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特開2022-182464過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法
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  • 特開-過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182464
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20221201BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01R31/28 V
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090035
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森尻 敬治
【テーマコード(参考)】
2G132
5H730
【Fターム(参考)】
2G132AA11
2G132AB01
2G132AD01
2G132AD03
2G132AK07
2G132AK13
2G132AL05
2G132AL31
5H730AA13
5H730AS01
5H730BB11
5H730BB57
5H730DD04
5H730FD41
5H730FG12
5H730FG22
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大電流の印加やテスト用パッドの使用を伴うことなく、精度よく過電流保護性能を評価する。
【解決手段】過電流保護性能評価回路は、第1トランジスタMP2、第2トランジスタMP3、及び、テストモード切替部10を備える。第1テストモードでは、パワートランジスタMP1及び第1トランジスタMP2をオン状態にするとともに第2トランジスタMP3をオフ状態にして、パワートランジスタMP1のオン抵抗が測定される。第2テストモードでは、パワートランジスタMP1及び第1トランジスタMP2をオフ状態にするとともに第2トランジスタMP3をオン状態にして、過電流保護回路4で過電流保護動作が発動するパワートランジスタMP1のソース-ドレイン間の電位差が測定される。それぞれの測定はパワートランジスタMP1のソース、ドレインに接続する端子から行うことができ、その測定結果から性能評価を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワートランジスタを内蔵するスイッチング電源が備える過電流保護回路の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路であって、
前記パワートランジスタはソースが第1端子に接続され、ドレインが第2端子に接続されており、
前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるようにゲートが前記パワートランジスタのゲートに接続された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタと、
前記過電流保護性能を評価するための第1テストモード又は第2テストモードを選択的に切り替えるためのテストモード切替部と、
を備え、
前記テストモード切替部は、前記第1端子と前記第2端子から、
前記第1テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗を測定可能とし、
前記第2テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を測定可能とする、過電流保護性能評価回路。
【請求項2】
前記第2テストモードでは、前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を次第に低下させ、前記過電流保護回路による前記過電流保護動作が発動した際の前記電位差を測定する、請求項1に記載の過電流保護性能評価回路。
【請求項3】
前記第2テストモードにおいて、前記過電流保護回路が動作した場合、前記第2トランジスタをオフ状態にラッチさせるように構成される、請求項1又は2に記載の過電流保護性能評価回路。
【請求項4】
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタとW/Lサイズが同じである、請求項1から3のいずれか一項に記載の過電流保護性能評価回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の過電流保護性能評価回路を備える、スイッチング電源。
【請求項6】
パワートランジスタを内蔵するスイッチング電源が備える過電流保護回路の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路を用いた評価方法であって、
