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特開2022-182589配送計画決定装置及び配送計画決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182589
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】配送計画決定装置及び配送計画決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20221201BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090230
(22)【出願日】2021-05-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】518064374
【氏名又は名称】株式会社オプティマインド
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】深谷 皇紀
(72)【発明者】
【氏名】高田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】斉東 志一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】サービス実行者の熟練度に応じた適切な配送計画を決定可能とすること。
【解決手段】少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得し、少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得し、過去の作業実績に基づいてサービス実行者毎に設定される熟練度情報を取得し、作業単位毎、移動単位毎に予め設定した標準時間情報を取得し、作業単位、移動単位毎に設定され、標準時間情報に乗算する係数情報を取得し、予定される作業単位、移動単位毎に、標準時間に対して係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定時間を算出し、複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を算出した想定時間を用いて解くことによって配送計画を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定するための配送計画決定装置であって、
前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、
少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得部と、
過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得部と、
前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得部と、
前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得部と、
予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出部と、
前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定部と
を備える配送計画決定装置。
【請求項2】
前記熟練度情報は、作業単位毎に複数の前記サービス実行者による平均作業時間を算出し、各サービス実行者の実際の作業時間と前記平均作業時間とを用いて作業単位毎に偏差値を算出して、複数の作業についての偏差値に基づいて、各サービス実行者の熟練度を決定して熟練度情報として記憶させる
請求項1に記載の配送計画決定装置。
【請求項3】
前記係数情報取得部で取得する係数は、熟練度に応じた変化量を作業単位毎、移動単位毎に異ならせて記憶させる
請求項1又は2に記載の配送計画決定装置。
【請求項4】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定する処理をコンピュータに実現させるための配送計画決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、
少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得機能と、
過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得機能と、
前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得機能と、
前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得機能と、
予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出機能と、
前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定機能と
を実現させる配送計画決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス実行者の熟練度に応じた適切な配送計画を決定可能な配送計画決定装置及び配送計画決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、「組合せ最適化」という分野において、主に「現実社会の問題を組合せ最適化問題にモデル化する」「ある組合せ最適化問題に対する解法を考案する」ということが研究されている。そして、組合せ最適化問題の中に「配送計画問題(VRP:vehicle routing problem)」という問題がある。これは複数の車両と複数の訪問先が入力されたとき、すべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルート(訪問先の順序)の中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。