(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182509
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221201BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221201BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221201BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090106
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 賢昌
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍太
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼崎 勝彦
(57)【要約】
【課題】オン抵抗Ronやしきい値電圧Vthのばらつき増大を抑制することを可能とする。
【解決手段】第2ディープ層5の幅を少なくともゲートトレンチ10の間隔以上とする。このように、第2ディープ層5の幅の寸法を設定することで、第2ディープ層5が隣り合うゲートトレンチ10の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に配置された状態になる。このため、第2ディープ層5を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないようにでき、素子動作が行われる面積が変わることによるオン抵抗Ronの変動やしきい値電圧Vthのばらつきの増大を抑制することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造の半導体素子を備えている半導体装置であって、
第1または第2導電型の半導体層(1)と、
前記半導体層の上に形成され、前記半導体層よりも低不純物濃度とされた第1導電型層(2)と、
前記第1導電型層の上に形成され、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型の第1ディープ層(4)、および、前記一方向を長手方向として前記第1ディープ層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型のJFET部(3)を含む飽和電流抑制層(3、4)と、
前記飽和電流抑制層の上に形成された第1導電型の電流分散層(6)と、
前記電流分散層の上に形成された第2導電型のベース領域(7)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のソース領域(8)と、
前記ベース領域の上において前記ソース領域と異なる位置に形成され、前記ベース領域よりも第2導電型不純物濃度が高くされたコンタクト領域(9)と、
前記ソース領域および前記ベース領域を貫通するゲートトレンチ(10)内に、該ゲートトレンチの内壁面を覆うゲート絶縁膜(11)と該ゲート絶縁膜の上に配置されたゲート電極(12)とを備えて構成され、前記一方向と交差する方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられたトレンチゲート構造と、
前記ゲート電極を覆うと共に前記ソース領域および前記コンタクト領域を露出させるコンタクトホールが形成された層間絶縁膜(13)と、
前記コンタクトホールを通じて、前記ソース領域に電気的に接続されたソース電極(14)と、
前記半導体層の裏面側に形成されたドレイン電極(15)と、を含み、
前記第1ディープ層に接続され、前記トレンチゲート構造の長手方向と同方向を長手方向とし、前記トレンチゲート構造の複数本に対して1つもしくは複数備えられ、隣り合う前記トレンチゲート構造の間隔以上の幅とされることで、隣り合う前記トレンチゲート構造の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に配置された第2導電型の第2ディープ層(5)が備えられている、半導体装置。
【請求項2】
前記第2ディープ層の幅(Wp)は、隣り合う前記トレンチゲート構造の間の間隔(Pt)以上、かつ、前記トレンチゲート構造の間の間隔に対して前記ゲートトレンチの幅(Wt)の2つ分を加えた寸法(Pt+2Wt)未満となっている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記コンタクト領域は、
前記トレンチゲート構造の長手方向に交差するライン状で形成され、前記ソース電極に接触することで前記ベース領域をソース電位に固定するコンタクト部(9b)と、
前記トレンチゲート構造の長手方向を長手方向とするライン状で形成され、前記第2ディープ層の上に配置されると共に前記ソース電極に接触することで前記第2ディープ層を介して前記第1ディープ層をソース電位に固定する連結層(9a)と、を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ディープ層は、前記トレンチゲート構造の複数本につき1つの間隔で等間隔に配置されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2ディープ層は、前記半導体素子が形成されたセル領域の中央に配置されると共に、該中央に配置された部分に対して同心円状に配置されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
トレンチゲート構造の半導体素子を備えている半導体装置の製造方法であって、
第1または第2導電型の半導体層(1)、および、該半導体層の上に配置され、該半導体層よりも低不純物濃度とされた第1導電型層(2)を用意することと、
前記第1導電型層の上に、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型の第1ディープ層(4)、および、前記一方向を長手方向として前記第1ディープ層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型のJFET部(3)を有する飽和電流抑制層(3、4)を形成することと、
