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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182498
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20221201BHJP
   G07D 7/04 20160101ALI20221201BHJP
   G01R 33/12 20060101ALI20221201BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G07D7/00 J
G07D7/00 D
G07D7/04
G01R33/12 Z
G01R33/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090089
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】関 淳
(72)【発明者】
【氏名】宇野 輝比古
【テーマコード(参考)】
2G017
3E041
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017BA05
2G017BA18
2G017CB24
2G017CC06
3E041AA02
3E041AA03
3E041AA04
3E041BB07
3E041CA01
3E041CB07
3E041EA02
(57)【要約】
【課題】適切に紙葉類から磁気を測定する紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、紙葉類処理装置は、記憶部と、センサと、プロセッサと、を備える。記憶部は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量と補正値とを対応付ける補正テーブルを格納する。センサは、紙葉類から磁気を測定する。プロセッサは、前記センサを用いて、前記環境ノイズを測定し、前記環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量を算出し、前記特徴量に対応する補正値を前記補正テーブルから取得し、前記センサを用いて前記紙葉類の磁気を測定し、前記補正値に基づいて、前記紙葉類の磁気を測定して得られた出力値を補正する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量と補正値とを対応付ける補正テーブルを格納する記憶部と、
紙葉類から磁気を測定するセンサと、
前記センサを用いて、前記環境ノイズを測定し、
前記環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量を算出し、
前記特徴量に対応する補正値を前記補正テーブルから取得し、
前記センサを用いて前記紙葉類の磁気を測定し、
前記補正値に基づいて、前記紙葉類の磁気を測定して得られた出力値を補正する、
プロセッサと、
を備える紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記紙葉類を前記センサに搬送する搬送機構を備え、
前記センサは、前記紙葉類の幅よりも広い区間において配置される複数の感磁部から構成され、
前記プロセッサは、
前記紙葉類が前記センサを通過する間において、前記紙葉類が通過する通過領域に配置されている前記感磁部を用いて前記紙葉類の磁気を測定し、
前記紙葉類が前記センサを通過する間において、前記通過領域の外に配置されている前記感磁部を用いて前記環境ノイズを測定する、
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記紙葉類の磁気を測定していない期間において前記センサを用いて前記環境ノイズを測定する、
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記紙葉類を搬送する搬送機構を備え、
前記プロセッサは、前記搬送機構に前記環境ノイズを発生させる、
請求項3に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
各温度において前記センサを用いて前記環境ノイズを測定し、
各温度における前記環境ノイズの磁気チャートから前記特徴量を算出し、
各温度における前記特徴量と前記補正値とを対応付けて前記補正テーブルを生成する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、各温度において前記センサの前記出力値に基づいて前記補正値を算出する、
請求項5に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記センサの温度を測定する温度センサを備え、
前記プロセッサは、
前記温度センサを用いて前記温度センサの第1の温度を測定し、
前記第1の温度における前記環境ノイズの磁気チャートの特徴量を算出し、
前記第1の温度における前記特徴量を前記補正テーブルから取得し、
算出された前記特徴量と前記補正テーブルから取得された前記特徴量との差が所定の閾値以上である場合、前記第1の温度と異なる第2の温度において前記センサを用いて測定された磁気チャートの特徴量を算出し、前記第1の温度及び前記第2の温度において算出された前記特徴量に基づいて前記補正テーブルを更新する、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記第1の温度及び前記第2の温度において算出された前記特徴量に基づいて温度と前記特徴量との関係を示す一次関数を生成し、
前記一次関数に基づいて前記補正テーブルの前記特徴量を書き換える、
請求項7に記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記出力値に前記補正値を積算して前記補正値を補正する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項10】
前記特徴量は、磁気チャートの最大値、平均値又は最小値に基づく、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項11】
前記環境ノイズは、振動又は磁気である、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、補正された前記出力値に基づいて前記紙葉類の真贋を判定する、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項13】
前記紙葉類は、紙幣である、
請求項1乃至12の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣などの紙葉類から磁気を測定して真贋を判定する装置が提供されている。そのような装置は、磁気センサを用いて紙葉類から磁気を測定する。
【0003】
磁気センサは、温度の影響を受ける。即ち、磁気センサが紙葉類を測定して得られた出力値は、温度に応じて増減する。
【0004】
