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特開2022-182580光学装置、露光装置、受光装置、画像形成装置、画像読取装置、撮像装置およびラインスキャンカメラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182580
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】光学装置、露光装置、受光装置、画像形成装置、画像読取装置、撮像装置およびラインスキャンカメラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/26 20060101AFI20221201BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20221201BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20221201BHJP
   B41J 2/447 20060101ALI20221201BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20221201BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 1/191 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20221201BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20221201BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
G02B13/26
G02B3/00 A
G03G15/04 111
B41J2/447 101C
B41J2/45
G03B27/54 A
H04N1/12 Z
H04N1/10
H04N1/191
H04N1/036
H04N1/028 Z
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090215
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123375
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山村 明宏
【テーマコード(参考)】
2C162
2H076
2H087
2H109
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
2C162AE04
2C162AE21
2C162AE28
2C162AE40
2C162AE47
2C162FA04
2C162FA17
2C162FA70
2H076AB42
2H076AB51
2H076AB53
2H087KA08
2H087KA18
2H087LA01
2H087LA27
2H087NA18
2H087PA02
2H087PA17
2H087PB02
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA34
2H087QA41
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA26
2H087RA34
2H087RA37
2H087RA44
2H087RA45
2H087UA01
2H109AA13
2H109AA26
2H109AA92
5C051AA01
5C051AA02
5C051BA04
5C051CA08
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB02
5C051DB04
5C051DB08
5C051DB22
5C051DB29
5C051DC04
5C051DC07
5C051FA01
5C072AA01
5C072DA03
5C072DA25
5C072EA07
5C072LA01
5C072LA07
5C072MA01
5C072MB01
5C072NA01
5C072NA04
5C072XA01
(57)【要約】
【課題】結像面に到達する迷光の低減を目的とする。
【解決手段】撮像装置としてのLEDヘッド3は、レンズユニット10と、レンズユニット10を保持する保持部材としてのホルダ40とを備える。レンズユニット10は、複数のレンズL2を配列した第1のレンズアレイとしてのレンズ板14と、各レンズL2と光軸が一致する複数のレンズL1を配列した第2のレンズアレイとしてのレンズ板11と、レンズ板11,14の間に配置されて複数の開口部20を配列した遮光板21とを備える。レンズ板14は、その長手方向に複数配列されたレンズL2a,L2bを有する。ホルダ40は、レンズ板14と対向する位置に、レンズ板14を通過する光線を遮光する対向部41と、光線を通過させる開口としてのスリット42とを有する。スリット42の短手方向の幅Wは、同方向におけるレンズL2a,L2bの互いに離れた側の端部間の距離Wよりも狭い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズを配列した第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイの各レンズと光軸が一致する複数のレンズを配列した第2のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間に配置されて複数の開口部を配列した遮光部材とを備えたレンズユニットと、
前記レンズユニットを保持する保持部材と
を備え、
前記第1のレンズアレイは、前記第1のレンズアレイの長手方向に複数配列された第1のレンズと第2のレンズとを有し、
前記保持部材は、前記第1のレンズアレイと対向する位置に、前記第1のレンズアレイを通過する光線を遮光する遮光部と、前記第1のレンズアレイを通過する光線を通過させる開口とを有し、
前記第1のレンズアレイの前記長手方向および前記光軸に直交する方向を短手方向とすると、前記開口の前記短手方向の幅は、前記短手方向における前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの互いに離れた側の端部間の距離よりも狭い
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、前記長手方向に複数配列された第1の開口部と第2の開口部とを有し、
前記第1の開口部および前記第2の開口部の各半径をRとし、
前記第1の開口部と前記第2の開口部との前記短手方向の中心間距離をWとし、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの前記短手方向の中心間距離をWとし、