前記過電流保護性能評価回路は、ソースを第1端子に、ドレインを第2端子に接続した前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるように構成された第1トランジスタと、前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタと、
を備え、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗を前記第1端子と前記第2端子から測定する第1テストモードを実行するステップと、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を前記第1端子と前記第2端子から測定する第2テストモードを実行するステップと、
前記電位差を前記オン抵抗で割ることにより、前記過電流保護回路の過電流保護値を算出するステップと
を備える、過電流保護性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタを内蔵するスイッチング電源では、パワートランジスタを流れる電流が過大になった場合に、パワートランジスタをオフ状態にすることで電流を抑制するための過電流保護動作を行う機能を備えるものがある。過電流保護動作には、大きく分けて2方式ある。1つは、パワートランジスタに流れる電流が過大となった場合、パワートランジスタをオフ状態にし、再起動するまでオフ状態を保持するラッチ方式である。もう一つは、パワートランジスタに流れる電流が過大となった場合に、パワートランジスタを一旦オフ状態にするが、次の周期で再びオン状態としてパワートランジスタに流れる電流が過大であるかどうかを再判定することを繰り返し実施するパルスバイパルス方式である。
【0003】
このような過電流保護動作が実施されるトリガーとなる過電流保護値はスイッチング電源の仕様によって異なり、その値は数アンペア以上に達するものもある。スイッチング電源の出荷検査では、品質管理の一環として、このような過電流保護値が評価対象の一つとなるが、検査環境によっては、所望の大電流を印加するための設備がない場合もある。このような課題に対処するために、例えば特許文献1では、スイッチング電源回路を構成する半導体集積回路のテスト用パッドを用いて、半導体集積回路において過電流化状態を疑似的に模擬して過電流保護値を評価するためのテスト方法に関する技術が開示されている。この文献では、あるテストモードにおいて、スイッチング動作を行うためのPWM信号に関わらずパワートランジスタをオフ状態にしながらパワートランジスタのドレイン電圧を変化させ、PWM信号をモニタするためのモニタ用パッドにて過電流保護動作が有効となるときのパワートランジスタのドレイン電圧を測定する。更に、別のテストモードにおいてパワートランジスタのオン抵抗を測定し、前述のドレイン電圧を当該オン抵抗で割ることにより、過電流保護値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-254061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、過電流保護値を算出するためのドレイン電圧を測定する際に、モニタ用パッドが必要となってしまい、半導体集積回路のチップレイアウト面積が増加する。また製品によってパッケージの外部端子の数に制限があり、テスト用パッドやモニタ用パッドをパッケージの外部端子として設けることができない場合、パッケージ後の出荷検査に適用することができない。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、大電流の印加やテスト用パッドの使用を伴うことなく、精度よく過電流保護性能を評価可能な過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る過電流保護性能評価回路は、上記課題を解決するために、
パワートランジスタを内蔵するスイッチング電源が備える過電流保護回路の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路であって、
前記パワートランジスタはソースが第1端子に接続され、ドレインが第2端子に接続されており、
前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるようにゲートが前記パワートランジスタのゲートに接続された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタと、
前記過電流保護性能を評価するための第1テストモード又は第2テストモードを選択的に切り替えるためのテストモード切替部と、
を備え、
前記テストモード切替部は、前記第1の端子と前記第2の端子から、
前記第1テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗を測定可能とし、
