用者(図示省略)から見て、非接触式リモコン20は、紙巻き器30よりも前方、つまり紙巻き器30よりも遠い位置に配置されている。紙巻き器30の奥行寸法は、右壁面12から非接触式リモコン20の空中操作部25の最遠端27までの距離よりも大きい寸法に設定されている。
【0036】
棚板39は、水平な平板材からなる。棚板39は、棚板39を上から見た平面視において、長辺を前後方向に向け、短辺を左右方向に向けた長方形をなす。前後方向において、棚板39は、非接触式リモコン20の前端から後側の紙巻き器30の後端に至る長さを有する。棚板39は、非接触式リモコン20の前端から、非接触式リモコン20の後端よりも後方の領域に亘って連続して設けられている。棚板39は、非接触式リモコン20と前後一対の紙巻き器30の全体を上から覆う範囲に亘って設けられている。棚板39の奥行寸法は、右壁面12から空中操作部25の最遠端27までの距離よりも大きい寸法に設定されている。
【0037】
接触式リモコン35は、棚板39よりも上方の位置に配置されている。前後方向において、接触式リモコン35は、一対の紙巻き器30とほぼ同じ領域に配置されている。接触式リモコン35は、非接触式リモコン20よりも上方で、且つ非接触式リモコン20よりも後方に配置されている。
【0038】
便器装置15の使用者が、着座した状態で紙巻き器30のトイレットペーパー31を使用するときには、右手を斜め右上方へ移動させる。右手を移動させる前は、右手が、腿や膝の上に載せられている状態、及び下肢の右方へ垂れ下げた状態のいずれか一方の状態であるとする。右手を紙巻き器30に接近させるのに伴って、上肢のうち肘から右手の先までの部位が、肘関節を支点として上方へ揺動する。
【0039】
左手で紙巻き器30を利用する場合には、左手を右方へ大きく移動させながら、斜め上方へ移動させる。この場合、左手の動きに伴って、上肢のうち肩関節から左手の先までの部位が、肩関節を支点として斜め右上方へ揺動する。左右いずれの手で利用する場合も、上肢が移動するエリアは、前後方向においては非接触式リモコン20の後端よりも後方の領域であるから、非接触式リモコン20を誤操作することはない。
【0040】
便器装置15に着座している使用者が、棚板39の後端側領域、即ち紙巻き器30の真上に載せてある物(図示省略)を右手で掴もうとするときには、紙巻き器30を利用する場合と同様、右手を斜め右上方へ移動させる。使用者が、棚板39の後端側領域に載せてある物を左手で掴もうとするときには、紙巻き器30を利用する場合と同様、左手を斜め右上方へ移動させる。左右いずれの手で利用する場合も、上肢が移動するエリアは、前後方向においては非接触式リモコン20の後端よりも後方の領域であるから、非接触式リモコン20を誤操作することはない。
【0041】
便器装置15に着座している使用者が、棚板39の前端側領域、即ち非接触式リモコン20の真上に載せてある物(図示省略)を右手で掴もうとするときには、右手を斜め上右前方へ移動させる。非接触式リモコン20は棚板39よりも下方に配置されているので、右腕を棚板39の上面に沿うように移動させれば、右腕が空中操作部25を通過することはない。紙巻き器30は空中操作部25よりも左方へ突き出しているので、右腕が側面視において紙巻き器30と非接触式リモコン20の正面を通過するように移動しても、右腕が空中操作部25を通過することはない。したがって、使用者が非接触式リモコン20を誤操作することはない。
【0042】
便器装置15に着座している視覚障害者が、接触式リモコン35の点字表示38を頼りにスイッチ37を操作するときには、右手を斜め右上方へ移動させる。視覚障害者が左手で接触式リモコン35を操作するときにも、左手を斜め右上方へ移動させる。左右いずれの手で操作する場合も、上肢が移動するエリアは、前後方向においては非接触式リモコン20の後端よりも後方の領域であるから、非接触式リモコン20を誤操作することはない。
【0043】
