(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182562
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】スタックケース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20221201BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20221201BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20221201BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M50/204
H01M50/271 S
H01M50/262 P
H01M50/224
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090179
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄司
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AA32
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC05
5H040CC34
5H040CC38
5H040FF02
5H040JJ06
5H040JJ10
5H040NN00
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】従来のスタックケースでは、型抜き後のロワケースに対して切削加工が必要になる問題があった。
【解決手段】本発明のスタックケースは、複数の電池セルが積層された電池スタック31が収納され、凹形状を有するロワケース10と、電池スタック31を覆うようにロワケース10の開口を塞ぐアッパーケース20と、を有し、ロワケース10は、電池スタック31の積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面11と、第1の壁面11と対向する位置に設けられる第2の壁面12と、を有し、第1の壁面11の底面からの高さは、第2の壁面12の底面からの高さよりも低く形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが積層された電池スタックが収納され、凹形状を有するロワケースと、
前記電池スタックを覆うように前記ロワケースの開口を塞ぐアッパーケースと、を有し、
前記ロワケースは、
前記電池スタックの積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面と、
前記第1の壁面と対向する位置に設けられる第2の壁面と、を有し、
前記第1の壁面の底面からの高さは、前記第2の壁面の前記底面からの高さよりも低く形成されるスタックケース。
【請求項2】
前記第1の壁面と前記ロワケースの前記凹形状の底面とのなす角は、略直角である請求項1に記載のスタックケース。
【請求項3】
前記第1の壁面の高さは、前記電池セル内に格納される電力体に対して電池セルの積層方向の加圧力が必要な加圧必要部の高さよりも高く設定される請求項1又は2に記載のスタックケース。
【請求項4】
前記第1の壁面の高さは、前記電池セルの極柱の高さを除くセルケースの高さ以下に設定される請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項5】
前記第2の壁面の高さは、前記電池セル内に格納される電力体に対して電池セルの積層方向の加圧力が必要な加圧必要部の高さ以上、かつ、前記第1の壁面の高さ以下に設定される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項6】
前記第1の壁面の前記ロワケースの前記凹形状の底面からの高さは、前記電池スタックを構成する電池セルの前記底面からの高さの3/4以上である請求項1又は2に記載のスタックケース。
【請求項7】
前記第2の壁面は、前記ロワケースの前記凹形状の底面と壁面のなす角が90℃以上となるテーパーを有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項8】
前記電池スタックの前記第1の壁面と対向する側の端部には、前記電池スタックを押さえつけるエンドプレートを有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項9】
前記ロワケースには、前記電池スタックが2列に分割して収納され、一方の前記電池スタックの積層方向の長さが他方の前記電池スタックの前記積層方向の長さよりも短く、
前記エンドプレートは、2列の前記電池スタックのそれぞれに対して同一形状の独立した治具として備え付けられる請求項8に記載のスタックケース。
【請求項10】
前記第1の壁面と前記第2の壁面とを繋ぐ側壁の上端面は、前記第1の壁面の上面から前記第2の壁面の上面に向かって高さが低くなるように形成される請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項11】
前記アッパーケースは、前記電池セルの極柱の間の部分を押え付けるように形成されたたわみ部を有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項12】
前記たわみ部は、前記電池スタックの積層方向に延在するように設けられる請求項11に記載のスタックケース。
