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特開2022-182573会計処理装置、会計処理方法、および、会計処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182573
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】会計処理装置、会計処理方法、および、会計処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/00 20120101AFI20221201BHJP
【FI】
G06Q40/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090199
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲士
(72)【発明者】
【氏名】藤本 慶輔
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB63
(57)【要約】
【課題】資金収支計算書の作成に必要な資金収支仕訳を、企業会計と同等の正味財産仕訳より自動生成する一取引二仕訳を実現することができる会計処理装置、会計処理方法、および、会計処理プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】伝票区分、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成し、変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタと、変換元の伝票区分、および、変換先の伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタとに基づいて、正味財産仕訳データを変換することで、伝票区分、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と制御部とを備えた会計処理装置であって、
前記記憶部は、
変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、
前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の前記伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、
を備え、
前記制御部は、
前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成手段と、
前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成手段と、
を備えたことを特徴とする会計処理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
前記勘定科目、発生期間、金額、ならびに、事業種別、事業拠点もしくはサービス種別を紐付けて設定した合計残高試算表ワークテーブルを記憶する合計残高試算表記憶手段と、
期首科目、期末科目、および、繰越勘定科目を紐付けて設定した期首紐付マスタを記憶する期首紐付記憶手段と、
を更に備え、
前記制御部は、
前記合計残高試算表ワークテーブル、および、前記期首紐付マスタに基づいて、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した、発生日を期首とする期首繰越仕訳データを作成する期首繰越仕訳作成手段、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の会計処理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記変換元の事業種別、および、前記変換先の前記事業種別を紐付けて設定した所属情報変換マスタを記憶する所属情報変換記憶手段、
を更に備え、
前記正味財産仕訳作成手段は、
前記伝票区分、前記事業種別、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記正味財産仕訳データを作成し、
前記資金収支仕訳作成手段は、
前記所属情報変換マスタ、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記事業種別、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記資金収支仕訳データを作成することを特徴とする請求項1に記載の会計処理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、
前記資金収支仕訳データ作成時に取り込まれた前記正味財産仕訳データの取込履歴を設定した取込伝票履歴テーブルを記憶する取込伝票履歴記憶手段、
を更に備え、
前記資金収支仕訳作成手段は、
前記取込伝票履歴テーブルに前記取込履歴が設定されていない前記正味財産仕訳データを用いて、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記資金収支仕訳データを作成し、当該正味財産仕訳データの取込履歴にて前記取込伝票履歴テーブルを更新することを特徴とする請求項1に記載の会計処理装置。
【請求項5】
前記取込履歴は、
前記正味財産仕訳データの取込日の記録であることを特徴とする請求項4に記載の会計処理装置。
【請求項6】
前記記憶部は、
前記正味財産仕訳データを含む仕訳データを記憶する仕訳記憶手段と、
合計設定の前記勘定科目、および、演算内容を紐付けて設定した合計科目範囲設定マスタを記憶する合計科目範囲設定記憶手段と、
を更に備え、
前記制御部は、
前記合計科目範囲設定マスタに基づいて、前記仕訳データから前記合計残高試算表ワークテーブルを作成する合計残高試算表作成手段、
を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の会計処理装置。
【請求項7】
記憶部と制御部とを備えた会計処理装置に実行させるための会計処理方法であって、
前記記憶部は、
変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、
前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の前記伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、
を備え、
前記制御部で実行させる、
前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成ステップと、
