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特開2022-182488ウレタン化金属触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182488
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ウレタン化金属触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
C08G18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090074
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】710014203
【氏名又は名称】谷口 孝
(71)【出願人】
【識別番号】304054781
【氏名又は名称】ティ-エ-ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 孝
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC13
4J034KC23
4J034KD02
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB16
4J034QC01
(57)【要約】
【課題】本発明はイソシアネートと活性水素含有化合物との付加反応によって得られるウレタン化合物の製造において反応速度を自由にコントロール可能とするウレタン化金属触媒およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】下記成分(1)および成分(2)を含有してなることを特徴とするウレタン化金属触媒。
(1)有機酸ビスマス化合物
(2)アイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物
その製造方法は、有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物からなる混合物を予め、50℃~200℃の温度で1時間~24時間、加熱処理する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記成分(1)および成分(2)を含有してなることを特徴とするウレタン化金属触媒。
(1)有機酸ビスマス化合物
(2)アイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物
【請求項2】
成分(1)1重量部に対して、成分(2)が0.01重量部~100重量部を含有してなることを特徴とする請求項1に記載のウレタン化金属触媒。
【請求項3】
成分(1)である有機酸ビスマス化合物が有機カルボン酸ビスマス化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウレタン化金属触媒。
【請求項4】
成分(2)のアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物がアルミニウムキレート化合物であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載のウレタン化金属触媒。
【請求項5】
有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物からなる混合物を予め、50℃~200℃の温度で1時間~24時間、加熱処理することを特徴とするウレタン化金属触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ビスマス塩化合物単独系触媒を用いた場合の問題点を解消し
た、充分に長いポットライフと急速な硬化、および急速な固化などの硬化性に優れたウレタン化金属触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡ウレタンフォームとして、ウレタンプレポリマーを含有する主材
と、ポリオールおよび硬化触媒を硬化剤として有する2液硬化型ポリウレタン組成物が知られている。これまで、硬化触媒としては、良好な硬化性確保の観点から有機酸鉛、有機スズなどが用いられていた。
【0003】
しかしながら、有機酸鉛および有機スズは、環境や人体への悪影響が懸念さ
れ、その使用が問題とされることから、代替触媒の検討がなされている。有機酸鉛、有機スズに代わる硬化触媒としては、有機酸ビスマス等が提案されている。
【0004】
有機酸ビスマス化合物を硬化触媒として含有するポリウレタン組成物として
は、例えば、特許文献1には、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマ
ー、硬化剤としてポリオール、硬化触媒として有機カルボン酸ビスマスと他の
有機カルボン酸金属塩との混合物を含有することを特徴とするポリウレタン組
成物が記載されている。
【0005】
特許文献2には、特定のポリイソシアネートおよび/またはその変成体を含
有する主剤と、硬化剤として活性水素化合物、有機酸ビスマス塩および脂肪酸
カルシウム塩を含有することを特徴とする2液硬化型ポリウレタン組成物が記
載されている。
【0006】
特許文献3には、特定のヒドロキシル基、チオール基およびカルボン酸ビス
マス化合物などの金属触媒からなる成分と、ポリイソシアネートからなる成分
を含有することを特徴とするポリウレタン組成物が記載されている。
【0007】
