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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182517
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M7/493
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090115
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770CA01
5H770CA04
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA33
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Z
5H770HA03W
(57)【要約】
【課題】 複数の電力変換器間の直流電圧バランスを保ち、出力電圧の高調波品質を維持すること。
【解決手段】 実施形態における制御装置は、交流電圧源に並列接続される複数の電力変換器を制御する制御装置であって、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスを合わせた全体出力電圧パルスのレベルを決定した後に、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を決定する信号生成手段を具備する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源に並列接続される複数の電力変換器を制御する制御装置であって、
前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスを合わせた全体出力電圧パルスのレベルを決定した後に、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を決定する信号生成手段を具備する、制御装置。
【請求項2】
前記信号生成手段は、
前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を、前記複数の電力変換器の直流電圧の大小関係に応じて決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記信号生成手段は、
前記複数の電力変換器に対する電圧指令値を合成した全体電圧指令値のレベルと前記複数の電力変換器の個々のキャリア変調波のレベルとをそれぞれ比較し、それぞれの大小関係に応じて、前記全体出力電圧パルスのレベルを決定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記信号生成手段は、
「各電力変換器の出力電流の平均値×全体電圧指令値」が正の値を示す間は、直流電圧が最も大きい電力変換器に対する出力電圧パルスのレベルが、他の電力変換器よりも高く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定し、
「各電力変換器の出力電流の平均値×全体電圧指令値」が負の値を示す間は、直流電圧が最も小さい電力変換器に対する出力電圧パルスのレベルが、他の電力変換器よりも低く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記全体電圧指令値を、前記複数の電力変換器の出力電流の平均値を電流指令値に近づける電流制御の結果に基づいて生成する手段をさらに具備する、
請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電流制御に使用する電流指令値を、前記複数の電力変換器の直流電圧の平均値を直流電圧指令値に近づける電圧制御の結果に基づいて生成する手段をさらに具備する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
交流電圧源に並列接続される複数の電力変換器を制御装置により制御する制御方法であって、
前記制御装置により、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスを合わせた全体出力電圧パルスのレベルを決定する第1のステップと、
前記制御装置により、前記全体出力電圧パルスのレベルを決定した後に、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を決定する第2のステップと
を含む、制御方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、
前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を、前記複数の電力変換器の直流電圧の大小関係に応じて決定することを含む、
請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第1のステップは、
前記複数の電力変換器に対する電圧指令値を合成した全体電圧指令値のレベルと前記複数の電力変換器の個々のキャリア変調波のレベルとをそれぞれ比較し、それぞれの大小関係に応じて、前記全体出力電圧パルスのレベルを決定することを含む、
請求項7又は8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記第2のステップは、
