(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182455
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】孔版印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41L 13/04 20060101AFI20221201BHJP
B41L 13/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B41L13/04 F
B41L13/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090024
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏幸
(57)【要約】
【課題】各色のマスタの伸びを揃えることで用紙後端に近い画像の位置ズレを解消する。
【解決手段】第1ドラム41と、第2ドラム51と、マスタを加熱し穿孔する製版部6と製版部6を制御する機器制御部93と、原稿データから第1ドラム41および第2ドラム51に装着する複数のマスタ用の画像を生成する画像生成部91とを備え、画像生成部91は、複数のマスタ用の画像の画像率をそれぞれ検出し、検出したそれぞれの画像率の差が所定の値以上であった場合に、少ない画像率のマスタ用の画像に対し、それぞれのマスタ用の画像の画像率が等しくなる画像を追加し、機器制御部93は、追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の版胴と、マスタを加熱し穿孔する製版部と、前記製版部を制御する制御部と、原稿データから前記複数の版胴に装着する複数のマスタ用の画像を生成する画像生成部とを備え、
前記画像生成部は、前記複数のマスタ用の画像の画像率をそれぞれ検出し、前記検出したそれぞれの画像率の差が所定の値以上であった場合に、少ない画像率の前記マスタ用の画像に対し、前記複数のマスタ用の画像の画像率が等しくなる画像を追加し、
前記制御部は、前記追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う
ことを特徴とした孔版印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の位置ズレを解消する孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な孔版印刷装置では、製版された孔版原紙をドラム(版胴)外周に備えられたクランプでマスタの先端を把持した後、回転するドラムに巻き付けることによりマスタをドラムに着版する。そして着版した後、用紙をこのドラムに給紙し、この供給された用紙をプレスローラにより回転するドラムに圧接しながらドラム内部からインクを押圧することにより印刷を行う。
【0003】
近年では、2つのドラムを備え、一方のドラムを用いて第1色目のインクで印刷し、他方のドラムを用いて第2色目のインクで印刷する2色印刷が可能な孔版印刷装置もある。
【0004】
この2色印刷において、1ドラム目で1色目を印刷するための画像と、2ドラム目で2色目を印刷するための画像の画像率が大きく異なる場合がある。例えば黒で文字や画像を表現し、赤でワンポイントや注意を表現するような印刷物などである。この場合、画像率が高い黒側では、版であるマスタの伸び率が高くなり、反面、画像率が低い赤側では、マスタの伸び率は少ない。この状態で印刷を行うと、赤で印刷された画像に対し、黒で印刷された画像の方が、副走査方向に伸びた画像が形成され、重ね合わせた画像は、用紙後端に向かうに従い徐々にずれが生じた画像になってしまう課題があった。
【0005】
特許文献1には、1ドラム目印刷画像に対する2ドラム目の印刷画像ずれを軽減するために、2ドラム目への用紙送り込みタイミングを調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、用紙送り込みタイミングを調整すると2ドラム目の画像の位置が全面で変わることになり、マスタの伸びによる用紙後端に近い画像の位置ズレは解消できないという問題があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、各色のマスタの伸びを揃えることで用紙後端に近い画像の位置ズレを解消することができる孔版印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る孔版印刷装置の特徴は、
複数の版胴と、マスタを加熱し穿孔する製版部と、前記製版部を制御する制御部と、原稿データから前記複数の版胴に装着する複数のマスタ用の画像を生成する画像生成部とを備え、
