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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182461
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090031
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一馬
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730CC02
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE73
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG02
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失を低減することができる電力変換装置を提供する
【解決手段】電力変換装置40は、第1~第3コイル81~83を有するトランス80と、第1コイル81に接続された第1~第4スイッチQ1~Q4を有する第1フルブリッジ回路50と、第2コイル82に接続された第5~第8スイッチQ5~Q8を有する第2フルブリッジ回路60と、第3コイル83に接続された第9~第12スイッチQ9~Q12を有する第3フルブリッジ回路70と、第1フルブリッジ回路50側から第2,第3フルブリッジ回路60,70側へと電力を供給すべく各スイッチQ1~Q12のスイッチング制御を実行する制御部100とを備える。制御部100は、スイッチング制御の実行中において、第1~第3コイル81~83の単位巻き数あたりの第1~第3電圧V1r~V3rを互いに近づける。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに磁気結合する送電コイル(81)及び受電コイル(82~84)を有するトランス(80)と、
送電スイッチ(Q1~Q4)、及び該送電スイッチを介して前記送電コイルに接続された送電端子(CH1,CL1)を有する送電回路(50)と、
受電スイッチ(Q5~Q20)、及び該受電スイッチを介して前記受電コイルに接続された受電端子(CH2,CH3,CH5,CL2,CL3,CL5)を有する受電回路(60,70,110)と、
前記送電端子から入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記送電コイルに供給すべく前記送電スイッチのスイッチング制御を実行するとともに、前記受電コイルから出力される交流電圧を直流電圧に変換して前記受電端子に供給すべく前記受電スイッチのスイッチング制御を実行する制御部(100)と、を備え、
前記制御部は、前記送電スイッチ及び前記受電スイッチそれぞれのスイッチング制御の実行中において、前記送電コイル及び前記受電コイルそれぞれの単位巻き数あたりの電圧を互いに近づける制御を行う、電力変換装置。
【請求項2】
互いに磁気結合する送電コイル(82)及び複数の受電コイル(81,83,84)を有するトランス(80)と、
送電スイッチ(Q5~Q8)、及び該送電スイッチを介して前記送電コイルに接続された送電端子(CH2,CL2)を有する送電回路(60)と、
前記各受電コイルに対応して設けられ、受電スイッチ(Q1~Q4,Q9~Q20)、及び該受電スイッチを介して前記受電コイルに接続された受電端子(CH1,CH3,CH5,CL1,CL3,CL5)を有する受電回路(50,70,110)と、
前記送電端子から入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記送電コイルに供給すべく前記送電スイッチのスイッチング制御を実行するとともに、前記受電コイルから出力される交流電圧を直流電圧に変換して前記受電端子に供給すべく前記受電スイッチのスイッチング制御を実行する制御部(100)と、を備え、
前記制御部は、前記スイッチング制御の実行中において、前記送電コイル及び前記各受電コイルのうち、一部のコイルである特定コイルの単位巻き数あたりの電圧を、残りのコイルの単位巻き数あたりの電圧よりも高くする制御を行う、電力変換装置。
【請求項3】
前記各受電回路のうち、一部の受電回路である特定受電回路(70)は、残りの受電回路が有する前記受電スイッチ、及び前記送電スイッチのそれぞれよりもスイッチング速度が低い低速スイッチ(Q13~Q16)を有しており、
前記特定コイルは、前記各受電コイルのうち、前記特定受電回路に接続されたコイルである、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記特定コイルは、前記送電コイルである、請求項2又は3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記送電回路は、前記送電スイッチとして、上アーム送電スイッチ及び下アーム送電スイッチの直列接続体を有するブリッジ回路であり、
前記受電回路は、前記受電スイッチとして、上アーム受電スイッチ及び下アーム受電スイッチの直列接続体を有するブリッジ回路であり、
前記制御部は、前記スイッチング制御において、
前記送電コイルに正の電圧が印加される期間と前記送電コイルに負の電圧が印加される期間とを設けるように、前記上アーム送電スイッチ及び前記下アーム送電スイッチをオンオフし、
前記受電コイルに正の電圧が印加される期間と前記受電コイルに負の電圧が印加される期間とを設けるように、前記上アーム送電スイッチ及び前記下アーム送電スイッチをオンオフする請求項1~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチング制御において、前記送電コイル及び前記受電コイルのうち少なくとも1つが短絡される期間を設ける請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記スイッチング制御の駆動態様を変更することにより、前記送電コイル及び前記受電コイルそれぞれの単位巻き数あたりの電圧を制御する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、送電コイル及び受電コイルを有するトランスと、送電コイルに接続された送電端子を有する送電回路と、受電コイルに接続された受電端子を有する受電回路とを備える電力変換装置が知られている。ここで、送電コイル及び受電コイルは互いに磁気結合されている。電力変換装置は、送電端子から入力される直流電圧を交流電圧に変換して送電コイルに供給すべく、送電回路が有する送電スイッチのスイッチング制御を行う。また、電力変換装置は、受電コイルから出力される交流電圧を直流電圧に変換して受電端子に供給すべく、受電回路が有する受電スイッチのスイッチング制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-152687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電力変換装置のスイッチング制御の実行中において、スイッチング損失が増大してしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、スイッチング損失を低減することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手段1は、互いに磁気結合する送電コイル及び受電コイルを有するトランスと、送電スイッチ、及び該送電スイッチを介して前記送電コイルに接続された送電端子を有する送電回路と、受電スイッチ、及び該受電スイッチを介して前記受電コイルに接続された受電端子を有する受電回路と、前記送電端子から入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記送電コイルに供給すべく前記送電スイッチのスイッチング制御を実行するとともに、前記受電コイルから出力される交流電圧を直流電圧に変換して前記受電端子に供給すべく前記受電スイッチのスイッチング制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記送電スイッチ及び前記受電スイッチそれぞれのスイッチング制御の実行中において、前記送電コイル及び前記受電コイルそれぞれの単位巻き数あたりの電圧を互いに近づける制御を行う。
【0007】
本願発明者は、送電コイル及び受電コイルそれぞれの単位巻き数あたりの電圧が互いに異なる場合、送電回路及び受電回路のうち、単位巻き数あたりの電圧が低いコイルに接続された回路において、スイッチング損失が増大してしまうことに着目した。
【0008】
そこで、手段1では、送電スイッチ及び受電スイッチそれぞれのスイッチング制御の実行中において、送電コイル及び受電コイルそれぞれの単位巻き数あたりの電圧が互いに近づけられる。これにより、送電回路及び受電回路それぞれのスイッチング損失を低減することができる。
【0009】
