(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182409
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/197 20210101AFI20221201BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20221201BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221201BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M50/197
H01M50/184 C
H01M10/04 Z
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089943
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF04
5H011HH02
5H011HH13
5H011JJ03
5H011KK00
5H011KK01
5H011KK02
5H028AA01
5H028AA07
5H028BB05
5H028CC08
5H028EE01
5H028EE06
(57)【要約】
【課題】厚膜化した場合であっても、電解液に接触した後、室温環境下及び高温環境下において端子に対して優れた密着性を有する端子用樹脂フィルムの提供。
【解決手段】蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、端子用樹脂フィルムが、下記A層と積層構造とを有し、積層構造が、下記B層、下記C層及び下記B層をこの順で積層してなる、端子用樹脂フィルム。
A層:100℃以上170℃以下の融点を有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
B層:100℃以上160℃未満の融点を有する第1ポリオレフィン樹脂、及び、160℃以上170℃以下の融点を有する第2ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
C層:160℃以上170℃以下の融点を有するポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、
前記端子用樹脂フィルムが、下記A層と、積層構造とを有し、
前記積層構造が、下記B層、下記C層及び下記B層をこの順で積層してなる、端子用樹脂フィルム。
A層:100℃以上170℃以下の融点を有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
B層:100℃以上160℃未満の融点を有する第1ポリオレフィン樹脂、及び、160℃以上170℃以下の融点を有する第2ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
C層:160℃以上170℃以下の融点を有するポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
【請求項2】
前記B層において、前記第2ポリオレフィン樹脂に対する前記第1ポリオレフィン樹脂の質量比が0.1~9である、請求項1に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項3】
前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂が550MPa以上1000MPa未満の引張弾性率、及び、15MPa以上23MPa未満の引張降伏応力を有し、
前記第2ポリオレフィン樹脂が、1000MPa以上1500MPa以下の引張弾性率、及び、23MPa以上35MPa以下の引張降伏応力を有する、請求項1又は2に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項4】
前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂が885kg/m3以上895kg/m3未満の密度を有し、
前記第2ポリオレフィン樹脂が、895kg/m3以上910kg/m3以下の密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項5】
前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが、1.0~10.0g/10minであり、
前記第2ポリオレフィン樹脂のMFRが0.05g/10min以上1.0g/10min未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項6】
前記A層、前記積層構造及び前記A層をこの順に積層してなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項7】
160μm以上の厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項8】
蓄電デバイス本体と、
前記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、
前記金属端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、
前記金属端子の一部の外周面を覆って、前記金属端子と前記外装材との間に配置された、請求項1~7のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルムと、を備える、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池(蓄電デバイスの一種)の研究開発が行われている。
【0003】
上記リチウムイオン二次電池に用いられる包装材として、従来は金属製の缶が多く用いられてきたが、適用する製品の薄型化や多様化等の要求に対し、製造コストが低いという理由から、金属層(例えば、アルミニウム箔)と樹脂フィルムとを積層した積層体を袋状にした包装材が多く用いられるようになってきている。
【0004】
上記包装材の内部に電池本体を収容して密封したラミネート型リチウムイオン二次電池には、タブと呼ばれる電流取り出し端子が備えられている。タブは、電池本体の負極または正極に接続され、包装材(外装材)の外側に延在する金属端子(「タブリード」と呼ばれることもある)と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆う端子用樹脂フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する(例えば、特許文献1~2参照)。通常、端子用樹脂フィルムは金属端子に融着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6706014号公報
【特許文献2】特許第6402844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年電池の大容量化に伴い金属端子が厚膜化しつつあるため、端子用樹脂フィルムにも厚膜化が求められる傾向にある。しかし、従来の薄膜の端子用樹脂フィルムをそのまま厚膜化した場合、電解液に接触した後、室温環境下又は高温環境下での金属端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性の低下が生じ易く、剥離の原因となり易い。
【0007】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、厚膜化した場合であっても、電解液に接触した後、室温環境下及び高温環境下において端子に対して優れた密着性を有する端子用樹脂フィルム、及び、それを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、前記端子用樹脂フィルムが、下記A層と、積層構造とを有し、前記積層構造が、下記B層、下記C層、及び下記B層をこの順で積層してなる、端子用樹脂フィルムを提供する。
