IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子計測器用筐体 図1
  • 特開-電子計測器用筐体 図2
  • 特開-電子計測器用筐体 図3
  • 特開-電子計測器用筐体 図4
  • 特開-電子計測器用筐体 図5
  • 特開-電子計測器用筐体 図6
  • 特開-電子計測器用筐体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182626
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電子計測器用筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H05K5/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090285
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 友彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
(72)【発明者】
【氏名】深江 友則
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB08
4E360AD01
4E360EA23
4E360ED02
4E360ED28
4E360GA54
4E360GB99
4E360GC04
(57)【要約】
【課題】正面側のボタン、コネクタおよび液晶画面の保護を兼ね、筐体への固定部品は変更せずに、異なる筐体サイズにグリップをフレキシブルに対応させることができる電子計測器用筐体を提供する。
【解決手段】電子計測器用筐体1において、各面が四角形の六面体で形成される筐体2と、筐体2における1つの面である操作面7において隣接する対の隅部14のそれぞれに基端部15が固定され、操作面7の四角形外へ突出する一対の腕部3と、対となる隅部14間の距離に応じた長さに形成され、一対の腕部3におけるそれぞれの突出先端部16に長手方向の両端部が固定される棒状のグリップ4と、を設けた。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各面が四角形の六面体で形成される筐体(2)と、
前記筐体における1つの面(7)において隣接する対の隅部(14)のそれぞれに基端部(15)が固定され、前記1つの面の四角形外へ突出する一対の腕部(3)と、
前記対となる隅部間の距離に応じた長さに形成され、前記一対の腕部におけるそれぞれの突出先端部(16)に長手方向の両端部が固定される棒状のグリップ(4)と、
を具備することを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項2】
前記一対の腕部と前記グリップとが、コ字状の把手(17)を構成し、
前記1つの面において対となる隅部と、前記1つの面において他の対となる隅部との双方に、前記把手が固定され、
双方の前記把手は、それぞれの前記腕部が前記1つの面の四角形外へ突出しつつ、前記1つの面を挟んで前記筐体と反対側となる手前に傾斜し、かつ前記対となる隅部をつなぐ辺部(5,6)と前記グリップとの間に、手指の入る間隙(28)を有することを特徴とする請求項1に記載の電子計測器用筐体。
【請求項3】
前記1つの面における対角に固定される前記腕部が同一形状となることを特徴とする請求項2に記載の電子計測器用筐体。
【請求項4】
前記腕部が、前記基端部にコーナー部(42)を有し、前記コーナー部は、前記1つの面とそれに隣り合う2つの側面(31,46)とが交わる3面頂角部(37)を覆うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子計測器用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
計測器等の電子計測器の設置位置の変更などの際には電子計測器を移動させるために運搬しなくてはならない。また、測定対象物が重量物であったり、固定され移動させることができない場合に、この測定対象物を計測するためには、計測器等の電子計測器を測定対象物の傍まで運搬しなくてはならない。そのため、電子計測器用筐体には、コ字形や半円形などの把手が備えられる。従来、電子計測器用筐体では、筐体のサイズに合わせた大きさの把手部品が専用のものになっている。特に、正面把手は、落下時の正面側のボタンやコネクタ、スイッチおよび液晶画面等の保護を兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アンリツ株式会社、RF/Microwave Signal Generator「MG3690C」(カタログNo.11410-01119,Rev.B Printed in United States 2019-06)https://dl.cdn-anritsu.com/en-us/test-measurement/files/Brochures-Datasheets-Catalogs/Brochure/11410-01119B.