特許文献4には、発泡ウレタンフォーム製造に適した技術として、活性水素
含有成分と反応する有機イソシアネート成分と、活性水素含有成分、金属アセ
チルアセトネートである金属触媒、触媒抑制剤からなる硬化性組成物を用いる
ことによるポリウレタンを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-89549号公報
【特許文献2】特開2003-40967号公報
【特許文献3】特表2020-525561号公報
【特許文献4】特表2019-530789号公報
【特許文献5】特開2006-328172号公報
【特許文献6】特開2009-114288号公報
【特許文献7】特開2017-206584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~3のポリウレタン組成物のように硬化剤が有機
酸ビスマスを含有する硬化触媒系からなる組成物は、硬化が遅く、また、硬化
後の物性低下が著しいという問題点があった。
更に、特許文献4のように硬化剤が金属アセチルアセトネートを含有する組
成物は溶解性、分散性の点からミネラルスピリット、イソパラフィン溶剤など
の炭化水素系溶剤との併用ができないなどの問題点があった。
【0010】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、環境や人体への悪影響が懸念さ
れず、かつ優れたポットライフと硬化性、固化性に優れた2液型ポリウレタン
製造に適したウレタン化金属触媒およびその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、硬化触媒が有機酸
ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物からなる金属触媒が有用なことを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有
機アルミニウム化合物を含み、有機アルミニウム化合物と有機酸ビスマス化合
物の量比を制御することによって反応速度をコントロール可能なことを見出し
た。
【0013】
本発明は、2液型ポリウレタン組成物の硬化触媒として好ましく使用される
が、金属由来の毒性、安全性に加えて、混合後のポリウレタン組成物としての
十分な可使時間、可使時間と硬化速度のバランスに優れる。
【0014】
本発明は、混合後のポリウレタン組成物としての十分な可使時間、可使時間
と硬化速度のバランスをより優れたものとするために、予め、有機酸ビスマス
化合物と有機アルミニウム化合物を所定比率に混合した後、加熱処理すること
が望ましい。
【0015】
アイソパーLとはイソパラフィン炭化水素溶剤であり、登録商標ISOPAR L
FLUIDの無毒、無臭の溶剤である。また、アイソパーLは疎水性の溶剤である
ため、含水率が極めて低いことが特長として挙げられる。
【0016】
有機酸ビスマス化合物について以下に説明する。
本発明の有機酸ビスマス化合物は有機酸と3価のビスマス化合物から得られ
る生成物であれば特に制限されない。具体的には有機酸とビスマスとの反応生成物である有機酸ビスマス化合物が好適な例として挙げられる。
【0017】
有機酸ビスマス化合物の製造の際に使用される有機酸としては、例えば、オ
クチル酸、2-エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、ドデカン酸、ナフテン酸、ス
テアリン酸等が挙げられる。
【0018】
有機酸ビスマス化合物の具体的な例としては、オクチル酸ビスマス、ネオデ
カン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。なかでも、すでに商用的に広く用いられているオクチル酸ビスマス、2-エチルヘキシル酸ビスマスが好ましい。
【0019】
有機酸ビスマス化合物は、その製造法について特に制限されず、従来公知の
方法が挙げられる。また、有機酸ビスマス化合物としては、市販されているも
のを用いることができる。例えば、プキャット20T(日本化学産業製)、プキ
ャット25(日本化学産業製)、プキャットB7(日本化学産業製)、ネオスタンU600(日東化成社製)等が挙げられる。
【0020】
有機アルミニウム化合物について以下に説明する。
本発明の有機アルミニウム化合物はアイソパーLに溶解可能な有機アルミニ
ウム化合物であれば特に制限されない。中でもアイソパーLに対する溶解性の
観点からアルミニウムキレート化合物が好適な例として挙げられる。
【0021】
アルミニウムキレート化合物の製造の際に用いられるキレート化合物として
は、アルミニウムに対して、キレート能を有している有機化合物であればとく
に限定されないが、特に好ましい化合物例としては、メチルアセトアセテー
ト、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、アセチルアセトン
等の有機化合物が挙げられる。
【0022】
係る有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムトリス(メチ
ルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)等が挙げられる。また、アイソパーLに対する溶解性および低融点化を高めるためには2種以上のキレート剤を用いて得られるキレート化合物がより好適な例として挙げられ、例えば、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(メチルアセトアセテート)等が挙げられる。更には、アルコキシ基とキレート化合物の両配位子を有する化合物も好適な例として挙げることができる。