A層:100℃以上170℃以下の融点を有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
B層:100℃以上160℃未満の融点を有する第1ポリオレフィン樹脂、及び、160℃以上170℃以下の融点を有する第2ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
C層:160℃以上170℃以下の融点を有するポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
【0009】
上記端子用樹脂フィルムによれば、当該端子用樹脂フィルムが、上記A層と、上記積層構造とを有することで、厚膜化した場合であっても、電解液に接触した後、室温環境下及び高温環境下において端子に対して優れた密着性を有することが可能となる。
【0010】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記B層において、前記第2ポリオレフィン樹脂に対する前記第1ポリオレフィン樹脂の質量比Rが0.1~9であることが好ましい。質量比Rが0.1以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、質量比Rが9以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0011】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂が550MPa以上1000MPa未満の引張弾性率、及び、15MPa以上23MPa未満の引張降伏応力を有し、前記第2ポリオレフィン樹脂が、1000MPa以上1500MPa以下の引張弾性率、及び、23MPa以上35MPa以下の引張降伏応力を有することが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の引張弾性率がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第1ポリオレフィン樹脂の引張弾性率が1000MPa未満であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の引張弾性率が1500MPa以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力が23MPa未満であることで、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力が35MPa以下であることで、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0012】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂が885kg/m3以上895kg/m3未満の密度を有し、前記第2ポリオレフィン樹脂が、895kg/m3以上910kg/m3以下の密度を有することが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の密度がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂の密度が上記上限値未満であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の密度が上記上限値以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0013】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記B層において、前記第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが、1.0~10.0g/10minであり、前記第2ポリオレフィン樹脂のMFRが0.05g/10min以上1.0g/10min未満であることが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが1.0g/10min以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが10.0g/10min以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが0.05g/10min以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第2ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが1.0g/10min未満であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0014】
上記端子用樹脂フィルムが、前記A層、前記積層構造及び前記A層をこの順に積層してなることが好ましい。この場合、A層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成されているため、金属端子と端子用樹脂フィルムとの密着性がより向上する。
【0015】
上記端子用樹脂フィルムは、160μm以上の厚さを有していてもよい。
【0016】
本開示はまた、蓄電デバイス本体と、前記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、前記金属端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、前記金属端子の一部の外周面を覆って、前記金属端子と前記外装材との間に配置された、上記本開示の端子用樹脂フィルムと、を備える、蓄電デバイスを提供する。
【0017】
この蓄電デバイスによれば、端子用樹脂フィルムが、厚膜化した場合であっても、電解液に接触した後、室温環境下及び高温環境下において端子に対して優れた密着性を有するため、室温環境下及び高温環境下において電解液の漏洩を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、厚膜化した場合であっても、電解液に接触した後、室温環境下及び高温環境下において端子に対して優れた密着性を有する端子用樹脂フィルム、及び、それを用いた蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す外装材の切断面の一例を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図である。
【
図4】端子用樹脂フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】実施例における対アルミニウム箔ヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
[蓄電デバイス]
図1は、本実施形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す斜視図である。
図1では、蓄電デバイス10の一例として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて図示し、以下の説明を行う。なお、
図1に示す構成とされたリチウムイオン二次電池は、電池パック、電池セル等と呼ばれることがある。
【0022】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、外装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。
【0023】
蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。外装材13は、蓄電デバイス本体11の表面を覆うとともに、端子用樹脂フィルム16の一部と接触するように配置されている。