前記飽和電流抑制層の上に第1導電型の電流分散層(6)を形成することと、
前記電流分散層の上に第2導電型のベース領域(7)を形成することと、
前記ベース領域の上に、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のソース領域(8)を形成することと、
前記ベース領域の上において前記ソース領域と異なる位置に、前記ベース領域よりも第2導電型不純物濃度が高くされたコンタクト領域(9)を形成することと、
前記ソース領域および前記ベース領域を貫通するゲートトレンチ(10)を形成したのち、前記ゲートトレンチ内に該ゲートトレンチの内壁面を覆うゲート絶縁膜(11)を形成すると共に、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極(12)とを形成することで、前記一方向と交差する方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられたトレンチゲート構造を形成することと、
前記ゲート電極を覆うと共に前記ソース領域および前記コンタクト領域を露出させるコンタクトホールを有する層間絶縁膜(13)を形成することと、
前記コンタクトホールを通じて、前記ソース領域に電気的に接続されるソース電極(14)を形成することと、
前記半導体層の裏面側にドレイン電極(15)を形成することと、を含み、
さらに、前記第1ディープ層に接続され、前記トレンチゲート構造の長手方向と同方向を長手方向とし、前記トレンチゲート構造の複数本に対して1つもしくは複数、隣り合う前記トレンチゲート構造の間隔以上の幅で、隣り合う前記トレンチゲート構造の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に、イオン注入することで第2導電型の第2ディープ層(5)を形成すること、を含んでいる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造の半導体素子を備えた半導体装置およびその製造方法に関するものであり、特に半導体材料として炭化珪素(以下、SiCという)が用いられるSiC半導体装置に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、サージ電圧の抑制や素子破壊の抑制などを可能としたトレンチゲート構造の半導体素子を有する半導体装置が提案されている。この半導体装置では、トレンチゲート構造の下方にp型の電界ブロック層を形成することで低飽和電流かつ低オン抵抗を得つつ耐量を得るようにした構造において、ドレイン電圧が高電圧になったときに電界ブロック層が完全空乏化するようにしている。これにより、ドレイン電圧が高電圧になったときにゲート-ドレイン間容量が大きくなることで帰還容量を増加させられ、ドレイン電流の電流変化を小さくすることが可能となる。このため、サージ電圧を低減することが可能となり、サージ電圧に起因する素子破壊を抑制することが可能になる。また、電界ブロック層が完全空乏化することでゲート絶縁膜を高電界から保護することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構造の半導体装置では、電界ブロック層をソースと同電位にする必要があるため、トレンチ側面にチャネル領域を形成するためのベース領域と電界ブロック層との間が接続用のp型半導体によって接続される。
【0005】
しかしながら、トレンチゲート構造を構成する各トレンチの間隔の狭小化に伴い、接続用のp型半導体の形成位置ずれに起因するオン抵抗Ronやしきい値電圧Vthのばらつき増大が課題となる。具体的には、隣り合うトレンチの間に、トレンチから所定距離離れるように接続用のp型半導体が形成されることになるが、イオン注入等によってp型半導体を形成する際に形成位置ずれが発生し得る。その場合に、例えばトレンチの側面に接続用のp型半導体が接してしまうと、その部分だけベース領域よりもp型不純物濃度が濃くなり、MOSFET動作時に反転層、つまりチャネルが形成されなくなる。このため、p型半導体の形成位置ずれが発生しなかった場合と発生した場合とでMOSFET動作が行われる面積が変わり、オン抵抗Ronが変動する。また、形成位置ずれによって、接続用のp型半導体が形成された部分において、実質的にベース領域のp型不純物濃度が濃くなることになるため、しきい値電圧Vthのばらつきを増大させることになる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、オン抵抗Ronやしきい値電圧Vthのばらつき増大を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、トレンチゲート構造の半導体素子を備えている半導体装置であって、第1または第2導電型の半導体層(1)と、半導体層の上に形成され、半導体層よりも低不純物濃度とされた第1導電型層(2)と、第1導電型層の上に形成され、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型の第1ディープ層(4)、および、一方向を長手方向として第1ディープ層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型のJFET部(3)を含む飽和電流抑制層(3、4)と、飽和電流抑制層の上に形成された第1導電型の電流分散層(6)と、電流分散層の上に形成された第2導電型のベース領域(7)と、ベース領域の上に形成され、第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のソース領域(8)と、ベース領域の上においてソース領域と異なる位置に形成され、ベース領域よりも第2導電型不純物濃度が高くされたコンタクト領域(9)と、ソース領域およびベース領域を貫通するゲートトレンチ(10)内に、該ゲートトレンチの内壁面を覆うゲート絶縁膜(11)と該ゲート絶縁膜の上に配置されたゲート電極(12)とを備えて構成され、前記一方向と交差する方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられたトレンチゲート構造と、ゲート電極を覆うと共にソース領域およびコンタクト領域を露出させるコンタクトホールが形成された層間絶縁膜(13)と、コンタクトホールを通じて、ソース領域に電気的に接続されたソース電極(14)と、半導体層の裏面側に形成されたドレイン電極(15)と、を含んでいる。
