IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マルチコプタ 図1
  • 特開-マルチコプタ 図2
  • 特開-マルチコプタ 図3
  • 特開-マルチコプタ 図4
  • 特開-マルチコプタ 図5
  • 特開-マルチコプタ 図6
  • 特開-マルチコプタ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182566
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】マルチコプタ
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/18 20060101AFI20221201BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20221201BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221201BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221201BHJP
   B64D 27/04 20060101ALI20221201BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221201BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221201BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64D27/24
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/04
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090187
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA04
5G503DA19
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AS11
5H030BB01
5H030BB10
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】障害物の存在する飛行経路を安定して飛行できるマルチコプタを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、マルチコプタ1において、制御部32は、電池残量jWsoc%や電池残量sWsoc%を算出する。そして、制御部32は、算出した電池残量jWsoc%や電池残量sWsoc%が満充電量FC以下である場合には、エンジン発電ユニット12のジェネレータ42で発電した電力をバッテリ31に供給してバッテリ31を充電し、マルチコプタ1が障害物に到達する前に電池残量soc%を電池残量jWsoc%以上または電池残量sWsoc%以上にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラと、前記プロペラを回転させるために駆動するモータと、前記モータを駆動させる電力を充放電可能なバッテリと、前記モータと前記バッテリに供給する前記電力を発電する発電機と、を有するマルチコプタにおいて、
前記マルチコプタの飛行経路に存在する障害物を検出する障害物検出部と、
前記マルチコプタの全体を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記マルチコプタが前記障害物検出部により検出した前記障害物の上空を通過するために必要な前記バッテリの充電量である上空通過必要充電量を算出し、
算出した前記上空通過必要充電量が前記バッテリの充電量の通常の使用範囲の最大値である満充電量以下である場合には、前記発電機が発電した前記電力を前記バッテリに充電して、前記マルチコプタが前記障害物に到達する前に前記バッテリの充電量を前記上空通過必要充電量以上にすること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項2】
請求項1のマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記上空通過必要充電量と、前記マルチコプタが前記障害物の迂回するために必要な前記バッテリの充電量である迂回必要充電量と、を比較し、前記迂回必要充電量が前記上空通過必要充電量未満である場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項3】
請求項1のマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物に到達した時点の前記バッテリの充電量である到達時充電量と、前記上空通過必要充電量と、を比較し、前記到達時充電量が前記上空通過必要充電量未満である場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つのマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物に到達するまでに前記バッテリの充電量を前記満充電量以上にした後に、前記障害物の上空を通過するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つのマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物として水上の上空を通過する場合には、前記マルチコプタが陸上の上空を通過する場合よりも、前記マルチコプタの高度を下げること、
を特徴とするマルチコプタ。
【請求項6】
請求項1のマルチコプタにおいて、
前記制御部は、前記上空通過必要充電量が前記満充電量よりも多い場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、
