(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018259
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220120BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121241
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 寛
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB58
2C056EC69
2C056EC79
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA33
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】印刷画質の低下を軽減できる印刷装置を提供する。
【解決手段】搬送部3は、エア吸引により用紙Pを吸着保持して搬送する。印刷部4は、 搬送部3により搬送される用紙Pに複数色のインクを吐出して印刷を行う。制御部は、印刷部4を制御する。また、制御部は、搬送部3により搬送される用紙Pの先端部の先端側所定範囲および後端部の後端側所定範囲の少なくともいずれかにおいて、複数色のインクのうちの最も明度が高い色のインク以外のいずれかの単色のインクによる印刷領域の印刷を、当該単色のインクよりも明度が高い少なくとも1色のインクによる当該印刷領域の印刷に変更するインク変更処理を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア吸引により用紙を吸着保持して搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される用紙に複数色のインクを吐出して印刷を行う印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記搬送部により搬送される用紙の先端部の先端側所定範囲および後端部の後端側所定範囲の少なくともいずれかにおいて、前記複数色のインクのうちの最も明度が高い色のインク以外のいずれかの単色のインクによる印刷領域の印刷を、当該単色のインクよりも明度が高い少なくとも1色のインクによる当該印刷領域の印刷に変更するインク変更処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記単色のインクによる印刷領域の印字率が閾値未満である場合には、当該印刷領域に対する前記インク変更処理を行わずに、当該印刷領域を前記単色のインクで印刷するよう前記印刷部を制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記先端側所定範囲における前記インク変更処理を、一連の印刷動作における1枚目の用紙のみに対して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記後端側所定範囲における前記インク変更処理を、一連の印刷動作における最終枚目の用紙のみに対して行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷部は、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを吐出するものであり、
前記インク変更処理は、ブラックのインクのみによる黒色の印刷領域の印刷を、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによる当該印刷領域の黒色の印刷に変更する処理であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送しつつ、固定のインクジェットヘッドから用紙へインクを吐出して印刷する印刷装置が知られている。この種の印刷装置では、用紙を搬送するために、いわゆるエア吸引方式の搬送機構が広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
エア吸引方式の搬送機構では、ファンにより、搬送ベルトに設けられた多数の吸引孔を介して空気を吸引し、吸引孔に発生する吸着力で用紙を搬送ベルト上に吸着保持する。搬送ベルトが用紙を吸着保持しつつ移動することで、用紙を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したエア吸引方式の搬送機構を備えた印刷装置では、用紙の先端付近および後端付近に画像を印刷する際、インクジェットヘッドから吐出されたインクが搬送機構の吸引風の影響を受けやすい。このため、インクミストの増加やインクの着弾ずれによる印刷画質の低下が生じることがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を軽減できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の印刷装置は、エア吸引により用紙を吸着保持して搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される用紙に複数色のインクを吐出して印刷を行う印刷部と前記印刷部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記搬送部により搬送される用紙の先端部の先端側所定範囲および後端部の後端側所定範囲の少なくともいずれかにおいて、前記複数色のインクのうちの最も明度が高い色のインク以外のいずれかの単色のインクによる印刷領域の印刷を、当該単色のインクよりも明度が高い少なくとも1色のインクによる当該印刷領域の印刷に変更するインク変更処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の印刷装置によれば、印刷画質の低下を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の給紙部、搬送部、および印刷部の概略構成図である。
【
図3】
図1に示す印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】搬送部の吸引風による印刷画質への影響を説明するための図である。