手段2は、互いに磁気結合する送電コイル及び複数の受電コイルを有するトランスと、送電スイッチ、及び該送電スイッチを介して前記送電コイルに接続された送電端子を有する送電回路と、前記各受電コイルに対応して設けられ、受電スイッチ、及び該受電スイッチを介して前記受電コイルに接続された受電端子を有する受電回路と、前記送電端子から入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記送電コイルに供給すべく前記送電スイッチのスイッチング制御を実行するとともに、前記受電コイルから出力される交流電圧を直流電圧に変換して前記受電端子に供給すべく前記受電スイッチのスイッチング制御を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スイッチング制御の実行中において、前記送電コイル及び前記各受電コイルのうち、一部のコイルである特定コイルの単位巻き数あたりの電圧を、残りのコイルの単位巻き数あたりの電圧よりも高くする制御を行う。
【0010】
手段2では、送電スイッチ及び受電スイッチそれぞれのスイッチング制御の実行中において、送電コイル及び各受電コイルのうち、一部のコイルである特定コイルの単位巻き数あたりの電圧が、残りのコイルの単位巻き数あたりの電圧よりも高くされる。これにより、送電回路及び受電回路のうち、特定コイルに接続された回路のスイッチング損失を優先的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図。
図2】比較例の制御を示すタイムチャート。
図3】第1期間の電流経路を示す図。
図4】第1期間後のデッドタイムの電流経路を示す図。
図5】第2期間の電流経路を示す図。
図6】第3期間の電流経路を示す図。
図7】第3期間後のデッドタイムの電流経路を示す図。
図8】第4期間の電流経路を示す図。
図9】制御の一例を示すタイムチャート。
図10】第5期間の電流経路を示す図。
図11】第5期間後のデッドタイムの電流経路を示す図。
図12】第6期間の電流経路を示す図。
図13】第7期間の電流経路を示す図。
図14】第7期間後のデッドタイムの電流経路を示す図。
図15】第8期間の電流経路を示す図。
図16】制御部が実行する処理の手順を示すフローチャート。
図17】スイッチング損失の低減効果を示す図。
図18】第2実施形態に係る制御の一例を示すタイムチャート。
図19】第3実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図。
図20】制御の一例を示す図。
図21】第4実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、マルチポート型のものであり、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)等の電動化車両に搭載されている。
【0013】
図1に示すように、電源システムは、外部電源10、第1蓄電池20、第2蓄電池30及び電力変換装置40を備えている。外部電源10は、例えば100Vの単相交流の商用電源や200Vの三相交流の商用電源等である。外部電源10は、電力変換装置40の第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1に接続されている。各蓄電池20,30は、充放電可能な2次電池である。第1蓄電池20は、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池であり、第2蓄電池30は、例えば鉛蓄電池である。
【0014】
電力変換装置40は、外部電源10から供給される交流電力を直流電力に変換するAC‐DCコンバータ11を備えている。AC‐DCコンバータ11は、電力変換装置40の第1高電位側端子CH1及び第2高電位側端子CH2を介して、外部電源10に接続されている。本実施形態において、AC‐DCコンバータ11から出力される定格電圧(例えば400V)は、第1蓄電池20の定格電圧(例えば300V)よりも高く、第1蓄電池20の定格電圧は第2蓄電池30の定格電圧(例えば14V)よりも高い。
【0015】
電力変換装置40は、第1フルブリッジ回路50及び第1コンデンサ51を備えている。第1フルブリッジ回路50は、第1~第4スイッチQ1~Q4を備えている。本実施形態において、第1~第4スイッチQ1~Q4は、NチャネルMOSFETであり、第1~第4ボディダイオードD1~D4を有している。第1スイッチQ1及び第3スイッチQ3のドレインには、AC‐DCコンバータ11の正極端子が接続されている。第1スイッチQ1のソースには、第2スイッチQ2のドレインが接続され、第3スイッチQ3のソースには、第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2スイッチQ2及び第4スイッチQ4のソースには、AC‐DCコンバータ11の負極端子が接続されている。第1コンデンサ51の第1端は、AC‐DCコンバータ11の正極端子に接続され、第1コンデンサ51の第2端は、AC‐DCコンバータ11の負極端子に接続されている。なお、第1コンデンサ51は、第1フルブリッジ回路50の内部に設けられていてもよい。
【0016】
本実施形態において、第1~第4スイッチQ1~Q4は、SiC(シリコンカーバイド)系材料や、GaN(窒化ガリウム)系材料などによって構成されており、Siで構成されたNチャネルMOSFETよりもスイッチング速度が速いという特性を有している。スイッチング速度とは、例えば、スイッチのオフ時を例に説明すると、ゲート電圧が下降し始めてからゲート電圧が閾値電圧Vth未満となるまでに要する時間のことである。
【0017】
電力変換装置40は、第2フルブリッジ回路60及び第2コンデンサ61を備えている。第2フルブリッジ回路60は、第5~第8スイッチQ5~Q8を備えている。本実施形態において、第5~第8スイッチQ5~Q8は、SiC系材料やGaN系材料などによって構成されたNチャネルMOSFETであり、第5~第8ボディダイオードD5~D8を有している。
【0018】
第5スイッチQ5及び第7スイッチQ7のドレインには、電力変換装置40の第2高電位側端子CH2が接続されている。第5スイッチQ5のソースには、第6スイッチQ6のドレインが接続され、第7スイッチQ7のソースには、第8スイッチQ8のドレインが接続されている。第6スイッチQ6及び第8スイッチQ8のソースには、電力変換装置40の第2低電位側端子CL2が接続されている。第2コンデンサ61の第1端は、第2高電位側端子CH2を介して第1蓄電池20の正極端子に接続され、第2コンデンサ61の第2端は、第2低電位側端子CL2を介して第1蓄電池20の負極端子に接続されている。なお、第2コンデンサ61は、第2フルブリッジ回路60の内部に設けられていてもよい。
【0019】
電力変換装置40は、第3フルブリッジ回路70及び第3コンデンサ71を備えている。第3フルブリッジ回路70は、第9~第12スイッチQ9~Q12を備えている。本実施形態において、第9~第12スイッチQ9~Q12は、SiC系材料やGaN系材料などによって構成されたNチャネルMOSFETであり、第9~第12ボディダイオードD9~D12を有している。
【0020】
第9スイッチQ9及び第11スイッチQ11のドレインには、電力変換装置40の第3高電位側端子CH3が接続されている。第9スイッチQ9のソースには、第10スイッチQ10のドレインが接続され、第11スイッチQ11のソースには、第12スイッチQ12のドレインが接続されている。第10スイッチQ10及び第12スイッチQ12のソースには、電力変換装置40の第3低電位側端子CL3が接続されている。第3コンデンサ71の第1端は、第3高電位側端子CH3に接続され、第3コンデンサ71の第2端は、第3低電位側端子CL3に接続されている。第3高電位側端子CH3及び第3低電位側端子CL3間の電圧は、所定の電圧範囲(例えば40~48V)に収まるように制御される。なお、第3コンデンサ71は、第3フルブリッジ回路70の内部に設けられていてもよい。
【0021】
電力変換装置40は、降圧チョッパ回路72を備えている。降圧チョッパ回路72は、第1変圧スイッチSW1、第2変圧スイッチSW2、リアクトル73及び第4コンデンサ74を備えている。本実施形態において、第1変圧スイッチSW1及び第2変圧スイッチSW2は、NチャネルMOSFETであり、第1,第2整流ダイオードDi1,Di2を有している。第1変圧スイッチSW1のドレインには、電力変換装置40の第3高電位側端子CH3が接続されている。第1変圧スイッチSW1のソースには、リアクトル73の第1端及び第2変圧スイッチSW2のドレインが接続されている。リアクトル73の第2端には、第4コンデンサ74の第1端及び電力変換装置40の第4高電位側端子CH4が接続されている。第2変圧スイッチSW2のソースには、電力変換装置40の第3,4低電位側端子CL3,CL4及び第4コンデンサ74の第2端が接続されている。第4高電位側端子CH4には、第2蓄電池30の正極端子が接続され、第4低電位側端子CL4には、第2蓄電池30の負極端子が接続されている。
【0022】
電力変換装置40は、第1コイル81、第2コイル82及び第3コイル83を有するトランス80を備えている。第1コイル81の第1端には、第1スイッチQ1のソース及び第2スイッチQ2のドレインが接続され、第1コイル81の第2端には、第3スイッチQ3のソース及び第4スイッチQ4のドレインが接続されている。第2コイル82の第1端には、第5スイッチQ5のソース及び第6スイッチQ6のドレインが接続され、第2コイル82の第2端には、第7スイッチQ7のソース及び第8スイッチQ8のドレインが接続されている。第3コイル83の第1端には、第9スイッチQ9のソース及び第10スイッチQ10のドレインが接続され、第3コイル83の第2端には、第11スイッチQ11のソース及び第12スイッチQ12のドレインが接続されている。