従来、装置は、磁気センサの温度によっては、適切に紙葉類から磁気を測定することができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-34794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するため、適切に紙葉類から磁気を測定する紙葉類処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、紙葉類処理装置は、記憶部と、センサと、プロセッサと、を備える。記憶部は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量と補正値とを対応付ける補正テーブルを格納する。センサは、紙葉類から磁気を測定する。プロセッサは、前記センサを用いて、前記環境ノイズを測定し、前記環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量を算出し、前記特徴量に対応する補正値を前記補正テーブルから取得し、前記センサを用いて前記紙葉類の磁気を測定し、前記補正値に基づいて、前記紙葉類の磁気を測定して得られた出力値を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る磁気ヘッド部を概略的に示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る磁気チャートの画像例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る磁気チャートを示すグラフである。
図5図5は、第1の実施形態に係る磁気チャートを示すグラフである。
図6図6は、第1の実施形態に係る磁気チャートを示すグラフである。
図7図7は、第1の実施形態に係る磁気チャートの特徴量と温度との関係を示すグラフである。
図8図8は、第1の実施形態に係るゲインと磁気チャートの特徴量との関係を示すグラフである。
図9図9は、第1の実施形態に係る補正テーブルの例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図14図14は、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置の構成例を示すブロック図である。
図15図15は、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示す図である。
図16図16は、第3の実施形態に係るゲインと特徴量との関係を示す図である。
図17図17は、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
実施形態に係る紙葉類処理装置は、磁気ヘッド部を用いて、紙幣などの紙葉類の磁気を測定する。紙葉類処理装置は、測定結果に基づいて紙葉類の真贋を判定する。紙葉類処理装置は、判定結果に基づいて、紙葉類を分類する。
【0010】
図1は、実施形態に係る紙葉類処理装置10の構成例を示す。図1が示すように、紙葉類処理装置10は、プロセッサ11、メモリ12、操作部13、表示部14、搬送機構15、A/Dコンバータ16、増幅回路17及び磁気ヘッド部18などを備える。プロセッサ11と、メモリ12、操作部13、表示部14、搬送機構15及びA/Dコンバータ16とは、互いに接続する。増幅回路17は、A/Dコンバータ16及び磁気ヘッド部18と互いに接続する。
【0011】
なお、紙葉類処理装置10は、図1が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、紙葉類処理装置10から特定の構成が除外されたりしてもよい。
【0012】
プロセッサ11は、紙葉類処理装置10全体の動作を制御する。たとえば、プロセッサ11は、紙葉類から磁気を読み取って、紙葉類の真贋を判定する。
【0013】
たとえば、プロセッサ11は、CPUなどから構成される。また、プロセッサ11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などから構成されるものであってもよい。また、プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)などから構成されるものであってもよい。
【0014】
メモリ12(記憶部)は、種々のデータを格納する。たとえば、メモリ12は、ROM、RAM及びNVMとして機能する。
たとえば、メモリ12は、制御プログラム及び制御データなどを記憶する。制御プログラム及び制御データは、紙葉類処理装置10の仕様に応じて予め組み込まれる。たとえば、制御プログラムは、紙葉類処理装置10で実現する機能をサポートするプログラムなどである。
【0015】
また、メモリ12は、プロセッサ11の処理中のデータなどを一時的に格納する。また、メモリ12は、アプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びアプリケーションプログラムの実行結果などを格納してもよい。
【0016】
操作部13は、オペレータから種々の操作の入力を受け付ける。操作部13は、入力された操作を示す信号をプロセッサ11へ送信する。たとえば、操作部13は、タッチパネルから構成される。
【0017】
表示部14は、プロセッサ11からの画像データを表示する。たとえば、表示部14は、液晶モニタから構成される。操作部13がタッチパネルから構成される場合、表示部14は、操作部13としてのタッチパネルと一体的に形成される。
【0018】
搬送機構15は、プロセッサ11からの制御に従って紙葉類Pを搬送する。たとえば、搬送機構15は、所定の台などに投入された紙葉類Pを1枚ずつ分離して、搬送する。搬送機構15は、紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する。即ち、搬送機構15は、磁気ヘッド部18が磁気を測定可能な位置に紙葉類Pを搬送する。ここでは、搬送機構15は、紙葉類Pに磁気ヘッド部18の近傍を通過させる。
【0019】
また、搬送機構15は、図示されない積載台(又は容器)に紙葉類Pを搬送する。たとえば、搬送機構15は、紙葉類Pが真正である場合、所定の積載台に紙葉類Pを搬送する。また、搬送機構15は、紙葉類Pが真正でない場合、他の積載台に紙葉類Pを搬送する。
【0020】
たとえば、搬送機構15は、搬送ベルト、及び当該搬送ベルトを駆動させる搬送ローラ等などから構成される。
【0021】
磁気ヘッド部18(センサ)は、紙葉類Pに含まれる磁気を測定する。ここでは、磁気ヘッド部18は、自身の近傍を通過する紙葉類Pの磁気を測定する。また、磁気ヘッド部18は、紙葉類Pの搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)において複数箇所の磁気を測定する。
【0022】
磁気ヘッド部18は、測定された磁気の量を示すセンサ信号としてアナログ信号を生成する。磁気ヘッド部18は、生成されたセンサ信号を増幅回路17に送信する。磁気ヘッド部18については、後に詳述する。
【0023】
増幅回路17は、磁気ヘッド部18からのセンサ信号(アナログ信号)を所定の倍率で増幅する。増幅回路17は、増幅されたセンサ信号をA/Dコンバータ16に送信する。
【0024】
A/Dコンバータ16は、増幅回路17からのセンサ信号をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータ16は、デジタル信号に変換されたセンサ信号をプロセッサ11に送信する。
【0025】
なお、A/Dコンバータ16、増幅回路17及び磁気ヘッド部18(又は、それらの何れか2つ)は、一体的に形成されるものであってもよい。