前記開口の前記短手方向の幅をWとし、
前記第1のレンズアレイから、前記保持部材の前記遮光部の結像面側の面までの前記光軸の方向の距離をLSとし、
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの各レンズ面から、前記遮光部材までの前記光軸の方向の距離をLFSとすると、
【数9】
が成立することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの前記結像面側のレンズ面の半径をRとし、
前記第1のレンズアレイから前記結像面までの前記光軸の方向の距離をLIとし、
前記第1のレンズアレイから、前記保持部材の前記遮光部の前記結像面側の面までの前記光軸の方向の距離をLSとすると、
【数10】
が成立することを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記短手方向における前記開口の幅Wが、
0.906[mm]≦W≦1.880[mm]
であることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記遮光部材は、前記光軸の方向における前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの中間位置よりも前記第2のレンズアレイに近い側に配置されている
ことを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記遮光部材は、第1の遮光部材であり、
前記第2のレンズアレイに対して前記第1の遮光部材と反対の側に、第2の遮光部材を有する
ことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか1項に記載の光学装置を有し、
前記光学装置の前記レンズユニットに、複数の発光素子を配列した基板が対向配置されている
ことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置と、
前記露光装置に対向配置された像担持体と、
前記露光装置によって前記像担持体に形成された像を現像する現像部と、
前記現像部によって現像された像を媒体に転写する転写部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1から6までの何れか1項に記載の光学装置を有し、
前記光学装置の前記レンズユニットに、複数の受光素子を配列した基板が対向配置されている
ことを特徴とする受光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の受光装置と、
前記受光装置に対向する位置で原稿を保持する原稿台と
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項11】
請求項9に記載の受光装置を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像装置と、
前記撮像装置に対向する位置を通過するように撮像対象物を搬送する搬送部と
を備えたことを特徴とするラインスキャンカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学装置、露光装置、受光装置、画像形成装置、画像読取装置、撮像装置およびラインスキャンカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の露光装置(例えばLEDヘッド)は、一方向に配列された複数のレンズを有するレンズアレイと、レンズと同じ間隔で配置された複数の開口部を有する遮光部材とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-34795号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の露光装置では、遮光部材の開口部の内面で反射した迷光(フレア光)が結像面に到達することを十分に低減することができず、画像品質の向上が難しい。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、結像面に到達する迷光の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光学装置は、複数のレンズを配列した第1のレンズアレイと、第1のレンズアレイの各レンズと光軸が一致する複数のレンズを配列した第2のレンズアレイと、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとの間に配置されて複数の開口部を配列した遮光部材とを備えたレンズユニットと、レンズユニットを保持する保持部材とを備える。第1のレンズアレイは、第1のレンズアレイの長手方向に複数配列された第1のレンズと第2のレンズとを有する。保持部材は、第1のレンズアレイと対向する位置に、第1のレンズアレイを通過する光線を遮光する遮光部と、第1のレンズアレイを通過する光線を通過させる開口とを有する。第1のレンズアレイの長手方向および光軸に直交する方向を短手方向とすると、開口の短手方向の幅は、短手方向における第1のレンズおよび第2のレンズの互いに離れた側の端部間の距離よりも狭い。
【0007】
本開示の露光装置は、上記の光学装置を有する。光学装置のレンズユニットには、複数の発光素子を配列した基板が対向配置されている。また、本開示の画像形成装置は、上記の露光装置と、露光装置に対向配置された像担持体と、露光装置によって像担持体に形成された像を現像する現像部と、現像部によって現像された像を媒体に転写する転写部とを備える。
【0008】
本開示の受光装置は、上記の光学装置を有する。光学装置のレンズユニットには、複数の受光素子を配列した基板が対向配置されている。また、本開示の画像読取装置は、上記の受光装置と、受光装置に対向する位置で原稿を保持する原稿台とを備える。
【0009】
本開示の撮像装置は、上記の受光装置を備える。また、本開示のラインスキャンカメラは、上記の撮像装置と、撮像装置に対向する位置を通過するように撮像対象物を搬送する搬送部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、遮光部材の開口部で反射されて結像面に向かう光線を、保持部材の遮光部で遮光することができる。そのため、結像面に到達する迷光を低減し、画像品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態の画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態のLEDヘッドと感光体ドラムとの位置関係を示す図である。
図3図2に示した線分III-IIIにおける断面図である。
図4】第1の実施の形態のLEDヘッドを示す断面図である。
図5】第1の実施の形態のLEDヘッドを示す部分断面斜視図である。