「各電力変換器の出力電流の平均値×全体電圧指令値」が正の値を示す間は、レベル配分の対象となる電力変換器のうち、直流電圧が最も大きい電力変換器に対する出力電圧パルスのレベルが、他の電力変換器よりも高く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定することと、
「各電力変換器の出力電流の平均値×全体電圧指令値」が負の値を示す間は、レベル配分の対象となる電力変換器のうち、直流電圧が最も小さい電力変換器に対する出力電圧パルスのレベルが、他の電力変換器よりも低く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定することとを含む、
請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記制御装置により、前記全体電圧指令値を、前記複数の電力変換器の出力電流の平均値を電流指令値に近づける電流制御の結果に基づいて生成するステップをさらに含む、
請求項9又は10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記制御装置により、前記電流制御に使用する電流指令値を、前記複数の電力変換器の直流電圧の平均値を直流電圧指令値に近づける電圧制御の結果に基づいて生成するステップをさらに含む、
請求項11に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源には、直流-交流間で電力の変換を行うコンバータやインバータを含む電力変換装置が接続され、この電力変換装置は電力系統などの交流電圧源に接続される。
【0003】
電力変換装置は、出力を増やすために複数の電力変換器で構成されることが多い。その場合、これらの複数の電力変換器は、並列に電力系統などの交流電圧源に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5180457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電力変換器を、電力系統などの交流電圧源に並列接続する際には、各電力変換器のそれぞれの直流電圧部の電圧バランスの維持が重要となる。
【0006】
特に、発電電力が変動しやすい太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源に各電力変換器を接続した場合は、電力変換器間で出力電力の電圧振幅、位相などが大きく異なりやすく、電力変換器間で高調波電流が相殺されずに、多大な高調波が電力系統などの交流電圧源に流出してしまう可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数の電力変換器間の直流電圧バランスを保ち、出力電圧の高調波品質を維持することができる、制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態における制御装置は、交流電圧源に並列接続される複数の電力変換器を制御する制御装置であって、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスを合わせた全体出力電圧パルスのレベルを決定した後に、前記複数の電力変換器をそれぞれ駆動するための個々の出力電圧パルスのレベルの配分を決定する信号生成手段を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の電力変換器間の直流電圧バランスを保ち、出力電圧の高調波品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る複数の電力変換器とこれらを制御するマイクロコンピュータとを含むシステム全体の構成の一例を示す図。
図2】第1の実施形態との対比に使用される従来技術による出力信号パルスの生成手順を示す図。
図3】第1の実施形態による出力信号パルスの生成手順を示す図。
図4図1中に示されるコンピュータ100により実現される各種の機能の構成の一例を示す図。
図5図4に示される各種の機能を有するコンピュータ100による全体的な動作の一例を示すフローチャート。
図6図5中のステップS2の中で行われる動作の一例を示すフローチャート。
図7図5中のステップS3の中で行われる動作の一例を示すフローチャート。
図8図5中のステップS3で行われる動作をより具体化した一例を示すフローチャート。
図9】第2の実施形態に係る複数の電力変換器とこれらを制御するマイクロコンピュータとを含むシステム全体の構成の一例を示す図。
図10】第2の実施形態との対比に使用される従来技術による出力信号パルスの生成手順を示す図。
図11】第2の実施形態による出力信号パルスの生成手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
最初に、第1の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る複数の電力変換器とこれらを制御するマイクロコンピュータとを含むシステム全体の構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示されるように、本システムには、n個の電力変換器1,2,…,nが設けられ、さらにこれらを制御するマイクロコンピュータ(制御装置)100が設けられる。本実施形態では、電力変換器1,2,…,nがそれぞれ3相3レベル電力変換器であるものとして説明する。