前記第2テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を測定可能とする。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係るスイッチング電源は、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る過電流保護性能評価回路を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る過電流保護性能評価方法は、上記課題を解決するために、
パワートランジスタを内蔵するスイッチング電源が備える過電流保護回路の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路を用いた評価方法であって、
前記過電流保護性能評価回路は、ソースを第1端子に、ドレインを第2端子に接続した前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるように構成された第1トランジスタと、前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタと、
を備え、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗を前記第1端子と前記第2端子から測定する第1テストモードを実行するステップと、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を前記第1端子と前記第2端子から測定する第2テストモードを実行するステップと、
前記電位差を前記オン抵抗で割ることにより、前記過電流保護回路の過電流保護値を算出するステップと
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、大電流の印加やテスト用パッドの使用を伴うことなく、精度よく過電流保護性能を評価可能な過電流保護性能評価回路、スイッチング電源、及び、過電流保護性能評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るスイッチング電源回路の回路図である。
図2】一実施形態に係る過電流保護値の算出方法を示すフローチャートである。
図3】通常モードから第1テストモードに切り替えられた場合におけるスイッチング電源回路の各部の動作状態を示すタイムチャートである。
図4】通常モードから第2テストモードに切り替えられた場合におけるスイッチング電源回路の各部の動作状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は一実施形態に係るスイッチング電源回路1の回路図である。スイッチング電源回路1は、ドライバ回路2からの信号に基づいてパワートランジスタMP1をスイッチング動作することにより所定の電圧で負荷に対して電力を供給可能な回路として構成され、半導体集積回路として構成可能であり、チップ状態あるいはパッケージ後のいずれでもよい。
【0014】
パワートランジスタMP1は、ソースが高電位電源端子であるV+端子(第1端子)に接続され、ドレインが出力端子であるSW端子(第2端子)に接続され、ゲートがドライバ回路2に接続されている。過電流保護回路4を構成するトランジスタMP2(第1トランジスタ)は、PMOSトランジスタからなる過電流検出トランジスタであり、ソースが過電流検出抵抗RSENSEを介してV+端子に接続され、ドレインがSW端子に接続され、ゲートがドライバ回路2に接続されている。コンパレータCOMP1は、反転入力端子がトランジスタMP2のソースに接続され、非反転入力端子が基準電圧源VROCPに接続されている。
【0015】
過電流保護回路4は、ドライバ回路2からの信号を受けて駆動されるパワートランジスタMP1のソース・ドレイン間に流れる電流を、トランジスタMP2の電流に置き換えて検出するように構成される。過電流検出抵抗RSENSEの両端に発生する電圧VR1は、トランジスタMP2に流れる電流をI2とすると、次式
VR1=I2×RSENSE (1)
となる。ここで、RSENSEは過電流検出抵抗RSENSEの抵抗値である。
【0016】
コンパレータCOMP1は、式(1)で表される電圧VR1と基準電圧源VROCPとを比較し、その比較結果に応じてコンパレータCOMP1の出力端子からの電圧によってドライバ回路2を制御する。そしてドライバ回路2によってパワートランジスタMP1のゲートが制御されることで、パワートランジスタMP1に流れる電流が基準電圧源VROCPの電圧に対応した電流値(過電流保護値ILIMIT)に制限される。
【0017】
スイッチング電源回路1は、上記構成の過電流保護回路4の過電流保護性能を評価可能に構成される。本実施形態では、過電流保護回路4の過電流保護性能に関する評価として、過電流保護値ILIMITの算出が行われる。具体的には、スイッチング電源回路1は、過電流保護値ILIMITの算出を行うために必要なパラメータ計測を行うためのテストモードを切り替えるためのテストモード切替部10を備える。
【0018】