図6】第1の実施の形態のレンズユニットを拡大して示す分解斜視図である。
図7】第1の実施の形態のレンズユニットを示す断面図である。
図8】第1の実施の形態のレンズユニットのレンズ板のレンズ面の配列を示す図である。
図9】第1の実施の形態のマスクの開口部の配列を示す図である。
図10】第1の実施の形態の遮光板の開口部の配列を示す図である。
図11】第1の実施の形態のマスクおよびレンズ板における光線の進行状態を示す模式図である。
図12】第1の実施の形態(A)および比較例(B)のLEDヘッドにおける光線の進行状態を示す模式図である。
図13】第1の実施の形態の遮光板、レンズ板およびホルダのスリットの寸法関係を示す図である。
図14】第1の実施の形態のレンズ板およびホルダのスリットの寸法関係を示す図である。
図15】第2の実施の形態の画像読取装置を示す斜視図(A)、および読取ヘッドを示す断面図(B)である。
図16】第3の実施の形態のラインスキャンカメラを示す模式図(A)、および撮像装置を示す断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施の形態.
<画像形成装置の構成>
まず、第1の実施の形態の光学装置(露光装置)としてのLEDヘッド3を備えた画像形成装置1について説明する。図1は、画像形成装置1の全体構成を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法によって画像を形成するものであり、ここではカラープリンタである。
【0013】
画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体Pを供給する媒体供給部7と、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のトナー像を形成する画像形成ユニットとしてのプロセスユニット5Y,5M,5C,5Kと、トナー像を媒体Pに転写する転写ユニット6と、トナー像を媒体Pに定着する定着ユニット8と、媒体Pを排出する媒体排出部9とを備える。これらの構成要素は、画像形成装置1の筐体1Aに収容されている。また、筐体1Aの上部には、開閉可能なカバー1Bが設けられている。
【0014】
媒体供給部7は、媒体Pを積層状態で収納する媒体カセット70と、媒体カセット70から媒体Pを取り出す給紙ローラ71と、給紙ローラ71によって取り出された媒体Pを搬送路に沿って搬送する2対の搬送ローラ対72,73とを有する。
【0015】
プロセスユニット5Y,5M,5C,5Kは、媒体Pの搬送路に沿って上流側から下流側(ここでは右側から左側)に配列されている。プロセスユニット5Y,5M,5C,5Kは、特に区別する必要がない場合には、プロセスユニット5と総称する。
【0016】
プロセスユニット5Y,5M,5C,5Kの各感光体ドラム51(後述)に対向するように、露光装置としてのLEDヘッド3Y,3M,3C,3Kが配置されている。LEDヘッド3Y,3M,3C,3Kは、特に区別する必要がない場合には、LEDヘッド3と総称する。
【0017】
プロセスユニット5は、像担持体としての感光体ドラム51と、帯電部材としての帯電ローラ52と、現像剤担持体(現像部)としての現像ローラ53と、供給部材としての供給ローラ54と、クリーニング部材としてのクリーニングブレード56とを有する。
【0018】
感光体ドラム51は、円筒状の導電性支持体の表面に感光層を形成したものであり、図中時計回りに回転する。帯電ローラ52は、感光体ドラム51の表面に当接するように配置され、感光体ドラム51の回転に追従して回転する。帯電ローラ52は、帯電電圧を付与され、感光体ドラム51の表面を一様に帯電させる。
【0019】
LEDヘッド3は、画像データに基づいて感光体ドラム51の表面に光線を照射して、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。LEDヘッド3の具体的な構成については、後述する。
【0020】
現像ローラ53は、感光体ドラム51の表面に当接するように配置され、感光体ドラム51の回転方向とは反対方向(図中反時計回り)に回転する。現像ローラ53は、現像電圧を付与され、感光体ドラム51の表面の静電潜像をトナーにより現像する。供給ローラ54は、現像ローラ53の表面に当接するように配置され、現像ローラ53にトナーを供給する。プロセスユニット5の上部には、トナーを補給するための現像剤収容体としてのトナーカートリッジ55が取り付けられている。
【0021】
転写ユニット6は、表面に媒体Pを保持して搬送する無端状の転写ベルト62と、この転写ベルト62が架け渡された駆動ローラ63および従動ローラ64と、転写ベルト62を介して各感光体ドラム51に対向配置された4つの転写ローラ61と、転写ベルト62に付着したトナーを除去するクリーニングブレード65とを備える。
【0022】
駆動ローラ63は、図中反時計回りに回転し、転写ベルト62を矢印Bで示す方向に走行させる。従動ローラ64は、転写ベルト62に張力を付与する。転写ベルト62は、表面に媒体Pを静電吸着して搬送する。転写ローラ61は、転写電圧を付与され、感光体ドラム51の表面のトナー像を、転写ベルト62上の媒体Pに転写する。クリーニングブレード65は、転写ローラ61の表面に接触するように配置され、転写ベルト62に付着したトナーを掻き取る。
【0023】
定着ユニット8は、定着ローラ81と加圧ローラ82とを備える。定着ローラ81は、ハロゲンランプ等の熱源を内蔵する。加圧ローラ82は、定着ローラ81に押圧され、定着ローラ81との間との間で定着ニップを形成する。定着ローラ81および加圧ローラ82は、媒体Pに転写されたトナー像を、熱および圧力を加えて媒体Pに定着させる。
【0024】
媒体排出部9は、定着ユニット8を通過した媒体Pを搬送する排出する2対の排出ローラ対91,92を有する。画像形成装置1のカバー1Bには、排出された媒体Pを載置するスタッカ部93が設けられている。
【0025】
図1において、感光体ドラム51の回転軸の方向を、X方向とする。媒体Pがプロセスユニット5Y,5M,5C,5Kを通過する際の媒体Pの移動方向を、Y方向とする。X方向およびY方向の両方に直交する方向を、Z方向とする。Z方向は、ここでは鉛直方向である。
【0026】
また、Y方向については、媒体Pがプロセスユニット5Y,5M,5C,5Kを通過する際の媒体Pの進行方向(図中右から左に向かう方向)を+Y方向とし、その反対方向を-Y方向とする。Z方向については、LEDヘッド3から感光体ドラム51に向かう方向(図1における下方)を+Z方向とし、その反対方向を-Z方向とする。X方向については、図1の手前に向かう方向を+X方向とし、奥に向かう方向を-X方向とする。
【0027】
<LEDヘッドの構成>
図2は、LEDヘッド3および感光体ドラム51を、+Y側から見た図である。図2では、+Z方向が上方であり、-Z方向が下方である(図1とは上下が逆である)。感光体ドラム51は、図2に矢印r1で示す方向に回転する。
