(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182392
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20221201BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20221201BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221201BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221201BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221201BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221201BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221201BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/00 900
F02D29/02 321B
B60L50/16
B60L50/60
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089918
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 亮平
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB05
3D202BB12
3D202CC42
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD27
3G093AA07
3G093CA01
3G093DA01
3G093DB01
3G093EC02
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA02
5H125EE02
5H125EE08
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】エンジン始動時におけるモータジェネレータへの過電流の供給を抑止することができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】内燃機関とモータジェネレータとを制御する車両制御装置は、燃料を噴射する際に要求されるMG要求トルクが、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における最高MG回転数で付与できるMG制限トルク以下のトルクであると判定された場合には、燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、インバータを介してモータジェネレータが内燃機関のクランクシャフトにMG要求トルクを付与するように制御し、一方、MG要求トルクがMG制限トルクよりも大きいトルクであると判定された場合には、燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、インバータを介してモータジェネレータが内燃機関のクランクシャフトにMG制限トルクを付与するように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関に駆動連結されるモータジェネレータと、
前記内燃機関のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出装置と、
前記モータジェネレータにインバータを介して電気的に接続されたバッテリと、
前記内燃機関と前記モータジェネレータとを制御する車両制御装置と、
を備え、
前記車両制御装置は、
前記エンジン回転数がゼロから予め定められた始動回転数を超えるまで前記モータジェネレータを使用して前記内燃機関を始動するクランキング中において、前記エンジン回転数が前記始動回転数よりも低い回転数閾値以上である場合に、前記内燃機関の燃料噴射弁から噴射する燃料噴射量を取得する噴射量取得部と、
前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記エンジン回転数に応じて、前記モータジェネレータが定格出力で前記内燃機関のクランクシャフトに付与するように要求されるMG要求トルクを取得するMG要求トルク取得部と、
前記燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における前記モータジェネレータの最高回転数である最高MG回転数を取得する最高MG回転数取得部と、
前記モータジェネレータが前記最高MG回転数で回転駆動されたときに、前記モータジェネレータの最大定格入力電流で前記内燃機関のクランクシャフトに付与できるMG制限トルクを取得するMG制限トルク取得部と、
前記MG要求トルクが前記MG制限トルク以下のトルクであるか否かを判定するMGトルク判定部と、
を有し、
前記MGトルク判定部を介して前記MG要求トルクが前記MG制限トルク以下のトルクであると判定された場合には、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、前記インバータを介して前記モータジェネレータが前記内燃機関のクランクシャフトに前記MG要求トルクを付与するように制御し、
一方、前記MGトルク判定部を介して前記MG要求トルクが前記MG制限トルクよりも大きいトルクであると判定された場合には、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、前記インバータを介して前記モータジェネレータが前記内燃機関のクランクシャフトに前記MG制限トルクを付与するように制御する、
ハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記モータジェネレータのモータジェネレータ回転数を検出するMG回転数検出装置を備え、
前記最高MG回転数取得部は、
前記噴射量取得部を介して取得した前記燃料噴射量と、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記エンジン回転数と、に基づいて、前記燃料噴射弁から噴射された燃料によって前記クランクシャフトに付与される噴射トルクを取得する噴射トルク取得部と、
前記MG要求トルク取得部を介して取得した前記MG要求トルクと、前記噴射トルク取得部を介して取得した前記噴射トルクと、に基づいて、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記モータジェネレータ回転数から前記最高MG回転数まで増加する増加回転数を取得する増加回転数取得部と、
を有し、