を特徴とするマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコプタに関する文献として、特許文献1には、バッテリと、このバッテリに電力を供給する発電機(エンジンで駆動するモータ)と、から成るハイブリッドシステムを有するマルチコプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチコプタの飛行経路には建物や池などの障害物が存在する場合があるが、このような場合でも、マルチコプタが安定して障害物を通過できる技術が求められる。例えば、特許文献1に開示されるマルチコプタが障害物の上空を通過するときに、発電機が異常停止した場合でも、バッテリの電力のみでマルチコプタが障害物の上空を通過できるように、マルチコプタが障害物の存在する飛行経路を安定して飛行できることが求められる。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、障害物の存在する飛行経路を安定して飛行できるマルチコプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、プロペラと、前記プロペラを回転させるために駆動するモータと、前記モータを駆動させる電力を充放電可能なバッテリと、前記モータと前記バッテリに供給する前記電力を発電する発電機と、を有するマルチコプタにおいて、前記マルチコプタの飛行経路に存在する障害物を検出する障害物検出部と、前記マルチコプタの全体を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物検出部により検出した前記障害物の上空を通過するために必要な前記バッテリの充電量である上空通過必要充電量を算出し、算出した前記上空通過必要充電量が前記バッテリの充電量の通常の使用範囲の最大値である満充電量以下である場合には、前記発電機が発電した前記電力を前記バッテリに充電して、前記マルチコプタが前記障害物に到達する前に前記バッテリの充電量を前記上空通過必要充電量以上にすること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、マルチコプタが障害物に到達する前に、バッテリの充電量についてバッテリの電力のみで障害物の上空をマルチコプタが通過するために必要な量以上にしておく。そのため、マルチコプタが障害物の上空を通過しているときに発電機が異常停止した場合でも、マルチコプタはバッテリの電力のみで障害物に衝突することなく障害物の上空を通過できる。したがって、マルチコプタは、飛行経路に障害物が存在しても安定して飛行できる。
【0008】
上記の態様においては、前記制御部は、前記上空通過必要充電量と、前記マルチコプタが前記障害物の迂回するために必要な前記バッテリの充電量である迂回必要充電量と、を比較し、前記迂回必要充電量が前記上空通過必要充電量未満である場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、バッテリの電力消費を抑えて、マルチコプタは障害物の存在する経路を効率よく飛行できる。
【0010】
上記の態様においては、前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物に到達した時点の前記バッテリの充電量である到達時充電量と、前記上空通過必要充電量と、を比較し、前記到達時充電量が前記上空通過必要充電量未満である場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、マルチコプタが障害物に到達した時点にてバッテリの電力のみでマルチコプタが障害物の上空を通過することが難しいと判断された場合に、マルチコプタが障害物を迂回するように制御する。これにより、マルチコプタは、より確実に、障害物の存在する経路を安定して飛行できる。
【0012】
上記の態様においては、前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物に到達するまでに前記バッテリの充電量を前記満充電量以上にした後に、前記障害物の上空を通過するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、マルチコプタが障害物の上空を通過しているときに、例えば風などの予期せぬ外乱の影響によりマルチコプタの飛行に必要な電力が当初の予想以上に多くなったとしても、確実にマルチコプタは障害物の上空を通過できる。
【0014】
上記の態様においては、前記制御部は、前記マルチコプタが前記障害物として水上の上空を通過する場合には、前記マルチコプタが陸上の上空を通過する場合よりも、前記マルチコプタの高度を下げること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、マルチコプタが水上の上空を通過した後にて着陸するときに、マルチコプタを着陸させるために必要な電力を抑えることができる。そのため、マルチコプタを安定して着陸させることができる。また、マルチコプタを着陸させるために必要な電力以外の電力をマルチコプタの飛行に使用できるので、マルチコプタの飛行距離を増加させることができる。
【0016】
上記の態様においては、前記制御部は、前記上空通過必要充電量が前記満充電量よりも多い場合には、前記障害物を迂回するように前記マルチコプタの飛行を制御すること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、バッテリの充電量を満充電量にしてもバッテリの電力のみで障害物の上空をマルチコプタが通過することができないおそれがある場合に、障害物を迂回するようにマルチコプタの飛行を制御する。そのため、マルチコプタは、障害物の存在する経路を安定して飛行できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示のマルチコプタによれば、障害物の存在する飛行経路を安定して飛行できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のマルチコプタの外観斜視図である。
