(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182405
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20221201BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20221201BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221201BHJP
B60R 1/00 20220101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G03B15/00 V
B60R11/02 Z
B60R1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089935
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 将俊
【テーマコード(参考)】
2H044
3D020
【Fターム(参考)】
2H044AA03
2H044AB09
2H044AJ04
2H044AJ06
3D020BA20
3D020BC02
3D020BC03
3D020BC17
3D020BD05
(57)【要約】
【課題】レンズに作用する圧力を減らし、レンズの変形を抑制できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび車両を提供する。
【解決手段】本発明のレンズユニット11では、鏡筒12が樹脂によって形成される。鏡筒12内に収容されるレンズ群Lを構成するレンズ14,15,17,18は、ガラス製であるとともに、鏡筒12内に圧入により組み込まれ、光軸Oの方向に沿う断面においてその径方向外周端14a,15a,17a,18aが鏡筒12の内面12dに対して点接触している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを収容保持するための内側収容空間を形成する筒状の鏡筒と、前記鏡筒の前記内側収容空間内に組み込まれ、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒が樹脂によって形成され、
前記レンズ群を構成する少なくとも1つのレンズは、ガラス製であるとともに、前記鏡筒内に圧入により組み込まれ、前記光軸の方向に沿う断面においてその径方向外周端が前記鏡筒の内面に対して点接触していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記鏡筒と点接触する前記レンズは、前記光軸の方向に沿う断面において、その径方向外周端が円弧を成し、この円弧の頂点で前記鏡筒の内面と点接触することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記光軸の方向に沿う断面において前記鏡筒と点接触する前記レンズは、前記光軸の方向と直交する断面においても、その径方向外周端が前記鏡筒の内面に対して点接触していることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記鏡筒と点接触する前記レンズの接触点は、前記光軸の方向に沿う断面において、前記レンズの中心でレンズ厚寸法を規定する光軸方向に沿う線分の垂直二等分線である径方向中心線に最も近い径方向外周端部位に位置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記接触点が前記径方向中心線上に位置されることを特徴とする請求項4に記載のレンズユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットのレンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項7】
車両に搭載される車載システムであって、
請求項6に記載のカメラモジュールと、前記カメラモジュールを制御するとともに前記カメラモジュールの前記撮像素子から出力される電気信号を処理する制御部とを有する撮像装置と、
前記撮像装置により取得される画像信号を処理する処理装置と、
前記処理装置により処理されて出力される画像を表示する表示装置と、
を有することを特徴とする車載システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車載システムを搭載して成ることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび車載システムを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズユニットにおいては、従来から、鏡筒に対するレンズの組み込み形態として、様々なものが存在する。例えば、鏡筒やレンズの素材等にも起因して、レンズがスペーサ等を介して鏡筒に組み付けられ、または、レンズが鏡筒の内面形状を利用して直接に鏡筒の内面に所定の直径差を伴って軽圧入され、あるいは、光軸方向と直交する断面においてレンズの外周と鏡筒の内周側とが点接触する状態でレンズが鏡筒内に組み付けられる。特に、レンズと鏡筒とが点接触状態で組み付けられる形態では、例えば、内周面が多角形を成す鏡筒内に円形断面のレンズが圧入される組み付け形態のものも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光軸方向と直交する断面においてレンズの外周と鏡筒の内周側とが点接触する状態でレンズが鏡筒内に圧入して組み付けられる前述した形態の場合も含めて、一般に、鏡筒内へのレンズの組み込みでは、
図13に示されるように、光軸方向に沿う断面において、レンズの外周面と鏡筒の内周面とが線接触している。すなわち、この
