(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182368
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】制御システム及び制御システムの誤接続診断方法
(51)【国際特許分類】
H04L 13/00 20060101AFI20221201BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20221201BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H04L13/00 311
H04L12/28 200M
G05B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089886
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】大谷 辰幸
【テーマコード(参考)】
5H209
5K033
5K035
【Fターム(参考)】
5H209AA02
5H209BB13
5H209DD11
5H209GG11
5H209HH02
5H209SS01
5K033AA05
5K033BA03
5K033DA11
5K033DB20
5K033EA03
5K035AA03
5K035BB02
5K035JJ04
5K035KK04
5K035MM03
5K035MM07
(57)【要約】
【課題】可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理する制御システムであっても、誤接続の有無及び誤接続の箇所を検出できるようにする。
【解決手段】本発明の制御システムは、親局となる演算装置(P01)と子局となる複数の通信装置(A00,B00,C00)とが二重化された通信回線(L1,L2)により接続され、各通信回線の通信フレームを先着優先で処理する。演算装置(P01)は、通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を通信フレームに載せるとともに、系統ごとに通信フレームの受信をマスクする。通信装置(A00,B00,C00)は、通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を通信フレームに載せ、通信フレームを受信したポートの系統情報と、受信した通信フレームに載っているポートの系統情報とが不一致の場合に、不一致の旨を表示器(A60,B60,C60)表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局となる演算装置と子局となる複数の通信装置とが多重化された通信回線により接続され、各通信回線の通信フレームを先着優先で処理する制御システムであって、
前記演算装置は、
前記通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を前記通信フレームに載せる第1の機能、及び、
系統ごとに通信フレームの受信をマスクする第2の機能を有し、
前記複数の通信装置は、
前記通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を前記通信フレームに載せる第3の機能、及び、
通信フレームを受信したポートの系統情報と、受信した前記通信フレームに載っているポートの系統情報とが不一致の場合に、不一致である旨を告知する第4の機能を有する
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記演算装置は、前記第2の機能によって片方の系統の通信フレームの受信をマスクした状態で前記複数の通信装置に通信フレームを送出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記複数の通信装置は、通信フレームの受信に対する応答として、前記第3の機能によってポートの系統情報を載せた通信フレームを前記演算装置に返答し、
前記演算装置は、通信回線の系統ごとに収集した通信フレーム内のポートの系統情報に基づいて、通信回線の誤接続の有無及び誤接続の箇所を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
親局となる演算装置と子局となる複数の通信装置とが多重化された通信回線により接続され、各通信回線の通信フレームを先着優先で処理する制御システムの誤接続診断方法であって、
多重化された通信回線が、1系の通信回線及び2系の通信回線であるとき、
前記演算装置において、2系の通信回線の通信フレームの受信をマスクした状態で、1系の通信回線及び2系の通信回線に接続されているすべての通信装置に対してリードまたはライトを実施し、1系の通信回線からの応答フレームのポート情報を収集し、
次いで、1系の通信回線の通信フレームの受信をマスクした状態で、1系の通信回線及び2系の通信回線に接続されているすべての通信装置に対してリードまたはライトを実施し、2系の通信回線からの応答フレームのポート情報を収集し、