空中操作部25は、便器装置15に着座した使用者から見て、紙巻き器30及び接触式リモコン35よりも遠い位置に配置されている。便器装置15に着座した使用者が紙巻き器30や接触式リモコン35に向かって上肢を前方へ動かしたときに、上肢が非接触式リモコン20の空中操作部25を通過すことはない。
【0044】
紙巻き器30と非接触式リモコン20は、トイレ室10の右壁面12に並ぶように配置されている。紙巻き器30の奥行寸法は、右壁面12から空中操作部25の最遠端27までの奥行寸法よりも大きく設定されている。便器装置15に着座した使用者が紙巻き器30に向かって上肢を動かしたときに、上肢が空中操作部25を通過することはない。
【0045】
<実施形態3>
本開示を具体化した実施形態3を、
図6~
図7を参照して説明する。本実施形態3のトイレ用設備Cは、トイレ付帯設備30,35,40の構成が上記実施形態1とは異なり、トイレ付帯設備30,35,40と非接触式リモコン20の配置が上記実施形態1とは異なっている。トイレ室10、便器装置15、非接触式リモコン20及び接触式リモコン35の構成は、上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0046】
トイレ室10の右壁面12には、非接触式リモコン20と、トイレ付帯設備としての一対の紙巻き器30と、トイレ付帯設備としての収納棚40と、トイレ付帯設備としての接触式リモコン35とが設置されている。非接触式リモコン20は、前後方向において便器装置15の前端を含む領域に配置されている。非接触式リモコン20は、上下方向において、閉じた状態の便蓋17よりも上方に配置されている。
【0047】
一対の紙巻き器30は、同じ高さで前後方向に隣り合うように並んで配置されている。一対の紙巻き器30は、非接触式リモコン20と同じ高さに位置し、非接触式リモコン20の前方に隣り合うように並んで配置されている。一対の紙巻き器30の奥行寸法D2は、右壁面12から非接触式リモコン20の空中操作部25の最遠端27までの距離(奥行寸法D1)よりも大きい寸法に設定されている。
【0048】
収納棚40は、トイレ室10の床面14に載置した状態で右壁面12に固定されている。収納棚40の上面の高さは、非接触式リモコン20の上面及び一対の紙巻き器30の上面と同じ高さである。収納棚40は、非接触式リモコン20の後方に隣り合うように配置されている。収納棚40の奥行寸法D3は、右壁面12から非接触式リモコン20の空中操作部25の最遠端27までの距離(奥行寸法D1)よりも大きい寸法に設定されている。接触式リモコン35は、収納棚40の真上に配置されている。
【0049】
便器装置15の使用者(図示省略)が、着座した状態で紙巻き器30のトイレットペーパー31を使用するときには、右手を斜め右上方へ移動させる。右手を移動させる前は、右手が、腿や膝の上に載せられている状態、及び下肢の右方へ垂れ下げた状態のいずれか一方の状態であるとする。右手を紙巻き器30に接近させるのに伴って、上肢のうち肘から右手の先までの部位が、肘関節を支点として上方へ揺動する。
【0050】
左手で紙巻き器30を利用する場合には、左手を右方へ大きく移動させながら、斜め上方へ移動させる。この場合、左手の動きに伴って、上肢のうち肩関節から左手の先までの部位が、肩関節を支点として斜め右上方へ揺動する。便器装置15に着座した使用者が後方から非接触式リモコン20と紙巻き器30を見たときに、紙巻き器30は、左右方向において空中操作部25の最遠端27よりも便器装置15側へ張り出している。左右いずれの手で利用する場合も、上肢が移動するエリアは、奥行き方向において、空中操作部25の最遠端27よりも左方の領域である。上肢は空中操作部25を通過しないので、非接触式リモコン20が誤操作されることはない。
【0051】
便器装置15に着座している使用者が、収納棚40の下段の収納部41に収納されている物を右手で掴もうとするときには、右手を下方へ移動させる。このときの上肢の移動エリアは、空中操作部25よりも下方で、且つ空中操作部25よりも後方の領域である。上肢は空中操作部25を通過しないので、非接触式リモコン20が誤操作されることはない。
