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特開2022-182499粉粒体製造装置および粉粒体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182499
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】粉粒体製造装置および粉粒体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 29/60 20220101AFI20221201BHJP
   B01F 31/00 20220101ALI20221201BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20221201BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01F9/02 Z
B01F11/00 B
B01F3/18
C03B20/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090091
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】山本 修司
(72)【発明者】
【氏名】天野 正実
【テーマコード(参考)】
4G014
4G035
4G036
【Fターム(参考)】
4G014AH00
4G035AB48
4G035AE17
4G036AA03
4G036AA25
4G036AB11
(57)【要約】
【課題】粉粒体を混合または解砕する際に、不純物による汚染や容器破損の虞がなく、且つ生産性を低下させず、コストを低減することのできる粉粒体製造装置および粉粒体製造方法を提供する。
【解決手段】粉粒体を混合または解砕する粉粒体製造装置100であって、前記粉粒体を収容する混合容器1と、前記混合容器を回転または揺動させる駆動機構2,3,4,6とを備え、前記混合容器は、天板と底板と側壁部とが石英ガラスにより形成され、前記粉粒体を収容する複数の粉粒体収容室13と、前記複数の粉粒体収容室を収容する外装容器11とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を混合または解砕する粉粒体製造装置であって、
前記粉粒体を収容する混合容器と、前記混合容器を回転または揺動させる駆動機構とを備え、
前記混合容器は、
天板と底板と側壁部とが石英ガラスにより形成され、前記粉粒体を収容する複数の粉粒体収容室と、前記複数の粉粒体収容室を収容する外装容器とを有することを特徴とする粉粒体製造装置。
【請求項2】
前記粉粒体収容室は、中空円柱状の石英ガラス製容器であることを特徴とする請求項1に記載された粉粒体製造装置。
【請求項3】
複数の前記中空円柱状の石英ガラス製容器は、緩衝材により被覆された状態で前記外装容器に収容されていることを特徴とする請求項2に記載された粉粒体製造装置。
【請求項4】
前記緩衝材により被覆された状態の前記石英ガラス製容器の外径は、前記外装容器の内径の1/3の寸法であり、
前記外装容器の中心部に1本の前記石英ガラス製容器が配置され、その周囲に6本の前記石英ガラス製容器が配置されていることを特徴とする請求項3に記載された粉粒体製造装置。
【請求項5】
前記外装容器内に最大7本の前記石英ガラス製容器を収容する場合、前記石英ガラス製容器の内寸高さをHとし、内径をr、粉体の充填率をaとすると、0.000672<a(1-a)0.5・r・H1.5<0.00605であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載された粉粒体製造装置。
【請求項6】
粉粒体を混合または解砕する粉粒体製造方法であって、
天板と底板と側壁部とが石英ガラスにより形成された複数の粉粒体収容室と、前記複数の粉粒体収容室を収容する外装容器とを有する混合容器において、前記粉粒体収容室に粉粒体を収容する工程と、
前記混合容器を回転または揺動させる工程と、
を備えることを特徴とする粉粒体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体製造装置および粉粒体製造方法に関し、例えば、石英ガラスルツボの原料となる石英ガラス粉を製造するための粉粒体製造装置およびこれを用いた粉粒体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体原料の溶融に用いられる石英ガラスルツボにあっては、例えば特許文献1(特開2019-94232号公報)に示すように、複数層に形成され、外層にアルミニウム(Al)を添加し、高温粘度を高めるようにしている。石英ガラスルツボの各層は、回転する形成型(モールド)の内表面に堆積した石英原料粉の層をアーク溶融することにより形成される。