次いで、通信回線の系統ごとに収集した通信フレーム内のポートの系統情報に基づいて、通信回線の誤接続の有無及び誤接続の箇所を判定する
ことを特徴とする制御システムの誤接続診断方法。
【請求項5】
通信装置を活線交換して通信回線に接続した際に、
通信フレームを受信したポートの系統情報と、受信した前記通信フレームに載っているポートの系統情報とが不一致であるとき、活線交換した前記通信装置について通信回線の誤接続の有無を判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の制御システムの誤接続診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム及び制御システムの誤接続診断方法に関し、特に、可用性のために通信回線が多重化された制御システム、及び、当該制御システムの誤接続診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントなどの制御システムでは、制御装置間を接続する通信回線が断線するなどした際に通信不可となり制御が停止してしまうことを防ぐために、通信回線を多重化(例えば、二重化)することがある。通信回線の多重化により、1つの通信回線に断線などが生じても制御を継続することができる。
【0003】
一方、ネットワークの分野では、通信ポート間でポートの情報を交換することにより、回線の接続状態を自動的に判断できる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、「異なるネットワーク素子に隣接して配置されている少なくとも2つのポート間の物理的な相互接続を自動的に判断する一つまたはそれ以上のコントローラを具備している。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術のように、通信ポートの情報を通信フレームに付与し、装置間で情報をやり取りすることにより、ネットワークの接続状態を自動的に把握する場合、可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理する制御システムでは、先着した系の情報しか取得できないという課題に直面する。その結果、可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理する制御システムでは、通信回線の誤接続の有無及び誤接続の箇所を検出することができないことになる。
【0006】
そこで、本発明は、可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理するシステムの場合であっても、通信回線の誤接続の有無及び誤接続の箇所を検出することができる制御システム及び当該制御システムの誤接続診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、
親局となる演算装置と子局となる複数の通信装置とが多重化された通信回線により接続され、各通信回線の通信フレームを先着優先で処理する制御システムにおいて、
演算装置は、通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を通信フレームに載せるとともに、系統ごとに通信フレームの受信をマスクする。
通信装置は、通信回線に通信フレームを送出する際に、送出するポートの系統情報を通信フレームに載せ、通信フレームを受信したポートの系統情報と、受信した通信フレームに載っているポートの系統情報とが不一致の場合に、不一致の旨を告知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理する制御システムにおいても、通信回線の誤接続の有無及び誤接続の箇所を検出することができる。
【0009】
尚、上記した以外の課題、構成、及び、効果は、以下の実施の形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】通信フレームのフォーマットを示す図である。
【
図3】プラント運転開始前に実施する通信回線の誤接続診断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】通信回線の誤接続のケース1(子局での誤接続)を例示する図である。
【
図5】通信回線の誤接続のケース2(親局での誤接続)を例示する図である。
【
図6】プラント運転開始後に通信装置を活線交換する場合の通信回線の誤接続診断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
[可用性が求められる制御システムについて]
可用性が求められる制御システム、例えば、発電プラントなどの制御システムでは、制御継続性が重要視されており、1つの装置や通信回線に故障や断線等が発生した場合でも制御が継続できるように、各装置や通信回線を多重化する(例えば、二重化する)ことがある。また、通信回線を多重化する場合、処理を簡単化するために、各通信回線に同じ内容の通信フレームを送信し、受信側では、先着した通信フレームについて優先して処理を行う(所謂、先着優先)という方法が採用されることがある。