【0026】
次に、磁気ヘッド部18について説明する。
図2は、磁気ヘッド部18の構成例を示す。図2が示すように、磁気ヘッド部18は、アレイ上に複数の感磁部21(21a乃至21n)を備える。
【0027】
感磁部21は、主走査方向に並んで配置されている。また、感磁部21は、紙葉類Pの幅(主走査方向における幅)よりも広い区間に配置されている。即ち、両端の感磁部21(又は、少なくとも一端の感磁部21)は、紙葉類Pが通過しない領域に配置されている。
【0028】
ここでは、感磁部21c乃至21lは、紙葉類Pが通過する領域(通過領域)に配置されている。また、感磁部21a、21b、21m及び21nは、通過領域の外に配置されている。
【0029】
感磁部21は、紙葉類Pの磁気(磁気的特性)を測定する。感磁部21は、自身の上部を通過する領域における磁気を測定する。即ち、感磁部21は、紙葉類Pの一部のそれぞれ磁気を測定する。感磁部21は、測定された磁気の量(出力値)を示すセンサ信号を生成する。感磁部21は、生成されたセンサ信号を増幅回路17に送信する。
【0030】
たとえば、感磁部21は、有磁界の磁気ヘッドから構成される。感磁部21は、磁界を発生する。感磁部21は、近傍を紙葉類Pが通過するときに発生した磁界に反応して生じる紙葉類Pの磁力の量を測定する。
なお、磁気ヘッド部18は、無磁界の磁気ヘッドから構成されるものであってもよい。
感磁部21の個数及び構造は、特定の構成に限定されるものではない。
【0031】
次に、紙葉類処理装置10が実現する機能について説明する。紙葉類処理装置10が実現する機能は、プロセッサ11がメモリ12などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0032】
まず、プロセッサ11は、磁気ヘッド部18を用いて紙葉類Pの磁気を測定する機能を有する。
【0033】
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。
【0034】
プロセッサ11は、搬送機構15を用いて1枚の紙葉類Pをピックアップする。紙葉類Pをピックアップすると、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する。プロセッサ11は、紙葉類Pに磁気ヘッド部18の各感磁部21の上部を通過させる。
【0035】
紙葉類Pが磁気ヘッド部18を通過する間において、プロセッサ11は、各感磁部21が測定した磁気の量を示すセンサ信号(デジタル信号)を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、測定された磁気を時系列で示す磁気チャートを取得する。
【0036】
図3は、プロセッサ11が測定した紙葉類Pの磁気を示す磁気チャートの画像を示す。磁気チャートは、各感磁部21が測定した磁気を時系列で示す。図3が示す画像は、感磁部21が配置される方向(主走査方向)に、各感磁部21の磁気チャートを並べて画像化したものである。
【0037】
図3では、縦方向に各感磁部21の磁気チャートが並んで配置されているものとする。また、横方向は、時間の経過を示す。
【0038】
磁気チャートの画像において、領域31は、通過領域に配置されている感磁部21(ここでは、感磁部21c乃至21l)の磁気チャートが配置される領域である。即ち、領域31は、紙葉類Pから測定された磁気を示す。
【0039】
また、領域32は、通過領域の外に配置されている感磁部21(ここでは、感磁部21a、21b、21m及び21m)の磁気チャートが配置される領域である。即ち、領域32は、環境ノイズを示す。環境ノイズは、搬送機構15が紙葉類Pを搬送することなどによって生じる振動及び/又は磁気などによって生じる。
【0040】
また、プロセッサ11は、複数の温度において、通過領域の外に配置されている感磁部21が測定した磁気を示す磁気チャートの特徴量を算出する機能を有する。
【0041】
ここでは、オペレータは、磁気ヘッド部18の感磁部21の温度を所定の温度に変更する。たとえば、オペレータは、紙葉類処理装置10が存在する環境の温度を所定の温度に変更することで、感磁部21の温度を所定の温度に変更する。
【0042】
オペレータが感磁部21の温度を所定の温度に変更すると、プロセッサ11は、操作部13を通じて、磁気チャートの取得を開始する操作の入力を受け付ける。ここで、プロセッサ11は、感磁部21の温度の入力を受け付けてもよい。
【0043】
当該操作の入力を受け付けると、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて1枚の紙葉類Pをピックアップする。紙葉類Pをピックアップすると、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する。プロセッサ11は、紙葉類Pに磁気ヘッド部18の各感磁部21の上部を通過させる。
【0044】
紙葉類Pが磁気ヘッド部18を通過する間において、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている感磁部21が測定した磁気を示すセンサ信号を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている感磁部21が測定した磁気を示す磁気チャートを取得する。
【0045】
なお、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている複数の感磁部21の磁気チャートから1つを選択してもよい。また、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている感磁部21の磁気チャートとして、複数の磁気チャートを平均した磁気チャートを取得してもよい。
【0046】
通過領域の外に配置されている感磁部21の磁気チャートを取得すると、プロセッサ11は、磁気チャートから磁気チャートの特徴量Φを算出する。特徴量Φは、磁気チャートの特徴を示すパラメータである。
【0047】
たとえば、特徴量Φは、磁気チャートにおける最大値、平均値(又は中央値)又は最小値などに基づく。具体例として、特徴量Φは、磁気チャートにおける最大値、最小値、最大値と平均値との差、又は平均値と最小との差などである。
ここでは、特徴量Φは、最大値と平均値との差である。
なお、特徴量Φの構成は、特定の構成に限定されるものではない。
【0048】
プロセッサ11は、複数の温度において、同様に特徴量Φを算出する。
たとえば、オペレータは、1つの温度において特徴量Φの算出が完了すると、感磁部21の温度を次の温度に変更する。オペレータが感磁部21の温度を所定の温度に変更すると、プロセッサ11は、同様に、当該温度における磁気チャートの特徴量Φを算出する。
【0049】
プロセッサ11は、上記の動作を繰り返して、各温度における磁気チャートの特徴量Φを算出する。
【0050】
図4は、磁気チャートの例を示す。図4は、感磁部21の温度が常温(ここでは、25度)よりも低温である場合の磁気チャートを示す。また、図4では、縦軸は、磁気の量を示し、横軸は、時間の経過を示す。
【0051】
図4が示すように、通過領域の外に配置されている感磁部21の磁気チャートは、環境ノイズを測定して得られた磁気を示す。図4が示す例では、磁気チャートは、上下に振幅する。
【0052】