前記画像生成部は、前記複数のマスタ用の画像の画像率をそれぞれ検出し、前記検出したそれぞれの画像率の差が所定の値以上であった場合に、少ない画像率の前記マスタ用の画像に対し、前記複数のマスタ用の画像の画像率が等しくなる画像を追加し、
前記制御部は、前記追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行うことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る孔版印刷装置の特徴によれば、各色のマスタの伸びを揃えることができるので用紙後端に近い画像の位置ズレを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態である孔版印刷装置の機能構成を示した機能構成図である。
【
図3】(a)は比較のため、従来技術における第1ドラム用の画像であり、(b)は第2ドラム用の画像であり、(c)は期待する印刷の仕上がり画像であり、(d)は、印字率の違いにより画像のズレが生じた画像の例を示した図である。
【
図4】(a)は本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における第1ドラム用の画像の一例であり、(b)は第1ドラム用として画像生成部91により生成された生成画像の一例であり、(c)は第2ドラム用の画像の一例である。
【
図5】本発明の一実施形態である孔版印刷装置の処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態では、2色印刷が可能な2ドラム式の孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【0016】
図1に示すように、孔版印刷装置1は、画像読み取り部2と、給紙部3と、第1の印刷部4と、第2の印刷部5と、製版部6と、第1の排版部8と、第2の排版部9と、中間搬送部10と、排紙部11とを備えている。
【0017】
画像読み取り部2は、孔版印刷装置1の上部に設けられ、図示しないコンタクトガラス上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0018】
製版部6は、ロールされた長尺状の孔版原紙Gを収容する原紙収容部61と、この原紙収容部61の搬送下流に配置され、孔版原紙Gを加熱穿孔するサーマルヘッド62と、このサーマルヘッド62の対向位置に配置されたプラテンロール63と、このプラテンロール63及びサーマルヘッド62の搬送下流に配置された一対の原紙送りロール64と、一対の原紙送りロール64の搬送下流に配置された原紙カッタ65とを有し、画像読み取り部2により読み取られた画像データ(原稿データ)に基づいて製版を行う。
【0019】
また、製版部6は、図示しないレールによって
図1におけるX方向に移動自在に支持されており、孔版原紙Gを供給する破線で示した位置と、後述する第2の印刷部5に製版した孔版原紙Gを供給する実線で示した位置とを選択的に占める。
【0020】
第1の排版部8は、後述する第1の印刷部4の第1ドラム41の近傍に設けられており、第1ドラム41の外周面より開放(排版)された孔版原紙Gを第1ドラム41より引き剥がし、引き剥がされた孔版原紙Gを排版ボックス(図示しない)内に収納する。また、第2の排版部9は、第1の排版部8と同様の構成を有する。
【0021】
給紙部3は、印刷用紙Wが積層される給紙台31と、この給紙台31から最上位置の印刷用紙Wのみを搬送させる1次給紙ロール32と、この1次給紙ロール32によって搬送された印刷用紙Wを後述する第1の印刷部4の第1ドラム41の回転に同期して第1ドラム41と第1のプレスローラ43間に搬送する一対の2次給紙ロール33とを有する。
【0022】
第1の印刷部4は、外周面にインクを内方から滲出可能な開孔部が周方向に沿って設けられ、メインモータ(図示しない)の駆動力によって
図1の矢印A方向に回転する第1ドラム41と、この第1ドラム41の外周面における開孔部以外の非開孔部に設けられ、第1ドラム41との間で孔版原紙Gの先端を把持又は開放するように回動する第1の原紙クランプ部42と、印刷用紙Wを中間搬送部10へ搬送する搬送ベルト44と、第1ドラム41の下方位置に配置された第1のプレスローラ43とを備えている。
【0023】
そして、第1の印刷部4は、製版部6から搬送される孔版原紙Gの先端を第1の原紙クランプ部42でクランプし、このクランプした状態で第1ドラム41を回転して孔版原紙Gが第1ドラム41の外周面に巻装され、第1ドラム41の回転に同期して搬送されて来る印刷用紙Wを第1のプレスローラ43にて第1ドラム41の孔版原紙Gに押圧することによって印刷用紙Wに孔版原紙Gの穿孔部分からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの表面に印刷されるようになっている。