何十年も前からVRPに対して現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。またVRPを一般化した問題として「PDP:pickup and delivery problem」という問題がある。これは荷物を積む訪問先とその荷物を降ろす訪問先の組が複数入力されたとき、各組に対して各訪問先を同じ車両が訪れ、さらに積んだあとに降ろすという順序を守った上ですべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルートの中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。PDPもVRP同様に現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、指定された物品を配送先へ運搬するための輸送車の分配の仕方を決定する配送計画を、サービス評価点と配送ルートごとの輸送車の車両数に関する目的関数を用いて立案するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-217168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数サービスそれぞれの訪問先を複数のサービス実行者によって分担して訪問する場合に関して、VRPおよびPDPを用いて、各サービス実行者に対して所定数ずつのサービスを割り当て、かつ、割り当てられた所定数のサービスの実行順序及び最適経路を探索する処理を行うことが行われてきた。このとき、従来は、各サービスの処理に要する作業時間や、2つのサービスの実行地点間の移動に要する移動時間を、サービス実行者に関わらず一律に設定してVRPおよびPDPを解いていた。このように、一律に設定した場合、多数の経験を積んだベテランと仕事を覚え始めた新人とでは実際の作業時間や移動時間に大きな差が生じるが、従来はそのようなサービス実行者の熟練度に応じて変化する実際の作業時間や移動時間を考慮することができなったため、新人にとってはキャパシティーオーバーとなる業務量となってしまったり、熟練度の高いベテランの場合には割り当てられた業務量に余裕があり過ぎて時間を持て余してしまったりというように、実態にそぐわない不適切な配送計画となってしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、サービス実行者の熟練度に応じた適切な配送計画を決定可能な配送計画決定装置及び配送計画決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配送計画決定装置は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定するための配送計画決定装置であって、前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得部と、過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得部と、前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得部と、前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得部と、予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出部と、前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る配送計画決定装置は、前記熟練度情報は、作業単位毎に複数の前記サービス実行者による平均作業時間を算出し、各サービス実行者の実際の作業時間と前記平均作業時間とを用いて作業単位毎に偏差値を算出して、複数の作業についての偏差値に基づいて、各サービス実行者の熟練度を決定して熟練度情報として記憶させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る配送計画決定装置は、前記係数情報取得部で取得する係数は、熟練度に応じた変化量を作業単位毎、移動単位毎に異ならせて記憶させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る配送計画決定プログラムは、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定する処理をコンピュータに実現させるための配送計画決定プログラムであって、前記コンピュータに、前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得機能と、過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得機能と、前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得機能と、前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得機能と、予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出機能と、前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サービス実行者の熟練度に応じた適切な配送計画を決定することが可能な配送計画決定装置及び配送計画決定プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る配送計画決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。
図2】本発明に係る配送計画決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。