【0008】
そして、このような構成において、第1ディープ層に接続され、トレンチゲート構造の長手方向と同方向を長手方向とし、トレンチゲート構造の複数本に対して1つもしくは複数備えられ、隣り合うトレンチゲート構造の間隔以上の幅とされることで、隣り合うトレンチゲート構造の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に配置された第2導電型の第2ディープ層(5)を備えている。
【0009】
このように、第2ディープ層を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないように第2ディープ層の幅を設定している。このように第2ディープ層の幅の寸法を設定することで、隣り合うトレンチゲート構造の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に第2ディープ層が配置された状態になる。このため、第2ディープ層を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないようにでき、素子動作が行われる面積が変わることによるオン抵抗Ronの変動やしきい値電圧Vthのばらつきの増大を抑制することができる。
【0010】
請求項7に記載の発明は、トレンチゲート構造の半導体素子を備えている半導体装置の製造方法であって、第1または第2導電型の半導体層(1)、および、該半導体層の上に配置され、該半導体層よりも低不純物濃度とされた第1導電型層(2)を用意することと、第1導電型層の上に、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型の第1ディープ層(4)、および、一方向を長手方向として第1ディープ層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型のJFET部(3)を含む飽和電流抑制層(3、4)を形成することと、飽和電流抑制層の上に第1導電型の電流分散層(6)を形成することと、電流分散層の上に第2導電型のベース領域(7)を形成することと、ベース領域の上に、第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のソース領域(8)を形成することと、ベース領域の上においてソース領域と異なる位置に、ベース領域よりも第2導電型不純物濃度が高くされたコンタクト領域(9)を形成することと、ソース領域およびベース領域を貫通するゲートトレンチ(10)を形成したのち、ゲートトレンチ内に該ゲートトレンチの内壁面を覆うゲート絶縁膜(11)を形成すると共に、ゲート絶縁膜の上にゲート電極(12)とを形成することで、前記一方向と交差する方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられたトレンチゲート構造を形成することと、ゲート電極を覆うと共にソース領域およびコンタクト領域を露出させるコンタクトホールを有する層間絶縁膜(13)を形成することと、コンタクトホールを通じて、ソース領域に電気的に接続されるソース電極(14)を形成することと、半導体層の裏面側にドレイン電極(15)を形成することと、を含んでいる。
【0011】
さらに、第1ディープ層に接続され、トレンチゲート構造の長手方向と同方向を長手方向とし、トレンチゲート構造の複数本に対して1つもしくは複数、隣り合うトレンチゲート構造の間隔以上の幅で、隣り合うトレンチゲート構造の間における該トレンチゲート構造の幅方向の全域に、イオン注入することで第2導電型の第2ディープ層(5)を形成する。
【0012】
このような製造方法により、第2ディープ層を隣り合うゲートトレンチの側壁間の全域に配置された状態にできる。このため、第2ディープ層を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されない半導体装置にでき、素子動作が行われる面積が変わることによるオン抵抗Ronの変動やしきい値電圧Vthのばらつきの増大を抑制することができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の断面構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すSiC半導体装置の一部を示した斜視断面図である。
【
図3】トレンチゲート構造および第2ディープ層のレイアウトを示した上面図である。
【
図4A】比較例として、第2ディープ層の幅が狭い場合の様子を示したSiC半導体装置の斜視断面図である。
【
図4B】
図4Aに示す比較例において、第2ディープ層の形成位置ずれが生じた場合の様子を示したSiC半導体装置の斜視断面図である。
【
図5A】
図2に示すSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5B】
図5Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5C】
図5Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5D】
図5Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5E】
図5Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5F】
図5Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図5G】
図5Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す斜視断面図である。
【
図6】第2実施形態で説明するトレンチゲート構造および第2ディープ層のレイアウトを示した上面図である。
【
