(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182439
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】タイヤトレッド部の摩耗量取得方法および摩耗量取得システム
(51)【国際特許分類】
G01B 7/06 20060101AFI20221201BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20221201BHJP
B60C 23/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01B7/06 M
B60C19/00 E
B60C19/00 B
B60C23/04 120B
B60C23/04 130B
B60C23/04 130C
B60C23/04 160B
B60C23/04 160C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021089995
(22)【出願日】2021-05-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸川 広人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 良治
(72)【発明者】
【氏名】地主 哲
(72)【発明者】
【氏名】菊地 忠美
【テーマコード(参考)】
2F063
3D131
【Fターム(参考)】
2F063AA16
2F063BA09
2F063BB01
2F063BC01
2F063BD11
2F063DA02
2F063DA05
2F063GA52
3D131AA39
3D131AA60
3D131BC42
3D131DA32
3D131LA05
3D131LA06
3D131LA20
3D131LA21
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】トレッド部の摩耗量を精度良く測定すること
【解決手段】
タイヤトレッド部の摩耗量取得方法は、トレッド部34の内部に配置された磁性体12と、磁性体12に起因した磁束密度が検知されるように配置された磁気センサ13と、加速度センサ21とを有するタイヤ10に関する。摩耗量取得方法には、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサ13の出力値と、予め用意された磁気センサ13の出力値とトレッド部34の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得することが含まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部と、
前記トレッド部の内部に配置された磁性体と、
前記磁性体に起因した磁束密度が検知されるように配置された磁気センサと、
加速度センサと
を有するタイヤに関し、
予め定められた時間継続して前記タイヤの加速度が予め定められた値以下であるときに出力された前記磁気センサの出力値と、予め用意された前記磁気センサの出力値と前記トレッド部の摩耗量との相関関係とに基づいて、前記トレッド部の摩耗量を取得すること
を含むタイヤトレッド部の摩耗量取得方法。
【請求項2】
温度と、予め用意された前記磁気センサの出力値と前記温度との相関関係とに基づいて、前記磁気センサの出力値を補正すること
をさらに含む、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記タイヤは、温度センサを有し、当該温度センサの出力値に基づいて前記磁気センサの出力値が補正される、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記磁気センサの出力値のうち特異データを除外すること、をさらに含む請求項1から3までの何れか一項に記載された方法。
【請求項5】
外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部と、
前記トレッド部の内部に配置された磁性体と、
前記磁性体に起因した磁束密度を検知するように配置された磁気センサと、
加速度センサと
を有するタイヤに関し、
前記加速度センサに基づいて予め定められた時間継続して前記タイヤの加速度が予め定められた値以下であるときの前記磁気センサの出力値と、予め用意された前記磁気センサの出力値と前記トレッド部の摩耗量との相関関係とに基づいて、前記トレッド部の摩耗量を取得するように構成された演算装置を備えた、タイヤトレッド部の摩耗量取得システム。
【請求項6】
前記タイヤは、制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、前記加速度センサの出力値に基づいて、少なくとも予め定められた時間継続して前記タイヤの加速度が予め定められた値以下であるときに、前記磁気センサの出力値をメモリに記録するように構成された、請求項5に記載されたシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記加速度センサに基づいて、予め定められた時間継続して前記タイヤの加速度が予め定められた値以下であるときに、前記メモリに記録されている前記磁気センサの出力値が前記演算装置に送信されるとともに、前記磁気センサの出力値が前記メモリから削除されるように構成された、請求項6に記載されたシステム。
【請求項8】
前記タイヤは、温度センサをさらに有し、
前記演算装置は、当該温度センサの出力値と、予め用意された前記磁気センサの出力値と温度との相関関係とに基づいて、前記磁気センサの出力値が補正されるように構成された、請求項5から7までの何れか一項に記載されたシステム。
【請求項9】
前記演算装置は、前記磁気センサの出力値のうち特異データを除外するように構成された、請求項5から8までの何れか一項に記載されたシステム。
【請求項10】
前記演算装置は、前記タイヤが装着された車両に設けられた車載器に設けられた、請求項5から9までの何れか一項に記載されたシステム。
【請求項11】
前記演算装置は、前記タイヤが装着された車両に通信ネットワークを通じて接続されるクラウドサーバに設けられた、請求項5から10までの何れか一項に記載されたシステム。
【請求項12】
外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部と、
前記トレッド部の予め定められた位置に配置され、磁力線が予め定められた方向となるように着磁された磁性体と、
前記磁性体に起因した磁束密度を検知するように配置された磁気センサと、
加速度センサと、
メモリと、
制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサの出力値に基づいてタイヤが停止しているか否かを判定する処理と、
前記タイヤが停止していると判定された場合に、前記磁気センサの出力値を前記メモリに記録する処理と
を実行するように構成されたタイヤ。
【請求項13】
前記加速度センサは、当該タイヤの外径方向の加速度を検知するように構成された、請求項12に記載されたタイヤ。
【請求項14】
前記制御装置は、前記磁気センサの出力値とともに前記加速度センサの出力値を前記メモリに記録するように構成された、請求項12または13に記載されたタイヤ。
【請求項15】
温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記磁気センサの出力値とともに前記温度センサの出力値を前記メモリに記録するように構成された、請求項12から14までの何れか一項に記載されたタイヤ。
【請求項16】
外部装置と通信可能な通信装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記メモリに記録された情報を外部装置に送信可能に構成された、請求項12から15までの何れか一項に記載されたタイヤ。
【請求項17】
電源をさらに備えた、請求項12から16までの何れか一項に記載されたタイヤ。
【請求項18】