【0028】
LEDヘッド3は、レンズユニット10と、発光素子としてのLED素子31が実装された基板30と、これらを保持する保持部材としてのホルダ40とを備える。ホルダ40は、レンズユニット10と基板30とを保持し、感光体ドラム51に対して所定の位置関係に保持する。レンズユニット10は、基板30と感光体ドラム51との間に位置する。
【0029】
基板30は、回路基板32と、回路基板32上に1列に配列された複数のLED素子31(発光素子)を有する。回路基板32は、接着剤46(図3)によりホルダ40に固定されている。LED素子31の配列方向は、X方向(主走査方向)である。600dpiの場合、1インチ(約25.4mm)につき、600個のLED素子31が配置される。基板30のLED素子31の配列長さWは、例えば208mmである。
【0030】
図3は、図2に示す線分III-IIIにおける断面図である。図3に示すように、レンズユニット10のY方向の中心を、CLとする。中心CLは、XZ面に平行な仮想面である。LED素子31および感光体ドラム51の回転軸51aは、レンズユニット10のY方向の中心CL上に位置している。
【0031】
レンズユニット10は、LED素子31からの光線の進行方向に沿って、第2の遮光部材としてのマスク23と、第2のレンズアレイとしてのレンズ板11と、第1の遮光部材としての遮光板21と、第1のレンズアレイとしてのレンズ板14とを備える。
【0032】
マスク23、レンズ板11、遮光板21およびレンズ板14の積層方向は、Z方向である。ホルダ40は、レンズ板14が感光体ドラム51に対向するようにレンズユニット10を保持している。レンズ板14の感光体ドラム51側は、カバー部材35で覆われている。
【0033】
レンズ板11,14は、LED素子31から発せられた光線を透過する材料で構成される。一方、遮光板21およびマスク23は、LED素子31から発せられた光線を透過しない材料で構成される。
【0034】
図4は、LEDヘッド3を拡大して示す断面図である。図4を参照して、LEDヘッド3のマスク23、レンズ板11、遮光板21およびレンズ板14について、順に説明する。
【0035】
図4に示すように、マスク23は、X方向に配列された複数の開口部24を有する。開口部24は、LED素子31から発せられた光線を通過させる。マスク23は、-Z側の第1面23aと、+Z側の第2面23bとを有し、開口部24は第1面23aから第2面23bまで貫通している。
【0036】
マスク23の第1面23aのY方向両側には、-Z方向に突出する当接部23cが形成されている。当接部23cは基板30に当接し、基板30とマスク23とのZ方向の距離を規定する。
【0037】
レンズ板11は、-Z側の第1面11aと、+Z側の第2面11bとを有する。第1面11aには、複数のレンズ面12がX方向に配列されている。第2面11bには、複数のレンズ面13がX方向に配列されている。レンズ板11のレンズ面12,13は、マスク23の開口部24を通過した光線を通過させる。
【0038】
レンズ板11の第1面11aのY方向両側には、-Z方向に突出する当接部11cが形成されている。当接部11cはマスク23に当接し、マスク23とレンズ板11とのZ方向の距離を規定する。
【0039】
レンズ板11の第2面11bのY方向両側には、+Z方向に突出する当接部11dが形成されている。当接部11dは遮光板21に当接し、レンズ板11と遮光板21とのZ方向の距離を規定する。
【0040】
遮光板21は、X方向に配列された複数の開口部22を有する。開口部22は、レンズ板11を通過した光線を通過させる。遮光板21は、-Z側の第1面21aと、+Z側の第2面21bとを有し、開口部22は第1面21aから第2面21bまで貫通している。
【0041】
遮光板21の第1面21aのY方向両側には、+Z方向に突出する当接部21cが形成されている。当接部21cはレンズ板14に当接し、遮光板21とレンズ板14とのZ方向の距離を規定する。
【0042】
レンズ板14は、-Z側の第1面14aと、+Z側の第2面14bとを有する。第1面14aには、複数のレンズ面15がX方向に配列されている。第2面14bには、複数のレンズ面16がX方向に配列されている。レンズ板14のレンズ面15,16は、遮光板21の開口部22を通過した光線を通過させる。
【0043】
レンズ板14の第1面14aのY方向両側には、-Z方向に突出する当接部14cが形成されている。当接部14cは遮光板21に当接し、レンズ板14と遮光板21とのZ方向の距離を規定する。
【0044】
レンズ板14の第2面14bのY方向両側には、+Z方向に突出する当接部14dが形成されている。当接部14dには、レンズ板14を覆うようにカバー部材35が取り付けられている。
【0045】
カバー部材35は、レンズユニット10への異物の付着を防止するためのものである。カバー部材35は、LED素子31の光線を透過する材料、例えば、透明のPET(ポリエチレンテレフタレート)で形成されている。カバー部材35は、ホルダ40のスリット42(後述)を塞ぐように、接着剤45によりホルダ40の対向部41に固定されている。
【0046】
図5は、LEDヘッド3を示す部分断面斜視図である。図5に示すように、レンズユニット10は長尺であり、その長手方向がX方向となるように、ホルダ40に保持されている。すなわち、レンズユニット10の長手方向、および基板30上のLED素子31の配列方向は、いずれもX方向である。
【0047】
レンズユニット10を保持するホルダ40は、+Z方向の端部に位置する対向部41と、Y方向の両端に位置する2つの側壁部43とを有する。ホルダ40の-Z方向の端部は開放されている。ホルダ40は、液晶ポリマー等の樹脂で構成される。
【0048】
ホルダ40の対向部41は、XY面に平行な板状部分であり、感光体ドラム51に対向する。対向部41には、X方向に長いスリット42が形成されている。スリット42は、図4に示すように、対向部41の+Z側の面41aから-Z側の面41bまで貫通している。スリット42は、レンズユニット10を透過した光線を通過させる開口である。対向部41のうちスリット42以外の部分は、レンズユニット10を透過した光線を遮光する遮光部を構成する。
【0049】
図6は、レンズユニット10を示す分解斜視図である。マスク23、レンズ板14、遮光板21およびレンズ板11は、いずれもX方向に長い長尺部材である。マスク23、レンズ板14、遮光板21およびレンズ板11は、この順にZ方向に積層されている。
【0050】
図7は、レンズユニット10を、レンズ面12,13,15,16の各面頂点を通りXZ面に平行な面で切断した断面図である。図7に示すように、レンズ板11のレンズ面12,13により、レンズL1が構成される。また、レンズ板14のレンズ面15,16により、レンズL2が構成される。