図13の例では、レンズ102,103がスペーサ110を介して鏡筒100に組み付けられ、各レンズ102,103は、光軸O方向に沿う断面において、光軸O方向に沿って直線状に延びる鏡筒100の内面100aに対して線接触(ある程度の長さを伴う線接触)状態で嵌合する直線部102b,103bをその環状の外周フランジ102a,103aの側端面(コバ)に有する。
【0006】
しかしながら、このようなレンズ組み込み状態でレンズ102,103が鏡筒100内に圧入されると、径方向内側に向かう圧縮応力がレンズ102,103に対して常に作用することから、特に、光軸方向と直交する断面においてレンズの外周と鏡筒の内周側とが点接触する状態でレンズが鏡筒内に圧入して組み付けられる前述した形態において、鏡筒が樹脂によって形成されてレンズがガラス製である場合に、圧入面であるコバ(直線部)102b,103bに大きな圧力が作用してレンズ102,103が変形を起こし、所望の光学性能を得ることができなくなる虞がある。ガラスが薄くなり、高い組み付け精度および高い光学性能が要求される昨今においては、レンズの僅かな変形でさえ光学性能に大きな影響を及ぼすことから、当該技術分野では、このような圧縮応力(大きな圧力)に伴うレンズの変形防止こそが喫緊の課題である。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズに作用する圧力を減らし、レンズの変形を抑制できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、レンズを収容保持するための内側収容空間を形成する筒状の鏡筒と、前記鏡筒の前記内側収容空間内に組み込まれ、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒が樹脂によって形成され、
前記レンズ群を構成する少なくとも1つのレンズは、ガラス製であるとともに、前記鏡筒内に圧入により組み込まれ、前記光軸の方向に沿う断面においてその径方向外周端が前記鏡筒の内面に対して点接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明の上記構成によれば、光軸の方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触しているため、樹脂製の鏡筒内にガラス製のレンズが圧入される特有の圧入嵌合形態において、レンズに作用する圧力を減らし、レンズの変形を抑制できる。したがって、光学性能を低下させることなく、所望の光学特性を得ることができるようになる。
【0010】
ここで、「点接触」とは、ある程度の範囲内の接触面積を伴う場合を含み、本明細書においては、光軸の方向に沿う断面において、レンズと鏡筒との接触長さ(光軸方向に沿う長さ)がコバ厚の1/3以下を言うものとする。
【0011】
また、上記構成において、鏡筒と点接触するレンズは、光軸の方向に沿う断面において、その径方向外周端が円弧を成し、この円弧の頂点で鏡筒の内面と点接触することが好ましい。これによれば、鏡筒からレンズに対して径方向内側に向かって圧縮応力が作用するレンズの作用領域において、応力集中を伴うことなくほぼ均一な応力分布を実現することも可能となり、レンズの変形抑制に寄与し得る。
【0012】
また、上記構成では、光軸の方向に沿う断面において鏡筒と点接触するレンズは、光軸の方向と直交する断面においても、その径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触していてもよい。これによれば、光軸の方向と直交する断面において樹脂製の鏡筒内にガラス製のレンズが点接触状態で圧入される嵌合形態、すなわち、圧縮応力によりレンズの変形が特に生じ易い特定の圧入嵌合形態において、レンズに作用する圧力を効果的に減らして、レンズの変形を確実に抑制できる。
【0013】
ここで、光軸の方向と直交する断面における「点接触」とは、ある程度の範囲内の接触面積を伴う場合を含み、本明細書においては、光軸の方向と直交する断面において、レンズと鏡筒との接触長さがコバ厚の1/3以下を言うものとする。また、このような点接触状態は、例えば、内周面が多角形を成す鏡筒内に円形断面のレンズが圧入されることにより実現されるが、これに限定されない。
【0014】
また、上記構成において、鏡筒と点接触するレンズの接触点は、光軸の方向に沿う断面において、レンズの中心でレンズ厚寸法を規定する光軸方向に沿う線分の垂直二等分線である径方向中心線に最も近い径方向外周端部位に位置されることが好ましい。このことは、径方向中心線上にレンズの径方向外周端部位が存在する場合、接触点が径方向中心線上に位置されることを意味する。これによれば、鏡筒からレンズに作用する圧力をさらに効果的に減らして、レンズ変形抑制効果をさらに高めることができる。
【0015】
このような高いレンズ変形抑制効果を実証する試験データが
図9~
図12に示される。
ここで、
図9の(a)は、鏡筒に対するレンズの従来の圧入嵌合形態、すなわち、光軸O方向に沿う断面においてレンズAの外周面と鏡筒Bの内周面とが線接触している圧入嵌合形態を示している。具体的には、レンズAは、像側に向けて凸のメニスカスレンズであり、光軸O方向に沿う図示の断面において、光軸O方向に沿って直線状に延びる鏡筒Bの内面Baに対して線接触状態で嵌合する直線部Aaをその環状の外周フランジAbの側端面(コバ)に有する。このような圧入嵌合形態において、レンズAの物体側に面する表面(R1面)Ac上における5つの測定点P1,P2,P3,P4,P5での変形量のデータが、
図9の(b)に表として、