前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記モータジェネレータ回転数に前記増加回転数取得部を介して取得した前記増加回転数を加算して前記最高MG回転数を算出する、
ハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記増加回転数取得部は、
前記燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの噴射一周期の半噴射周期経過するまでの半周期時間を取得する半周期時間取得部を有し、
前記半周期時間取得部を介して取得した半周期時間に基づいて、前記増加回転数を算出する、
ハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記内燃機関を始動するために前記クランクシャフトに与える必要のある要求始動トルクを前記エンジン回転数に応じて記憶する要求始動トルク記憶部を備え、
前記回転数閾値は、
前記モータジェネレータの定格出力で前記クランクシャフトに付与することができるMG定格トルクが前記要求始動トルクに一致するときの前記エンジン回転数として予め設定されている、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン及びモータジェネレータを備えたハイブリッド車両に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載される車両のエンジン始動制御装置では、エンジンのクランクシャフトと、モータジェネレータの出力軸とは、それぞれのプーリを介して伝達ベルトにより駆動連結されている。そして、電子制御装置は、エンジンの始動時に、モータジェネレータの駆動を開始して、モータジェネレータがクランクシャフトに付与できる最大MGトルクが、エンジンを始動するのに必要な要求始動トルクに達したか否かを判定する。尚、エンジン回転数が閾値Nxに達するまで、最大MGトルクは、要求始動トルクよりも小さいトルクに設定されている。
【0003】
そして、最大MGトルクが要求始動トルクに達していないと判定された場合には、電子制御装置は、モータジェネレータが最大MGトルクを出力するように制御すると共に、燃料噴射弁からアシスト噴射量の燃料を噴射するように制御する。一方、最大MGトルクが要求始動トルク以上になったと判定された場合には、電子制御装置は、エンジン回転数が始動回転数に達するまで、燃料噴射弁から噴射するアシスト噴射量をゼロに設定し、モータジェネレータが要求始動トルクを出力するように制御する。尚、エンジン回転数が始動回転数に達した後は、電子制御装置は、エンジンの運転状態に基づいて燃料噴射弁から燃料を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両のエンジン始動制御装置では、最大MGトルクが要求始動トルクよりも小さいと判定された場合には、電子制御装置は、燃料噴射弁を制御する操作信号と、モータジェネレータへ最大MGトルクを出力するように制御する操作信号と、を出力する。このため、電子制御装置からインバータへの通信遅れ等の影響で、インバータからモータジェネレータに駆動電流が出力されるまでの時間遅れが発生する。
【0006】
このため、インバータからモータジェネレータに駆動電流が出力される際のモータジェネレータのMG回転数は、燃料噴射時のMG回転数よりも上昇している。その結果、インバータからモータジェネレータへ出力された供給電流が、モータジェネレータの定格出力を超える過電流となり、高圧バッテリのバッテリ寿命の低下やモータジェネレータの破損を引き起こす虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、エンジン始動時におけるモータジェネレータへの過電流の供給を抑止することができるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関と、前記内燃機関に駆動連結されるモータジェネレータと、前記内燃機関のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出装置と、前記モータジェネレータにインバータを介して電気的に接続されたバッテリと、前記内燃機関と前記モータジェネレータとを制御する車両制御装置と、を備え、前記車両制御装置は、前記エンジン回転数がゼロから予め定められた始動回転数を超えるまで前記モータジェネレータを使用して前記内燃機関を始動するクランキング中において、前記エンジン回転数が前記始動回転数よりも低い回転数閾値以上である場合に、前記内燃機関の燃料噴射弁から噴射する燃料噴射量を取得する噴射量取得部と、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記エンジン回転数に応じて、前記モータジェネレータが定格出力で前記内燃機関のクランクシャフトに付与するように要求されるMG要求トルクを取得するMG要求トルク取得部と、前記燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における前記モータジェネレータの最高回転数である最高MG回転数を取得する最高MG回転数取得部と、前記モータジェネレータが前記最高MG回転数で回転駆動されたときに、前記モータジェネレータの最大定格入力電流で前記内燃機関のクランクシャフトに付与できるMG制限トルクを取得するMG制限トルク取得部と、前記MG要求トルクが前記MG制限トルク以下のトルクであるか否かを判定するMGトルク判定部と、を有し、前記MGトルク判定部を介して前記MG要求トルクが前記MG制限トルク以下のトルクであると判定された場合には、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、前記インバータを介して前記モータジェネレータが前記内燃機関のクランクシャフトに前記MG要求トルクを付与するように制御し、一方、前記MGトルク判定部を介して前記MG要求トルクが前記MG制限トルクよりも大きいトルクであると判定された場合には、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、前記インバータを介して前記モータジェネレータが前記内燃機関のクランクシャフトに前記MG制限トルクを付与するように制御する、ハイブリッド車両である。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るハイブリッド車両において、前記モータジェネレータのモータジェネレータ回転数を検出するMG回転数検出装置を備え、前記最高MG回転数取得部は、前記噴射量取得部を介して取得した前記燃料噴射量と、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記エンジン回転数と、に基づいて、前記燃料噴射弁から噴射された燃料によって前記クランクシャフトに付与される噴射トルクを取得する噴射トルク取得部と、前記MG要求トルク取得部を介して取得した前記MG要求トルクと、前記噴射トルク取得部を介して取得した前記噴射トルクと、に基づいて、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記モータジェネレータ回転数から前記最高MG回転数まで増加する増加回転数を取得する増加回転数取得部と、を有し、前記燃料噴射弁から燃料を噴射する際の前記モータジェネレータ回転数に前記増加回転数取得部を介して取得した前記増加回転数を加算して前記最高MG回転数を算出する、ハイブリッド車両である。