【0051】
レンズ板11のレンズL1の光軸Axと、レンズ板14のレンズL2の光軸Axとは、互いに一致する。光軸Axの方向は、Z方向である。
【0052】
マスク23の開口部24の中心は、レンズ板11,14の光軸Ax上にある。同様に、遮光板21の開口部22の中心は、レンズ板11,14の光軸Ax上にある。
【0053】
基板30のLED素子31からレンズ板11のレンズ面12までの距離を、距離LOとする。レンズ板11のレンズ面12とレンズ面13との間隔(すなわちレンズ厚)を、面間隔LTとする。
【0054】
レンズ板11のレンズ面13とレンズ板14のレンズ面15の間隔を、面間隔LGとする。レンズ板14のレンズ面15とレンズ面16との間隔(すなわちレンズ厚)を、面間隔LTとする。レンズ板14のレンズ面16と感光体ドラム51の表面(結像面)との距離を、距離LIとする。
【0055】
また、基板30のLED素子31とマスク23との間隔を、面間隔LFMとする。レンズ板14のレンズ面15と遮光板21との間隔を、面間隔LFSとする。マスク23の厚さを、厚さMTとする。遮光板21の厚さを、厚さSTとする。
【0056】
LED素子31からレンズ板11のレンズ面12までの距離LOと、レンズ板14のレンズ面16から感光体ドラム51の表面までの距離LIとは、等距離である(すなわちLI=LO)。また、レンズ板11,14は、レンズ面13とレンズ面15との間で主光線が平行となるテレセントリックな構成を有する。
【0057】
また、遮光板21は、レンズ板11のレンズ面13とレンズ板14のレンズ面15との中間位置に対して、レンズ面13に近い側に配置されている。レンズ板14のレンズ面15と遮光板21との面間隔LFSは、レンズ板11,14のレンズ面13,15の面間隔LGの1/2、すなわちLFS=LG/2となっている。
【0058】
なお、LFS<LG/2とした場合であっても、レンズ面13から距離LG/2の位置に開口部22の内壁が配置されていれば、LED素子31からの光線の反射光が低減され、本実施の形態の効果が得られる。
【0059】
図8は、レンズ板14のレンズ面16の配列を+Z側から見た図である。レンズ板14の+Z側の第2面14bには、レンズ面16が千鳥状に2列に配列され、各列はそれぞれX方向に延在している。隣接するレンズ面16のX方向の間隔(中心間距離)をPとすると、各列におけるレンズ面16のX方向の配列間隔は、2×Pである。
【0060】
レンズ面16の中心(面頂点)は、レンズ板14のY方向中心(すなわちレンズユニット10のY方向中心)CLから、Pの距離にある。レンズ面16の半径は、Rである。
【0061】
レンズ板14の2列のレンズ面16の互いに離れた側の最外側端縁を通り、XZ面に平行な面を、基準面SLと定義する。この基準面SLは、図4に示したように、レンズ板14のレンズ面15のY方向の最外側端縁も通り、レンズ板11のレンズ面12,13のY方向の最外側端縁も通る。
【0062】
レンズ板14のレンズ面15(図4)は、XY面内においてレンズ面16と同様に配列されている。すなわち、レンズ面15は千鳥状に2列に配列され、各列はそれぞれX方向に延在している。隣接するレンズ面15のX方向の間隔はPであり、各列におけるレンズ面15のX方向の配列間隔は2×Pである。レンズ面15の中心は、レンズ板14のY方向の中心CLからPの距離にある。レンズ面15の半径は、Rである。レンズ面15のY方向の外側端縁も、図8に示した基準面SL上にある。
【0063】
上記の通り、レンズ板14の相対するレンズ面15,16により、レンズL2(図7)が構成される。ここでは、2列に配列されたレンズL2のうち、一方の列に配列されたレンズL2をレンズL2a(第1のレンズ)と称し、他方の列に配列されたレンズL2をレンズ2Lb(第2のレンズ)と称する。
【0064】
レンズ板11(図4)は、レンズ板14と同一形状を有する。レンズ板11は、レンズ板14に対して、Y方向中心を通るX方向の回転軸を中心として180度反転した位置関係にある。レンズ板11のレンズ面12,13のXY面内における配置は、レンズ板14のレンズ面15,16のXY面内における配置と同様である。
【0065】
図9は、マスク23の開口部24の配列を+Z側から見た図である。マスク23には、複数の開口部24が千鳥状に2列に配列され、各列はそれぞれX方向に延在している。隣接する開口部24のX方向の間隔(中心間距離)はPであり、各列における開口部24のX方向の配列間隔は2×Pである。開口部24は円形状であり、基板30(図4)に対向する面の開口半径Rm1は、レンズ板11(図4)に対向する面の開口半径Rm2より小さい。すなわち、開口部24は、+Z方向に進むほど開口半径が大きくなる形状を有する。
【0066】
図10は、遮光板21の開口部22の配列を+Z側から見た図である。遮光板21には、複数の開口部22が千鳥状に2列に配列され、各列はそれぞれX方向に延在している。隣接する開口部22のX方向の間隔(中心間距離)はPであり、各列における開口部22のX方向の配列間隔は2×Pである。開口部22は円形状であり、開口半径Rを有する。開口部22の開口半径Rは、Z方向に一定である。
【0067】
図11は、基板30のLED素子31から出射され、マスク23の開口部24を通過して、レンズ板11の内部で散乱して出射される光線を説明するための図である。LED素子31から出射されてマスク23の開口部24を通過した光線のうち、多くの光線はレンズ板11のレンズ面12に入射してレンズ面13から出射される。
【0068】
しかしながら、一部の光線は、レンズ面12の周囲から入射し、あるいは、レンズ面12から入射してレンズ板11の内部で反射する。これらの光線はレンズ板11の各面で反射を繰り返し、その一部がレンズ面13から出射される。また、レンズ板11の第2面11bのレンズ面13以外の部分から出射される光線もある。
【0069】
図12(A)は、本実施の形態のLEDヘッド3における光線の進行状態を示す図である。図12(B)は、比較例のLEDヘッド3Cにおける光線の進行状態を示す図である。
【0070】
図12(A)に示すように、本実施の形態のLEDヘッド3では、ホルダ40のスリット42が、レンズ板11のレンズ面12のY方向の最外側端部を通る2つの基準面SLよりも、Y方向において内側に位置する。すなわち、スリット42の幅Wが、2つの基準面SLの間隔Wよりも狭い。
【0071】
一方、図12(B)に示すように、比較例のLEDヘッド3Cでは、ホルダ40のスリット42が、レンズ板11のレンズ面12のY方向の最外側端部を通る2つの基準面SLよりもY方向外側まで広がっている。すなわち、スリット42の幅Wが、2つの基準面SLの間隔Wよりも狭い。
【0072】
図12(A),(B)のいずれにおいても、レンズ板11の内部で反射され当該レンズ板11の第2面11b(レンズ面13を含む)から出射された迷光があり、その迷光はレンズ板14を通過して結像位置に向かう。
