(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182436
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エアコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20221201BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F04B49/02 331F
F04B49/02 331D
F04B39/12 C
F04B39/12 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089990
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 幸康
【テーマコード(参考)】
3H003
3H145
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC02
3H003CC05
3H003CF04
3H145AA03
3H145AA13
3H145AA26
3H145AA31
3H145AA42
3H145BA04
3H145BA07
3H145CA21
3H145EA13
(57)【要約】
【課題】圧縮エア駆動式の釘打ち工具等のエアツールに動力源としての圧縮エアを供給するためのエアコンプレッサにおいて、貯留タンクの内圧が設定圧に達すると圧縮機構が一旦停止される。従来、再起動時の負荷低減のためにシリンダに残圧開放用の小径孔を設けていた。このため、圧縮効率が悪くなるとともに小径孔が粉塵等により詰まりやすい問題があった。本開示ではこのような問題を生じないアンロード機構を提供する。
【解決手段】従来の小径孔に代えて、ソレノイドアクチュエータ40で開放されるスプール弁31を設ける。ソレノイドアクチュエータの駆動力を伝達部材の梃子の作用によりスプール弁に伝達するようにすることで、ソレノイドアクチュエータが小型化及び低コスト化される。小型のソレノイドアクチュエータを用いて4.5MPa程度の高圧の残圧を開放できるようになる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンプレッサであって、
ピストンを往復運動させてシリンダ内でエアを圧縮する圧縮機構と、
前記シリンダと連通されて圧縮エアを貯蔵するタンクと、
前記タンクの内圧が所定圧に達した際に前記圧縮機構の駆動を停止する停止機構と、
前記シリンダと連通されて前記シリンダを大気に対して開閉可能なスプール弁と、
前記停止機構が前記圧縮機構を停止させる際に前記スプール弁を開き方向に移動させるソレノイドアクチュエータを有するエアコンプレッサ。
【請求項2】
請求項1記載のエアコンプレッサであって、
前記スプール弁と前記ソレノイドアクチュエータの間に前記ソレノイドアクチュエータの駆動力を前記スプール弁に伝達する伝達部材を有するエアコンプレッサ。
【請求項3】
請求項2記載のエアコンプレッサであって、
前記伝達部材は回転支軸を介して回転可能に支持されたエアコンプレッサ。
【請求項4】
請求項3記載のエアコンプレッサであって、
前記回転支軸は、前記スプール弁と前記ソレノイドアクチュエータの間に設けられ、
前記伝達部材は、前記回転支軸から前記ソレノイドアクチュエータまで延在する第1伝達部と、前記回転支軸から前記スプール弁まで延在する第2伝達部を有し、
前記第1伝達部が前記第2伝達部よりも長いエアコンプレッサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記シリンダと前記タンクを連通するエア通路と、
前記エア通路の途中に設けられて、前記タンクから前記シリンダに向かうエアの逆流を防止する逆止弁を有し、