【0023】
有機アルミニウム化合物は、その製造方法については特に制限されず、従来
公知のものが挙げられる。また、市販されている化合物も好ましく用いることができ、具体的には、ALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製)、アルミキレート-D(川研ファインケミカル(株)製)、ALCH(川研ファインケミカル(株)製)、オルガチックスAL-3200(マツモトファインケミカル(株)製)、オルガチックスAL-3215(マツモトファインケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0024】
係るキレート化合物は1種のみならず、2種以上を併用して用いることも好
ましい実施態様である。2種以上のアルミニウムキレート化合物を混合させて
得られる混合物としては、市販されているものを用いることができ、例えば、
DX-9740(信越化学工業製)、CAT-AC(信越化学工業製)等を挙げることがで
きる。
【0025】
本発明は、有機酸ビスマス化合物とアイソパーに溶解可能な有機アルミニウ
ム化合物を含んでなるが、その含有比率は、目的とするポリウレタンの目的性状等によって適宜定められるべきである。
【0026】
特に、本発明ポリウレタンが発泡ポリウレタンフォーム製造を目的とする場
合には、有機アルミニウム化合物の量が、有機酸ビスマス化合物1.0重量部に対して、0.01重量部~100重量部であることが好ましい。
【0027】
更に、発泡ウレタンフォームが硬質発泡ウレタンフォームである場合は、
より硬化度を高める必要があり、そのためには有機アルミニウム化合物の量
が、有機酸ビスマス化合物1.0重量部に対して、0.2重量部~10重量部である
ことが好ましい。更には、有機酸ビスマス化合物1.0重量部に対して、0.5重
量部~5重量部であることがもっとも好ましい。
【0028】
すなわち、有機アルミニウム化合物の量が、0.01重量部未満の場合は、硬化
速度が遅く、有機アルミニウム化合物を添加する意味がない。また、100重量
部を越えると、硬化が早くなりすぎ、目的とする硬化体を得ることが困難とな
る傾向にある。
【0029】
また、有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物からなるウレタン化
金属触媒は、硬化剤中に所定量を添加・混合することで十分な触媒活性を得る
ことができるが、より触媒活性を高め、且つ安定した性能を得るためには、予
め、有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物を混合させておくことも
好ましい実施態様の一つである。
【0030】
複合化効果を更に高めるためには、有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウ
ム化合物を添加混合後、所定の温度で加熱処理することも好ましいもう一つの実施態様である。
【0031】
加熱処理条件は、使用する有機酸ビスマス化合物および有機アルミニウム化
合物によって、実験的に定められるべきであるが、通常は50℃~200℃の温度
で、1時間~24時間加熱されることで定常状態に保つことができる。
【0032】
また、複合化をより均一に進行させるためには、有機酸ビスマス化合物と有
機アルミニウム化合物をアイソパーLなどの溶剤に溶解させたのち、撹拌下で混合することも好ましく用いられる手法の一つである。当然、加熱することも可能である。
【0033】
有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物からなるウレタン化金属触
媒の添加量は、用いるイソシアネート化合物および硬化剤の種類によって実験
的に定められるべきであるが、通常はイソシアネート化合物および硬化剤の合
計量100重量部に対して、0.1重量部~10重量部が用いられる。
【0034】
本発明における有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物からなるウ
レタン化金属触媒は、イソシアネートと水酸基との反応に用いられるが、好ま
しい使用形態としては、2液型ポリウレタン組成物の硬化触媒として使用され
る。
【0035】
2液型ポリウレタン組成物の硬化触媒として使用される場合には、予めポリ
オールのような硬化剤に均一に混合し、使用直前に混合して使用することが本
発明金属触媒の特長を発揮でき、好ましい実施態様である。
【0036】
本発明のウレタン化金属触媒は、その使用方法について特に制限されない。例えば、イソシアネート基と水酸基の付加反応によるウレタン化のためにウ
レタン化金属触媒を添加する方法、更には1液型ポリウレタン組成物に本発明の金属触媒を添加する方法、2液型ポリウレタン組成物の主材(主材はポリイソシアネート化合物を含有する。)および硬化剤(硬化剤は活性水素基を2個以上有する化合物を含有する。)のうちの少なくとも一方に、本発明のウレタン化金属触媒を添加する方法等が挙げられる。中でも、貯蔵安定性の観点から、2液型ポリウレタン組成物の硬化剤に本発明のウレタン化金属触媒を添加する方法が好ましい。
【0037】
ここで、本発明が好ましく適用される2液型ポリウレタン組成物について、
以下に説明する。なお、本発明のウレタン化金属触媒はこれらに限定されるも
のではないことは、先にも述べた通りである。
【0038】