【0023】
本実施形態において、第1コイル81の巻き数N1は8ターンであり、第2コイル82の巻き数N2は7ターンであり、第3コイル83の巻き数N3は1ターンである。なお、各コイル81~83の巻き数N1~N3は、電力変換装置40に要求される仕様により変更してよい。
【0024】
第1コイル81、第2コイル82及び第3コイル83は、例えばトランス80が備えるコアを介して、互いに磁気結合する。第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル82及び第3コイル83それぞれには、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、第1コイル81の第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、第2コイル82及び第3コイル83それぞれには、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0025】
第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性を正極性と定義し、第1コイル81の第1端から第2端へと流れる電流IL1の向きを正と定義する。第2コイル82の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性を正極性と定義し、第2コイル82の第1端から第2端へと流れる電流IL2の向きを正と定義する。第3コイル83の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性を正極性と定義し、第3コイル83の第1端から第2端へと流れる電流IL3の向きを正と定義する。
【0026】
電力変換装置40は、第1~第3電圧センサ91~93を備えている。第1電圧センサ91は、第1コンデンサ51の端子電圧である第1電圧を検出し、第2電圧センサ92は、第2コンデンサ61の端子電圧である第2電圧を検出し、第3電圧センサ93は、第3コンデンサ71の端子電圧である第3電圧を検出する。
【0027】
第1~第3電圧センサ91~93により検出された第1~第3電圧の検出値V1r~V3rは、電力変換装置40が備える制御部100に入力される。制御部100は、第1~第3電圧V1r~V3rに基づいて、指令値を設定する。ここで、指令値には、第1~第3電圧V1r~V3rの指令値及び各コイル81~83の電圧Vt1~Vt3の指令値が含まれる。制御部100は、設定した指令値に基づいて、第1~第12スイッチQ1~Q12及び第1,第2変圧スイッチSW1,SW2をオンオフする。なお、指令値の設定方法については後述する。
【0028】
以下、第1~第12スイッチQ1~Q12、第1,第2変圧スイッチSW1,SW2の駆動態様について説明する。
【0029】
第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされ、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされる。第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4がオンされ、第2スイッチQ2及び第3スイッチQ3がオフされている場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性は、正極性となる。また、第1スイッチQ1及び第4スイッチQ4がオフされ、第2スイッチQ2及び第3スイッチQ3がオンされている場合、第1コイル81の電圧Vt1の極性は、負極性となる。
【0030】
第5スイッチQ5と第6スイッチQ6とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされ、第7スイッチQ7と第8スイッチQ8とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされる。第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされ、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオフされている場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性は、正極性となる。また、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオフされ、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされている場合、第2コイル82の電圧Vt2の極性は、負極性となる。
【0031】
第9スイッチQ9と第10スイッチQ10とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされ、第11スイッチQ11と第12スイッチQ12とはデッドタイムTDを挟みつつ交互にオンされる。第9スイッチQ9及び第12スイッチQ12がオンされ、第10スイッチQ10及び第11スイッチQ11がオフされている場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性は、正極性となる。また、第9スイッチQ9及び第12スイッチQ12がオフされ、第10スイッチQ10及び第11スイッチQ11がオンされている場合、第3コイル83の電圧Vt3の極性は、負極性となる。なお、本実施形態において、第1~第12スイッチQ1~Q12のスイッチング周期は、互いに同じである。
【0032】
各コイル81~83の間で伝達される電力は、各スイッチQ1~Q12のオンへの切り替えタイミングにより制御される。例えば、第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して、第5スイッチQ5のオンへの切り替えタイミングを遅らせることにより、第1コイル81及び第2コイル82の間で伝達される電力が制御される。また、例えば、第1スイッチQ1のオンへの切り替えタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングに対して、第9スイッチQ9のオンへの切り替えタイミングを遅らせることにより、第1コイル81及び第3コイル83の間で伝達される電力が制御される。
【0033】
第1変圧スイッチSW1と第2変圧スイッチSW2とは交互にオンされる。制御部100は、第3電圧V3rを目標電圧に降圧し、降圧した電圧を第2蓄電池30に供給すべく、第1変圧スイッチSW1及び第2変圧スイッチSW2のオンオフ比であるデューティ比を制御する。
【0034】
次に、本実施形態とは異なる比較例を用いて、各フルブリッジ回路50,60,70のスイッチング損失が増大してしまう場合について説明する。ここでは、第1コイル81から第2,第3コイル83へと電力を伝達する場合に、第2フルブリッジ回路60のスイッチング損失が増大してしまう比較例について説明する。
【0035】
図2は、比較例の制御を示すタイムチャートである。図2において、(a)~(c)は各コイル81~83の電圧Vt1~Vt3の推移を示し、(d)~(f)は各コイル81~83に流れる電流IL1~IL3の推移を示し、(g)は第5スイッチQ5に流れる電流IQ5の推移を示し、(h)は第5スイッチQ5のソースドレイン間の電圧VQ5の推移を示し、(i)は第5スイッチQ5の操作状態を示す。
【0036】
比較例では、第1コイル81から第2,第3コイル82,83へと電力が伝達される。また、第1電圧V1rが400Vとされ、第2電圧V2rが290Vとされ、第3電圧V3rが50Vとされる。
【0037】
第1期間T1は第5スイッチQ5がオンからオフへ切り替えられる直前の期間であり、第2期間T2は第5スイッチQ5がオンからオフへ切り替えられた直後の期間である。第1期間T1及び第2期間T2の間には、第5~第8スイッチQ5~Q8がオフされるデッドタイムTDが存在する。
【0038】
図3~5は、第1期間T1、第1期間T1後のデッドタイムTD及び第2期間T2の電流経路を示す図である。なお、図3~5において、先の図1に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、第3フルブリッジ回路70、第3コンデンサ71及び第3コイル83等の図示は省略している。
【0039】
図3に、第1期間T1の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1コンデンサ51→第2スイッチQ2→第1コイル81→第3スイッチQ3→第1コンデンサ51となる。第1コイル81に流れる電流IL1の符号は正である。一方、第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第8スイッチQ8及び第8ボディダイオードD8→第2コイル82→第5スイッチQ5及び第5ボディダイオードD5→第2コンデンサ61となる。第2コイル82に流れる電流IL2の符号は負である。第6,第7スイッチQ6,Q7のソースドレイン間に形成される寄生容量には、ソース側よりもドレイン側の電位が高くなるように電荷が蓄積される。
【0040】