前記逆止弁と前記シリンダとの間において前記スプール弁により前記エア通路が大気に開放されるエアコンプレッサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記ピストンの圧縮のための移動方向を上方とした際に、前記ソレノイドアクチュエータが前記ピストンの下端よりも下方に位置するエアコンプレッサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記スプール弁を閉じ方向に付勢するバネを有するエアコンプレッサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記圧縮機構により少なくとも3MPa以上の高圧エアが生成されるエアコンプレッサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記圧縮機構は、上流側の第1シリンダと下流側の第2シリンダを有し、前記第1シリンダで圧縮されたエアが前記第2シリンダでさらに圧縮される二段圧縮構造を有し、
前記シリンダは、前記第2シリンダであるエアコンプレッサ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記スプール弁は、前記シリンダから流入されるエアを大気に対して気密にシールする第1オーリングと第2オーリングを有し、前記第1オーリングと前記第2オーリングとの受圧径の径差が0.5mm以内に設定されたエアコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば圧縮エア駆動式の釘打ち機やエアダスタ等のエアツールに圧縮エアを供給するエアコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にエアコンプレッサに関する技術が開示されている。エアコンプレッサは、圧縮空気を生成する圧縮機構を備える。圧縮機構は電動モータを駆動源として動作する。圧縮機構は、電動モータの回転出力を変換してシリンダ内でピストンを往復動させて圧縮エアを吐出する構成(レシプロ式)を備えている。圧縮機構から吐出された圧縮エアがタンクに貯留される。タンクに貯留された圧縮エアがエアツールに供給される。
【0003】
タンクの貯留圧が設定圧に達して圧縮機構が停止されるとピストンの停止位置によってはシリンダ内に圧縮エアが残留される(残圧)。この残圧は再起動時に負荷となる。例えば4.5MPa程度の高圧対応の場合に残圧が大きくなるため、再起動時の高負荷が問題になる。特許文献1には、シリンダにエア抜き用の小径孔を設けることで、モータ起動時の高負荷が回避されるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータ起動時の高負荷を回避するために設けたエア抜き用の小径孔により圧縮効率が低下する問題がある。また、小径孔に粉塵が詰まってエア抜き効率が低下するおそれがある。本開示では、圧縮効率の低下や小径孔の目詰まり等の問題を生ずることなくモータ起動時の高負荷が確実に回避されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面によれば、エアコンプレッサは、例えばピストンを往復運動させてシリンダ内でエアを圧縮する圧縮機構と、シリンダと連通されて圧縮エアを貯蔵するタンクを有する。例えばタンクの内圧が所定圧に達した際に圧縮機構の駆動が停止機構により停止される。例えばシリンダと連通されてシリンダを大気に対して開閉可能なスプール弁が設けられる。例えば停止機構が圧縮機構を停止させる際に、ソレノイドアクチュエータによりスプール弁が開き方向に移動する。
【0007】
従って、圧縮機構が停止する際にスプール弁が開かれてシリンダが大気に開放される。これにより、シリンダ内の残圧が大気に開放されて、圧縮機構の再起動時の負荷が低減される。再起動時の負荷が低減されることで、コンプレッサ全体の振動が低減される。スプール弁は、ソレノイドアクチュエータの動作により確実に開き方向に開かれる。従来の小径孔により残圧を除去する構成ではないことから、圧縮効率の低下を招くことがない。また、小径孔の目詰まりといった問題を生じない。スプール弁は、シリンダに直接並設してもよいし、シリンダの下流側のエア室に並設してもよい。何れの場合も、スプール弁が開かれてシリンダの圧縮室が直接若しくは間接的に大気に開放されて残圧が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本体カバーを取り外して圧縮機構が露出された状態の全体斜視図である。
【
図4】
図3中IV-IV線断面矢視図であって、第2逆止弁の縦断面図である。
【
図5】アンロード機構の横断面図である。本図は非作動状態を示している。
【