2液型ポリウレタン組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有する主剤
と、活性水素基を2個以上有する化合物と本発明のウレタン化金属触媒を含有する硬化剤を有する組成物である。
【0039】
2液型ポリウレタン組成物に好ましく用いられる主剤は、ポリイソシアネー
ト化合物を含有するものであれば、特に限定されない。
【0040】
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するもので
あれば特に制限されない。例えば、ウレタンプレポリマー、低分子量のポリ
イソシアネート化合物が挙げられる。
【0041】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシア
ネート化合物を、ヒドロキシル基に対してイソシアネート基が過剰となるよう
に反応させて得られる反応生成物が挙げられる。通常、OH/NCO=1/1.3
~1/3.0の比率で反応させることによって製造される。
【0042】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物
は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、更には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどの脂肪族ポリイソシアネート、更には、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリイソシアネートおよびこれらポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、またはこれらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
これらのうち、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、
ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが安価で入手可能なことから、好ましく用いられる。
【0044】
次に硬化剤について説明する。
本発明の硬化剤は、活性水素基を2個以上有する化合物と本発明のウレタン
化金属触媒を含有するものであれば特に限定されない。
【0045】
硬化剤に含有される活性水素基を2個以上有する化合物としては、例えば、
ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択される少なくと
も1種の置換基を分子内に2個以上有する化合物が挙げられる。例えば、ヒド
ロキシル基を2個以上有するポリオール化合物、メルカプト基を2個以上有す
るポリチオール化合物、アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物が挙げら
れ、中でも、ポリオール化合物が好ましい実施態様の一つとして挙げられる。
【0046】
ポリオール化合物としては、ヒドロキシル基を分子内に2個以上有するもの
であれば特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステル
ポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げら
れる。中でも、作業性、硬化物の性能バランスからポリエーテルポリオールが
好ましい。
【0047】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。中でも、入手のしやすさ、価格の観点からポリプロピレングリコールが最も好ましい。
【0048】
本発明のウレタン化金属触媒を使用するに際して、その実施態様によって
は、上記成分に加えて、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、溶剤、可塑剤、充填剤、有機酸ビスマス化合物および有機アルミニウム化合物以外の硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0049】
特に溶剤は作業性の点から、好ましく用いられることがある。具体的には、
例えばイソパラフィン炭化水素溶剤であるアイソパーLが無味・無臭、適度の
揮発性等で非常に好ましく用いられるが、それ以外に使用可能な溶剤として
は、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーM等を挙げることが
できる。特に、寒冷地等で用いる場合には、乾燥速度の点からはアイソパー
E、アイソパーGが好ましく用いられる。その他の使用可能な溶剤として、ヘキ
サン、トルエン等の炭化水素系、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水
素系、テトラヒドロフランなどのエーテル系、酢酸エチルなどのエステル系、
ミネラルスピリット等が挙げられる。
【0050】
中でも、揮発速度、臭気などの観点からイソパラフィン系炭化水素溶剤がも
っとも好ましい。
【0051】
本発明のウレタン化金属触媒を用いて、ウレタン化を行う際の反応温度は室
温下でも十分進行させることが可能であるが、特に冬場のような低温環境下では、より早く反応を進行させるために、ドライヤーなどを用いて加熱することも好ましく適用される。
【0052】
本発明ウレタン化金属触媒は、安全性、毒性等の観点から、断熱材や軽量構
造材等に適用される硬質ポリウレタンフォームの製造に好ましく使用される。
【0053】