図4は、平均値を示す線と最大値を示す線とを示す。図4が示す例では、プロセッサ11は、特徴量Φとして、平均値を示す線と、最大値を示す線との差を算出する。
【0053】
図5は、感磁部21の温度が常温である場合の磁気チャートを示す。また、図5では、同様に、縦軸は、磁気の量を示し、横軸は、時間の経過を示す。
【0054】
図5が示すように、磁気チャートの振幅は、図4の磁気チャートの振幅よりも小さい。したがって、最大値と平均値との差は、図4の磁気チャートのそれよりも小さい。よって、磁気チャートの特徴量Φは、図4の磁気チャートのそれよりも小さい値である。
【0055】
図6は、感磁部21の温度が常温よりも高温である場合の磁気チャートを示す。また、図6では、同様に、縦軸は、磁気の量を示し、横軸は、時間の経過を示す。
【0056】
図6が示すように、磁気チャートの振幅は、図5の磁気チャートの振幅よりもさらに小さい。したがって、最大値と平均値との差は、図5の磁気チャートのそれよりもさらに小さい。よって、磁気チャートの特徴量Φは、図5の磁気チャートのそれよりもさらに小さい値である。
【0057】
図7は、感磁部21の温度と特徴量Φとの関係を示すグラフである。図7では、縦軸は、特徴量Φを示し、横軸は、温度を示す。図7が示すように、感磁部21の温度が上がるほど、特徴量Φは、低下する。
【0058】
また、プロセッサ11は、感磁部21の出力値を補正するための補正値(ゲイン)を示す補正テーブルを生成する機能を有する。
【0059】
ここでは、プロセッサ11は、特徴量Φに対応する補正値を示す補正テーブルを生成する。補正値は、感磁部21の出力値に積算されることで出力値を補正する値である。
【0060】
プロセッサ11は、各温度において、通過領域又は通過領域の外に配置されている感磁部21の出力値を取得する。各温度において出力値を取得すると、プロセッサ11は、各温度における出力値と常温における出力値とに基づいて、各温度における補正値を算出する。
【0061】
図8は、プロセッサ11が補正値を算出する動作例を示すグラフである。図8では、縦軸は、補正値(ゲイン)を示し、横軸は、特徴量Φを示す。
【0062】
たとえば、プロセッサ11は、常温における出力値(磁気チャートの平均値など)を各温度における出力値で除算して補正値を算出する。即ち、補正値は、各温度における出力値に積算されることで当該出力値を常温における出力値に変換する。
【0063】
補正値を算出すると、プロセッサ11は、各温度における特徴量Φと算出された補正値を対応付けた補正テーブルに生成する。プロセッサ11は、生成された補正テーブルをメモリ12に格納する。
【0064】
グラフ41は、各温度における特徴量Φと補正値とを示す。
【0065】
なお、プロセッサ11は、補正値と特徴量Φとの回帰直線(一次近似直線)を生成してもよい。
【0066】
即ち、プロセッサ11は、以下の式を生成する。
【0067】
y=ax+b
ここで、yは、補正値を示し、xは、特徴量Φを示す。プロセッサ11は、常温における出力値を各温度における出力値で除算した値と特徴量Φとに基づいてa及びbを算出する。
【0068】
回帰直線を生成すると、プロセッサ11は、各温度における特徴量Φを回帰直線に代入して補正値を取得する。
グラフ42は、回帰直線を示す。
【0069】
次に、補正テーブルの構成例について説明する。
図9は、補正テーブルの構成例を示す。図9が示すように、補正テーブルは、温度、特徴量Φ及び補正値(ゲイン)を対応付けて格納する。
【0070】
補正テーブルは、各温度における特徴量Φ及び補正値を格納する。ここでは、補正テーブルは、常温(ここでは、25度)を中心に2.5度刻みで各温度における特徴量Φ及び補正値を格納する。また、補正テーブルは、5度から50度までの特徴量Φ及び補正値を格納する。
【0071】
なお、補正テーブルは、温度を格納しなくともよい。補正テーブルは、特徴量Φと補正値とを対応付けて格納するものであってもよい。
【0072】
また、プロセッサ11は、補正値として、各温度において感磁部21が持つ特性から算出される理論値を用いてもよい。
【0073】
次に、プロセッサ11は、補正値に基づいて感磁部21の出力値を補正する機能を有する。
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。
【0074】
プロセッサ11は、操作部13を通じて、紙葉類Pの真贋の判定を開始する操作の入力を受け付ける。当該操作の入力を受け付けると、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて1枚の紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する。
【0075】
紙葉類Pが磁気ヘッド部18を通過する間において、プロセッサ11は、各感磁部21からセンサ信号を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、各感磁部21が測定した磁気の示す磁気チャートを取得する。
【0076】
各感磁部21における磁気チャートを取得すると、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている磁気チャートの特徴量Φを算出する。特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに基づいて補正が必要であるかを判定する。
【0077】
たとえば、プロセッサ11は、常温に隣接する2つの温度(たとえば、22.5度及び27.5度)における特徴量Φの間に、算出された特徴量Φが含まれているかを判定する。両特徴量Φの間に算出された特徴量Φが含まれない場合、補正が必要であると判定する。
【0078】
また、プロセッサ11は、補正テーブルの各温度における特徴量Φと算出された特徴量Φとの差を算出してもよい。プロセッサ11は、算出された特徴量Φとの差が最も少ない、補正テーブルにおける特徴量Φに対応する温度を特定する。プロセッサ11は、特定された温度が常温ではない場合、補正が必要であると判定する。
【0079】
補正が必要であると判定すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに対応する補正値を補正テーブルから取得する。たとえば、プロセッサ11は、算出された特徴量Φとの差が最も少ない、補正テーブルにおける特徴量Φに対応する補正値を取得する。
【0080】
補正値を取得すると、プロセッサ11は、各感磁部21の磁気チャートの各出力値に補正値を積算して各出力値を補正する。なお、プロセッサ11は、通過領域に配置されている感磁部21の磁気チャートの各出力値に補正値を積算してもよい。
【0081】
また、プロセッサ11は、補正された出力値に基づいて、紙葉類Pの真贋を判定する機能を有する。
【0082】
各出力値を補正すると、プロセッサ11は、補正された出力値に基づいて、紙葉類Pの真贋を判定する。
【0083】
たとえば、メモリ12は、真贋を判定するための辞書情報を格納する。辞書情報は、真正な紙葉類Pの磁気の特徴などを示す。また、辞書情報は、真贋を判定するためのニューラルネットワークなどであってもよい。
【0084】
プロセッサ11は、辞書情報と補正された各出力値とに基づいて紙葉類Pの真贋を判定する。
なお、プロセッサ11が紙葉類Pの真贋を判定する方法は、特定の方法に限定されるものではない。
【0085】