図7】アンロード機構の横断面図である。本図は開き側に作動した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばスプール弁とソレノイドアクチュエータの間にソレノイドアクチュエータの駆動力をスプール弁に伝達する伝達部材を有する構成としてもよい。従って、スプール弁をソレノイドアクチュエータから離間して配置できる。これによりスプール弁及びソレノイドアクチュエータの配置の自由度が高まる。
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば伝達部材は回転支軸を介して回転可能に支持された構成としてもよい。従って、伝達部材が回転支軸を中心にして回転することでソレノイドアクチュエータの駆動力がスプール弁に伝達される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば回転支軸は、スプール弁とソレノイドアクチュエータの間に設けられる。伝達部材は、回転支軸からソレノイドアクチュエータまで延在する第1伝達部と、回転支軸からスプール弁まで延在する第2伝達部を有し、第1伝達部が第2伝達部よりも長い構成としてもよい。従って、ソレノイドアクチュエータの駆動力が伝達部材により増幅されてスプール弁に伝達される。伝達部材に梃子(てこ)の作用を付加することでソレノイドアクチュエータの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばシリンダとタンクを連通するエア通路と、エア通路の途中に設けられて、タンクからシリンダに向かうエアの逆流を防止する逆止弁を有する構成としてもよい。逆止弁とシリンダとの間においてスプール弁によりエア通路が大気に開放される構成としてもよい。従って、シリンダの残圧がスプール弁により効率よく大気に開放される。逆止弁によりタンク側の圧縮エアがスプール弁により開放されることがない。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばピストンの圧縮のための移動方向を上方とした際に、ソレノイドアクチュエータがピストンの下端よりも下方に位置する構成としてもよい。従って、ソレノイドアクチュエータが圧縮による発熱部から離間した部位に配置されることで、ソレノイドアクチュエータの動作不良が未然に回避されるとともにその耐久性が高められる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばスプール弁を閉じ方向に付勢するバネを有する構成とすることができる。従って、ソレノイドアクチュエータの駆動力が取り除かれると、スプール弁がバネの付勢力により閉じられる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば圧縮機構により少なくとも3MPa以上の高圧エアが生成される構成としてもよい。従って、3MPa以上の高圧の圧縮エアがスプール弁により開閉される。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば圧縮機構は、上流側の第1シリンダと下流側の第2シリンダを有する。第1シリンダで圧縮されたエアが第2シリンダでさらに圧縮される二段圧縮構造を有する。例えばシリンダは、第2シリンダとすることができる。従って、2段階で高圧に圧縮された圧縮エアがスプール弁により大気に開放されて、第1、第2シリンダ内の残圧が効率良く取り除かれる。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばスプール弁は、シリンダから流入されるエアを大気に対して気密にシールする第1オーリングと第2オーリングを有する構成とすることができる。第1オーリングと第2オーリングとの受圧径の径差が例えば0.5mm以内に設定された構成としてもよい。従って、シリンダ内の残圧が一方のオーリングに対してスプール弁を開き方向に移動させる外力として作用し、他方のオーリングに対してスプール弁を閉じ方向に移動させる外力として作用する。第1オーリングと第2オーリングの受圧径の径差が例えば0.5mm以内に小さく設定されることで、第1オーリングと第2オーリングに作用するシリンダ内の残圧の影響が相殺される。これにより、ソレノイドアクチュエータの小型化及び低コスト化が図られる。
【実施例0018】