【0024】
また、第1の印刷部4は、第1ドラム41の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪81と分離ノズル82と分離ファン83を有する。分離爪81は、第1ドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されて来る印刷用紙Wの先端との間に挿入されるようになっている。これによって、第1ドラム41の外周面に貼り付いて回転しようとする印刷用紙Wを強制的に第1ドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0025】
分離ファン83は印刷用紙Wを第1ドラム41から分離するための分離エアーを発生させる。分離ファン83により発生させた分離エアーは、分離ノズル82より、第1ドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されて来る印刷用紙Wとの間に吹き付けられる。分離ファン83は第1ドラム41の回転中は常に駆動され、この分離エアーによって、分離爪81に設けられたエアーノズルから吐出される先端分離エアーにより先端部だけを引き剥がされた印刷用紙Wの全体を強制的に第1ドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0026】
第1のプレスローラ43が第1ドラム41に押圧することによって画像が印刷され、分離爪81及び分離ノズル82により、第1ドラム41の外周面から引き剥がされた印刷用紙Wは、中間搬送部10により搬送される。
【0027】
中間搬送部10は、第1ドラム41の用紙搬送下流側位置と後述する第2ドラム51の用紙搬送上流側位置に配置された一対のベルト掛けプーリ101,101と、この一対のベルト掛けプーリ101,101に掛けられた無限端ベルト102と、この無限端ベルト102の用紙搬送面に印刷用紙Wを吸引する吸引ファン103と、無限端ベルト102を移動させるベルト駆動手段(図示せず)とを備えている。また、中間搬送部10は第1ドラム41から剥離された印刷用紙Wを受け取り、受け取った印刷用紙Wを第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2のプレスローラ53間に給紙するようになっている。そのため、無限端ベルト102は、給紙部3により搬送された印刷用紙Wの搬送速度と同じ速度で印刷用紙Wが搬送されるように移動する。
【0028】
第2の印刷部5は、第1の印刷部4と同様に、第2ドラム51の回転に同期して一対の2次給紙ロール54より給紙される印刷用紙Wを第2のプレスローラ53で第2ドラム51に巻装された第2の孔版原紙に押圧することによって、第2の孔版原紙の穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wに印刷されるようになっている。
【0029】
また、第2の印刷部5は、第2ドラム51に接触して設けられ、第2ドラム51の位置合わせを行う位置調整機構55と、第2ドラム51の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪71と分離ノズル72と、分離ファン73とを有する。
【0030】
排紙部11は、印刷された印刷用紙Wが搬送される排紙ベルト111と、排紙ベルト111より排紙される印刷用紙Wが積置される排紙台112と、を有する。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1の機能構成を示した機能構成図である。
【0032】
図2に示すように、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1は、画像読み取り部2と、第1ドラム41と、第1ドラム情報記憶部46と、第2ドラム51と、第2ドラム情報記憶部56と、制御部90と、操作部95とを備える。
【0033】
これらの構成のうち、画像読み取り部2と、第1ドラム41と、第2ドラム51とについては、上述したので、説明を省略する。
【0034】
第1ドラム情報記憶部46は、画像読み取り部2により読み取られた第1ドラム用の画像(原稿データ)と、後述する制御部90により生成された第1ドラム用の生成画像とを記憶する。
【0035】
第2ドラム情報記憶部56は、画像読み取り部2により読み取られた第2ドラム用の画像(原稿データ)と、後述する制御部90により生成された第2ドラム用の生成画像とを記憶する。
【0036】