図2】本実施形態のマルチコプタの構成を示すブロック図である。
図3】第1実施例の制御内容を示すフローチャート図である。
図4】マルチコプタの飛行経路に高度の障害物が存在する例を示す図である。
図5】マルチコプタの飛行経路に水上が存在する例を示す図である。
図6】第2実施例の制御内容を示すフローチャート図である。
図7】第3実施例の制御内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示のマルチコプタの実施形態について説明する。
【0021】
<マルチコプタの概要>
まず、本実施形態のマルチコプタ1の概要について説明する。
【0022】
(マルチコプタの構成)
図1に示すように、本実施形態のマルチコプタ1は、機体11とエンジン発電ユニット12を有する。
【0023】
機体11には、プロペラ21とモータ22と機体本体部23が設けられている。
【0024】
プロペラ21は、複数設けられている。そして、この複数のプロペラ21を回転させることにより、マルチコプタ1は飛行する。
【0025】
モータ22は、各々のプロペラ21に設けられ、プロペラ21を回転させるために駆動する。モータ22は、図2に示すように、後述するESC34(インバータ(不図示))とパワーコントロールユニット33とを介して、後述するバッテリ31やジェネレータ42に電気的に接続されている。これにより、ジェネレータ42にて発電された電力やバッテリ31から放電される電力が、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22に供給される。
【0026】
機体本体部23には、図2に示すように、バッテリ31と、制御部32と、パワーコントロールユニット33と、ESC(Electric Speed Controller)34と、位置情報システム部35などが設けられている。
【0027】
バッテリ31は、電力を充放電可能な充放電部(二次電池、蓄電池)である。図2に示すように、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33を介して、ジェネレータ42と電気的に接続されており、ジェネレータ42で発電された電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を充電する。また、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22と電気的に接続されており、モータ22に供給する電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を放電する。
【0028】
制御部32は、小型のコンピュータとして構成されており、マルチコプタ1の全体を制御する。例えば、制御部32は、エンジン41の駆動を制御して、ジェネレータ42での発電を制御する。
【0029】
パワーコントロールユニット33は、モータ22へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット33は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給および受給を行ったり、ESC34へ電力を供給したりする。
【0030】
ESC34は、モータ22の回転数を制御する装置である。このESC34は、パワーコントロールユニット33から供給される電力を、駆動電力として、モータ22に供給する。
【0031】
位置情報システム部35は、例えば不図示のGPSから得られる情報などをもとに、マルチコプタ1の飛行経路に存在する障害物を検出する。なお、位置情報システム部35は、本開示の「障害物検出部」の一例である。
【0032】
エンジン発電ユニット12は、図1図2に示すように、エンジン41とジェネレータ(すなわち、発電機)42を備えている。エンジン41は、ジェネレータ42の動力源であって、例えば、小型のディーゼルエンジンやレシプロエンジンなどである。すなわち、エンジン41は、モータ22とバッテリ31に供給する電力をジェネレータ42で発電するために駆動する。
【0033】
また、本実施形態のマルチコプタ1においては、モータ22とバッテリ31とエンジン41によりシリーズハイブリッドシステムが構成されている。すなわち、マルチコプタ1においては、エンジン41が発電のみに使用され、モータ22がプロペラ21の駆動に使用され、さらに電力を回収するためのバッテリ31を有するシステムが構成されている。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電し、発電した電力でモータ22を駆動してプロペラ21を駆動することにより、飛行する。また、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電した際の余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてモータ22の駆動に用いる。
【0034】
(マルチコプタの作用)
このような構成のマルチコプタ1は、モータ22に電力を供給し、複数のプロペラ21を回転させることにより飛行する。そして、プロペラ21の回転数を制御し、プロペラ21の回転によって得られる揚力をマルチコプタ1自体の重力とバランスさせることで、マルチコプタ1のホバリング飛行や前進・後進・左右移動飛行を実現させることができる。また、プロペラ21により発生させる揚力を大きくしてマルチコプタ1の上昇飛行を実現
させることができ、プロペラ21により発生させる揚力を小さくしてマルチコプタ1の下降飛行を実現させることができる。
【0035】
<障害物に対する制御について>
本実施形態では、障害物に対する制御として、マルチコプタ1の飛行経路に障害物が存在しても安定して飛行できるような制御が行なわれる。
【0036】
〔第1実施例〕
そこで、まず、第1実施例の制御について説明する。
【0037】
(制御内容)
本実施例では、制御部32は、図3に示す制御を行う。図3に示すように、まず、制御部32は、燃料残量fuel%と電池残量soc%と飛行高度差Δhmを取込み、飛行可能距離ΔDを求める(ステップS1)。