【0024】
図2は、
図1に示す外装材の切断面の一例を示す断面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0025】
図2を参照して、外装材13の構成の一例について説明する。外装材13は、蓄電デバイス本体11に接触する内側から、内層21と、内層側接着剤層22と、腐食防止処理層23-1と、バリア層24と、腐食防止処理層23-2と、外層側接着剤層25と、外層26と、が順次積層された7層構造である。
【0026】
内層21は、外装材13に対し、ヒートシールによる封止性を付与するシーラント層であり、蓄電デバイス10の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。内層(シーラント層)21の母材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。上記ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等を用いることができる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンを含むことが好ましい。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
内層21は、必要とされる機能に応じて、単層フィルム、又は複数の層を積層させた多層フィルムであってよい。具体的には、防湿性を付与するために、エチレン-環状オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムであってよい。内層21は、各種添加剤(難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでよい。
【0028】
内層21の厚さは、10~150μmが好ましく、30~80μmがより好ましい。内層21の厚さが10μm以上であることで、外装材13同士の充分なヒートシール密着性、端子用樹脂フィルム16との充分な密着性を有する。また、内層21の厚さが150μm以下であることで、外装材13のコストを抑えることができる。
【0029】
内層側接着剤層22としては、ドライラミネーション用接着剤、酸変性された熱融着性樹脂等の公知の接着剤を適宜選択して用いることができる。
【0030】
図2に示すように、腐食防止処理層23-1、23-2は、バリア層24の両面に形成することが性能上好ましいが、コストを抑える観点から、内層側接着剤層22側に位置するバリア層24の面のみに腐食防止処理層23-1を配置してよい。
【0031】
バリア層24は、導電性を有する金属層であってよい。バリア層24の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられ、コスト、質量(密度)等の観点から、アルミニウムが好ましい。
【0032】
外層側接着剤層25としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等を主剤としたポリウレタン系の接着剤を用いることができる。
【0033】
外層26としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単層膜、及び多層膜であってよい。外層26は、内層21と同様に、各種添加剤(難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでよい。外層26は、電解液の液漏れに備えて電解液に不溶な樹脂をラミネートしたり、電解液に不溶な樹脂成分をコーティングしたりすることで形成される保護層を有してよい。
【0034】
図3は、
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図である。
図3において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0035】
図1及び
図3に示すように、一対(
図1の場合、2つ)の金属端子14は、金属端子本体14-1と、腐食防止層14-2と、を有する。一対の金属端子本体14-1のうち、一方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が外装材13から露出されている。一対の金属端子本体14-1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。
【0036】
金属端子本体14-1の材料としては、金属を用いることができる。金属端子本体14-1の材料となる金属は、蓄電デバイス本体11の構造や蓄電デバイス本体11の各構成要素の材料等を考慮して決めることができる。
【0037】
蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池である場合、正極用集電体としてアルミニウムを用いることができ、負極用集電体として銅を用いることができる。蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池である場合、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料は、アルミニウムであることが好ましい。また、電解液への耐食性の観点から、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料は、1N30等の純度97%以上のアルミニウム素材であることがより好ましい。さらに、金属端子本体14-1を屈曲させる場合には、柔軟性を付加する目的で十分な焼鈍により調質したO材を用いることが好ましい。蓄電デバイス本体11の負極と接続される金属端子本体14-1の材料は、表面にニッケルめっき層が形成された銅、又はニッケルであることが好ましい。
【0038】
金属端子本体14-1の厚さは、リチウムイオン二次電池のサイズや容量に応じて決めることができる。リチウムイオン二次電池が小型である場合、金属端子本体14-1の厚さは、50μm以上であってよい。蓄電、車載用途等の大型のリチウムイオン二次電池の場合、金属端子本体14-1の厚さは、100~500μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0039】
腐食防止層14-2は、金属端子本体14-1の表面を覆うように配置されている。リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF6等の腐食成分が含まれる。腐食防止層14-2は、電解液に含まれるLiPF6等の腐食成分から金属端子本体14-1が腐食されることを抑制するための層である。
【0040】
[端子用樹脂フィルム]
図3に示すように、本実施形態に係る端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。端子用樹脂フィルム16は、下記A層と、積層構造とを有し、積層構造が、下記B層、下記C層及び下記B層をこの順に積層してなる。
A層:100℃以上170℃以下の融点を有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
B層:100℃以上160℃未満の融点を有する第1ポリオレフィン樹脂、及び、160℃以上170℃以下の融点を有する第2ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
C層:160℃以上170℃以下の融点を有するポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成された層。
【0041】
A層、B層及びC層の融点は、ASTM D2117に準じて示差走査熱量計(DSC)にて測定された値であり、溶解熱量の一番大きいピークをメインピークとして、そのピークトップの温度を読み取ることで求めることができる。複数の融解ピークが存在する場合には、溶解熱量の多い方のピークにおける温度をいう。