操作部95は、操作キーや表示/入力パネルを備えており、ユーザによって操作キーが押下操作され、又は表示/入力パネルがタッチ操作されることによって、操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部90へ供給する。
【0037】
制御部90は、孔版印刷装置1の中枢的制御を行う。また、制御部90は、その機能上、画像生成部91と、機器制御部93とを備える。
【0038】
画像生成部91は、第1ドラム情報記憶部46に記憶された第1ドラム用の画像の画像率と、第2ドラム情報記憶部56に記憶された第2ドラム用の画像の画像率とを検出する。
【0039】
そして、画像生成部91は、検出したそれぞれの画像率の差dが所定の閾値Th以上か否かを判定する。画像率の差dが所定の閾値Th以上であった場合、画像生成部91は、少ない画像率のマスタ用の画像に対し、第1ドラム用の画像の画像率と、第2ドラム用の画像の画像率とが等しくなるように画像を追加して、生成画像とする。
【0040】
機器制御部93は、追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う。
【0041】
図3(a)~(d)は、比較のため、従来技術における課題を説明した説明図である。(a)は第1ドラム用の画像であり、(b)は第2ドラム用の画像であり、(c)は期待する印刷の仕上がり画像であり、(d)は、印字率の違いにより画像のズレが生じた画像の例を示した図である。なお、
図3(a)に示す第1ドラム用の画像の画像率は、
図3(b)に示す第2ドラム用の画像の画像率と比較して低いとする。
【0042】
このとき、第1ドラム用の画像と第2ドラム用の画像とが重なり合い、
図3(c)に示す仕上がり画像となるのが理想である。
【0043】
しかしながら、第1ドラム用の画像の画像率が第2ドラム用の画像の画像率と比較して低いので、画像率の高い第2ドラム用の画像に基づいて穿孔されたマスタの伸び率が高くなる。一方、画像率の低い第1ドラム用の画像に基づいて穿孔されたマスタの伸び率は低くなる。
【0044】
そのため、
図3(d)に示すように、第1ドラム用の画像に基づいて印刷された印刷画像に対し、第2ドラム用の画像に基づいて印刷された印刷画像の方が、副走査方向に伸びた画像が形成され、重ね合わせた画像は、用紙後端に向かうに従い徐々にズレが生じた画像になってしまう。
【0045】
図3(d)に示した例では、画像G101,G102とは、副走査方向の後ろ側のあるため、第1ドラム用の画像に含まれる「TEXT」がくり抜かれた矩形の画像と、第2ドラム用の画像に含まれる「TEXT」の画像とにズレが生じている。
【0046】
図4(a)~(d)は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1における処理を説明した説明図である。(a)は第1ドラム用の画像の一例であり、(b)は第1ドラム用として画像生成部91により生成された生成画像の一例であり、(c)は第2ドラム用の画像の一例である。
【0047】
まず、画像生成部91は、
図4(a)に示す第1ドラム情報記憶部46に記憶された第1ドラム用の画像の画像率と、
図4(c)に示す第2ドラム情報記憶部56に記憶された第2ドラム用の画像の画像率とを検出する。
【0048】
そして、画像生成部91は、検出したそれぞれの画像率の差dが所定の閾値Th以上か否かを判定する。ここでは、
図4(a)に示す第1ドラム用の画像の画像率は、
図4(c)に示す第2ドラム用の画像の画像率と比較して低く、画像率の差dが所定の閾値Th以上であるとする。
【0049】
そこで、画像生成部91は、少ない画像率のマスタ用の画像に対し、第1ドラム用の画像の画像率と、第2ドラム用の画像の画像率とが等しくなるように画像を追加して、生成画像とする。
【0050】
具体的には、
図4(a)に示すように、第1ドラム用の画像は、穿孔領域E101,E102と、非穿孔領域E103とを有している。そこで、画像生成部91は、
図4(a)に示す第1ドラム用の画像の非穿孔領域E103に対し、
図4(c)に示す第2ドラム用の画像のうち、
図4(a)の非穿孔領域E103に相当する領域の画像を追加画像G201として抽出する。
【0051】
そして、画像生成部91は、
図4(a)に示す第1ドラム用の画像の非穿孔領域E103に、抽出した追加画像G201を追加して、
図4(b)に示す生成画像を生成する。
【0052】
機器制御部93は、生成画像のうち、追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う。
【0053】
これにより、元の第1ドラム用の画像の画像率が第2ドラム用の画像の画像率と比較して低い場合であっても、それぞれの画像率が等しくなるように画像が追加されるので、第1ドラム用の画像に基づいて穿孔されたマスタの伸び率と、第2ドラム用の画像に基づいて穿孔されたマスタの伸び率とが等しくなる。