【0038】
ここで、燃料残量fuel%は、マルチコプタ1に設けられた不図示の燃料タンクに貯留される燃料の残量である。また、電池残量soc%は、バッテリ31の充電量(SOC、State Of Charge)である。
【0039】
次に、制御部32は、位置情報システム部35より、マルチコプタ1の飛行経路において、目的地までに存在する障害物(例えば、高層ビルや山や水上など)の情報を入手する(ステップS2)。このようにして、本実施例では、位置情報システム部35により障害物が検出される。
【0040】
次に、制御部32は、障害物は高度の障害物(例えば、高層ビルや山など)であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0041】
そして、制御部32は、障害物は高度の障害物であると判断した場合(ステップS3:YES)には、マルチコプタ1が高度の障害物を跳び越すために(すなわち、高度の障害物の上空を通過するために)必要な電力消費量jWを求める(ステップS4)。また、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物を迂回するために必要な電力消費量dWを求める(ステップS5)。
【0042】
次に、制御部32は、電力消費量dWが電力消費量jW以上であるか否かを判断する(ステップS6)。
【0043】
そして、制御部32は、電力消費量dWが電力消費量jW以上であると判断した場合(ステップS6:YES)、すなわち、電力消費量jWが電力消費量dW以下であると判断した場合には、電力消費量jWに必要な電池残量jWsoc%を求める(ステップS7)。
【0044】
ここで、ステップS6において「電力消費量dWが電力消費量jW以上であると判断した場合(すなわち、電力消費量jWが電力消費量dW以下であると判断した場合)」とは、マルチコプタ1が高度の障害物を迂回する場合よりも跳び越す場合の方が電力消費量が少ない場合、あるいは、マルチコプタ1が高度の障害物を迂回する場合と跳び越す場合とで電力消費量が同じである場合である。
【0045】
また、ステップS7において「電力消費量jWに必要な電池残量jWsoc%」とは、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物を跳び越すために(すなわち、高度の障害物の上空を通過するために)必要なバッテリ31の充電量である。
【0046】
このようにして、制御部32は、ステップS7において、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量jWsoc%を算出する。なお、電池残量jWsoc%は、本開示の「上空通過必要充電量」の一例である。
【0047】
次に、制御部32は、電池残量jWsoc%が満充電量FC(例えば、SOC=90%)以下であるか否かを判断する(ステップS8)。ここで、満充電量FCは、バッテリ31の充電量の通常の使用範囲の最大値である。
【0048】
そして、制御部32は、電池残量jWsoc%が満充電量FC以下であると判断した場合(ステップS8:YES)には、マルチコプタ1が高度の障害物に到着するまでに電池残量soc%を電池残量jWsoc%以上にするために、充放電飛行制御を行う(ステップS9)。ここで、充放電飛行制御は、エンジン発電ユニット12のジェネレータ42が発電した電力をバッテリ31に充電する制御である。
【0049】
このようにして、ステップS8とステップS9において、制御部32は、ステップS7にて算出した電池残量jWsoc%が満充電量FC以下である場合には、エンジン発電ユニット12のジェネレータ42が発電した電力をバッテリ31に充電して、マルチコプタ1が高度の障害物に到達する前に電池残量soc%を電池残量jWsoc%以上にする。
【0050】
次に、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物(すなわち、高度の障害物の直前の位置、図4のa点の位置)に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量jWsoc%以上であるか否かを判断する(ステップS10)。なお、「マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%」は、本開示の「到達時充電量」の一例である。
【0051】
そして、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量jWsoc%以上であると判断した場合(ステップS10:YES)には、マルチコプタ1は高度の障害物を飛び越えることができると判断して、高度の障害物の上空を通過(直性飛行)するようにマルチコプタ1の飛行を制御する(ステップS11)。
【0052】
一方、制御部32は、マルチコプタ1が障害物に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量jWsoc%未満であると判断した場合(ステップS10:NO)には、障害物である高度の障害物を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)、すなわち、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0053】
なお、ステップS12において、制御部32は、電池残量soc%を、マルチコプタ1が現在の飛行高度差Δhmから電池残量soc%のみで着陸(降下)出来るようにするために必要な電池残量hsoc%以上にするために、充放電飛行制御を行っておく。
【0054】
このようにして、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%と、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量jWsoc%と、を比較する。そして、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%が電池残量jWsoc%未満である場合には、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0055】