図9の(c)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点P1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-3.92E-03)、測定点P2は、光軸Oから径方向に0.56mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-3.03E-03)、測定点P3は、光軸Oから径方向に1.37mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-2.66E-03)、測定点P4は、光軸Oから径方向に1.86mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-2.01E-03)、測定点P5は、光軸Oから径方向に2.29mm離れた表面Ac上の点である(変形量-1.37E-03)。また、レンズAの像側に面する裏面(R2面)Ad上における5つの測定点Q1,Q2,Q3,Q4,Q5での変形量のデータが、
図9の(d)に表として、
図9の(e)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点Q1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-3.68E-03)、測定点Q2は、光軸Oから径方向に0.56mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-3.61E-03)、測定点Q3は、光軸Oから径方向に1.37mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-3.25E-03)、測定点Q4は、光軸Oから径方向に1.86mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-2.87E-03)、測定点Q5は、光軸Oから径方向に2.29mm離れた裏面Ad上の点である(変形量-2.41E-03)。これらのデータから分かるように、表面Acにおいては、径方向最も外側の測定点P5でも絶対値で1.37E-03(=1.37×10
-3)mmの変形量があり、径方向最も内側の光軸O上の測定点P1で変形量が絶対値で3.29E-03mmにもなっている。一方、裏面Adにおいては変形量がさらに増大している。ここで、マイナスの符号は変化の方向を示す。
【0016】
これに対し、
図10の(a)は、鏡筒に対するレンズの本発明の圧入嵌合形態、すなわち、光軸Oの方向に沿う断面において、レンズAの径方向外周端AAが鏡筒Bの内面Baに対して点接触しているとともに、その接触点AAaが、レンズAの中心でレンズ厚寸法Dを規定する光軸O方向に沿う線分MNの垂直二等分線である径方向中心線L1に最も近い径方向外周端AAの部位に位置される、圧入嵌合形態を示している。特に、この例では、接触点AAaが径方向中心線L1上に位置されている。このような圧入嵌合形態において、レンズAの物体側に面する表面(R1面)Ac上における5つの測定点P1,P2,P3,P4,P5での変形量のデータが、
図10の(b)に表として、
図10の(c)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点P1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量4.96E-04)、測定点P2は、光軸Oから径方向に0.83mm離れた表面Ac上の点であり(変形量5.60E-04)、測定点P3は、光軸Oから径方向に1.30mm離れた表面Ac上の点であり(変形量6.42E-04)、測定点P4は、光軸Oから径方向に2.04mm離れた表面Ac上の点であり(変形量7.49E-04)、測定点P5は、光軸Oから径方向に2.35mm離れた表面Ac上の点である(変形量7.42E-04)。また、レンズAの像側に面する裏面(R2面)Ad上における5つの測定点Q1,Q2,Q3,Q4,Q5での変形量のデータが、
図10の(d)に表として、
図10の(e)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点Q1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量2.45E-04)、測定点Q2は、光軸Oから径方向に0.59mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量2.59E-04)、測定点Q3は、光軸Oから径方向に1.38mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量3.24E-04)、測定点Q4は、光軸Oから径方向に1.86mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量3.87E-04)、測定点Q5は、光軸Oから径方向に2.29mm離れた裏面Ad上の点である(変形量4.45E-04)。これらのデータから分かるように、このような圧入嵌合形態では、
図9に示した従来の圧入嵌合形態と比べて、変形量が全体的に大きく減少されている。
【0017】
また、
図11の(a)は、鏡筒に対するレンズの本発明の圧入嵌合形態、すなわち、光軸Oの方向に沿う断面において、レンズAの径方向外周端AAが鏡筒Bの内面Baに対して点接触しているとともに、その接触点AAaが径方向中心線L1から最も離れた径方向外周端AAの部位に位置される、圧入嵌合形態を示している。このような圧入嵌合形態において、レンズAの物体側に面する表面(R1面)Ac上における5つの測定点P1,P2,P3,P4,P5での変形量のデータが、
図11の(b)に表として、
図11の(c)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点P1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-2.24E-03)、測定点P2は、光軸Oから径方向に0.59mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-2.20E-03)、測定点P3は、光軸Oから径方向に1.30mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-2.01E-03)、測定点P4は、光軸Oから径方向に1.70mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-1.81E-03)、測定点P5は、光軸Oから径方向に2.20mm離れた表面Ac上の点である(変形量-1.46E-03)。また、レンズAの像側に面する裏面(R2面)Ad上における5つの測定点Q1,Q2,Q3,Q4,Q5での変形量のデータが、
