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特開2022-182500メタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182500
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】メタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/48 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
C08G65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090093
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚史
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】本田 暢子
(72)【発明者】
【氏名】福岡 亮子
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA26
4J005BB01
4J005BB02
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】メタクリル酸ハライドを用いた系での、高純度のメタクリル変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B)と、工程(B)で加熱処理した反応物混合溶液を蒸留する工程(C)と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
前記工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B)と、
前記工程(B)で加熱処理した反応物混合溶液を蒸留する工程(C)と、を含むことを特徴とするメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項2】
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、アミンの存在下100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B')と、
前記工程(B')で加熱処理した反応物混合溶液をろ過する工程(D)と、を含むことを特徴とするメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)をアミンの存在下で行う、請求項1又は2に記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)の反応について、残存するメタクリル酸ハライドをアルコールで失活することにより反応を停止する、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項5】
前記メタクリル酸ハライドがメタクリル酸クロリドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)において、前記溶媒が芳香族炭化水素を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端にメタクリル基を有する低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは、優れた高周波特性、難燃性、耐熱性を有するため、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野の材料として幅広く用いられている。近年、末端にビニル基等の架橋可能な官能基を有する低分子量のポリフェニレンエーテルが、熱硬化性を有し、耐熱性や成形性等に優れており、かつ既存のエポキシ硬化系に比べ誘電特性も良好なことから、5G等次世代の基板材料等の電子材料用途に対して特に有効であることが期待されている(例えば特許文献1)。
【0003】
中でも、末端にメタクリル基を有した低分子量ポリフェニレンエーテルは、架橋基としてのメタクリル基の反応性が適度に高く、熱硬化性と保存安定性を両立しており、広く用いられつつある。メタクリル基を導入する方法としては、ジメチルアミノピリジン触媒存在下、メタクリル酸無水物と、ポリフェニレンエーテル分子末端の水酸基とを反応させ、エステル化させる方法が一般的である(例えば特許文献2,3)。
【0004】
ポリマーに限らなければ、水酸基のメタクリル化反応としては、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、メタクリル酸ハライドとの反応によりエステル化する方法(例えば特許文献4)が報告されている。しかし、メタクリル酸ハライドを用いた系でのポリフェニレンエーテル等のポリマーの末端変性反応の報告例はほとんどないのが現状である。
【0005】
上述のメタクリル基を導入する方法は広く用いられているが、技術的には改善する余地があった。例えば、メタクリル酸無水物と水酸基末端とを反応させる方法は、副生物として水酸基末端と等モル以上のメタクリル酸が生じるが、メタクリル酸は高沸点のため、反応後に除去することが難しく、精製収率が低下する懸念がある。
【0006】
一方で、メタクリル酸ハライドを用いる方法は、メタクリル酸のような副生物が生じないため高収率が期待できる。また酸ハライドと酸無水物とでは一般に前者の反応性が高いため、より温和な条件で高い変性率を期待することができる。
しかしながら、メタクリル酸ハライドは、その製造方法にかかわらず、保管中に経時的に分子間のヘテロディールスアルダー反応が進行して、下記式(a)で表されるメタクリル酸ハライドダイマーが生成することが知られている。
【化1】
式(a)中、Xはハロゲン原子を示す。
【0007】
該ダイマーを含有するメタクリル酸ハライドを反応に用いると、該ダイマーに由来する副生物が形成され、これらが目的化合物中に残存すると所望する性能が十分に発揮されない可能性がある。例えば、該副生物が含まれる低分子量ポリフェニレンエーテルを基板材料に用いた場合、加熱成型中に該副生物からハロゲンガスが発生し、配線が腐食する、致命的ともいえる問題が生じうる。
【0008】
本発明は、上述した状況を鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、従来報告例がほとんどなかったメタクリル酸ハライドを用いた系での、高純度のメタクリル変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-99824号公報
【特許文献2】特表2004-502849号公報
【特許文献3】特表2010-538114号公報
【特許文献4】特開2011-215413号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとの反応混合物に特定の処理を施すことで、メタクリル酸ハライドダイマー由来の不純物含量を低下できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