【請求項13】
前記ロワケースは、鋳造成形品である請求項1乃至12のいずれか1項に記載のスタックケース。
【請求項14】
複数の電池が積層された電池スタックが収納され、凹形状を有するロワケースと、
前記電池スタックを覆うように前記ロワケースの開口を塞ぐアッパーケースと、を有するスタックケースの製造方法であって、
前記ロワケースを形作る鋳造型を形成し、
前記鋳造型に溶融材料を流し込み、
前記溶融材料が凝固した後に前記鋳造型を型割れ方向に分離して前記ロワケースを取り出し、
前記鋳造型を前記型割れ方向に略水平方向に延在する片割れ面に対して、前記ロワケースの凹形状の底面が傾きを持ち、かつ、前記電池スタックの積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面と前記底面とが略直角な角度を有するように形成するスタックケースの製造方法。
【請求項15】
前記鋳造型は、第1の壁面と対向する位置に設けられる第2の壁面が、前記ロワケースの前記凹形状の底面と壁面との間でなす角が90℃以上となるテーパーを有する請求項14に記載のスタックケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スタックケース及びその製造方法に関し、複数の電池セルを積層した電池スタックを収納するスタックケース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを積層した電池スタックを利用する場合、電池スタックに積層方向に圧縮力をかけ、当該圧縮力を維持した状態とすることで性能向上が可能であることが知られている。この圧縮力の維持のために、電池スタックを収納するスタックケースが用いられることがある。そこで、スタックケースの一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された電池パックは、電池セルの配列体を固定部材によって筐体の壁部に固定してなる。固定部材は、エンドプレートと、ブラケットと、を備える。配列体は、エンドプレートと筐体の一の壁部とで挟み込まれて配列体の配列方向に拘束荷重が付加された状態で、ブラケットを筐体の他の壁部に固定することによって筐体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、筐体、特に電池スタックにかかる圧縮力の維持機能を有するロワケースを鋳造により成形する場合、ロワケースの壁面に抜き勾配を設けなければならず、電池スタックを押しつける面を底面に対して垂直にするために切削によりこの壁面を形成する必要がある。このような切削工程は、鋳造工程とは別の工程であり、工程の増加により製品の製造に要する時間の増大、コストの増大等の弊害が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スタックケースの製造工程を簡略化することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスタックケースの一態様は、複数の電池セルが積層された電池スタックが収納され、凹形状を有するロワケースと、前記電池スタックを覆うように前記ロワケースの開口を塞ぐアッパーケースと、を有し、前記ロワケースは、前記電池スタックの積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面と、前記第1の壁面と対向する位置に設けられる第2の壁面と、を有し、前記第1の壁面の底面からの高さは、前記第2の壁面の前記底面からの高さよりも低く形成される。
【0008】
本発明のスタックケースの製造方法の一態様は、複数の電池が積層された電池スタックが収納され、凹形状を有するロワケースと、前記電池スタックを覆うように前記ロワケースの開口を塞ぐアッパーケースと、を有するスタックケースの製造方法であって、前記ロワケースを形作る鋳造型を形成し、前記鋳造型に溶融材料を流し込み、前記溶融材料が凝固した後に前記鋳造型を型割れ方向に分離して前記ロワケースを取り出し、前記鋳造型を前記型割れ方向に略水平方向に延在する片割れ面に対して、前記ロワケースの凹形状の底面が傾きを持ち、かつ、前記電池スタックの積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面と前記底面とが略直角な角度を有するように形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスタックケース及びその製造方法によれば、スタックケースの製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかるスタックケースの上面図である。
【
図2】実施の形態1にかかるスタックケースの断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかるスタックケースの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかるロワケースの製造で利用される鋳造型の断面図である。
【
図5】比較例にかかるロワケースの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図6】比較例にかかるロワケースの切削工程を説明する図である。
【
図7】実施の形態1にかかるスタックケースの第1の壁面の高さを説明する図である。
【
図8】実施の形態2にかかるスタックケースの上面図である。
【