例えば、石英ガラスルツボの外層におけるAl濃度を調整するには、石英原料粉に対し、微量の硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれかを、純水やアルコールに溶解混合した水溶液を均一に混合する必要がある。
【0003】
一般に粉体を攪拌混合する装置としては、粉体を収容する容器を回転して攪拌混合する方式、容器内の攪拌翼などにより攪拌する機械攪拌式、気流式等が一般的に知られている。
このうち機械攪拌式は、微粉末のように付着や凝集性の強い粉体、物性差の大きな粉体の混合に適していると言われており、攪拌翼による強制攪拌や、容器回転式に攪拌翼を組み合わせた方式が多く用いられている。
しかしながら、攪拌混合する粉体が石英ガラス原料粉の場合、石英の硬度が攪拌翼、例えばステンレス等よりも硬いことからステンレス等が容易に摩耗してコンタミネーションが起きるため、石英ガラス原料粉の混合としては適さないという課題があった。
【0004】
さらに、微粉末の混合では、回転翼によるせん断応力によって、微粉末同志が凝集して径大化するという課題がある。例えば、特許文献2(特開昭61-149231号公報)に開示された微粉体の混合方法によれば、ヘンシェルミキサーやリボンブレンダーにて高速攪拌混合させることで、微粉末が他の粉末の表面に吸着させる状態を造りだすことが開示されている。そのため石英ガラス用原料粉の混合では高含有Al微粉末が凝集造粒して径大化し、石英ガラスの異常失透の要因となる可能性があり適さなかった。
【0005】
また、容器内に気流を形成して攪拌混合する方式の場合、粉体の流動性の影響を強く受け、粒径差が大きいと分離してしまい混合状態が悪くなることがあった。また、粉体同士の衝突による粒度変化が発生すると、粉体と気体との分離装置等が必要となり、設備の複雑化して高コストとなるという課題があった。また、設備内を石英粒子が高速で移動する際に設備内壁の摩耗が著しく発生し、コンタミネーションが発生する虞があり、石英ガラス用原料粉の混合には適さなかった。
【0006】
また、その他の混合攪拌方式として、ドラム型(円筒型)容器に粉体と、セラミックなどからなる硬質ボールとを入れ、容器を回転することでボール同士を衝突させ、粉体をすり潰すボールミル方式がある。
しかしながら、その場合にも硬質ボールの摩耗によりコンタミネーションが起きるため、石英ガラス原料粉の混合としては適さないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-94232号公報
【特許文献2】特開昭61-149231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなコンタミネーションを回避するには、粉体を収容する容器内において攪拌翼や硬質ボールを用いず、容器を回転・揺動して攪拌混合する方式を採用すればよい。しかしながら、容器内において石英ガラス粉を混合する場合、次のような技術的課題があった。
即ち、石英ガラス粉を収容する容器が樹脂製容器の場合、石英原料粉と樹脂製容器との摩擦により容器内部が摩耗し、不純物混入の懸念があった。不純物の混入を避けるためには石英製の容器を用いればよいが、その場合、容器中の粉体は数十kgの重量を有するため、混合時に粉体が落下する衝撃で石英製ガラス容器が破損する虞があった。
【0009】
また、石英製ガラス容器の破損を回避するためには1バッチ当たりの石英原料粉の量を大幅に少なくするか、容器の肉厚を十分に厚くする必要がある。
しかしながら、1バッチ当たりの量を小さくする場合、生産性が低下してしまう。また、容器の肉厚を厚くすると容器自体が重くなるため、取り扱いの悪さ、回転機構への負荷の増大などの問題がある上に、容器自体のコストも上がってしまうという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、粉粒体を混合または解砕する際に、不純物による汚染や容器破損の虞がなく、且つ生産性を低下させず、コストを低減することのできる粉粒体製造装置および粉粒体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る粉粒体製造装置は、粉粒体を混合または解砕する粉粒体製造装置であって、前記粉粒体を収容する混合容器と、前記混合容器を回転または揺動させる駆動機構とを備え、前記混合容器は、天板と底板と側壁部とが石英ガラスにより形成され、前記粉粒体を収容する複数の粉粒体収容室と、前記複数の粉粒体収容室を収容する外装容器とを有することに特徴を有する。