図1,2に示すようにエアコンプレッサ1は、前後に長い2つの円柱体形のタンク2を備えている。生成された圧縮エアが2つのタンク2に貯蔵される。2つのタンク2の前後には合計4箇所の脚部3が設けられている。各脚部3には、防振性の高いゴム素材が用いられている。各脚部3にはサイドプロテクタ3aが並設されている。2つのタンク2の前部間に、排水用のドレンコック2aが設けられている。2つのタンク2の上部間は基台部4で相互に結合されている。基台部4の前後には、持ち運び用のハンドル部5が設けられている。基台部4の上面に圧縮機構10と駆動部20が搭載されている。
図1は本体カバー6で圧縮機構10と駆動部20が覆われた状態を示している。
【0019】
本体カバー6の前面には、高圧用の吐出口7と低圧用の吐出口8がそれぞれ左右に2口ずつ配置されている。高圧用の吐出口7からは、例えば2.5MPaの圧縮エアが供給される。低圧用の吐出口8からは、例えば1MPaの圧縮エアが供給される。吐出口7,8の上方には、それぞれ吐出圧を設定するための調整ダイヤル7a,8aが設けられている。
【0020】
本体カバー6の前部上面には、操作部9が設けられている。操作部9には、電源スイッチ9a、タンク内圧切り替えボタン9b、動作モード切替ボタン9cの他、吐出圧表示部、タンク内圧表示部等が集中配置されている。
【0021】
図2に示すように本体カバー6を取り外すと、圧縮機構10が露出される。
図3に示すように圧縮機構10は、前側の第1圧縮部11と後側の第2圧縮部12を有する。前後2段階の圧縮部11,12により高圧の圧縮エアが生成される。前側の第1圧縮部11により大気が導入されて一定圧の圧縮エアが生成される。前側の第1圧縮部11で圧縮生成された圧縮エアが後側の第2圧縮部12に供給される。供給された圧縮エアが第2圧縮部12でさらに圧縮されてより高圧(例えば4.5MPa)の圧縮エアが生成される。
【0022】
第1圧縮部11と第2圧縮部12との間に駆動部20が配置されている。駆動部20は円筒形の駆動部ケース21を有する。駆動部ケース21は基台部4上に固定されている。駆動部ケース21の右側部に電動モータ22が支持されている。電動モータ22には、比較的大きな起動トルクが得られるブラシレスモータが用いられている。電動モータ22は、円環形の回転子22aと、回転子22aの内周側に位置する同じく円環形の固定子22bを有する。固定子22bは、駆動部ケース21の右側部に固定されている。回転子22aの中心に出力軸22cが結合されている。出力軸22cは固定子22bの中心に挿通されている。出力軸22cの右端部には冷却ファン23が結合されている。
【0023】
出力軸22cの左端部に駆動軸25が同軸に結合されている。駆動軸25は、右側の軸受25aと左側の軸受25bを介して駆動部ケース21の右側部と左側部間に跨った状態で回転可能に支持されている。駆動部ケース21内は大気に連通されている。駆動部ケース21の前部に第1圧縮部11が設けられ、後部に第2圧縮部12が設けられている。
【0024】
第1圧縮部11は、第1シリンダ11aと第1ピストン11bを有する。第1シリンダ11aは駆動部ケース21の前部から前方へ延在されている。第1シリンダ11a内において第1ピストン11bが前後に気密に移動可能に収容されている。第1ピストン11bは第1ロッド11cを介して駆動軸25の第1クランク部26に結合されている。
【0025】
第2圧縮部12は、第2シリンダ12aと第2ピストン12bを有する。第2シリンダ12aは駆動部ケース21の後部から後方へ延在されている。第2シリンダ12a内において第2ピストン12bが前後に気密に移動可能に収容されている。第2ピストン12bは第2ロッド12cを介して駆動軸25の第2クランク部27に結合されている。
【0026】
第1クランク部26と第2クランク部27は、駆動軸25の軸線回りの同じ位置で同じ方向に偏心している。このため、駆動軸25の1回転により第1圧縮部11と第2圧縮部12の一方の圧縮工程と他方の吸気工程が同時になされる。第1圧縮部11において第1ピストン11bが前方へ移動する圧縮工程では、第2圧縮部12において第2ピストン12bが前方へ移動して吸気工程がなされる。第1圧縮部11において第1ピストン11bが後方へ移動する吸気工程では、第2圧縮部12において第2ピストン12bが後方へ移動して圧縮工程がなされる。
【0027】