図9】実施の形態2にかかるスタックケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかるスタックケース1の上面図を示す。実施の形態1にかかるスタックケース1は、ロワケース内に電池スタックを収納した状態でアッパーケースにより蓋をすることで電池スタックを収納するものである。
図1では、アッパーケースを開け、ロワケース10に収納される電池スタックが分かる状態にした上面図を示した。以下で説明する電池スタックは、複数の電池セルを積層したものであり、積層方向に圧縮力を欠けた状態で拘束することで、性能が向上する。
【0013】
そして、実施の形態1にかかるスタックケース1では、ロワケース10の形状に特徴の1つを有するものであるため、実施の形態1ではスタックケース1の形状について主に説明する。
【0014】
ロワケース10は、凹形状のケースであって、凹部に電池スタックが収納される。
図1に示す例では、互いに連結されて1つの組電池として機能する2つの電池スタック(例えば、電池スタック31、32)が収納される。また、ロワケース10は、上面視において第1の壁面11、第2の壁面12、側壁13、14の4つの壁面を有する。そして、実施の形態1にかかるスタックケース1は、電池スタックの第1の壁面11と対向する側の端部に、電池スタックを押さえつけるエンドプレート41、42を有する。そして、スタックケース1では、電池スタックの一端を第1の壁面11に押しつけた状態で、エンドプレート41、42により電池スタックの他端を第1の壁面11側に押え付けることで、電池スタック31、32に電池セルの積層方向の圧縮力をかけた状態でロワケース10内に固定する。
【0015】
なお、実施の形態1にかかるスタックケース1では、ロワケース10に電池スタック31、32を収納したが、ロワケース10に収納する電池スタックは1つであっても構わない。ロワケース10に収納する電池スタックを1つにした場合、エンドプレートも1つである。また、ロワケース10に収納する電池スタックの数は3以上であってもよく、エンドプレートの数は電池スタック数に対応した数とする。
【0016】
ここで、実施の形態1にかかるスタックケース1のロワケース10では、第1の壁面11と第2の壁面12との高さに差が設けられているという特徴を有する。そこで、
図2に実施の形態1にかかるスタックケース1の断面図を示す。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。また
図2では、ロワケース10に被せられるアッパーケース20の断面図も示した。
【0017】
図2では、ロワケース10の底面16を示した。そして、ロワケース10は、第1の壁面11の底面16の表面からの高さが第2の壁面12の底面16の表面からの高さよりも高くなるように形成される。
図2では、第2の壁面12の上端部に接するように水平線HL(例えば、底面16と平行な線)を示した。そして、水平線HLよりも第1の壁面11の上端部が高くなっていることからも第1の壁面11の方が第2の壁面12よりも高さが高くなっていることが分かる。
【0018】
また、
図2では、第1の壁面11の上端部と第2の壁面12の上端部を結ぶ線として嵌合線FLを示した。ロワケース10の側壁13、14は、第1の壁面11と第2の壁面12とを連結するが、側壁13、14の上端面は、嵌合線FLに沿った傾斜を有する。また、アッパーケース20の側壁13、側壁14と嵌合する面についても嵌合線FLに沿った傾斜が設けられる。つまり、第1の壁面11と第2の壁面12とを繋ぐ側壁13、14の上端面は、第1の壁面11の上面から第2の壁面12の上面に向かって高さが低くなるように形成される。
【0019】
また、
図2に示すように、ロワケース10では、第1の壁面11とロワケース10の凹形状の底面16とのなす角は、略直角である。一方、第2の壁面12は、ロワケース10の凹形状の底面16と壁面のなす角が90℃以上となるテーパーを有する。そして、実施の形態1にかかるスタックケース1では、第1の壁面11と第2の壁面12の高さに差を設けるような構造とすることで、切削加工を行うことなく、第1の壁面11と底面16とのなす角を略直角にして鋳造により形成することができる。
【0020】
そこで、ロワケース10の製造方法について詳細に説明する。そこで、
図3に実施の形態1にかかるスタックケースの製造方法を説明するフローチャートを示す。
図3に示すように、実施の形態1にかかるスタックケース1では、まず、ロワケース10とアッパーケース20とを形作る鋳造型を形成する(ステップS1)。続いて、ステップS1で形成した鋳造型にスタックケースとなる金属を溶かした溶湯(溶融材料)を流し込む(ステップS2)。その後、この溶湯が十分に冷えて凝固したタイミングで、鋳造型を型割れ方向に分離して成形されたロワケース10とアッパーケース20とを取り出すことで、ロワケース10及びアッパーケース20が製造される(ステップS3)。なお、本実施形態では、アッパーケース20を鋳造にて作成しているが、これに限られず、板金や樹脂にて作成してもよい。
【0021】
ここで、実施の形態1にかかるスタックケース1では、ロワケース10を
図1及び
図2を参照して説明したような形状とすることで、第1の壁面11と底面16とが略直角となった状態で鋳造型からロワケース10を取り出すことができる。ロワケース10をこのような形状とする鋳造型は、型割れ方向に略水平方向に延在する片割れ面に対して、ロワケースの凹形状の底面が傾きを持ち、かつ、電池スタックの積層方向の端部が押し当てられる第1の壁面11と底面16とが略直角な角度を有するように形成することで実現出来る。
【0022】
そこで、