尚、前記粉粒体収容室は、中空円柱状の石英製ガラス容器であることが望ましい。
また、複数の前記中空円柱状の石英製ガラス容器は、緩衝材により被覆された状態で前記外装容器に収容されていることが望ましい。
また、前記緩衝材により被覆された状態の前記石英製ガラス容器の外径は、前記外装容器の内径の1/3の寸法であり、前記外装容器の中心部に1本の前記石英製ガラス容器が配置され、その周囲に6本の前記石英製ガラス容器が配置されていることが望ましい。
また、前記外装容器内に最大7本の前記石英ガラス製容器を収容する場合、前記石英ガラス製容器の内寸高さをHとし、内径をr、粉体の充填率をaとすると、0.000672<a(1-a)0.5・r・H1.5<0.00605であることが望ましい。
【0012】
このように複数の小径の石英製ガラス容器を外装容器の中に複数収容することで、石英製ガラス容器の1つあたりの石英原料粉の投入量を少なくし、落下時の衝撃を減少することができる。また、粉粒体の収容容器として、石英製ガラス容器を用いることで不純物による汚染を防止することができる。
また、従来よりも小径の石英製ガラス容器を用いるため、コストを低減することができる。
【0013】
また、前記課題を解決するためになされた本発明に係る粉粒体製造方法は、粉粒体を混合または解砕する粉粒体製造方法であって、天板と底板と側壁部とが石英ガラスにより形成された複数の粉粒体収容室と、前記複数の粉粒体収容室を収容する外装容器とを有する混合容器において、前記粉粒体収容室に粉粒体を収容する工程と、前記混合容器を回転または揺動させる工程と、を備えることに特徴を有する。
【0014】
このように外装容器内に複数の粉粒体収容室を形成することにより、粉体収容室1つあたりの石英原料粉の投入量を少なくし、落下時の衝撃を減少することができる。また、粉粒体収容室の壁を石英ガラス製とすることにより不純物による汚染を防止することができる。
なお、前記粉粒体製造方法においては、上記いずれかの粉粒体製造装置を用いた当該粉粒体製造方法とすることにより、各々の製造装置の特徴を生かしたより有効な製造方法となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粉粒体を混合または解砕する際に、不純物による汚染や容器破損の虞がなく、且つ生産性を低下させず、コストを低減することのできる粉粒体製造装置および粉粒体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る粉粒体製造装置の全体構成を模式的に示す側面図である。
図2図1は、本発明に係る粉粒体製造装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
図3図3は、混合容器の上部を径方向に切った状態の斜視図である。
図4図4は、混合容器の上部を径方向断面で示す平面図である。
図5図5は、粉体収容容器の斜視図である。
図6図6は、混合容器の開閉機構を説明するための断面図である。
図7図7は、本発明に係る混合容器に収容される石英ガラス製容器の好ましい寸法について説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る粉粒体製造装置の全体構成を模式的に示す側面図であり、図2は、その平面図である。
図1図2に示すように、粉粒体製造装置100は、外形が円柱状の混合容器1と、この混合容器1を縦方向に回転可能に保持する回転軸2と、この回転軸2を一方向に回転または所定の角度範囲内で反復回動させる駆動部6とを備える。
【0018】
さらに粉粒体製造装置100は、前記回転軸2の左右両端を回転自在に保持する二股状の保持部材3を備える。保持部材3は、図2に示すように軸部3aと二股部3bとにより構成されており、軸部3aは前記回転軸2に直交するとともに駆動部4によって軸周りに回転可能となされている。
この粉粒体製造装置100にあっては、前記混合容器1内に粉粒体を収容し、前記駆動部4、6により回転軸2及び軸部3aをそれぞれの軸周りに回転駆動することにより、混合容器1が回転または揺動され、内部の粉粒体が混合されるように構成されている。
【0019】
続いて、混合容器1の構成について詳しく説明する。図3は、混合容器1の上部を径方向断面で示す斜視図であり、図4は、その平面図である。