【0073】
このとき、図12(B)に示した比較例では、レンズ板14を通過した迷光が、スリット42を通過して結像面(すなわち感光体ドラム51の表面)に到達する。その結果、LED素子31の像Iに隣接して、迷光によって像Jが結像されてしまう。感光体ドラム51の表面に迷光による像Jが結像されると、画像の鮮明度が低下する。
【0074】
一方、図12(A)に示した本実施の形態では、レンズ板14を通過した迷光を、ホルダ40の対向部41のスリット42のY方向両側で遮光し、これにより結像面に到達する迷光を低減することができる。
【0075】
このように、本実施の形態1では、ホルダ40のスリット42を、レンズ板14のレンズ面16のY方向端部を通る2つの基準面SLよりもY方向内側に形成することで、結像面(すなわち感光体ドラム51の表面)に到達する迷光を低減している。これにより、画像の鮮明度を向上し、画像品質を高めることができる。
【0076】
ここで、スリット42の幅W(Y方向の寸法)が広いほど、結像面に到達する迷光が増加する。以下では、結像面に到達する迷光を低減可能なスリット42の幅Wの最大値について説明する。
【0077】
図13は、遮光板21、レンズ板14およびホルダ40のスリット42の寸法関係を示す図である。上記の通り、遮光板21からレンズ板14のまでの距離は、LFSである。また、遮光板21の開口部22の半径は、Rである。
【0078】
レンズ板14からスリット42の結像面側の面までの距離は、LSとする。レンズ板14の2列のレンズ面16のY方向の間隔を、Wとする。また、遮光板21の2列の開口部24のY方向の間隔(中心間距離)を、Wとする。なお、間隔Wおよび間隔Wは、いずれも距離P図8図10)の2倍であるが(W=W=2×P)、ここではW,Wを用いて説明する。
【0079】
遮光板21の2列の開口部22のうち、レンズL2aに対向する開口部22を開口部22aとし、レンズL2bに対向する開口部22を開口部22bとする。ここでは、左側の開口部22aの右側の内壁で反射して右側のレンズL2bに入射する光線R5を考える。
【0080】
遮光板21の開口部22aの右側の内壁からレンズ2Lbに入射した光線R5が、スリット42の内壁に入射するように構成すれば、光線R5がスリット42を通過して結像面に到達することを防止できる。
【0081】
遮光板21の開口部22aの右側の内壁とレンズL2bの光軸AxとのY方向の距離は、W-Rである。また、遮光板21の第2面21bからレンズL2bまでの光軸方向(Z方向)の距離は、LFSである。
【0082】
レンズL2bの光軸Axから、ホルダ40の対向部41の結像面側の面41aにおける光線R5の入射位置までの距離をDとすると、D:(W-R)=LS:LFSが成り立つ。そのため、当該距離Dは、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】
【0083】
スリット42の幅Wが最大幅である場合には、レンズL2bの中心から出射された光線R5が、スリット42の内壁の結像面側(+Z方向)の端縁に入射する。
【0084】
ここで、レンズL2bの光軸Axからレンズユニット10の中心CLまでの距離はW/2であり、レンズユニット10の中心CLからスリット42の右側の壁までの距離は(W/2である。よって、レンズL2bの光軸Axからスリット42の右側の壁までの距離Dは、(W-W)/2となる。そのため、式(1)から、以下の式(2)が成立する。
【数2】
【0085】
上記の式(2)をWsについて整理すると、以下の式(3)が得られる。
【数3】
【0086】
上記の式(3)はスリット42の幅Wの最大値を表しているため、スリット42の幅Wは、以下の式(4)で表すことができる。
【数4】
【0087】
一方、スリット42の幅Wsが狭すぎると、レンズ板11,14を通過した通常光(迷光以外の光)もスリット42を通過できなくなり、光量の低下を招く。以下では、光量の低下を回避可能なスリット42の幅Wの最小値について説明する。
【0088】
図14は、レンズ板14およびホルダ40のスリット42の寸法関係を示す図である。レンズ板14から結像面(感光体ドラム51の表面)までの距離は、図7を参照して説明したとおり、LIである。レンズL2bから出射された光は、レンズL2bから距離LIの点に結像する。
【0089】
ここでは、レンズL2bのY方向の最外側端部から当該点に向かう光線R6を考える。中心CLからレンズL2bのY方向の最外側端部までの距離は、W/2+Rである。光線R6が、レンズL2bから光軸方向に距離LSで、中心CLから以下の式(5)で表される距離Hの点を通過する。
【数5】
【0090】
スリット42が光線R6を遮らない最少の幅Wsを有する場合、幅Wsの1/2が距離Hと同じになる。そのため、式(5)から、スリット42の幅Wsの最小値は、以下の式(6)で表される。
【数6】
【0091】
上記の式(6)はスリット42の幅Wの最小値を表しているため、スリット42の幅Wは、以下の式(7)で表すことができる。
【数7】
【0092】
上記の式(4)と式(7)とから、スリット42の幅Wsの最も望ましい範囲は、以下の式(8)で表される。
【数8】
【0093】
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1による画像形成動作(すなわち印刷動作)について、図1図3および図7を参照して説明する。画像形成動作が開始されると、給紙ローラ71が回転し、媒体カセット70に収容された媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す。さらに、搬送ローラ対72、73が、搬送路に送り出された媒体Pを転写ベルト62まで搬送する。転写ベルト62は、駆動ローラ63の回転によって矢印Bで示す方向に走行し、媒体Pを吸着保持して搬送する。
【0094】
一方、プロセスユニット5Y,5M,5C,5Kでは、感光体ドラム51の表面が、帯電ローラ52によってそれぞれ一様に帯電される。
【0095】
さらに、LEDヘッド3Y,3M,3C,3Kが、色毎のイメージデータに応じて光線を出射する。図3に示したように、各LEDヘッド3では、基板30上のLED素子31から出射された光線が、マスク23の開口部24、レンズ板11のレンズ面12,13、遮光板21の開口部22、レンズ板14のレンズ面15,16、およびカバー部材35を通過し、結像面である感光体ドラム51の表面に集光する。感光体ドラム51の表面の感光層では露光部分の電荷が減衰し、静電潜像が形成される。
【0096】
感光体ドラム51の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ53によってトナーで現像されてトナー像となる。感光体ドラム51の表面のトナー像は、感光体ドラム51と転写ローラ61との間を通過する転写ベルト62上の媒体Pに転写される。転写ベルト62の走行に伴い、媒体Pは、プロセスユニット5Y,5M,5C,5Kの各感光体ドラム51と転写ローラ61との間を通過し、各色のトナー像が媒体Pに転写される。