また、補正が必要ないと判定した場合、プロセッサ11は、元の出力値に基づいて紙葉類Pの真贋を判定する。
また、紙葉類Pが真正であると判定した場合、プロセッサ11は、紙葉類Pが真正であることを示す情報を表示部14に表示してもよい。また、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて、所定の積載台(たとえば、真正な紙葉類Pを集める積載台)などに紙葉類Pを搬送してもよい。
【0086】
また、紙葉類Pが真正でないと判定した場合、プロセッサ11は、紙葉類Pが真正でないことを示す情報を表示部14に表示してもよい。また、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて、他の積載台(たとえば、真正でない紙葉類Pを集める積載台)などに紙葉類Pを搬送してもよい。
プロセッサ11は、セットされている各紙葉類Pにおいて同様に真贋を判定する。
【0087】
次に、紙葉類処理装置10の動作例について説明する。
まず、紙葉類処理装置10が補正テーブルを生成する動作例について説明する。
【0088】
図10は、紙葉類処理装置10が補正テーブルを生成する動作例について説明するためのフローチャートである。たとえば、紙葉類処理装置10は、製造時などにおいて以下の動作を行う。
【0089】
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。また、オペレータは、感磁部21の温度を所定の温度に変更しているものとする。
【0090】
プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する(S11)。紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送すると、プロセッサ11は、通過領域の外に配置されている感磁部21を用いて環境ノイズを測定する(S12)。
【0091】
環境ノイズを測定すると、プロセッサ11は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量Φを算出する(S13)。磁気チャートの特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、各温度における特徴量Φの算出が完了したかを判定する(S14)。たとえば、プロセッサ11は、操作部13を通じて、各温度において環境ノイズの測定が完了したことを示す操作の入力を受け付けたかを判定する。
【0092】
各温度における特徴量Φの算出が完了していないと判定すると(S14、NO)、プロセッサ11は、S11に戻る。ここで、オペレータは、感磁部21の温度を次の所定の温度に変更する。
【0093】
各温度における特徴量Φの算出が完了したと判定すると(S14、YES)、プロセッサ11は、各温度における補正値と特徴量Φとを対応付ける補正テーブルを生成する(S15)。
【0094】
補正テーブルを生成すると、プロセッサ11は、補正テーブルをメモリ12に格納する(S16)。
補正テーブルをメモリ12に格納すると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0095】
次に、紙葉類処理装置10が紙葉類Pの真贋を判定する動作例について説明する。
図11は、紙葉類処理装置10が紙葉類Pの真贋を判定する動作例について説明するためのフローチャートである。
【0096】
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。
【0097】
プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する(S21)。紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送すると、プロセッサ11は、感磁部21を用いて環境ノイズ及び紙葉類Pの磁気を測定する(S22)。
【0098】
環境ノイズ及び紙葉類Pの磁気を測定すると、プロセッサ11は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャート(通過領域の外に配置されている感磁部21の磁気チャート)の特徴量Φを算出する(S23)。
【0099】
磁気チャートの特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに基づいて、出力値に補正が必要であるかを判定する(S24)。出力値に補正が必要であると判定すると(S24、YES)、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに対応する補正値を補正テーブルから取得する(S25)。
【0100】
補正値を取得すると、プロセッサ11は、各出力値に補正値を積算して、各出力値を補正する(S26)。
【0101】
出力値に補正が必要でないと判定した場合(S24、NO)、又は、各出力値を補正した場合(S26)、プロセッサ11は、紙葉類Pの真贋を判定する(S27)。
紙葉類Pの真贋を判定すると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0102】
紙葉類Pが複数枚ある場合には、プロセッサ11は、各紙葉類Pについて、上記の動作を繰り返す。
【0103】
なお、プロセッサ11は、過補正を防止するために補正値に上限又は下限を設定してもよい。
また、補正テーブルは、他の装置によって生成されるものであってもよい。プロセッサ11は、他の装置から補正テーブルをダウンロードするものであってもよいし、オペレータによって補正テーブルを入力されるものであってもよい。
【0104】
また、紙葉類Pは、感磁部21が配置されている列の一端に沿って搬送されるものであってもよい。即ち、紙葉類Pが通過しない領域は、感磁部21の一端に形成されるものであってもよい。
【0105】
また、プロセッサ11は、特徴量Φと補正値との関係を示す式(一次近似式)をメモリ12に格納してもよい。この場合、プロセッサ11は、真贋判定時において算出された特徴量を式に代入して補正値を算出してもよい。
また、プロセッサ11は、紙葉類Pの種類を判定するものであってもよい。
【0106】
以上のように構成された紙葉類処理装置は、各温度における環境ノイズの磁気チャートの特徴量と補正値とを対応付けた補正テーブルを格納する。
【0107】
紙葉類処理装置は、真贋判定時において、通過領域の外に配置されている感磁部を用いて環境ノイズを測定する。紙葉類処理装置は、環境ノイズの磁気チャートの特徴量を算出する。紙葉類処理装置は、特徴量に対応する補正値を補正テーブルから取得する。紙葉類処理装置は、補正値に基づいて、感磁部の出力値を補正する。
【0108】
その結果、紙葉類処理装置は、温度センサを用いなくとも、温度変化による感磁部の出力値の変化を適切に補正することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る紙葉類処理装置は、紙葉類Pが感磁部21を通過していない間において環境ノイズを測定する点で第1の実施形態に係るそれと異なる。従って、その他の点については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
第2の実施形態に係る紙葉類処理装置10の構成は、第1の実施形態に係るそれと同様であるため説明を省略する。
【0110】