発電素子と蓄電手段とをさらに備えた、請求項12から16までの何れか一項に記載されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド部の摩耗量取得方法および摩耗量取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-203831号公報には、空気入りタイヤの摩耗測定技術が開示されている。ここで開示されている空気入りタイヤでは、トレッド部に磁性体が内包されている。さらに、磁性体によって形成される磁場の磁束密度を検知する磁気センサが、磁性体に対応した径方向内包の位置に配置されている。磁性体は、硬磁性材料の粉粒体が高分子材料中に分散されて形成されると共に一方向に着磁されている。磁性体の着磁方向とタイヤ半径方向とが一致するようにトレッド部に内包されている。かかる空気入りタイヤによれば、摩耗により変化する磁場の強さが測定されることによって、タイヤの摩耗状態を把握することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トレッド部に磁性体が配置されたタイヤに関して、摩耗により変化する磁場の強さが測定されることによって、タイヤの摩耗状態を把握する技術では、トレッド部に配置された磁性体に起因する磁場の強さが、精度良く取得されることが好ましい。しかし、単純に磁性体に起因する磁場には、精度がばらつく場合があり、タイヤの摩耗状態を把握できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量取得方法は、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部と、トレッド部の内部に配置された磁性体と、磁性体に起因した磁束密度が検知されるように配置された磁気センサと、加速度センサとを有するタイヤに関する。摩耗量取得方法には、予め定められた時間継続してタイヤの加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサの出力値と、予め用意された磁気センサの出力値とトレッド部の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部の摩耗量を取得することが含まれている。かかる摩耗量取得方法によれば、トレッド部の摩耗量を精度良く取得することができる。
【0006】
タイヤトレッド部の摩耗量取得システムは、加速度センサに基づいて予め定められた時間継続してタイヤの加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサの出力値と、予め用意された磁気センサの出力値とトレッド部の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部の摩耗量を取得するように構成された演算装置を備えていてもよい。
【0007】
また、タイヤは、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部と、トレッド部の予め定められた位置に配置され、磁力線が予め定められた方向となるように着磁された磁性体と、磁性体に起因した磁束密度を検知するように配置された磁気センサと、加速度センサと、メモリと、制御装置とを備えていてもよい。制御装置は、加速度センサの出力値に基づいてタイヤが停止しているか否かを判定する処理と、タイヤが停止していると判定された場合に、磁気センサの出力値をメモリに記録する処理とを実行するように構成されていてもよい。ここで開示されるタイヤによれば、タイヤが停止しているときの磁気センサの出力値がメモリに記録されるので、タイヤが停止しているときの磁気センサの出力値に基づいてトレッド部の摩耗量を取得するのに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、タイヤトレッド部の摩耗量取得方法が適用されるタイヤ10の模式図である。
【
図2】
図2は、ここで開示される方法が適用された摩耗量取得システムの模式図である。
【
図3】
図3は特異データを除外する方法の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、特異データを除外する方法の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量取得システムのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量取得方法および摩耗量取得システムを図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、タイヤトレッド部の摩耗量取得方法が適用されるタイヤ10の模式図である。ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量取得方法は、
図1に示されているように、トレッド部34の内部に磁性体12が設けられたタイヤ10のタイヤトレッド部の摩耗量を取得する方法に関する。
【0011】
〈タイヤ10の構造〉
図1に示されているように、タイヤ10は、ホイールリム30に取り付けられる。タイヤ10は、ビード部31と、サイドウォール部32と、ショルダー部33と、トレッド部34とを備えている。ビード部31は、ホイールに組み合わせる部分で、ホイールリム30に全周に渡って装着される部位である。サイドウォール部32は、タイヤ10の側面で径方向に沿った部位である。サイドウォール部32は、タイヤ10が最もたわむ部分である。ショルダー部33は、サイドウォール部32とトレッド部34とを繋ぐ部分である。ショルダー部33は、路面と摩擦によって走行時に発生するトレッド部34や内部の熱を発散する役目がある。
【0012】
タイヤ10は、ゴム41の成形品である。ゴム41には、タイヤ10の骨格を形成するカーカス42やベルト43やビードワイヤー44などと称されるタイヤコードが内蔵されている。カーカス42には、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの高分子材料からなる樹脂性コード等が使用されうる。ベルト43には、例えば、高炭素鋼が束ねられたスチールワイヤーが用いられる。ビードワイヤー44には、例えば、高炭素鋼が束ねられたスチールワイヤーが用いられる。このようにカーカス42やベルト43やビードワイヤー44などのタイヤコードは、タイヤ10に所要の機械強度を付与する部材である。タイヤコードは、それぞれ所要の機械強度を有する材料で構成されている。
【0013】
カーカス42は、トレッド部34、タイヤ10の両側のショルダー部33、サイドウォール部32、ビード部31の内部において連続したコード層である。ベルト43は、トレッド部34においてカーカス42の外径側に配置され、周方向に連続したコード層である。ビードワイヤー44は、スチールワイヤーを束ねてゴムで被覆したリング状の補強部材である。ビードワイヤー44は、タイヤ10の両側のビード部31にそれぞれ配置されている。ビードワイヤー44には、カーカス42の端部が折り返されている。ビードワイヤー44は、カーカス42の端部を保持している。ビードワイヤー44は、カーカス42に掛かるテンションを受け止めてリムに固定する役目を担っている。このようにタイヤコードが内蔵されていることによって、荷重、衝撃、充填空気圧などに耐える機械的な強度が確保されている。また、タイヤ10の内周面、タイヤコードの内側には、インナーライナーと称されるゴム層が形成されており、気密性が確保されている。タイヤコードの内側には、オーバーレイヤーと称されるゴム層が形成されており、オーバーレイヤーの表面部(外側部)にトレッド部34が形成されている。
【0014】
なお、ここでは、いわゆるラジアル構造の空気入りタイヤが例示されているが、タイヤは、特に言及されない限りにおいて、ラジアル構造に限定されない。ここで開示されるタイヤは、上述のようなトレッド部の摩耗を検知することができる。タイヤは、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有するトレッド部を備えているとよい。かかる観点において、タイヤの構造は、特段言及されない。タイヤは、いわゆるバイアス構造でもよい。また、タイヤはチューブを有するチューブタイヤでもよい。タイヤは、トレッド部34だけを張り替えることができるリドレッドタイヤでもよい。