第1シリンダ11aの第1圧縮室11dと第2シリンダ12aの第2圧縮室12dは供給管13を介して連通されている。供給管13の上流側は、補助逆止弁11eを介して第1圧縮室11dに接続されている。補助逆止弁11eにより供給管13から第1圧縮室11dへの圧縮エアの逆流が阻止される。供給管13の下流側は、第2圧縮室12dに接続されている。第1圧縮室11dから補助逆止弁11eを経て供給管13に流入した圧縮エアはそのまま第2圧縮室12dに供給される。
【0028】
このように電動モータ22の起動により第1圧縮部11と第2圧縮部12の2段階で圧縮エアが生成される。第2圧縮部12の第2圧縮室12dに供給された圧縮エアは、第2ピストン12bが後退することでさらに高圧に圧縮される。第2圧縮室12dで生成された例えば約4.5MPaの高圧の圧縮エアは、第1逆止弁14を経てタンク2に至るエア通路15に流入する。第1逆止弁14により、エア通路15に流入した圧縮エアが第2圧縮室12dへ逆流することが阻止される。
【0029】
図4に示すようにエア通路15の下流側は左右のタンク2に連通されている。エア通路15の下流側は、第2逆止弁16を経て左右のタンク2の内部に連通されている。第2逆止弁16により、タンク2内に貯留された圧縮エアがエア通路15へ逆流することが阻止される。
【0030】
エア通路15の上流側に中間室15aが設けられている。中間室15aには、アンロード機構30が並設されている。アンロード機構30は、圧縮機構10の停止時に第2圧縮室12dの圧縮エア(残圧)を大気開放する機能を有する。
図5,6にアンロード機構30の詳細が示されている。アンロード機構30は、スプール弁31と、スプール弁31を開き側に作動させるソレノイドアクチュエータ40を有する。スプール弁31は、円柱体形のスプール本体32と、スプール本体32を保持する円筒形の枠体部33を有する。枠体部33は、内周側を左右に開放する横倒し姿勢に配置されている。スプール本体32は、枠体部33の内周側に左右に変位可能に支持されている。
【0031】
スプール本体32には、2つのオーリング34,35が装着されている。2つのオーリング34,35の間において、枠体部33の内周孔33bが通気孔18を経て中間室15aに連通されている。枠体部33の右端部に止めねじ36が締め込まれている。止めねじ36とスプール本体32との間に圧縮バネ37が介装されている、スプール本体32は圧縮バネ37の付勢力により左方(閉じ側)に付勢されている。
【0032】
スプール本体32の右端部にストッパフランジ部32aが設けられている。ストッパフランジ部32aが枠体部33の段差部33aに当接することで、スプール本体32の閉じ側の移動端位置が規制される。ストッパフランジ部32aが段差部33aに当接した位置がスプール本体32の閉じ位置に相当する。
図5,6はスプール本体32が閉じ位置に保持されて、スプール弁31が閉じられた状態を示している。
【0033】
スプール本体32のストッパフランジ部32aと止めねじ36との間において、枠体部33には1つの開放孔38が設けられている。スプール本体32が閉じ位置に位置する状態では、右側の第1オーリング34が枠体部33の内周孔33bに摺接された状態となる。このため、第1オーリング34の右側と左側が気密に遮断された状態となる。この状態では、通気孔18が開放孔38に対して気密に遮断された状態(スプール弁31の閉じ状態)となる。
【0034】
図7,8に示すようにスプール本体32が圧縮バネ37に抗して右方へ変位されると、スプール弁31が開かれる。スプール本体32が右方へ変位されると、第1オーリング34が枠体部33の内周孔33bから離脱される。このため、第1オーリング34の右側と左側が連通された状態となる。この状態では、通気孔18が開放孔38に対して連通された状態となる。このため、スプール弁31が開かれると、中間室15aを含むエア通路15の圧縮エアが開放孔38を経て大気開放される。これにより中間室15aを経て第2圧縮室12dの残圧が大気開放される。
【0035】
右側の第1オーリング34により通気孔18と開放孔38との間が開閉される。左側の第2オーリング35が枠体部33の内周孔33bに常時摺接されて、通気孔18が大気側から常時気密に遮断される。第1オーリング34と第2オーリング35との間において内周孔33bには、通気孔18を経て常時第2圧縮室12dのエア圧が作用する。
【0036】