図4に実施の形態1にかかるロワケース10の製造で利用される鋳造型の断面図を示す。図では、型割れ方向に直交する型割れ面を示す線として型割れ水平線CL1、型割れ水平線CL2を示した。そして、
図4に示すように、ロワケース10を形成する鋳造型は、底面16が型割れ水平線CL1に対して角度θを有する傾きを有するように形成される。そして、第1の壁面11は、底面16と略直角となるように鋳造型が作られる。そして、この鋳造型を用いた場合、鋳造型を型割れ方向に分離したとき、第1の壁面11は、型割れ方向に対して一定の角度を持った面となるため、この一定の角度が抜き勾配となる。つまり、底面16を型割れ水平線CL1に対して傾けて鋳造型を形成することで第1の壁面11と底面16との角度を略直角にしながら抜き勾配を形作ることができる。
【0023】
一方、第2の壁面12に関しては、抜き勾配が必要になるため、第2の壁面12を形作る面のうちロワケース10の凹部側の壁面については、第2の壁面12の先端に行くほど型割れ方向に平行な垂直線に対して距離が遠くなるような抜き勾配を設定する必要がある。そのため、第2の壁面12については、ロワケースの前記凹形状の底面と壁面のなす角が90℃以上となるテーパーを有することになる。
【0024】
なお、第1の壁面11の上端面と第2の壁面12の上端面は、型割れ水平線CL2に沿って形成される。また、
図4では図示していないが、側壁13、14の上端面についても型割れ水平線CL2に沿って形成される。
【0025】
ここで、比較例として、底面を型割れ水平線CL1に沿って形成した鋳造型を用いたロワケースの製造方法について説明する。そこで、
図5に比較例にかかるロワケースの製造方法を説明するフローチャートを示す。
図5に示すように、比較例にかかる製造方法では、ステップS1~S3までは実施の形態1にかかる製造方法と同じであるが、ステップS3の型抜き工程の後に組電池を押し当てる第1の壁面と底面とがなす角が直角になるように切削加工を行う切削工程(ステップS11)が追加される。
【0026】
そこで、この切削工程について
図6に比較例にかかるロワケースの切削工程を説明する図を示す。
図6では、比較例において型抜き後に取り出されるロワケース100の断面図を示した。
図6に示すように、比較例にかかるロワケース100は、第1の壁面101及び第2の壁面102に、断面視した場合に先端方向に向かって先細り形状となるようなテーパーが抜き勾配として形成される。そして、第1の壁面101において電池スタックが押し当てられる壁面101aを底面106に対して略直角とするために、壁面101aを切削歯110により削る切削工程を行う。これにより、第1の壁面101と底面106とがなす角が略直角とすることができるが、実施の形態1にかかる製造方法に比べて切削工程が必要になるデメリットが生じる。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかるロワケース10の第1の壁面11の高さについて説明する。第1の壁面11は、電池スタック31、32に圧縮力を安定して維持する機能が必要になる。ここで、電池スタック31、32に加えられる圧縮力は、電池セル内の電力体に加えられるものである。そのため、第1の壁面11の高さは、電池セル内の電力体の形状に基づき決定される。
【0028】
第1の壁面11のロワケース10の凹形状の底面16からの高さは、電池スタックを構成する電池セルの底面からの高さの3/4以上である。さらに詳細には、電池セル内の電力体の形状に基づき第1の壁面11の高さが設定される。そこで、
図7に実施の形態1にかかるロワケース10の第1の壁面11の高さを説明する図を示す。
図7に示す例では、第1の壁面11の底面16からの高さをH0とした。そして、
図7に示す例では、電池セルの電力体51を収納するセルケース50を示した。また、
図7では、電力体51として正極シート、セパレータ及び負極シートを重ねて捲回した捲回体を用いた例を示した。
【0029】
電力体51として捲回体を用いた場合、捲回体をセルケース50に収納した状態で捲回体がセルケース50の壁面に接する直線部分が加圧必要部分となる。
図7では、この加圧必要部分の底面16からの高さをH1とし、セルケース50の底面16からの高さをH2とした。このような高さの関係を有する場合、第1の壁面11の高さH1は、H1≦H0、より好ましくは、H1≦H0≦H2とすることが好ましい。
【0030】
つまり、第1の壁面11の高さH0は、電池セル内に格納される電力体に対して電池セルの積層方向の加圧力が必要な加圧必要部の高さH1よりも高く設定される。また、第1の壁面11の高さH0は、電池セルの極柱の高さを除くセルケース50の高さH2以下に設定される。また、第2の壁面12については図示しないが、鋳造型において第1の壁面11と底面16とを略直角にするために底面16を型割れ水平線CL1に対して傾けるため、第1の壁面11以下の高さの範囲でできるだけ高くすることが好ましい。
【0031】
なお、電力体51として複数組の正極シート、セパレータ及び負極シートを積層した積層体であっても加圧必要部に関する考え方は、シートが密着する部分という考え方であり、捲回体の場合と同じである。
【0032】
上記説明より、実施の形態1にかかるスタックケース1では、ロワケース10の第1の壁面11を第2の壁面12よりも高く設計することで、鋳造時に用いる鋳造型において、第1の壁面11と底面16とのなす角を略直角にしながら第1の壁面11の内側面を型割れ水平線CL1と直交する垂直線に対して傾けて抜き勾配を設定できる。これにより、鋳造後に形成されるロワケース10に対して切削加工をおこなうことなく、底面16に対して略垂直な第1の壁面11を形成することができる。つまり、実施の形態1にかかるロワケース10では、切削加工を簡略化して工程数を削減することができる。