図3】本発明に係る配送計画決定装置10における配送計画決定処理の流れを表したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、第1の実施の形態に係る配送計画決定装置の例について説明する。図1は、本発明に係る配送計画決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。なお、配送計画決定装置10は、専用マシンとして設計した装置であってもよいが、一般的なコンピュータやサーバ装置によって実現可能なものであるものとする。この場合に、配送計画決定装置10は、一般的なコンピュータやサーバ装置が通常備えているであろうCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)、メモリ、ハードディスクドライブ等のストレージを具備しているものとする(図示省略)。また、これらの一般的なコンピュータやサーバ装置を本例の配送計画決定装置10として機能させるためにプログラムよって各種処理が実行されることは言うまでもない。
【0014】
図1に示すように、配送計画決定装置を実現するためのシステム全体の構成は、サーバ装置10と、サービス実行者端末201~20n(以下、これら総称してサービス実行者端末20と表現する場合を含む)と、本部端末30とが、通信ネットワーク40を介して相互に接続可能に構成されている。このうち、本部端末30は、サービス提供主体の本部において使用することを想定した端末装置であるが、必須の構成ではない。以下においては、サーバ装置10が本例の配送計画決定装置10として機能する場合を例として説明を行う。
【0015】
図2は、本発明に係る配送計画決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。この図2に示すように、配送計画決定装置10は、サービス特定情報取得部11と、サービス実行者情報取得部12と、熟練度情報取得部13と、標準時間情報取得部14と、係数情報取得部15と、想定時間算出部16と、配送計画決定部17と、記憶部18とを少なくとも備えている。
【0016】
サービス特定情報取得部11は、複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得する機能を有する。
【0017】
ここで、本例においてサービスとは、車両等の移動体を停車(停止)して作業を行う必要のある業務の切り分け単位のことをいう。一例として、荷物をある地点で集荷して他の地点まで配送する業務の場合には、集荷サービス(ピックアップサービス)と配送サービス(デリバリーサービス)とがそれぞれ必要なサービスとなる。
【0018】
また、サービス特定情報とは、集荷、配送など各サービスの種別情報、各サービスに関する実行地点情報、各サービスで扱う荷物情報などの各サービスの内容を特定するために必要な情報のことをいう。
【0019】
また、実行地点情報とは、サービスを実行する位置を特定するための情報のことをいう。例えば、住所で与えられる位置情報や、緯度経度によって指定される位置情報が挙げられる。本例において、サービスについての実行地点として取得する位置情報は、そのサービスを実行する場所を代表する1地点に関する位置情報であるものとする。本例における配送計画決定装置10は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定することを前提としたものである。そのため、このサービス特定情報取得部11においては、処理する可能性のある複数のサービスのそれぞれの実行地点の情報を取得する。
【0020】
なお、配送計画が決まった個所から出発して決まった個所へ帰るものである場合には、常に固定の出発地点及び帰着地点の情報を利用すればよいが、車両の現在位置、もしくは、ある時刻の時点での車両の予想位置に基づいて配送計画を作成するためには、車両の現在位置又は将来の予想位置の情報を取得する必要がある。その場合、車両位置情報を取得することができればどのような手段であっても構わないが、例えば、車両のGPS情報、若しくは、車両に搭乗するサービス実行者が保持するサービス実行者端末20が備えるGPS機能に基づいて取得された位置情報を取得するようにしてもよい。
【0021】
サービス実行者情報取得部12は、少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得する機能を有する。
【0022】
ここで、サービス実行者情報とは、サービス実行者を特定するための情報のことをいう。サービス実行者情報は、サービス実行者を特定可能であればどのような情報であってもよく、氏名によって特定する場合もあり得るし、氏名を用いずに、識別IDによって個人を特定する場合もあり得る。ここで取得するサービス実行者情報は、本例に基づいて配送計画を決定する所定の時間枠においてサービスの実行を担当可能な全てのサービス実行者についてのサービス実行者情報である。
【0023】
熟練度情報取得部13は、過去の作業実績に基づいてサービス実行者毎に設定される熟練度情報を、サービス実行者情報に基づいて取得する機能を有する。
【0024】
ここで、熟練度情報とは、想定されるサービスを実行する際の手際の良さや、サービス実行地点に移動する際の移動の効率の良さなど、サービスの実行に関する技術の熟練の度合いを表す情報のことをいい、サービス実行者毎に設定されるものである。熟練度情報は、どのような設定手法であってもよい。例えば、過去の作業実績に基づいて管理者が判断して設定する手法が考えられる。また、例えば、作業単位毎に複数のサービス実行者による平均作業時間を算出し、各サービス実行者の実際の作業時間と平均作業時間とを用いて作業単位毎に偏差値を算出して、複数の作業についての偏差値に基づいて、各サービス実行者の熟練度を決定する手法が考えられる。より具体的には、複数の作業についての偏差値の平均値を算出して、偏差値の平均値の値に応じて熟練度を示すランクを設定するという手法が考えられ、例えば、平均偏差値65以上は熟練度6、平均偏差値60以上65未満は熟練度5、平均偏差値55以上60未満は熟練度4、平均偏差値50以上55未満は熟練度3、平均偏差値45以上50未満は熟練度2、平均偏差値45未満は熟練度1というように、偏差値の分布帯ごとに熟練度を設定することが考えられる。設定した熟練度情報は、サービス実行者情報に関連付けて、例えば記憶部18に記憶させる。
【0025】