第1オーリング34は、その左側に設けた第1軸部32bにより軸方向左方への位置ずれが規制されている。第1軸部32bは、第2オーリング35が装着された第2軸部32cよりも大径になっている。第1オーリング34の左面に作用するエア圧が、スプール本体32を右方(開き側)へ移動させる外力として作用する。第2オーリング35の右面に作用するエア圧が、スプール本体32を左方(閉じ側)へ移動させる外力として作用する。
【0037】
本実施例では、第1オーリング34の受圧径(装着状態の外径)d1は、第2オーリング35の受圧径(装着状態の外径)d2よりも大きくなっている。本実施例では、第1オーリング34の受圧径d1は、第2オーリング35の受圧径d2に対して0.5mm以下の径差に設定されている。これにより、第1オーリング34が第2オーリング35よりも受圧径が大径であることにより受けるエア圧の影響が例えば約2N程度に抑制される。これにより、スプール本体32を閉じ側に移動させるために要する圧縮バネ37の付勢力が例えば約3N程度のより小さなもので足りるようになっている。これにより、圧縮バネ37の小型化が実現されている。
【0038】
圧縮バネ37の小型化によりスプール本体32を閉じ側に移動させる付勢力が抑制されることから、スプール本体32を開き側に移動させる駆動力がより小さなもので足りる。従って、以下述べるソレノイドアクチュエータ40の小型化が図られる。
【0039】
スプール本体32の左端部側は、枠体部33から左方へ突き出されている。スプール弁31はソレノイドアクチュエータ40の駆動力により開き側に動作する。スプール弁31は中間室15aの後ろ側に並設されている。ソレノイドアクチュエータ40は、第2圧縮部12の左側部に配置されている。ソレノイドアクチュエータ40は、前後方向の位置について第2ピストン12bのストローク範囲よりも前方に配置されている。第2ピストン12bの圧縮のための移動方向を上方(本実施例では後方)とした場合に、第2ピストン12bの下降端位置(本実施例では前進端位置)よりも下方(本実施例では前方)にソレノイドアクチュエータ40が配置されている。このようにソレノイドアクチュエータ40は圧縮による発熱部位(第2圧縮室12d)から離れた部位に配置されている。これによりソレノイドアクチュエータ40の耐久性が高められる。
【0040】
ソレノイドアクチュエータ40の駆動力は長尺の伝達部材41を介してスプール弁31に伝達される。第2シリンダ12aの後端部に支持部42が設けられている。支持部42は左側方へ突き出す状態に設けられている。支持部42の左端部に回転支軸43を介して伝達部材41が支持されている。伝達部材41は長手方向中央付近の回転支軸43を介して左右に回転可能に支持されている。
【0041】
伝達部材41は、回転支軸43に対して前側の第1伝達部41aと、回転支軸43に対して後側の第2伝達部41bを有する。第1伝達部41aの前部はソレノイドアクチュエータ40の作動部40aに当接されている。第2伝達部41bの後部は、スプール本体32の左端部に当接されている。
図5,7に示すように第1伝達部41aの長さL1が第2伝達部41bの長さL2よりも長くなるよう、伝達部材41の長手方向の位置について回転支軸43の位置が適切に設定されている。回転支軸43は、伝達部材41の長手方向中央より後方にずれて配置されている。このため、ソレノイドアクチュエータ40の駆動力(作動部40aの突き出し力)が伝達部材41の梃子の作用により増幅されてスプール本体32に開き方向の外力として伝達される。
【0042】
伝達部材41の梃子の作用によりソレノイドアクチュエータ40の駆動力がスプール本体32に伝達されることによってもソレノイドアクチュエータ40の小型化及び低コスト化が図られる。より小型で低コストのソレノイドアクチュエータ40によって、例えば約4.5MPa程度の高圧エアのアンロードが実現される。
【0043】
ソレノイドアクチュエータ40には、通電遮断により作動部40aが突き出され、通電により作動部40aが引き込まれる動作形態のソレノイドアクチュエータが用いられている。
図7,8に示すように通電遮断によりソレノイドアクチュエータ40の作動部40aが突き出されると、伝達部材41が回転支軸43を中心にして図示時計回り方向に回転する。これによりスプール本体32が第2伝達部41bによって右方へ押される。スプール本体32が圧縮バネ37に抗して右方へ押されると、第1オーリング34が枠体部33の内周面から離間する。これにより通気孔18及び開放孔38を経て中間室15aが大気開放される。従って、第2圧縮室12dの残圧が除去される。