【0015】
電力変換器1,2,…,nは、それぞれ、n個の絶縁トランスTrを通して並列接続され、3相の電力系統に相当する交流電圧源Grに接続される。また、電力変換器1,2,…,nは、それぞれ、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源(図示せず)に接続される。なお、図1では、再生可能エネルギー電源に接続される側の各電力変換器の回路の一部については図示を省略している。各電力変換器は、コンデンサを備えた直流電圧部を共有するコンバータ及びインバータを備えており、これらにそれぞれ含まれる複数の半導体スイッチング素子がマイクロコンピュータ100の制御のもとでオン/オフするスイッチング動作により通電状態を切り替えることで各電力変換器に流入する電力の波形が形成される。
【0016】
本システムでは、電力変換器1,2,…,nからそれぞれ出力される3相の出力電流iR1,iR2・・・,iRn、iS1,iS2・・・,iSn、iT1,iT2・・・,iTn(以下、出力電流iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nと略称する。)が、図示しない電流センサにより計測され、その計測値がマイクロコンピュータ100に供給されるようになっている。
【0017】
また、本システムでは、電力変換器1,2,…,nのそれぞれの直流電圧部における直流電圧vDC1,vDC2・・・,vDCn(以下、vDC1・・・nと略称する。)が、図示しない電圧センサにより計測され、その計測値がマイクロコンピュータ100に供給されるようになっている。
【0018】
マイクロコンピュータ100(以下、「コンピュータ100」と略称する。)は、各センサにより計測された3相の出力電流iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nおよび直流電圧vDC1・・・nを用いて、各電力変換器の個々の半導体スイッチング素子のゲートを駆動するゲート信号に相当する3相の出力電圧パルスgR1,gR2・・・,gRn、gS1,gS2・・・,gSn、gT1,gT2・・・,gTn(以下、gR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nと略称する。)を生成する。
【0019】
上記コンピュータ100は、電力変換器1,2,…,nに出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nを供給するにあたり、相毎に、出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nを合わせた全体出力電圧パルスg,g,gのレベルを先に決定し、その後に、出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nのレベルの配分を、電力変換器1,2,…,nの直流電圧vDC1・・・nの大小関係に応じて決定する機能を備えている。上記全体出力電圧パルスg,g,gは、n個の電力変換器をまとめて1つの電力変換器とみなした場合の出力電圧パルスを示すものといえる。この全体出力電圧パルスのレベルは、2n+1段階で表現され、n,…,0,…,-nのいずれかの値を示す。当該全体出力電圧パルスg,g,gを導出する方法については後で説明する。
【0020】
次に、図2および図3を参照して、従来技術による出力信号パルスの生成手順と、本実施形態による出力信号パルスの生成手順との違いについて説明する。
【0021】
ここでは説明を理解しやすいものとするため、電力変換器の数が2つである場合(N=2の場合)について説明する。また、ここでは3相を構成するR相、S相、T相のうち、R相の場合についてのみ例示するが、S相、T相の場合も同様なものとなる。
【0022】
従来技術では、図2に示されるように、電力変換器1に対応する電圧指令値(交流の出力電圧の指令値)vR1 と、電力変換器2に対応する電圧指令値(交流の出力電圧の指令値)vR2 とが使用される。
【0023】
最初に、図2に示されるように、電力変換器1に対応する電圧指令値vR1 とキャリア変調波(2つの三角波)Cとの比較が行われるとともに、電力変換器2に対応する電圧指令値vR2 とキャリア変調波C(上記キャリア変調波Cの位相を180°ずらしたもの)との比較とが行われる。そして、電圧指令値vR1 とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1が生成され、電圧指令値vR2 とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2が生成される。
【0024】
例えば電圧指令値vR1 が正の値を示す時間帯では、電圧指令値vR1 がキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示すときに出力電圧パルスgR1のレベルが+1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR1のレベルは0となる。また、電圧指令値vR1 が負の値を示す時間帯では、電圧指令値vR1 がキャリア変調波(2つの三角波)Cの値よりも小さい値を示すときに出力電圧パルスgR1のレベルが-1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR1のレベルは0となる。