混合容器1は、例えばSUS(ステンレス鋼)により形成された中空円柱状の外装容器11と、外装容器11内に収容された複数(図では7つ)の中空円柱状の粉体収容容器12とからなる。図示するように外装容器11の中央に1本の粉体収容容器12が配置され、その周囲に6本の粉体収容容器12が配置されている。
【0020】
各粉体収容容器12は、中空円柱状の石英ガラス製容器13(粉粒体収容室)と、緩衝材として、その外面全体(天面、底面、側周面)を被覆する例えば厚さ17mmのニトリルゴム層14とからなる。
図5に示すように各石英ガラス製容器13の高さ内寸Hは、例えば804mmに形成され、内径rは、例えば120mmに形成されている。石英ガラス製容器13の側壁部13aの厚さは、例えば10mmに形成され、端面である天板13b、底板13cの厚さは、例えば25mmに形成されている。
図6に示すように石英ガラス製容器13の天板13bは、内部に粉粒体を投入できるように着脱可能に設けられ、側壁部13aの上端との接合部において、破損防止、及び密閉度を向上させるため、環状の緩衝材(ニトリルゴムなど)15、及びOリング16が介在される。
【0021】
図3図4に示すように7本の石英ガラス製容器13は、ニトリルゴム層14を介して隣り合う石英ガラス製容器13、及び外装容器11の内周面と当接している。更に、図6(天板側の断面)に示すように石英ガラス製容器13の天板13bと底板13cにおいても、ニトリゴム層14を介して外装容器11の天板11Aと底板(図示せず)の内側面にそれぞれ密着している。それにより外装容器11内において、各石英ガラス製容器13は、がたつくことなく収容されている。
【0022】
尚、外装容器11は、例えば上端が開口可能な有底円筒形状であり、図6に示すように円板状の天板11Aで上部開口を塞ぐように構成される。この天板11Aを被せて内部を密封するには、例えば、図示するように天板周縁のフランジ11bと外装容器11の上端周縁のフランジ11aとを合わせ、ボルト17等のクランプ部材により固定すればよい。これにより天板11Aがその下面に接するニトリルゴム層14を押圧し、石英ガラス製容器13の天板13bを固定することができる。
【0023】
このように混合容器1にあっては、複数の小径の石英ガラス製容器13をSUS製の外装容器11の中に複数収容することで、石英ガラス製容器13の1つあたりの石英原料粉の投入量を少なくし、落下時の衝撃を減少することができる。
この場合、従来のように径の大きな単一の容器内で粉体を混合、解砕する場合と比べて、容器1つあたりの重量は減少するものの、落下による衝撃を受ける端面の面積も小さくなるため、粉体落下時の端面(天板、底板)に対する最大圧力は大きくは変わらない。
【0024】
ここで、その力の影響を最も強く受けるのは端面と円筒部との接続部であるが、重量あたりの接続部長さが長くなるため、衝撃に対する耐久力は増す。
詳しく説明すると、容器体積に対する粉体体積の比率が一定の場合、粉体重量は容器の断面積に比例する。容器は円形の断面であるため、粉体重量は半径Rの2乗に比例する。また、接続部長さは、円の周長であるため、半径Rに比例する。即ち、重量あたりの接続部長さは、R/R=1/Rに比例する。
したがって、容器の径が小さいほど、重量あたりの接続部長さが長くなり、衝撃に対する耐久力が増すことになる。そのため、石英ガラス製容器13が破壊する危険性を低下させることができる。
【0025】
また、中空円柱状の容器の場合、底板に圧力をかけた場合に底板に発生する最大応力SはrPに比例する(r:容器内径、P:底面にかかる圧力、S∝rP)ため、径小化により大幅な応力低下が期待できる。
即ち、石英ガラス製容器13は、中空円柱状(円筒状)であるが、前記したように容器の径rが小さいほど、底面と側面との接続部の重量あたりの長さが長くなり、衝撃に対する耐久力が増すため、底面への衝撃により前記接続部に発生する最大応力Sを大幅に小さくすることができる。
また、石英の小径円筒は価格が安く、コスト面でも優れている。
【0026】
一方、本実施の形態においては、SUS製の中空円柱状の外装容器11に複数の粉体収容容器12を収容するため、容積のロスが発生する。石英ガラス製容器13の径を小さくして本数を増やすほどこの容積ロスは小さくなるが、石英ガラス製容器13の側壁肉厚とニトリルゴム層14(緩衝材)に容積を占められることによるロスは増加する。
【0027】