図7A】半導体チップ中におけるトレンチゲート構造のレイアウトと局所的に高温になる部位を示した図である。
【
図7B】局所的な高温を避ける第2ディープ層のレイアウトの一例を示した半導体チップの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体材料としてSiCを用いたSiC半導体装置を例に挙げて説明するが、シリコン(Si)などの他の半導体材料で構成される半導体装置としても良い。
【0017】
本実施形態にかかるSiC半導体装置は、半導体素子として、
図1および
図2に示すトレンチゲート構造の反転型の縦型MOSFETが形成されたものである。これらの図に示す縦型MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されており、そのセル領域を囲むように耐圧保持領域が形成されることでSiC半導体装置が構成されているが、ここでは縦型MOSFETのみ図示してある。なお、以下では、
図1および
図2に示すように、互いに直交する一方向をそれぞれX方向、Y方向、Z方向として説明する。具体的には、縦型MOSFETの奥行方向をX方向、X方向に対して交差する縦型MOSFETの幅方向をY方向、縦型MOSFETの厚み方向もしくは深さ方向、つまりXY平面に対する法線方向をZ方向とする。
【0018】
また、
図2は、セル領域の一部を切り出して示した斜視断面図であるが、各部のレイアウトを見やすくするために、SiC半導体装置の構成の一部を省略して示してある。
【0019】
図1および
図2に示されるように、SiC半導体装置には、SiCからなるn
+型基板1が半導体基板として用いられている。n
+型基板1の主表面上に、n
+型基板1より低濃度とされたドリフト層の一部を構成するn
-型層2が形成されている。n
+型基板1は半導体層に相当し、n
-型層2は、第1導電型層に相当する。
【0020】
セル領域では、n-型層2の上に、SiCからなるドリフト層の一部を構成するn型のJFET部3とp型の第1ディープ層4が形成されている。n-型層2は、n+型基板1と反対側においてJFET部3と連結されている。
【0021】
JFET部3と第1ディープ層4は、飽和電流抑制層を構成するものであり、共に、Y方向を長手方向として延設され、X方向において交互に繰り返し並べられて配置されている。つまり、n+型基板1の主表面に対する法線方向から見て、JFET部3の少なくとも一部と第1ディープ層4は、それぞれ複数のライン状、換言すればストライプ状とされ、それぞれが交互に並べられたレイアウトとされている。
【0022】
なお、本実施形態の場合、JFET部3が第1ディープ層4よりも下方まで形成されたものとされている。このため、JFET部3のうちストライプ状とされている部分は第1ディープ層4の下方において連結した状態になっているが、ストライプ状とされている各部はそれぞれ複数の第1ディープ層4の間に配置された状態となっている。
【0023】
第1ディープ層4は、p型不純物層によって構成されている。上記したように、第1ディープ層4は、ストライプ状とされており、ストライプ状とされた第1ディープ層4の各ライン状の部分は一定幅とされ、等間隔に配置されていて、深さ方向においてp型不純物濃度が一定とされている。
【0024】
さらに、JFET部3および第1ディープ層4の上には、SiCからなるドリフト層の一部を構成するn型電流分散層6が形成されている。n型電流分散層6は、縦型MOSFETのチャネルを通じて流れる電流がY方向に拡散できるようにする層であり、例えば、n-型層2よりもn型不純物濃度が高くされている。ただし、n型電流分散層6についてはn-型層2よりも不純物濃度が高くされていることは必須ではなく、例えばn-型層2と同じ不純物濃度とされていても良い。
【0025】
なお、本実施形態では、n-型層2とJFET部3およびn型電流分散層6によってドリフト層が構成されているが、ドリフト層の構成については任意であり、例えば、n-型層2とn+型基板1との間にバッファ層を備えた構造とすることもできる。
【0026】
n型電流分散層6の上にはSiCからなるp型ベース領域7が形成されている。また、p型ベース領域7の上には、SiCからなるn+型ソース領域8が形成されている。p型ベース領域7は、第1ディープ層4よりもp型不純物濃度が低くされている。また、n+型ソース領域8は、n型不純物濃度がn型電流分散層6よりも高濃度とされている。
【0027】
また、n+型ソース領域8の表面からp型ベース領域7に達するように、p型ベース領域7よりもp型不純物濃度が高くされたコンタクト領域に相当するコンタクトp+型層9が形成されている。本実施形態では、コンタクトp+型層9は、X方向を長手方向とするライン状の部分(以下、連結層9aという)と、それに対して交差するY方向を長手方向とするライン状の部分(以下、コンタクト部9bという)とによって構成されている。さらに、連結層9aの下方には、p型ベース領域7およびn型電流分散層6を貫通して第1ディープ層4に繋がる第2ディープ層5が形成されている。第2ディープ層5は、連結層9aと共にX方向を長手方向としてライン状に形成されている。
【0028】
連結層9aおよび第2ディープ層5は、第1ディープ層4をソース電位に固定するために、第1ディープ層4と後述するソース電極14とを連結させる役割を果たす。コンタクト部9bは、p型ベース領域7をソース電位にする役割を果たす。なお、コンタクト部9bが第2ディープ層5に繋がっていれば、コンタクト部9bからp型ベース領域7および第2ディープ層5を介して第1ディープ層4をソース電位に固定できる。この場合には、連結層9aについては必須ではないが、ここでは第2ディープ層5を広範囲にソース電極14と連結させるために連結層9aを備えてある。
【0029】
連結層9aや第2ディープ層5の形成間隔は任意であるが、本実施形態では、後述する複数本のトレンチゲート構造の数本、例えば
図3に示すように5本につき1つの間隔で連結層9aや第2ディープ層5が形成されている。連結層9aの幅については任意であるが、ここでは隣り合うトレンチゲート構造の間隔以下としている。勿論、連結層9aを第2ディープ層5と同様にトレンチゲート構造の間全てを埋めるように配置してもよい。このようにすれば、連結層形成時の位置ずれなどが発生しても安定的に第1ディープ層4をソース電位に固定できる。また、第2ディープ層5の幅については、隣り合うトレンチゲート構造の間隔以上とされ、隣り合うトレンチゲート構造の間におけるトレンチゲート構造の幅方向、つまりY方向の全域が第2ディープ層5となる幅に設定されている。ここでは、n