図4に、第1期間T1後におけるデッドタイムTDの電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1期間T1と同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオフに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第8ボディダイオードD8→第2コイル82→第5ボディダイオードD5→第2コンデンサ61となる。この場合では、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が負となる向きに、第5,第8ボディダイオードD5,D8を介して電流が還流する。
【0041】
図5に、第2期間T2の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1期間T1後のデッドタイムTDと同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第7スイッチQ7及び第6スイッチQ6がオンに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第7スイッチQ7→第2コイル82→第6スイッチQ6→第2コンデンサ61となる。この場合、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされることに伴い発生するスイッチング損失が増大する。
【0042】
詳しくは、第5ボディダイオードD5及び第8ボディダイオードD8にリカバリ電流が流れる。また、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7の寄生容量に蓄積された電荷が放電される。これにより、第2フルブリッジ回路60に一時的に大きな電流が流れる。このため、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされる際のスイッチング損失が増大する。
【0043】
図2の説明に戻り、第3期間T3は第5スイッチQ5がオフからオンへ切り替えられる直前の期間であり、第4期間T4は第5スイッチQ5がオフからオンへ切り替えられた直後の期間である。第3期間T3及び第4期間T4の間には、第5~第8スイッチQ5~Q8がオフされるデッドタイムTDが存在する。
【0044】
図6~8は、第3期間T3、第3期間T3後のデッドタイムTD及び第4期間T4の電流経路を示す図である。なお、図6~8において、先の図1に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、第3フルブリッジ回路70、第3コンデンサ71及び第3コイル83等の図示は省略している。
【0045】
図6に、第3期間T3の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1コンデンサ51→第4スイッチQ4→第1コイル81→第1スイッチQ1→第1コンデンサ51となる。第1コイル81に流れる電流IL1の符号は負である。一方、第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第6スイッチQ6及び第6ボディダイオードD6→第2コイル82→第7スイッチQ7及び第7ボディダイオードD7→第2コンデンサ61となる。第2コイル82に流れる電流IL2の符号は正である。第5,第8スイッチQ5,Q8のソースドレイン間に形成される寄生容量には、ソース側よりもドレイン側の電位が高くなるように電荷が蓄積される。
【0046】
図7に、第3期間T3後におけるデッドタイムTDの電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第3期間T3と同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオフに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第6ボディダイオードD6→第2コイル82→第7ボディダイオードD7→第2コンデンサ61となる。この場合では、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が正となる向きに、第6,第7ボディダイオードD6,D7を介して電流が還流する。
【0047】
図8に、第4期間T4の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第3期間T3後のデッドタイムTDと同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第5スイッチQ5→第2コイル82→第8スイッチQ8→第2コンデンサ61となる。この場合、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされることに伴い発生するスイッチング損失が増大する。
【0048】
詳しくは、第6ボディダイオードD6及び第7ボディダイオードD7にリカバリ電流が流れる。また、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8の寄生容量に蓄積された電荷が放電される。これにより、第2フルブリッジ回路60に一時的に大きな電流が流れる。このため、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされる際のスイッチング損失が増大する。
【0049】
ここで、比較例の制御において、スイッチング損失が増大するのは、第1期間T1において第2コイル82に流れる電流IL2の符号が負とされるためであり、第3期間T3において第2コイル82に流れる電流IL2の符号が正とされるためである。
【0050】
本願発明者は、比較例の制御において、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1,第3コイル81,83の単位巻き数あたりの第1,第3電圧V1r,V3rよりも低い場合、上述した電流IL2の符号の状態でスイッチのオンオフが行われる可能性が高いことに着目した。なお、本実施形態において、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rとはV1r/N1であり、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rとはV2r/N2であり、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧とはV3r/N3である。比較例の制御では、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rは50Vであり、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rは41.43Vであり、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧は50Vである。
【0051】
詳しくは、比較例の制御では、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1,第3コイル81,83の単位巻き数あたりの第1,第3電圧V1r,V3rよりも低いことに起因して、第1制御期間TAにおいて、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が負となる。ここで、第1制御期間TAとは、オンされるスイッチがQ1,Q4,Q5,Q8,Q9,Q12であり、オフされるスイッチがQ2,Q3,Q6,Q7,Q10,Q11である期間である。この場合、第2コイル82に流れる電流IL2が負側に増大するため、第1期間T1において、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が負となり易い。
【0052】
また、比較例の制御では、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1,第3コイル81,83の単位巻き数あたりの第1,第3電圧V1r,V3rよりも低いことに起因して、第2制御期間TBにおいて、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が正となる。ここで、第2制御期間TBとは、オンされるスイッチがQ2,Q3,Q6,Q7,Q10,Q11である期間であり、オフされるスイッチがQ1,Q4,Q5,Q8,Q9,Q12である期間である。この場合、第2コイル82に流れる電流IL2が正側に増大するため、第3期間T3において、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が正となり易い。
【0053】
なお、各制御期間TA,TBにおける第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量について、補助的に説明する。ここでは、第1~第3コイル81~83の関係を、第1~第3等価コイルがΔ結線された等価回路と考える。ここで、第1等価コイルは、第1コイル81及び第2コイル82の関係を表すものであり、第2等価コイルは、第1コイル81及び第3コイル83の関係を表すものであり、第3等価コイルは、第2コイル82及び第3コイル83の関係を表すものである。この場合、第2コイル82に流れる電流IL2は、第1等価コイルを流れる電流と、第3等価コイルを流れる電流の和となる。
【0054】