また、制御部32は、ステップS8において電池残量jWsoc%が満充電量FCよりも多いと判断した場合(ステップS8:NO)には、高度の障害物を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)。
【0056】
このようにして、制御部32は、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量jWsoc%が、満充電量FCよりも多い場合には、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0057】
また、制御部32は、ステップS6において電力消費量dWが電力消費量jW未満であると判断した場合(ステップS6:NO)には、高度の障害物を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)。
【0058】
このようにして、制御部32は、電力消費量jWと、電力消費量dWと、を比較し、電力消費量dWが電力消費量jW未満である場合には、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。言い換えると、制御部32は、電力消費量jWに必要な電池残量jWsoc%(すなわち、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量jWsoc%)と、電力消費量dWに必要な電池残量dWsoc%(すなわち、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物を迂回するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量dWsoc%)と、を比較し、電池残量dWsoc%が電池残量jWsoc%未満である場合には、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。なお、電池残量dWsoc%は、本開示の「迂回必要充電量」の一例である。
【0059】
また、制御部32は、ステップS3において障害物は高度の障害物でないと判断した場合(ステップS3:NO)には、障害物は水上であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0060】
そして、制御部32は、障害物は水上であると判断した場合(ステップS13:YES)には、マルチコプタ1が水上を跳び越すために(すなわち、水上の上空を通過するために)必要な電力消費量sWを求める(ステップS14)。
【0061】
次に、制御部32は、電力消費量sWに必要な電池残量sWsoc%を求める(ステップS15)。ここで、「電力消費量sWに必要な電池残量sWsoc%」とは、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が水上を跳び越すために(すなわち、水上の上空を通過するために)必要なバッテリ31の充電量である。
【0062】
このようにして、制御部32は、ステップS15において、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が水上の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量sWsoc%を算出する。なお、電池残量sWsoc%は、本開示の「上空通過必要充電量」の一例である。
【0063】
次に、制御部32は、電池残量sWsoc%が満充電量FC(例えば、SOC=90%)以下であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0064】
そして、制御部32は、電池残量sWsoc%が満充電量FC以下であると判断した場合(ステップS16:YES)には、マルチコプタ1が水上に到着するまでに電池残量soc%を電池残量sWsoc%以上にするために、充放電飛行制御を行う(ステップS17)。
【0065】
このようにして、ステップS16とステップS17において、制御部32は、ステップS15にて算出した電池残量sWsoc%が満充電量FC以下である場合には、エンジン発電ユニット12のジェネレータ42が発電した電力をバッテリ31に充電して、マルチコプタ1が水上に到達する前に電池残量soc%を電池残量sWsoc%以上にする。
【0066】
次に、制御部32は、マルチコプタ1が水上(すなわち、水上の直前の位置、図5のb点の位置)に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量sWsoc%以上であるか否かを判断する(ステップS18)。なお、「マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%」は、本開示の「到達時充電量」の一例である。
【0067】
そして、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量sWsoc%以上であると判断した場合(ステップS18:YES)には、マルチコプタ1は水上を飛び越えることができると判断して、水上の上空を通過(直性飛行)するようにマルチコプタ1の飛行を制御する(ステップS19)。
【0068】
一方、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%が、電池残量sWsoc%未満であると判断した場合(ステップS18:NO)には、障害物である水上を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)、すなわち、水上を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0069】