図11の(d)に表として、
図11の(e)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点Q1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-2.24E-03)、測定点Q2は、光軸Oから径方向に0.59mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-2.21E-03)、測定点Q3は、光軸Oから径方向に1.12mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-2.12E-03)、測定点Q4は、光軸Oから径方向に1.63mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-1.98E-03)、測定点Q5は、光軸Oから径方向に2.07mm離れた裏面Ad上の点である(変形量-1.80E-03)。これらのデータから分かるように、このような圧入嵌合形態では、
図9に示した従来の圧入嵌合形態と比べて変形量が全体的に減少するものの、
図10に示される圧入嵌合形態と比べると、その変形量の減少度合いが小さくなっている。
【0018】
また、
図12の(a)は、鏡筒に対するレンズの本発明の圧入嵌合形態、すなわち、光軸Oの方向に沿う断面において、レンズAの径方向外周端AAが鏡筒Bの内面Baに対して点接触しているとともに、その接触点AAaが
図10の場合よりも径方向中心線L1から離れ且つ
図11の場合よりも径方向中心線L1に近い径方向外周端AAの部位に位置される、圧入嵌合形態を示している。このような圧入嵌合形態において、レンズAの物体側に面する表面(R1面)Ac上における5つの測定点P1,P2,P3,P4,P5での変形量のデータが、
図12の(b)に表として、
図12の(c)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点P1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-1.26E-03)、測定点P2は、光軸Oから径方向に0.59mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-1.21E-03)、測定点P3は、光軸Oから径方向に1.07mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-1.11E-03)、測定点P4は、光軸Oから径方向に1.70mm離れた表面Ac上の点であり(変形量-8.75E-04)、測定点P5は、光軸Oから径方向に2.35mm離れた表面Ac上の点である(変形量-5.51E-04)。また、レンズAの像側に面する裏面(R2面)Ad上における5つの測定点Q1,Q2,Q3,Q4,Q5での変形量のデータが、
図12の(d)に表として、
図12の(e)にグラフとしてそれぞれ示されている。測定点Q1は、光軸O(レンズ中心)上の点であり(変形量-1.38E-03)、測定点Q2は、光軸Oから径方向に0.56mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-1.36E-03)、測定点Q3は、光軸Oから径方向に1.11mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-1.28E-03)、測定点Q4は、光軸Oから径方向に1.86mm離れた裏面Ad上の点であり(変形量-1.08E-03)、測定点Q5は、光軸Oから径方向に2.29mm離れた裏面Ad上の点である(変形量-9.19E-04)。これらのデータから分かるように、このような圧入嵌合形態では、
図9に示した従来の圧入嵌合形態および
図11に示した圧入嵌合形態と比べて変形量が全体的に減少するものの、
図10に示される圧入嵌合形態と比べると、その変形量の減少度合いが小さくなっている。
【0019】
図10、
図11および
図12を比較すれば分かるように、接触点AAaが径方向中心線L1から遠ざかれば遠ざかるほど、従来の
図9と比べた変形量の減少度合いが小さくなっている(言い換えると、接触点AAaが径方向中心線L1に近ければ近いほど、変形量の減少度合いは大きい)ことから、鏡筒Bと点接触するレンズAの接触点AAaが、光軸の方向に沿う断面において、径方向中心線L1に最も近い径方向外周端AAの部位に位置されれば、鏡筒BからレンズAに作用する圧力をさらに効果的に減らして、レンズ変形抑制効果をさらに高めることができると言える。
【0020】
また、本発明は、前述のレンズユニットを有するカメラモジュール、該カメラモジュールを有する車載システム、および、車載システムを搭載して成る車両も提供する。このようなカメラモジュール、車載システムおよび車両によっても前述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光軸の方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触しているため、樹脂製の鏡筒内にガラス製のレンズが圧入される特有の圧入嵌合形態において、レンズに作用する圧力を減らし、レンズの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図(光軸に沿う断面図)である。
【
図2】
図1のレンズユニットの第2のレンズの位置での光軸方向と直交する断面図である。
【
図3】(a)は、