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、把手は、従来、筐体サイズが少品種で定まっており、かつ数量も見込めたため、筺体に適した型成形で一体成形していたが、近年、顧客のニーズに合わせた筐体サイズの製品が増えたことから、多品種少量生産の機種が多くなり、品種ごとに専用の把手部品を型成形すれば、成形型の製作コスト、管理コストが嵩むことになる。また、専用の把手部品は、顧客のニーズにより規格に合わない筐体サイズに対しては取り付けることができない。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、正面側のボタンやスイッチ,コネクタおよび液晶画面等の保護を兼ね、筐体への固定部品は変更せずに、異なる筐体サイズにグリップをフレキシブルに対応させることができる電子計測器用筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の電子計測器用筐体1は、各面が四角形の六面体で形成される筐体2と、
前記筐体2における1つの面7において隣接する対の隅部14のそれぞれに基端部15が固定され、前記1つの面7の四角形外へ突出する一対の腕部3と、
前記対となる隅部14間の距離に応じた長さに形成され、前記一対の腕部3におけるそれぞれの突出先端部16に長手方向の両端部が固定される棒状のグリップ4と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
この電子計測器用筐体1では、1つの面において隣接して対となる隅部14に、一対の腕部3が固定される。この一対の腕部3は、対となる隅部14間の距離に応じた長さに形成されるグリップ4により連結される。一対の腕部3は、例えば筐体2の異なる高さの全てに共通して使用可能となる。また、グリップ4は、所望の筐体高さに合わせて切って使うこともでき、或いは、筐体高さが予め複数種でわかっていれば、その高さ違いの長さ(筐体高さ)で予め複数種の長さ(グリップ長さ)に作成して、高さに応じて組み替えることができ、この場合、多品種少量生産などの受注生産にも対応が可能となる。つまり、どのような筐体高さ寸法にも応じられる。また、一対の腕部3は、1つの面7の四角形外へ突出する。この四角形外へ突出した一対の腕部3の突出先端部16に、グリップ4の両端部が固定される。これにより、グリップ4は、外側に開く位置に配置される。1つの面7を正面から見た際、グリップ4が1つの面7に重ならず、1つの面7の視認性や操作性を損ねることがない。
【0008】
本発明の請求項2記載の電子計測器用筐体1は、請求項1に記載の電子計測器用筐体1であって、
前記一対の腕部3と前記グリップ4とが、コ字状の把手17を構成し、
前記1つの面7において対となる隅部14と、前記1つの面7において他の対となる隅部14との双方に、前記把手17が固定され、
双方の前記把手17は、それぞれの前記腕部3が前記1つの面7の四角形外へ突出しつつ、前記1つの面7を挟んで前記筐体2と反対側となる手前に傾斜し、かつ前記対となる隅部14をつなぐ辺部5,6と前記グリップ4との間に、手指の入る間隙28を有することを特徴とする。
【0009】
この電子計測器用筐体1では、一対の腕部3とグリップ4との3つの部品がコ字状の把手17を構成する。この把手17は、1つの面7において対となる隅部14と、1つの面7において他の対となる隅部14との双方に固定される。1つの面7の例えば左右に配置された把手17は、それぞれが、1つの面7の四角形外へ突出しつつ、1つの面7を挟んで筐体2と反対側となる手前に傾斜する。つまり、左右一対の把手17は、グリップ4が1つの面7の左右外側に配置されて、外側に開いている。これにより、1つの面7が電子計測器としての操作面であれば、ボタン10やスイッチ9などを配置した操作面全体が見え、容易な操作が可能となる。また、例えば操作面7での操作時に、把手17に指を掛けながらボタン操作を行える。例えば、小指や薬指、中指を掛けた状態で、親指で操作が可能となる等、操作する指以外の指をグリップ4または腕部3で支えながら親指で操作が可能となり、その操作を安定させる。そして、把手17を、1つの面7の左右共通で使いながら、筐体2のデザインに合わせ、高さ,幅,形状,デザイン等を、少ない部品の変更で容易に対応が可能となる。
【0010】
本発明の請求項3記載の電子計測器用筐体1は、請求項2に記載の電子計測器用筐体1であって、