このようにして、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%と、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が水上の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量sWsoc%と、を比較する。そして、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%が電池残量sWsoc%未満である場合には、水上を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0070】
また、制御部32は、ステップS16において電池残量sWsoc%が満充電量FCよりも多いと判断した場合(ステップS16:NO)には、水上を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)。
【0071】
このようにして、制御部32は、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が水上の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量sWsoc%が、満充電量FCよりも多い場合には、水上を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0072】
また、制御部32は、ステップS13において障害物は水上でないと判断した場合(ステップS13:NO)、障害物を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS12)。
【0073】
(第1実施例の効果)
以上のように本実施例によれば、制御部32は、電池残量jWsoc%や電池残量sWsoc%を算出する。そして、制御部32は、算出した電池残量jWsoc%や電池残量sWsoc%が満充電量FC以下である場合には、エンジン発電ユニット12のジェネレータ42で発電した電力をバッテリ31に供給してバッテリ31を充電し、マルチコプタ1が障害物に到達する前に電池残量soc%を電池残量jWsoc%以上または電池残量sWsoc%以上にする。
【0074】
このようにして、本実施例では、マルチコプタ1が障害物に到達する前に、バッテリ31の充電量についてバッテリ31の電力のみで障害物の上空をマルチコプタ1が通過するために必要な量以上にしておく。そのため、マルチコプタ1が障害物の上空を通過しているときにエンジン発電ユニット12のジェネレータ42が異常停止した場合でも、マルチコプタ1はバッテリ31の電力のみで障害物に衝突することなく障害物の上空を通過できる。したがって、マルチコプタ1は、飛行経路に障害物が存在しても安定して飛行できる。
【0075】
また、制御部32は、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が高度の障害物の上空を通過するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量jWsoc%と、マルチコプタ1が高度の障害物を迂回するために必要なバッテリ31の充電量である電池残量dWsoc%と、を比較し、電池残量dWsoc%が電池残量jWsoc%未満である場合には、高度の障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0076】
これにより、バッテリ31の電力消費を抑えて、マルチコプタ1は高度の障害物の存在する経路を効率よく飛行できる。
【0077】
また、制御部32は、マルチコプタ1が障害物に到達した時点の電池残量soc%と、電池残量jWsoc%または電池残量sWsoc%と、を比較し、マルチコプタ1が障害物に到達した時点の電池残量soc%が電池残量jWsoc%未満または電池残量sWsoc%未満である場合には、障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0078】
このようにして、マルチコプタ1が障害物に到達した時点にてバッテリ31の電力のみでマルチコプタ1が障害物の上空を通過することが難しいと判断された場合に、マルチコプタ1が障害物を迂回するように制御する。これにより、マルチコプタ1は、より確実に、障害物の存在する経路を安定して飛行できる。
【0079】
制御部32は、電池残量jWsoc%または電池残量sWsoc%が、満充電量FCよりも多い場合には、障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0080】
このようにして、電池残量soc%を満充電量FCにしてもバッテリ31の電力のみで障害物の上空をマルチコプタ1が通過することができないおそれがある場合に、障害物を迂回するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。そのため、マルチコプタ1は、障害物の存在する経路を安定して飛行できる。
【0081】
〔第2実施例〕
次に、第2実施例の制御について、第1実施例の制御と異なる点を説明し、第1実施例の制御と共通する点の説明は省略する。
【0082】
本実施例では、図6に示すように、制御部32は、ステップS108において電池残量jWsoc%が第1満充電量FC1(例えば、SOC=90%)以下であると判断した場合(ステップS108:YES)には、マルチコプタ1が高度の障害物に到着するまでに電池残量soc%を第2満充電量FC2(例えば、SOC=95%)以上にするために、充放電飛行制御を行う(ステップS109)。ここで、第1満充電量FC1と第2満充電量FC2は、バッテリ31の充電量の通常の使用範囲の最大値である。また、第2満充電量FC2は、第1満充電量FC1よりも多いとする。
【0083】
次に、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物(すなわち、高度の障害物の直前の位置、図4のa点の位置)に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2以上であるか否かを判断する(ステップS110)。
【0084】