前記工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B)と、
前記工程(B)で加熱処理した反応物混合溶液を蒸留する工程(C)と、を含むことを特徴とするメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[2]
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、アミンの存在下、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B')と、
前記工程(B')で加熱処理した反応物混合溶液をろ過する工程(D)と、を含むことを特徴とするメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[3]
前記工程(A)をアミンの存在下で行う、[1]又は[2]に記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[4]
前記工程(A)の反応について、残存するメタクリル酸ハライドをアルコールで失活することにより反応を停止する、[1]~[3]のいずれかに記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[5]
前記メタクリル酸ハライドがメタクリル酸クロリドである、[1]~[4]のいずれかに記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[6]
前記工程(A)において、前記溶媒が芳香族炭化水素を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メタクリル酸ハライドを用いた系での、高純度のメタクリル変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
<メタクリル変性ポリフェニレンエーテル>
本実施形態の製造方法により製造されるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、下記式(1)の構造を有する。
【化2】
式(1)中、aは1~6の整数を示す。aが複数となる場合は、a個の(-Yn-A)は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(1)中、Yは各々独立に下記式(2)に示す置換基を持つフェノールユニットであり、nは各々のYの繰り返し単位を表し、0~50の整数であり、a個あるnのうち少なくとも1個のnは1以上の整数である。
【化3】
式(2)中、R1、R2、R3,R4は各々独立に、水素原子;置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基;置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基;ハロゲン原子のいずれかを示す。R1、R2は、好ましくは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、より好ましくは水素原子;メチル基;エチル基;n-プロピル基であり、さらに好ましくは水素原子;メチル基である。R3,R4は、好ましくは置換されていてもよい炭素数1~6の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基;エチル基;n-プロピル基;ビニル基;アリール基;エチニル基;プロパルギル基であり、さらに好ましくはメチル基;エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。上記置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
式(1)中、Aは水素原子または下記式(3)を示し、aが1の場合は下記式(3)を示し、aが2~6の場合は、a個あるAのうち少なくとも1個以上は下記式(3)を示す。
【化4】
式(1)中、Zはaが1の場合、水素原子を示し、aが2~6の場合、下記式(4)を示す。
【化5】
式(4)中、aは式(1)と同様の整数を示す。Xはa価の部分構造を互いに連結する連結基であり、特に制限されないが、例えば、鎖式炭化水素;環式炭化水素等の炭化水素基;窒素、リン、ケイ素及び酸素から選ばれる、一つ又は複数の原子を含有する炭化水素基;窒素、リン、ケイ素等の原子;若しくはこれらを組み合わせた基;等が挙げられる。
【0014】
上記Xの具体例としては、単結合又はエステル結合等を介して、R5が結合しているベンゼン環に結合するa価のアルキル骨格、単結合又はエステル結合等を介して、R5が結合しているベンゼン環に結合するa価のアリール骨格、単結合又はエステル結合等を介して、R5が結合しているベンゼン環に結合するa価の複素環骨格、等が挙げられる。
ここで、アルキル骨格としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~6の少なくともa個に分岐した鎖式炭化水素(例えば、鎖式飽和炭化水素)の分岐末端が部分構造のベンゼン環に直接結合する骨格(a個の分岐末端にベンゼン環が結合していればよく、ベンゼン環が結合しない分岐末端があってもよい。)、等が挙げられる。
また、アリール骨格としては、特に制限されないが、例えば、ベンゼン環、メシチレン基、又は2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-フェニレン基が、単結合又はアルキル鎖を介して、R5が結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。
さらに、複素環骨格としては、特に制限されないが、例えば、トリアジン環が単結合又はアルキル鎖を介して、R5が結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。
【0015】
式(4)中、上記R5は各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、ハロゲン原子を示し、kは各々独立に1~4の整数を示す。メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~8の直鎖状アルキル基、下記式(5)の部分構造を有する基、等が挙げられる。R5のうち少なくとも1つは下記式(5)の部分構造であってもかまわない。
【化6】
上記式(5)中、R11は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であり、R12は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に0又は1であり、R13は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基のいずれかを表す。前記置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0016】