【0097】
トナー像が転写された媒体Pは、定着ユニット8に送られる。定着ユニット8では、定着ローラ81および加圧ローラ82によりトナー像が加熱および加圧され、トナー像が媒体Pに定着する。トナー像が定着された媒体Pは、排出ローラ対91,92によって画像形成装置1の外部に排出され、スタッカ部93に積載される。これにより画像形成動作が完了する。
【0098】
図7において、光軸Axの近傍のLED素子31から出射される光線は、R1,R2,R3で示される。光軸Axから離れたLED素子31から出射される光線は、R4で示される。R1は、光軸Ax近傍のLED素子31から発せられる光線の主光線である。R4は、光軸Axから離れたLED素子31から発せられた光線の主光線である。
【0099】
レンズ板11のレンズ面12,13によって、物体(すなわちLED素子31)の倒立縮小像である中間像が形成され、レンズ板14のレンズ面15,16によって、中間像の倒立拡大像(すなわち物体の正立等倍像)が形成される。
【0100】
上記の通り、レンズ板11,14は、レンズ面13とレンズ面15との間で主光線が平行となるテレセントリックな構成を有する。この構成は、レンズ板11のレンズL1とレンズ板14のレンズL2とを略同一形状とし、物体からレンズ板11までの距離LOと、レンズ板14から結像面までの距離LIとを略等しくすることで実現される。
【0101】
<数値実施例>
次に、第1の実施の形態のLEDヘッド3の具体的な数値実施例について説明する。表1には、第1の実施の形態のLEDヘッド3の各部の寸法を示す。
【0102】
【表1】
【0103】
また、表2には、レンズ板11のレンズ面12,13の形状を示す。レンズ板11のレンズ面12,13およびレンズ板14のレンズ面15,16は、いずれも回転非球面形状であり、曲率半径と4次、6次および8次の非球面係数とで表される。
【0104】
レンズ面16は、レンズ面12をY方向の回転軸を中心として180度回転させた形状である。レンズ面15は、レンズ面13をY方向の回転軸を中心として180度回転させた形状である。レンズ面12,13およびレンズ面15,16は、いずれも、X方向に212mmに亘って配列されている。
【0105】
【表2】
【0106】
レンズ板11,14は、例えばシクロオレフィン樹脂で構成される。ここでは、シクロオレフィン樹脂の一例として、三井化学株式会社製「アペル(登録商標)APL5513TL」を用いる。この樹脂の温度25℃での波長770nmの光線に対する屈折率は、1.5373である。
【0107】
レンズ板11,14は、いずれも焦点距離fが1.166mmであり、バックフォーカスが0.614mmである。レンズ板11のレンズ面12から第1主平面までの距離は、0.552mmである。レンズ板14のレンズ面16から第2主平面までの距離も同様である。
【0108】
マスク23および遮光板21は、例えばポリカーボネートで構成される。ここでは、ポリカーボネートの一例として、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製の「ユーピロン(登録商標)H-4000」を用いる。
【0109】
このLEDヘッド3において、LED素子31を順次点灯させ、レンズユニット10により形成されるLED素子31の像を観察した。その結果、LED素子31以外に光っている部分は観察されなかった。すなわち、遮光板21およびマスク23の開口部22,24での反射による反射像は観察されなかった。
【0110】
さらに、LEDヘッド3を搭載した画像形成装置1(図1)としてのカラーLEDプリンタを用い、ブラックのプロセスユニット12Kを用いて印刷試験を行った。媒体PとしてはA4サイズの普通紙を用い、印刷環境は、温度22℃、相対湿度50%とした。印刷試験で得られた印刷物を目視で観察した結果、鮮明な印刷画像が得られていることが分かった。
【0111】
表1に示したLEDヘッド3の各部の寸法を式(8)に代入すると、次の式(9)が得られる。
0.906[mm]≦W≦1.880[mm] … (9)
【0112】
本実施の形態では、スリット42の幅Wsが1.6[mm]であるため、式(9)の条件を満足している。
【0113】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、第1の実施の形態の光学装置(露光装置)としてのLEDヘッド3は、レンズユニット10と、これを保持するホルダ(保持部材)40とを備える。レンズユニット10は、複数のレンズL2を有するレンズ板14(第1のレンズアレイ)と、レンズ板11の各レンズL2と光軸が一致する複数のレンズL1を有するレンズ板11(第2のレンズアレイ)と、これらの間に配置されて複数の開口部22を有する遮光板(遮光部材)21とを備える。レンズ板14は、その長手方向に複数配列されたレンズL2a(第1のレンズ)およびレンズL2b(第2のレンズ)とを有する。ホルダ40は、レンズ板14と対向する位置に、レンズ板14を通過した光線を遮光する対向部41と、当該光線を通過させるスリット(開口)42とを有する。スリット42のY方向の幅Wは、レンズL2a,L2bの互いに離れた側の端部間(すなわち2つの基準面SL間)のY方向の距離Wよりも狭い。
【0114】
このように構成されているため、ホルダ40の対向部41のスリット42の両側(遮光部)で迷光を遮光し、感光体ドラム51の表面(結像面)に到達する迷光を低減することができる。これにより迷光に起因する画像品質の低下を抑制し、鮮明な画像を形成することができる。
【0115】
なお、上記のレンズユニット10は、マスク23、レンズ板11、遮光板21およびレンズ板14を有していたが、マスク23を有さない構成も可能である。すなわち、レンズユニット10は、第1のレンズアレイとしてのレンズ板14と、第2のレンズアレイとしてのレンズ板11と、これらの間に配置された遮光部材としての遮光板21とを備えていればよい。
【0116】
第2の実施の形態
第2の実施の形態は、第1の実施の形態で説明したLEDヘッド3(光学装置)を受光装置に適用した読取ヘッド201と、読取ヘッド201を備えた画像読取装置200に関する。
【0117】
図15(A)は、画像読取装置200を示す斜視図である。画像読取装置200は、例えばフラットベッド型のイメージスキャナである。画像読取装置200は、筐体202と、筐体202の上面に設けられた原稿台(支持台)203と、原稿台203の下側に配置された読取ヘッド201(コンタクトイメージセンサヘッド)と、原稿台203の上側を覆う蓋204とを備える。原稿台203は、可視光を透過するガラス等の材料で構成されており、その表面に読取対象物である原稿Mが載置される。
【0118】
