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特開2022-182531層間はく離の検出装置、複合材の加工装置、層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182531
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】層間はく離の検出装置、複合材の加工装置、層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/14 20060101AFI20221201BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20221201BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20221201BHJP
   B23B 47/18 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01N29/14
B23Q17/09 A
B23B41/00 A
B23B47/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090136
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡井 大河
(72)【発明者】
【氏名】河野 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 悠嗣
(72)【発明者】
【氏名】家永 裕文
(72)【発明者】
【氏名】宮村 美里
【テーマコード(参考)】
2G047
3C029
3C036
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB05
2G047BA05
2G047BC09
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
2G047GG36
2G047GG38
3C029CC01
3C036AA00
3C036DD10
(57)【要約】
【課題】複合材の加工時に、複合材の層間はく離を好適に検出する。
【解決手段】複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出装置であって、複合材に設置されるAEセンサと、AEセンサの計測結果に基づいて取得される計測データに基づいて、複合材の層間はく離量を導出する制御部と、を備え、制御部は、AEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、取得したAE波形信号を信号処理して計測データを取得するステップと、計測データと複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、取得した計測データに基づいて、相関データから層間はく離量を取得するステップと、を実行し、計測データを取得するステップでは、AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した平均出力値と最大出力値との出力差を計測データとして取得する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象となる複合材の加工時に、前記複合材から発生する弾性波を計測して、前記複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出装置であって、
前記複合材に設置されるAEセンサと、
前記AEセンサの計測結果に基づいて取得される計測データに基づいて、前記複合材の層間はく離量を導出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記AEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、
取得した前記AE波形信号を信号処理して前記計測データを取得するステップと、
前記計測データと前記複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、
取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量を取得するステップと、を実行し、
前記計測データを取得するステップでは、
前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する層間はく離の検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、取得した前記AE波形信号のノイズを除去するステップを、さらに実行し、
前記ノイズを除去するステップでは、前記複合材への加工前に、前記AE波形信号を取得し、取得した前記AE波形信号の周波数分析を行って、不要となる前記AE波形信号の周波数帯を除去する請求項1に記載の層間はく離の検出装置。
【請求項3】
前記複合材の加工は、孔加工であり、
前記層間はく離量は、前記複合材に形成される孔の周縁部において、孔の内側から外側へ向かってはく離する前記複合材の層内方向の長さである請求項1または2に記載の層間はく離の検出装置。
【請求項4】
複合材に対して加工を実行する加工部と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の層間はく離の検出装置と、
前記検出装置から取得した前記層間はく離量に基づいて、前記加工部の加工制御を実行する加工制御部と、を備え、
前記層間はく離量は、クライテリアに基づくしきい値が予め設定されており、
前記加工制御部は、取得した前記層間はく離量と前記しきい値とに基づいて、前記加工部の加工制御を実行する複合材の加工装置。
【請求項5】
加工対象となる複合材の加工時に、前記複合材から発生する弾性波を計測して、前記複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出方法であって、
前記複合材に設置されたAEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、
取得した前記AE波形信号を信号処理して計測データを取得するステップと、
前記計測データと前記複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、