また、石英ガラス製容器13の径が小さくなりすぎると、粉体混合の効率悪化が懸念される。そのため、石英ガラス製容器13としては、径が小さすぎず、かつ充填による容積ロスが小さいものが要求される。同径の円を2次元的に並べる場合の最密充填は三角格子となるため、円筒状の金属製外装内部に3本か7本を収容することで無駄が小さくなり望ましい。
【0028】
尚、本実施の形態のように外装容器11内に7本の石英ガラス製容器13を収容する(外装容器11の中心に1本の石英ガラス製容器13を配置し、その周囲に6本の石英ガラス製容器13を配置する)場合、ニトリルゴム層14(緩衝材)まで含めた石英ガラス製容器13の外径は外装容器11の内径の1/3であり、一般的なドラムシェーカーの径が数百mmであることを考えると粉体の混合に支障をきたすほどではない。
しかしながら、7本以上の石英ガラス製容器13を収容すると、各石英ガラス製容器13を更に小径化する必要があり、混合効率が急激に悪化するため好ましくない。
【0029】
粉体衝突時の圧力Pは、衝突時の粉体の運動量に比例するため、粉体質量をM、石英ガラス製容器13の内径をrとすると、P∝(Mv/r)である。
また、粉体の衝突時の速度vは、重力加速度gとすると、v=―(2gh)0.5である(初速0、落差h)。
したがって、石英ガラス製容器13の高さ(内寸)をH、容器内の粉体の充填率をaとすると、P∝(Mv/r)∝(H-h)・h0.5となり(図7に示すように容器13内に占める粉体Wの質量Mは、その高さ幅(H-h)に比例する)、容器13内の粉体Wの充填率をaとすると、P∝aH・((1-a)H)0.5となる。
また、前記したように容器底板に発生する最大応力をSとすると、S∝rPであるため、S∝a(1-a)0.5・r・H1.5である。
本発明において、最大応力Sに比例する前記a(1-a)0.5・r・H1.5の範囲を規定している。具体的には、0.000672<a(1-a)0.5・r・H1.5<0.00605であることが望ましい。これにより石英ガラス製容器13における必要な安全率が確保される(ガラス製品を動的プロセスで使用する際の必要な安全率20以上が確保される)。
【0030】
このように構成された粉粒体製造装置100にあっては、例えば、ルツボ外層を形成する天然石英原料粉のAl濃度を所定範囲に形成するための混合機、解砕機として用いることができる。混合機として用いる場合、具体的には、各石英ガラス製容器13内に、外層を形成する天然石英原料粉のAl濃度を測定し、外層のAl濃度が所定範囲となるように天然石英原料粉末にアルミニウム(Al)を所定量添加する。Al濃度の調整は、微量の硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれかを、純水やアルコールに溶解混合して水溶液とし、これを前記天然石英原料粉末に添加することによって行うことができる。
【0031】
続いて、前記のようにアルミニウム(Al)を添加した所定量の天然石英原料粉末を7本の各石英ガラス製容器13に収容し(例えば容器内の容積54%の量)、これをニトリルゴム層14で被覆した後、外装容器11内に収容して密閉する(混合容器1が形成される)。
次いで、図1図2のように混合容器1を粉粒体製造装置100にセットし、駆動部6により回転軸2とともに混合容器1を所定方向に所定速度で縦回転させつつ、他の駆動部4により軸部3aを軸周りに回転させる。これにより、混合容器1内の各石英ガラス製容器13内において、粉体が偏ることなく混合される。
この混合処理を所定時間継続した後、駆動部4、6の動作が停止され、混合処理が終了する。
【0032】
以上の混合処理にあっては、複数の小径の石英ガラス製容器13をSUS製の外装容器11の中に複数収容することで、石英ガラス製容器13の1つあたりの石英原料粉の投入量を少なくし、落下時の衝撃を減少することができる。また、粉粒体の収容容器として、石英ガラス製容器13を用いることで不純物による汚染を防止することができる。
また、従来よりも小径の石英ガラス製容器を用いるため、コストを低減することができる。
【実施例0033】
本発明に係る粉粒体製造装置およびこれを用いた粉粒体の製造方法について、実施例に基づきさらに説明する。
【0034】
(実験1)
実験1における実施例1では、シミュレーション上において、図3に示したようなドラム缶型のSUS製の外装容器11(内径506mm)内に7本の石英ガラス製容器13を収容し混合容器を形成した。各石英ガラス製容器13は、外面全体を厚さ17mmのニトリルゴム層14により被覆した。より具体的には、図4に示すように外装容器11の直径方向に3本の石英ガラス製容器13を詰め込んだ。詰め込む3本の容器13の直径は、ニトリルゴム層14を含めて計522mm((石英ガラス容器13の外径140mm+ニトリルゴム層14の厚さ計34mm)×3本分)となり、ニトリルゴム層14を厚さ方向に圧縮して内径506mmの外装容器内に詰め込んだ。