標準時間情報取得部14は、複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する機能を有する。なお、標準作業時間情報と標準移動時間情報の両方含む表現として標準時間情報との文言を用いる場合がある。
【0026】
ここで、標準作業時間、標準移動時間は、複数のサービス実行者のうちの多数の者にとって標準的な作業時間、移動時間を表したものをいう。標準作業時間、標準移動時間は、管理者側で設定するものであってもよいし、複数のサービス実行者の実際の作業時間、移動時間に基づいて算出されたものであってもよい。より具体的には、複数のサービス実行者の実際の作業時間、移動時間の平均値を、標準作業時間、標準移動時間として設定するようにしてもよい。また、サービス毎の作業単位は、車両を停車させてからサービスを実行して再度車両を発進させるまでを作業単位として標準作業時間を設定してもよいし、さらに細かい作業単位に分割して標準作業時間を設定してもよい。また、2つの実行地点の間を移動する際の移動単位は、2地点間の移動を移動単位として標準移動時間を設定してもよいし、さらに細かい移動単位、例えば、ある交差点から次の交差点までの移動を移動単位として標準移動時間を設定して、それらの組み合わせで2地点間の移動に要する標準移動時間を算出してもよい。
【0027】
係数情報取得部15は、作業単位、移動単位毎に設定され、標準作業時間及び/又は標準移動時間に乗算する係数情報を、熟練度情報に基づいて取得する機能を有する。
【0028】
ここで、係数情報とは、標準作業時間、標準移動時間に対して乗算することで、熟練度に応じて想定作業時間や想定移動時間を変化させるために用いる係数のことをいう。作業内容や移動区間によって、熟練度に応じて大きく所要時間が変化する作業、移動もある反面、熟練度に関わらずほぼ同じ所要時間を要する作業、移動もあるため、作業単位、移動単位毎に熟練度に対して設定する係数を変化させることで、想定作業時間や想定移動時間を算出する際の熟練度の影響を作業単位、移動単位毎に調整することが可能となる。
【0029】
想定時間算出部16は、予定される作業単位、移動単位毎に、標準作業時間及び/又は標準移動時間に対して係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する機能を有する。なお、想定作業時間情報と想定移動時間情報の両方含む表現として想定時間情報との文言を用いる場合がある。
【0030】
ここで、想定作業時間、想定移動時間は、熟練度の影響を反映させることでその熟練度のサービス実行者に実際に想定される所要時間を表している。標準作業時間、標準移動時間に対して作業単位、移動単位毎に設定された係数情報を乗算することで、作業単位、移動単位でそれぞれ異なる熟練度の影響を反映させた想定作業時間、想定移動時間を得ることが可能となる。全ての作業、全ての移動について、熟練度に応じて一律に係数を設定して想定作業時間、想定移動時間を算出すると、実現不可能な想定作業時間、想定移動時間が設定されてしまう可能性があるが、本例のように、作業単位、移動単位でそれぞれ熟練度の影響を異ならせて想定作業時間、想定移動時間を算出することで、実現可能な現実的な範囲において想定作業時間、想定移動時間を設定することが可能となる。
【0031】
配送計画決定部17は、複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を想定作業時間及び/又は想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する機能を有する。
【0032】
ここで、配送計画は、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれに対して割り当てるサービスの組み合わせ、割り当てたサービスの実行順序、割り当てたサービスを順次実行する際の最適経路を指示するための情報をいう。サービス組み合わせ、実行順序、最適経路について、必ずしも全てを配送計画として決定する必要はないが、全て決定されるものであることが好ましい。サービス実行者の熟練度に応じて決定される想定作業時間及び/又は想定移動時間に基づいて配送計画における作業単位、移動単位での所要時間を想定することで、各サービス実行者に対して何れの組み合わせでサービスを担当させれば時間枠の範囲内で処理可能であるかを高精度に決定することができるので、実際の所要時間とのずれの少ない配送計画を策定することが可能となる。なお、配送計画の決定のための組み合わせ最適化問題は、例えば、既知のVRPおよびPDPなどによって解を算出する。
【0033】
記憶部18は、配送計画決定装置10において行われる様々な処理で必要なデータ及び処理の結果として得られたデータを記憶させる機能を有する。例えば、図2に示すように、サービス特定情報、サービス実行者情報、熟練度情報、標準時間情報、係数情報などについては、この記憶部18に記憶させるようにしてもよい。
【0034】
次に、本発明に係る配送計画決定装置10における配送計画決定処理の流れについて説明を行う。図3は、本発明に係る配送計画決定装置10における配送計画決定処理の流れを表したフローチャート図である。この図3に示すように、配送計画決定処理は、複数のサービスそれぞれについての実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得することによって開始される(ステップS101)。次に、配送計画決定装置10は、サービス実行者情報を取得する(ステップS102)。次に、配送計画決定装置10は、サービス実行者毎に設定された熟練度情報を取得する(ステップS103)。次に、配送計画決定装置10は、標準時間情報を取得する(ステップS104)。次に、配送計画決定装置10は、係数情報を取得する(ステップS105)。次に、配送計画決定装置10は、標準時間情報と係数情報とを用いて想定時間情報を算出する(ステップS106)。そして、配送計画決定装置10は、想定時間情報をパラメータとして利用して組み合わせ最適化問題を解くことで配送計画を決定し(ステップS107)、配送計画決定処理を終了する。
【0035】