【
図6】搬送部の吸引風による印刷画質への影響を説明するための図である。
【
図7】搬送部の吸引風による印刷画質への影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0011】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示す印刷装置の給紙部、搬送部、および印刷部の概略構成図である。以下の説明において、
図2の紙面に直交する方向を前後方向とする。また、
図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図2において、左から右へ向かう方向が、印刷媒体である用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、搬送部3と、印刷部4と、制御部5とを備える。
【0014】
給紙部2は、用紙Pを搬送部3へ給紙する。給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、給紙モータ13と、レジストローラ14と、レジストモータ15とを備える。
【0015】
給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。
【0016】
給紙ローラ12は、給紙台11から用紙Pを1枚ずつピックアップして搬送し、用紙Pをレジストローラ14に突き当てて停止させる。
【0017】
給紙モータ13は、給紙ローラ12を回転駆動させる。
【0018】
レジストローラ14は、給紙ローラ12により搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、搬送部3に向けて搬送する。
【0019】
レジストモータ15は、レジストローラ14を回転駆動させる。
【0020】
搬送部3は、給紙部2により給紙された用紙Pをエア吸引により吸着保持して搬送する。搬送部3は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23~25と、駆動モータ26と、ファン27とを備える。
【0021】
搬送ベルト21は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23~25に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、全面に多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。搬送ベルト21は、ファン27の駆動により吸引孔に発生する吸着力により、搬送面21aに用紙Pを吸着保持する。搬送面21aは、駆動ローラ22と従動ローラ23との間の搬送ベルト21の水平部分の上面である。搬送ベルト21は、
図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0022】
駆動ローラ22は、搬送ベルト21を
図2における時計回り方向に回転させる。
【0023】
従動ローラ23~25は、駆動ローラ22とともに搬送ベルト21を支持する。従動ローラ23~25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動回転する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と同じ高さで、駆動ローラ22の左方に配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0024】
駆動モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させる。
【0025】
ファン27は、下方向への気流を生じさせる。これにより、ファン27は、搬送ベルト21の吸引孔を介して空気を吸引して吸引孔に吸着力を発生させ、用紙Pを搬送面21a上に吸着させる。ファン27は、搬送ベルト21に囲まれた領域に配置されている。
【0026】
印刷部4は、搬送部3により搬送される用紙Pにインクを吐出して印刷を行う。印刷部4は、搬送部3の上方に配置されている。印刷部4は、左右方向においては、搬送部3の中央に配置されている。印刷部4は、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yを備える。なお、インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0027】
インクジェットヘッド31は、搬送部3により搬送される用紙Pにインクを吐出する。インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド31K,31C,31M,31Yは、搬送部3の上方において、上流側からこの順で、用紙Pの搬送方向(左右方向)に沿って、均等な間隔を空けて並列配置されている。
【0028】
インクジェットヘッド31は、主走査方向(前後方向)に沿って配置された複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。
【0029】
制御部5は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0030】
具体的には、制御部5は、給紙部2により用紙Pを給紙し、給紙された用紙Pを搬送部3により搬送しつつ、印刷部4の各インクジェットヘッド31からインクを吐出して用紙Pに印刷するよう制御する。
【0031】
制御部5は、印刷ジョブに基づく一連の印刷動作における1枚目の用紙Pの先端部の処理対象範囲E(先端側所定範囲に相当、
図4参照)に、印字率が所定の閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域がある場合、当該黒色の印刷領域に対するインク変更処理を行う。具体的には、制御部5は、インク変更処理として、印字率が所定の閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域の印刷を、ブラックのインクよりも明度が高い(視認性が低い)シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによるコンポジットでの当該印刷領域の黒色の印刷に変更する処理を行う。