そして、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2以上であると判断した場合(ステップS110:YES)には、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1は高度の障害物を飛び越えることができると判断して、高度の障害物の上空を通過(直性飛行)するようにマルチコプタ1の飛行を制御する(ステップS111)。
【0085】
一方、制御部32は、マルチコプタ1が高度の障害物に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2未満であると判断した場合(ステップS110:NO)には、前記のステップS12と同様に、高度の障害物を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS112)。
【0086】
また、制御部32は、ステップS116において電池残量sWsoc%が第1満充電量FC1(例えば、SOC=90%)以下であると判断した場合(ステップS116:YES)には、マルチコプタ1が水上に到着するまでに電池残量soc%を第2満充電量FC2(例えば、SOC=95%)以上にするために、充放電飛行制御を行う(ステップS117)。
【0087】
次に、制御部32は、マルチコプタ1が水上(すなわち、水上の直前の位置、図5のb点の位置)に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2以上であるか否かを判断する(ステップS118)。
【0088】
そして、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2以上であると判断した場合(ステップS118:YES)には、バッテリ31の電力のみでマルチコプタ1は水上を飛び越えることができると判断して、水上の上空を通過(直性飛行)するようにマルチコプタ1の飛行を制御する(ステップS119)。また、このとき、本実施例では、制御部32は、マルチコプタ1が陸上の上空を飛行する場合よりも、マルチコプタ1の高度を下げて、マルチコプタ1を低空で飛行させる(ステップS119)。
【0089】
一方、制御部32は、マルチコプタ1が水上に到着した時点の電池残量soc%が、第2満充電量FC2未満であると判断した場合(ステップS118:NO)には、前記のステップS12と同様に、水上を避けてマルチコプタ1の迂回飛行を行う(ステップS112)。
【0090】
以上のように本実施例によれば、制御部32は、マルチコプタ1が障害物に到達するまでに電池残量soc%を第2満充電量FC2以上にした後に、障害物の上空を通過するようにマルチコプタ1の飛行を制御する。
【0091】
これにより、マルチコプタ1が障害物の上空を通過しているときに、例えば風などの予期せぬ外乱の影響によりマルチコプタ1の飛行に必要な電力が当初の予想以上に多くなったとしても、確実にマルチコプタ1は障害物の上空を通過できる。
【0092】
制御部32は、マルチコプタ1が障害物として水上の上空を通過する場合には、マルチコプタ1が陸上の上空を通過する場合よりも、マルチコプタ1の高度を下げる。
【0093】
これにより、マルチコプタ1が水上の上空を通過した後にて着陸するときに、マルチコプタ1を着陸させるために必要な電力を抑えることができる。そのため、マルチコプタ1を安定して着陸させることができる。また、マルチコプタ1を着陸させるために必要な電力以外の電力をマルチコプタ1の飛行に使用できるので、マルチコプタ1の飛行距離を増加させることができる。
【0094】
〔第3実施例〕
次に、第3実施例の制御について、第1,2実施例の制御と異なる点を説明し、第1,2実施例の制御と共通する点の説明は省略する。
【0095】
本実施例では、図7に示すように、制御部32は、ステップS207において、電力消費量jW+Aに必要な電池残量jWsoc%を求める(ステップS207)。ここで、「電力消費量jW+A」は、電力消費量jWに所定の電力消費量A(すなわち、マージン量)を加算した値である。また、「電力消費量jW+A」とする代わりに、「(電力消費量jW)×(1よりも大きい所定の比率)」としてもよい。このようにして、バッテリ31の電力のみで高度の障害物を跳び越すために必要な電池残量jWsoc%について十分にマージンを確保しておき、マルチコプタ1がより確実に高度の障害物の存在する経路を安定して飛行できるようにする。
【0096】
また、制御部32は、ステップS215において、電力消費量sW+Bに必要な電池残量sWsoc%を求める(ステップS215)。ここで、「電力消費量sW+B」は、電力消費量sWに所定の電力消費量B(すなわち、マージン量)を加算した値である。また、電力消費量Bは、電力消費量A以上である。また、「電力消費量sW+B」とする代わりに、「(電力消費量sW)×(1よりも大きい所定の比率)」としてもよい。このようにして、バッテリ31の電力のみで水上を跳び越すために必要な電池残量sWsoc%について十分にマージンを確保しておき、マルチコプタ1がより確実に水上の存在する経路を安定して飛行できるようにする。
【0097】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0098】
1 マルチコプタ
11 機体
12 エンジン発電ユニット
21 プロペラ
22 モータ
31 バッテリ
32 制御部
35 位置情報システム部
41 エンジン
42 ジェネレータ
soc% 電池残量
jW (マルチコプタが障害物を跳び越すために必要な)電力消費量
dW (マルチコプタが障害物を迂回するために必要な)電力消費量
sW (マルチコプタが水上を跳び越すために必要な)電力消費量
jWsoc% (電力消費量jWに必要な)電池残量
dWsoc% (電力消費量dWに必要な)電池残量
sWsoc% (電力消費量sWに必要な)電池残量
FC 満充電量
FC1 第1満充電量
FC2 第2満充電量
A 所定の電力消費量
B 所定の電力消費量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7