【0025】
同様に、電圧指令値vR2 が正の値を示す時間帯では、電圧指令値vR2 がキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示すときに出力電圧パルスgR2のレベルが+1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR2のレベルは0となる。また、電圧指令値vR2 が負の値を示す時間帯では、電圧指令値vR2 がキャリア変調波(2つの三角波)Cの値よりも小さい値を示すときに出力電圧パルスgR2のレベルが-1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR2のレベルは0となる。
【0026】
電力変換器1の出力電圧パルスgR1と電力変換器2の出力電圧パルスgR2とを合成したものは、出力電圧パルスgとなる。
【0027】
図2に示す従来技術の場合、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1と電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2とを比較すると、レベルが+1の状態になっているときのパルス幅の総量が同じであり、また、レベルが-1の状態になっているときのパルス幅の総量も同じであるため、各電力変換器に流入する電力も同等になる。よって、電力変換器1と電力変換器2との間で出力電力に大きな電力差があるときに、電力変換器間で出力電力の電圧振幅、位相などが大きく異なり、電力変換器間で高調波電流が相殺されずに、多大な高調波が交流電圧源に流出してしまう可能性がある。
【0028】
一方、本実施形態では、図3に示されるように、電力変換器1,2に対応するそれぞれの電圧指令値を合成した全体電圧指令値v が使用される。
【0029】
最初に、図3に示されるように、全体電圧指令値v とキャリア変調波(2つの三角波)Cとの比較が行われるとともに、全体電圧指令値v とキャリア変調波C(上記キャリア変調波Cの位相を180°ずらしたもの)との比較とが行われる。そして、全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果および全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、全体出力電圧パルスgが生成される。
【0030】
例えば、全体電圧指令値v が正の値を示す時間帯では、全体電圧指令値v がキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示すと共にキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示さないとき、あるいは、キャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示すと共にキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも大きい値を示さないときに、全体出力電圧パルスgのレベルが+1となり、全体電圧指令値v がキャリア変調波(2つの三角波)C,Cのどちらよりも大きい値を示すときに、全体出力電圧パルスgのレベルが+2となり、それ以外のときには全体出力電圧パルスgのレベルは0となる。
【0031】
また、全体電圧指令値v が負の値を示す時間帯では、全体電圧指令値v がキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも小さい値を示すと共にキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも小さい値を示さないとき、あるいは、キャリア変調波(2つの三角波)Cよりも小さい値を示すと共にキャリア変調波(2つの三角波)Cよりも小さい値を示さないときに、全体出力電圧パルスgのレベルが-1となり、全体電圧指令値v がキャリア変調波(2つの三角波)C,Cのどちらよりも小さい値を示すときに、全体出力電圧パルスgのレベルが-2となり、それ以外のときには全体出力電圧パルスgのレベルは0となる。
【0032】
その後、全体出力電圧パルスgのレベルに基づき、出力電圧パルスgR1,gR2のレベルの配分が、電力変換器1,2のそれぞれの直流電圧vDC1,vDC2の大小関係に応じて決定される。
【0033】
図3の例では、電流極性が電力変換器から負荷に向かう方向であるときで、かつ全体電圧指令値v が正の値を示す領域では、直流電圧vDC1・・・nが最も大きい電力変換器に対するゲート信号出力を優先するものとし、当該電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1,gR2のいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも高く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルが決定される。また、電流極性が負荷から電力変換器に向かう方向であるときで、かつ全体電圧指令値v が負の値を示す領域では、直流電圧vDC1・・・nが最も小さい電力変換器に対するゲート信号出力を優先するものとし、当該電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1,gR2のいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも低く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルが決定される。但し、出力電圧パルスgR1,gR2のレベルは、それぞれ、+1、0、-1のいずれかの値を示すものとし、+2や-2の値にはならないように制御される。例えば、全体出力電圧パルスgのレベルが+2である場合には、出力電圧パルスgR1,gR2のレベルがそれぞれ+1に設定される。