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るハイブリッド車両において、前記増加回転数取得部は、前記燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの噴射一周期の半噴射周期経過するまでの半周期時間を取得する半周期時間取得部を有し、前記半周期時間取得部を介して取得した半周期時間に基づいて、前記増加回転数を算出する、ハイブリッド車両である。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のうちの1の発明に係るハイブリッド車両において、前記内燃機関を始動するために前記クランクシャフトに与える必要のある要求始動トルクを前記エンジン回転数に応じて記憶する要求始動トルク記憶部を備え、前記回転数閾値は、前記モータジェネレータの定格出力で前記クランクシャフトに付与することができるMG定格トルクが前記要求始動トルクに一致するときの前記エンジン回転数として予め設定されている、ハイブリッド車両である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、車両制御装置は、燃料を噴射する際に要求されるMG要求トルクが、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における最高MG回転数で付与できるMG制限トルク以下のトルクであるか否かを判定する。そして、MG要求トルクがMG制限トルク以下のトルクであると判定された場合には、車両制御装置は、燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、インバータを介してモータジェネレータが内燃機関のクランクシャフトにMG要求トルクを付与するように制御する。
【0013】
これにより、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における最高MG回転数においても、インバータを介してモータジェネレータに最大定格入力電流以下の電流が入力されるため、モータジェネレータへの過電流の供給を抑止することができる。その結果、バッテリ寿命の低下やモータジェネレータの破損を抑止することができる。
【0014】
一方、MG要求トルクがMG制限トルクよりも大きいトルクであると判定された場合には、車両制御装置は、燃料噴射弁から燃料を噴射する際に、インバータを介してモータジェネレータが内燃機関のクランクシャフトにMG制限トルクを付与するように制御する。これにより、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における最高MG回転数においても、モータジェネレータに最大定格入力電流が入力されるため、モータジェネレータへの過電流の供給を抑止することができる。その結果、バッテリ寿命の低下やモータジェネレータの破損を抑止することができる。
【0015】
第2の発明によれば、最高MG回転数取得部は、燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量と、燃料噴射弁から燃料を噴射する際のエンジン回転数と、に基づいて、噴射された燃料によってクランクシャフトに付与される噴射トルクを取得する。そして、最高MG回転数取得部は、この噴射トルクとMG要求トルクと、に基づいて、燃料噴射弁から燃料を噴射する際のモータジェネレータ回転数から増加する増加回転数を取得する。続いて、最高MG回転数取得部は、燃料噴射弁から燃料を噴射する際のモータジェネレータ回転数に増加回転数を加算して最高MG回転数を算出する。従って、最高MG回転数取得部は、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間におけるモータジェネレータの最高回転数である最高MG回転数を迅速に取得することができる。
【0016】
第3の発明によれば、増加回転数取得部は、燃料噴射弁から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの噴射一周期の半噴射周期経過するまでの半周期時間に基づいて、増加回転数を算出する。これにより、最高MG回転数取得部は、燃料噴射弁から燃料を噴射する際のモータジェネレータ回転数に増加する増加回転数を加算することによって、最高MG回転数を迅速に取得することができる。
【0017】
第4の発明によれば、回転数閾値は、モータジェネレータの定格出力でクランクシャフトに付与することができるMG定格トルクが、内燃機関を始動するためにクランクシャフトに与える必要のある要求始動トルクに一致するときのエンジン回転数として予め設定されている。これにより、車両制御装置は、エンジン始動時に、エンジン回転数が回転数閾値以上であるか否かを迅速に判定することができ、エンジン始動時の燃料噴射量の取得処理の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を説明する図である。
【
図2】始動時のエンジン回転数とMG定格トルクと要求始動トルクとの関係性を示すマップである。
【
図3】モータジェネレータのMG回転数とトルクとの関係を示すマップである。
【
図4】車両ECUが実行するエンジン始動制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】燃料噴射時におけるMGトルク信号出力とインバータ出力電流との時間遅れの一例を示すタイムチャートである。
【
図6】MG要求トルクとインバータ出力電流の時間遅れにより出力されるMG実トルクとの一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るハイブリッド車両を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両1の概略構成について
図1に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、内燃機関(以下、「エンジン」という。)11と、トランスミッション12と、モータジェネレータ21と、車両ECU(Electronic Control Unit)51と、エンジンECU52と、モータECU53と、を主に備えている。ハイブリッド車両1は、エンジン11とモータジェネレータ21を駆動源としている。
【0021】