取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量を取得するステップと、を実行し、
前記計測データを取得するステップでは、
前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する層間はく離の検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の層間はく離の検出方法により取得した前記層間はく離量に基づいて、前記複合材の加工を実行する複合材の加工方法であって、
前記層間はく離量は、クライテリアに基づくしきい値が予め設定されており、
取得した前記層間はく離量と前記しきい値とに基づいて、前記複合材の加工を実行する複合材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、層間はく離の検出装置、複合材の加工装置、層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複合材に対して孔加工等の機械加工時に発生する欠陥を検査する検査装置及び検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の検査では、超音波探傷による検査と、光センサを用いた光学的検査とを行うことで、複合材の欠陥の有無を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/092726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査では、穴開け加工により形成された穴に光センサパーツを挿入しており、加工後の検査となっている。このように、検査は、一般的に、加工後において実施される。一方で、加工時にリアルタイムに複合材の欠陥を検出することが検討されている。
【0005】
そこで、本開示は、複合材の加工時に、複合材の層間はく離を好適に検出することができる層間はく離の検出装置、複合材の加工装置、層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の層間はく離の検出装置は、加工対象となる複合材の加工時に、前記複合材から発生する弾性波を計測して、前記複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出装置であって、前記複合材に設置されるAEセンサと、前記AEセンサの計測結果に基づいて取得される計測データに基づいて、前記複合材の層間はく離量を導出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記AEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、取得した前記AE波形信号を信号処理して前記計測データを取得するステップと、前記計測データと前記複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量を取得するステップと、を実行し、前記計測データを取得するステップでは、前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する。
【0007】
本開示の複合材の加工装置は、複合材に対して加工を実行する加工部と、請求項1から3のいずれか1項に記載の層間はく離の検出装置と、前記検出装置から取得した前記層間はく離量に基づいて、前記加工部の加工制御を実行する加工制御部と、を備え、前記層間はく離量は、クライテリアに基づくしきい値が予め設定されており、前記加工制御部は、取得した前記層間はく離量と前記しきい値とに基づいて、前記加工部の加工制御を実行する。
【0008】
本開示の層間はく離の検出方法は、加工対象となる複合材の加工時に、前記複合材から発生する弾性波を計測して、前記複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出方法であって、前記複合材に設置されたAEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、取得した前記AE波形信号を信号処理して計測データを取得するステップと、前記計測データと前記複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量を取得するステップと、を実行し、前記計測データを取得するステップでは、前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する。
【0009】
本開示の複合材の加工方法は、上記の層間はく離の検出方法により取得した前記層間はく離量に基づいて、前記複合材の加工を実行する複合材の加工方法であって、前記層間はく離量は、クライテリアに基づくしきい値が予め設定されており、取得した前記層間はく離量と前記しきい値とに基づいて、前記複合材の加工を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複合材の加工時に、複合材の層間はく離を好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る複合材の加工装置の概略図である。
図2図2は、AEセンサにより取得されるAE波形信号のグラフである。
図3図3は、相関データの一例を示すグラフである。
図4図4は、層間はく離量の説明図である。
図5図5は、本実施形態に係る複合材の加工方法に関するフローチャートである。
図6図6は、計測データの一つである出力差を示す説明図である。
図7図7は、しきい値と相関データとを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0013】
[本実施形態]
図1は、本実施形態に係る複合材の加工装置の概略図である。図2は、AE(Acoustic Emission)センサにより取得されるAE波形信号のグラフである。図3は、相関データの一例を示すグラフである。図4は、層間はく離量の説明図である。図5は、本実施形態に係る複合材の加工方法に関するフローチャートである。図6は、計測データの一つである出力差を示す説明図である。図7は、しきい値と相関データとを示すグラフである。先ず、図1を参照して、複合材の加工装置10について説明する。
【0014】
(複合材の加工装置)