【0042】
図4は、本実施形態に係る端子用樹脂フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図4に示す端子用樹脂フィルム16は、A層1、積層構造8及びA層7をこの順に積層してなり、積層構造8は、A層1側から、B層2、C層4及びB層6をこの順で積層してなる。すなわち、端子用樹脂フィルム16は、A層1、B層2、C層4、B層6及びA層7をこの順で積層してなる構造を有する。以下、A層、B層及びC層の各々について説明する。
【0043】
A層は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸、カルボン酸、スルホン酸及びそれらの誘導体等をグラフト変性させたグラフト変性樹脂、オレフィンと無水マレイン酸、カルボン酸、スルホン酸及びそれらの誘導体等とを共重合させた共重合樹脂が挙げられる。中でも、金属端子との接着性の観点から、グラフト変性樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性であることが、他の変性基の場合よりもヒートシール強度が向上する傾向にあるため好ましい。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;ポリブテン;ポリメチルペンテン;ポリノルボルネン等が挙げられる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、耐熱性、加工性及び外装材との密着性の観点から、ポリプロピレンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、酸変性ランダムポリプロピレン共重合体が好ましい。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、A層の形成に用いられる樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0044】
ポリオレフィン樹脂の酸による変性率(例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、ヒートシール強度向上の観点から、0.1~20質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。
【0045】
A層に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、100~170℃であり、120~160℃であることがより好ましく、130~150℃であることが更に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が100℃以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での金属端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が170℃未満であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0046】
A層の形成に用いられる樹脂組成物は、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、着色顔料、粘着付与剤、フィラー、結晶核剤などの樹脂添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、複数の種類がブレンドされていてもよい。特に、端子用樹脂フィルムの視認性の向上の観点から、上記樹脂組成物には着色顔料やフィラーが含まれていてもよい。
【0047】
着色顔料としては、カーボンブラック、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料などが挙げられる。
【0048】
フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化銅、酸化コバルト、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アンチモン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機フィラーが挙げられる。
【0049】
A層の厚さ(1層当たりの厚さ)は、10~150μmであることが好ましく、15~100μmであることがより好ましく、20~50μmであることが更に好ましい。A層の厚さが10μm以上であることで、電解液に接触した後、金属端子又は外装材と端子用樹脂フィルムとの高温環境下での密着性をより向上できる。また、加工性やフィルムの破断強度の観点からA層の厚さが150μm以下であることが好ましい。
【0050】
A層の230℃におけるMFRは、2.0~50g/10minであり、3.0~25g/10minであることが好ましく、5.0~15g/10minであることがより好ましい。A層のMFRが2.0g/10min以上であることで、端子用樹脂フィルムの破断伸度を向上できる。また、A層のMFRが50g/10min以下であることで、端子用樹脂フィルムの破断強度を向上できる。
【0051】
B層は、第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される。上記第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;ポリブテン;ポリメチルペンテン;ポリノルボルネン等が挙げられる。これらの中でも上記第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール強度及び加工性の観点から、ポリプロピレンを含むことが好ましい。B層に用いられる第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂であってもよく、未変性ポリオレフィン樹脂であってもよいが、絶縁性の観点から、未変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂としては、ランダムポリプロピレン共重合体が好ましく、第2ポリオレフィン樹脂としては、ブロックポリプロピレン共重合体が好ましい。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂はそれぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、B層の形成に用いられる樹脂組成物は、第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0052】
B層に用いられる第1ポリオレフィン樹脂の融点は、100℃以上160℃未満であり、110~150℃であることが好ましく、120~140℃であることがより好ましい。第1ポリオレフィン樹脂の融点が100℃以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での金属端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第1ポリオレフィン樹脂の融点が160℃以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0053】
B層に用いられる第2ポリオレフィン樹脂の融点は、160℃以上170℃以下であり、162℃以上168℃以下であることが好ましく、163℃以上166℃であることがより好ましい。第2ポリオレフィン樹脂の融点が160℃以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第2ポリオレフィン樹脂の融点が170℃以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0054】