テストモード切替部10は、スイッチング電源回路1が通常動作可能な通常モードと、少なくとも1つのテストモードとを切替するための回路である。本実施形態では、テストモードとして、第1テストモード及び第2テストモードが用意されている。各テストモードの詳細については後述するが、第1テストモードはパワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1を測定するためのテストモードであり、第2テストモードは過電流保護回路4の出力がLowからHighに切り替わるときのV+端子V+とSW端子との間の電位差VM2を測定するためのテストモードである。
【0019】
テストモード切替部10には、スイッチング電源回路1で実施されるテストモードを選択的に切り替えるためのテストモード信号が入力される。本実施形態では、テストモード信号として、第1テストモードに対応する第1テストモード信号TMS1と、第2テストモードに対応する第2テストモード信号TMS2とが、それぞれテストモード切替部10に入力されるように構成される。テストモード切替部10は、第1テストモード信号TMS1及び第2テストモード信号TMS2の入力状態に応じて、通常モード、第1テストモード、第2テストモードに対応する回路構成を切替可能である。具体的には、第1テストモード信号TMS1、及び、第2テストモード信号TMS2がともにLowである場合には通常モードが選択され、第1テストモード信号TMS1がHighであり、且つ、第2テストモード信号TMS2がLowである場合には第1テストモードが選択され、第1テストモード信号TMS1及び第2テストモード信号TMS2の両方がHighである場合には第2テストモードが選択される。
【0020】
このようなテストモード切替部10はトランジスタMP3(第2トランジスタ)を含んで構成される。トランジスタMP3は、ソースがトランジスタMP2のソースに接続され、ドレインがトランジスタMP2のドレインに接続され、ゲートがNAND回路M8の出力端子に接続される。トランジスタMP3は前述のトランジスタMP2とW/Lサイズが略同一なPMOSトランジスタである。
【0021】
尚、図1に示すテストモード切替部10の回路構成は一例であり、同等の機能を実現可能な限りにおいて適宜設計変更可能である。
【0022】
ここで過電流保護性能の評価指標となる過電流保護値ILIMITは、パワートランジスタMP1のドレイン電流を大きくしていき、過電流保護回路4の出力がLowからHighに変化することで過電流保護動作が発動する際にパワートランジスタMP1に流れている電流である。通常モードでは、トランジスタMP3はオフ状態であることでトランジスタMP3のオン抵抗が十分大きいとすると、過電流保護値ILIMITは次式
で表される。(2)式に示されるように、過電流保護値ILIMITは、パワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1と、過電流保護回路4の出力がLowからHighに切り替わるときのV+端子とSW端子との間における電位差VM2を用いて算出可能であり、これらは後述するように各テストモードで測定される。
【0023】
図2は一実施形態に係る過電流保護値ILIMITの算出方法を示すフローチャートである。本方法では、まず第1テストモードを実行することによりパワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1を測定する(ステップS1)。ステップS1で実行される第1テストモードでは、パワートランジスタMP1及びトランジスタMP2がオン状態、トランジスタMP3がオフ状態にされた状態で、パワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1の測定が行われる。
【0024】
続く第2テストモードでは、過電流保護回路4の出力がLowからHighに切り替わるときのV+端子とSW端子との間の電位差VM2を測定する(ステップS2)。ステップS2で実行される第2テストモードでは、パワートランジスタMP1及びトランジスタMP2がオフ状態、トランジスタMP3がオン状態にされた状態で、過電流保護回路4の出力がLowからHighに切り替わるときの電圧VM2が測定される。
【0025】
そしてステップS1で測定されたオン抵抗RONMP1と、ステップS2で測定された電位差VM2とを用いて、上記(2)式に基づいて、過電流保護値ILIMITが算出される(ステップS3)。
【0026】
尚、図2では第1テストモードの後に第2テストモードが実行される場合について説明したが、この場合、第1テストモードではパワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1を測定するために電流を流すことで発熱が生じるため、十分にクールダウンさせた後に、続く第2テストモードを実行することが好ましい。他の態様としては、第1テストモードの前に第2テストモードを実行してもよく、この場合、上述のクールダウンが不要となるため、評価時間の短縮に有利である。
【0027】
続いてテストモード切替部10によるテストモードの切替時におけるスイッチング電源回路1の各部の動作について説明する。図3は通常モードから第1テストモードに切り替えられた場合におけるスイッチング電源回路1の各部の動作状態を示すタイムチャートである。図3では、時刻t1にモード切替が行われており、時刻t1以前は通常モード、時刻t1以降は第1テストモードが実施されている。