上記式(5)は、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-2-プロピル基や、これらの末端にフェニル基を有する構造等が挙げられ、より好ましくは、tert-ブチル基である。
【0017】
上記式(4)のa価の部分構造は、式(4)の-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位とし、2位又は6位の一方の炭素原子に式(5)の部分構造を有するR5が結合し、2位又は6位の他方の炭素原子に水素原子、メチル基又はエチル基が結合していることが好ましい。また、上記式(4)のベンゼン環は、1位に酸素原子を介して上記式(1)の(Yn-A)が結合し、4位に中心部Xが結合することが好ましい。
【0018】
上記式(4)のaが2の場合、Xは単結合でもよく、その場合は下記式(6)であらわされる。
【化7】
上記式(6)中、R5は式(4)と同様の基を示す。また、kは式(4)と同様の整数を示す。
【0019】
本実施形態におけるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、例えば、下記式(7)で表される一価のフェノール化合物と下記式(8)で表されるa価のフェノール化合物とを、公知の酸化重合法により共重合することで未変性ポリフェニレンエーテルを得て、次いで、メタクリル酸ハライドにより変性反応を行うことで得られる。
【化8】
上記式(7)中、R1、R2、R3、R4は、上記式(2)と同様の基を示す。
【化9】
上記式(8)中、X、R5、aは、上記式(4)と同様のものを示す。Xに結合するa個の部分構造は、それぞれ同じであってもよいし異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0020】
上記式(7)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば、o-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2-エチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ビス-(4-フルオロフェニル)フェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、2-メチル-5-エチルフェノール、2-エチル-5-メチルフェノール、2-アリル-5-メチルフェノール、2,5-ジアリルフェノール、2,3-ジエチル-6-n―プロピルフェノール、2-メチル-5-クロルフェノール、2-メチル-5-ブロモフェノール、2-メチル-5-イソプロピルフェノール、2-メチル-5-n-プロピルフェノール、2-エチル-5-ブロモフェノール、2-メチル-5-n-ブチルフェノール、2,5-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-5-クロルフェノール、2-メチル-5-フェニルフェノール、2,5-ジフェニルフェノール、2,5-ビス-(4-フルオロフェニル)フェノール、2-メチル-5-トリルフェノール、2,5-ジトリルフェノール、2,6-ジメチル-3-アリルフェノール、2,3,6-トリアリルフェノール、2,3,6-トリブチルフェノール、2,6-ジ-n-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチル-3-n-ブチルフェノール、2,6-ジメチル-3-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0021】
上記一価のフェノール化合物の中でも、特に、安価であり入手が容易であるため、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノールが好ましく、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノールがより好ましい。
【0022】
なお、上記フェノール化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記一価のフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジエチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジフェニルフェノールとを組み合わせて用いる方法、2,3,6-トリメチルフェノールと2,5-ジメチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。このとき、組み合わせるフェノール化合物の混合比は任意に選択できる。
【0024】
また、使用するフェノール化合物には、製造の際の副産物として含まれ得る、少量のm-クレゾール、p-クレゾール、2,4-ジメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
【0025】
上記式(8)で表されるようなa価のフェノール化合物は、対応する一価のフェノール化合物と、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等)、又はジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応や、対応する一価のフェノール化合物同士の反応等により、工業的に有利に製造できる。
【0026】
上記式(8)で表されるフェノール化合物の例を以下に列挙する。
(1,1‘-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3,3‘-ジメチル(1,1‘-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3,3‘,5,5’-テトラメチル(1,1‘-ビフェニル)-4,4’-ジオール、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,3,3’,5,5’-ペンタメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,3’,5,5’-テトラメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,2’,5,5’-テトラメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,2’,3,5,5’-ペンタメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、5,5’-ジ―t-ブチル―2,2’-ジメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、3,3’-ジ―t-ブチル―5,5’-ジメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ジフェノール、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―1,1’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(ブタン―1,1’-ジイル)ビス(2-(t-ブチル)-5-メチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-エトキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルエチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(3,5,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]-ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、