B層の形成に用いられる樹脂組成物は、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、着色顔料、粘着付与剤、フィラー、結晶核剤などの樹脂添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、複数の種類がブレンドされていてもよい。特に、端子用樹脂フィルムの視認性の向上の観点から、上記樹脂組成物には着色顔料やフィラーが含まれていてもよい。着色顔料及びフィラーとしては、A層と同様のものが挙げられる。
【0055】
B層の厚さ(1層当たりの厚さ)は、10~150μmであることが好ましく、15~100μmであることがより好ましく、20~50μmであることが更に好ましい。B層の厚さが10μm以上であることで、外装材と端子用樹脂フィルムとの高温環境下での密着性をより向上できる。また、加工性やフィルムの破断伸度の観点からB層の厚さが150μm以下であることが好ましい。
【0056】
B層において、第2ポリオレフィン樹脂に対する第1ポリオレフィン樹脂の質量比Rは0.1~9であることが好ましく、0.3~8であることがより好ましく、0.5~7であることが更に好ましい。Rが0.1以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、Rが9以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0057】
B層において、第1ポリオレフィン樹脂が550MPa以上1000MPa未満の引張弾性率、及び、15MPa以上23MPa未満の引張降伏応力を有し、第2ポリオレフィン樹脂が、1000MPa以上1500MPa以下の引張弾性率、及び、23MPa以上35MPa以下の引張降伏応力を有することが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の引張弾性率がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第1ポリオレフィン樹脂の引張弾性率が1000MPa未満であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の引張弾性率が1500MPa以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力が23MPa未満であることで、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力が35MPa以下であることで、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0058】
第1ポリオレフィン樹脂の引張弾性率は、570~750MPaであることがより好ましく、600~700MPaであることが更に好ましい。第1ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力は16MPa以上22MPa以下であることがより好ましく、17~21MPaであることが更に好ましい。
【0059】
第2ポリオレフィン樹脂の引張弾性率は、1100~1450MPaであることがより好ましく、1300~1400MPaであることが更に好ましい。第2ポリオレフィン樹脂の引張降伏応力は23~32MPaであることがより好ましく、25~30MPaであることが更に好ましい。
【0060】
B層においては、第1ポリオレフィン樹脂が885kg/m3以上895kg/m3未満の密度を有し、第2ポリオレフィン樹脂が、895kg/m3以上910kg/m3以下の密度を有することが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の密度がそれぞれ上記下限値以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第1ポリオレフィン樹脂の密度が895kg/m3未満であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の密度が910kg/m3以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0061】
第1ポリオレフィン樹脂の密度は885~893kg/m3であることがより好ましく、887~891kg/m3であることが更に好ましい。第2ポリオレフィン樹脂の密度は、897~905kg/m3であることがより好ましい。
【0062】
B層の第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが、1.0~10.0g/10minであり、B層の第2ポリオレフィン樹脂のMFRが、0.05g/10min以上1.0g/10min未満であることが好ましい。第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが1.0g/10min以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが10.0g/10min以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。第2ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが0.05g/10min以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。また、第2ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRが1.0g/10min未満であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0063】
B層の第1ポリオレフィン樹脂の230℃におけるMFRは、1.0~3.0g/10minであることがより好ましく、1.2~2.0g/10minであることが更に好ましい。B層の第2ポリオレフィン樹脂のMFRは、0.1g/10min以上1.0g/10min未満であることがより好ましく、0.3~0.8g/10minであることが更に好ましい。
【0064】
C層は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される。上記未変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;ポリブテン;ポリメチルペンテン;ポリノルボルネン等が挙げられる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール強度及び加工性の観点から、ポリプロピレンを含むことが好ましい。C層に用いられるポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂であってもよく、未変性ポリオレフィン樹脂であってもよいが、絶縁性の観点から、未変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ブロックポリプロピレン共重合体が好ましい。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、C層に用いられるポリオレフィン樹脂は、C層とB層との層間密着性の観点から、B層に用いられる第2ポリオレフィン樹脂と同一であることが好ましい。さらに、C層の形成に用いられる樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。また、C層の形成に用いられる樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂として未変性ポリオレフィン樹脂のみを含み、酸変性ポリオレフィン樹脂を含まないことが、電解液に接触した後、高温環境下での金属端子と端子用樹脂フィルムとの密着性の観点から好ましい。
【0065】