+型ソース領域8もしくは連結層9aよりも下方の領域が第2ディープ層5となるように、第2ディープ層5の幅が設定されている。なお、この第2ディープ層5の幅の詳細については、後述する。また、コンタクト部9bの形成間隔も任意であるが、広すぎるとp型ベース領域7の中でコンタクト部9bまでの距離が長くなる部分が生じることから、p型ベース領域7の全域を的確にソース電位にできる程度の形成間隔としている。加えて、コンタクト部9bが形成された部分においてチャネル密度を低下させることになるため、それを抑制できるようにコンタクト部9bの形成間隔を設定している。
【0030】
さらに、p型ベース領域7およびn
+型ソース領域8を貫通してn型電流分散層6に達するように、所定幅かつ所定深さで形成されたゲートトレンチ10が形成されている。このゲートトレンチ10の側面と接するように上述したp型ベース領域7やn
+型ソース領域8さらには連結層9aが配置されている。ゲートトレンチ10は、
図2のY方向を幅方向、JFET部3や第1ディープ層4の長手方向と交差する方向、ここではX方向を長手方向、Z方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。そして、
図1、
図2に示したように、ゲートトレンチ10は、複数本がY方向に等間隔に配置されたストライプ状とされており、それぞれの間にp型ベース領域7およびn
+型ソース領域8が配置されている。ただし、第2ディープ層5が形成された領域においては、ゲートトレンチ10の間のp型ベース領域7が第2ディープ層5に代えられている。
【0031】
例えば、後述するトレンチゲート構造の間隔、つまり隣り合うゲートトレンチ10の側面から側面までの距離Ptについては任意であるが、狭小化されており、2μm以下、例えば1μm以下に設定されている。ゲートトレンチ10の幅Wtについても任意であるが、トレンチゲート構造のセルピッチ、つまり隣り合うトレンチゲート構造の中央位置同士の間の距離よりも小さくされており、例えば0.5~0.8μm程度とされる。そして、隣り合うゲートトレンチ10の間隔Ptは、セルピッチからゲートトレンチWtを引いた値になっている。
【0032】
なお、ここではn+型基板1の主表面に対する法線方向から見て、つまり上面視において、ゲートトレンチ10がストライプ状となるようにしているが、ゲートトレンチ10が少なくともストライプ状の部分を有した構造とされていれば良い。例えば、隣り合うライン状のゲートトレンチ10の2本を1組として、その両端同士が半円状に繋がるようにゲートトレンチ10をレイアウトしても良い。
【0033】
p型ベース領域7のうちゲートトレンチ10の側面に位置する部分を、縦型MOSFETの作動時にn+型ソース領域8とn型電流分散層6との間を繋ぐチャネル領域として、チャネル領域を含むゲートトレンチ10の内壁面がゲート絶縁膜11で覆われている。ゲート絶縁膜11の表面にはドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極12が形成されており、これらゲート絶縁膜11およびゲート電極12がゲートトレンチ10内に配置されることでトレンチゲート構造が構成されている。さらに、ゲート電極12を覆うように層間絶縁膜13が形成されている。層間絶縁膜13は、ゲートトレンチ10の外側に張り出していても良いが、ここではゲートトレンチ10内に配置され、ゲートトレンチ10がゲート絶縁膜11とゲート電極12および層間絶縁膜13によって埋め尽くされている。
【0034】
また、
図1に示すように、n
+型ソース領域8の表面やゲート電極12の表面には、層間絶縁膜13を介してソース電極14などが形成されている。ソース電極14は、複数の金属、例えばNi/Al等で構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn
+型ソース領域8やn型ドープの場合のゲート電極12と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはコンタクトp
+型層9と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ソース電極14は、層間絶縁膜13上に形成されることでSiC部分と電気的に絶縁されているが、層間絶縁膜13に形成されたコンタクトホールを通じて、n
+型ソース領域8およびコンタクトp
+型層9と電気的に接触させられている。
【0035】
一方、n+型基板1の裏面側にはn+型基板1と電気的に接続されたドレイン電極15が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでセル領域が構成されている。
【0036】
このように構成される縦型MOSFETを有するSiC半導体装置は、例えば、ソース電圧Vsを0V、ドレイン電圧Vdを1~1.5Vとした状態で、ゲート電極12に対して20Vのゲート電圧Vgを印加することで動作させられる。すなわち、ゲート電圧Vgが印加されることにより、縦型MOSFETは、ゲートトレンチ10に接する部分のp型ベース領域7にチャネル領域が形成され、ドレイン-ソース間に電流が流れるという動作を行う。
【0037】
このとき、JFET部3および第1ディープ層4が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで低オン抵抗を図りつつ、低飽和電流を維持することが可能となっている。具体的には、JFET部3のうちストライプ状とされた部分と第1ディープ層4とが交互に繰り返し形成された構造とされていることから、次に示すような作動を行う。
【0038】
まず、ドレイン電圧Vdが例えば1~1.5Vのように通常作動時に印加される電圧である場合には、第1ディープ層4側からJFET部3へ伸びる空乏層は、JFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅よりも小さい幅しか伸びない。このため、JFET部3内へ空乏層が伸びても電流経路が確保される。また、JFET部3のn型不純物濃度をn-型層2よりも高くすれば、電流経路を低抵抗に構成できるため、低オン抵抗を図ることも可能となる。