第1制御期間TAにおいて、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rよりも低い場合、第1等価コイルを流れる電流の時間変化量が負となる。第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rよりも低い場合、第3等価コイルを流れる電流の時間変化量が負となる。このため、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が負となる。
【0055】
また、第2制御期間TBにおいて、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rよりも低い場合、第1等価コイルを流れる電流の時間変化量が正となる。第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rよりも低い場合、第3等価コイルを流れる電流の時間変化量が正となる。このため、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が正となる。
【0056】
詳しくは、各制御期間TA,TBにおける第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量は、第1~第3コイル81~83の電圧Vt1~Vt3を用いて、下式(c1)で表される。
【0057】
【数1】
ここで、L21は第1等価コイルの相互インダクタンスであり、L23は第3等価コイルの相互インダクタンスである。本実施形態において、各相互インダクタンスL21,L23は同じ値とされる。上式(c1)の右辺において、第1項は第1等価コイルを流れる電流の時間変化量を示し、第2項は第3等価コイルを流れる電流の時間変化量を示す。なお、相互インダクタンスL21,L23は互いに異なる値とされてもよい。
【0058】
比較例の制御において、第1制御期間TAでは、第1コイル81の電圧Vt1が400Vとされ、第2コイル82の電圧Vt2が290Vとされ、第3コイル83の電圧Vt3が50Vとされる。このため、上式(c1)において、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が負となる。
【0059】
比較例の制御において、第2制御期間TBでは、第1コイル81の電圧Vt1が-400Vとされ、第2コイル82の電圧Vt2が-290Vとされ、第3コイル83の電圧Vt3が-50Vとされる。このため、上式(c1)において、第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が正となる。
【0060】
上述したように、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rが、第1,第3コイル81,83の単位巻き数あたりの第1,第3電圧V1r,V3rよりも低い場合、第2フルブリッジ回路60でスイッチング損失が増大してしまうことが懸念される。
【0061】
そこで、本実施形態では、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づけられる。本実施形態では、第1電圧V1rが400Vに代えて330Vとされ、第3電圧V3rが50Vに代えて40Vとされる。この場合、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rは41.25Vであり、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rは41.43Vであり、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rは40Vである。これにより、第2,第3コイル82,83の単位巻き数あたりの第2,第3電圧V2r,V3rが比較例よりも低減され、比較例の制御と比べて、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づけられる。この場合、各制御期間TA,TBにおける第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量は略0とされる。
【0062】
なお、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rを互いに近づけるとは、例えば以下のようにすることである。第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rをV1aとし、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rをV2aとし、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rをV3aとする。V1a,V2a,V3aのうち、最も小さい値をVmとする。この場合において、V1a/Vm,V2a/Vm,V3a/Vmが所定範囲の場合をV1a,V2a,V3aが互いに近い場合とする。所定範囲は、例えば、1~1.1であり、望ましくは1~1.06であり、より望ましくは1~1.03である。
【0063】
図9は、本実施形態の制御の一例を示すタイムチャートであり、各制御期間TA,TBにおける第2コイル82に流れる電流IL2の時間変化量が略0とされる制御の一例である。図9において、(a)~(i)は、図2の(a)~(i)に対応している。本実施形態でも、第1コイル81から第2,第3コイル82,83へと電力が伝達される。
【0064】
第5期間T5は第5スイッチQ5がオンからオフへ切り替えられる直前の期間であり、第6期間T6は第5スイッチQ5がオンからオフへ切り替えられた直後の期間である。第5期間T5及び第6期間T6の間には、第5~第8スイッチQ5~Q8がオフされるデッドタイムTDが存在する。
【0065】
図10~12は、第5期間T5、第5期間T5後のデッドタイムTD及び第6期間T6の電流経路を示す図である。なお、図10~12において、先の図1に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、第3フルブリッジ回路70、第3コンデンサ71及び第3コイル83等の図示は省略している。
【0066】
図10に、第5期間T5の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1コンデンサ51→第3スイッチQ3→第1コイル81→第2スイッチQ2→第1コンデンサ51となる。第1コイル81に流れる電流IL1の符号は負である。一方、第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第5スイッチQ5→第2コイル82→第8スイッチQ8→第2コンデンサ61となる。第2コイル82に流れる電流IL2の符号は正である。第6,第7スイッチQ6,Q7のソースドレイン間に形成される寄生容量には、ソース側よりもドレイン側の電位が高くなるように電荷が蓄積される。
【0067】
図11に、第5期間T5後におけるデッドタイムTDの電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第5期間T5と同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオフに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第6スイッチQ6→第2コイル82→第7スイッチQ7→第2コンデンサ61となる。この場合、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオフされることに伴いスイッチング損失が発生する。ただし、このスイッチング損失は、第2フルブリッジ回路60に流れる電流が比較的小さいため、比較例の制御において、各スイッチQ5~Q8がオンされることに伴い発生するスイッチング損失に比べて小さくなる。
【0068】
第5期間後のデッドタイムTDでは、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が正となる向きに、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7の寄生容量に蓄積された電荷が放電される。本実施形態では、第5期間後のデッドタイムTDとして、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7の寄生容量に蓄積された電荷が放電されるのに十分な期間が設定される。
【0069】
図12に、第6期間T6の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第5期間T5後のデッドタイムTDと同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第6スイッチQ6→第2コイル82→第7スイッチQ7→第2コンデンサ61となる。この場合、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7の寄生容量に蓄積された電荷が放電された状態で、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされる。また、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされても、対向アームの第5,第8ボディダイオードD5,D8にリカバリ電流が流れない。そのため、第2フルブリッジ回路60を流れる電流が低減された状態で、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされる。その結果、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオンされることに伴うスイッチング損失を低減することができる。