石英ガラス製容器13の内寸高さは804mm、内径は120mm、側壁厚さは10mm、天板と底板の厚さは10mmとした。
また、各石英ガラス製容器13内において、容積比54%(充填率a=0.54)の石英原料粉体を容器内上部から自由落下させ、容器端面に加わる最大圧力に対して発生する応力をシミュレーション計算した。
【0035】
尚、このシミュレーション解析の条件としては、石英ガラス製容器13が上下を閉じた一体物の円筒である簡略化モデル(ヤング率73.1GPa、ポアソン比0.17)を用いて解析した。
また、ニトリルゴム14の初期圧縮は考慮せず、通常の弾性体(ヤング率8.15×10―4GPa、ポアソン比0.499)とした。外装容器11はSUS製(ヤング率206.3GPa、ポアソン比0.3)とした。
また、粉体の解析モデルとして、非ニュートン粘性モデルを改造し、粉に近い挙動を示す疑似粉体モデルを作成した。基本はビンガム粘性モデル(降伏せん断応力を持つ流体)である。これを圧力が掛かっているときのみ、せん断が働くように改造し、柱状モデルの崩壊解析により検証した。
石英ガラス製容器13内での粉体落下シミュレーションとして、2次元軸対称モデルにおいて、上部に配置された疑似粉体が底面に衝突するまでを解析し、衝突時に下面圧力が最大となるときの圧力分布を応力解析した。
【0036】
この実施例1の結果、容器13内の端面と円筒端部との交差部において、0.36MPaの最大引張応力が発生した。
石英ガラスの引張強度を48MPaとして安全率を算出すると、安全率133となった。ガラス製品を動的プロセスで使用する際の安全率としては、安全率20以上が望ましいことから、本実施例1では十分な安全率が得られた。
【0037】
(比較例1)
比較例1では、シミュレーション上において、内寸高さ804mm、内径415mmのドラム缶型の樹脂製の容器内に石英原料粉体を収容するものを使用した。
また、前記容器内において、容積54%(充填率a=0.54)の石英原料粉体を容器内上部から自由落下させ、容器底面に加わる最大圧力に対して発生する応力をシミュレーション計算した。シミュレーション解析条件としては、実施例1と同じである。
【0038】
この結果、容器内の端面と円筒端部との交差部において、4.34MPaの最大引張応力が発生した。
石英ガラスの引張強度を48MPaとして安全率を算出すると、安全率11となった。ガラス製品を動的プロセスで使用する際の安全率としては、安全率20以上が望ましいことから、本比較例1では不十分となり、石英ガラス製容器の場合は破損の危険があると確認できた。
【0039】
(実験2)
実験2では、石英ガラス製容器13の充填率をa、内径r、内寸高さHとしたときに、好ましいa(1-a)0.5・r・H1.5の範囲について実験1と同様のシミュレーション解析条件を用いて検討した。
先ず、r=207.5mm、H=804mm、の石英ガラス製容器13に、充填率a=0.54での粉体落下シミュレーションを行った場合、安全率は11であった。また、このときのa(1-a)0.5・r・H1.5=0.011であった。
石英ガラス製品の動的負荷に対しては安全率20以上が推奨される。そのため、最大応力Sが11/20倍以下になるよう設計する必要がある。
したがって、a(1-a)0.5・r・H1.5<0.011×(11/20)=0.00605を満たす必要がある。
前述した実施の形態では、外装容器11に7本の石英ガラス製容器13を収容するため径は1/3となる。したがって、0.00605×(1/3)=0.000672<a(1-a)0.5・r・H1.5を満たせば良い。
よって、外装容器11内に最大7本の石英ガラス製容器13を収容する場合、0.000672<a(1-a)0.5・r・H1.5<0.00605であることが望ましい。
【0040】
以上の実施例の結果、本発明によれば、容器破損の虞がない粉粒体製造装置が得られることを確認した。
【符号の説明】
【0041】
1 混合容器
2 回転軸(駆動機構)
3 保持部材(駆動機構)
3a 軸部(駆動機構)
3b 二股部(駆動機構)
4 駆動部(駆動機構)
6 駆動部(駆動機構)
11 外装容器
12 粉体収容容器
13 石英ガラス製容器
14 ニトリルゴム層(緩衝材)
100 半導体製造用部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7