C層に用いられるポリオレフィン樹脂の融点は、160~170℃であり、160~165℃であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂の融点が160℃以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での金属端子14に対する密着性をより向上できる。また、ポリオレフィン樹脂の融点が170℃以下であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0066】
C層に用いられるポリオレフィン樹脂の融点をTmC(℃)、B層に用いられるポリオレフィン樹脂の融点をTmB(℃)とした場合、TmC≧TmBの条件を満たすことが好ましい。また、TmC-TmBの値は1~25(℃)であることがより好ましく、2~15(℃)であることが更に好ましい。TmC≧TmBの条件を満たすことで、電解液に接触した後、高温環境下でのヒートシール強度の低下をより抑制できる。また、TmC-TmBの値が25(℃)以下であることで、端子用樹脂フィルムの加工性を向上させることができる。
【0067】
C層の形成に用いられる樹脂組成物は、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、着色顔料、粘着付与剤、フィラー、結晶核剤などの樹脂添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、複数の種類がブレンドされていてもよい。特に、端子用樹脂フィルムの視認性の向上の観点から、上記樹脂組成物には着色顔料やフィラーが含まれていてもよい。着色顔料及びフィラーとしては、A層と同様のものが挙げられる。
【0068】
C層の厚さ(1層当たりの厚さ)は、2~150μmであることが好ましく、3~100μmであることがより好ましく、4~50μmであることが更に好ましい。C層の厚さが2μm以上であることで、電解液に接触した後、高温環境下での外装材と端子用樹脂フィルムとの密着性を向上させることができる。また、加工性やフィルムの破断伸度の観点からC層の厚さが150μm以下であることが好ましい。
【0069】
C層の230℃におけるMFRは、0.05~50g/10minであることが好ましく、1.0~25g/10minであることがより好ましく、2.0~15g/10minであることが更に好ましい。C層のMFRが0.05g/10min以上であることで、端子用樹脂フィルムの破断伸度を向上できる。また、C層のMFRが50g/10min以下であることで、端子用樹脂フィルムの破断強度を向上できる。
【0070】
端子用樹脂フィルムの総厚は、160μm以上であってもよく、175μm以上であってもよく、200μm以上であってもよい。端子用樹脂フィルムの総厚の上限は特に限定されないが、例えば1000μm以下であってよい。
【0071】
端子用樹脂フィルムを構成する層のうち、A層に該当する層の合計の厚さをTA(μm)、B層に該当する層の合計の厚さをTB(μm)とした場合、TA≧TBの条件を満たすことが好ましい。また、TA/TBの値は1.0~1.5であることがより好ましい。TA/TBの値が上記範囲内であることで、ヒートシール強度をより向上させることができる。
【0072】
端子用樹脂フィルムの総厚中の上記積層構造(B層/C層/B層)の厚さの割合が25~75%であることが好ましく、35~65%であることがより好ましい。上記積層構造の厚さの割合が25%以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。上記積層構造の厚さの割合が75%以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0073】
上記積層構造中のB層の厚さの合計の割合は、30~80%であることが好ましく、40~70%であることがより好ましい。上記積層構造中のB層の厚さの合計の割合が30%以上であることで、電解液に接触した後、室温環境下における金属端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。上記積層構造中のB層の厚さの合計の割合が80%以下であることで、電解液に接触した後、高温環境下における金属端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性をより向上できる。
【0074】
本実施形態の端子用樹脂フィルムにおいて、複数のA層はそれぞれ同一の樹脂を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂を用いて形成された層であってもよい。また、複数のA層はそれぞれ同一の樹脂組成物を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂組成物を用いて形成された層であってもよい。更に、複数のA層の厚さ、融点及びMFRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。端子用樹脂フィルムの加工性及びカール抑制の観点からは、複数のA層の上述した各構成は全て同一であることが好ましい。
【0075】
本実施形態の端子用樹脂フィルムにおいて、複数のB層はそれぞれ同一の樹脂を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂を用いて形成された層であってもよい。また、複数のB層はそれぞれ同一の樹脂組成物を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂組成物を用いて形成された層であってもよい。更に、複数のB層の厚さ、融点及びMFRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。端子用樹脂フィルムの加工性及びカール抑制の観点からは、複数のB層の上述した各構成は全て同一であることが好ましい。
【0076】
本実施形態の端子用樹脂フィルムにおいて、C層が複数存在する場合、複数のC層はそれぞれ同一の樹脂を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂を用いて形成された層であってもよい。また、複数のC層はそれぞれ同一の樹脂組成物を用いて形成された層であってもよく、異なる樹脂組成物を用いて形成された層であってもよい。更に、複数のC層の厚さ、融点及びMFRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。端子用樹脂フィルムの加工性及びカール抑制の観点からは、複数のC層の上述した各構成は全て同一であることが好ましい。
【0077】
本実施形態の端子用樹脂フィルムがA層/B層/C層/B層/A層の積層構造を有する場合、各層が同一厚さであってもよく、異なる厚さであってもよい。上記積層構造における各層の厚さの比は、例えば2:1:1:1:24:2:1:2:4などのようにA層がB層及びC層に比べて厚くなってもよい。上記積層構造における各層の厚さの比は、金属端子と端子用樹脂フィルムとの間の隙間の埋込性の観点からは、例えば1:1:1:1:3のように、片方のA層(金属端子側のA層)の厚さをより厚くしてもよい。C層はA層及びB層よりも厚さが薄い方が好ましい。
【0078】
本実施形態の端子用樹脂フィルムは、A層、B層及びC層以外の他の層(A層、B層及びC層のいずれにも該当しない層)を含んでいてもよいが、他の層を含まない方が好ましい。すなわち、端子用樹脂フィルムを構成する層の全てが、A層、B層及びC層からなる群より選ばれる少なくとも一つの層に該当することが好ましい。
【0079】
本実施形態の端子用樹脂フィルムにおいて、少なくとも金属端子側の最外層は、密着性の観点からA層であることが好ましい。一方、外装材側の最外層は、A層でなくてもよく、例えば未変性ポリオレフィン樹脂を用いた層であってもよいが、端子用樹脂フィルムの取り扱い性及びカール抑制の観点から、両面の最外層はいずれもA層であることが好ましい。
【0080】
以上、本開示の好ましい実施形態について詳述したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0081】