前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成ステップと、
を含むことを特徴とする会計処理方法。
【請求項8】
記憶部と制御部とを備えた会計処理装置に実行させるための会計処理プログラムであって、
前記記憶部は、
変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、
前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の前記伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、
を備え、
前記制御部において、
前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成ステップと、
前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成ステップと、
を実行させるための会計処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会計処理装置、会計処理方法、および、会計処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストック式正味財産増減計算書を作成する場合に要する1仕訳入力により、フロー式正味財産増減計算書も併せて作成可能とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-171908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明においては、公益法人の資金収支計算書の作成に必要な資金収支仕訳を、正味財産仕訳より自動生成することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、資金収支計算書の作成に必要な資金収支仕訳を、企業会計と同等の正味財産仕訳より自動生成する一取引二仕訳を実現することができる会計処理装置、会計処理方法、および、会計処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る会計処理装置は、記憶部と制御部とを備えた会計処理装置であって、前記記憶部は、変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、を備え、前記制御部は、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成手段と、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る会計処理装置において、前記記憶部は、前記勘定科目、発生期間、金額、ならびに、事業種別、事業拠点もしくはサービス種別を紐付けて設定した合計残高試算表ワークテーブルを記憶する合計残高試算表記憶手段と、期首科目、期末科目、および、繰越勘定科目を紐付けて設定した期首紐付マスタを記憶する期首紐付記憶手段と、を更に備え、前記制御部は、前記合計残高試算表ワークテーブル、および、前記期首紐付マスタに基づいて、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した、発生日を期首とする期首繰越仕訳データを作成する期首繰越仕訳作成手段、を更に備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る会計処理装置において、前記記憶部は、前記変換元の事業種別、および、前記変換先の前記事業種別を紐付けて設定した所属情報変換マスタを記憶する所属情報変換記憶手段、を更に備え、前記正味財産仕訳作成手段は、前記伝票区分、前記事業種別、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記正味財産仕訳データを作成し、前記資金収支仕訳作成手段は、前記所属情報変換マスタ、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記事業種別、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記資金収支仕訳データを作成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る会計処理装置において、前記記憶部は、前記資金収支仕訳データ作成時に取り込まれた前記正味財産仕訳データの取込履歴を設定した取込伝票履歴テーブルを記憶する取込伝票履歴記憶手段、を更に備え、前記資金収支仕訳作成手段は、前記取込伝票履歴テーブルに前記取込履歴が設定されていない前記正味財産仕訳データを用いて、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、前記金額を紐付けて設定した前記資金収支仕訳データを作成し、当該正味財産仕訳データの取込履歴にて前記取込伝票履歴テーブルを更新することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る会計処理装置において、前記取込履歴は、前記正味財産仕訳データの取込日の記録であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る会計処理装置において、前記記憶部は、前記正味財産仕訳データを含む仕訳データを記憶する仕訳記憶手段と、合計設定の前記勘定科目、および、演算内容を紐付けて設定した合計科目範囲設定マスタを記憶する合計科目範囲設定記憶手段と、を更に備え、前記制御部は、前記合計科目範囲設定マスタに基づいて、前記仕訳データから前記合計残高試算表ワークテーブルを作成する合計残高試算表作成手段、を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る会計処理方法は、記憶部と制御部とを備えた会計処理装置に実行させるための会計処理方法であって、前記記憶部は、変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の前記伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、を備え、前記制御部で実行させる、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成ステップと、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る会計処理プログラムは、記憶部と制御部とを備えた会計処理装置に実行させるための会