【0027】
2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、3,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,5/3,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,3,5/3,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、6,6’-メチレンビス[4-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール]、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-シクロヘキシルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]フェノール]、4,4’,4’’,4’’’-(1,2-エタンジイリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
上記式(8)中のフェノール化合物は、価数aの値が大きくなると重合時の分子量変化が大きくなる可能性があるため、好ましくは2~6個、より好ましくは2~4個である。
【0029】
a価のフェノール化合物の中でも、特に好ましいものは、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ジフェノール、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―2,2’-ジイル)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン―1,1’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(ブタン―1,1’-ジイル)ビス(2-(t-ブチル)-5-メチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンである。
【0030】
本実施形態におけるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、例えば、上記式(7)に示す1価のフェノール化合物の重合体である単官能ポリフェニレンエーテルと、上記式(8)に示すa価のフェノール化合物とを、再分配反応することで未変性ポリフェニレンエーテルを得て、次いでメタクリル酸ハライドと変性反応を行うことで得られる。再分配反応は、当該技術において公知であり、例えばCooperらの米国特許第3496236号明細書、及びLiskaらの米国特許第5880221号明細書に記載されている。
【0031】
本発明のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、数平均分子量(Mn)が、500~10000g/molであり、好ましくは1000~8000g/molであり、より好ましくは2000~6000g/molである。数平均分子量(Mn)が上記範囲の上限以下であれば、基板材料への適用工程において良好な溶剤溶解性を示し加工性に優れたワニスを調製しやすくなる傾向となり好ましい。また上記範囲の下限以上であれば、誘電特性に優れた硬化物が得られる傾向となり好ましい。
【0032】
数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
本実施形態のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(以下、「Mw」と記載)/Mnで表される分子量分布は、好ましくは1.1~5.0であり、より好ましくは1.2~4.0であり、さらに好ましくは1.3~3.0である。なお、上記において、Mn及びMwは、GPCを用いたポリスチレン換算分子量を意味する。
【0034】
本実施形態のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの変性率は特に限定されないが、高変性率であることが好ましい。高変性率であると、基板材料への適用工程において、硬化させる際に架橋密度を高くすることができ、誘電特性に優れた硬化物が得られる傾向にある。本実施形態のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの変性率は変性前のポリフェニレンエーテルと変性後のポリフェニレンエーテルの水酸基の量変化から算出することができる。好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下である。
【0035】
<メタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法>
このようなメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、以下に示すような方法により合成することができる。
【0036】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B)と、
工程(B)で加熱処理した反応物混合溶液を蒸留する工程(C)と、を含むことを特徴とする。
【0037】
本実施形態では、ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとの反応混合物に特定の処理、具体的には分解生成物を蒸留操作により除去することで、メタクリル酸ハライドダイマー由来の副生物に起因する残存ハロゲンを低減することができる。得られるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、メタクリル酸ハライドダイマー由来の不純物含量が低く、基板材料に好適に用いることができる。
【0038】
工程(A)
工程(A)では、未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドを溶媒中で反応させる。
【0039】