以上のように、本例による配送計画決定装置10によれば、前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得部と、過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得部と、前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得部と、取得した前記熟練度情報に基づいて、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を取得する係数情報取得部と、予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出部と、前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定部とを備えるようにしたので、作業単位、移動単位でそれぞれ熟練度の影響を異ならせて想定作業時間、想定移動時間を算出することで、実現可能な現実的な範囲において想定作業時間、想定移動時間を設定することが可能となり、これにより、熟練度に応じて各サービス実行者に対して何れの組み合わせでサービスを担当させれば時間枠の範囲内で処理可能であるかを高精度に決定することができるので、実際の所要時間とのずれの少ない配送計画を策定することが可能となる。
【0036】
なお、本発明におけるサービスとしては、宅配サービス、店舗への卸業、自動販売機のメンテナンス、訪問医療/訪問介護、乗合いタクシーなど、複数の拠点における作業を複数の車両で分担して担当するという形態の業種であれば、本発明を適用可能である。
【0037】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 配送計画決定装置
11 サービス特定情報取得部
12 車両関連情報取得部
13 コスト情報取得部
14 配送計画決定部
15 係数情報取得部
16 想定時間算出部
17 配送計画決定部
18 記憶部
20 サービス実行者端末
30 本部端末
40 通信ネットワーク
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定するための配送計画決定装置であって、
前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、
少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得部と、
過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得部と、
前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得部と、
前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得部と、
予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出部と、
前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定部とを備え、
前記熟練度情報は、作業単位毎に複数の前記サービス実行者による平均作業時間を算出し、サービス実行者毎に実際の作業時間と前記平均作業時間とを用いて作業単位毎の偏差値を算出し、サービス実行者毎に複数の作業についての偏差値の平均値を算出してその偏差値の平均値に基づいてサービス実行者毎の熟練度を示すランクを決定して熟練度情報として記憶させ、
前記係数情報取得部で取得する係数は、作業単位毎、移動単位毎に、熟練度を示すランクの作業時間、移動時間への影響を係数の変化量に反映させて記憶させる
配送計画決定装置。
【請求項2】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスについて、少なくとも1以上のサービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び最適経路を決定する処理をコンピュータに実現させるための配送計画決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数のサービスそれぞれについて、少なくとも実行地点の情報を含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、
少なくとも1以上の前記サービス実行者を特定するためのサービス実行者情報を取得するサービス実行者情報取得機能と、
過去の作業実績に基づいて前記サービス実行者毎に設定される熟練度情報を、前記サービス実行者情報に基づいて取得する熟練度情報取得機能と、
前記複数のサービスそれぞれの実行地点において実行する作業単位毎に予め設定した標準作業時間、及び/又は、前記複数のサービスのうちの何れか2つの実行地点の間を移動する際の移動単位毎に予め設定した標準移動時間を取得する標準時間情報取得機能と、
前記作業単位、前記移動単位毎に設定され、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に乗算する係数情報を、前記熟練度情報に基づいて取得する係数情報取得機能と、
予定される作業単位、移動単位毎に、前記標準作業時間及び/又は前記標準移動時間に対して前記係数情報を乗算することで熟練度に応じた想定作業時間及び/又は想定移動時間を算出する想定時間算出機能と、
前記複数のサービスについて、所定の時間枠の範囲内において少なくとも1以上の前記サービス実行者のそれぞれが実行可能なサービスの組み合わせ、実行順序及び/又は最適経路についての組み合わせ最適化問題を前記想定作業時間及び/又は前記想定移動時間を用いて解くことによって配送計画を決定する配送計画決定機能とを実現させ、
前記熟練度情報は、作業単位毎に複数の前記サービス実行者による平均作業時間を算出し、サービス実行者毎に実際の作業時間と前記平均作業時間とを用いて作業単位毎の偏差値を算出し、サービス実行者毎に複数の作業についての偏差値の平均値を算出してその偏差値の平均値に基づいてサービス実行者毎の熟練度を示すランクを決定して熟練度情報として記憶させ、
前記係数情報取得部で取得する係数は、作業単位毎、移動単位毎に、熟練度を示すランクの作業時間、移動時間への影響を係数の変化量に反映させて記憶させる
配送計画決定プログラム。