[端子用樹脂フィルムの製造方法]
次に、本実施形態に係る端子用樹脂フィルム16の製造方法について説明する。端子用樹脂フィルム16の製造方法は、下記に限定されない。
【0082】
端子用樹脂フィルム16がA層/B層/C層/B層/A層の5層構造を有する場合、上記5層を共押出法により積層してもよく、一部を事前に製膜した後、サンドイッチラミネート法により積層してもよい。例えば、A層/B層/C層からなる3層フィルム及びA層を事前に製膜した後、B層を構成する樹脂組成物を用いて3層フィルムとA層とをサンドイッチラミネート法により積層してもよく、A層/B層/C層からなる3層フィルムを事前に製膜し、その上にB層/A層からなる2層フィルムを押し出すことにより積層してもよい。
【0083】
また、A層/B層/C層からなる3層フィルムを事前に製膜し、接着剤組成物を用いて2枚の3層フィルムをドライラミネート法により積層してもよい。接着剤組成物としては、3層フィルムのC層同士間の層間密着性の観点からは、C層を構成する樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂と同系統の樹脂を含むものを用いることが好ましい。同系統の樹脂とは、C層を構成する樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂が未変性ポリオレフィン樹脂である場合には、未変性ポリオレフィン樹脂であり、ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である場合には、酸変性ポリオレフィン樹脂である。
【0084】
事前に製膜する3層フィルム等は、Tダイ押出法やインフレーション法などの共押出法を用いて製造することができるが、膜厚安定性の観点から、インフレーション法を用いて製造することが好ましい。
【0085】
端子用樹脂フィルム16を構成する層の数が6層以上である場合も、上述した製造方法を適宜用いて製造することができる。
【0086】
端子用樹脂フィルム16の製造方法の一例として、インフレーション法により5層フィルムを製造する方法について説明する。
【0087】
まず、A層、B層、C層、B層及びA層の母材を準備する。次いで、A層、B層、C層、B層及びA層の母材をインフレーション成型装置に供給する。次いで、インフレーション成型装置の押し出し部から5層構造(A層、B層、C層、B層、及びA層が積層された構造)となるように、上記5つの母材を押し出しながら、押し出された5層構造の積層体の内側からエア(空気)を供給する。
【0088】
そして、円筒形状にインフレートされた円筒状の5層フィルムを搬送しながら、ガイド部により扁平状に変形させた後、一対のピンチロールにより5層フィルムをシート状に折り畳む。折り畳んだチューブの両端部をスリットし、1対(2条)のフィルムを巻き取りコアにロール状に巻き取ることで、ロール状とされた5層フィルムが製造される。こうして、端子用樹脂フィルム16が製造される。
【0089】
押し出し温度は、130~300℃の範囲内が好ましく、130~250℃がより好ましい。押し出し温度が130℃以上である場合、各層を構成する樹脂が充分に溶融することで、溶融粘度が小さくなるため、スクリューからの押し出しが安定する。押し出し温度が300℃以下である場合、各層を構成する樹脂の酸化や劣化を抑制し、5層フィルムの品質の低下を防ぐことができる。
【0090】
スクリューの回転数、ブロー比、引き取り速度等は、膜厚を考慮して適宜設定することができる。5層フィルムの各層の膜厚比は、各スクリューの回転数を変更する事で調整することができる。
【0091】
[端子用樹脂フィルムの融着方法]
図4に示した端子用樹脂フィルム16と外装材13とを溶融接着する融着処理について説明する。以下では、
図4に示した端子用樹脂フィルム16のA層1を金属端子側に向け、A層7を外装材側に向けて配置する場合について説明する。
【0092】
融着処理では、加熱によるA層7の溶融と、加圧によるA層7と外装材13との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と外装材13とを熱融着させる。
【0093】
融着処理では、端子用樹脂フィルム16と外装材13との充分な密着性及び封止性を得る観点から、A層7を構成する樹脂の融点以上の温度に加熱することが好ましい。
【0094】
端子用樹脂フィルム16の加熱温度は、例えば、140~170℃であってよい。処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、外装材との密着性、及び生産性を考慮して決定することができる。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0095】
端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を向上させる観点から、170℃を超える温度で加圧時間を短くして熱融着してよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170℃超230℃以下とすることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒とすることができる。
【0096】
また、
図3を参照して、本実施形態に係る端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱によるA層1の溶融と、加圧によるA層1と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させる。
【0097】
融着処理では、端子用樹脂フィルム16と金属端子14との充分な密着性及び封止性を得る観点から、A層1を構成する樹脂の融点以上の温度に加熱することが好ましい。
【0098】
端子用樹脂フィルム16の加熱温度は、例えば、140~170℃であってよい。また、処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、金属端子との密着性、及び生産性を考慮して決定することができる。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0099】
端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を向上させる観点から、170℃を超える温度で加圧時間を短時間にして熱融着してよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170超230℃以下とすることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒とすることができる。
【実施例0100】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示を具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を表1に示す。表1において、PPはポリプロピレンを意味し、酸変性は無水マレイン酸変性を意味し、融点は各層に用いた樹脂の融点を意味する。融点は、ASTM D2117に準じて測定された値であり、複数の融解ピークが存在する場合には、溶解熱量の多い方のピークにおける温度をいう。引張弾性率及び引張降伏応力は、端子用樹脂フィルムについて、JIS K7162に準拠した引張試験(試験片:JIS K7162に規定される5B型試験片、引張速度:50mm/min)により測定した結果である。密度は、ISO 1183に準じて測定した結果である。MFRは、各材料を用いて形成された各層のメルトフローレートを、メルトフローレート測定器(東洋精機製作所社製、測定温度:230℃)によりJIS K7210に準じて測定した結果である。なお、表1において、B1-1~B1-10については、これらをまとめて「B1」と呼ぶことがある。B2-1~B2-10については、これらをまとめて「B2」と呼ぶことがある。