【0070】
第7期間T7は第5スイッチQ5がオフからオンへ切り替えられる直前の期間であり、第8期間T8は第5スイッチQ5がオフからオンへ切り替えられた直後の期間である。第7期間T7及び第8期間T8の間には、第5~第8スイッチQ5~Q8がオフされるデッドタイムTDが存在する。
【0071】
図13~15は、第7期間T7、デッドタイムTD及び第8期間T8の電流経路を示す図である。なお、図13~15において、先の図1に示した構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、第3フルブリッジ回路70、第3コンデンサ71及び第3コイル83等の図示は省略している。
【0072】
図13に、第7期間T7の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第1コンデンサ51→第1スイッチQ1→第1コイル81→第4スイッチQ4→第1コンデンサ51となる。第1コイル81に流れる電流IL1の符号は正である。一方、第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第7スイッチQ7→第2コイル82→第6スイッチQ6→第2コンデンサ61となる。第2コイル82に流れる電流IL2の符号は負である。第5,第8スイッチQ5,Q8のソースドレイン間に形成される寄生容量には、ソース側よりもドレイン側の電位が高くなるように電荷が蓄積される。
【0073】
図14に、第7期間T7後におけるデッドタイムTDの電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第7期間T7と同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオフに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第8スイッチQ8→第2コイル82→第5スイッチQ5→第2コンデンサ61となる。この場合、第6スイッチQ6及び第7スイッチQ7がオフされることに伴いスイッチング損失が発生する。このスイッチング損失は、第2フルブリッジ回路60に流れる電流が比較的小さいため、比較例の制御において、各スイッチQ5~Q8がオンされることに伴い発生するスイッチング損失よりも小さくなる。
【0074】
第7期間T7後のデッドタイムTDでは、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が負となる向きに、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8の寄生容量に蓄積された電荷が放電される。本実施形態では、第5期間後のデッドタイムTDとして、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8の寄生容量に蓄積された電荷が放電されるのに十分な期間が設定される。
【0075】
図15に、第8期間T8の電流経路を示す。第1フルブリッジ回路50側の電流経路は、第7期間T7後のデッドタイムTDと同じである。一方、第2フルブリッジ回路60においては、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンに切り替えられる。第2フルブリッジ回路60側の電流経路は、第2コンデンサ61→第8スイッチQ8→第2コイル82→第5スイッチQ5→第2コンデンサ61となる。この場合、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8の寄生容量に蓄積された電荷が放電された状態で、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされる。また、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされても、対向アームの第6,第7ボディダイオードD6,D7にリカバリ電流が流れない。そのため、第2フルブリッジ回路60を流れる電流が低減された状態で、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされる。その結果、第5スイッチQ5及び第8スイッチQ8がオンされることに伴うスイッチング損失を低減することができる。
【0076】
図9~15では、第2フルブリッジ回路60において、スイッチング損失が低減されることを説明した。本実施形態では、各コイル81~83単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づけられるため、第1,第3フルブリッジ回路50,70においても、第2フルブリッジ回路60と同様の理由により、スイッチング損失を低減することができる。
【0077】
続いて、制御部100が行う制御について説明する。
【0078】
制御部100は、第1~第3電圧センサ91~93により検出された第1~第3電圧V1r~V3rを取得する。制御部100は、取得した第1~第3電圧V1r~V3rに基づいて、第1~第3電圧V1r~V3rの指令値を設定する。
【0079】
本実施形態では、制御部100は、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づくように、第1~第3電圧V1r~V3rの指令値を設定する。具体的には、制御部100は、第1電圧V1rの第1指令値を330Vとし、第2電圧V2rの第2指令値を290Vとし、第3電圧V3rの第3指令値を40Vとする。
【0080】
制御部100は、第1~第3電圧センサ91~93により検出される第1~第3電圧の検出値V1r~V3rが、設定された第1~第3指令値になるように、スイッチング制御を行う。例えば、制御部100は、AC‐DCコンバータ11の出力電圧を制御することにより、第1電圧V1rを第1指令値に制御する。また、例えば、制御部100は、第9~第12スイッチQ9~Q12のスイッチング制御を行うことにより、第3電圧V3rを第3指令値に制御する。
【0081】
図16に、制御部100が所定周期で繰り返し実行する処理の手順を示す。
【0082】
ステップS10では、電力変換装置40の駆動要求があるか否かを判定する。ステップS10において否定判定した場合、ステップS11に進み、電力変換装置40を待機モードに設定する。ステップS12では、第1~第12スイッチQ1~Q12及び第1,第2変圧スイッチSW1,SW2をオフする。
【0083】
ステップS10において肯定判定した場合、ステップS13に進み、動作モードに設定する。この場合、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70の中から、電力供給源となる送電回路、電力供給源から給電される受電回路を選択する。また、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70の中から損失低減対象を選択する。損失低減対象とは、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70のうち、スイッチング損失の低減対象となる回路である。本実施形態では、第1フルブリッジ回路50を送電回路として選択し、第2,第3フルブリッジ回路60,70を受電回路として選択する。また、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70を損失低減対象として選択する。
【0084】
なお、本実施形態では、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1が「送電端子」に相当し、第1コイル81が「送電コイル」に相当する。第2,第3高電位側端子CH2,CH3及び第2,第3低電位側端子CL2,CL3が「受電端子」に相当し、第2,第3コイル82,83が「受電コイル」に相当する。第1,第3スイッチQ1,Q3が「上アーム送電スイッチ」に相当し、第2,第4スイッチQ2,Q4が「下アーム送電スイッチ」に相当し、第5,第7,第9,第11スイッチQ5,Q7,Q9,Q11が「上アーム受電スイッチ」に相当し、第6,第8,第10,第12スイッチQ6,Q8,Q10,Q12が「下アーム受電スイッチ」に相当する。
【0085】
ステップS14では、第1~第3電圧センサ91~93により検出された第1~第3電圧の検出値V1r~V3rを取得する。ステップS15では、取得した第1~第3電圧V1r~V3rに基づいて、第1~第3指令値を設定する。本実施形態では、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づくように、第1~第3指令値を設定する。ステップS16では、取得した第1~第3電圧V1r~V3rが、設定した第1~第3指令値になるようにスイッチング制御を行う。
【0086】