【0034】
すなわち、電流極性が電力変換器から負荷に向かう方向であるときは直流電圧vDC1・・・nが大きい電力変換器ほど、与えられる出力電圧パルスのレベルが1に優先的に設定されるように、また、電流極性が負荷から電力変換器に向かう方向であるときは直流電圧vDC1・・・nが小さい電力変換器ほど、与えられる出力電圧パルスのレベルが-1に優先的に設定されるように制御される。出力電圧パルスのレベルが+1の状態が長く続くほど(即ち、レベルが+1のパルス幅が大きいほど)、直流電圧部のコンデンサからの放電が促されて直流電圧が下がり、一方、出力電圧パルスのレベルが-1の状態が長く続くほど(即ち、レベルが-1のパルス幅が大きいほど)、直流電圧部のコンデンサへの充電が促されて直流電圧が上がる。
【0035】
図3に示す例では、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1と電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2とを比較すると、レベルが+1の状態になっているときのパルス幅の総量が異なり、また、レベルが-1の状態になっているときのパルス幅の総量も異なるため、各電力変換器に流入する電力も異なるようになる。すなわち、電力変換器1と電力変換器2との間で出力電力に大きな電力差があるときでも、直流電圧vDC1,vDC2の大小関係に応じて、各電力変換器に流入する電力が調整されるため、電力変換器間の直流電圧バランスが保たれる。この場合、電力変換器間で高調波電流が相殺され、多大な高調波が交流電圧源Grに流出することが抑制される。
【0036】
図4は、図1中に示されるコンピュータ100により実現される各種の機能の構成の一例を示す図である。
【0037】
なお、図2に示される個々の機能は、プロセッサにより実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現されるものであるが、必要に応じて一部の機能を回路等のハードアウェアで実現してもよい。
【0038】
図4に示されるように、コンピュータ100は、各種の機能として、平均化処理部11、減算部12、PI制御部13、平均化処理部14~16、3相DQ変換部17、減算部18、PI制御部19、減算部20、PI制御部21、3相DQ逆変換部22、および、ゲート信号生成部(信号生成手段)23を備えている。
【0039】
平均化処理部11は、直流電圧(計測値)vDC1・・・nの平均値vDCを生成するものである。
【0040】
減算部12は、直流電圧指令値vDC と直流電圧(計測値)の平均値vDCとの差分を生成するものである。
【0041】
PI制御部13は、減算部12により生成される差分を用いて、PI制御を行い、有効電流指令値i を生成するものである。
【0042】
平均化処理部14~16は、3相出力電流(計測値)iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nのそれぞれの平均値i,i,iを生成するものである。
【0043】
3相DQ変換部17は、3相出力電流(計測値)のそれぞれの平均値i,i,iを用いて、3相DQ変換を実施し、有効電流i,無効電流iを生成するものである。
【0044】
減算部18は、有効電流指令値i と有効電流iとの差分を生成するものである。
【0045】
PI制御部19は、減算部18により生成される差分を用いて、PI制御を行い、有効電圧指令値v を生成するものである。
【0046】
減算部20は、無効電流指令値i と無効電流iとの差分を生成するものである。
【0047】
PI制御部21は、減算部20により生成される差分を用いて、PI制御を行い、無効電圧指令値v を生成するものである。
【0048】
3相DQ逆変換部22は、有効電圧指令値v および無効電圧指令値v を用いて、3相DQ逆変換を実施し、全体電圧指令値v ,v ,v を生成するものである。
【0049】
ゲート信号生成部23は、全体電圧指令値v ,v ,v を用いるとともに、3相出力電流(計測値)のそれぞれの平均値i,i,iを用いて、各電力変換器の個々の半導体スイッチング素子のゲートを駆動するゲート信号に相当する3相の出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nを生成するものである。
【0050】
この図4の例では、全体電圧指令値v ,v ,v は、電力変換器1,2,…,nの出力電流iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nの平均値i,i,iを電流指令値i に近づける電流制御の結果に基づいて生成されているといえる。また、当該電流制御に使用する電流指令値(i )は、電力変換器1,2,…,nの直流電圧の平均値vDCを直流電圧指令値vDC に近づける電圧制御の結果に基づいて生成されているといえる。
【0051】