【0015】
〈トレッド部34〉
トレッド部34は、直接路面と接する部分であり、タイヤ10の外周面に設けられており、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有している。トレッド部34は、所要の厚さを有しており、予め定められたパターンの溝34aが形成されている。かかる溝34aは、トレッドパターンとも称される。トレッド部34は、車両走行時に路面との摩擦によって徐々に摩耗していく部位である。トレッド部34が摩耗するとトレッドパターンを構成する溝34aが浅くなる。トレッド部34が予め定められた厚さまで摩耗すると、タイヤ10を交換する時期になる。
【0016】
トレッド部34には、周方向において予め定められた複数箇所にスリップサイン34bが設けられている。スリップサイン34bとして、トレッド部34の溝34aの底に所定の高さで盛り上がった部分が設けられている。タイヤが新品状態の時、トレッド部34の溝34aは深い。このため、当該盛り上がった部分は、ユーザーからは見えにくい。トレッド部34の摩耗が進み、タイヤ10の交換時期が近くなり、トレッド部34の溝34aが浅くなると、トレッド部34の溝34aに当該盛り上がった部分がユーザーから見えやすくなる。スリップサイン34bが見えてきたら、タイヤ10の交換時期が近いことを示す。しかし、トレッド部34の溝34aがどの程度減ってきているかは、直接的には分からない。トレッド部34の溝34aがどの程度減ってきているかは、溝34aの深さを実測することなどによって把握されうる。
【0017】
当該方法が適用されるタイヤ10は、
図1に示されているように、磁性体12と、磁気センサ13とを有する。タイヤトレッド部の摩耗量取得方法では、タイヤトレッド部の摩耗量の推定値を取得できる。
【0018】
〈磁性体12〉
磁性体12は、トレッド部34の予め定められた位置に配置されている。この実施形態では、トレッド部34の凸部の予め定められた位置に埋め込まれている。
図1に示された形態では、磁性体12は、トレッド部34の幅方向の略中央に配置されている。磁性体12は、例えば、硬磁性材料からなる粉粒体(磁性粉)が高分子材料中に分散されているとよい。そして、分散された磁性粉は、予め定められた方向に着磁されているとよい。
【0019】
トレッド部34に磁性体12を設ける方法としては、例えば、以下の方法が採用されうる。トレッド部34の凸部の予め定められた位置に、磁性体12を埋め込むための穴を形成しておく。別途、当該穴に合う形状に、硬磁性材料からなる粉粒体(磁性粉)が高分子材料中に分散され成形された磁性体12を成形する。成形された磁性体12を予め定められた方向に着磁する。そして、トレッド部34の凸部に形成された穴に、着磁された磁性体12を装着し接着する。
【0020】
トレッド部34に磁性体12を設ける他の方法としては、例えば、予め定められた方向に着磁した磁性体12を用意する。用意された磁性体12をトレッド部34の凸部に形成された穴に合わせて成形する。トレッド部34の凸部に形成された穴に成形された磁性体12を装着し接着する。このように、着磁は、磁性体12がトレッド部34に埋設される前に施されてもよく、磁性体12がトレッド部34に埋設した後に施されてもよい。トレッド部34に磁性体12を設ける方法を例示したが、ここで例示される方法に限定されない。磁性体12の着時方法や磁性粉の材料については、種々の方法や材料が採用されうる。
【0021】
〈磁性粉〉
例えば、磁性粉としては、着磁後の保磁力が大きく容易に減磁することがないという観点から、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄を主成分とするアルニコ系磁石、酸化鉄を主成分とするフェライト系磁石、サマリウム、鉄を主成分とするサマリウム系磁石、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とするネオジム系磁石作製用の磁性粉を好ましく挙げることができる。
【0022】
そして、具体的なアルニコ系磁石としては、Al-Ni-Co-Fe-Cuなどが、フェライト系磁石としては、Fe2O3-SrOなどが、サマリウム系磁石としては、Sm-Co-Fe-Cu、Sm-Fe-Nなどが、ネオジム系磁石としては、Nd-Fe-B-Dy、Nd-Fe-Nb-B、Nd-Pr-Fe-Nb-Bなどが挙げられる。
【0023】
また、上記した各磁性粉は2種以上を選択して用いてもよく、例えば、フェライト系の磁性粉とサマリウム系の磁性粉との混合、サマリウム系の磁性粉とネオジム系の磁性粉との混合により、それぞれ、サマリウム・フェライト系の磁性体、サマリウム・ネオジム系の磁性体を形成させることができる。
【0024】
磁性粉の粒径としては、磁性体12の形成に際しての高分子材料への分散性と、金属粒子であることに伴う摩耗性を考慮すると、400μm以下であることが好ましく、250μm以下であるとより好ましい。
【0025】
〈磁性体12に用いられる高分子材料〉
磁性体12に用いられる高分子材料としては、タイヤとしての特性を十分に発揮させるという観点から、硬化した状態において弾性を発揮することができる樹脂材料またはゴム材料が好ましく、また、磁性粉を分散させて成る磁性体がトレッドゴムと同じように摩耗して安定した乗り心地を提供するという観点から、硬化後はトレッドゴム組成物と同等の摩耗特性を発揮することができる樹脂材料またはゴム材料が好ましい。
【0026】
上記した高分子材料の内でも、磁性体12が設けられる箇所がトレッド部であることを考慮すると、磁性体12に用いられる高分子材料には、トレッド部34に用いられるトレッドゴム組成物と同じ配合のゴム材料が用いられてもよい。例えば、磁性体12は、トレッド部34に用いられるトレッドゴム組成物と同じ配合のゴム材料に磁性粉を分散させてもよい。また、例えば、トレッドゴム組成物の配合における一部の充填材を磁性粉に置換してもよい。磁性体12中に占める磁性粉の配合量としては、10質量%~70質量%が好ましく、より好ましくは30質量%~70質量%であり、さらに好ましくは40質量%~70質量%である。
【0027】
〈磁性体12の磁性〉
磁性体12としては、地磁気に影響されず確実に磁性体の磁束密度の測定ができるという観点から磁気センサ13が配置されている測定位置で0.05mT以上の磁束密度を有するように構成されていることが好ましい。また、タイヤ内部に設けられているスチールコードによる帯磁や減衰の影響下でも磁性体12の磁束密度が磁気センサ13によって測定できるとの観点から、磁気センサ13の測定位置で0.5mT以上の磁束密度を有するように構成されていることがより好ましい。このような観点を考慮して、磁性体12の表面では、磁性体12は1mT以上の磁束密度を有するように構成されていることが好ましい。
【0028】
一方、磁性体12の磁力によって車載される他の電子機器などに悪影響を与えないようにするという観点から、磁性体の表面磁束密度は、例えば、大凡600mT以下であることが好ましい。道路走行時に路面に落ちている釘などの金属片を吸着しないようにするという観点から、トレッド部34の表面で測定される磁性体12の磁束密度は、例えば、大凡60mT以下であるとより好ましい。磁性体12の磁束密度は、テスラメーターで測定されうる。例えば、磁性体12の表面磁束密度は、着磁された磁性体12の表面にテスラメーターを直接接触させることにより測定される値であってもよい。磁性体12への着磁には、公知の着磁装置、例えば、コンデンサー式着磁電源装置、着磁コイル、着磁ヨークなどが用いられうる。
【0029】
〈磁気センサ13〉
磁気センサ13は、磁性体12よりも内径側に配置されている。この実施形態では、磁気センサ13は、磁性体12がトレッド部34に埋め込まれた部位の内径側において、タイヤ10の内周面に配置されている。磁性体12は、周方向の予め定められた位置においてトレッド部34の内部に配置されている。磁気センサ13は、磁性体12に起因した磁束密度が検知されるように配置されている。
【0030】