図17は、本実施形態に係る制御と、比較例の制御とで、第2フルブリッジ回路60で発生するスイッチング損失を比較した図である。図17では、第1コイル81側から第2,第3コイル82,83側へと電力が伝達される場合のスイッチング損失を示す。条件Aでは、第1コイル81側から第2コイル82側へと伝達される電力Pout1が1.6kWとされ、第1コイル81側から第3コイル83側へと伝達される電力Pout2が0.6kWとされる。条件Bでは、電力Pout1が1.6kWとされ、電力Pout2が1.2kWとされる。条件Cでは、電力Pout1が1.6kWとされ、電力Pout2が1.8kWとされる。各条件A~Cにおいて、比較例のスイッチン損失に比べて、本実施形態ではスイッチング損失を9割ほど低減できることが確かめられた。
【0087】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに近づくように、第1~第3指令値が設定されることに加えて、1スイッチング周期内に還流期間が設けられる。
【0088】
図18は、本実施形態の制御の一例を示すタイムチャートであり、各スイッチQ1~Q4の1スイッチング周期内に、第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2が設けられる制御の一例である。図18において、(a)~(i)は、図9の(a)~(i)に対応している。本実施形態でも、第1コイル81から第2,第3コイル82,83へと電力が伝達される。
【0089】
第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2は、第1コイル81の第1端及び第2端が短絡される期間である。具体的には、第1還流期間TC1では、第1フルブリッジ回路50において、第1,第3スイッチQ1,Q3がオンされ、第2,第4スイッチQ2,Q4がオフされる。また、第2還流期間TC2では、第1フルブリッジ回路50において、第2,第4スイッチQ2,Q4がオンされ、第1,第3スイッチQ1,Q3がオフされる。
【0090】
なお、第1還流期間TC1において、第2,第4スイッチQ2,Q4がオンされ、第1,第3スイッチQ1,Q3がオフされてもよい。また、第2還流期間TC2において、第1,第3スイッチQ1,Q3がオンされ、第2,第4スイッチQ2,Q4がオフされてもよい。
【0091】
1スイッチング周期内に第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2が設けられることにより、第1コイル81の電圧Vt1が0Vとなる期間が生じる。1スイッチング周期内における第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2の割合が大きいほど、第1コイル81の電圧Vt1の実効値が低減される。この場合でも、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rを低減するのと同じ効果を得ることができる。そのため、例えば第1電圧V1rの第1指令値の設定範囲に制約等があり、第1指令値を低減できない場合でも、第1,第2還流期間TC1,TC2を設けることにより、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0092】
そこで、制御部100は、第1電圧V1rの第1指令値を低減することに加えて、第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2を設ける。本実施形態では、制御部100は、第1電圧V1rの第1指令値を330Vとすることに代えて、第1電圧V1rの第1指令値を350Vとするとともに、第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2を設ける。この場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1~第3指令値の設定方法を変更する。
【0094】
第1~第3指令値の設定範囲の制約等に起因して、各コイル81~83の単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rを互いに近づけることができない場合がある。この場合、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70のうち一部の回路では、スイッチング損失が増大してしまう。
【0095】
そこで、本実施形態では、第1~第3フルブリッジ回路50,60,70のうち、優先的にスイッチング損失を低減すべき回路が損失低減対象として選択される。本実施形態では、スイッチング損失が増大し易い回路として、スイッチング速度が低いスイッチで構成されたフルブリッジ回路や、伝達電力が大きくなり易い送電回路が損失低減対象として選択される。
【0096】
本実施形態では、第1~第3コイル81~83のうち、損失低減対象であるフルブリッジ回路に接続されたコイルが特定コイルとされ、特定コイルの単位巻き数あたりの電圧が、残りのコイルの単位巻き数あたりの電圧よりも高くされる。
【0097】
以下、本実施形態に係る電力変換装置40の構成について、図19を用いて説明する。第3フルブリッジ回路70は、第9,第10,第11,第12スイッチQ9,Q10,Q11,Q12に代えて、第13,第14,第15,第16スイッチQ13,Q14,Q15,Q16を備えている。第13~第16スイッチQ13~Q16は、Siで構成されたIGBTである。各スイッチQ13~Q16には、フリーホイールダイオードとしての第13~第16ダイオードD13~D16が逆並列接続されている。第13~第16スイッチQ13~Q16のスイッチング速度は、第1~第8スイッチQ1~Q8のスイッチング速度よりも低い。なお、本実施形態において、第3フルブリッジ回路70が「特定受電回路」に相当する。
【0098】
次に、制御部100が所定周期で繰り返し実行する処理について、図16を用いて説明する。本実施形態では、ステップS13において、第2フルブリッジ回路60を送電回路として選択し、第1,第3フルブリッジ回路50,70を受電回路として選択する。スイッチング速度が低いスイッチで構成された第3フルブリッジ回路70と、送電回路である第2フルブリッジ回路60とを損失低減対象として選択する。
【0099】
なお、本実施形態において、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2が「送電端子」に相当し、第2コイル82が「送電コイル」に相当し、第5~第8スイッチQ5~Q8が「送電スイッチ」に相当する。第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1が「受電端子」に相当し、第1~第4スイッチQ1~Q4が「受電スイッチ」に相当し、第13~第16スイッチQ13~Q16が「特定受電スイッチ」に相当する。
【0100】
本実施形態では、ステップS15において、特定コイルである第2,第3コイル82,83の単位巻き数あたりの第2,第3電圧V2r,V3rを、残りのコイルである第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rよりも高くする。具体的には、制御部100は、第1指令値を320Vとし、第2指令値を300Vとし、第3指令値を55Vとする。この場合、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rは40Vであり、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rは43Vであり、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rは55Vである。これにより、単位巻き数あたりの各コイル81~83の各電圧V1r~V3rが高いのは、高い方から順に第3コイル83、第2コイル82及び第1コイル81となる。ここで、第3コイル83の単位巻き数あたりの第3電圧V3rを、第2コイル82の単位巻き数あたりの第2電圧V2rよりも高くしたのは、スイッチング速度が低いスイッチを有するフルブリッジ回路のスイッチング損失低減を、送電回路のスイッチング損失低減よりも優先したためである。
【0101】
図20は、本実施形態の制御の一例を示すタイムチャートであり、第2,第3フルブリッジ回路60,70のスイッチング損失が優先的に低減される制御の一例である。図20において、(a)~(f)は、図9の(a)~(f)に対応している。
【0102】
時刻t1において、第5,第8スイッチQ5,Q8がオフされ、第6,第7スイッチQ6,Q7がオンされる。ここで、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が正とされる。そのため、第2フルブリッジ回路60のスイッチング損失を低減することができる。
【0103】
時刻t2において、第13,第16スイッチQ13,Q16がオフされ、第14,第15スイッチQ14,Q15がオンされる。ここで、第3コイル83に流れる電流IL3の符号が正とされる。そのため、第3フルブリッジ回路70のスイッチング損失を低減することができる。
【0104】
時刻t3において、第6,第7スイッチQ6,Q7がオフされ、第5,第8スイッチQ5,Q8がオンされる。ここで、第2コイル82に流れる電流IL2の符号が負とされる。そのため、第2フルブリッジ回路60のスイッチング損失を低減することができる。
【0105】