エンジン11のクランクシャフト11Aの一端は、トランスミッション12等を介して不図示の駆動輪に駆動連結されている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンであり、複数(本実施形態では、例えば、4個)の気筒13を有しており、燃料噴射弁15が、それぞれの気筒13に設けられている。各燃料噴射弁15には、不図示のコモンレールと不図示の燃料配管を介して燃料が供給されており、各燃料噴射弁15は、エンジンECU52からの制御信号によって駆動され、それぞれの気筒13内に燃料を噴射する。
【0022】
また、クランクシャフト11Aの他端には、第1プーリ16に駆動連結されている。第1プーリ16には、伝達ベルト17が掛け回されている。尚、図示は省略するが、エンジン11のクランクシャフト11Aは、ベルト、プーリ、ギヤ(スプロケット)、チェーン等を介して、油圧を発生するための油圧ポンプ等にも駆動連結されている。また、エンジン11には、クランク角センサ41(エンジン回転数検出装置)と冷却水温センサ42等が設けられている。また、大気圧センサ45が車両ECU51に設けられている。大気圧センサ45は、車両ECU51の周囲の大気圧に応じた検出信号を車両ECU51に出力する。
【0023】
クランク角センサ41は、クランクシャフト11Aの回転角(すなわち、クランク角度)に応じた検出信号を車両ECU51とエンジンECU52に出力する。例えば、クランク角センサ41は、クランクシャフト11Aが5度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが車両ECU51とエンジンECU52に入力される。車両ECU51とエンジンECU52は、クランク角センサ41の出力パルスからクランク角度、及び、エンジン回転数を検出する。冷却水温センサ42は、エンジン11の不図示のウォータジャケットの出口部に取りつけられて、ウォータジャケットを循環する冷却水の冷却水温に応じた検出信号を車両ECU51に出力する。
【0024】
モータジェネレータ21は、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換したり、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換したりする電力機器である。本実施形態では、モータジェネレータ21として、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期式の電動発電機を採用する。このモータジェネレータ21の回転軸21Aの一端には、第2プーリ18に駆動連結されている。第2プーリ18には、伝達ベルト17が掛け回されている。即ち、モータジェネレータ21は、第2プーリ18、伝達ベルト17、及び第1プーリ16を介して、エンジン11のクランクシャフト11Aに駆動連結されている。このモータジェネレータ21は、エンジン11を始動するスタータモータ19の代わりに、クランキングを行う機能も有している。
【0025】
モータジェネレータ21は、電動モータとして機能する場合には、第2プーリ18に回転トルクを与え、その回転トルクが伝達ベルト17及び第1プーリ16を介してエンジン11のクランクシャフト11Aに入力される。即ち、この場合には、モータジェネレータ21は、エンジン11の駆動をアシストする。一方、モータジェネレータ21は、発電機として機能する場合には、エンジン11のクランクシャフト11Aの回転トルクが、第1プーリ16、伝達ベルト17及び第2プーリ18を介して、モータジェネレータ21の回転軸21Aに入力される。その回転軸21Aの回転に応じて、モータジェネレータ21が発電する。
【0026】
モータジェネレータ21には、インバータ22を介して高圧バッテリ23が電気的に接続されている。インバータ22は、いわゆる双方向インバータであり、モータECU53からの制御信号に従って、モータジェネレータ21が発電した交流電圧を直流電圧に変換して高圧バッテリ23に出力し、高圧バッテリ23が出力した直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ21に出力する。
【0027】
また、モータジェネレータ21には、モータジェネレータ回転センサ(以下、「MG回転センサ」という。)43(MG回転数検出装置)が設けられている。MG回転センサ43は、例えば、回転軸21Aの回転角に応じた検出信号を車両ECU51とモータECU53に出力する。例えば、MG回転センサ43は、回転軸21Aが5度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが車両ECU51とモータECU53に入力される。車両ECU51とモータECU53は、MG回転センサ43の出力パルスからモータジェネレータ回転数を検出する。
【0028】
高圧バッテリ23は、48Vのリチウムイオン電池である。高圧バッテリ23は、モータジェネレータ21が電動モータとして機能するときには、モータジェネレータ21に電力を供給する。また、高圧バッテリ23は、モータジェネレータ21が発電機として機能するときには、モータジェネレータ21から電力の供給を受けて充電される。また、高圧バッテリ23の電流値、電圧値や充電率(SOC)等は、バッテリマネージメントシステム(BMS)28により検出され、車両ECU51に出力される。尚、高圧バッテリ23は、リチウムイオン電池に限られず、他の二次電池(例えば、ニッケル水素電池)を採用してもよいし、全固体二次電池を採用してもよい。
【0029】
モータジェネレータ21には、インバータ22を介してDC/DCコンバータ25が接続されている。また、DC/DCコンバータ25は、高圧バッテリ23にも接続されている。DC/DCコンバータ25は、インバータ22や高圧バッテリ23から出力される直流電圧を12V~15Vに降圧して出力する。DC/DCコンバータ25には、低圧バッテリ26が接続されている。
【0030】
低圧バッテリ26は、高圧バッテリ23よりも電圧の低い12Vの鉛蓄電池である。低圧バッテリ26は、DC/DCコンバータ25が駆動していないときや、DC/DCコンバータ25の出力電圧が12Vであるときには、12Vの直流電圧を出力する。低圧バッテリ26は、DC/DCコンバータ25の出力電圧が低圧バッテリ26の開回路電圧(OCV)より大きいときには、DC/DCコンバータ25から電力の供給を受けて充電される。
【0031】
DC/DCコンバータ25及び低圧バッテリ26には、各種の補機(車両用電装品)27が接続されている。補機27の例としては、例えば、車両の前照灯、方向指示灯、室内灯などのライト関係や、カーナビゲーション装置やスピーカ等の車内装備が挙げられる。補機27は、DC/DCコンバータ25が駆動していないときには、低圧バッテリ26から電力の供給を受ける。補機27は、DC/DCコンバータ25の出力電圧が低圧バッテリ26の開回路電圧(OCV)よりも大きいときには、DC/DCコンバータ25から電力の供給を受ける。
【0032】