係る硬質ポリウレタンフォームは、通常、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とイソシアネート成分を混合し、発泡、硬化させることにより形成される。硬質ポリウレタンフォームの製造方法の一つとして、スプレー発泡法がある。
【0054】
スプレー発泡法を用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法の一つとして
水を発泡剤として用いる方法が知られている(例えば、特許文献5及び6)。本発明ウレタン化金属触媒は、係るスプレー発泡法を適用した硬質ポリウレ
タンフォームの製造にも有用な硬化触媒となり得る。
【0055】
水を発泡剤として用いる硬質ポリウレタンフォームの製造の問題点を改良し
た技術として、発泡剤にCFC-11等のフロン化合物の使用が検討された。しか
し、CFC-11等のフロン化合物はオゾン層破壊を引き起こすことから使用が禁止
され、オゾン層破壊係数が低く可燃性の無い材料に転換が図られてきた。
係る、改良技術としてHFO-1233zdを発泡剤に用いた硬質ポリウレタンフォ
ームが用いられるようになった(例えば、特許文献7)。本発明ウレタン化金属触媒はこれらの発泡剤を用いた硬質ポリウレタンフォーム形成にも好適に用いられる。
【0056】
本発明のウレタン化金属触媒は、環境や人体に悪影響が懸念される鉛化合物
や有機スズ化合物を用いる必要がない。また、本発明のウレタン化金属触媒は
有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物が含まれており、且つ組成比
を制御すること、また、予め加熱処理することによって、ウレタン化の反応速
度を自由にコントロールすることができる。
【0057】
すなわち、有機酸ビスマス化合物単独では、十分に早い反応速度を得ること
ができず、ウレタンポリマーがだれる、更には、硬化後の硬化物表面に粘着性
が残るという問題がある。
【0058】
一方、有機アルミニウム化合物単独では、反応速度が速すぎるために、例え
ば、スプレー発泡法で硬質ポリウレタンフォームを製造する際に、混合装置が
詰まることなどにより作業性を損なうこととなる。
【0059】
本実施形態の製造方法において、一般的に周知のポリウレタン用スプレー発
泡・成形装置を適宜用い、用途に応じた形状に成形される。
【発明の効果】
【0060】
以上の説明から明らかなように、本発明ウレタン化金属触媒は有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物を含有してなり、次に列挙する効果が得られる。
(1)有機鉛化合物や有機スズ化合物等の環境、人体に悪影響をもたらす化合物を一切、使用せずに有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物の組成比率を変化させることによって、ウレタン化反応速度を自由に制御することができる。
【0061】
(2)前記(1)のウレタン化金属触媒を硬質ポリウレタンフォーム製造に適用することで、安全で、毒性が無く、作業性に優れた、構造物を得ることができる。
【0062】
(3)前記(1)のウレタン化金属触媒を製造するに際して、有機酸ビスマス化合物とアイソパーLに溶解可能な有機アルミニウム化合物を混合加熱処理することによって、より優れた触媒活性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0064】
(1)ウレタン化金属触媒の製造
有機酸ビスマス化合物として、“プキャット25“(日本化学産業製)および
有機アルミニウム化合物として、”DX-9740“(信越化学工業製)を直接、100/175(重量比)に秤量し、70℃にて4時間、撹拌・加熱処理を行って、ウレタン化金属触媒とした。
(2)主剤プレポリマーの製造
分子量5,000のポリオキシアルキレンポリオールとトリレンジイソシアネートをOH/NCO=1/1.9の比率で反応させて製造した。
(3)硬化剤の製造
分子量5,000のポリオキシアルキレンポリオール15部と前記1.で製造したウレタン化金属触媒0.1部を加えて、十分に混練りを行って製造した。
(4)ポリウレタン組成物の製造
主剤プレポリマー8部と硬化剤16部を均一混合させて、ポリウレタン組成物を製造した。
(5)実施例1と比較例1
前項(4)で製造したポリウレタン組成物を20℃、65%RHにて2日間養生硬
化せしめた後、タック性(表面粘着性)を指触にて官能評価した。有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物から得られたウレタン化金属触媒を用いた硬化物は、良好な硬化性を示した(実施例1)。
一方、有機酸ビスマス化合物単独からなる金属触媒を用いた硬化物は、タック性があり、硬化が不十分であった(比較例1)。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明ウレタン化金属触媒は、各種ウレタン化反応によって高加工化を図る際の有用な反応触媒として用いられるのに適している。とくに、有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物の添加比率を変えることによって、反応速度を制御することが可能となり、物性の向上のみならず、生産性の向上にも寄与するものである。また、予め、有機酸ビスマス化合物と有機アルミニウム化合物の混合物を加熱処理することで、その触媒活性を更に高めることも可能である。これらの特性はスプレー発泡法で硬質ポリウレタンフォームを製造する際に、とりわけ有用となる。