計処理プログラムであって、前記記憶部は、変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の前記勘定科目を紐付けて設定した科目情報変換マスタを記憶する科目情報変換記憶手段と、前記変換元の前記伝票区分、および、前記変換先の前記伝票区分を紐付けて設定した伝票区分変換マスタを記憶する伝票区分変換記憶手段と、を備え、前記制御部において、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成する正味財産仕訳作成ステップと、前記科目情報変換マスタ、および、前記伝票区分変換マスタに基づいて、前記正味財産仕訳データを変換することで、前記伝票区分、前記勘定科目、前記貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成する資金収支仕訳作成ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、日々の仕訳入力について、正味財産計算表ベースの勘定科目による仕訳作成ができ、その入力仕訳を元に、資金収支仕訳を自動作成することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、事業、拠点またはサービス等の会計単位毎に、一般正味財産期末残高および指定正味財産期末残高を集計し、翌期の一般正味財産期首残高および指定正味財産期首残高への繰越仕訳を起票することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、標準機能を活用することで公益法人会計基準への対応が可能であるという効果を奏する。また、本発明によれば、公益法人だけでなく、社会福祉法人または学校法人等の他の非営利法人の会計処理への対応も可能となるという効果を奏する。また、本発明によれば、公益法人において、企業会計レベルの管理会計等の最新機能やノウハウを活用できるという効果を奏する。また、本発明によれば、早期に安全に公益法人に求められている要件を満たすことができるという効果を奏する。また、本発明によれば、期末時点の正味残高(企業における純資産)を、寄付金や補助金等から構成される指定正味財産と、事業活動により蓄積される一般正味財産に分類して自動繰越することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、仕訳マップを用いた一取引二仕訳を実現し、期末正味残高を指定正味財産と一般正味財産に分類して自動繰越を行うことができるという効果を奏する。また、繰越仕訳は、会計単位ごとに起票する必要があり、例えば、94の会計単位にて管理している場合、毎期、94×2仕訳(一般および正味)=188仕訳の入力作業が必要であるが、本発明によれば、繰越勘定(ダミー)は期末残高を振替るための便宜上の勘定科目として、通常使用しないダミーの繰越勘定科目を作成し、繰越金額を合計科目設定にて集計し、集計結果からの繰越仕訳を自動化することで、繰越仕訳の入力負荷を解消することができるという効果を奏する。また、公益法人会計基準における資金収支仕訳の計上科目については、取引に伴う資金の発生貸借によって計上科目を分ける必要があり、訂正取引により貸借発生が逆転している取引を考慮する必要があるが、本発明によれば、訂正伝票と貸借区分とを考慮した自動仕訳を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態における会計処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における一取引二仕訳処理の一例を示すフロー図である。
図3図3は、本実施形態における一取引二仕訳処理の一例を示すフロー図である。
図4図4は、本実施形態における一取引二仕訳処理の一例を示すフロー図である。
図5図5は、本実施形態における正味財産繰越仕訳自動計上処理の一例を示すフロー図である。
図6図6は、本実施形態における正味財産繰越仕訳自動計上処理の一例を示すフロー図である。
図7図7は、本実施形態における正味財産繰越仕訳自動計上処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態により限定されるものではない。
【0017】
[1.概要]
まず、本発明の概要を説明する。
【0018】
補助金等の交付を受けている公益法人については、交付元(地方公共団体等)より、資金収支計算書(新会計基準では計算書類からは除外)の提出を求められるケースがあり、この資金収支計算書が資金(現預金等)の増減理由を表す計算書であり、正味財産増減計算書や貸借対照表とは別の勘定科目を使用するため、資金収支を伴う取引については一取引につき二種類の仕訳計上:「一取引二仕訳」が必要となる。
【0019】
従来の資金収支仕訳おいては、正味財産仕訳とは勘定科目が異なり、且つ、発生貸借によって勘定科目が変わり、訂正伝票による貸借逆転も考慮する必要があるため、正味財産仕訳(企業会計と同様の仕訳)より資金収支仕訳を生成することが、困難であった。
【0020】
そこで、本実施形態においては、いずれかの仕訳を入力することで、もう一方の仕訳も自動的に計上する「一取引二仕訳」を、仕訳マップを活用することで実現する仕組みを提供している。また、本実施形態においては、仕訳パターンや訂正仕訳を自動判断するだけでなく、仕訳変換済伝票の重複チェックをする仕組みも提供している。
【0021】
また、公益法人会計基準では、「正味財産(=企業会計における純資産)」については、寄付金や補助金を源泉とする「指定正味財産」と、事業活動から発生する「一般正味財産」とに区分して集計し、前年度からの増減を対比して計算書類に表示する必要がある。
【0022】
従来、正味財産を指定と一般とに分類して繰り越す処理は、事業、拠点またはサービス等の会計単位毎に行う必要があり、事業、拠点、サービスが多い法人の場合、仕訳入力の負荷が高く、自動化するにも作り込みの負荷が大きかった。
【0023】
そこで、本実施形態においては、合計科目設定と汎用連携ツールとを活用して、これらの繰越処理の自動化を実現する仕組みを提供している。
【0024】
[2.構成]
本実施形態に係る会計処理装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態における会計処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、会計処理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、会計処理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0026】