【0044】
図5,6に示すように、ソレノイドアクチュエータ40へ通電されて作動部40aが引き込まれると、伝達部材41の第2伝達部41bがスプール弁31の圧縮バネ37の付勢力により左方へ押されることで、伝達部材41が回転支軸43を中心にして図示反時計回り方向に回転する。また、スプール本体32が圧縮バネ37の付勢力により左方へ移動する。スプール本体32が左方へ移動して第1オーリング34が枠体部33の内周面に押圧される。これにより通気孔18と開放孔38との間が気密に遮断されて、中間室15aが大気側から遮断される。
【0045】
第2圧縮室12dの残圧を開放するためのアンロード機構30は、圧縮機構10を停止させる停止機構50に連動してなされる。
図9に示すようにアンロード機構30の動作制御は、停止機構50の制御に組み込まれている。停止機構50は、タンク2の内圧を検知する圧力センサ51を有する。タンク2の内圧が所定圧(例えば4.5MPa)に達すると、これが圧力センサ51により検知される。圧力センサ51の検知信号が制御回路52に入力される。これにより、電源回路が遮断されて電動モータ22が停止されることで、圧縮機構10が停止される。
【0046】
電動モータ22に停止により圧縮機構10が停止されると、制御回路52によりアンロード機構30が起動される。先ず、電源回路からソレノイドアクチュエータ40への通電が遮断される。これにより、作動部40aが突き出される。
図7,8に示すようにソレノイドアクチュエータ40の作動部40aが突き出されると、伝達部材41が回転支軸43を中心にして図示時計回り方向に回動する。これにより、スプール本体32が圧縮バネ37に抗して右方へ押されて、スプール弁31が開かれる。スプール弁31が開かれると、通気孔18及び開放孔38を経て中間室15aが大気開放されることで、第2圧縮室12dの残圧が除去される。第2圧縮室12dの残圧が除去されることで、第1圧縮室11dの残圧も第2圧縮室12dを経て除去される。
【0047】
タンク2内の圧縮エアの消費によりタンク2内エア圧が所定の設定圧まで低下すると、これが圧力センサ51により検知される。圧力センサ51の検知信号により制御回路52では電動モータ22への通電信号が出力される。これにより、電動モータ22が起動して圧縮機構10が再起動される。圧縮機構10の停止時に、第1圧縮室11d及び第2圧縮室12dの残圧がアンロード機構30により除去されることで、再起動時における圧縮機構10の負荷が低減される。負荷低減によりエアコンプレッサ1の振動が低減される。
【0048】
電動モータ22への通電により圧縮機構10が再起動される。圧縮機構10の再起動後、電動モータ22の回転状態が安定するタイミングで、ソレノイドアクチュエータ40への通電がなされる。これにより、アンロード機構30が停止される。ソレノイドアクチュエータ40への通電により作動部40aが引き込まれることで、伝達部材41がアンロード停止側(
図7,8において反時計回り方向)に回転可能な状態となる。伝達部材41は、圧縮バネ37の付勢力により左方(通気遮断側)に移動するスプール本体32に押されることで、回転支軸43を中心にして反時計回り方向に回転する。
図6,7に示すようにスプール本体32が圧縮バネ37の付勢力により左方の遮断側に移動して第1オーリング34が枠体部33の内周孔33bに摺接されることで、通気孔18が開放孔38から気密に遮断される。これにより中間室15a及びエア通路15がスプール弁31に対して気密に遮断される。従って、圧縮機構10の第2圧縮室12dで生成された圧縮エアが第1逆止弁14、エア通路15及び第2逆止弁16を経てタンク2内に流入する。
【0049】
以上説明したエアコンプレッサ1によれば、停止機構50により圧縮機構10が停止する際にアンロード機構30のスプール弁31が開かれて第2シリンダ12aの第2圧縮室12dが大気に開放される。これにより、第2シリンダ12a内の残圧が大気に開放される。また、第1シリンダ11a内ンの残圧も第2シリンダ12aを経て大気開放される。こうして第1圧縮部11と第2圧縮部12の残圧が除去されることで、圧縮機構10の再起動時の負荷が低減される。このように、圧縮機構10の停止時にスプール弁31により第2圧縮室12dが大気開放される構成であることから、従来の小径孔によって残圧除去する場合のような圧縮効率の低下や小径孔の目詰まりといった問題は解消される。