次に、紙葉類処理装置10が実現する機能について説明する。紙葉類処理装置10が実現する機能は、プロセッサ11がメモリ12などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0111】
紙葉類処理装置10は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置10が実現する機能に加えて以下の機能を実現する。
【0112】
まず、プロセッサ11は、複数の温度において、感磁部21が測定した磁気を示す磁気チャートの特徴量を取得する機能を有する。
【0113】
ここでは、オペレータは、磁気ヘッド部18の感磁部21の温度を所定の温度に変更する。たとえば、オペレータは、紙葉類処理装置10が存在する環境の温度を所定の温度に変更することで、感磁部21の温度を所定の温度に変更する。
【0114】
オペレータが感磁部21の温度を所定の温度に変更すると、プロセッサ11は、操作部13を通じて、磁気チャートの取得を開始する操作の入力を受け付ける。ここで、プロセッサ11は、感磁部21の温度の入力を受け付けてもよい。
【0115】
当該操作の入力を受け付けると、プロセッサ11は、搬送機構15を駆動させて環境ノイズを発生させる。ここでは、搬送機構15は、紙葉類Pを搬送しない。
【0116】
たとえば、プロセッサ11は、紙葉類Pをピックアップして磁気ヘッド部18に搬送させる場合と同様に搬送機構15を駆動させる。搬送機構15は、プロセッサ11の制御に従って駆動することで、磁場及び振動などを発生させる。即ち、搬送機構15は、紙葉類Pを搬送している場合と同様の環境ノイズを発生させる。
【0117】
搬送機構15が環境ノイズを発生させている間において、プロセッサ11は、感磁部21が測定した磁気を示すセンサ信号を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、感磁部21が測定した磁気を示す磁気チャートを取得する。
【0118】
なお、プロセッサ11は、複数の感磁部21の磁気チャートから1つを選択してもよい。また、プロセッサ11は、感磁部21の磁気チャートとして、複数の磁気チャートを平均した磁気チャートを取得してもよい。
【0119】
感磁部21の磁気チャートを取得すると、プロセッサ11は、磁気チャートから磁気チャートの特徴量Φを算出する。プロセッサ11が特徴量Φを算出する方法は、前述の通りであるため説明を省略する。
プロセッサ11は、複数の温度において、同様に特徴量Φを算出する。
【0120】
また、プロセッサ11は、感磁部21の出力値を補正するための補正値を示す補正テーブルを生成する機能を有する。
【0121】
プロセッサ11は、各温度において、感磁部21の出力値を取得する。各温度において出力値を取得すると、プロセッサ11は、各温度における出力値と常温における出力値とに基づいて、各温度における補正値を算出する。
【0122】
プロセッサ11が各温度における補正値する方法は、前述の通りであるため説明を省略する。
【0123】
補正値を算出すると、プロセッサ11は、各温度における特徴量Φと算出された補正値を対応付けた補正テーブルに生成する。プロセッサ11は、生成された補正テーブルをメモリ12に格納する。
【0124】
また、プロセッサ11は、補正値として、各温度において感磁部21が持つ特性から算出される理論値を用いてもよい。
【0125】
次に、プロセッサ11は、補正値に基づいて感磁部21の出力値を補正する機能を有する。
【0126】
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。
【0127】
プロセッサ11は、操作部13を通じて、紙葉類Pの真贋の判定を開始する操作の入力を受け付ける。当該操作の入力を受け付けると、プロセッサ11は、搬送機構15を駆動させて環境ノイズを発生させる。ここでは、搬送機構15は、紙葉類Pを搬送しない。
【0128】
搬送機構15が環境ノイズを発生させている間において、プロセッサ11は、感磁部21が測定した磁気を示すセンサ信号を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、各感磁部21が測定した磁気を示す磁気チャートを取得する。
【0129】
各感磁部21における磁気チャートを取得すると、プロセッサ11は、磁気チャートの特徴量Φを算出する。特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに基づいて補正が必要であるかを判定する。
【0130】
プロセッサ11が補正の要否を判定する方法は、前述の通りであるため説明を省略する。
【0131】
補正が必要であると判定すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに対応する補正値を補正テーブルから取得する。
【0132】
補正値を取得すると、プロセッサ11は、各感磁部21の磁気チャートの各出力値を補正するための補正値として、取得された補正値を設定する。
【0133】
なお、補正が必要でないと判定すると、プロセッサ11は、各感磁部21の磁気チャートの各出力値を補正するための補正値として、常温の補正値(たとえば、1)を設定してもよい。
【0134】
補正値を設定すると、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する。
【0135】
紙葉類Pが磁気ヘッド部18を通過する間において、プロセッサ11は、各感磁部21からセンサ信号を時系列で取得する。即ち、プロセッサ11は、各感磁部21が測定した磁気の磁気チャートを取得する。
【0136】
磁気チャートを取得すると、プロセッサ11は、各感磁部21の磁気チャートの各出力値に補正値を積算して各出力値を補正する。なお、プロセッサ11は、通過領域に配置されている感磁部21の磁気チャートの各出力値に補正値を積算してもよい。
【0137】
各出力値を補正すると、プロセッサ11は、補正された出力値に基づいて紙葉類Pの真贋を判定する。プロセッサ11が紙葉類Pの真贋を判定する方法は、前述の通りであるため説明を省略する。
【0138】
紙葉類Pの真贋を判定すると、プロセッサ11は、上記の通り再度、補正値を設定する。プロセッサ11は、1枚の紙葉類Pの真贋を判定するごとに補正値を設定してもよい。また、プロセッサ11は、所定の枚数の紙葉類Pの真贋を判定するごとに補正値を設定してもよい。また、プロセッサ11は、所定の時間が経過するごとに補正値を設定してもよい。
【0139】
次に、紙葉類処理装置10の動作例について説明する。
まず、紙葉類処理装置10が補正テーブルを生成する動作例について説明する。
【0140】
図12は、紙葉類処理装置10が補正テーブルを生成する動作例について説明するためのフローチャートである。たとえば、紙葉類処理装置10は、製造時などにおいて以下の動作を行う。
【0141】
ここでは、オペレータは、感磁部21の温度を所定の温度に変更しているものとする。
【0142】
まず、プロセッサ11は、搬送機構15を駆動させて環境ノイズを発生させる(S31)。環境ノイズを発生させると、プロセッサ11は、感磁部21を用いて環境ノイズを測定する(S32)。
【0143】