【0102】
【0103】
[端子用樹脂フィルムの作製]
表2~表5に示した各材料を用いて、同表に示す厚さを有する各層を同表に示す順に積層し、端子用樹脂フィルムを作製した。具体的な作製方法は以下の通りである。なお、表2~5においては、酸変性の有無、又は融点の点で本開示のA層、B層又はC層の条件を満たさない層についても、比較のため便宜的にA層、B層又はC層に分類した。また、各実施例及び各比較例において、上段は構成材料を示し、下段は各層の厚さを示す。B層については、構成材料が第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂を含む場合には、第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の質量含有率を上段の下における括弧内に併記してある。
【0104】
(実施例1~23)
A層/B層/C層/B層/A層の5層をインフレーション法により共押出して積層し、A層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。このとき、押し出し温度は、220℃とした。
【0105】
(比較例1)
インフレーション法により共押出を行う際に、B層を、B1-1のみからなる層に変更したこと以外は実施例1と同様にして、A層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0106】
(比較例2)
インフレーション法により共押出を行う際に、B層/C層/B層の3層を、B1-1からなる単一の層に変更したこと以外は実施例1と同様にして、A層/B層/A層の3層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0107】
(比較例3)
インフレーション法により共押出を行う際に、B層/C層/B層の3層を、B2-1からなる単一の層に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/A層の3層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0108】
(比較例4)
インフレーション法により共押出を行う際に、A層を、A6からなる層に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0109】
(比較例5)
インフレーション法により共押出を行う際に、A層を、A7からなる層に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0110】
(比較例6)
インフレーション法により共押出を行う際に、B層において、B1-1をB1-10に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0111】
(比較例7)
インフレーション法により共押出を行う際に、2つのB層のうち一方のB層において、B2-1をB1-10に変更し、もう一方のB層においてB2-1をB2-2に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0112】
(比較例8)
インフレーション法により共押出を行う際に、C層をB2-1からB1-5に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0113】
(比較例9)
インフレーション法により共押出を行う際に、C層をB2-1からB2-10に変更したこと以外は実施例1と同様にしてA層/B層/C層/B層/A層の5層構造の端子用樹脂フィルムを得た。
【0114】
[電解液接触後の室温環境下でのアルミニウム箔に対する密着性]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折り目とは反対側の端部を185℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図5を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、
図5中の積層体100は、端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルムからなる積層体である。このサンプルを、電解液に浸漬させ、85℃の環境下で一週間エージングを行った。電解液としては、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF
6を1Mの濃度を有するように調整したものを用いた。その後、室温(25℃)環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、アルミニウム箔と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて、アルミニウム箔(AL箔)に対するヒートシール強度(バースト強度)を評価した。この評価結果を、電解液に接触した後における室温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性の指標とした。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2~表5に示す。
A:ヒートシール強度が30N/15mm以上
B:ヒートシール強度が20N/15mm以上、30N/15mm未満
C:ヒートシール強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
D:ヒートシール強度が15N/15mm未満
【0115】
[電解液接触後の高温環境下でのアルミニウム箔に対する密着性]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折り目とは反対側の端部を185/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図5を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、
図5中の積層体100は、端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルムからなる積層体である。このサンプルを、電解液に浸漬させ、85℃の環境下で一週間エージングを行った。電解液としては、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPF
6を1Mの濃度を有するように調整したものを用いた。その後、80℃環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、アルミニウム箔と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて、アルミニウム箔(AL箔)に対するヒートシール強度(バースト強度)を評価した。この評価結果を、電解液に接触した後における高温環境下での端子に対する端子用樹脂フィルムの密着性の指標とした。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2~表5に示す。
A:ヒートシール強度が15N/15mm以上
B:ヒートシール強度が12.5N/15mm以上、15N/15mm未満
C:ヒートシール強度が7N/15mm以上、12.5N/15mm未満
D:ヒートシール強度が7N/15mm未満
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
1,7…A層、2,6…B層、4…C層、8…積層構造、10…蓄電デバイス、11…蓄電デバイス本体、13…外装材、14…金属端子、14-1…金属端子本体、14-2…腐食防止層、16…端子用樹脂フィルム、21…内層、22…内層側接着剤層、23-1,23-2…腐食防止処理層、24…バリア層、25…外層側接着剤層、26…外層。