【0028】
時刻t1以前の通常モードでは、第1テストモード信号TMS1及び第2テストモード信号TMS2はともにLowであり、スイッチング電源回路1が備える発振器12は、発振周波数foscに同期したBLK信号、MAXD信号、及びCLOCK信号を出力する。CLOCK信号は、BLK信号がLowからHighに変化するタイミングでLowからHighに変化し、且つ、MAXD信号がLowからHighに変化するタイミングでHighからLowに切り替わる信号である。
【0029】
スロープ補償回路14には、発振器12からCLOCK信号が入力される。スロープ補償回路14は、CLOCK信号がHighである期間は一定の変化率で増加し、CLOCK信号がLowである期間はLowとなる鋸波信号を出力する。
【0030】
スイッチング電源回路1の出力電圧は、FB端子から誤差増幅器M1の反転入力端子にフィードバック信号として入力される。誤差増幅器M1の非反転入力端子には基準電圧源VREFが接続され、誤差増幅器M1は、FB端子からのフィードバック電圧と、基準電圧源VREFとの差分を増幅して出力する。誤差増幅器M1の出力端子は、コンパレータM2の非反転入力端子(+入力)に接続される。コンパレータM2の反転入力端子(-入力)には加算器16が接続される。加算器16は、スロープ補償回路14からの鋸波信号とパワートランジスタMP1に流れる電流に比例した信号とを加算する。コンパレータM2は、誤差増幅器M1で増幅された信号と、加算器16で加算された信号とを比較し、誤差増幅器M1からの増幅信号が加算器16からの入力より大きい場合にはHighを出力し、誤差増幅器M1からの増幅信号が加算器16からの入力より小さい場合にはLowを出力する。
【0031】
NOR回路M3は発振器12からのBLK信号がHighである期間にコンパレータM2の出力信号がLowとなった場合においても、出力信号をLowに保持するための回路である。時刻t1以前の通常モードでは、第1テストモード信号がLowであるため、フリップフロップ回路RSFF1のR入力にはNOR回路M3の出力信号と同じ信号が入力される。フリップフロップ回路RSFF1では、発振器12からのS入力信号であるBLK信号がLowからHighになるとQB信号はHighからLowになり、R入力信号がLowからHighになるとQB信号はLowからHighになる。
【0032】
また時刻t1以前の通常モードでは、パワートランジスタMP1に流れる電流は過電流保護値ILIMITを超える値ではないため、過電流保護回路4の出力はLowのままであり、フリップフロップ回路RSFF2のQ出力もLowのままとなる。パワートランジスタMP1のゲート電圧はフリップフロップ回路RSFF1のQB出力信号と同じであり、Lowである場合にはパワートランジスタMP1及びトランジスタMP2がオン状態になり、Highである場合にはオフ状態になる。また通常モードでは、第2テストモード信号がLowであり、トランジスタMP3のゲート電圧は常にHighとなるため常にオフ状態となる。
【0033】
時刻t1で通常モードから第1テストモードに切り替えが行われると、第1テストモード信号がLowからHighになる(このとき第2テストモード信号はLowのままである)。第1テストモード信号がHighになると、フリップフロップ回路RSFF1のR入力信号は、回路M3の出力に関わらずLowのまま保持される。フリップフロップ回路RSFF1のQB出力信号はBLK信号がLowからHighになるタイミングでHighからLowになり、フリップフロップ回路RSFF1のR入力信号がLowのままである期間、Lowに保持される。これにより、パワートランジスタMP1はオン状態に保持される。
【0034】
一方でトランジスタMP3は、第2テストモード信号がLowのままであるため、オフ状態に保持される。第1テストモードでは、このような状態において、通常動作に影響を及ぼさないSW端子に電流源(不図示)を接続し、SW端子から接地点に向けて電流IM1を流す。このとき、V+端子とSW端子との間における電圧VM1を測定すると、パワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1は次式
より求められる。
【0035】
このように第1テストモードでは、テストモード切替部10によってパワートランジスタMP1及びトランジスタMP2がオン状態、トランジスタMP3がオフ状態にある状態において、過電流保護値ILIMITを算出するために必要なパワートランジスタMP1のオン抵抗RONMP1を求めることができる。
【0036】
続いて図4は通常モードから第2テストモードに切り替えられた場合におけるスイッチング電源回路1の各部の動作状態を示すタイムチャートである。図4では、時刻t2にモード切替が行われており、時刻t2以前は通常モード、時刻t2以降は第2テストモードが実施されている。
【0037】
第2テストモードでは、テストモード切替部10に対して入力される第1テストモード信号TMS1及び第2テストモード信号TMS2の両方がHighになる。このとき、OR回路M7の出力はOR回路M6の出力によらず常にHighとなり、パワートランジスタMP1及びトランジスタMP2のゲート電圧はHighとなるため、パワートランジスタMP1及びトランジスタMP2は常にオフ状態となる。