磁気センサ13は、磁気センサが配置された位置での磁力線の向きを検知するセンサが用いられうる。磁気センサ13に用いられるセンサ素子には、磁場の向きと強さが検知できるセンサ素子が用いられうる。かかるセンサ素子には、例えば、SMR素子、AMR素子、GMR素子、TMR素子などの磁気抵抗素子(MR: Magneto Resistive)が用いられうる。また、磁気センサに用いられるセンサ素子には、ホール素子が用いられてもよい。また、磁気センサに用いられるセンサ素子には、磁気インピーダンス素子が用いられてもよい。なお、磁気センサ13には、ここで挙げられるセンサ素子の他、磁場の強さを検知しうる種々のセンサ素子が採用されうる。磁気センサ13における磁束密度の有効測定レンジは、例えば、1mT以上であるとよい。
【0031】
SMR素子は、半導体磁気抵抗素子(SMR:Semiconductor Magneto Resistive)である。SMR素子は、ローレンツ力によって生じた抵抗値の変化を利用したセンサである。
【0032】
AMR素子は、異方性磁気抵抗素子(AMR: Anisotropic-Magneto-Resistive)である。AMR素子は、例えば、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi,Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されている。AMR素子は、パターニングすることにより長手方向に磁壁(磁区と磁区の境界)が揃い、形状異方性を示す。AMR素子は、強磁性薄膜金属に電流を流し、磁界が電流方向に対して垂直方向に印加された場合に、磁界の強さに応じて抵抗値が下がる特性を有している。
【0033】
GMR素子は、巨大磁気抵抗効果を利用した巨大磁気抵抗素子(GMR: Giant Magneto Resistive)である。GMR素子は、強磁性体(ピン層)-非磁性体金属-強磁性体(フリー層)の積層膜で、ピン層とフリー層の磁化が反平行の場合と、ピン層とフリー層の磁化の向きを揃えた場合とで、電子の散乱度合いが変化し抵抗値が変化する。
【0034】
TMR素子は、トンネル磁気抵抗素子(TMR:Tunnel Magneto Resistive)である。TMR素子は、強磁性体(ピン層)-絶縁体-強磁性体(フリー層)の積層膜で、ピン層とフリー層の磁化が反平行の場合と、ピン層とフリー層の磁化の向きを揃えた場合とで、トンネル効果により絶縁体を通過する電子の割合が変化し抵抗値が変化する。
【0035】
ホール素子は、ホール効果を用いて磁気を検出する素子である。ホール素子によれば、半導体薄膜などに電流を流すと、ホール効果によって磁束密度や向きに応じた電圧が出力される。
【0036】
磁気インピーダンス素子(MI:magneto-impedance element)は、磁気インピーダンス効果を利用して外部磁界を検出する素子である。
【0037】
磁気センサ13には、1つのセンサ素子が含まれているものでもよいし、複数のセンサ素子が含まれているものでもよい。例えば、磁気センサ13を構成する1つのセンサパッケージの中に2つ以上のセンサ素子が配置されていてもよい。
【0038】
例えば、磁気センサ13に用いられるセンサ素子の感度方向に指向性がある場合、直交3軸方向にセンサの感度方向が向けられた3つのセンサ素子が1つのセンサパッケージに含められているとよい。このことによって、磁気センサ13が配置された位置での、磁力密度の大きさと向きを求めうる磁気センサ13を得ることができる。
【0039】
このように磁気センサ13を構成する、1つのセンサパッケージには、複数のセンサ素子が組み込まれていてもよい。また、1つのセンサパッケージに組み込まれるセンサ素子には、同じ種類の素子が用いられてもよい。また、1つのセンサパッケージに組み込まれるセンサ素子には、ホール素子と、磁気抵抗素子など、異なる種類の素子が組み合わされてもよい。磁気センサは、いろいろな機能を備えた磁気センサが市場において入手可能であり、磁気センサ13として適当な機能を奏する磁気センサが適宜に採用されるとよい。磁気センサ13は、トレッド部34の内径側に配置されているとよい。磁気センサ13は、例えば、トレッド部34に磁性体12が配置された位置のちょうど内側、または、その近くに配置されているとよい。なお、磁気センサ13は、磁性体12に起因する磁束密度の大きさを検知できるとよく、トレッド部34の内径側に限定されず、種々配置されうる。例えば、磁気センサ13は、タイヤ10のサイドウォール部32やショルダー部33の内側など、タイヤ10の内部の任意の位置に配置されうる。
【0040】
本発明者は、かかるタイヤ10に関し、磁気センサ13によって磁性体12に起因した磁束密度を検知し、磁束密度に基づいてトレッド部34の摩耗量を取得することを検討している。本発明者の検討によれば、かかるタイヤ10では、磁気センサ13によって、磁性体12に起因した磁束密度が検知される。磁性体12は、タイヤのトレッド部34の内部に配置されている。トレッド部34が摩耗すると、磁性体12も摩耗する。磁性体12に起因した磁束密度は、トレッド部34が摩耗するにつれて弱くなる。このため、理論上、磁気センサ13によって検知された磁束密度に基づいてトレッド部34の摩耗量を取得することができる。しかし、本発明者の知見では、実際には、理論通りに、磁気センサ13によって検知された磁束密度に基づいてトレッド部34の摩耗量が取得できない場合がある。
【0041】
本発明者の検討によって得られた知見では、例えば、走行時や停車後すぐは、外乱の影響が大きく、磁気センサ13によって検知される磁束密度が安定しない傾向がある。また、本発明者の検討によって得られた知見では、停車時でも、磁気センサ13によって検知される磁束密度が、タイヤトレッド部の摩耗量を反映させない場合があった。さらに、走行距離に応じてタイヤ10のトレッド部34が徐々に摩耗されていくが、磁性体12も徐々に摩耗される。このため、磁性体12に起因して磁気センサ13で検知される磁束密度も弱くなる。このため、タイヤ10のトレッド部34が摩耗されればされるほど、外乱の影響が大きくなり、磁気センサ13の出力値における外乱の影響が大きくなる。本発明者の検討では、磁気センサ13の出力値に影響を及ぼす主な外乱には、地磁気が挙げられる。また、磁性体12が接地している場合には、適切な値が得られず、異常値が出力される場合がある。ここでは、本発明者のこのような独自の検討を基に、より精度良くタイヤトレッド部の摩耗量を取得可能な方法を提案する。
【0042】
ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量を取得する方法は、加速度センサをさらに備えたタイヤに適用される。そして、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサ13の出力値と、予め用意された磁気センサ13の出力値とトレッド部34の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得することを含んでいる。つまり、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサ13の出力値に基づいて、トレッド部34の摩耗量が取得される。このため、走行時や停車後すぐに取得された磁気センサ13の出力値は除外される。このため、トレッド部34の摩耗量が精度良く得られる。
【0043】
また、本発明者の知見によれば、磁気センサ13の出力値は、温度によって影響を受ける。また、磁性体12から発せられる磁力(磁束密度)は、可逆変化する。特に、車両に装着されるタイヤは、夏の昼間では、路面温度が60度近くになる。また、寒冷地における冬の夜間では、-15℃程度になる場合もある。このように、車両に装着されたタイヤの温度は、夏場と冬場、さらに昼間と夜間などで温度が大きく変動する。このため、磁気センサ13や磁性体12が設けられるタイヤの温度は、磁気センサ13の出力値に影響を及ぼす場合がある。ここで開示されるトレッド部34の摩耗量を取得する方法では、温度と、予め用意された磁気センサ13の出力値と温度との相関関係とに基づいて、磁気センサ13の出力値を補正することがさらに含まれていてもよい。磁気センサ13の出力値が温度を基に補正されることによって、トレッド部34の摩耗量がより精度良く得られる。
【0044】