時刻t4において、第14,第15スイッチQ14,Q15がオフされ、第13,第16スイッチQ13,Q16がオンされる。ここで、第3コイル83に流れる電流IL3の符号が負とされる。そのため、第3フルブリッジ回路70のスイッチング損失を低減することができる。
【0106】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0107】
各フルブリッジ回路50,60,70のうち、第3フルブリッジ回路70が損失低減対象として設定される。ここで、スイッチのスイッチング速度が低いほど、スイッチング損失が大きくなり易い。そのため、スイッチング速度が低い第13~第16スイッチQ13~Q16を有する第3フルブリッジ回路70において、スイッチング損失を低減することができる。
【0108】
各フルブリッジ回路50,60,70のうち、送電回路である第2フルブリッジ回路60が損失低減対象として設定される。ここで、送電回路では伝達される電力が増大し易いため、スイッチング損失が大きくなり易い。そのため、スイッチング損失が大きくなり易い第2フルブリッジ回路60において、スイッチング損失を低減することができる。
【0109】
単位巻き数あたりの第3コイル83の電圧Vt3が、単位巻き数あたりの第2コイル82の電圧Vt2よりも高くされる。これにより、スイッチング損失低減の優先度が高い第3フルブリッジ回路70において、スイッチング損失を的確に低減することができる。
【0110】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図21に示すように、電力変換装置40が第4フルブリッジ回路110及び第5コンデンサ111を備えている。図21において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0111】
第4フルブリッジ回路110は、第17~第20スイッチQ17~Q20を備えている。本実施形態において、Siで構成された第17~第20スイッチQ17~Q20は、NチャネルMOSFETである。第17スイッチQ17及び第19スイッチQ19のドレインには、電力変換装置40の第5高電位側端子CH5が接続されている。第17スイッチQ17のソースには、第18スイッチQ18のドレインが接続され、第19スイッチQ19のソースには、第20スイッチQ20のドレインが接続されている。第18スイッチQ18及び第20スイッチQ20のソースには、電力変換装置40の第5低電位側端子CL5が接続されている。第5高電位側端子CH5には、第5コンデンサ111の第1端と、電気負荷32の第1端とが接続され、第5低電位側端子CL5には、第5コンデンサ111の第2端と、電気負荷32の第2端とが接続されている。なお、第5コンデンサ111は、第4フルブリッジ回路110の内部に設けられていてもよい。
【0112】
なお、第17~第20スイッチQ17~Q20は、SiC系材料やGaN系材料などによって構成されたNチャネルMOSFETであってもよい。また、電気負荷32には、供給電圧が一定であること、または供給電圧の変動が所定範囲内となることが要求される定電圧負荷が含まれる。定電圧負荷の具体例としては、ナビゲーション装置や、オーディオ装置、メータ装置及び各種ECUが挙げられる。
【0113】
トランス80は、第4コイル84をさらに備えている。第4コイル84の第1端には、第17スイッチQ17のソース及び第18スイッチQ18のドレインが接続され、第4コイル84の第2端には、第19スイッチQ19のソース及び第20スイッチQ20のドレインが接続されている。第4コイル84は、例えばコアを介して、第1~第3コイル81~83と互いに磁気結合する。第1コイル81の第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第4コイル84には、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0114】
電力変換装置40は、第4電圧センサ94を備えている。第4電圧センサ94は、第5コンデンサ111の端子電圧である第4電圧V4rを検出する。検出された第4電圧V4rは、制御部100に入力される。制御部100は、第1~第12,第17~第20スイッチQ1~Q12,Q17~Q20、第1変圧スイッチSW1及び第2変圧スイッチSW2をオンオフする。
【0115】
なお、本実施形態において、第5高電位側端子CH5及び第5低電位側端子CL5は「受電端子」に相当し、第4コイル84は「受電コイル」に相当し、第4フルブリッジ回路110は「受電回路」に相当し、第17~第20スイッチQ17~Q20は「受電スイッチ」に相当する。
【0116】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0117】
・第1実施形態において、ステップS15の処理に先立ち、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに異なるか否かを判定する処理を行ってもよい。ここで、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rの算出には、ステップS14で取得した第1~第3電圧V1r~V3rを用いればよい。
【0118】
例えば、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに異なるか否かの判定には、例えば、上述したV1a/Vm,V2a/Vm,V3a/Vmを用いればよい。この場合、例えば、V1a,V2a,V3aのうち最も小さい値であるVmを選択する処理と、V1a,V2a,V3aをVmで除算する処理とを行う。V1a/Vm,V2a/Vm,V3a/Vmが上記所定範囲を外れる場合、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに異なると判定すればよい。
【0119】
各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに異なると判定した場合、ステップS15に進めばよい。一方、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rが互いに異なると判定しない場合、前回の制御周期での第1~第3指令値を維持したまま、ステップS16に進めばよい。
【0120】
・第3実施形態において、ステップS15の処理に先立ち、第2,第3コイル82,83の単位巻き数あたりの第2,第3電圧V2r,V3rが、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1r以下であるかを判定する処理を行ってもよい。ここで、各コイルの単位巻き数あたりの各電圧V1r~V3rの算出には、ステップS14で取得した第1~第3電圧V1r~V3rを用いればよい。
【0121】
第2,第3コイル82,83の単位巻き数あたりの第2,第3電圧V2r,V3rが、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1r以下であると判定した場合、ステップS15に進めばよい。一方、第2,第3コイル82,83の単位巻き数あたりの第2,第3電圧V2r,V3rが、第1コイル81の単位巻き数あたりの第1電圧V1rよりも高いと判定した場合、前回の制御周期での第1~第3指令値を維持したまま、ステップS16に進めばよい。
【0122】
・第2実施形態において、送電側である第1~第4スイッチQ1~Q4の1スイッチング周期内に、第1還流期間TC1及び第2還流期間TC2が設けられるとしたが、これに限られない。受電側である第9~第12スイッチQ9~Q12の1スイッチング周期内に、還流期間が設けられてもよい。
【0123】
・第3実施形態において、制御部100は、第2,第3フルブリッジ回路60,70を損失低減対象として設定することに代えて、第3フルブリッジ回路70のみを損失低減対象として設定してもよい。この場合、制御部100は、特定コイルである第3コイル83の単位巻き数あたりの電圧を、残りのコイルである第1,第2コイル81,82の単位巻き数あたりの電圧よりも高くすればよい。
【0124】
・電力変換装置40は、AC‐DCコンバータ11を備えていなくてもよい。この場合、第1高電位側端子CH1には第3蓄電池12の正極端子が接続され、第1低電位側端子CL1には第3蓄電池12の負極端子が接続されていればよい。第3蓄電池は、充放電可能な2次電池である。第3蓄電池は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。第3蓄電池の定格電圧(例えば400V)は、第1蓄電池20の定格電圧及び第2蓄電池30の定格電圧よりも高い。
【0125】
・電力変換装置40は、各フルブリッジ回路50,60,70,110に代えて、ハーフブリッジ回路を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0126】
80…トランス、81~84…第1~第4コイル、50,60,70,110…第1~第4フルブリッジ回路、100…制御部、CH1~CH5…第1~第5高電位側端子、CL1~CL5…第1~第5低電位側端子、Q1~Q20…第1~第20スイッチ。
図1
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図10
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