環境ノイズを測定すると、プロセッサ11は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量Φを算出する(S33)。磁気チャートの特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、各温度における特徴量Φの算出が完了したかを判定する(S34)。たとえば、プロセッサ11は、操作部13を通じて、各温度において環境ノイズの測定が完了したことを示す操作の入力を受け付けたかを判定する。
【0144】
各温度における特徴量Φの算出が完了していないと判定すると(S34、NO)、プロセッサ11は、S31に戻る。ここで、オペレータは、感磁部21の温度を次の所定の温度に変更する。
【0145】
各温度における特徴量Φの算出が完了したと判定すると(S34、YES)、プロセッサ11は、各温度における補正値と特徴量Φとを対応付ける補正テーブルを生成する(S35)。
【0146】
補正テーブルを生成すると、プロセッサ11は、補正テーブルをメモリ12に格納する(S36)。
補正テーブルをメモリ12に格納すると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0147】
次に、紙葉類処理装置10が紙葉類Pの真贋を判定する動作例について説明する。
図13は、紙葉類処理装置10が紙葉類Pの真贋を判定する動作例について説明するためのフローチャートである。
【0148】
ここでは、紙葉類処理装置10に形成されている所定の台などに紙葉類Pがセットされているものとする。
【0149】
まず、プロセッサ11は、搬送機構15を駆動させて環境ノイズを発生させる(S41)。環境ノイズを発生させると、プロセッサ11は、感磁部21を用いて環境ノイズを測定する(S42)。
【0150】
環境ノイズを測定すると、プロセッサ11は、環境ノイズを測定して得られた磁気チャートの特徴量Φを算出する(S43)。磁気チャートの特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに基づいて、出力値に補正が必要であるかを判定する(S44)。
【0151】
出力値に補正が必要であると判定すると(S44、YES)、プロセッサ11は、算出された特徴量Φに対応する補正値を補正テーブルから取得する(S45)。補正値を取得すると、プロセッサ11は、各感磁部21の磁気チャートの各出力値を補正するための補正値として、取得された補正値を設定する(S46)。
【0152】
出力値に補正が必要でないと判定した場合(S44、NO)又は、補正値を設定した場合(S46)、プロセッサ11は、搬送機構15を用いて紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送する(S47)。紙葉類Pを磁気ヘッド部18に搬送すると、プロセッサ11は、感磁部21を用いて紙葉類Pなどの磁気を測定する(S48)。
【0153】
紙葉類Pなどの磁気を測定すると、プロセッサ11は、各感磁部21の各出力値に補正値を積算して、各出力値を補正する(S49)。
【0154】
各出力値を補正すると、プロセッサ11は、紙葉類Pの真贋を判定する(S50)。
紙葉類Pの真贋を判定すると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0155】
紙葉類Pが複数枚ある場合には、プロセッサ11は、各紙葉類Pについて、上記の動作を繰り返す。
また、プロセッサ11は、所定の枚数の紙葉類PについてS47乃至S50を繰り返してもよい。この場合、プロセッサ11は、所定の枚数の紙葉類Pの真贋を判定するごとに、S41に戻ってもよい。また、プロセッサ11は、所定の時間が経過することに、S41に戻ってもよい。
【0156】
また、磁気ヘッド部18の感磁部21は、通過領域の外に配置されなくともよい。たとえば、磁気ヘッド部18は、感磁部21a、21b、21m及び21nを備えなくともよい。
【0157】
以上のように構成された紙葉類処理装置は、紙葉類が搬送されていない間において環境ノイズを発生させる。紙葉類処理装置は、発生させた環境ノイズを測定して、補正テーブルを生成する。
【0158】
その結果、紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送しなくとも、補正テーブルを生成することができる。
【0159】
また、紙葉類処理装置は、紙葉類が通過する通過領域の外に感磁部を備えなくとも、感磁部の出力値を適切に補正することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態にかかる紙葉類処理装置は、補正テーブルを更新する点で第1の実施形態に係るそれと異なる。従ってその他の点については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0160】
図14は、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置10’の構成例を示す。図14が示すように、紙葉類処理装置10’は、プロセッサ11、メモリ12、操作部13、表示部14、搬送機構15、A/Dコンバータ16、増幅回路17、磁気ヘッド部18及び温度センサ19などを備える。プロセッサ11と、メモリ12、操作部13、表示部14、搬送機構15、A/Dコンバータ16及び温度センサ19とは、互いに接続する。増幅回路17は、A/Dコンバータ16及び磁気ヘッド部18と互いに接続する。
【0161】
なお、紙葉類処理装置10’は、図14が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、紙葉類処理装置10’から特定の構成が除外されたりしてもよい。
【0162】
温度センサ19は、磁気ヘッド部18の感磁部21の温度を測定する。たとえば、温度センサ19は、感磁部21に接触して形成される。また、温度センサ19は、感磁部21の温度として磁気ヘッド部18の温度を測定するものであってもよい。また、温度センサ19は、感磁部21の温度として磁気ヘッド部18又は感磁部21の周辺の温度を測定するものであってもよい。
温度センサ19は、測定された温度を示すセンサ信号をプロセッサ11に送信する。
【0163】
次に、紙葉類処理装置10’が実現する機能について説明する。紙葉類処理装置10’が実現する機能は、プロセッサ11がメモリ12などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0164】
紙葉類処理装置10’は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置10が実現する機能に加えて以下の機能を実現する。
【0165】
プロセッサ11は、算出された特徴量Φに基づいて補正テーブルを更新する機能を有する。
前述の通り、プロセッサ11は、真贋判定時において、環境ノイズの磁気チャートを取得し、磁気チャートの特徴量Φを算出する。
【0166】
特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、温度センサ19を用いて感磁部21の温度を測定する。たとえば、プロセッサ11は、真贋判定を所定の回数行うごとに、感磁部21の温度を測定する。また、プロセッサ11は、所定の期間が経過するごとに、感磁部21の温度を測定するものであってもよい。
【0167】
感磁部21の温度を測定すると、プロセッサ11は、測定された温度に対応する特徴量Φを補正テーブルから取得する。特徴量Φを補正テーブルから取得すると、プロセッサ11は、算出された特徴量Φと、補正テーブルから取得された特徴量Φとを比較する。