図1のレンズユニットのレンズ群を構成し得る他のレンズ(鏡筒と点接触するレンズ)を鏡筒に圧入嵌合させた状態を示す要部拡大断面図(光軸に沿う断面図)、(b)は(a)のX部拡大図である。
【
図4】(a)~(c)は、光軸の方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端と鏡筒の内面とが線接触するレンズ圧入嵌合形態を示し、(a)は両凸レンズの要部拡大断面図、(b)はメニスカスレンズの要部拡大断面図、(c)は両凹レンズの要部拡大断面図であり、(d)は、(a)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図、(e)は、(b)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図、(f)は、(c)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図である。
【
図5】鏡筒と点接触するレンズの接触点の他の形態を示す要部拡大図である。
【
図6】
図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを備える車載システムが搭載される車両の概略図である。
【
図8】
図7の車載システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】(a)は、光軸方向に沿う断面においてレンズの外周面と鏡筒の内周面とが線接触している従来の圧入嵌合形態を示す概略図、(b)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの物体側に面する表面(R1面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(c)は(b)の表をグラフ化した図、(d)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの像側に面する裏面(R2面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(e)は(d)の表をグラフ化した図である。
【
図10】(a)は、光軸方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触しているとともに、その接触点が径方向中心線に最も近い径方向外周端の部位に位置される、圧入嵌合形態を示す概略図、(b)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの物体側に面する表面(R1面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(c)は(b)の表をグラフ化した図、(d)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの像側に面する裏面(R2面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(e)は(d)の表をグラフ化した図である。
【
図11】(a)は、光軸方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触しているとともに、その接触点が径方向中心線から最も離れた径方向外周端の部位に位置される、圧入嵌合形態を示す概略図、(b)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの物体側に面する表面(R1面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(c)は(b)の表をグラフ化した図、(d)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの像側に面する裏面(R2面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(e)は(d)の表をグラフ化した図である。
【
図12】(a)は、光軸方向に沿う断面においてレンズの径方向外周端が鏡筒の内面に対して点接触しているとともに、その接触点が
図9の場合よりも径方向中心線から離れ且つ
図10の場合よりも径方向中心線に近い径方向外周端の部位に位置される、圧入嵌合形態を示す概略図、(b)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの物体側に面する表面(R1面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(c)は(b)の表をグラフ化した図、(d)は、(a)の圧入嵌合形態において、レンズの像側に面する裏面(R2面)上における5つの測定点での変形量のデータを示す表、(e)は(d)の表をグラフ化した図である。
【
図13】(a)は、レンズの外周面と鏡筒の内周面とが線接触している従来のレンズユニットの要部拡大断面図(光軸に沿う断面図)、(b)は(a)のY部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、本実施の形態は、特にセンシングシステムにおいて信頼性の高いシステムを実現でき、強靭なインフラの開発に貢献するものであり、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」をターゲットとするものである。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、
図1~
図12においてレンズについてはハッチングを省略している。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、樹脂製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17、および、第5のレンズ18から成る6つのレンズと、絞り部材22とを備えている。これらのレンズ13~18および絞り部材22は、レンズ14,15,17,18同士を光軸方向で隔てるスペーサ30を部分的に介して配設されている。