ここで、温度は、例えば、磁気センサ13や磁性体12が設けられるタイヤで測定される温度でありうる。温度は、例えば、磁気センサ13や磁性体12が設けられた位置や、その近傍で測定される温度としてもよい。タイヤで測定される温度と、車両の予め定められた位置で測定される温度とに相関関係がある場合など、温度は、車両の予め定められた位置で測定される温度としてもよい。この場合、好適な例として、タイヤ10は、温度センサ22を有していてもよい。そして、温度センサ22の出力値に基づいて磁気センサ13の出力値が補正されるように構成されているとよい。また、トレッド部34の内部に磁性体12が配置されたタイヤ10に関して、磁気センサ13の出力値と温度との相関関係は、予め試験を通じて参照データとして取得されているとよい。
【0045】
加速度センサ21や温度センサ22は、適宜に磁気センサ13が組み込まれるセンサモジュールに組み込まれていてもよい。加速度センサ21や温度センサ22が、適宜に磁気センサ13が組み込まれるセンサモジュールに組み込まれていることによって、加速度センサ21と、温度センサ22と、磁性体12と、磁気センサ13との位置関係が一定になる。このため、例えば、磁気センサ13の出力値と温度との相関関係について信頼性が高くなる。
【0046】
さらに、磁気センサ13の出力値のうち特異データを除外するとよい。本発明者の知見によれば、磁気センサ13の出力値には、特異的な値が出力される場合がある。磁気センサ13の出力値のうち特異データを除外することによって、トレッド部34の摩耗量がより精度良く得られる。例えば、四分位偏差を適用して、中央値から大きく外れたデータを特異データとして除外してもよい。また、他の手法として、例えば、磁気センサ13の出力値の平均値から標準偏差の2倍以上および平均値から標準偏差の2倍以下の出力値が、特異データとされるとよい。この場合、磁気センサ13の出力値は、時刻情報とともに記録されているとよい。そして、時刻情報とともに記録された磁気センサ13の出力値のうち、予め定められた時間範囲の出力値の中で平均値と標準偏差とが求められるとよい。このように、磁気センサ13の出力値のうち中央値から大きく外れたデータを特異データとして除外することによって、トレッド部34の摩耗量がより精度良く得られうる。例えば、磁性体12が接地している場合などに出力されうる異常値などが除外されうる。
【0047】
図2は、ここで開示される方法が適用された摩耗量取得システムの模式図である。
図2では、タイヤ10が車両200に装着された形態が図示されている。
【0048】
タイヤ10は、
図1および
図2に示されているように、トレッド部34と、磁性体12と、磁気センサ13を備えているとよい。
図2に示された形態では、タイヤ10は、加速度センサ21と、温度センサ22と、圧力センサ23と、タイマ24と、メモリ25と、通信装置26とを備えている。
【0049】
〈加速度センサ21〉
加速度センサ21は、タイヤ10に配置され、タイヤ10の加速度を検知するものである。加速度センサ21には、マイコン50に組み込める加速度センサが適用されうる。加速度センサ21としては、1軸加速度センサ1個がタイヤ10の外径方向の加速度を検知するように設けられていてもよい。また、1軸加速度センサ2個が、タイヤ10の外径方向と周方向の加速度を検知するように設けられていてもよい。また、2軸加速度センサが、外径方向と周方向の加速度を検知するように設けられていてもよい。また、1軸加速度センサ3個をタイヤ10の外径方向と、周方向と、幅方向との加速度が検知するように設けられていてもよい。タイヤ10の外径方向と周方向と幅方向の3方向の加速度を検知する構成として、加速度センサ21は、1軸加速度センサ1個と2軸加速度センサとで構成してもよい。また、加速度センサ21は、3軸加速度センサで構成してもよい。
【0050】
〈温度センサ22〉
温度センサ22は、磁気センサ13の温度を検知するセンサである。この実施形態では、温度センサ22は、磁気センサ13の近傍に取り付けられている。温度センサ22には、マイコン50に組み込めるIC温度センサを適用することができる。かかる温度センサ22によれば、磁気センサ13の温度への影響を考慮することができる。なお、温度センサ22は、磁気センサ13の温度を大凡検知できるものであればよい。温度センサ22には、タイヤ10の内部に配置された温度センサが適宜に採用しうる。
【0051】
〈圧力センサ23,タイマ24〉
圧力センサ23は、タイヤ10の内圧を検知するセンサである。圧力センサ23は、マイコン50に組み込まれうる。タイヤ10の内圧を検知する圧力センサ23を備えていることによって、タイヤ10の空気圧をモニタリングすることが可能になる。タイマ24は、マイコン50に組み込まれたタイマでありうる。
【0052】
〈メモリ25〉
メモリ25は、磁気センサ13の出力値を記録するものであるとよい。
図1に示された形態では、タイヤ10は、演算装置としてのマイコン50を備えている。メモリ25は、マイコン50に組み込まれていてもよい。
【0053】
〈通信装置26〉
通信装置26は、マイコン50に記録されたデータをタイヤ10の外部の外部装置に送信する装置である。通信装置26は、例えば、無線通信可能な通信装置が採用されうる。通信装置26は、いわゆるBLE通信規格(Bluetooth Low Energy)のような近距離無線通信の規格に準拠した通信規格が採用されているとよい。通信装置26は、マイコン50に組み込まれうる。
【0054】
〈電源27〉
電源27は、ボタン電池のような電池でもよい。また、電源27は、発電素子と蓄電素子とで構成されていてもよい。発電素子は、タイヤ10に生じる振動を基に発電する素子が用いられてもよい。また、発電素子に合わせて蓄電素子が設けられていてもよい。
【0055】
磁気センサ13、加速度センサ21、温度センサ22、圧力センサ23、タイマ24、通信装置26、電源27、マイコン50などの少なくとも一部は、一つの装置としてユニット化されてもよい。ユニット化された装置は、例えば、いわゆるMEMSデバイス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)として構成されてもよい。また、ユニット化された装置は、タイヤ10の内側面に装着されていてもよい。タイヤ10は、このようにメモリ25と、通信装置26とを備えていてもよい。
【0056】
(←車載器80との連携)
例えば、
図1および
図2に示された形態では、車両200には、車載器80が搭載されている。タイヤ10に搭載されたマイコン50は、車載器80と通信可能に接続される。車載器80は、タイヤトレッド部の摩耗量取得用に搭載されるマイコンで構成されていてもよい。また、車載器80は、車両200に搭載されるECUで構成されていてもよい。車載器80は、車両200のECUとの連携において、車両200から情報を取得できるものでもよい。
【0057】
車載器80は、さらにインターネットのような通信ネットワークNWを通じてクラウドサーバ400に通信可能に接続されるように構成されていてもよい。車載器80は、例えば、車両200に搭載された他のECU(ECU:electronic control unit)との連携において、インターネットを通じてクラウドサーバ400に接続されるとよい。このように車両200は、適宜にインターネットを通じてクラウドサーバ400に通信可能に接続されるとよい。
【0058】
ここで提案されるタイヤトレッド部の摩耗量取得システム100は、
図1に示されているように、トレッド部34の内部に配置された磁性体12と、磁気センサ13と、加速度センサ21とを有するタイヤ10に関する。摩耗量取得システム100は、
図2に示されているように、演算装置60を備えている。演算装置60は、加速度センサ21に基づいて、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値と、予め用意された磁気センサ13の出力値とトレッド部34の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得するように構成されている。これによって、予め定められた時間継続して当該タイヤ10が停止している時に出力された磁気センサ13の出力値に基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得することができる。
【0059】