会計処理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。会計処理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0027】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、会計処理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、会計処理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。
【0028】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(タッチパネルを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、およびマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114またはプリンタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0029】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、およびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。記憶部106は、伝票区分マスタ106aと科目情報変換マスタ106bと伝票区分変換マスタ106cと所属情報変換マスタ106dと取込伝票履歴テーブル106eと仕訳データベース106fと合計科目範囲設定マスタ106gと書式設定マスタ106hと合計残高試算表ワークテーブル106iと期首紐付マスタ106jとを備えている。
【0030】
伝票区分マスタ106aは、伝票区分を設定したマスタである。ここで、伝票区分マスタ106aは、伝票区分識別子、および、伝票区分の意味内容が設定されていてもよい。
【0031】
科目情報変換マスタ106bは、変換元の勘定科目、伝票区分および貸借区分、ならびに、変換先の勘定科目を紐付けて設定したマスタである。
【0032】
伝票区分変換マスタ106cは、変換元の伝票区分、および、変換先の伝票区分を紐付けて設定したマスタである。
【0033】
所属情報変換マスタ106dは、変換元の事業種別、および、変換先の事業種別を紐付けて設定したマスタである。
【0034】
取込伝票履歴テーブル106eは、資金収支仕訳データ作成時に取り込まれた正味財産仕訳データの取込履歴を設定したテーブルである。ここで、取込履歴は、正味財産仕訳データの取込日の記録であってもよい。また、取込伝票履歴テーブル106eは、伝票識別子、取込日、および/または、取込ユーザが紐付けて設定されていてもよい。
【0035】
仕訳データベース106fは、仕訳データを記憶する。ここで、仕訳データは、正味財産仕訳データ、資金収支仕訳データ、および/または、期首繰越仕訳データ等を含んでいてもよい。
【0036】
合計科目範囲設定マスタ106gは、合計設定の勘定科目、および、演算内容を紐付けて設定したマスタであってもよい。ここで、合計科目範囲設定マスタ106gは、合計設定、演算内容、および/または、金額が紐付けて設定されていてもよい。
【0037】
書式設定マスタ106hは、ワークテーブルの書式を設定したマスタである。ここで、書式設定マスタ106hは、書式識別子、印字科目、網掛区分、および/または、印字順等が紐付けて設定されていてもよい。
【0038】
合計残高試算表ワークテーブル106iは、勘定科目、発生期間、金額、ならびに、事業種別、事業拠点もしくはサービス種別を紐付けて設定したワークテーブルであってもよい。
【0039】
期首紐付マスタ106jは、期首科目、期末科目、および、繰越勘定科目を紐付けて設定したマスタであってもよい。
【0040】
制御部102は、会計処理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部102は、機能概念的に、仕訳作成部102aと合計残高試算表作成部102bとを備えている。
【0041】
仕訳作成部102aは、仕訳データを作成する。ここで、仕訳作成部102aは、伝票区分、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成してもよい。また、仕訳作成部102aは、伝票区分、事業種別、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した正味財産仕訳データを作成してもよい。また、仕訳作成部102aは、科目情報変換マスタ106b、および、伝票区分変換マスタ106cに基づいて、正味財産仕訳データを変換することで、伝票区分、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成してもよい。また、仕訳作成部102aは、所属情報変換マスタ106d、科目情報変換マスタ106b、および、伝票区分変換マスタ106cに基づいて、正味財産仕訳データを変換することで、伝票区分、事業種別、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成してもよい。また、仕訳作成部102aは、取込伝票履歴テーブル106eに取込履歴が設定されていない正味財産仕訳データを用いて、科目情報変換マスタ106b、および、伝票区分変換マスタ106cに基づいて、正味財産仕訳データを変換することで、伝票区分、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した資金収支仕訳データを作成し、当該正味財産仕訳データの取込履歴にて取込伝票履歴テーブル106eを更新してもよい。また、仕訳作成部102aは、合計残高試算表ワークテーブル106i、および、期首紐付マスタ106jに基づいて、勘定科目、貸借区分、および、金額を紐付けて設定した、発生日を期首とする期首繰越仕訳データを作成してもよい。また、仕訳作成部102aは、仕訳データを仕訳データベース106fに登録してもよい。
【0042】
合計残高試算表作成部102bは、仕訳データから合計残高試算表ワークテーブル106iを作成する。ここで、合計残高試算表作成部102bは、合計科目範囲設定マスタ106gに基づいて、仕訳データから合計残高試算表ワークテーブル106iを作成してもよい。また、合計残高試算表作成部102bは、合計残高試算表ワークテーブル106iを記憶部106に格納してもよい。
【0043】
[3.具体例]
本実施形態の具体例について、図2から図7を参照して説明する。
【0044】
[一取引二仕訳処理]