次に、図5のフローチャートを参照して、図4に示される各種の機能を有するコンピュータ100による全体的な動作の一例を説明する。
【0052】
コンピュータ100は、図示しない電流センサおよび電圧センサにより計測された各電力変換器の3相出力電流iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nの計測値および直流電圧vDC1・・・nの計測値を取り込み(S1)、これらを用いて全体電圧指令値v ,v ,v を生成し(S2)、最後に、各電力変換器へのゲート信号、すなわち3相の出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nを生成する(S3)。これらのステップS1~S3による一連の処理は、繰り返し実施される。
【0053】
次に、図6のフローチャートを参照して、図5中のステップS2の中で行われる動作の一例を説明する。ここでは、図4も適宜参照する。
【0054】
コンピュータ100は、平均化処理部11により、直流電圧(計測値)vDC1・・・nの平均値vDCを生成し、減算部12により、直流電圧指令値vDC と直流電圧(計測値)の平均値vDCとの差分を生成し、PI制御部13により、減算部12により生成される差分を用いて、PI制御を行い、有効電流指令値i を生成する(S11)。
【0055】
また、コンピュータ100は、平均化処理部14~16により、3相出力電流(計測値)iR1・・・n,iS1・・・n,iT1・・・nのそれぞれの平均値i,i,iを生成し、3相DQ変換部17により、3相出力電流(計測値)のそれぞれの平均値i,i,iを用いて、3相DQ変換を実施し、有効電流i,無効電流iを生成する(S12)。
【0056】
さらに、コンピュータ100は、減算部18により、有効電流指令値i と有効電流iとの差分を生成し、PI制御部19により、減算部18により生成される差分を用いて、PI制御を行い、有効電圧指令値v を生成するとともに、減算部20により、無効電流指令値i と無効電流iとの差分を生成し、PI制御部21により、減算部20により生成される差分を用いて、PI制御を行い、無効電圧指令値v を生成する(S13)。
【0057】
最後に、コンピュータ100は、3相DQ逆変換部22により、有効電圧指令値v および無効電圧指令値v を用いて、3相DQ逆変換を実施し、全体電圧指令値v ,v ,v を生成し、これらをゲート信号生成部23へ送る(S14)。
【0058】
次に、図7のフローチャートを参照して、図5中のステップS3の中で行われる動作の一例を説明する。ここでは、図3及び図4も適宜参照する。
【0059】
コンピュータ100は、ゲート信号生成部23により、全体電圧指令値v ,v ,v や直流電圧(計測値)vDC1・・・nを用いて、全体出力電圧パルスg,g,gを決定し(S21)、その後に、各電力変換器の出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nを決定する(S22)。
【0060】
次に、図8のフローチャートを参照して、図5中のステップS3で行われる動作をより具体化した一例を説明する。ここでは、図3及び図4も適宜参照する。また、ここでは3相を構成するR相、S相、T相のうち、R相の場合についてのみ例示するが、S相、T相の場合も同様なものとなる。
【0061】
ゲート信号生成部23は、全体電圧指令値v とキャリア変調波(2つの三角波)Cとを比較するとともに、全体電圧指令値v とキャリア変調波C(上記キャリア変調波Cの位相を180°ずらしたもの)とを比較し、全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果および全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、全体出力電圧パルスgのレベルを決定する(S31)。
【0062】
次に、ゲート信号生成部23は、「各電力変換器の出力電流の平均値i×全体電圧指令値v 」が正の値を示すか否かを判定する(S32)。
【0063】
「各電力変換器の出力電流の平均値i×全体電圧指令値v 」が正の値を示す場合(S32のYES)、ゲート信号生成部23は、直流電圧vDC1・・・nが最も大きい電力変換器に対するゲート信号出力を優先するものとし、当該電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1・・・nのいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも高く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定し、当該電力変換器に対してゲート信号を出力する(S33、S35)。但し、直流電圧が最も大きい電力変換器が、前回のS33、S35の処理において既にレベルを+1にしてゲート信号を出力している電力変換器に該当する場合は、当該電力変換器は、直流電圧が最も大きい電力変換器を決める際の対象から除外される。
【0064】