本発明者の知見によれば、走行中に得られる磁気センサ13の出力値は、バラツキが大きくなる傾向がある。このため、走行中に得られる磁気センサ13の出力値を基にトレッド部34の摩耗量を得ようとすると、トレッド部34の摩耗量を精度良く取得(測定、計測、推定など)できない。予め定められた時間継続してタイヤ10が停止している時に出力された磁気センサ13の出力値を基にトレッド部34の摩耗量を取得することによって、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度を向上させることができる。
【0060】
この実施形態では、タイヤ10は、制御装置としてのマイコン50を備えている。マイコン50は、加速度センサ21の出力値に基づいて、少なくとも予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに、磁気センサ13の出力値をメモリ25に記録するように構成されていてもよい。例えば、加速度センサ21に基づいて、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値に基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得するように構成されている場合に、必要な磁気センサ13の出力値がメモリ25に記録される。なお、
図1に示された形態では、制御装置としてのマイコン50が、メモリ25を備えた形態が例示されている。制御装置としてのマイコン50は、メモリ25を使わずにタイヤ10が停止していると判断されたときに、磁気センサ13の出力値からトレッド部34の摩耗量を推定するように構成されていてもよい。したがって、マイコン50は、磁気センサ13の出力値を記憶するためのメモリを備えていなくてもよい。
【0061】
制御装置としてのマイコン50は、加速度センサ21の出力値に基づいて、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに、メモリ25に記録されている磁気センサ13の出力値が演算装置60に送信されるとともに、磁気センサ13の出力値がメモリ25から削除されるように構成されていてもよい。この場合、必要とされるメモリ25の容量が小さく抑えられる。なお、メモリ25は、磁気センサ13の出力値を予め定められた数だけ記憶できるように構成されていてもよい。この場合、メモリ25は、磁気センサ13の出力値に関し、新たな出力値が入力されるたびに、古い出力値が削除されるように構成されていてもよい。換言すると、メモリ25は、磁気センサ13の出力値が一つずつ上書きされるように構成されていてもよい。
【0062】
タイヤ10は、温度センサ22を有していてもよい。演算装置60は、当該温度センサ22の出力値と、予め用意された磁気センサ13の出力値と温度との相関関係とに基づいて、磁気センサ13の出力値が補正されるように構成されていてもよい。これにより、磁気センサ13の出力値が適切に補正されるので、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度が向上する。
【0063】
演算装置60は、磁気センサ13の出力値のうち特異データを除外するように構成されていてもよい。これにより、磁気センサ13の出力値のうち特異データが除外されるので、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度が向上する。磁気センサ13の出力値が適切に補正されるので、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度が向上する。
【0064】
図3は特異データを除外する方法の一例を示す模式図である。
図3では、横軸に磁気センサ13の出力値として磁束密度を取り、縦軸に頻度が取られている。データを大きさ順に並べ、4等分する値、25%(Q1: Quartile 1)、50%(Q2: Quartile 2)(=中央値)、75%(Q3: Quartile 3)を算出する。そして、25%(Q1: Quartile 1)から75%(Q3: Quartile 3)の四分位範囲IQR(Interquartile range)=Q1-Q3を得る。さらに、Q1+1.5×IQRからQ3+1.5×IQRまでの磁気センサ13の出力値を母集団データとして採用し、Q1+1.5×IQRからQ3+1.5×IQRまでの範囲から外れた外れ値Dx1~Dx3を、特異データとして除外する。これによって、磁気センサ13の出力値のうち平均値から大きく離れた値を除外することができる。これによって、磁気センサ13の出力値のばらつきが抑えられる。そして、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度が向上する。
【0065】
図4は、特異データを除外する方法の一例を示す模式図である。
図4に示されているように、磁気センサ13の出力値の平均値から、±2σの範囲外のデータを特異データとして除外してもよい。この場合も、磁気センサ13の出力値のうち平均値から大きく離れた値を除外することができる。これによって、磁気センサ13の出力値のばらつきが抑えられる。そして、取得されるトレッド部34の摩耗量の精度が向上する。このように、磁気センサ13の出力値のうち平均値から大きく離れたデータを特異データとして除外する方法には、統計学上の種々の解析方法が採用されうる。
【0066】
なお、ここでの開示では、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値に基づいて、トレッド部34の摩耗量が取得される。この場合、磁気センサ13の出力値のデータから、まず特異データを除外し、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値を抽出し、さらに抽出された磁気センサ13の出力値を温度補正してもよい。また、特異データを除外する処理と、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値を抽出する処理と、温度補正する処理の手順は、適宜に入れ替えられうる。例えば、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値を抽出する処理の後で、特異データを除外し、さらに温度補正してもよい。また、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときの磁気センサ13の出力値を抽出する処理の後で、温度補正した上で、特異データを除外してもよい。
【0067】
演算装置60は、
図1および
図2に示されているように、タイヤ10が装着された車両200に設けられた車載器80に設けられていてもよい。また、演算装置60は、タイヤ10が装着された車両200に通信ネットワークNWを通じて接続されるクラウドサーバ400に設けられていてもよい。このように、タイヤ10の外部に演算装置60が設けられていることによって、トレッド部34の摩耗量の算出など、演算負荷の高い計算をより高性能な演算装置で演算することができる。
【0068】
図1および
図2に示された形態では、演算装置60は、車載器80に組み込まれている。例えば、車載器80に組み込まれたマイコンに、演算装置60としての機能が組み込まれているとよい。この場合、車載器80は、算出されたタイヤ10のトレッド部34の摩耗量を適宜にドライバーに通知するように構成されているとよい。
【0069】
なお、演算装置60は、車載器80に組み込まれた形態に限定されない。例えば、クラウドサーバ400に、演算装置60の機能が組み込まれていてもよい。また、タイヤ10に組み込まれたマイコン50に演算装置60の機能が組み込まれていてもよい。この場合、クラウドサーバ400は、算出されたタイヤ10のトレッド部34の摩耗量を、予め定められたドライバーの携帯端末や当該車両200を整備する整備士の端末などに通知するように構成されていてもよい。
【0070】
次に、ここで開示されるタイヤ10は、