【0050】
スプール弁31は、ソレノイドアクチュエータ40の動作により開かれる。スプール弁31とソレノイドアクチュエータ40の間に長尺の伝達部材41が介在されている。ソレノイドアクチュエータ40の駆動力が伝達部材41を介してスプール弁31に伝達される。従って、スプール弁31をソレノイドアクチュエータ40から離間して配置できる。これによりスプール弁31及びソレノイドアクチュエータ40の配置の自由度が高まる。
【0051】
ソレノイドアクチュエータ40の駆動力が伝達部材41の梃子の作用により増幅されてスプール弁31に伝達される。これにより、ソレノイドアクチュエータ40の小型化及び低コスト化を図ることができる。小型で低コストのソレノイドアクチュエータ40であっても駆動力に余裕をもって、約4.5Mpa程度の高圧エアを開閉するスプール弁31を作動させることができる。
【0052】
第2圧縮部12の第1逆止弁14と、タンク2側の第2逆止弁16とで区画される中間室15aがスプール弁31により大気に開放される。これにより、第2圧縮室12dの残圧がスプール弁31により迅速かつ効率よく大気に開放される。
【0053】
ソレノイドアクチュエータ40は、第2圧縮室12dから前方へ離間した部位に配置されている。第2ピストン12bの圧縮工程の移動方向が後方であり、吸気工程の移動方向が前方となっている。ソレノイドアクチュエータ40は、第2ピストン12bの吸気工程の移動端(前端位置)よりも前方に配置されている。このように、ソレノイドアクチュエータ40が圧縮による発熱部(第2圧縮室12d)から十分に離間した部位に配置されることで、ソレノイドアクチュエータ40の耐久性が高められる。
【0054】
以上説明した実施例には種々変更を加えることができる。例えば、スプール弁31は、例示したように第2圧縮部12の下流側の中間室15aに並設するほか、第2シリンダ12aに直接並設する構成としてもよい。この場合、第2シリンダ12aに設けた通気孔を経てスプール弁により第2圧縮室12dが大気に開放されて残圧が除去される。
【0055】
タンク2内のエア圧が4.5MPaに達した時点で停止機構50により圧縮機構10が停止される構成を例示したが、停止機構50による圧縮機構10を停止させるタンク2の所定圧(停止設定圧)については例えば3MPa以上で任意に変更して設定することができる。
【0056】
第1圧縮部11と第2圧縮部12の二段階で圧縮生成する圧縮機構10を例示したが、一段階の圧縮部を有する圧縮機構についても例示したアンロード機構30を適用することができる。
【0057】
ソレノイドアクチュエータ40には、通電遮断により作動部40aが引き込まれ、通電により作動部40aが突き出される動作形態のソレノイドアクチュエータを用いることができる。また、作動部の両方向について磁力により位置保持される自己保持形のソレノイドアクチュエータを用いることができる。この場合、伝達部材の前端側とソレノイドアクチュエータの作動部とを相互に回転可能に連結し、伝達部材の後端側とスプール本体32の左端部とを相互に回転可能に連結して、ソレノイドアクチュエータの作動部の両方向の移動動作によりスプール弁31を開閉する構成としてもよい。これによりスプール弁の圧縮バネ37を省略することができる。
【0058】
エアコンプレッサ1の電源は、商用の交流100V電源である場合の他に、例えば充電式のバッテリパックを電源とする場合であってもよい。例示したアンロード機構30は、交流電源式のエアコンプレッサ、直流電源式のエアコンプレッサの何れにも適用することができる。
【0059】
実施例のエアコンプレッサ1が本開示の1つの局面におけるエアコンプレッサの一例である。実施例の第1シリンダ11a、第2シリンダ12aが本開示の1つの局面におけるシリンダの一例である。実施例の第1ピストン11b、第2ピストン12bが本開示の1つの局面におけるピストンの一例である。実施例の圧縮機構10が本開示の1つの局面における圧縮機構の一例である。
【0060】
実施例のタンク2が本開示の1つの局面におけるタンクの一例である。実施例の停止機構50が本開示の1つの局面における停止機構の一例である。実施例のスプール弁31が本開示の1つの局面におけるスプール弁の一例である。実施例のソレノイドアクチュエータ40が本開示の1つの局面におけるソレノイドアクチュエータの一例である。