【0025】
また、絞り部材22は、本実施の形態では、第3のレンズ15とスペーサ30との間に位置されており、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。
このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0026】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、像側に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は接合レンズ(貼り合わせレンズ)40を構成している。また、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,15,16,17,18のうちの少なくとも1つもガラスレンズである。特に本実施の形態では、全てのレンズ13,14,15,16,17,18がガラスレンズであるが、これに限定されない。レンズ13,14,15,16,17,18のうちの少なくとも1つが樹脂製のレンズであってもよい。なお、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0027】
鏡筒12の物体側端部12b(
図1において上端部)には締結固定部材としての略円筒状のキャップ23が螺着されており、このキャップ23によって第1のレンズ13が鏡筒12の物体側端部12bに固定されている。具体的には、キャップ23は、その周側壁の内周面に形成された雌ネジ部23aが鏡筒12の物体側端部12bの外周面に形成された雄ネジ部12aに螺合されて、そのフランジ状の上端の径方向内側の周端縁部23bが第1のレンズ13の物体側に面する表面の外周縁部に当て付けられており、このキャップ23が締め付けられることによって第1のレンズ13が物体側端部12bに固定されてレンズ群Lが鏡筒12内に光軸方向で保持される。なお、鏡筒が樹脂製の場合、第1のレンズ13の固定は、キャップ23ではなく、鏡筒の像側端部に設けられて径方向内側にカシメられるカシメ部によって行なってもよい。
【0028】
また、鏡筒12の像側の端部(
図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられており、この内側フランジ部24とキャップ23との間で、レンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18と絞り部材22とが光軸方向で挟持されて保持される。
【0029】
また、第1のレンズ13の外周側面13aには、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13aaが設けられ、この縮径部13aaにシール部材として例えばOリング26が装着されている。このOリング26は、第1のレンズ13の外周側面13aと鏡筒12の物体側端部12bの内周面との間で径方向に圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部12bと第1のレンズ13との間を封止しており、これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。
【0030】
なお、鏡筒12の外周側壁面(以下、単に側壁という)12cには、鏡筒12の径方向外側に張り出すように鍔状に設けられてレンズユニット11を他部材に組み付けるために利用可能な2つのフランジ25A,25Bが設けられる。この場合、物体側に位置される第1のフランジ25Aには例えば被覆ケース等が組み付けられ、一方、像側に位置される第2のフランジ25Bは鏡筒12を車載カメラに設置する際の位置決めに用いられ、この位置決めにより、レンズ群Lの結像位置に配置される後述するパッケージセンサ(撮像素子;撮像センサ)304とレンズ13,14,15,16,17,18との間の距離が精密に制御される。なお、カメラ側の構成によっては、フランジは2つある必要はなく、鏡筒12を車載カメラ本体に設置する際に用いられるフランジ25Bだけでもよい。
【0031】
また、本実施の形態において、第1のレンズ13と鏡筒12に接触しない第4のレンズ16とを除くガラス製の4つのレンズ14,15,17,18は、鏡筒12内に圧入により組み込まれ、光軸Oの方向に沿う図示の断面においてその径方向外周端14a,15a,17a,18aが鏡筒12の内面12dに対して点接触している。特に、本実施の形態において、鏡筒12と点接触するこれらのレンズ14,15,17,18は、光軸Oの方向に沿う断面において、その径方向外周端14a,15a,17a,18aが円弧を成し、この円弧の頂点で鏡筒12の内面12dと点接触している。
【0032】
さらに、本実施の形態では、光軸Oの方向に沿う断面において鏡筒12と点接触するレンズ14,15,17,18は、
図2に示されるように、光軸Oの方向と直交する断面においても、その径方向外周端14a,15a,17a,18aが鏡筒12の内面12dに対して点接触(鏡筒12と周方向で点接触)しており、それにより、径方向で鏡筒12の内面12dとの間に隙間Cを形成している。なお、
図2は、一例として、第2のレンズ14の点接触状態を示している(
図1のレンズユニット11の第2のレンズ14の位置での光軸方向と直交する断面図を示している)。このような点接触状態は、特に本実施の形態では、
図2に示されるように、内周面が多角形を成す鏡筒12内に円形断面のレンズ14,15,17,18が圧入されることにより実現されるが、これに限定されない。
【0033】
図3の(a)は、
図1のレンズユニット11のレンズ群Lを構成し得る他のレンズA(光軸Oの方向に沿う断面において鏡筒12と点接触するレンズ)を鏡筒12に圧入嵌合させた状態を示す要部拡大断面図(光軸に沿う断面図)であり、
図3の(b)は