図1に示されているように、トレッド部34と、磁性体12と、磁気センサ13と、加速度センサ21と、メモリ25と、制御装置としてのマイコン50とを備えている。磁性体12は、トレッド部34の予め定められた位置に配置され、磁力線が予め定められた方向となるように着磁されている。磁気センサ13は、磁性体12に起因した磁束密度を検知するように配置されている。加速度センサ21は、タイヤ10の加速度を検知するように構成されたセンサである。この実施形態では、加速度センサ21は、タイヤ10の内側面に配置されている。メモリ25は、磁気センサ13の出力値を記録する記憶装置である。制御装置としてのマイコン50は、加速度センサ21の出力値に基づいてタイヤ10が停止しているか否かを判定する処理と、タイヤ10が停止していると判定された場合に、磁気センサ13の出力値をメモリ25に記録する処理とを実行するように構成されている。この場合、タイヤ10は、加速度センサ21の出力値に基づいてタイヤ10が停止していると判定された場合に、磁気センサ13の出力値をメモリ25に記録する。このため、このタイヤ10は、加速度センサ21の出力値に基づいてタイヤ10が停止していると判定された場合に取得された磁気センサ13の出力値を基に、トレッド部34の摩耗量を算出するのに好適である。
【0071】
加速度センサ21は、タイヤ10の外径方向の加速度を検知するように構成されていてもよい。この場合、タイヤ10の遠心力に起因した加速度を検知できる。このため、加速度センサ21の出力値に基づいてタイヤ10が停止しているか否かの判定を精度良く行える。なお、加速度センサ21は、タイヤ10の外径方向の加速度を検知するだけでなく、周方向や幅方向の加速度を検知するセンサが併用されていてもよい。
【0072】
制御装置としてのマイコン50は、磁気センサ13の出力値とともに加速度センサ21の出力値をメモリ25に記録するように構成されていてもよい。
【0073】
タイヤ10は、
図1に示されているように、温度センサ22をさらに備えていてもよい。制御装置としてのマイコン50は、磁気センサ13の出力値とともに温度センサ22の出力値をメモリ25に記録するように構成されていてもよい。この場合、タイヤ10によれば、磁気センサ13の出力値を、温度センサ22の出力値を基に補正することができる。このため、取得されるトレッド部34の摩耗量を精度よく得ることができる。
【0074】
タイヤ10は、車載器80のような外部装置と通信可能な通信装置26をさらに備えていてもよい。制御装置としてのマイコン50は、メモリ25に記録された情報を外部装置に送信可能に構成されていてもよい。この場合、タイヤ10のトレッド部34の摩耗量を車載器80のような外部装置で演算することができる。なお、外部装置には、車載器80以外にクラウドサーバ400(
図2参照)などが用いられてもよい。
【0075】
例えば、通信装置26は、車載器80と通信する。車載器80は、通信装置26に磁気センサ13の出力値を転送することを適宜に要求する信号を通信装置26に発する。通信装置26は、車載器80から当該信号を受信した場合に、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を、車載器80に転送するように構成されていてもよい。また、車載器80は、例えば、車両200のイグニションスイッチがONになったときに、タイヤ10の通信装置26に磁気センサ13の出力値を車載器80に転送するように要求する信号を通信装置26に発信するように構成されていてもよい。また、マイコン50は、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を、予めプログラムされたタイミングで車載器80に転送するように構成されていてもよい。
【0076】
図5は、ここで開示されるタイヤトレッド部の摩耗量取得システムのフローチャートの一例である。
【0077】
図5に示されたフローチャートでは、車両200のイグニションスイッチがOFFで停止した状態で開始されている。このとき、マイコン50は、休止している(S11)。なお、マイコン50は、休止中も予め定められた周期で、磁気センサ13の出力値を記憶する(S12)。例えば、マイコン50は、内蔵されたタイマ24を基に、30分周期で、磁気センサ13の出力値を記憶するように構成されているとよい。例えば、
図5のフローチャート中のIGは、車両200のイグニションスイッチを意味する。
【0078】
車両200が一定期間停止しているときは、タイヤ10のマイコン50は、休止している。マイコン50は、休止中も予め定められた周期で、加速度センサ21の出力値を評価する(S12)。例えば、加速度センサ21の出力値が予め定められた値よりも高いか否かが評価されるとよい。これによって、タイヤ10が停止しているか否かが確認できる。例えば、重力加速度Gに対する相対的な評価によって加速度センサ21の出力値が評価されるとよい。そして、タイヤ10が動いていると判定される場合に、マイコン50が起動するように構成されている(S13)。
【0079】
また、車両200のイグニションスイッチがONになると、車載器80がONになる(S51)。そして、車載器80がONになると、マイコン50との通信機器も起動する(S52)。この場合、車載器80が無線通信信号を発信し、車載器80とマイコン50との通信が可能になる。図示は省略するが、車載器80とマイコン50との通信が可能になるとマイコン50が起動するように構成されていてもよい。例えば、車載器80からマイコン50を起動させる予め定められた信号が発信され、当該信号を受信するとマイコン50が起動するように構成されていてもよい。
【0080】
マイコン50は、起動すると、例えば、車両200が走行しているか否かを判定する(S14)。この実施形態では、マイコン50は、加速度センサ21の出力値に基づいてタイヤ10が動いているか否かを判定する。例えば、マイコン50は、1秒程度の短い周期で、タイヤ10の加速度センサ21の出力値を観察する。加速度センサ21の出力値が予め定められた値よりも大きく、それが予め定められた時間(例えば、10秒間程度)継続しているか否かを判定する。予め定められた時間(例えば、10秒間程度)、加速度センサ21の出力値が予め定められた値よりも大きい状態が継続している場合には、タイヤ10が動いている、換言すると、走行していると判定される。
【0081】
この実施形態では、車両200が走行していると判定された場合で、かつ、イグニションスイッチがONである場合には、タイヤ10のメモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値が、車載器80に転送される(S15)。例えば、マイコン50が休止中に30分毎に記録していた、磁気センサ13の出力値のデータが車載器80に転送される。なお、タイヤ10のメモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を、車載器80に転送する処理は、マイコン50が起動して車載器80の通信可能な状態になった後でされてもよい。マイコン50は、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を、車載器80に転送した後、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を全て消去してもよい。また、マイコン50は、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値を、車載器80に転送した後、メモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値が古いものから順に上書きされるように構成されてもよい。
【0082】
〈データ取得1:S16〉
次に、マイコン50は、より短い周期で、タイヤ10からデータを取得する(S16)。ここで、取得されるデータは、磁束密度M、内圧P、温度T、加速度Gなどである。磁束密度Mは、磁気センサ13の出力値として得られる。内圧Pは、圧力センサ23の出力値として得られる。温度Tは、温度センサ22の出力値として得られる。加速度Gは、加速度センサ21の出力値として得られる。ここでのデータ取得は、例えば、1分毎に実施されるとよい。また、この実施形態では、走行中は、タイヤ10のメモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値が、適宜に車載器80に転送される(S16)。例えば、走行中は、タイヤ10のメモリ25に記憶された磁気センサ13の出力値は、1分毎に車載器80に転送されてもよい。これによって、磁気センサ13の出力値に限らず、温度や内圧など、走行中のタイヤ10のデータが車載器80において逐次取得できる。これによって、車載器80を通じて走行中のタイヤ10の状態を確認できるようになる。