【0039】
また、負荷短絡などによってドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなると、第1ディープ層4側からJFET部3へ伸びる空乏層がJFET部3のうちストライプ状とされた部分の幅よりも伸びる。そして、n型電流分散層6よりも先にJFET部3が即座にピンチオフされる。これにより、低飽和電流を維持することができ、負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。
【0040】
このように、JFET部3および第1ディープ層4が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで、低オン抵抗と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0041】
さらに、JFET部3を挟み込むように第1ディープ層4を備えることで、JFET部3のうちストライプ状とされた部分と第1ディープ層4とが交互に繰り返し形成された構造とされている。このため、ドレイン電圧Vdが高電圧になったとしても、下方からn-型層2に伸びてくる空乏層の伸びが第1ディープ層4によって抑えられ、トレンチゲート構造に延伸することを防ぐことができる。したがって、ゲート絶縁膜11に掛かる電界を低下させる電界抑制効果を発揮させられ、ゲート絶縁膜11が破壊されることを抑制できるため、高耐圧で信頼性の高い素子とすることが可能となる。そして、このようにトレンチゲート構造への空乏層の延伸を防げるため、n-型層2やJFET部3のn型不純物濃度を比較的濃くすることができ、低オン抵抗化を図ることが可能となる。
【0042】
よって、低オン抵抗かつ高信頼性の縦型MOSFETを有するSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態のSiC半導体装置は、ゲート電圧Vgを印加していないときには、チャネル領域が形成されていないため、ドレイン-ソース間に電流が流れないノーマリオフ型の半導体素子となる。また、JFET部3については、ゲート電圧Vgを印加していないときでもドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くならないとピンチオフしないため、ノーマリオン型となる。
【0044】
以上のような動作を行うためには、第1ディープ層4が的確にソース電位に固定されることが必要であるが、本実施形態では、連結層9aおよび第2ディープ層5を通じて第1ディープ層4をソース電位に固定している。このため、本実施形態のSiC半導体装置は、的確に上記のような動作を行うことができる。
【0045】
ここで、第1ディープ層4をソース電位に固定する際に第2ディープ層5を備えているが、典型的には、第2ディープ層5を形成する位置にもチャネル領域が形成されるようにすると考えられる。すなわち、
図4Aに示すように、第2ディープ層5の幅を隣り合うゲートトレンチ10の間隔Ptよりも狭くし、第2ディープ層5の両側に位置するトレンチゲート構造の側面にp型ベース領域7を反転させてチャネル領域が形成されるようにすることになる。
【0046】
しかしながら、
図4Bに示すように、第2ディープ層5の形成位置ずれが生じると、オン抵抗Ronやしきい値電圧Vthのばらつきを増大させることになる。特に、トレンチゲート構造を構成する各ゲートトレンチ10の間隔の狭小化に伴い、第2ディープ層5をイオン注入で形成するためのマスクを細く開口させることになるが、その加工精度を出すことが難しく、第2ディープ層5の形成位置ずれを生じさせてしまう。その場合に、例えばゲートトレンチ10の側面に第2ディープ層5が接してしまうと、その部分だけp型ベース領域7よりもp型不純物濃度が濃くなり、MOSFET動作時にチャネル領域が形成されなくなる。このため、p型半導体の形成位置ずれが発生しなかった場合と発生した場合とでMOSFET動作が行われる面積が変わり、オン抵抗Ronが変動する。また、形成位置ずれによって、第2ディープ層5が形成された部分の周囲において、実質的にp型ベース領域7のp型不純物濃度が濃くなることになるため、しきい値電圧Vthのばらつきを増大させることになる。
【0047】
このため、本実施形態では、第2ディープ層5を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないようにし、その部分ではMOSFET動作が行われないように第2ディープ層5の幅Wp、つまりY方向の寸法を設定している。具体的には、第2ディープ層5の幅Wpを少なくともゲートトレンチ10の間隔Pt以上としている。このように幅Wpの寸法を設定することで、Y方向において、第2ディープ層5が隣り合うゲートトレンチ10の側壁間の全域に配置された状態になる。このため、第2ディープ層5を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないようにでき、MOSFET動作が行われる面積が変わることによるオン抵抗Ronの変動やしきい値電圧Vthのばらつきの増大を抑制することができる。
【0048】
好ましくは、第2ディープ層5の幅Wpを第2ディープ層5の形成位置ずれを考慮した寸法にすると良い。例えば、第2ディープ層5をイオン注入等で形成する場合、マスクずれなどの影響によって第2ディープ層5の形成位置ずれが発生し得る。このため、第2ディープ層5の幅Wpを形成位置のずれ量Dをゲートトレンチ10の間隔Ptに加えた寸法以上、つまりPt+D<Wpにすると良い。
【0049】
ただし、第2ディープ層5の幅Wpが特定の隣り合うゲートトレンチ10の間だけでなく、その隣のゲートトレンチ10の間にまで形成されないようにする必要がある。このため、第2ディープ層5の幅Wpをゲートトレンチ10の間隔Ptに対してゲートトレンチ10の2つ分の幅Wt、つまり2Wtを加えた寸法未満、つまりWp<Pt+2Wtとなるようにする。より好ましくは、第2ディープ層5の形成位置ずれのずれ量Dを考慮して、Wp<Pt+2Wt-Dとなるようにすると良い。