【0038】
第1テストモード信号TMS1がHighになると、フリップフロップ回路RSFF1のR入力はOR回路M3の出力によらずLowのままとなる。またフリップフロップ回路RSFF2のR入力も同様にLowのままとなる。フリップフロップ回路RSFF1のQB出力はBLK信号がLowからHighに変化するタイミングでHighからLowに変化し、フリップフロップ回路RSFF1のR入力がLowのままである期間、Lowを保持する。SW端子に電流が流れていない状態では、過電流保護回路4の出力はLowとなり、フリップフロップ回路RSFF2のQ出力はLowを保持する。フリップフロップ回路RSFF1のQB出力がLow、フリップフロップ回路RSFF2のQ出力がLowであるとき、OR回路M6の出力はLowとなる。このときNAND回路M8の出力はLowとなり、トランジスタMP3はオン状態となる。
【0039】
第2テストモードではこのような状態において、SW端子に電圧源(不図示)を接続し、電圧源の電圧をV+端子の電圧から徐々に下げていく。すると、過電流保護回路4に対する負側の入力電圧(コンパレータCOMP1の反転入力端子の電圧)が徐々に低下し、正側の入力電圧(コンパレータCOMP1の非反転入力端子の電圧)を下回ったタイミング(図4の時刻t3を参照)で過電流保護回路4の出力がLowからHighに変化する。これに伴い、フリップフロップ回路RSFF2のQ出力もまたLowからHighに変化する。同時に、OR回路M6の出力もLowからHighになることで、トランジスタMP3のゲート電圧がHighとなり、オフ状態となる。これにより電流IMはゼロとなり、このタイミングにおけるV+端子とSW端子との間の電圧差VM2を測定する。
【0040】
このようにテストモード切替部10は、第2テストモードでは、パワートランジスタMP1及びトランジスタMP2をオフ状態にするとともに、トランジスタMP3をオン状態にすることで電位差VM2の測定が可能である。このように測定された電位差VM2は、前述の第1テストモードで測定されたオン抵抗RONMP1とともに前述の(2)式に適用されることで、過電流保護値ILIMITを求めることができる。
【0041】
以上説明したように上記実施形態によれば、第1テストモード及び第2テストモードを実行することで、過電流保護値ILIMITを疑似的に導出することが可能である。そのため、電流を流さず、且つ、テスト用パッドを用いることなく、精度よく過電流保護値ILIMITを評価することができる。
【0042】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)一態様に係る過電流保護性能評価回路は、
パワートランジスタ(例えば上記実施形態のパワートランジスタMP1)を内蔵するスイッチング電源(例えば上記実施形態のスイッチング電源回路1)が備える過電流保護回路(例えば上記実施形態の過電流保護回路4)の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路であって、
前記パワートランジスタはソースが第1端子(例えば上記実施形態のV+端子)に接続され、ドレインが第2端子(例えば上記実施形態のSW端子)に接続されており、
前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるようにゲートが前記パワートランジスタのゲートに接続された第1トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP2)と、
前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP3)と、
前記過電流保護性能を評価するための第1テストモード又は第2テストモードを選択的に切り替えるためのテストモード切替部(例えば上記実施形態のテストモード切替部10)と、
を備え、
前記テストモード切替部は、前記第1端子と前記第2端子から、
前記第1テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗(例えば上記実施形態のオン抵抗RONMP1)を測定可能とし、
前記第2テストモードとして、前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差(例えば上記実施形態の電位差VM2)を測定可能とする。
【0045】
上記(1)の態様によれば、第1テストモードを実行することによりパワートランジスタのオン抵抗を第1端子と第2端子から測定するとともに、第2テストモードを実行することにより過電流保護回路で過電流保護動作が発動するパワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を第1端子と第2端子から測定することができる。これらによって、過電流保護回路が有する過電流保護値を、テスト用パッドを用いることなく、疑似的に求めることで、過電流保護性能を簡易的に精度よく評価できる。