一方、「各電力変換器の出力電流の平均値i×全体電圧指令値v 」が負の値を示す場合(S32のNO)、ゲート信号生成部23は、直流電圧vDC1・・・nが最も小さい電力変換器に対するゲート信号出力を優先するものとし、当該電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1・・・nのいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも低く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルを決定し、当該電力変換器に対してゲート信号を出力する(S34、S35)。但し、直流電圧が最も小さい電力変換器が、前回のS34、S35の処理において既にレベルを-1にしてゲート信号を出力している電力変換器に該当する場合は、当該電力変換器は、直流電圧が最も小さい電力変換器を決める際の対象から除外される。
【0065】
第1の実施形態によれば、複数の3相3レベル電力変換器を制御するにあたり、電力変換器間で出力電力に大きな電力差があるときでも、電力変換器間の直流電圧の大小関係に応じて、各電力変換器に流入する電力が調整されるため、電力変換器間の直流電圧バランスが保たれ、電力変換器間で高調波電流が相殺され、多大な高調波が交流電圧源Grに流出することが抑制されるという効果が得られる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、ここでは第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0067】
図9は、第2の実施形態に係る複数の電力変換器とこれらを制御するマイクロコンピュータとを含むシステム全体の構成の一例を示す図である。
【0068】
前述した第1の実施形態では、複数の3相3レベル電力変換器を採用したが、この第2の実施形態では、代わりに複数の3相2レベル電力変換器を採用する。
【0069】
これに伴い、コンピュータ100から各電力変換器の個々の半導体スイッチング素子のゲートへ送るゲート信号、すなわち3相の出力電圧パルスgR1・・・n,gS1・・・n,gT1・・・nのレベルは、2段階で表現され、+1または-1の値をとる。また、全体出力電圧パルスのレベルは、3段階で表現され、+1、0、または-1のいずれかの値を示す。
【0070】
なお、この第2の実施形態のような3レベル変換器かを採用するか、あるいは前述した第1の実施形態のような2レベル変換器を採用するかどうかは、電力変換器容量や直流電圧、スイッチング周波数、使用素子、コストパフォーマンスを考慮して決めればよい。
【0071】
次に、図10および図11を参照して、従来技術による出力信号パルスの生成手順と、本実施形態による出力信号パルスの生成手順との違いについて説明する。
【0072】
ここでは説明を理解しやすいものとするため、電力変換器の数が2つである場合(N=2の場合)について説明する。また、ここでは3相を構成するR相、S相、T相のうち、R相の場合についてのみ例示するが、S相、T相の場合も同様なものとなる。
【0073】
従来技術では、図10に示されるように、電力変換器1に対応する電圧指令値(交流の出力電圧の指令値)vR1 と、電力変換器2に対応する電圧指令値(交流の出力電圧の指令値)vR2 とが使用される。
【0074】
最初に、図10に示されるように、電力変換器1に対応する電圧指令値vR1 とキャリア変調波(1つの三角波)Cとの比較が行われるとともに、電力変換器2に対応する電圧指令値vR2 とキャリア変調波C(上記キャリア変調波Cの位相を180°ずらしたもの)との比較とが行われる。そして、電圧指令値vR1 とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1が生成され、電圧指令値vR2 とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2が生成される。
【0075】
例えば電圧指令値vR1 が正の値を示す時間帯では、電圧指令値vR1 がキャリア変調波(1つの三角波)Cよりも大きい値を示すときに出力電圧パルスgR1のレベルが+1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR1のレベルは-1となる。また、電圧指令値vR1 が負の値を示す時間帯では、電圧指令値vR1 がキャリア変調波(1つの三角波)Cの値よりも小さい値を示すときに出力電圧パルスgR1のレベルが-1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR1のレベルは+1となる。
【0076】
同様に、電圧指令値vR2 が正の値を示す時間帯では、電圧指令値vR2 がキャリア変調波(1つの三角波)Cよりも大きい値を示すときに出力電圧パルスgR2のレベルが+1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR2のレベルは-1となる。また、電圧指令値vR2 が負の値を示す時間帯では、電圧指令値vR2 がキャリア変調波(1つの三角波)Cの値よりも小さい値を示すときに出力電圧パルスgR2のレベルが-1となり、それ以外のときには出力電圧パルスgR2のレベルは+1となる。
【0077】
電力変換器1の出力電圧パルスgR1と電力変換器2の出力電圧パルスgR2とを合成したものは、出力電圧パルスgとなる。
【0078】
図10に示す従来技術の場合、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1と電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2とを比較すると、レベルが+1の状態になっているときのパルス幅の総量が同じであり、また、レベルが-1の状態になっているときのパルス幅の総量も同じであるため、各電力変換器に流入する電力も同等になる。よって、電力変換器1と電力変換器2との間で出力電力に大きな電力差があるとき、電力変換器間で出力電力の電圧振幅、位相などが大きく異なり、電力変換器間で高調波電流が相殺されずに、多大な高調波が交流電圧源に流出してしまう可能性がある。