【0032】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0033】
図3は、印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図3のフローチャートの処理は、印刷ジョブが印刷装置1に入力されることにより開始となる。
【0034】
図3のステップS1において、制御部5は、印刷ジョブを処理して得られた印刷対象の各インク色の画像データに基づき、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eに印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域があるか否かを判断する。
【0035】
ここで、処理対象範囲Eは、
図4に示すように、用紙Pの搬送方向における先端から所定距離の範囲である。処理対象範囲Eは、用紙Pの先端部において、印刷画質が搬送部3のエア吸引により発生する吸引風W(
図5参照)の影響を受けやすい範囲として設定されたものである。処理対象範囲Eは、実験等に基づき設定されている。
【0036】
また、上述のブラックのインクのみによる黒色の印刷領域の印字率の閾値は、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eにおいて吸引風Wの影響による印刷画質の低下が発生するか否かの判断基準として設定された値である。この印字率の閾値は、実験等に基づき設定されている。
【0037】
また、上述の各インク色の画像データは、インク色ごとに各画素に対するインク吐出量(ドロップ数)を示すデータである。
【0038】
図3に戻り、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eに印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域があると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部5は、前述のインク変更処理を行って印刷を実行する。
【0039】
具体的には、制御部5は、ブラックの画像データにおける、1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内の印字率が閾値以上である黒色の印刷領域の各画素のインク吐出量(ドロップ数)を、シアン、マゼンタ、およびイエローの画像データにおける当該印刷領域の各画素のインク吐出量に置き換える。このブラックのインク吐出量のシアン、マゼンタ、およびイエローのインク吐出量への置き換えは、例えば、予め用意されたテーブルに基づき行うことができる。
【0040】
次いで、制御部5は、搬送部3の駆動を開始させる。次いで、制御部5は、給紙部2から用紙Pを搬送部3へ順次給紙させる。給紙された用紙Pは、搬送部3において、所定の紙間で搬送される。
【0041】
制御部5は、画像データに基づき、搬送部3により搬送される各用紙Pに対してインクを吐出して印刷を行うよう印刷部4を制御する。この際、1枚目の用紙Pに対しては、上述したインク吐出量の置き換えを行った後の画像データに基づく印刷が行われる。すなわち、1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内の印字率が閾値以上である黒色の印刷領域が、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによるコンポジットで印刷される。
【0042】
1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内のブラックのインクのみによる黒色の印刷領域であっても、印字率が閾値未満の印刷領域は、ブラックのインクで印刷される。
【0043】
印刷ジョブにおける印刷枚数分の印刷が終了すると、一連の動作が終了となる。
【0044】
1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eに印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域はないと判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS3において、制御部5は、通常の印刷を実行する。この場合、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eにブラックのインクのみによる黒色の印刷領域があっても、当該領域の印字率が閾値未満であるため、制御部5は、インク変更処理は行わず、当該印刷領域をブラックのインクで印刷するよう印刷部4を制御する。印刷ジョブにおける印刷枚数分の印刷が終了すると、一連の動作が終了となる。
【0045】
上述のような印刷動作において、1枚目の用紙Pの先端付近に最上流のインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する場合、
図5に示すように、1枚目の用紙Pの先端より下流側には、広い開放領域がある。このため、1枚目の用紙Pの先端付近にインクジェットヘッド31Kから吐出されたインクは、搬送部3の吸引風Wの影響を受けやすく、インクミストの増加やインクの着弾ずれが生じやすい。また、ブラックのインクは他の色のインクより明度が低く、視認性が高い。
【0046】
このことから、1枚目の用紙Pの先端付近にインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する場合、1枚目の用紙Pの先端付近で印刷画質の低下が生じやすい。また、印字率が高いほど、吸引風Wの影響による印刷画質の低下が生じやすい。
【0047】
ここで、上述の開放領域は、搬送面21a上に用紙Pがなく吸引孔が開放されている領域である。
【0048】
一方、インクジェットヘッド31Kより下流側のインクジェットヘッド31C,31M,31Yから1枚目の用紙Pの先端付近にインクを吐出する場合については、1枚目の用紙Pの先端より下流側の開放領域が比較的狭いため、吸引風Wの印刷画質への影響は比較的小さい。