【0046】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第2テストモードでは、前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を次第に低下させ、前記過電流保護回路による前記過電流保護動作が発動した際の前記電位差を測定する。
【0047】
上記(2)の態様によれば、第2テストモードでは、パワートランジスタ及び第1トランジスタをオフ状態にするとともに第2トランジスタをオン状態にしつつ、パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を次第に低下させながら、過電流保護回路による過電流保護動作が発動した際の電位差を測定できる。
【0048】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記第2テストモードにおいて、前記過電流保護回路が動作した場合、前記第2トランジスタをオフ状態にラッチさせるように構成される。
【0049】
上記(3)の態様によれば、過電流保護回路が動作した場合に第2トランジスタをオフ状態にラッチさせることで、第2テストモードにおいて、過電流保護回路で過電流保護動作が発動した際の電位差を好適に測定できる。
【0050】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタとW(ゲート幅)/L(ゲート長)サイズが同じである。
【0051】
上記(4)の態様によれば、トランジスタMP2とトランジスタMP3のオン抵抗が等しくなるため、第2テストモードで測定された電圧VM2と、第2通常動作時にトランジスタMP2のソース・ドレイン間に流れる電流により過電流保護回路4の出力がLowからHighに切り替わるときの電圧は等しくなる。すなわち、精度よく過電流保護値ILIMITを求めることができる。
【0052】
(5)一態様に係るスイッチング電源は、
上記(1)から(4)のいずれか一態様に係る過電流保護性能評価回路を備える。
【0053】
上記(5)の態様によれば、上記構成の過電流保護性能評価回路を備えることで、スイッチング電源の過電流保護性能を簡易的且つ精度よく評価できる。
【0054】
(6)一態様に係る過電流保護性能評価方法は、
パワートランジスタ(例えば上記実施形態のパワートランジスタMP1)を内蔵するスイッチング電源(例えば上記実施形態のスイッチング電源回路1)が備える過電流保護回路(例えば上記実施形態の過電流保護回路4)の過電流保護性能を評価するための過電流保護性能評価回路を用いた評価方法であって、
前記過電流保護性能評価回路は、ソースを第1端子(例えば上記実施形態のV+端子)に、ドレインを第2端子(例えば上記実施形態のSW端子)に接続した前記パワートランジスタのドレイン電流に対応する過電流検出用電流が流れるように構成された第1トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP2)と、前記第1トランジスタとソース及びドレインを共通にする第2トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP3)と、
を備え、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオン状態にするとともに前記第2トランジスタをオフ状態にして、前記パワートランジスタのオン抵抗(例えば上記実施形態のオン抵抗RONMP1)を前記第1端子と前記第2端子から測定する第1テストモードを実行するステップと、
前記パワートランジスタ及び前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに前記第2トランジスタをオン状態にして、前記過電流保護回路で過電流保護動作が発動する前記パワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差(例えば上記実施形態の電位差VM2)を前記第1端子と前記第2端子から測定する第2テストモードを実行するステップと、
前記電位差を前記オン抵抗で割ることにより、前記過電流保護回路の過電流保護値を算出するステップと
を備える。
【0055】
上記(6)の態様によれば、第1テストモードを実行することによりパワートランジスタのオン抵抗を測定するとともに、第2テストモードを実行することにより過電流保護回路で過電流保護動作が発動するパワートランジスタのソース-ドレイン間の電位差を測定することができる。これらによって、過電流保護回路が有する過電流保護性能を定量的に評価するための指標である過電流保護値を、テスト用パッドを用いることなく、疑似的に求めることで、過電流保護性能を簡易的に精度よく評価できる。
【符号の説明】
【0056】
1 スイッチング電源回路
2 ドライバ回路
4 過電流保護回路
10 テストモード切替部
12 発振器
14 スロープ補償回路
16 加算器
LIMIT 過電流保護値
TMS1 第1テストモード信号
TMS2 第2テストモード信号
SENSE 過電流検出抵抗
図1
図2
図3
図4