【0050】
なお、ここでいう第2ディープ層5の形成位置ずれとは、図示しないアライメントマークなどを基準として第2ディープ層5を形成する際の位置ずれではなく、ゲートトレンチ10に対する第2ディープ層5の相対的な位置ずれを意味している。つまり、ゲートトレンチ10の形成位置ずれも発生し得ることから、第2ディープ層5の形成位置ずれとゲートトレンチ10の形成位置ずれの両方がゲートトレンチ10に対する第2ディープ層5の相対的な位置ずれに影響する。これら両方の形成位置ずれの最大値をずれ量Dとして第2ディープ層5の幅Wpを設定している。ただし、必ずしも形成位置ずれの最大値となるずれ量Dまで考慮に入れる必要はなく、より好ましい形態として、ずれ量Dを考慮に入れて第2ディープ層5の幅Wpを設定すれば足りる。
【0051】
次に、本実施形態にかかるnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について、
図5A~
図5Hに示す製造工程中の断面図を参照して説明する。
【0052】
〔
図5Aに示す工程〕
まず、半導体基板として、例えばSiCで構成されるn
+型基板1を用意する。そして、図示しないCVD(chemical vapor deposition)装置を用いたエピタキシャル成長により、n
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型層2を形成する。このとき、n
+型基板1の主表面上に予めn
-型層2を成長させてある所謂エピ基板を用いても良い。さらに、n
-型層2の上にSiCからなるJFET部3をエピタキシャル成長させる。
【0053】
〔
図5Bに示す工程〕
JFET部3の所定領域に第1ディープ層4を形成する。例えば、JFET部3の表面に、酸化膜などで構成されるマスク17を配置したのち、マスク17をパターニングして第1ディープ層4の形成予定領域を開口させる。そして、p型不純物をイオン注入することで、第1ディープ層4を形成する。その後、マスク17を除去する。
【0054】
なお、ここでは、第1ディープ層4をイオン注入によって形成しているが、イオン注入以外の方法によって第1ディープ層4を形成しても良い。例えば、JFET部3を選択的に異方性エッチングして第1ディープ層4と対応する位置に凹部を形成し、この上にp型不純物層をエピタキシャル成長させたのち、JFET部3の上に位置する部分においてp型不純物層を平坦化して第1ディープ層4を形成する。このように、第1ディープ層4をエピタキシャル成長によって形成することもできる。
【0055】
〔
図5Cに示す工程〕
引き続き、図示しないCVD装置を用いて、JFET部3および第1ディープ層4の上にn型SiCをエピタキシャル成長させることで、n型電流分散層6を形成する。続けて、 n型電流分散層6の上にp型ベース領域7をエピタキシャル成長させる。
【0056】
〔
図5Dに示す工程〕
p型ベース領域7の上に第2ディープ層5と対応する位置を開口させた酸化膜などで構成されるマスク18を形成する。そして、そのマスク18を用いてp型不純物をイオン注入することで、第2ディープ層5を形成する。この後、マスク18を除去する。
【0057】
〔
図5Eに示す工程〕
第2ディープ層5およびp型ベース領域7の上にn
+型ソース領域8をエピタキシャル成長させる。
【0058】
〔
図5Fに示す工程〕
n
+型ソース領域8の上にコンタクトp
+型層9と対応する位置を開口させたマスク19を形成する。そして、そのマスク19を用いてp型不純物をイオン注入することで、連結層9aおよびコンタクト部9bを含むコンタクトp
+型層9を形成する。この後、マスク19を除去する。
【0059】
〔
図5Gに示す工程〕
n
+型ソース領域8などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ10の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIE等の異方性エッチングを行うことで、ゲートトレンチ10を形成する。
【0060】
その後、マスクを除去してから例えば酸化膜をデポジションすること、もしくは熱酸化を行うことによってゲート絶縁膜11を形成し、ゲート絶縁膜11によってゲートトレンチ10の内壁面上およびn+型ソース領域8の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly-Siをデポジションした後、これをエッチバックし、ゲートトレンチ10内にPoly-Siを残すことでゲート電極12を形成する。これにより、トレンチゲート構造が完成する。
【0061】
さらに、ゲート電極12およびゲート絶縁膜11の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜13を形成する。そして、図示しないマスクを用いてn+型ソース領域8およびコンタクトp+型層9が露出するまで層間絶縁膜13をエッチングし、コンタクトホールを形成すると共にゲートトレンチ10内に層間絶縁膜13を残す。
【0062】
この後の工程については図示しないが、以下のような工程を行う。すなわち、層間絶縁膜13の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成したのち、電極材料をパターニングすることでソース電極14を形成する。さらに、n+型基板1の裏面側にドレイン電極15を形成する。このようにして、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のSiC半導体装置では、第2ディープ層5を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないように、つまり、その部分ではMOSFET動作が行われないように第2ディープ層5の幅Wpを設定している。具体的には、第2ディープ層5の幅Wpを少なくともゲートトレンチ10の間隔Pt以上としている。このように幅Wpの寸法を設定することで、Y方向において、第2ディープ層5が隣り合うゲートトレンチ10の側壁間の全域に配置された状態になる。このため、第2ディープ層5を形成する部分では意図的にチャネル領域が形成されないようにでき、MOSFET動作が行われる面積が変わることによるオン抵抗Ronの変動やしきい値電圧Vthのばらつきの増大を抑制することができる。