【0052】
便器装置15に着座している使用者が、収納棚40の中段の収納部42に収納されている物を右手で掴もうとするときには、肘を後方へ移動させながら右手を中段の収納部42へ移動させる。このときの上肢の移動エリアは、空中操作部25よりも下方で、且つ空中操作部25よりも後方の領域であるから、非接触式リモコン20が誤操作されることはない。
【0053】
便器装置15に着座している使用者が、収納棚40の上段の収納部43に収納されている物を左手で掴もうとするときには、肘の関節を伸ばしながら左手を大きく右方へ移動させる。左手が上段の収納部43に到達するまでは、上肢の移動エリアは、空中操作部25の最遠端27よりも左方の領域であるから、上肢は空中操作部25を通過しない。左手が上段の収納部43に到達した後は、上肢の移動エリアは、非接触式リモコン20よりも後方の領域であるから、上肢は空中操作部25を通過しない。よって、非接触式リモコン20が誤操作されることはない。
【0054】
便器装置15に着座している視覚障害者が、接触式リモコン35の点字表示38を頼りにスイッチ37を操作するときには、肘を後方へ移動させながら右手を上方へ移動させる。右手が接触式リモコン35に近づくと、右腕も収納棚40の正面に近づく。左手で接触式リモコン35を操作するときには、左手を斜め右上方へ移動させる。左手が接触式リモコン35に近づくと、左の掌が収納棚40の正面上端部に接近する。収納棚40は、左右方向において空中操作部25の最遠端27よりも便器装置15側へ張り出している。左右いずれの手で操作する場合も、上肢は空中操作部25を通過しないので、非接触式リモコン20が誤操作されることはない。
【0055】
紙巻き器30と収納棚40と非接触式リモコン20が、前記トイレ室10の右壁面12に並ぶように配置されている。紙巻き器30と収納棚40の奥行寸法D2,D3は、右壁面12から空中操作部25の最遠端27までの奥行寸法D1よりも大きい。便器装置15に着座した使用者が紙巻き器30や収納棚40に向かって上肢を動かしたときに、上肢が空中操作部25を通過せずに済む。
【0056】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0057】
実施形態1~3において、紙巻き器の奥行寸法を、壁面から空中操作部の前端までの奥行寸法と同じか、それよりも小さい寸法にしてもよい。
【0058】
実施形態1において、接触式リモコンを非接触式リモコンと同じく右壁面に設置してもよい。
【0059】
実施形態1において、非接触式リモコンと紙巻き器と横バーの高さを変えずに、非接触式リモコンを紙巻き器及び横バーよりも前方に配置してもよい。
【0060】
実施形態2において、紙巻き器を、非接触式リモコンよりも上方に配置してもよく、非接触式リモコンよりも低い位置に配置してもよい。
【0061】
実施形態2において、非接触式リモコンを、前後方向の位置を変えずに接触式リモコンと同じ高さに配置してもよい。
【0062】
実施形態2において、非接触式リモコンを、前後方向に位置を変えずに、紙巻き器よりも高い位置に配置してもよく、紙巻き器よりも低い位置に配置してもよい。
【0063】
実施形態3において、非接触式リモコンを、前後方向の位置を変えずに、紙巻き器及び収納棚よりも高い位置に配置してもよい。
【0064】
実施形態2において、非接触式リモコンを、紙巻き器の真上に配置してもよく、紙巻き器の斜め上前方に配置してもよい。
【符号の説明】
【0065】
A,B,C…トイレ用設備、D1…壁面から空中操作部の前端までの奥行寸法、D2,D3…トイレ付帯設備の奥行寸法、10…トイレ室、12…右壁面(トイレ室の壁面)、13…左壁面(トイレ室の壁面)、15…便器装置、20…非接触式リモコン、25…空中操作部、30…紙巻き器(トイレ付帯設備)、32…手摺り(トイレ付帯設備)、33…横バー(トイレ付帯設備)、35…接触式リモコン(トイレ付帯設備)、38…点字表示、39…棚板(トイレ付帯設備)、40…収納棚(トイレ付帯設備)