【0013】
この先着優先の方法を採用した制御システムでは、ある装置に接続される2つの通信回線を互い違いに誤接続してしまった場合であっても、通信については正常に行えることになるために、誤接続していることに気づくことができない。そして、誤接続の状態でプラントの運転を開始してしまうと、一方の系で回線異常が起きたときに、もう一方の系の回線異常であるように見えてしまい、回線交換の際に、正常な系の回線を交換してしまう可能性がある。そのため、プラント運転を開始する前に、通信回線を誤接続していないかを確認する必要がある。しかし、通信回線の誤接続については、作業員がプラント内の通信回線を一つ一つ確認する作業となるために、誤接続の確認作業に多大な工数を要することになる。
【0014】
[本発明の実施形態に係る制御システム]
本発明の実施形態に係る制御システムは、例えば、発電プラントなどのプラント制御システムであり、可用性のために通信回線を多重化(例えば、二重化)し、先着優先で通信フレームを処理する構成となっている。そして、この構成の制御システムにおいても、通信回線の誤接続の有無と誤接続の箇所を検出することができるようにするために、以下に説明するシステム構成を採る。
【0015】
(システム構成)
図1は、本発明の実施形態に係る制御システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る制御システムは、大きくは、親局(P00)と、複数の子局、例えば3つの子局(A00、B00、C00)とから構成されている。
【0016】
親局(P00)と3つの子局(A00、B00、C00)とは、2つの通信回線、具体的には、1系の通信回線(L1)と2系の通信回線(L2)とによって電気的に接続されている。通信回線に故障や断線等が無い正常な状態では、1系の通信回線(L1)は、演算装置(P01)のポート1(P11)と、通信装置(A01、B01、C01)のポート1(A11、B11、C11)との間に電気的に接続される。2系の通信回線(L2)は、演算装置(P01)のポート2(P12)と、通信装置(A01、B01、C01)のポート2(A12、B12、C12)との間に電気的に接続される。
【0017】
本実施形態に係る制御システムにおいて、親局(P00)は、演算装置(P01)から構成されている。親局(P00)である演算装置(P01)は、ポート1(P11)、ポート2(P12)、マスクスイッチ(P21)、及び、マスクスイッチ(P22)を有している。マスクスイッチ(P21)は、1系マスク指示信号(P31)に応答することにより、ポート1(P11)から入力される通信フレームをマスクする機能(第2の機能)を持っている。マスクスイッチ(P22)は、2系マスク指示信号(P32)に応答することにより、ポート2(P12)から入力される通信フレームをマスクする機能(第2の機能)を持っている。尚、
図1では、マスクスイッチ(P21)及びマスクスイッチ(P22)を、「SW」として図示している。
【0018】
演算装置(P01)は、ポート情報挿入部(P41、P42)、先着優先部(P50)、通信制御部(P60)、及び、演算部(P70)の各機能部を備えている。ポート情報挿入部(P41、P42)は、通信フレームにポート情報を挿入する機能(第1の機能)を持っている。先着優先判定部(P50)は、先着した系の通信フレームを優先して後段に渡す機能を持っている。通信制御部(P60)は、装置間の通信を制御する機能を持っている。演算部(P70)は、通信制御部(P60)に対して通信の種別と宛先アドレス及びデータを指示する機能を持っている。
【0019】
演算装置(P01)におけるポート情報挿入部(P41、P42)、先着優先部(P50)、通信制御部(P60)、及び、演算部(P70)の各機能部については、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより、ソフトウェアで実行するマイクロコンピュータによって実現することができる。また、上記の各機能部について、その一部または全部を、例えば集積回路で設計することにより、ハードウェアで実現することもできる。
【0020】
尚、マスクスイッチ(P21)を駆動する1系マスク指示信号(P31)、及び、マスクスイッチ(P22)を駆動する2系マスク指示信号(P32)は、例えば、演算部(P70)で生成される信号である。演算部(P70)は、1系マスク指示信号(P31)及び2系マスク指示信号(P32)を、必要に応じて有効にする。
【0021】
子局(A00、B00、C00)は、通信装置(A01、B01、C01)、及び、入出力装置(A02、A03、A04、A02、B03、B04、C02、C03、C04)から構成されている。
【0022】
通信装置(A01、B01、C01)は、ポート1(A11、B11、C11)、ポート2(A12、B12、C12)、及び、表示器(A60、B60、C60)を有している。表示器(A60、B60、C60)としては、例えば、点灯/消灯によって状態を簡単に告知(表示出力)するLED(発光ダイオード)などを用いることができる。