【0168】
プロセッサ11は、両特徴量Φの差が所定の閾値以上である場合、補正テーブルを更新する。ここでは、プロセッサ11は、補正テーブルから取得された特徴量Φの±50%から、算出された特徴量Φが外れる場合に、補正テーブルを更新する。
【0169】
図15は、プロセッサ11が補正テーブルを更新する動作例について説明するためのグラフである。図15では、縦軸は、特徴量Φを示し、横軸は、温度を示す。
【0170】
グラフ51は、更新前の補正テーブルにおける温度と特徴量Φとの関係を示す。
また、グラフ52は、更新前の補正テーブルにおける特徴量Φの±50%の閾値を示す。即ち、プロセッサ11は、算出された特徴量Φがグラフ52間から外れる場合に、補正テーブルを更新する。
【0171】
プロセッサ11は、以下のように補正テーブルを更新する。
ここでは、プロセッサ11は、感磁部21の温度として25度(第1の温度)を測定したものとする。
【0172】
プロセッサ11は、第1の温度を測定した後、所定の時間(たとえば、1から数時間)において真贋判定を継続する。即ち、プロセッサ11は、所定の時間において複数枚の紙葉類Pの真贋を判定する。
【0173】
所定の時間が経過すると、プロセッサ11は、温度センサ19を用いて、感磁部21の温度を測定する。ここでは、プロセッサ11は、感磁部21の温度をとして50度(第1の温度と異なる第2の温度)を測定したものとする。
【0174】
第2の温度を取得すると、プロセッサ11は、温度測定時における環境ノイズの磁気チャートの特徴量Φを取得する。
【0175】
特徴量Φを取得すると、プロセッサ11は、第1の温度における特徴量Φと第2の温度における特徴量Φとの2点に基づいて温度と特徴量Φとの関係を示す一次関数を生成する。一次関数を生成すると、プロセッサ11は、生成された一次関数に各温度を代入して、各温度における特徴量Φを算出する。各温度における特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、補正テーブルの各温度に対応する特徴量Φを各温度において一次関数から算出された特徴量Φに書き換えて、補正テーブルを更新する。
【0176】
図15において、グラフ53は、温度と特徴量Φとの関係を示す一次関数を示す。グラフ53は、第1の温度(25度)において算出された特徴量Φと、第2の温度(50度)において算出された特徴量Φとを通過する直線である。
【0177】
また、プロセッサ11は、過補正を防止するために、特徴量Φの上限及び下限を設定する。図15において、グラフ54は、特徴量Φの上限及び下限を示す。
【0178】
プロセッサ11は、第1の温度又は第2の温度において算出された特徴量Φがグラフ54から外れる場合、補正テーブルを更新しなくともよい。また、この場合、プロセッサ11は、第1の温度又は第2の温度において算出された特徴量Φが上限値又は下限値であるものとして補正テーブルを更新してもよい。
【0179】
なお、プロセッサ11は、第1の温度を測定してから、感磁部21の温度を測定し続けてもよい。プロセッサ11は、測定された温度と第1の温度との差が所定の閾値を超えた場合に、測定された温度を第2の温度として取得してもよい。
【0180】
また、プロセッサ11は、複数の温度において算出された特徴量Φに基づいて一次関数を生成してもよい。
【0181】
図16は、更新前の補正テーブルと更新後の補正テーブルとを示すグラフである。図16では、縦軸は、補正値(ゲイン)を示し、横軸は、特徴量Φを示す。
【0182】
グラフ61は、更新前の補正テーブルにおける特徴量Φと補正値との関係を示す。
また、グラフ62は、更新後の補正テーブルにおける特徴量Φと補正値との関係を示す。
【0183】
図15のように各温度において特徴量Φが上昇した場合、図16が示すように、更新後の補正テーブルの各特徴量Φは、更新前の補正テーブルと比較して、上昇する。
【0184】
次に、紙葉類処理装置10の動作例について説明する。
図17は、紙葉類処理装置10の動作例について説明するためのフローチャートである。
【0185】
まず、プロセッサ11は、温度センサ19を通じて感磁部21の温度(第1の温度)を測定する(S51)。感磁部21の温度を測定すると、プロセッサ11は、第1の温度に対応する特徴量Φを補正テーブルから取得する(S52)。
【0186】
特徴量Φを補正テーブルから取得すると、プロセッサ11は、第1の温度において環境ノイズの磁気チャートから算出された特徴量Φと補正テーブルから取得された特徴量Φとの差が閾値以上であるかを判定する(S53)。
【0187】
両特徴量Φの差が閾値以上でないと判定すると(S53、NO)、プロセッサ11は、S51に戻る。
【0188】
両特徴量Φの差が閾値以上であると判定すると(S53、YES)、プロセッサ11は、所定の時間が経過したかを判定する(S54)。所定の時間が経過していないと判定すると(S54、NO)、プロセッサ11は、S54に戻る。
【0189】
所定の時間が経過したと判定すると(S54、YES)、プロセッサ11は、温度センサ19を通じて感磁部21の温度(第2の温度)を測定する(S55)。感磁部21の温度を測定すると、プロセッサ11は、第1の温度及び第2の温度において算出された特徴量Φに基づいて一次関数を生成する(S56)。
【0190】
一次関数を生成すると、プロセッサ11は、各温度を一次関数に代入して各温度における特徴量Φを算出する(S57)。各温度における特徴量Φを算出すると、プロセッサ11は、補正テーブルにおいて各温度における特徴量Φを各温度において一次関数から算出された特徴量Φに書き換える(S58)。
特徴量Φを書き換えると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0191】
なお、プロセッサ11は、S21乃至27とS51乃至58とを同時並行で実行する。
【0192】
また、紙葉類処理装置10’は、第2の実施形態における紙葉類処理装置10の特徴を備えるものであってもよい。
【0193】
以上のように構成された紙葉類処理装置は、算出された特徴量と補正テーブルにおける特徴量との差が大きい場合、複数の温度における特徴量に基づいて特徴量と温度との関係を示す式を生成する。紙葉類処理装置は、式に従って各温度における特徴量を算出する。紙葉類処理装置は、算出された特徴量に基づいて補正テーブルを更新する。その結果、紙葉類処理装置は、運用後に感磁部の温度特性又は温度によって生じる環境ノイズが変化した場合であっても適切に感磁部の出力値を補正することができる。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0195】
10…紙葉類処理装置、10’…紙葉類処理装置、11…プロセッサ、12…メモリ、13…操作部、14…表示部、15…搬送機構、16…A/Dコンバータ、17…増幅回路、18…磁気ヘッド部、19…温度センサ、21(21a乃至21n)…感磁部、31…領域、32…領域、41…グラフ、42…グラフ、51…グラフ、52…グラフ、53…グラフ、54…グラフ、61…グラフ、62…グラフ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12
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図15
図16
図17