工程(A)で用いるメタクリル酸ハライドは、メタクリル酸フロリド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド、メタクリル酸ヨージドが挙げられるが、入手の容易さと反応性の観点からメタクリル酸クロリドが好ましい。
【0040】
工程(A)で用いる溶媒は、原料である未変性ポリフェニレンエーテルの良溶媒である、芳香族炭化水素系の有機溶媒を用いるのが好ましい。後述する工程(B)にて、加圧することなく100℃以上の温度に加熱でき、更に後述する工程(C)にて蒸留精製しやすい観点から、トルエン又はキシレンがより好ましい。
【0041】
工程(A)で用いるメタクリル酸ハライドの量は、基板材料への適用時に必要となる耐熱性や低誘電性の観点から、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基が十分にメタクリル酸ハライドと反応して変性されることが好ましいため、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基の量に対して1.05倍モル以上であることが好ましい。また、精製の容易さや残存ハロゲンの残りやすさの観点から、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基の量に対して4倍モル以下であることが好ましい。
【0042】
工程(A)で、未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを反応させると、ハロゲン化水素が発生するため、酸をトラップする目的でアミンを共存させることが好ましい。副反応を防止する観点から、共存させるアミンは3級アミンが好ましい。
【0043】
共存させるアミン類の具体例としては、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジ―n-プロピルアミン、トリ―n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジ―n-ブチルアミン、ジ―n-ブチルメチルアミン、ジ―n-ブチルエチルアミン、ジ―n-プロピルメチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジ―n-プロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ―n-ブチルアミン、トリ―t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジ―t-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられ、好ましくはトリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリ―n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジ―n-ブチルメチルアミン、ジ―n-ブチルエチルアミン、ジ―n-プロピルメチルアミン、ジ―n-プロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ―n-ブチルアミン、トリ―t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が、より好ましくはトリエチルアミン、トリ―n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ―n-ブチルアミン、トリ―t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0044】
工程(A)にて共存させるアミンの量については、メタクリル酸ハライドから生じる酸を十分にトラップする観点から、メタクリル酸ハライドの1倍モル以上であることが好ましく、精製負担の観点から、6倍モル以下であることが好ましい。
【0045】
工程(A)で、未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとの反応性を向上させる目的で、公知の触媒を用いても良い。具体的には、4-ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。4-ジメチルアミノピリジンの量については、十分な効果を得られる観点から、メタクリル酸ハライドの1/150倍モル以上が好ましく、精製負担の観点から、1/20倍モル以下が好ましい。
【0046】
工程(A)の反応温度は特に制限はなく、室温から還流条件の範囲であればいずれの条件でも構わない、また、複数の温度条件を組み合わせた条件でも構わない。
【0047】
工程(B)
工程(B)では、工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理する。
【0048】
工程(A)の反応を停止する方法としては、例えば、残存するメタクリル酸ハライドを留去して除去する方法や、メタノールやエタノールなどのアルコール類と反応させ、エステル化して失活させる方法が挙げられる。確実に反応を停止できる観点から、メタノールやエタノールなどのアルコール類と反応させ、エステル化して失活させる方法が好ましい。
【0049】
得られた反応物混合溶液について、100℃以上の温度で加熱処理をする。
本操作により、下記式(b)で示すように、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基とメタクリル酸ハライドダイマーとの反応副生物が分解し、後述する工程(C)にてメタクリル酸ハライドとして除去することが可能となる。
【化10】
式(b)中、Xはハロゲン原子を示す。また。PPEはポリフェニレンエーテルを示す。
【0050】
工程(B)での加熱温度は100℃以上であれば効果が得られ、好ましくは110℃以上である。また、ポリマーの品質劣化の懸念から200℃以下が好ましい。
【0051】
工程(B)での加熱時間については、十分な効果を得られやすい観点から、好ましくは2時間以上、より好ましくは6時間以上、更に好ましくは20時間以上である。また、ポリマーの品質保持の観点から50時間以内が好ましい。
【0052】
工程(B)の加熱処理は、上記範囲であれば複数の条件を組み合わせても良く、還流条件下で実施しても、加熱温度を上げるために加圧条件下で実施しても構わない。また、後述する工程(C)を行った後、再度行っても構わないし、工程(C)と同時に実施しても構わない。
【0053】
工程(C)
工程(C)では、工程(B)で加熱処理した反応物混合溶液を蒸留する。
蒸留操作により、上記式(b)に示した、工程(B)の加熱処理により分解生成されたメタクリル酸ハライドを、系外に除去することができる。
【0054】
蒸留する条件については、分解生成されたメタクリル酸ハライドを留去できる条件であれば特に限定されないが、上記式(b)の反応を促進させるために、100℃以上の条件で実施するのが好ましい。また、メタクリル酸ハライドを十分除去する目的で、蒸留前や蒸留中に溶媒を追加しても構わない。また、工程(B)の加熱処理と同時に蒸留を実施しても構わない。