【0049】
例えば、最下流のインクジェットヘッド31Yから1枚目の用紙Pの先端付近にインクを吐出する場合、
図6に示すように、1枚目の用紙Pの先端より下流側の開放領域は狭い。このため、インクジェットヘッド31Yから1枚目の用紙Pの先端付近に吐出されたインクに対する吸引風Wの影響は比較的小さい。
【0050】
また、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクは、ブラックのインクより明度が高く、視認性が低い。この点からも、インクジェットヘッド31C,31M,31Yから1枚目の用紙Pの先端付近にインクを吐出する場合における印刷画質への影響は比較的小さい。
【0051】
また、1枚目の用紙Pの先端付近に最上流のインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する際に1枚目の用紙Pの先端より下流側に広い開放領域があるのと同様に、最終枚目の用紙Pの後端付近に最下流のインクジェットヘッド31Yからインクを吐出する場合、最終枚目の用紙Pの後端より下流側には、広い開放領域がある。このため、最終枚目の用紙Pの後端付近にインクジェットヘッド31Yから吐出されたインクは、1枚目の用紙Pの先端付近にインクジェットヘッド31Kから吐出されたインクと同様に、搬送部3の吸引風の影響を受けやすく、インクミストの増加やインクの着弾ずれが生じやすい。
【0052】
しかしながら、インクジェットヘッド31Yが吐出するイエローインクは明度が高く、視認性が低い。このため、インクジェットヘッド31Yから最終枚目の用紙Pの後端付近にインクを吐出する場合でも、吸引風Wの印刷画質への影響は比較的小さい。
【0053】
また、インクジェットヘッド31Yより上流側のインクジェットヘッド31K,31C,31Mから最終枚目の用紙Pの後端付近にインクを吐出する場合については、最終枚目の用紙Pの後端より上流側の開放領域が比較的狭い。このため、吸引風Wの印刷画質への影響は比較的小さい。
【0054】
2枚目以降の用紙Pの先端付近については、最上流のインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する場合でも、
図7に示すように、当該用紙Pの先端より下流側の開放領域は紙間の領域に限られる。このため、2枚目以降の用紙Pの先端付近における吸引風Wの印刷画質への影響は比較的小さい。同様に、1枚目から最終枚目の1枚前までの用紙Pの後端付近における吸引風Wの印刷画質への影響は比較的小さい。
【0055】
上述のような吸引風Wの印刷画質への影響を考慮して、印刷装置1では、前述のインク変更処理により、1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内の印字率が閾値以上である黒色の印刷領域の印刷を、ブラックのインクのみによる印刷から、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによるコンポジットでの印刷に変更している。
【0056】
なお、印刷ジョブにおける印刷枚数が1枚のみの場合は、その用紙Pの処理対象範囲E内の印字率が閾値以上である黒色の印刷領域が、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによるコンポジットで印刷される。
【0057】
以上説明したように、印刷装置1では、制御部5は、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eにおける印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域の印刷を、ブラックのインクよりも明度が高いシアン、マゼンタ、およびイエローのインクによる当該印刷領域の黒色の印刷に変更するインク変更処理を行う。これにより、1枚目の用紙Pの処理対象範囲Eにおいて吸引風Wの影響による印刷画質の低下が生じやすい、印字率が閾値以上であるブラックのインクによる黒色の印刷領域の印刷が、ブラックのインクよりも印刷画質への影響が小さいシアン、マゼンタ、およびイエローのインクによる印刷に置き換えられるので、印刷画質の低下を軽減できる。
【0058】
また、制御部5は、1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内のブラックのインクのみによる黒色の印刷領域であっても、その印字率が閾値未満である場合には、当該印刷領域に対するインク変更処理は行わず、当該印刷領域をブラックのインクで印刷するよう印刷部4を制御する。これにより、1枚目の用紙Pの処理対象範囲E内のブラックのインクのみによる黒色の印刷領域であっても、印字率が低いため吸引風Wの影響による印刷画質の低下が生じにくい印刷領域に対するインク変更処理が省略されるので、印刷時の制御を簡略化できる。
【0059】
また、制御部5は、1枚目の用紙Pのみに対して、処理対象範囲Eにおける印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域に対するインク変更処理を行う。これにより、処理対象範囲E内の印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域であっても、用紙Pの先端付近における吸引風Wの影響による印刷画質の低下が生じにくい2枚目以降においてはインク変更処理が省略されるので、印刷時の制御を簡略化できる。
【0060】
なお、上述した実施の形態では、1枚目の用紙Pのみをインク変更処理の対象としたが、2枚目以降の用紙Pもインク変更処理の対象としてもよい。これにより、2枚目以降の用紙Pにおいても、吸引風Wの影響による印刷画質の低下を軽減できる。
【0061】
また、上述した実施の形態では、印字率が閾値以上であるブラックのインクのみによる黒色の印刷領域をインク変更処理の対象としたが、印字率にかかわらず、ブラックのインクのみによる黒色の印刷領域をインク変更処理の対象としてもよい。
【0062】