また、DC/DCコンバータ25及び低圧バッテリ26には、補機27の1つとしてスタータモータ19が接続されている。スタータモータ19は、直流電動機であり、スタータモータ19の出力軸がエンジン11のクランクシャフト11Aに駆動連結されている。スタータモータ19は、低圧バッテリ26やDC/DCコンバータ25からの電力供給を受けて駆動する。
【0033】
ハイブリッド車両1の車両制御装置を構成する車両ECU51とエンジンECU52及びモータECU53は、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、各種信号を入出力するための入出力ポートと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、保存用ストレージ(ROM(Read Only Memory)、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。
【0034】
車両ECU51とエンジンECU52及びモータECU53は、入力ポートに接続された各種機器(センサ等)から信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続された各種機器を制御する。記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。但し、車両ECU51とエンジンECU52及びモータECU53が行う制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。本実施形態に係る車両ECU51とエンジンECU52及びモータECU53は、本発明に係る「車両制御装置」の一例として機能する。
【0035】
車両ECU51は、エンジン11に対する出力要求値(例えば、燃料噴射量、トルク要求値等)と、モータジェネレータ21に対する出力要求値(例えば、トルク要求値等)とを算出する。そして、車両ECU51は、エンジン11に対する出力要求値をエンジンECU52に出力すると共に、モータジェネレータ21に対する出力要求値をモータECU53に出力する。
【0036】
モータECU53は、車両ECU51から入力された出力要求値に基づいて、インバータ22を介してモータジェネレータ21に対する電力の供給(ひいては、モータジェネレータ21の出力トルク)を制御する。つまり、モータECU53は、車両ECU51から入力された制御信号に基づいて、インバータ22からモータジェネレータ21へ出力される電力の大きさ(振幅)及び周波数等を制御する。また、モータECU53は、車両ECU51から入力された制御信号に基づいて、高圧バッテリ23の充放電制御を行う。
【0037】
また、エンジンECU52は、車両ECU51から入力された出力要求値に基づいて、エンジン11の運転制御(燃料噴射制御等)を行う。例えば、エンジンECU52は、車両ECU51から燃料噴射量の制御信号が入力されると、燃料噴射弁15を介して入力された燃料噴射量の燃料を気筒13内に噴射する。即ち、車両ECU51は、エンジンECU52を介して、エンジン11の燃料噴射弁15からの1噴射当たりの燃料噴射量を制御している。
【0038】
また、車両ECU51は、エンジン11が停止している状態において、エンジン11の始動要求があった場合には、スタータモータ19とモータジェネレータ21のどちらを使用してエンジン11を始動するかを決定する。具体的には、低温、高地といったバッテリ駆動が厳しい環境での始動要求のときには、スタータモータ19を使用したエンジン11の始動を決定する。
【0039】
また、車両ECU51は、バッテリ駆動可能な環境下での始動要求のときには、モータジェネレータ21を使用したエンジン11の始動を決定する。例えば、アイドルストップ中に、不図示のブレーキペダルの踏み込みが解除されたことを不図示のブレーキペダルセンサによって検出することによりモータジェネレータ21を使用したエンジン11の始動を決定する。
【0040】
従って、エンジン11のフリクションが小さい状態でエンジン11を始動させる場合(例えば、暖機完了後のアイドルストップからの始動時や、短時間停車後の再始動時等)には、車両ECU51は、モータジェネレータ21を使用したエンジン11の始動を決定する。また、車両ECU51は、モータジェネレータ21を使用したエンジン11の始動を決定した場合には、後述のように、エンジン11の始動期間中(クランキング中)における燃料噴射弁15からの燃料噴射量をアシスト噴射量QFとして算出する。
【0041】
次に、モータジェネレータ21が定格出力で出力できるMG定格トルクTMと、エンジン11を始動するために必要な要求始動トルクTEとの関係について
図2及び
図3に基づいて説明する。
図2に示すように、エンジン11を始動する際には、エンジン回転数が所定の期間内に始動回転数NS(例えば、約600[rpm])に至るように制御される。そして、エンジン回転数が上昇するためにエンジン11のクランクシャフト11Aに対して付与する必要がある要求始動トルクTEが、エンジン回転数に対するマップM1として車両ECU51の記憶装置の保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0042】
要求始動トルクTEは、エンジン回転数がゼロであるときに最大で、エンジン回転数がゼロから増加していくに従って小さくなる。そして、要求始動トルクTEは、エンジン回転数がある程度高くなって始動回転数NSに至るまでは、概ね一定の値となる。また、エンジン回転数が上昇するためにエンジン11のクランクシャフト11Aに対して付与する必要があるモータジェネレータ21のMG定格トルク(MG要求トルク)TMは、実機試験等によって取得され、エンジン回転数に対するマップM2として車両ECU51の記憶装置の保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0043】
また、
図3に示すように、モータジェネレータ21が定格出力で出力できるMG定格トルクTMは、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)がゼロのときに最大で、モータジェネレータ回転数(MG回転数)が増加していくに従って小さくなる。尚、モータジェネレータ21のMG定格トルクTMは、実機試験等によって取得され、モータジェネレータ回転数(MG回転数)に対するマップM4として車両ECU51の記憶装置の保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0044】
そのため、
図2に示すように、モータジェネレータ21が、エンジン11のクランクシャフト11Aに伝達ベルト17を介して付与できるMG定格トルクTMは、エンジン回転数がゼロのときに最大で、要求始動トルクTEよりも大きくなり、エンジン回転数がゼロから増加していくに従って小さくなる。そして、MG定格トルクTMの低下割合は、要求始動トルクTEの低下割合よりも大きいため、エンジン回転数が回転数閾値NX(例えば、約200[rpm]~300[rpm])を超えると、MG定格トルクTMは、要求始動トルクTEよりも小さくなる。従って、エンジン回転数が回転数閾値NXのときに、MG定格トルクTMが要求始動トルクTEに一致する。