図3の(a)のX部拡大図である。図示のように、これらのレンズAは、両凸レンズであり、その径方向外側に環状の外周フランジAbを有するとともに、その円弧を成す径方向外周端AAが鏡筒12の内面12dに対して点接触しており、その円弧の頂点である接触点AAaが、レンズAの中心でレンズ厚寸法Dを規定する光軸O方向に沿う線分MNの垂直二等分線である径方向中心線L1上に位置されている。
【0034】
図4の(a)~(c)は、光軸Oの方向に沿う断面においてレンズAの径方向外周端と鏡筒12の内面12dとが線接触する従来のレンズ圧入嵌合形態を示しており、(a)は両凸レンズの要部拡大断面図、(b)はメニスカスレンズの要部拡大断面図、(c)は両凹レンズの要部拡大断面図である。いずれのレンズAも、光軸O方向に沿って直線状に延びる鏡筒12の内面12dに対して線接触状態で嵌合する直線部Aaをその環状の外周フランジAbの側端面(コバ)に有する。これに対し、
図4の(d)は、
図4の(a)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図、
図4の(e)は、
図4の(b)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図、
図4の(f)は、
図4の(c)に本発明を適用した点接触状態の要部拡大断面図である。いずれのレンズAも、
図3の場合と同様に、その円弧を成す径方向外周端AAが鏡筒12の内面12dに対して点接触しており、その円弧の頂点である接触点AAaが径方向中心線L1上に位置されている。
【0035】
図5には、光軸Oの方向に沿う断面において鏡筒12と点接触するレンズAの接触点AAaの他の形態が示されている。
図5の(a)に示されるレンズAは、物体側に面する表面Acの曲率が像側に面する裏面Adの曲率よりも大きい両凸レンズであり、外周フランジAbの径方向外周端AAが直線と曲線(円弧等)との組み合わせから成るとともに、最も径方向外側に位置する径方向外周端AAの部位、すなわち、鏡筒12との接触点AAaが径方向中心線L1上に位置している。この場合、接触点AAaの位置は表面Acの側の方に偏っている。また、
図5の(b)に示されるレンズAは、物体側に面する表面Acの曲率が像側に面する裏面Adの曲率よりも小さい両凹レンズであり、外周フランジAbの径方向外周端AAが直線と曲線(円弧等)との組み合わせから成るとともに、最も径方向外側に位置する径方向外周端AAの部位、すなわち、鏡筒12との接触点AAaが径方向中心線L1上に位置している。この場合、接触点AAaの位置は表面Acの側の方に偏っている。また、
図5の(c)に示されるレンズAは、物体側に面する表面Acの曲率が像側に面する裏面Adの曲率よりも大きいメニスカスレンズであり、外周フランジAbの径方向外周端AAが円弧状を成すとともに、最も径方向外側に位置する径方向外周端AAの部位、すなわち、鏡筒12との接触点AAaが、径方向中心線L1に最も近い径方向外周端AAの端縁となっている。
【0036】
また、
図6は、
図1の構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が装着された
図1に係るレンズユニット11を有して構成される。
【0037】
カメラモジュール300は、外装部品である前ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子;撮像センサ)304を備えている。
【0038】
前ケース301は、シール部材(Oリング)303を介して第1のフランジ25Aに接続されており、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆って防水を行なう部材である。マウント302は、前ケース301の内部に配置されており、その物体側端部302aが第2のフランジ25Bの像側面25Baに当接して接着されるとともに、その像側端部302bが基板306上に載置固定されている。また、前記シール部材303は、前ケース301の内面と鏡筒12の第1のフランジ25Aの物体側面との間に介挿された部材であり、前ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0039】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部で基板306上に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0040】
図7には、
図6のカメラモジュール300を含む撮像装置50を備える車載システムが搭載される車両40が概略的に示されている。図示のように、撮像装置50は車両40に搭載することができ、
図7は、車両40における撮像装置50の搭載位置を例示する配置例である。車両40に搭載される撮像装置50は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両40の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置50aは、車両40が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパー又はその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置50bは、車両40の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置50cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上又はインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置50dは、車両40の後方モニター用に車両40の後部に設置されてもよい。撮像装置50a、50bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置50cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置50dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置50は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラおよび右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0041】