【0064】
また、第2ディープ層5の幅Wpをゲートトレンチ10の間隔Ptに対してゲートトレンチ10の2つ分の幅Wt、つまり2Wtを加えた寸法未満、つまりWp<Pt+2Wtとなるようにしている。これにより、第2ディープ層5の幅Wpが特定の隣り合うゲートトレンチ10の間だけでなく、その隣のゲートトレンチ10の間にまで形成されないようにすることができる。
【0065】
(第2実施形態)
第2施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2ディープ層5のレイアウトを変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
上記第1実施形態では、第2ディープ層5を複数のトレンチゲート構造の数本、例えば
図3に示すように5本につき1つの間隔で形成していて、セル領域内における第2ディープ層5の形成密度が均等となるようにしている。
【0067】
これに対して、本実施形態では、第2ディープ層5を複数のトレンチゲート構造の数本につき1つ形成しつつも、その間隔を均等ではない間隔としている。例えば、
図6に示す例では、第2ディープ層5をトレンチゲート構造が3本ごと、5本ごと、8本ごとに配置したものを混在させている。このように、第2ディープ層5の配置間隔を異ならせることも可能である。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2ディープ層5の形成位置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
図7Aに示すように、半導体チップ100内にトレンチゲート構造のMOSFETを備えたSiC半導体装置を構成する場合、セル領域の中央が高温になりやすく、中央から離れるほど温度が徐々に低くなるという傾向がある。これは、セル領域の外周側では外方に熱が発散していくが、セル領域の中央では熱が発散できずに集中してしまい高温になるためと考えられる。このため、セル領域内における温度の偏りを抑制できるように、高温になりやすい部位で第2ディープ層5の配置する密度を高くする。ここでは、
図7Bに示すように、セル領域の中央に円形状に第2ディープ層5を配置し、それを中心として同心円状にも第2ディープ層5を配置しつつ、中央から離れるほど第2ディープ層5の配置間隔を広げるようにしている。このように、第2ディープ層5を形成していなかった場合の温度分布に対応して第2ディープ層5を配置することにより、セル領域内での温度の偏りを抑制でき、局所的な発熱を抑制することが可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0071】
(1)上記第1実施形態では、第1ディープ層4をイオン注入層で構成するように、つまりJFET部3を形成してからp型不純物をイオン注入することで第1ディープ層4を形成するようにした。これに対して、JFET部3をイオン注入層で構成するように、つまり第1ディープ層4をn-型層2の上にエピタキシャル成長させたのち、n型不純物をイオン注入することでJFET部3を形成しても良い。
【0072】
(2)また、上記各実施形態では、隣り合う2つのゲートトレンチ10の間が第2ディープ層5とされるようにしたが、隣り合って連続する3つ以上のゲートトレンチ10の間が第2ディープ層5とされるようにしても良い。ただし、この場合には、ゲートトレンチ10の間の2つ以上の領域でチャネル領域を形成できなくなることから、第1実施形態の構造の方が単位面積当たりの電流密度を高くすることができる。
【0073】
(3)また、上記各実施形態では、半導体材料としてSiCを用いる場合を例に挙げて説明したが、Siや他の化合物半導体を半導体材料として用いる半導体装置に対しても本発明を適用できる。
【0074】
(4)また、上記各実施形態では、第2ディープ層5をp型ベース領域7の表面からp型ベース領域7およびn型電流分散層6にイオン注入することによって形成している。また、連結層9aおよびコンタクト部9bを同時に形成している。このような製造方法は、特に、SiCのように注入されたイオンが熱処理により拡散しない半導体材料を用いるような場合に有効である。熱処理によりイオンが拡散するSiなどの半導体材料を用いる場合には、連結層9aとコンタクト部9bとを別々に形成することとし、n+型ソース領域8の表面に配置したマスクを用いて連結層9aおよび第2ディープ層5を同時に形成するようにしても良い。
【0075】
(5)さらに、上記実施形態では、半導体層としてn+型基板1を用意し、このn+型基板1の上に第1導電型層に相当するn-型層2をエピタキシャル成長させる構造を例に挙げた。しかしながら、これも一例を示したのであり、n-型層2を半導体基板として用いて、その裏面側にイオン注入を行うことでn-型層2よりも高不純物濃度とされる半導体層を形成するようにしても良い。
【0076】
(6)また、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETとしても良い。また、上記説明では、半導体素子として縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。nチャネルタイプのIGBTの場合、上記各実施形態に対してn+型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。また、トレンチゲート構造を例に挙げたが、プレーナ型のMOSFETやIGBTであっても良いし、MOSFETやIGBT以外の素子であっても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…n+型基板、3…JFET部、4…第1ディープ層、5…第2ディープ層
7…p型ベース領域、8…n+型ソース領域、9…コンタクトp+型層
9a…連結層、9b…コンタクト部、10…ゲートトレンチ、11…ゲート絶縁膜
12…ゲート電極、13…層間絶縁膜、14…ソース電極、15…ドレイン電極