【0055】
(第2の実施形態)
また、第2の実施形態のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、
数平均分子量が500以上10000以下のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法であって、
未変性ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとを溶媒中で反応させる工程(A)と、
工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、アミンの存在下、100℃以上の温度で加熱処理をする工程(B')と、
工程(B')で加熱処理した反応物混合溶液をろ過する工程(D)と、を含むことを特徴とする。
【0056】
本実施形態では、ポリフェニレンエーテルとメタクリル酸ハライドとの反応混合物に特定の処理、具体的には分解生成物をアミン塩の形で除去することで、メタクリル酸ハライドダイマー由来の副生物に起因する残存ハロゲンを低減することができる。得られるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、メタクリル酸ハライドダイマー由来の不純物含量が低く、基板材料に好適に用いることができる。
【0057】
工程(A)については、上述した第1の実施形態における工程(A)と同様にして行うことができる。
【0058】
工程(B')
工程(B')では、工程(A)の反応を停止することで得られる反応物混合溶液について、アミンの存在下、100℃以上の温度で加熱処理をする。
工程(B')においてアミンの存在下で反応物混合溶液を加熱処理することで、分解生成されたメタクリル酸ハライドが、ポリフェニレンエーテルの残存水酸基や、系内の水分と反応することで生ずるハロゲン化水素をトラップすることができる。アミン類の具体例としては、前述の工程(A)で共存させてもよいものと同様であり、同じものが好ましい。
【0059】
工程(B')において反応物混合溶液中に存在させるアミンの量としては、分解生成されるメタクリル酸ハライドを十分トラップする観点から、100ppm以上が好ましく、加水分解による変性率低下の懸念から、10000ppm以下であることが好ましい。
【0060】
工程(D)
工程(D)では、工程(B')で加熱処理した反応物混合溶液をろ過する。
【0061】
工程(B')でハロゲン化水素をトラップすることで生じるアミン塩について、工程(D)にてろ過除去することができる。ろ過条件は、アミン塩を除去できる限りは特に限定されず、減圧しても加圧しても構わず、ろ過温度はアミン塩が析出される温度であれば特に限定されない。ろ過は、ヌッチェ式ろ過器、遠心ろ過器、ラインフィルターなど、汎用設備を用いて実施できる。
【実施例0062】
以下、製造例及び実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0063】
(ポリフェニレンエーテルの分析)
1.数平均分子量測定
試料をクロロホルムに溶解して(試料濃度:0.1wt%)高速液体クロマトグラフにて測定を行った。標準ポリスチレンを使用した検量線により分子量及び分子量分布を計算した。測定装置、測定条件は以下の通りである。
【0064】
測定装置は株式会社島津製作所の高速液体クロマトグラフ(デガッサ:DGU-20A3R、送液ユニット:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20AHT、UV-VIS検出器:SPD-20A、カラムオーブン:CTO-20A)を使用した。
【0065】
カラムは東ソー製のカラム(ガードカラム:TSKgel guardcolumn HHR-H(内径:6mm、長さ:4cm)、カラム:TSKgel G5000HHR、TSKgel G3000HHR、TSKgel G1000HHR(カラムはいずれも粒子径:5μm、内径:7.8mm、長さ:30cm))の4本を直列接続して使用した。
【0066】
測定は試料溶液を60μL注入して、溶媒クロロホルム、流量1.0mL/min、カラムオーブン温度40℃にて測定した。検出はUV254nm(D2ランプ、温度35℃)とした。標準ポリスチレンは分子量(Mp)が364,000、217,100、91,450、56,600、22,290、9,820、4,910、3,050、1,250、580、100のものを用いた。
【0067】
2.変性率
末端変性ポリフェニレンエーテルの変性率は、特表2004-502849に記載の方法に従い、二硫化炭素中IR測定による変性反応前のポリフェニレンエーテルと変性反応後の末端変性ポリフェニレンエーテルの水酸基の量変化から算出した。
【0068】
3.残留塩素の測定
測定装置は株式会社リガクのZSX PrimusIIを使用した。
試料約1gでタブレットを成型し定性分析を実施した。タブレット成型では、20mmφ塩ビリングを使用し、試料径と試料重量を計測した。分析終了後のデータ解析はSQX計算で行い、試料径と試料重量から算出した厚み補正値、バランス成分としてポリフェニレンエーテル(C:H:O=6:9:1)を用いて試料中の塩素量を算出した。
【0069】
4.残存アミン量
溶液中のアミン量は、内部標準法によるGC測定にて実施した。
【0070】
(製造例1)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた、1.5Lのジャケット付き反応器に、予め調整した0.1026gの酸化第一銅及び0.7712gの47%臭化水素の混合物と、0.2471gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、3.6407gのジメチル-n-ブチルアミン、1.1962gのジ-n-ブチルアミン、894.04gのトルエン、73.72gの2,6-ジメチルフェノール、26.28gの1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン(ADEKA製:AO-30)を入れた。次いで激しく攪拌しながら反応器へ1.05L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。
【0071】
空気を導入し始めてから160分後、空気の通気をやめ、この重合混合物に1.1021gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を100gの水溶液として添加し、70℃に温めた。70℃にて2時間保温し、触媒抽出と副生したジフェノキノン除去処理を行った後、混合液をシャープレス社製遠心分離機に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水性相とに分離した。
【0072】
得られた未変性ポリフェニレンエーテル溶液をジャケット付き濃縮槽に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液中の固形分が55質量%になるまでトルエンを留去させて濃縮した。次いで、230℃に設定したオイルバスとロータリーエバポレーターを用いて更にトルエンを留去し、固形分を乾固させて未変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0073】