【0023】
通信装置(A01、B01、C01)は、さらに、ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)、及び、ポート情報挿入部(A31、A32、B31、B32、C31、C32)の各機能部を備えている。
【0024】
ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)は、各ポートで受信した通信フレームに対して、自身のポートの系統と、通信フレームに載っているポート情報の系統とが一致しているか否かチェックする機能を持っている。ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)は、さらに、不一致の場合に不一致である旨を、例えば表示器(A60、B60、C60)による表示にて告知する機能(第4の機能)を持っている。ポート情報挿入部(A31、A32、B31、B32、C31、C32)は、各ポートの手前で通信フレームにポート情報を挿入する機能(第3の機能)を持っている。
【0025】
通信装置(A01、B01、C01)は、さらに、先着優先判定部(A40,B40,C40)、及び、通信制御部(A40,B40,C40)の各機能部を備えている。先着優先判定部(A40,B40,C40)は、先着した系の通信フレームを優先して後段に渡す機能を持っている。通信制御部(A40,B40,C40)は、受信した通信フレームの種別やアドレス及びデータに応じて、入出力装置(A02、A03、A04、B02、B03、B04、C02、C03、C04)との間でデータのやり取りを行う機能を持っている。通信制御部(A50、B50、C50)は、さらに、通信フレームの受信に対して応答するために通信フレームを作成し、ポート1(A11、B11、C11)、ポート2(A12、B12、C12)を介して通信回線(L1、L2)に通信フレームを送出する機能を持っている。
【0026】
通信装置(A01、B01、C01)において、ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)、ポート情報挿入部(A31、A32、B31、B32、C31、C32)、先着優先判定部(A40,B40,C40)、及び、通信制御部(A40,B40,C40)の各機能部については、その一部または全部を、例えば集積回路で設計することにより、ハードウェアで実現することができる。ただし、ハードウェア構成に限られるものではなく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより、ソフトウェアで実行するマイクロコンピュータによって実現することもできる。
【0027】
尚、ここでは、1つの親局(P00)に対して3つの子局(A00、B00、C00)が接続された制御システムを例示したが、任意の数の子局を接続することが可能である。同様に、子局の入出力装置についても任意の数の入出力装置を1つの子局に持つことが可能である。
【0028】
(通信動作)
続いて、
図1に示した本実施形態に係る制御システムの通信動作について説明する。本実施形態に係る制御システムにおける通信は、親局(P00)である演算装置(P01)がマスターとなり、3つの子局(A00、B00、C00)の各通信装置(A01、B01、C01)がスレーブとなって実施される。
【0029】
演算装置(P01)内の演算部(P70)は、装置間の通信を制御する通信制御部(P60)に対して、通信の種別と宛先アドレス及びデータを指示する。通信制御部(P60)は、演算部(P70)からの指示に応じて通信フレームを作成し、作成した通信フレームを、ポート1(P11)及びポート2(P22)を介して1系の通信回線(L1)及び2系の通信回線(L2)に送出する。
【0030】
演算装置(P01)では、ポート情報挿入部(P41、P42)の機能によって、各ポートの手前で通信フレームに対してポート情報の挿入が行われる。
図2の(1),(3)に、演算装置(P01)が送出する通信フレームのフォーマットの一例を示す。
【0031】
図2の(1)は、リード要求を行う通信フレームのフォーマット例である。リード要求を行う通信フレームは、開始フラグ(F00)、モードエリア(F01)、ポート情報エリア(F02)、アドレスエリア(F03)、データサイズエリア(F06)、CRCエリア(F07)、及び、終了フラグ(F08)で構成される。
【0032】
リード要求を行う通信フレームにおいて、開始フラグ(F00)は、フレームの先頭を示すフラグである。モードエリア(F01)は、ライト/リード、要求/応答を表すフラグである。ポート情報エリア(F02)は、送出したポートの系統を示すエリアである。アドレスエリア(F03)には、送信先アドレス(F04)及び送信元アドレス(F05)が含まれている。データサイズエリア(F06)は、リードするデータの大きさを指定するエリアである。CRCエリア(F07)は、フレームの健全性を保障するエリアである。終了フラグ(F08)は、フレームの終わりを示すフラグである。
【0033】