ここで、図2から図4を参照して、本実施形態における一取引二仕訳処理(資金収支仕訳自動作成処理)の一例について説明する。図2から図4は、本実施形態における一取引二仕訳処理の一例を示すフロー図である。
【0045】
図2に示すように、仕訳作成部102aは、ユーザにより入力装置112を介して、伝票区分を含む、貸借対照表・正味財産増減計算書作成用の仕訳項目が入力された場合、当該仕訳項目、および、伝票区分マスタ106aに基づいて、伝票番号、発生日、伝票区分、事業種別、勘定科目、貸借区分、金額および摘要を設定した正味財産の仕訳明細データ(正味財産仕訳データ)を作成し、当該正味財産仕訳データを仕訳データベース106fに登録する(ステップSA-1)。
【0046】
そして、図3に示すように、仕訳作成部102aは、仕訳マップ仕訳外部データ受入処理として、取込伝票履歴テーブル106eに取込履歴が設定されていない正味財産仕訳データを用いて、科目情報変換マスタ106b、伝票区分変換マスタ106c、および、所属情報変換マスタ106dに基づいて、勘定科目、伝票区分および貸借区分をキーとして正味財産仕訳データを変換(科目変換)することで、伝票番号、発生日、伝票区分、事業種別、勘定科目、貸借区分、金額および摘要を紐付けて設定した資金収支の仕訳明細データ(資金収支仕訳データ)を作成し、当該正味財産仕訳データの取込履歴にて取込伝票履歴テーブル106eを更新する(ステップSA-2)。
【0047】
そして、図4に示すように、仕訳作成部102aは、正味財産仕訳データに基づいて、正味財産計算書、正味財産内訳表、貸借対照表および貸借対照内訳表の帳票データを出力装置114に出力させ、資金収支仕訳データに基づいて、資金収支計算書および資金収支内訳表の帳票データを出力装置114に出力させ(ステップSA-3)、処理を終了する。
【0048】
[正味財産繰越仕訳自動計上処理]
また、図5から図7を参照して、本実施形態における正味財産繰越仕訳自動計上処理の一例について説明する。図5から図7は、本実施形態における正味財産繰越仕訳自動計上処理の一例を示すフロー図である。
【0049】
図5に示すように、合計残高試算表作成部102bは、合計科目範囲設定マスタ106g、および、合計残高試算表の書式設定マスタ106hに基づいて、仕訳データベース106fに記憶された仕訳データから、発生期間を前期全期間とする合計残高試算表ワーク(WK)テーブル106iを作成する(ステップSB-1)。すなわち、本実施形態においては、合計残高試算表書式のデータをWKテーブルに出力してもよい。
【0050】
そして、図6に示すように、仕訳作成部102aは、仕訳データ変換処理として、合計残高試算表ワークテーブル106i、および、期首紐付マスタ106jに基づいて、伝票番号、発生日、伝票区分、事業種別、借方勘定科目、借方金額、貸方勘定科目、貸方金額および摘要を設定した仕訳外部取込用csvファイルを作成し(ステップSB-2)、仕訳外部データ受入処理として、仕訳外部取込用csvファイルに基づいて、伝票番号、伝票区分、事業種別、勘定科目、貸借区分、金額および摘要を紐付けて設定した、発生日を期首とする期首繰越処理後の仕訳明細データ(期首繰越仕訳データ)を作成する(ステップSB-3)。すなわち、本実施形態においては、WKテーブルから繰越対象科目および金額を抽出し、仕訳外部データ受入フォーマットにてcsvファイルに繰越仕訳を出力し、仕訳外部受入アダプタを用いて、当該csvファイルを外部仕訳データに受入れてもよい。
【0051】
そして、図7に示すように、合計残高試算表作成部102bは、期首繰越仕訳データ、および、合計残高試算表の書式設定マスタ106hに基づいて、発生期間を期首とする合計残高試算表ワークテーブル106iを作成し(ステップSB-4)、処理を終了する。
【0052】
[4.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0055】
[5.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0056】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0057】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0058】
また、会計処理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0059】
例えば、会計処理装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて会計処理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0060】
また、このコンピュータプログラムは、会計処理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0061】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0062】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、本実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0063】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0064】
また、会計処理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、会計処理装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0065】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、公益法人会計業界、ならびに、一般財団法人、社団法人、社会福祉法人および学校法人等の非営利法人会計業界等を含む会計業界において有用である。
【符号の説明】
【0067】
100 会計処理装置
102 制御部
102a 仕訳作成部
102b 合計残高試算表作成部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 伝票区分マスタ
106b 科目情報変換マスタ
106c 伝票区分変換マスタ
106d 所属情報変換マスタ
106e 取込伝票履歴テーブル
106f 仕訳データベース
106g 合計科目範囲設定マスタ
106h 書式設定マスタ
106i 合計残高試算表ワークテーブル
106j 期首紐付マスタ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7