(製造例2)
500mlの3つ口フラスコに、3方コックをつけた、ジムロート、等圧滴下ロートを設置した。フラスコ内を窒素に置換した後、原料ポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成(株)製)100g、トルエン150g、メチルエチルケトン50gを入れ、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン7.2gを加えた。フラスコに温度計を設置し、マグネチックスターラーにて撹拌しながら、オイルバスにてフラスコを90℃に加熱し、原料ポリフェニレンエーテルポリマーを溶解させた。
【0074】
開始剤として、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルペルオキシド、m-トルイルペルオキシドの混合物の40%メタキシレン溶液(日油製:ナイパーBMT)の37.5gをトルエン87.5gに希釈し、等圧滴下ロートに仕込んだ。開始剤溶液を、フラスコ内へ滴下開始した時点を反応開始とした。開始剤を2時間かけて滴下し、滴下後、80℃で4時間撹拌を継続した。
【0075】
反応後、ポリマー溶液をメタノール中に滴下し、再沈させた後、溶液と濾別し、ポリマーを回収した。その後、真空下100℃で3時間ポリマーを乾燥させた。1H-NMRにより、低分子フェノールがポリマー中に取り込まれ、水酸基のピークが消失していることを確認した。
【0076】
(製造例3)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた、1.5Lのジャケット付き反応器に、予め調整した0.1590gの酸化第一銅及び2.2854gの47%臭化水素の混合物と、0.4891gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、7.1809gのジメチル-n-ブチルアミン、3.3629gのジ-n-ブチルアミン、666.52gのトルエン、265.6gの2,6-ジメチルフェノール、54.40gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを入れた。次いで激しく攪拌しながら反応器へ2.19L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。
【0077】
空気を導入し始めてから160分後、空気の通気をやめ、この重合混合物に1.0053gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を100gの水溶液として添加し、70℃に温めた。70℃にて2時間保温し、触媒抽出と副生したジフェノキノン除去処理を行った後、混合液をシャープレス社製遠心分離機に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水性相とに分離した。
【0078】
得られた未変性ポリフェニレンエーテル溶液をジャケット付き濃縮槽に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液中の固形分が55質量%になるまでトルエンを留去させて濃縮した。次いで、230℃に設定したオイルバスとロータリーエバポレーターを用いて更にトルエンを留去し、固形分を乾固させて未変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0079】
(実施例1)
1Lのガラスフラスコに撹拌翼、熱電対、還流冷却器を設置し、製造例1で得られた未変性ポリフェニレンエーテル40gと4-ジメチルアミノピリジン0.01gとを投入した。フラスコ内部を窒素置換した後、脱水トルエン(和光純薬製)を120g投入して撹拌、溶解させ、次いでトリエチルアミン20.3gを加えた。その後、常温で1か月以上保管していたメタクリル酸クロリド8.4gを系内に滴下した。滴下終了後、オイルバスでフラスコを加熱し50℃で撹拌を継続し、3時間経過後に加熱を停止した。常温に戻った後に脱水メタノールを3.4g加えて反応を停止した。次いで、当該反応液を固形分濃度が20重量%となるまで50℃で減圧濃縮し、副生したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した。このときのトリエチルアミン濃度を測定したところ、1000ppmであった。
【0080】
濾別後の反応液を1Lのガラスフラスコに投入し、オイルバスで加熱して蒸留操作を実施した。内温110℃に到達してから45分間常圧にて蒸留を行った後、一旦加熱を止めて蒸留を停止した。このときの反応液の固形分濃度は40重量%であった。蒸留後の反応液中に白い不溶物が確認されたため、一部を採取してH-NMRで分析したところ、トリエチルアミン塩酸塩と4-ジメチルアミノピリジン塩酸塩のピークと一致した。また、留去トルエンを回収してGC分析を実施したところ、トリエチルアミンとメタクリル酸クロリドのピークを検出した。
【0081】
反応液の固形分濃度が25重量%となるようにトルエンを投入し、再度蒸留操作(2回目)を実施した。内温110℃に到達してから40分間常圧にて蒸留を行った後、再度加熱を止めて停止した。このときの反応液濃度は39重量%であった。留去トルエンを再度回収してGC分析を実施したところ、トリエチルアミンピークは消失していた一方で、メタクリル酸クロリドのピークは1度目の溶媒留去時よりも強く検出された。
【0082】
再び固形分濃度が25重量%となるようにトルエンを投入し、同様に常圧にて蒸留(3回目)を実施した。内温110℃に到達してから30分間行った後、再度加熱を止めて停止した。このときの反応液濃度は42重量%であった。留去トルエンを再度回収してGC分析を実施したところ、2度目と同様にトリエチルアミンピークは消失していた一方で、メタクリル酸クロリドのピークは2度目の溶媒留去時よりも更に強く検出された。
【0083】
3度目の蒸留後、反応液の固形分濃度が33%となるようにトルエンを投入し、白い不溶分を濾別した。次いで、溶液の5倍重量のメタノールに反応液を撹拌しながら滴下した。得られた沈殿物を濾取し、110℃で1時間真空乾燥して、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0084】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ98%であり、数平均分子量は2600であった。残留塩素量を測定したところ、5000ppmであった。
【0085】
(比較例1)
蒸留操作を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0086】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ98%であり、数平均分子量は2700であった。残留塩素量を測定したところ、6000ppmであった。