図2の(3)は、ライト要求を行う通信フレームのフォーマットである。ライト要求を行う通信フレームは、開始フラグ(F20)、モードエリア(F21)、ポート情報エリア(F22)、アドレスエリア(F23)、データサイズエリア(F26)、ライトデータエリア(F27)、CRCエリア(F28)、及び、終了フラグ(F29)で構成される。
【0034】
ライト要求を行う通信フレームにおいて、開始フラグ(F20)は、フレームの先頭を示すフラグである。モードエリア(F21)は、ライト/リード、要求/応答を表すエリアである。ポート情報エリア(F22)は、送出したポートの系統を示すエリアである。アドレスエリア(F23)には、送信先アドレス(F24)及び送信元アドレス(F25)が含まれている。データサイズエリア(F26)は、ライトするデータの大きさを指定するエリアである。ライトデータエリア(F27)は、ライトするデータを載せるエリアである。CRCエリア(F28)は、フレームの健全性を保障するエリアである。終了フラグ(F29)フレームの終わりを示すフラグである。
【0035】
ここで、1系の通信回線(L1)に送る通信フレームと、2系の通信回線(L2)に送る通信フレームとの間で相違があるのは、ポート情報エリア(F02、F22)とCRCエリア(F07、F28)のみであり、その他のエリアは同一となる。CRCエリア(F07、F28)が異なるのは、ポート情報エリア(F02、F22)も含めてCRCのコードを生成するためである。
【0036】
子局(A00、B00、C00)の通信装置(A01、B01、C01)は、ポート1(A11、B11、C11)、ポート2(A12、B12、C12)を介して通信フレームを受信すると、先着優先判定部(A40、B40、C40)の機能により、先着した系の通信フレームのみを選択して出力することで、通信制御部(A50、B50、C50)に渡す。
【0037】
通信装置(A01、B01、C01)は、ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)の機能により、各ポートで受信した通信フレームに対して、自身のポート情報の系統と、通信フレームに載っているポート情報の系統とが一致しているか否かチェックする。そして、ポート情報チェック部(A21、A22、B21、B22、C21、C22)は、両系統が異なっている場合は、不一致の旨を表示器(A60、B60、C60)での表示出力にて作業者に告知する。
【0038】
尚、表示器(A60、B60、C60)は、自身のポート情報の系統と、通信フレームに載っているポート情報の系統とが不一致の旨を、例えばLEDの点灯によって作業者に告知する告知手段の一例である。ただし、当該告知手段としては、表示器(A60、B60、C60)による表示出力に限られるものではなく、例えば音声出力によって告知するようにすることも可能である。
【0039】
通信制御部(A50、B50、C50)は、受信した通信フレームの種別やアドレス及びデータに応じて、入出力装置(A02、A03、A04、B02、B03、B04、C02、C03、C04)とデータのやり取りを行う。その後、通信制御部(A50、B50、C50)は、通信フレームの受信に対して応答するために通信フレームを作成し、作成した通信フレームを、ポート1(A11、B11、C11)、ポート2(A12、B12、C12)を介して1系の通信回線(L1)及び2系の通信回線(L2)に送出する。
【0040】
通信装置(A01、B01、C01)では、ポート情報挿入部(A31、A32、B31、B32、C31、C32)の機能によって、各ポートの手前で通信フレームに対してポート情報の挿入が行われる。
図2の(2),(4)に、通信装置(A01、B01、C01)が送出する通信フレームのフォーマットの一例を示す。
【0041】
図2の(2)は、リード応答を行う通信フレームのフォーマットである。リード応答を行う通信フレームは、開始フラグ(F10)、モードエリア(F11)、ポート情報エリア(F12)、アドレスエリア(F13)、リードデータエリア(F16)、CRCエリア(F17)、及び、終了フラグ(F18)で構成される。
【0042】
リード応答を行う通信フレームにおいて、開始フラグ(F10)は、フレームの先頭を示すフラグである。モードエリア(F11)は、ライト/リード、要求/応答を表すエリアである。ポート情報エリア(F12)は、送出したポートの系統を示すエリアである。アドレスエリア(F13)には、送信先アドレス(F14)及び送信元アドレス(F15)が含まれている。リードデータエリア(F16)は、リードしたデータを載せるエリアである。CRCエリア(F17)は、フレームの健全性を保障するエリアである。終了フラグ(F18)は、フレームの終わりを示すフラグである。
【0043】
図2の(4)は、ライト応答を行う通信フレームのフォーマットである。ライト応答を行う通信フレームは、開始フラグ(F30)、モードエリア(F31)、ポート情報エリア(F32)、アドレスエリア(F33)、CRCエリア(F36)、及び、終了フラグ(F37)で構成される。
【0044】