実施形態1の加工装置10は、複合材に対して加工を行う装置である。加工対象となる複合材は、樹脂を含侵させた強化繊維シートを積層方向に複数積層して硬化することにより形成された構造体である。具体的に、複合材としては、例えば、航空機の主翼の部品である。加工装置10による加工としては、例えば、複合材に対して、積層方向に貫通孔を形成する穿孔加工である。なお、本実施形態では、穿孔加工を行う加工装置10に適用して説明するが、穿孔加工に特に限定されず、機械加工であれば、何れの加工装置に適用してもよい。
【0015】
加工装置10は、加工部11と、検出装置13と、加工制御部15と、を備えている。加工装置10は、検出装置13の検出結果を加工制御部15が取得し、加工制御部15が検出結果に基づいて加工部11の加工制御を実行している。
【0016】
加工部11は、穿孔ドリル18を有している。加工部11は、回転軸を中心に穿孔ドリル18を回転させながら、回転軸の軸方向を送り方向として穿孔ドリル18を移動させることで、複合材に貫通孔を形成する。
【0017】
加工制御部15は、加工部11の加工動作を制御する。加工制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。加工制御部15は、後述する検出装置13の検出結果に応じて、穿孔ドリル18の送り方向への移動量及び回転数等を制御することで、加工部11の加工動作を制御する。なお、加工制御部15は、後述する制御部25と一体となっていてもよいし、別体となっていてもよく、特に限定されない。
【0018】
(層間はく離の検出装置)
次に、検出装置13について説明する。検出装置13は、複合材の層間に発生する層間はく離を検出する装置である。具体的に、検出装置13は、加工部11による複合材の加工時において、複合材5の層間はく離をリアルタイムに検出している。検出装置13は、AEセンサ21と、増幅器23と、制御部25と、を備えている。
【0019】
AEセンサ21は、加工対象となる複合材の表面に設置される。AEセンサ21は、加工時において複合材から発生する弾性波をAE波形信号として検出する。AEセンサ21は、増幅器23に接続され、検出したAE波形信号を、増幅器23へ向けて出力する。ここで、図2にAE波形信号の一例を示す。図2は、その縦軸が出力値となる振幅(dB)となっており、その横軸が時間となっている。AEセンサ21は、時間変化する振幅を、図2に示すようなAE波形信号として取得する。
【0020】
増幅器23は、AEセンサ21から入力されるAE波形信号を増幅する。また、増幅器23は、制御部25に接続され、増幅したAE波形信号を、制御部25へ向けて出力する。
【0021】
制御部25は、複合材の層間はく離を検出する。制御部25は、加工制御部15と同様に、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。制御部25は、増幅器23により増幅されたAE波形信号を、AEセンサ21の計測結果として取得する。また、制御部25は、取得したAE波形信号から計測データを算出し、算出した計測データに基づいて複合材の層間はく離を検出する。
【0022】
ここで、図4を参照して、層間はく離について説明する。図4に示すように、複合材の表面側から穿孔ドリル18により穿孔加工を実行すると、複合材の裏側となる貫通孔の出口側において、層間はく離が生じる。層間はく離に関するパラメータとしては、層間はく離量であり、層間はく離量は、貫通孔の出口側の周縁部において、貫通孔の内側から外側へ向かってはく離する複合材の層内方向の長さである。
【0023】
(層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法)
次に、図5から図7を参照して、上記の制御部25により、層間はく離を検出する検出方法及び複合材の加工方法について説明する。図5は、複合材の加工方法のフローを示しており、複合材の加工方法において層間はく離の検出方法を実行している。つまり、層間はく離の検出方法では、図5のステップS1からステップS4を実行しており、複合材の加工方法では、層間はく離の検出方法に加え、ステップS5を実行している。
【0024】
先ず、制御部25が、AEセンサ21の計測結果としてのAE波形信号を取得する(ステップS1)。制御部25は、AE波形信号として、例えば、図2に示す信号を取得する。続いて、制御部25は、取得したAE波形信号を信号処理して計測データを取得する(ステップS2)。ステップS2では、図6に示すように、AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した平均出力値と最大出力値との出力差を計測データの一つとして取得する。ステップS2では、所定のサンプリング周期で、所定期間内におけるAE波形信号の出力値を取得し、取得した出力値の平均をとることで、平均出力値を算出している。また、ステップS2では、所定のサンプリング周期で、所定期間内におけるAE波形信号の出力値を取得し、取得した出力値の中で最大となる値を、最大出力値として取得している。そして、平均出力値と最大出力値との差分を取ることにより、出力差を算出する。なお、図6は、上側の図が、出力差が大きい場合を示しており、下側の図が、出力差が小さい場合を示している。なお、本実施形態では、計測データとして、出力差を用いたが、少なくとも出力差を用いればよく、出力差に加えて、周波数解析の解析結果を用いてもよい。
【0025】
続いて、制御部25は、計測データである出力差と複合材の層間はく離量Lとの相関関係に関するデータである相関データを取得する(ステップS3)。ここで、相関データは、予め実験等によって求められる。図3に示すように、相関データは、その縦軸が出力差となっており、横軸が層間はく離量Lとなっている。相関データは、実験において、試料片となる複合材を加工し、加工時における出力差を取得すると共に、加工後における試料片の層間はく離量Lを測定して、出力差と層間はく離量Lを対応付けた計測点を取得する。そして、計測点を複数取得し、複数の計測点から得られる相関式を相関データとして取得する。
【0026】
この後、制御部25は、相関データを取得すると、ステップS2おいて取得した出力差に基づいて、相関データから層間はく離量Lを取得する(ステップS4)。以上によって、検出装置13は、複合材の層間はく離を検出することができる。なお、制御部25は、取得した層間はく離量Lを加工制御部15へ向けて出力する。
【0027】