【0045】
即ち、エンジン回転数がゼロから回転数閾値NXまでのときは、モータジェネレータ21のMG定格トルクTMが要求始動トルクTEを満足している。一方、エンジン回転数が回転数閾値NX以上になるとMG定格トルクTMが要求始動トルクTEよりも小さくなり不足トルクTF(=噴射トルクTQF)が発生する。そのため、エンジン回転数が回転数閾値NX以上になった場合には、車両ECU51は、不足トルクTFを補うために、後述のように、燃料噴射弁15からアシスト噴射量QFの燃料を噴射するように制御する(
図4参照)。
【0046】
尚、始動回転数NS及び回転数閾値NXは、実機試験等によって取得され、記憶装置の保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。また、アシスト噴射量QFは、実機試験等によって取得され、エンジン回転数に対するマップM3(
図2参照)として車両ECU51の記憶装置の保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0047】
次に、上記のように構成されたハイブリッド車両1において、車両ECU51がモータジェネレータ21を使用したエンジン11の始動を決定した際に、車両ECU51が実行する「エンジン始動制御処理」の一例について
図4乃至
図6に基づいて説明する。尚、車両ECU51は、モータジェネレータ21を使用してエンジン11を始動する際に、所定時間間隔(例えば、0.1msec~1msec間隔)にて、
図4のフローチャートに示される処理を繰り返し起動し、ステップS11へと処理を進める。
図4のフローチャートで示されるプログラムは、車両ECU51の記憶装置(例えば、ROM、EEPROM等)に記憶されている。
【0048】
ステップS11において、車両ECU51は、クランク角センサ41から入力されたパルス信号に基づいて、クランクシャフト11Aのクランク角度とエンジン11のエンジン回転数を検出してRAMに記憶する。また、車両ECU51は、冷却水温センサ42から入力された検出信号に基づいて、エンジン11内を循環する冷却水の冷却水温を検出してRAMに記憶する。
【0049】
また、車両ECU51は、大気圧センサ45から入力された検出信号に基づいて、車両ECU51の周囲の大気圧を検出してRAMに記憶する。また、車両ECU51は、MG回転センサ43から入力された検出信号に基づいて、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)を検出してRAMに記憶した後、ステップS12の処理に進む。
【0050】
ステップS12において、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。また、車両ECU51は、始動回転数NSを保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)から読み出す。続いて、車両ECU51は、エンジン回転数が始動回転数NSよりも低い回転数であるか否かを判定する。そして、エンジン回転数が始動回転数NS以上であると判定された場合には(S12:NO)、車両ECU51は、エンジン11の始動が終了したと判定して、当該処理を終了する。
【0051】
一方、エンジン回転数が始動回転数NSよりも低い回転数であると判定された場合には(S12:YES)、車両ECU51は、ステップS13の処理に進む。ステップS13において、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。また、車両ECU51は、回転数閾値NXを保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)から読み出す。続いて、車両ECU51は、エンジン回転数が回転数閾値NX以上であるか否かを判定する。
【0052】
そして、エンジン回転数が回転数閾値NXよりも低い回転数であると判定された場合には(S13:NO)、車両ECU51は、ステップS14の処理に進む。ステップS14において、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。そして、車両ECU51は、このエンジン回転数に対応づけられた要求始動トルクTEを、保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されるマップM1(
図2参照)から求める。続いて、車両ECU51は、この要求始動トルクTEがMG定格トルクTMよりも小さいトルクであるため(
図2参照)、この要求始動トルクTEをモータジェネレータ21の駆動トルクとしてモータECU53へ出力した後、当該処理を終了する。
【0053】
これにより、モータECU53は、インバータ22を介して、モータジェネレータ21がエンジン11のクランクシャフト11Aに伝達ベルト17を介して要求始動トルクTEを付与するように駆動制御する。従って、燃料噴射弁15から気筒13内に燃料を噴射しない状態で、エンジン11の始動が行われる。
【0054】
一方、エンジン回転数が回転数閾値NX以上であると判定された場合には(S13:YES)、車両ECU51は、ステップS15の処理に進む。ステップS15において、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したクランクシャフト11Aのクランク角度を読み出し、燃料噴射弁15から燃料を噴射する燃料噴射タイミングになったか否かを判定する。そして、燃料噴射弁15から燃料を噴射する燃料噴射タイミングになっていないと判定された場合には(S15:NO)、車両ECU51は、当該処理を終了する。
【0055】
一方、燃料噴射弁15から燃料を噴射する燃料噴射タイミングになったと判定された場合には(S15:YES)、車両ECU51は、ステップS16の処理に進む。ステップS16において、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。そして、車両ECU51は、このエンジン回転数に対応づけられたアシスト噴射量QFを、保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されるマップM3(
図2参照)から算出してRAMに記憶する。
【0056】
続いて、車両ECU51は、このアシスト噴射量QFを不足トルクTF(
図2参照)を補うための燃料噴射量としてエンジンECU52に出力した後、ステップS17の処理に進む。これにより、エンジンECU52は、燃料噴射弁15からアシスト噴射量QFの燃料を気筒13内に噴射するように制御する。
【0057】
ここで、
図5に示すように、車両ECU51は、エンジンECU52に対して、アシスト噴射量QFを不足トルクTF(