また、用紙Pの後端部に処理対象範囲E(後端側所定範囲に相当、図示せず)を設け、最終枚目の用紙Pのみをインク変更処理の対象としてもよい。例えば、ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッド31Kと搬送部3との位置関係によっては、1枚目の用紙Pの先端付近にインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する際の1枚目の用紙Pの先端より下流側の開放空間よりも、最終枚目の用紙Pの後端付近にインクジェットヘッド31Kからインクを吐出する際の最終枚目の用紙Pの後端より上流側の開放空間の方が大きい場合がある。このような場合において、用紙Pの後端部に処理対象範囲Eを設け、最終枚目の用紙Pのみをインク変更処理の対象としてもよい。用紙Pの後端部の処理対象範囲Eにおいても、上述した用紙Pの先端部の処理対象範囲Eに対するインク変更処理と同様の処理が行われる。これにより、上述した用紙Pの先端部に処理対象範囲Eを設けた場合と同様に、印刷画質の低下を軽減できる。
【0063】
また、最終枚目の用紙Pのみに対して後端部の処理対象範囲Eにおけるインク変更処理を行うことで、用紙Pの後端付近における吸引風Wの影響による印刷画質の低下が生じにくい最終枚目より前の用紙Pにおいてはインク変更処理が省略されるので、印刷時の制御を簡略化できる。
【0064】
なお、上述のように用紙Pの後端部に処理対象範囲Eを設けた場合において、最終枚目より前の用紙Pもインク変更処理の対象としてもよい。
【0065】
また、用紙Pの先端部および後端部に処理対象範囲Eを設けてもよい。すなわち、用紙Pの先端部および後端部の少なくともいずれかに処理対象範囲Eを設ければよい。用紙Pの先端部および後端部に処理対象範囲Eを設けた場合において、1枚目の用紙Pの先端部の処理対象範囲Eおよび最終枚目の用紙Pの先端部の処理対象範囲Eのみをインク変更処理の対象としてもよい。また、用紙Pの先端部および後端部に処理対象範囲Eを設けた場合において、すべての用紙Pの先端部の処理対象範囲Eおよび後端部の処理対象範囲Eをインク変更処理の対象としてもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態では、印刷部4が吐出するインクがブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクとした。そして、インク変更処理において、ブラックのインクによる印刷を、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによる印刷に変更した。しかし、印刷部4が吐出する複数のインク色の組み合わせ、およびインク変更処理において変更される色および変更後の色の組み合わせはこれに限らない。インク変更処理は、複数色のインクのうちの最も明度が高い色のインク以外のいずれかの単色のインクによる印刷領域の印刷を、当該単色のインクよりも明度が高い少なくとも1色のインクによる当該印刷領域の印刷に変更するものであればよい。
【0067】
例えば、インク変更処理は、印刷部4が吐出するインクにブルー、シアン、およびマゼンタのインクが含まれる場合において、ブルーのインクのみによる印刷領域の印刷を、ブルーのインクよりも明度が高いシアンおよびマゼンタのインクによる当該印刷領域の印刷に変更するものであってもよい。また、インク変更処理は、印刷部4が吐出するインクにブルー、シアン、およびイエローのインクが含まれる場合において、ブルーのインクのみによる印刷領域の印刷を、ブルーのインクよりも明度が高いシアンおよびイエローのインクによる当該印刷領域の印刷に変更するものであってもよい。
【0068】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0069】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0070】
(付記1)
エア吸引により用紙を吸着保持して搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される用紙に複数色のインクを吐出して印刷を行う印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記搬送部により搬送される用紙の先端部の先端側所定範囲および後端部の後端側所定範囲の少なくともいずれかにおいて、前記複数色のインクのうちの最も明度が高い色のインク以外のいずれかの単色のインクによる印刷領域の印刷を、当該単色のインクよりも明度が高い少なくとも1色のインクによる当該印刷領域の印刷に変更するインク変更処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【0071】
(付記2)
前記制御部は、前記単色のインクによる印刷領域の印字率が閾値未満である場合には、当該印刷領域に対する前記インク変更処理を行わずに、当該印刷領域を前記単色のインクで印刷するよう前記印刷部を制御することを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
【0072】
(付記3)
前記制御部は、前記先端側所定範囲における前記インク変更処理を、一連の印刷動作における1枚目の用紙のみに対して行うことを特徴とする付記1または2に記載の印刷装置。
【0073】
(付記4)
前記制御部は、前記後端側所定範囲における前記インク変更処理を、一連の印刷動作における最終枚目の用紙のみに対して行うことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0074】
(付記5)
前記印刷部は、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを吐出するものであり、
前記インク変更処理は、ブラックのインクのみによる黒色の印刷領域の印刷を、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクによる当該印刷領域の黒色の印刷に変更する処理であることを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置
2 給紙部
3 搬送部
4 印刷部
5 制御部
21 搬送ベルト
21a 搬送面
27 ファン
31,31K,31C,31M,31Y インクジェットヘッド
E 処理対象範囲