【0079】
一方、本実施形態では、図11に示されるように、電力変換器1,2に対応するそれぞれの電圧指令値を合成した全体電圧指令値v が使用される。
【0080】
最初に、図11に示されるように、全体電圧指令値v とキャリア変調波(1つの三角波)Cとの比較が行われるとともに、全体電圧指令値v とキャリア変調波C(上記キャリア変調波Cの位相を180°ずらしたもの)との比較とが行われる。そして、全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果および全体電圧指令値v とキャリア変調波Cとの比較結果に基づき、全体出力電圧パルスgが生成される。
【0081】
例えば、全体電圧指令値v が正の値を示す時間帯では、全体電圧指令値v がキャリア変調波(1つの三角波)C,Cのどちらよりも大きい値を示すときに、全体出力電圧パルスgのレベルが+1となり、それ以外のときには全体出力電圧パルスgのレベルは0となる。
【0082】
また、全体電圧指令値v が負の値を示す時間帯では、全体電圧指令値v がキャリア変調波(1つの三角波)C,Cのどちらよりも小さい値を示すときに、全体出力電圧パルスgのレベルが-1となり、それ以外のときには全体出力電圧パルスgのレベルは0となる。
【0083】
その後、全体出力電圧パルスgのレベルに基づき、出力電圧パルスgR1,gR2のレベルの配分が、電力変換器1,2のそれぞれの直流電圧vDC1,vDC2の大小関係に応じて決定される。
【0084】
図11の例では、電流極性が電力変換器から負荷に向かう方向であるときで、かつ全体電圧指令値v が正の値を示す領域では、直流電圧vDC1・・・nが最も大きい電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1,gR2のいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも高く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルが決定される。また、電流極性が負荷から電力変換器に向かう方向であるときで、かつ全体電圧指令値v が負の値を示す領域では、直流電圧vDC1・・・nが最も小さい電力変換器に対する出力電圧パルス(出力電圧パルスgR1,gR2のいずれか)のレベルが、他の電力変換器よりも低く又は同等になるように、個々の出力電圧パルスのレベルが決定される。但し、出力電圧パルスgR1,gR2のレベルは、それぞれ、+1、-1のいずれかの値を示すものとし、0や+2や-2の値にはならないように制御される。
【0085】
すなわち、電流極性が電力変換器から負荷に向かう方向であるときは直流電圧vDC1・・・nが大きい電力変換器ほど、与えられる出力電圧パルスのレベルが1に優先的に設定されるように、また、電流極性が負荷から電力変換器に向かう方向であるときは直流電圧vDC1・・・nが小さい電力変換器ほど、与えられる出力電圧パルスのレベルが-1に優先的に設定されるように制御される。出力電圧パルスのレベルが+1の状態が長く続くほど(即ち、レベルが+1のパルス幅が大きいほど)、直流電圧部のコンデンサからの放電が促されて直流電圧が下がり、一方、出力電圧パルスのレベルが-1の状態が長く続くほど(即ち、レベルが-1のパルス幅が大きいほど)、直流電圧部のコンデンサへの充電が促されて直流電圧が上がる。
【0086】
図11に示す例では、電力変換器1に与える出力電圧パルスgR1と電力変換器2に与える出力電圧パルスgR2とを比較すると、レベルが+1の状態になっているときのパルス幅の総量が異なり、また、レベルが-1の状態になっているときのパルス幅の総量も異なるため、各電力変換器に流入する電力も異なるようになる。すなわち、電力変換器1と電力変換器2との間で出力電力に大きな電力差があるときでも、直流電圧vDC1,vDC2の大小関係に応じて、各電力変換器に流入する電力が調整されるため、電力変換器間の直流電圧バランスが保たれる。この場合、電力変換器間で高調波電流が相殺され、多大な高調波が交流電圧源Grに流出することが抑制される。
【0087】
なお、本実施形態に係るコンピュータ100による動作は、図5図8で説明した動作と同様になるため、その説明を省略する。
【0088】
第2の実施形態によれば、複数の3相2レベル電力変換器を制御する場合においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
以上詳述したように、各実施形態によれば、複数の電力変換器間の直流電圧バランスを保ち、出力電圧の高調波品質を維持することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1,2,n…電力変換器、11…平均化処理部、12…減算部、13…PI制御部、14,15,16…平均化処理部、17…3相DQ変換部、18…減算部、19…PI制御部、20…減算部、21…PI制御部、22…3相DQ逆変換部、23…ゲート信号生成部、100…マイクロコンピュータ、Gr…交流電圧源、Tr…絶縁トランス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11