図2参照)を補うための燃料噴射量として出力すると共に、モータECU53に対して、モータジェネレータ21が伝達ベルト17を介してクランクシャフト11Aに付与するMG定格トルクTMを出力トルクとして出力する。この場合に、モータECU53が、MG定格トルクTMをモータジェネレータ21の出力トルクとして入力されてから、インバータ22からこのMG定格トルクTMに対応する出力電流がモータジェネレータ21に出力されるまでに、「時間遅れ」が発生する。
【0058】
また、燃料噴射弁15から燃料を噴射するときのモータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)が最も低下する。そして、燃料噴射弁15から燃料を噴射してから、モータジェネレータ回転数(MG回転数)は、増加して、燃料噴射周期の半周期後におけるモータジェネレータ回転数(MG回転数)が最も高くなる。つまり、燃料噴射弁15から燃料を噴射してから、燃料噴射周期の半周期後におけるモータジェネレータ回転数(MG回転数)は、燃料噴射したときのモータジェネレータ回転数(MG回転数)よりもΔMGだけ増加する。
【0059】
そのため、燃料噴射タイミングにおいて、上記ステップS11で検出したモータジェネレータ回転数に対する定格入力電流が、燃料噴射周期の半噴射周期後において、インバータ22からモータジェネレータ21に出力されても、過電流にならないようにする必要がある。つまり、車両ECU51は、燃料噴射タイミングから燃料噴射周期の半周期後において、定格入力電流以下の電流をインバータ22からモータジェネレータ21に出力するように制御する必要がある。具体的には、車両ECU51は、後述するステップS17以降の処理を実行する。
【0060】
ステップS17において、車両ECU51は、燃料噴射弁15から気筒13内にアシスト噴射量QFの燃料を噴射した後、燃料噴射周期の半周期後における、エンジン11とモータジェネレータ21とによってクランクシャフト11Aに付与できる合計トルクTAを算出した後、ステップS18の処理に進む。具体的には、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。そして、車両ECU51は、このエンジン回転数に対応づけられたMG定格トルク(MG要求トルク)TMを保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されるマップM2(
図2参照)から算出してRAMに記憶する。
【0061】
また、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数と、上記ステップS16でRAMに記憶したアシスト噴射量QFとをRAMから読み出す。そして、車両ECU51は、保存用ストレージに予め記憶した不図示のマップから、このエンジン回転数とアシスト噴射量QFとに対応するクランクシャフト11Aに付与される噴射トルクTQFを算出してRAMに記憶する。
【0062】
また、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶した冷却水温を読み出し、保存用ストレージに予め記憶した不図示のマップからフリクションによってロスするフリクショントルクTRを取得してRAMに記憶する。また、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶した大気圧を読み出し、保存用ストレージに予め記憶した不図示のマップからポンピングトルクTPを取得してRAMに記憶する。そして、車両ECU51は、下記式(1)を用いて合計トルクTAを算出してRAMに記憶した後、ステップS18の処理に進む。
【0063】
合計トルクTA=MG定格トルク(MG要求トルク)TM+噴射トルクTQF-フリクショントルクTR-ポンピングトルクTP ・・・(1)
【0064】
ステップS18において、車両ECU51は、燃料噴射弁15から燃料を噴射してから、燃料噴射周期の半噴射周期後におけるモータジェネレータ回転数(MG回転数)の増加量(増加回転数)ΔMGを算出してRAMに記憶した後、ステップS19の処理に進む。具体的には、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したエンジン回転数を読み出す。そして、車両ECU51は、このエンジン回転数[rpm]と合計トルクTAから、クランクシャフト11Aが半回転(クランク角で180度CA)する時間を燃料噴射弁15から燃料を噴射する噴射周期として、この噴射周期の半噴射周期(クランク角で90度CA)回転する半周期時間[sec]を算出する。
【0065】
続いて、車両ECU51は、モータジェネレータ21の質量であるMG質量を保存用ストレージから読み出す。また、車両ECU51は、上記式(1)により算出した合計トルクTAをRAMから読み出す。そして、車両ECU51は、下記式(2)を用いてモータジェネレータ回転数(MG回転数)の増加量ΔMG[rpm]を算出してRAMに記憶した後、ステップS19の処理に進む。尚、モータジェネレータ21の質量であるMG質量は、保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0066】
ΔMG=合計トルクTA÷MG質量×半周期時間÷2π×60 ・・・・・(2)
【0067】
ステップS19において、車両ECU51は、燃料噴射弁15から燃料を噴射してから半噴射周期後における、モータジェネレータ21の最高回転数である最高MG回転数MGMAX[rpm]を算出してRAMに記憶した後、ステップS20の処理に進む。具体的には、車両ECU51は、上記ステップS11でRAMに記憶したモータジェネレータ回転数(MG回転数)[rpm]を読み出す。そして、車両ECU51は、このモータジェネレータ回転数(MG回転数)[rpm]に、上記式(2)により算出した増加量(増加回転数)ΔMG[rpm]を加算したモータジェネレータ回転数を、モータジェネレータ21の燃料噴射時から半噴射周期後の最高MG回転数MGMAX[rpm]としてRAMに記憶した後、ステップS20の処理に進む。
【0068】
ステップS20において、車両ECU51は、モータジェネレータ21の定格出力であるMG定格出力を保存用ストレージから読み出す。また、車両ECU51は、上記ステップS19でRAMに記憶したモータジェネレータ21の燃料噴射時から半噴射周期後の最高MG回転数MGMAX[rpm]を読み出す。そして、車両ECU51は、このMG定格出力を最高MG回転数MGMAXで割り算した値を、燃料噴射時にモータECU53に出力可能なモータジェネレータ21の上限の出力トルクであるMG制限トルクTSとしてRAMに記憶した後、ステップS21の処理に進む。尚、モータジェネレータ21の定格出力であるMG定格出力は、保存用ストレージ(例えば、ROM、EEPROM等)に予め記憶されている。
【0069】