【0087】
(実施例2)
1Lのガラスフラスコに撹拌翼、熱電対、還流冷却器を設置し、製造例1で得られた未変性ポリフェニレンエーテル40gと4-ジメチルアミノピリジン0.01gとを投入した。フラスコ内部を窒素置換した後、脱水トルエン(和光純薬製)を120g投入して撹拌、溶解させ、次いでトリエチルアミン20.3gを加えた。その後、-10℃以下で冷凍保管していたメタクリル酸クロリド8.4gを系内に滴下した。滴下終了後、オイルバスでフラスコを加熱し50℃で撹拌を継続し、3時間経過後に加熱を停止した。常温に戻った後に脱水メタノールを3.4g加えて反応を停止した。次いで、当該反応液を固形分濃度が20重量%となるまで50℃で減圧濃縮し、副生したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した。このときのトリエチルアミン濃度を測定したところ、1000ppmであった。
【0088】
濾別後の反応液を1Lのガラスフラスコに投入し、撹拌しながらオイルバスで110℃まで加熱して還流状態とした。還流状態のまま20時間経過後、コックを開いて固形分濃度が33重量%となるまで蒸留を行った。蒸留後の反応液中に白い不溶物が確認されたため濾別した。次いで、反応液の5倍重量のメタノールに、反応液を撹拌しながら滴下した。得られた沈殿物を濾取し、110℃で1時間真空乾燥して、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0089】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ98%であり、数平均分子量は2500であった。残留塩素量を測定したところ、200ppmであった。
【0090】
(比較例2)
トリエチルアミン塩酸塩濾別後の還流操作を行わなかった以外は、実施例2と同様の操作を行い、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0091】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ、98%であり、数平均分子量は2600であった。残留塩素量を測定したところ、500ppmであった。
【0092】
(実施例3)
1Lのガラスフラスコに撹拌翼、熱電対、還流冷却器を設置し、製造例2で得られた未変性ポリフェニレンエーテル40gを投入した。フラスコ内部を窒素置換した後、脱水トルエン(和光純薬製)を120g投入して撹拌、溶解させた。その後、常温で1か月以上保管していたメタクリル酸クロリド8.4gを系内に滴下した。滴下終了後、オイルバスでフラスコを加熱し50℃で撹拌を継続し、3時間経過後に加熱を停止した。常温に戻った後に脱水メタノールを3.4g加えて反応を停止した。次いで、当該反応液を固形分濃度が20重量%となるまで50℃で減圧濃縮した。
【0093】
濾別後の反応液を1Lガラスフラスコに投入し、オイルバスで加熱して、実施例1と同様に、蒸留操作を3回実施した。留去液をGC分析したところ、メタクリル酸クロリドのピークを検出した。一方で、蒸留操作後の反応液中に白い不溶物は確認されなかった。反応液の5倍重量のメタノールに、反応液を撹拌しながら滴下した。得られた沈殿物を濾取し、110℃で1時間真空乾燥して、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0094】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ15%であり、数平均分子量は2400であった。残留塩素量を測定したところ、5000ppmであった。
【0095】
(実施例4)
製造例3で得られた未変性ポリフェニレンエーテルを使用した以外は、実施例3と同様の操作により、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0096】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ15%であり、数平均分子量は2200であった。残留塩素量を測定したところ、5000ppmであった。
【0097】
(実施例5)
1Lのガラスフラスコに撹拌翼、熱電対、還流冷却器を設置し、製造例1で得られた未変性ポリフェニレンエーテル40gを投入した。フラスコ内部を窒素置換した後、脱水トルエン(和光純薬製)を120g投入して撹拌、溶解させ、次いでトリエチルアミン20.3gを加えた。その後、常温で1か月以上保管していたメタクリル酸クロリド8.4gを系内に滴下した。滴下終了後、オイルバスでフラスコを加熱し50℃で撹拌を継続し、3時間経過後に加熱を停止した。常温に戻った後に脱水メタノールを3.4g加えて反応を停止した。次いで、当該反応液を固形分濃度が20重量%となるまで50℃で減圧濃縮し、副生したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した。このときのトリエチルアミン濃度を測定したところ、1000ppmであった。
【0098】
濾別後の反応液を1Lのガラスフラスコに投入し、撹拌しながらオイルバスで加熱して100℃で保持した。100℃のまま6時間経過後、固形分濃度が33重量%となるまで蒸留を行った。蒸留後の反応液中に白い不溶物が確認されたため濾別した。次いで、反応液の5倍重量のメタノールに、反応液を撹拌しながら滴下した。得られた沈殿物を濾取し、110℃で1時間真空乾燥して、メタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0099】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ80%であり、数平均分子量は2400であった。残留塩素量を測定したところ、5500ppmであった。
【0100】
(比較例3)
トリエチルアミン塩酸塩濾別後の反応液の加熱温度を80℃にした以外は実施例5と同様の操作でメタクリル変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0101】
得られたメタクリル変性ポリフェニレンエーテルについて変性率を測定したところ80%であり、数平均分子量は2400であった。残留塩素量を測定したところ、6000ppmであった。
【0102】
以上の結果から、実施例では、100℃以上での加熱処理により分解生成されたメタクリル酸クロリドを、蒸留操作またはアミン塩の形で除去することで、同操作を行わない比較例に対して、得られるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの残存塩素量を低減できることが分かる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のメタクリル変性ポリフェニレンエーテルの製造方法では、メタクリル酸ハライドダイマー由来の副生物に起因する残存ハロゲンを低減することができる。得られるメタクリル変性ポリフェニレンエーテルは、基板材料に好適に用いることができる。