【0083】
また、マイコン50は、データ取得1の処理(S16)において、都度、タイヤ10が停止しているか否かを判定する(S18)。マイコン50は、この判定(S18)において、加速度センサ21の出力値に基づいて、タイヤ10の加速度が、タイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに、データ取得2の処理(S19)に移行する。例えば、この実施形態では、マイコン50は、走行中に1分程度の周期で、タイヤ10からデータを取得するデータ取得1の処理(S16)を実施する。マイコン50は、その都度、タイヤ10の加速度センサ21の出力値を観察する(S18)。そして、加速度センサ21の出力値が予め定められた値以下でない場合(No)には、タイヤ10が動いていると判定される。このとき、マイコン50は、走行中のデータ取得1の処理(S16)を継続する。これに対して、加速度センサ21の出力値が予め定められた値以下である(Yes)と、タイヤ10が停止していると判定される。その場合、マイコン50は、停止中のデータ取得2の処理(S19)に移行する。
【0084】
〈データ取得2:S19〉
データ取得2の処理(S19)では、例えば、1分周期でタイヤ10からデータが取得される。取得されたデータは、逐次に車載器80に転送される(S20)。なお、データ取得2の処理中にイグニションスイッチがOFFになった場合は、車載器80との通信が途絶える場合がある。その場合、マイコン50は、データ取得2の処理(S19)で取得されたタイヤ10のデータをメモリ25に記憶するように構成されているとよい。マイコン50は、データ取得2の処理(S19)において、都度、タイヤ10が停止しているか否かを判定する(S21)。データ取得2の処理(S19)は、停止中のデータ取得である。タイヤ10が停止していない場合(No)、換言すると、タイヤ10が動き出した場合には、走行中のデータ取得であるデータ取得1の処理(S16)に移行されるように構成されている。
【0085】
データ取得2の処理で都度実施される判定処理(S21)では、車両200が、一定時間、停止しているか否かが判定される。車両200が、一定時間、停止しているか否かは、例えば、加速度センサ21の出力値が予め定められた値以下である状態が、予め定められた時間(例えば、10分間程度)継続しているか否かによって判定されるとよい。例えば、10分間程度、加速度センサ21の出力値が予め定められた値以下であることが継続している場合には、換言すると、車両200が、一定時間、停車していると判定される。この処理(S21)によれば、例えば、信号待ちなどで車両200が一時停止している状態では、一端、停車中のデータ取得2の処理(S19)に移行される。その後、車両200が走行を再開すると、走行中のデータ取得1の処理(S16)に移行される。また、処理(S21)によれば、信号待ちなどで走行中に一時停止したような場合が除外され、車両200が停車されている状態を抽出できる。
【0086】
S21の判定処理において、10分間程度、加速度センサ21の出力値が予め定められた値以下であることが継続している場合(Yes)には、マイコン50は、停車中のデータ取得3の処理(S22)に移行する。停車中のデータ取得3の処理(S22)では、30分程度の周期で、タイヤ10からデータを取得する。この際、イグニションスイッチがONであるなど車載器80との通信が可能である場合には、車載器80にデータが転送されるとよい(S23)。また、イグニションスイッチがOFFであるなど、車載器80との通信が途絶えている場合には、マイコン50は、データ取得3の処理(S22)で取得されたタイヤ10のデータをメモリ25に記憶するように構成されているとよい。
【0087】
マイコン50は、データ取得3の処理で、都度実施される判定処理(S24)では、タイヤ10が動いているか否かが判定される。換言すると、車両200が走行しているか否かが判定される。かかる判定処理(S24)は、タイヤ10の加速度センサ21の出力値を基に判定されるとよい。車両200が走行していると判定された場合(Yes)には、この実施形態では、マイコン50が起動したときの状態(S13)に戻される。そして、メモリ25に記憶された状態が車載器80に転送される(S15)。さらに、走行中のデータ取得1の処理(S16)に移行する。
【0088】
また、データ取得3の処理で、都度実施される判定処理(S24)において、タイヤ10が動いているか否かを判定された結果、所定の回数、タイヤ10が動いていない状態が継続した場合(No)には、マイコン50は、休止する(S11)。この実施形態では、データ取得3の処理(S22)は、30分周期で行われる。かかるデータ取得3の処理(S22)が18回続いた場合には、マイコン50が休止するように構成されている(S25)。つまり、車両200が大凡9時間以上停まっている場合には、停車中に30分毎にタイヤ10のデータが取得された後、マイコン50が休止状態になる。これによって、タイヤ10に搭載された電源27の電力消費を低く抑えることができる。ここでは、30分周期で行われる判定処理(S24)が、18回続いた場合(換言すると、9時間続いた場合)には、マイコン50が休止するように構成されているが、判定処理(S24)の周期は、30分に限定されない。また、タイヤ10が動いていない状態が継続する時間や回数は、18回続いた場合や9時間続いた場合に限定されず、マイコン50を休止させるのに適当な回数および時間に設定されうる。
【0089】
このように、タイヤ10から適宜に、磁気センサ13の出力値(磁束密度M)、圧力センサ23の出力値(内圧P)、温度センサ22の出力値(温度T)、加速度センサ21の出力値(加速度G)などが取得される。これらのデータは、マイコン50に搭載されたタイマ24の機能により、時刻のデータと紐付けられてメモリ25に記録されるとよい。そして、メモリ25に記録されたデータは、随時に車両200の車載器80に転送されるように構成されているとよい。これにより、車載器80において随時、タイヤ10のデータが取得される。
【0090】
また、ここで開示される摩耗量取得方法および摩耗量取得システムによれば、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサ13の出力値と、予め用意された磁気センサ13の出力値とトレッド部34の摩耗量との相関関係とに基づいて、トレッド部34の摩耗量を取得することができる。この場合、予め定められた時間継続してタイヤ10の加速度が予め定められた値以下であるときに出力された磁気センサ13の出力値に基づいてトレッド部34の摩耗量を取得することができるので、トレッド部34の摩耗量を精度良く推定できるようになる。
【0091】
例えば、上述したように取得されたタイヤ10のデータのうち、データ取得3の処理で取得されたデータのみを抽出して、トレッド部34の摩耗量が取得されるように構成されていてもよい。また、データ取得3の処理で取得されたデータをさらに温度補正して、トレッド部34の摩耗量を取得してもよい。また、データ取得3の処理で取得されたデータから特異データを除外して、トレッド部34の摩耗量を取得してもよい。
【0092】
以上、ここで開示されるタイヤおよび摩耗量取得システムについて、種々説明したが、ここで開示されるタイヤおよび摩耗量取得システムは、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 タイヤ
12 磁性体
13 磁気センサ
21 加速度センサ
22 温度センサ
23 圧力センサ
24 タイマ
25 メモリ
26 通信装置
27 電源
30 ホイールリム
31 ビード部
32 サイドウォール部
33 ショルダー部
34 トレッド部
34a 溝
34b スリップサイン
41 ゴム
42 カーカス
43 ベルト
44 ビードワイヤー
50 マイコン
60 演算装置
80 車載器
100 摩耗量取得システム
200 車両
400 クラウドサーバ
NW 通信ネットワーク