撮像装置50により撮像された画像の画像信号は、車両40内の情報処理装置42および/または表示装置43等に出力され得る。これらの情報処理装置42および表示装置43は、撮像装置50と共に車載システムを構成する。車両40内の情報処理装置42は、撮像装置50により取得される画像信号を処理し、画像を認識して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置42は、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、および、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置43は、情報処理装置42により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置50から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置43は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、および、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置43は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置50から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる。
【0042】
図8には、
図7の車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、一実施の形態に係る撮像装置50は、制御部52と、記憶部54と、前述した
図2のカメラモジュール300とを備える。
【0043】
制御部52は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール300の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部52は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部52は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでもよい。制御部52は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、および、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。
【0044】
記憶部54は、撮像装置50の動作に係る各種情報又はパラメータを記憶する。記憶部54は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部54は、制御部52のワークメモリとして機能してもよい。記憶部54は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部54は、制御部52が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部54は制御部52に含まれてもよい。
【0045】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0046】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流又は電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0047】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部52に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部52によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部52から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光軸Oの方向に沿う断面においてレンズ14,15,17,18(レンズA)の径方向外周端14a,15a,17a,18a(径方向外周端AA)が鏡筒12の内面12dに対して点接触しているため、樹脂製の鏡筒12内にガラス製のレンズ14,15,17,18(レンズA)が圧入される特有の圧入嵌合形態において、レンズ14,15,17,18(レンズA)に作用する圧力を減らし、レンズ14,15,17,18(レンズA)の変形を抑制できる。したがって、光学性能を低下させることなく、所望の光学特性を得ることができるようになる。
【0049】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズや鏡筒などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0050】
11 レンズユニット
12 鏡筒
12d 内面
13,14,15,16,17,18 レンズ
14a,15a,17a,18a 径方向外周端
40 車両
42 情報処理装置(処理装置)
43 表示装置
50 撮像装置
52 制御部
300 カメラモジュール
304 撮像素子
A レンズ
AA 径方向外周端
AAa 接触点
L レンズ群
L1 径方向中心線
S 内側収容空間