【0033】
また、ロワケース10では、第1の壁面11の高さH0を加圧必要部分の高さH1以上とすることで、電池スタック31、32に対する圧縮力の維持能力を高めることができる。また、第1の壁面11の高さH0をセルケース50の高さH2よりも低く設定することで、電池スタック31、32をロワケース10に挿入する際に、電池セルの電極がケースに接触することで生じる短絡リスクを低減することができる。さらに、第1の壁面11の高さH0を高さH1と高さH2の範囲でできるだけ高くすることで第1の壁面11以下の高さで設定される第2の壁面12の高さをできるだけ高くすることができる。このように第2の壁面12の高さをできるだけ高くすることで、端子から引き出される配線を配置する配線スペースの確保と電池スタックに対する防水性能の向上を実現することができる。
【0034】
また、ロワケース10は、鋳造により成形することで、ロワケース10全体を一体成形することができるため、凹部側からの押し圧力に対して高い強度を確保することが可能になる。
【0035】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1のスタックケース1で用いられるエンドプレート41、42の形状について説明する。そこで、
図8に実施の形態2にかかるスタックケースの上面図を示す。
【0036】
図8に示すように、ロワケース10には、1つの組電池として機能する電池スタックが2列に分割されて配置される。そして、一方の電池スタック32の積層方向の長さが他方の電池スタック31の積層方向の長さよりも短く設定される。そして、エンドプレート41、42は、電池スタック31、32のそれぞれに対して同一形状の独立した治具として備え付けられる。
【0037】
このように、ロワケース10内に電池スタックを分割して配置される場合、隣り合う電池スタックの積層方向の長さを変えることで、エンドプレート41、42を異なる位置に配置することが可能になる。これにより、エンドプレート41、42をロワケース10に締結する部分の底面16からの高さを揃えることができる。そして、これにより、エンドプレート41、42として、同一の形状の部材を利用することが可能になるため部品調達及び管理のコストを低減することができる。
【0038】
例えば、エンドプレート41、42をロワケース10に固定する位置の第1の壁面11からの距離が同じ場合、エンドプレート41とエンドプレート42が隣り合う部分においてエンドプレート41のボルト締め部分とエンドプレート42のボルト締め部分が重なり合うため、エンドプレート41、42の形状のうち重なり合う部分の形状を異なるものにしなければならない。このような場合、エンドプレート41、42として同一形状の部材を利用することが出来ず部品管理点数が増加する問題が生じる。
【0039】
また、
図8に示すように、ロワケース10では、エンドプレート41、42と第2の壁面12との間に隙間が生じるため、この空きスペースに電池スタック31、32に付随して必要になる電子回路基板等の機器を収納することができる。これにより、従来スタックケース1の外側に設置していた機器についてもロワケース10による防水機能を付与できるとともにスタックケース1を含むシステムの体積を削減することができる。なお、機器スペースは、積層方向の長さが短い電池スタック32側に少なくとも設けられていれば良い。また、エンドプレート41、42と第2の壁面12との間に隙間は、エンドプレート41側の隙間と、エンドプレート42側の隙間で大きさが異なる。そのため、様々な大きさの機器があっても、スペースを有効活用して効率的に配置することができる。
【0040】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかるスタックケース1で用いられるアッパーケース20について詳細に説明する。そこで、
図9に実施の形態3にかかるスタックケースの断面図を示す。
図9は、
図1のIX-IX線に沿ったスタックケース1の断面図である。また、
図9では、ロワケース10にアッパーケース20が被せられた状態の断面図を示した。
【0041】
図9に示すように、アッパーケース20は、セルケース50の上面(例えば、セルケース50の蓋側)であって、電池セルの極柱の間の部分を押え付けるように形成されたたわみ部21を有する。また、このたわみ部21は、電池スタックの積層方向に延在するように設けられ、電池スタックを構成する全電池セルの同一部分に下側の押し圧力を加える。
【0042】
このように、アッパーケース20にたわみ部21を設けることで、電池スタックの浮き、或いは、電池セルの個別の高さ方向の位置ずれを抑制することができる。また、アッパーケース20にたわみ部21を設けることで、電池スタック又は電池セルの浮きを防止するための部材が不要となるため、スタックケース1に覆われた組電池を構成する際の部品点数を削減することができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 スタックケース
10 ロワケース
11 第1の壁面
12 第2の壁面
13 側壁
14 側壁
15 内部隔壁
16 底面
20 アッパーケース
21 たわみ部
31 電池スタック
32 電池スタック
41 エンドプレート
42 エンドプレート
50 セルケース
51 電力体
FL 嵌合線
HL 水平線
BL 底面線
CL1 型割れ水平線
CL2 型割れ水平線