ライト応答を行う通信フレームにおいて、開始フラグ(F30)は、フレームの先頭を示すフラグである。モードエリア(F31)は、ライト/リード、要求/応答を表すエリアである。ポート情報エリア(F32)は、送出したポートの系統を示すエリアである。アドレスエリア(F33)、CRCエリア(F36)には、送信先アドレス(F34)及び送信元アドレス(F35)が含まれている。終了フラグ(F37)は、フレームの終わりを示すフラグである。
【0045】
ここで、1系の通信回線(L1)に送る通信フレームと、2系の通信回線(L2)に送る通信フレームとの間で相違があるのは、ポート情報エリア(F12、F32)とCRCエリア(F17、F36)のみであり、その他のエリアは同一となる。CRCエリア(F17、F36)が異なるのは、ポート情報エリア(F12、F32)も含めてCRCのコードを生成するためである。
【0046】
親局(P00)である演算装置(P01)は、ポート1(P11)及びポート2(P12)を介して通信フレームを受信すると、先着優先判定部(P50)の機能により、先着した系の通信フレームのみを選択して出力し、通信制御部(P60)に渡す。通信制御部(P60)は、受信した通信フレームのデータを演算部(P70)に渡す。
【0047】
上述した一連の動作が、
図1に示した本実施形態に係る制御システムにおける通信動作である。
【0048】
(プラント運転開始前に実施する誤接続診断方法)
次に、プラント運転開始前に実施する通信回線の誤接続診断方法を説明する。この誤接続診断方法では、各装置間の配線が完了した段階で、1系の通信回線(L1)と2系の通信回線(L2)との間での通信回線の誤接続箇所の有無を診断するために、各通信装置のポート情報を収集して誤接続の診断を実施する。
図3は、プラント運転開始前に実施する通信回線の誤接続診断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
先ず、演算装置(P01)は、2系マスク信号(P32)を有効にし、マスクスイッチ(P22)によって2系の通信フレームの受信をマスクする(ステップS01)。次に、演算装置(P01)は、1系の通信回線(L1)及び2系の通信回線(L2)に接続されているすべての通信装置に対してリードまたはライトを実施し、1系の通信回線(L1)からの応答フレームのポート情報を収集する(ステップS02)。このとき、ステップS01の処理で2系の通信フレームの受信をマスクしているため、ステップS02の処理では、1系の通信回線(L1)からの応答フレームのポート情報を収集することができる。
【0050】
次に、演算装置(P01)は、1系マスク信号(P31)を有効にし、マスクスイッチ(P21)によって1系の通信フレームの受信をマスクする(ステップS03)。次に、演算装置(P01)は、1系の通信回線(L1)及び2系の通信回線(L2)に接続されているすべての通信装置に対してリードまたはライトを実施し、2系の通信回線(L2)からの応答フレームのポート情報を収集する(ステップS04)。このとき、ステップS03の処理で1系の通信フレームの受信をマスクしているため、ステップS04の処理では、2系の通信回線(L2)からの応答フレームのポート情報を収集することができる。
【0051】
次に、演算装置(P01)は、ステップS02及びステップS04で収集したポート情報に基づいて、通信回線の系統とポート情報の系統とがすべて一致しているか否かを判断し(ステップS05)、すべて一致している場合は(S05のYES)、通信回線に誤接続の箇所が無いと判断して、通信回線の誤接続診断のための一連の処理を終了する。
【0052】
演算装置(P01)は、通信回線の系統とポート情報の系統とに一致しない箇所がある場合は(S05のNO)、一致しない箇所がある旨を表示器(A60、B60、C60)による表示出力にて作業員に告知し、通信回線の誤接続箇所の修復指示を発する(ステップS06)。この修復指示を受けて、作業員は現場にて回線接続を確認し、通信回線の誤接続箇所を修復する処理を実行することになる。そして、誤接続箇所の修復が完了すると、作業員は、例えば所定のスイッチ(図示せず)を操作することにより、誤接続箇所の修復が完了した旨を演算装置(P01)に通知する。
【0053】
演算装置(P01)は、作業員からの修復完了通知を待機し(ステップS07)、作業員から修復完了の通知があれば(S07のYES)、ステップS01に戻り、再度、通信回線の誤接続診断を実施する。
【0054】
演算装置(P01)は、上述した一連の通信回線の誤接続診断のための処理を、ステップS05の処理において、通信回線の系統とポート情報の系統とがすべて一致すると判断するまで、即ち、通信回線に誤接続箇所が無いと判断するまで繰り返して実行する。
【0055】
尚、ステップS05の処理において、通信回線の系統とポート情報の系統とに不一致があると判断した場合に(S05のNO)、収集結果を参照することにより、どの箇所で誤接続があったかを判定することができる。
図4に、誤接続のケース1(子局での誤接続)を示し、
図5に、誤接続のケース2(親局での誤接続)を示す。
【0056】