【0054】
そのため、それぞれの画像を重ね合わせた際に、画像のズレが生じることを防止することができる。
【0055】
特に、
図4に示した例では、
図4(c)に示したように、画像率が高いマスタ用の画像に存在して、画像率が低いマスタ用の画像に存在しない追加画像G201を、
図4(b)に示すように第1ドラム用の画像に追加するので、第1ドラム用の画像と、第2ドラム用の画像とを完全に画像率を一致させることができるので、より画像のズレが生じることを防止することができる。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態である孔版印刷装置1の処理内容を示したフローチャートである。
【0057】
図5に示すように、ステップS101において、画像生成部91は、第1ドラム情報記憶部46に記憶された第1ドラム用の画像の画像率を検出する。
【0058】
ステップS103において、画像生成部91は、第2ドラム情報記憶部56に記憶された第2ドラム用の画像の画像率を検出する。
【0059】
ステップS105において、画像生成部91は、検出したそれぞれの画像率の差dが所定の閾値Th以上か否かを判定する。
【0060】
画像率の差dが所定の閾値Th以上である場合(ステップS105;YES)、ステップS107において、画像生成部91は、画像率が低い側の画像において副走査方向1画素を読み込む。
【0061】
ステップS109において、画像生成部91は、画像率が低い側の画像にデータがある、すなわち印字されるか否かを判定する。
【0062】
画像率が低い側の画像にデータがあると判定された場合(ステップS109;YES)、画像生成部91は、処理をステップS115へ移行させる。
【0063】
一方、画像率が低い側の画像にデータがないと判定された場合(ステップS109;NO)、マスタの伸び率を等しくするために、ステップS111において、画像生成部91は、画像率が高い側の画像を画像率が低い側の画像に追加する。
【0064】
ステップS113において、画像生成部91は、画像を追加した画像率が低い側の画像の副走査ラインに、サーマルヘッド62のストローブ時間を穿孔されない程度の時間(熱量)に制御することを示す識別データを付与する。
【0065】
ステップS115において、画像生成部91は、読み込んだ副走査1画素が画像の後端か否かを判定する。
【0066】
読み込んだ副走査1画素が画像の後端ではない場合(ステップS115;YES)、処理をステップS107に移行させる。
【0067】
読み込んだ副走査1画素が画像の後端である場合(ステップS115;NO)、ステップS117において、制御部90は、製版工程を始動する。具体的には、機器制御部93は、製版部6を制御して、画像率が高い側の画像に基づいて製版する。また、機器制御部93は、製版部6を制御して、画像率が低い方の画像に基づいて生成された生成画像に基づいて、画像率が低い方の画像に基づいて穿孔すると共に、識別データが示す画像、すなわち、追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う。
【0068】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0069】
(付記1)
複数の版胴と、マスタを加熱し穿孔する製版部と、前記製版部を制御する制御部と、原稿データから前記複数の版胴に装着する複数のマスタ用の画像を生成する画像生成部とを備え、
前記画像生成部は、前記複数のマスタ用の画像の画像率をそれぞれ検出し、前記検出したそれぞれの画像率の差が所定の値以上であった場合に、少ない画像率の前記マスタ用の画像に対し、前記複数のマスタ用の画像の画像率が等しくなる画像を追加し、
前記制御部は、前記追加された画像の領域に対してマスタを穿孔しない程度に加熱する制御を行う
ことを特徴とした孔版印刷装置。
【0070】
これにより、複数のマスタ用の画像の画像率に差がある場合であっても、それぞれの画像率が等しくなるように画像が追加されるので、それぞれの画像に基づいて穿孔されたマスタの伸び率が等しくなる。そのため、それぞれの画像を重ね合わせた際に、画像のズレが生じることを防止することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 孔版印刷装置
2 画像読み取り部
3 給紙部
4 第1の印刷部
5 第2の印刷部
6 製版部
8 第1の排版部
9 第2の排版部
41 第1ドラム
44 搬送ベルト
46 第1ドラム情報記憶部
51 第2ドラム
56 第2ドラム情報記憶部
62 サーマルヘッド
90 制御部
91 画像生成部
93 機器制御部
95 操作部