ステップS21において、車両ECU51は、上記ステップS17でRAMに記憶したMG定格トルク(MG要求トルク)TMを読み出す。また、車両ECU51は、上記ステップS20でRAMに記憶したMG制限トルクTSを読み出す。そして、MG定格トルク(MG要求トルク)TMがMG制限トルクTS以下のトルクであるか否かを判定する。そして、MG定格トルク(MG要求トルク)TMがMG制限トルクTS以下のトルクであると判定された場合には(S21:YES)、車両ECU51は、ステップS22の処理に進む。
【0070】
つまり、車両ECU51は、燃料噴射時のモータジェネレータ回転数に対する定格入力電流が、燃料噴射時から半噴射周期後において、インバータ22を介してモータジェネレータ21に出力されても、最大定格入力電流以下の入力電流となり、過電流にならないと判定して(S21:YES)、ステップS22の処理に進む。ステップS22において、車両ECU51は、モータECU53に対してMG定格トルク(MG要求トルク)TMを出力して、モータジェネレータ21をMG定格トルク(MG要求トルク)TMで駆動するように指示した後、当該処理を終了する。
【0071】
これにより、燃料噴射弁15から燃料を噴射してから次に燃料を噴射するまでの間における最高MG回転数MGMAXにおいても、インバータ22を介してモータジェネレータ21に最大定格入力電流以下の電流が入力されるため、モータジェネレータ21への過電流の供給を抑止することができる。その結果、高圧バッテリ23の寿命の低下やモータジェネレータ21の破損を抑止することができる。
【0072】
一方、上記ステップS21で、MG定格トルク(MG要求トルク)TMがMG制限トルクTSよりも大きいトルクであると判定された場合には(S21:NO)、車両ECU51は、ステップS23の処理に進む。つまり、車両ECU51は、燃料噴射時のモータジェネレータ回転数に対する定格入力電流が、燃料噴射時から半噴射周期後において、インバータ22を介してモータジェネレータ21に出力されると、最大定格入力電流を超えた入力電流となり、過電流になると判定して(S21:NO)、ステップS23の処理に進む。
【0073】
ステップS23において、車両ECU51は、モータECU53に対してMG制限トルクを出力して、モータジェネレータ21をMG制限トルクで駆動するように指示した後、当該処理を終了する。
【0074】
例えば、
図6に示すように、N回目の燃料噴射時に、車両ECU51が、MG定格トルク(MG要求トルク)TMよりも小さいMG制限トルクTSをモータECU53に対して出力する。この場合には、一点鎖線で示すように、燃料噴射時から半噴射周期後(時間遅れ後)における最高MG回転数MGMAXにおいて、インバータ22を介して、MG制限トルクに対応する最大定格入力電流がモータジェネレータ21に入力される。これにより、モータジェネレータ21への過電流の供給を抑止することができる。その結果、高圧バッテリ23の寿命の低下やモータジェネレータ21の破損を抑止することができる。
【0075】
ここで、エンジン11は、内燃機関の一例として機能する。クランク角センサ41は、エンジン回転数検出装置の一例として機能する。高圧バッテリ23は、バッテリの一例として機能する。車両ECU51、エンジンECU52及びモータECU53は、車両制御装置の一例を構成する。車両ECU51は、噴射量取得部、MG要求トルク取得部、最高MG回転数取得部、MG制限トルク取得部、MGトルク判定部、噴射トルク取得部、増加回転数取得部、半周期時間取得部、要求始動トルク記憶部の一例として機能する。MG回転センサ43は、MG回転数検出装置の一例として機能する。
【0076】
尚、前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【0077】
また、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。尚、以下の説明において上記
図1~
図6の前記実施形態に係るハイブリッド車両1等と同一符号は、前記実施形態に係るハイブリッド車両1等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0078】
(A)例えば、車両ECU51は、エンジンECU52及びモータECU53として機能するように構成してもよい。これにより、部品点数の削減化を図ることができる。
【0079】
(B)また、例えば、エンジン11の始動時における燃料噴射によるエンジン回転数の増加量ΔNEと、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数(MG回転数)の増加量ΔMGとは、伝達ベルト17を介して同期している。そのため、上記ステップS17において、モータジェネレータ21のモータジェネレータ回転数の増加量ΔMGに替えて、エンジン11のエンジン回転数の増加量ΔNEを用いて、燃料噴射時から半噴射周期後における、モータジェネレータ21の上限の出力トルクであるMG制限トルクTSを算出するようにしてもよい。
【0080】
これにより、MG制限トルクTSの算出精度の向上を図り、モータジェネレータ21の出力トルクを拡大できて、エンジン11の始動性を改善することができる。また、燃料噴射の一周期でMG制限トルクTSを算出することが可能となり、モータECU53へモータジェネレータ21の出力トルクを送信した場合の時間遅れによるモータジェネレータ21への過電流の供給を抑止することができる。その結果、高圧バッテリ23の寿命の低下やモータジェネレータ21の破損を抑止することができる。
【0081】
(C)また、例えば、モータECU53が、MG定格トルクTMをモータジェネレータ21の出力トルクとして入力されてから、インバータ22を介して、このMG定格トルクTMに対応する出力電流がモータジェネレータ21に出力されるまでの「時間遅れ」を実機試験等によって予め計測して、車両ECU51の保存用ストレージに予め記憶するようにしてもよい。そして、車両ECU51は、燃料噴射時のモータジェネレータ回転数(MG回転数)から、この「時間遅れ」後におけるモータジェネレータ回転数(MG回転数)までの増加量ΔMGを算出するようにしてもよい。
【0082】
これにより、MG制限トルクTSの算出精度の向上を図り、モータジェネレータ21の出力トルクを拡大できて、エンジン11の始動性を改善することができる。また、MGトルクに対応する出力電流が、この「時間遅れ」でインバータ22を介して、モータジェネレータ21に出力されても、モータジェネレータ21への過電流の供給を抑止することができる。その結果、高圧バッテリ23の寿命の低下やモータジェネレータ21の破損を抑止することができる。また、「時間遅れ」を実機試験等によって予め計測するため、制限トルクの算出精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ハイブリッド車両
11 内燃機関(エンジン)
11A クランクシャフト
13 気筒
15 燃料噴射弁
21 モータジェネレータ
22 インバータ
23 高圧バッテリ
41 クランク角センサ
43 モータジェネレータ回転センサ(MG回転センサ)
51 車両ECU
52 エンジンECU
53 モータECU