図4(1)は、子局2(B00)で誤接続があった場合を例示している。この誤接続の例の場合、子局2(B00)のポート1(B11)に2系の通信回線(L2)が、ポート2(B12)に1系の通信回線(L1)が互い違いに接続されている。このときのポート情報取集結果の例を
図4(2)に示しており、子局2(B00)の収集結果のみが不一致となる。つまり、ポート情報の収集結果を見たときにいくつかの子局に不一致があるが、一致している子局もある場合には、不一致となった子局で誤接続していると判断することができる。
【0057】
図5(1)は、親局(P00)で誤接続があった場合を例示している。この誤接続の例の場合、親局(P00)のポート1(P11)に2系の通信回線(L2)が、ポート2(P12)に1系の通信回線(L1)が互い違いに接続されている。このときのポート情報取集結果の例を
図5(2)に示しており、すべての子局で収集結果が不一致となる。つまり、ポート情報の収集結果を見たときにすべての子局が不一致の場合には、親局で誤接続していると判断することができる。
【0058】
このように、
図3のフローチャートに示す一連の通信回線の誤接続診断処理によって演算装置(P01)に収集されたポート情報を見ることで、作業員が現地で一つ一つ誤接続の有無を確認することなく、通信回線の誤接続の有無と誤接続の箇所を容易に判断することが可能となる。
【0059】
(プラント運転開始後に通信装置を活線交換する場合の誤接続診断方法)
次に、プラント運転開始後に通信装置を活線交換する場合の通信回線の誤接続検出方法について説明する。ここでは、子局1(A00)の通信装置(A01)を活線交換するケースを例示する。
図6は、プラント運転開始後に通信装置を活線交換する場合の通信回線の誤接続診断の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0060】
通信装置(A01)のポート1(A11)に2系の通信回線(L2)が、ポート2(A12)に1系の通信回線(L1)が互い違いに接続されている状態で、通信装置(A01)を活線交換すると、通信装置(A01)のポート1(A11)は2系のポート情報が載った通信フレームを受信する(ステップS11)。
【0061】
このとき、通信装置(A01)は、ポート1(A11)で受信した通信フレームに対して、ポート情報チェック部(A21)の機能により、自身のポートの系統(1系)と、通信フレームに載っているポート情報(2系)の系統とが一致しているか否かをチェックし(ステップS12)、一致している場合には(S12のYES)、活線交換する場合の誤接続診断のための一連の処理を終了する。
【0062】
通信装置(A01)は、自身のポートの系統(1系)と、通信フレームに載っているポート情報(2系)の系統とが異なっている場合には(S12のNO)、その旨を表示器(A60)に表示させる(ステップS13)。この表示を受けて、作業員は、通信装置(A01)に通信回線の誤接続があると判断し、現場にて回線接続を確認し、誤接続箇所を修復する処理を実行する。この修復処理の実行により、ステップS12では、自身のポートの系統(1系)と、通信フレームに載っているポート情報(2系)の系統とが一致していると判断される。
【0063】
ここでは、通信装置(A01)のポート1(A11)について説明したが、ポート2(A12)についても同様である。通信装置(A01)を活線交換した作業員は、表示器(A60)の表示を受けて、通信装置(A01)に通信回線の誤接続があると判断し、誤接続箇所の修復を行うことができる。
【0064】
[変形例]
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0065】
また、上述した実施形態では、制御システムとして、発電プラントなどのプラント制御システムを例に挙げて説明したが、本発明は、プラント制御システムへの適用に限られるものではなく、交通インフラなど、可用性のために通信回線を多重化し、先着優先で通信フレームを処理する制御システム全般に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
P00…親局、P01…演算装置、P11…演算装置のポート1、P12…演算装置のポート2、P21…1系マスクスイッチ、P22…2系マスクスイッチ、P31…1系マスク信号、P32…2系マスク信号、P41,P42…演算装置のポート情報挿入部、P50…演算装置の先着優先判定部、P60…演算装置の通信制御部、P70…演算装置の演算部、A00,B00,C00…子局、A01,B01,C01…通信装置、A02,A03,A04,B02,B03,B04,C02,C03,C04…入出力装置、A11,B11,C11…通信装置のポート1、A12,B12,C12…通信装置のポート2、A21,A22,B21,B22,C21,C22…通信装置のポート情報チェック部、A31,A32,B31,B32,C31,C32…通信装置のポート情報挿入部、A40,B40,C40…通信装置の先着優先判定部、A50,B50,C50…通信装置の通信制御部、A60,B60,C60…表示器、L1…1系の通信回線、L2…2系の通信回線