加工装置10の加工制御部15は、検出装置13から取得した層間はく離量Lに基づいて、加工部11の加工制御を実行する(ステップS5)。ここで、図7に示すように、層間はく離量Lは、クライテリアに基づくしきい値Tが予め設定されている。ステップS5において、加工制御部15は、検出装置13から取得した層間はく離量Lとしきい値Tとに基づいて、加工部11の加工制御を実行する。図7に示すP1は、例えば、図6の上側の図に示す時の層間はく離量Lであり、図7に示すP2は、例えば、図6の下側の図に示す時の層間はく離量Lである。例えば、加工制御部15は、層間はく離量LがP2から、しきい値Tを超えてP1となった場合、穿孔ドリル18の送り方向への移動速度を遅くする。また、例えば、加工制御部15は、層間はく離量Lがしきい値T以下となるように、フィードバック制御を実行してもよい。以上によって、加工装置10は、複合材の加工制御を実行することができる。
【0028】
なお、層間はく離の検出方法では、ステップS1において取得したAE波形信号のノイズを除去するステップを、さらに実行している。具体的に、ノイズを除去するステップにおいて、制御部25は、複合材5への加工前に、AEセンサ21によってAE波形信号を取得する。制御部25は、取得したAE波形信号の周波数分析を行って、ノイズとなる周波数帯をノイズ除去フィルタとして取得する。そして、制御部25は、ステップS2において、取得したAE波形信号に対して、上記のノイズ除去フィルタを用いたフィルタリング処理を実行することで、不要となるAE波形信号の周波数帯を除去する。
【0029】
また、層間はく離の検出方法では、計測データとして出力差を取得したが、出力差に加えて、AE波形信号を周波数解析した解析結果を計測データとして用いてもよい。つまり、層間はく離量Lに関する相関式を、出力差及び解析結果を用いて生成してもよい。
【0030】
以上のように、実施形態に記載の層間はく離の検出装置13、複合材の加工装置10、層間はく離の検出方法及び複合材の加工方法は、例えば、以下のように把握される。
【0031】
第1の態様に係る層間はく離の検出装置13は、加工対象となる複合材5の加工時に、前記複合材5から発生する弾性波を計測して、前記複合材5の層間はく離を検出する層間はく離の検出装置13であって、前記複合材5に設置されるAEセンサ21と、前記AEセンサ21の計測結果に基づいて取得される計測データに基づいて、前記複合材5の層間はく離量Lを導出する制御部25と、を備え、前記制御部25は、前記AEセンサ21の計測結果としてのAE波形信号を取得するステップS1と、取得した前記AE波形信号を信号処理して前記計測データを取得するステップS2と、前記計測データと前記複合材5の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップS3と、取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量Lを取得するステップS4と、を実行し、前記計測データを取得するステップS2では、前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する。
【0032】
この構成によれば、複合材5の加工時に、相関データに基づいて出力差から複合材5の層間はく離量Lをリアルタイムに検出することができる。
【0033】
第2の態様として、前記制御部25は、取得した前記AE波形信号のノイズを除去するステップを、さらに実行し、前記ノイズを除去するステップでは、前記複合材5への加工前に、前記AE波形信号を取得し、取得した前記AE波形信号の周波数分析を行って、不要となる前記AE波形信号の周波数帯を除去する。
【0034】
この構成によれば、AE波形信号に含まれるノイズを除去することができるため、出力差を好適に取得し、層間はく離量Lを精度よく検出することができる。
【0035】
第3の態様として、前記複合材5の加工は、孔加工であり、前記層間はく離量Lは、前記複合材5に形成される孔の周縁部において、孔の内側から外側へ向かってはく離する前記複合材5の層内方向の長さである。
【0036】
この構成によれば、孔加工における層間はく離量Lを好適に検出することができる。
【0037】
第4の態様に係る複合材5の加工装置10は、複合材5に対して加工を実行する加工部11と、上記の層間はく離の検出装置13と、前記検出装置13から取得した前記層間はく離量に基づいて、前記加工部11の加工制御を実行する加工制御部15と、を備え、前記層間はく離量Lは、クライテリアに基づくしきい値Tが予め設定されており、前記加工制御部15は、取得した前記層間はく離量Lと前記しきい値Tとに基づいて、前記加工部11の加工制御を実行する。
【0038】
この構成によれば、層間はく離量Lに関するクライテリアを満足する加工を、複合材5に対して実行することができる。
【0039】
第5の態様に係る層間はく離の検出方法は、加工対象となる複合材の加工時に、前記複合材から発生する弾性波を計測して、前記複合材の層間はく離を検出する層間はく離の検出方法であって、前記複合材に設置されたAEセンサの計測結果としてのAE波形信号を取得するステップと、取得した前記AE波形信号を信号処理して計測データを取得するステップと、前記計測データと前記複合材の層間はく離量との相関関係に関するデータである相関データを取得するステップと、取得した前記計測データに基づいて、前記相関データから前記層間はく離量を取得するステップと、を実行し、前記計測データを取得するステップでは、前記AE波形信号の平均出力値を取得すると共に、前記AE波形信号の最大出力値を取得し、取得した前記平均出力値と前記最大出力値との出力差を、少なくとも前記計測データの一つとして取得する。
【0040】
この構成によれば、複合材5の加工時に、相関データに基づいて出力差から複合材5の層間はく離量Lをリアルタイムに検出することができる。
【0041】
第6の態様に係る複合材の加工方法は、上記の層間はく離の検出方法により取得した前記層間はく離量に基づいて、前記複合材の加工を実行する複合材の加工方法であって、前記層間はく離量は、クライテリアに基づくしきい値が予め設定されており、取得した前記層間はく離量と前記しきい値とに基づいて、前記複合材の加工を実行する。
【0042】
この構成によれば、層間はく離量Lに関するクライテリアを満足する加工を、複合材5に対して実行することができる。
【符号の説明】
【0043】
5 複合材
10 加工装置
11 加工部
13 検出装置
15 加工制御部
18 穿孔ドリル
21 AEセンサ
23 増幅器
25 制御部
L 層間はく離量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7