読取ヘッド201をY方向(副走査方向)に案内するため、原稿台203に沿って一対のガイド205が設けられている。また、読取ヘッド201は、駆動ベルト206に連結されており、この駆動ベルト206は、ステッピングモータ207に連結されている。また、読取ヘッド201は、フレキシブルフラットケーブル208を介して制御回路210に接続されている。
【0119】
図15(B)は、読取ヘッド201の構成を示す断面図である。読取ヘッド201は、LED素子31がX方向に配列された基板30(図2)の代わりに、複数の受光素子37がX方向に配列された基板36を備える。読取ヘッド201は、基板30を基板36に置き換えたことを除き、LEDヘッド3と同様に構成されている。
【0120】
すなわち、読取ヘッド201は、ホルダ40、基板36、マスク23、レンズ板11、遮光板21、レンズ板14、およびカバー部材35を有する。また、マスク23、レンズ板11、遮光板21およびレンズ板14は、レンズユニット10を構成する。
【0121】
読取ヘッド201は、出射側(すなわちレンズ板14側)を原稿台203に対向させるように配置されている。原稿台203に載せられた原稿Mからの光は、ホルダ40のスリット42、レンズ板14のレンズ面15,16、遮光板21の開口部22a、レンズ板11のレンズ面12,13、およびマスク23の開口部24を通って、受光素子37に集光する。
【0122】
画像読取装置200の基本動作は、以下の通りである。原稿台203上に原稿Mを設置し、スキャンボタン等のスイッチを押下すると、読取ヘッド201に取り付けられた光源(図示せず)が点灯して原稿Mを照明する。読取ヘッド201は、ステッピングモータ207によって駆動される駆動ベルト206によってY方向に移動しながら、原稿Mの表面で反射された光線を受光する。読取ヘッド201は、受光した光信号を電気信号に変換する。
【0123】
ホルダ40のスリット42が、レンズ板14のレンズ面16のY方向の最外側端部よりも内側に形成されているため、基板36の受光素子37に到達する迷光を低減することができる。これにより、読取精度を向上することができる。
【0124】
なお、上記のように読取ヘッド201を移動させる代わりに、原稿台203上の所定の読取位置を通過するようにADF(Automatic Document Feeder)で原稿Mを搬送し、当該読取位置に停止した読取ヘッド201で原稿Mの画像を読み取ってもよい。
【0125】
第3の実施の形態
第3の実施の形態は、第1の実施の形態で説明したLEDヘッド3(光学装置)を受光装置に適用した撮像装置301と、撮像装置301を備えたラインスキャンカメラ300に関する。
【0126】
図16(A)は、ラインスキャンカメラ300を示す模式図である。ラインスキャンカメラ300は、例えば自動品質検査システム等で用いられる。ラインスキャンカメラ300は、撮像装置301と、撮像対称物Bを搬送する搬送ベルト302と、搬送ベルト302を駆動するモータ303とを有する。
【0127】
搬送ベルト302は、撮像装置301による撮像位置をY方向(副走査方向)に通過するように、撮像対称物Bを搬送する。搬送ベルト302およびモータ303は、撮像対称物Bを搬送する搬送部を構成する。なお、搬送部は、搬送ベルト302およびモータ303に限定されるものではなく、撮像対称物BをY方向に搬送できるものであればよい。
【0128】
図16(B)は、撮像装置301を示す断面図である。撮像装置301は、LED素子31がX方向に配列された基板30(図2)の代わりに、複数の受光素子37がX方向に配列された基板36を備える。すなわち、撮像装置301は、実施の形態2の受光装置である読取ヘッド201と同様に構成されている。
【0129】
読取ヘッド201は、出射側(すなわちカバー部材35側)を、搬送ベルト302に対向させるように配置されている。搬送ベルト302上の撮像対称物からの光は、ホルダ40のスリット42、レンズ板14のレンズ面15,16、遮光板21の開口部22a、レンズ板11のレンズ面12,13、およびマスク23の開口部24を通って、受光素子37に集光する。
【0130】
ラインスキャンカメラ300の基本動作は、以下の通りである。搬送ベルト302上に撮像対称物Bを設置し、スタートボタン等のスイッチを押下すると、搬送ベルト302がモータ303によってY方向に移動する。撮像装置301は、撮像対称物Bからの光線を受光し、受光した光信号を電気信号に変換する。
【0131】
ホルダ40のスリット42が、レンズ板14のレンズ面16のY方向の最外側端部よりも内側に形成されているため、基板36の受光素子37に到達する迷光を低減することができる。これにより、読取精度を向上することができる。
【0132】
なお、ここでは撮像装置301と搬送部(搬送ベルト302およびモータ303)とを組み合わせてラインスキャンカメラ300を構成したが、撮像装置301を単体で使用してもよい。
【0133】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。
【0134】
画像形成装置としては、例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置および複合機などがある。画像読取装置としては、例えば、スキャナおよび複合機などがある。
【符号の説明】
【0135】
1 画像形成装置、 3,3Y,3M,3C,3K LEDヘッド(光学装置、露光装置)、 10 レンズユニット、 5,5Y,5M,5C,5K プロセスユニット(画像形成ユニット)、 24 開口部、 11 レンズ板(第2のレンズアレイ)、 12,13 レンズ面、 14 レンズ板(第1のレンズアレイ)、 15,16 レンズ面、 21 遮光板(遮光部材、第1の遮光部材)、 22 開口部、 22a 第1の開口部、 22b 第2の開口部、 23 マスク(第2の遮光部材)、 24 開口部、 30,36 基板、 31 LED素子(発光素子)、 35 カバー、 37 受光素子、 26 カバー部材、 40 ホルダ(保持部材)、 41 対向部(遮光部)、 42 スリット(開口)、 51 感光体ドラム(像担持体)、 52 帯電ローラ(帯電部)、 53 現像ローラ(現像剤担持体)、 54 供給ローラ(現像剤供給部材)、 55 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 6 転写ユニット、 61 転写ローラ(転写部材)、 62 搬送ベルト、 7 媒体供給部、 8 定着ユニット、 9 媒体排出部、 200 画像読取装置、 201 読取ヘッド(光学装置、受光装置)、 203 原稿台、 300 ラインスキャンカメラ(光学装置、撮像装置)、 301 撮像装置、 302 搬送ベルト(駆動部)、 L1 レンズ、 L2 レンズ、 L2a 第1のレンズ、 L2b 第2のレンズ。
図1
図2
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