前記1つの面7における対角に固定される前記腕部3が同一形状となることを特徴とする。
【0011】
この電子計測器用筐体1では、1つの面7の例えば左右に、把手17が固定される。把手17は、隣接する隅部14のそれぞれに腕部3が固定される。従って、1つの面7には、4つの隅部14のそれぞれに合計4つの腕部3が固定されることになる。このうち、1つの面7の対角の位置に固定される2つの腕部3は、同一形状となる。このため、4つの腕部3は、2種類の部品とすることができる。すなわち、複数使用される部品の半分を同一形状として、成形型を共通化することができる。このことから2種類の形状の腕部3と1つのグリップ4を1組として、これらを2組で左右の把手17を構成でき部品品種の削減となる。
【0012】
本発明の請求項4記載の電子計測器用筐体1は、請求項1~3のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体1であって、
前記腕部3が、前記基端部15にコーナー部42を有し、前記コーナー部42は、前記1つの面7とそれに隣り合う2つの側面31,46とが交わる3面頂角部37を覆うことを特徴とする。
【0013】
この電子計測器用筐体1では、1つの面7の4つの隅部14に、腕部3が固定される。4つの隅部14は、それぞれが、1つの面7とそれに隣り合う2つの側面31,46とが交わる3面頂角部37の一側面となる。腕部3の基端部15に形成されるコーナー部42には、3面頂角部37に外側から嵌合する3面内隅形状の凹部が形成される。腕部3は、基端部15を隅部14に固定することにより、1つの面の隅部14を含む3面頂角部37を3面内隅形状の凹部であるコーナー部42にて覆うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載の電子計測器用筐体によれば、筐体の1つの面において隣接して対となる隅部に一対の腕部が固定され、これら腕部に対となる隅部間の距離に応じた長さに形成されるグリップが連結され、例えば筐体の異なる高さの全てに共通して使用可能となり、これにより筐体への固定部品を変更せずに、異なる筐体サイズにグリップの長さを変えてフレキシブルに対応させることができる。また、一対の腕部は、1つの面の四角形外へ突出しており、一対の腕部の突出先端部にグリップの両端部が固定されることで、グリップは外側に開く位置に配置されることとなり、これにより1つの面を正面から見た際、グリップが1つの面に重ならず、1つの面の視認性や操作性を損ねることがなく、且つ1つの面に構成されるボタンやコネクタ,液晶画面等の保護を兼ねることができる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載の電子計測器用筐体によれば、一対の腕部とグリップとで構成されるコ字状の把手により、電子計測器としての運搬と、1つの面に構成されるボタンやコネクタおよび液晶画面等の保護とを兼ね、筐体の重量、高さにあわせた最適なデザインへ容易に変更が可能となる。また、グリップが外側に開く位置に配置されていることで把手を支えにしてのボタン等の安定した操作を可能とする。さらに、把手を容易に取り外すことにより、低コスト仕様にも容易に対応が可能となる。
【0016】
本発明に係る請求項3記載の電子計測器用筐体によれば、部品品種の削減を可能とし、成形型の種類を減らせるので、成形型の製作コスト、成形型のメンテナンス費用を低減でき、製品コストも安価にできる。
【0017】
本発明に係る請求項4記載の電子計測器用筐体によれば、1つの面における各隅部に位置する3面頂角部を、腕部のコーナー部で覆い隠すことができるので、3面頂角部の仕上がり精度を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る電子計測器用筐体の斜視図である。
図2】(a)(b)(c)は異なる高さ寸法の操作面に応じ異なる長さのグリップが固定される筐体の分解正面図である。
図3】把手と筐体の要部分解斜視図である。
図4】(a)は電子計測器用筐体の平面図、(b)は電子計測器用筐体の正面図である。
図5】把手の分解斜視図である。
図6】筐体に固定された腕部を平断面として見た斜視図である。
図7図6の固定ねじの近傍を筐体背面側から見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電子計測器用筐体1の斜視図である。
本実施形態に係る電子計測器用筐体1は、光パルス試験機やスペクトラムアナライザ等の測定器を収容する。これらの測定器を電子計測器用筐体1に収容した電子計測器は、突起物を除き、一例として幅が426mm、高さが265mm、奥行きが578mmとなる。重量は、最大で50kg程度となる。
【0020】
電子計測器用筐体1は、筐体2と、一対の腕部3と、グリップ4と、を有する。
【0021】
筐体2は、各面が四角形の六面体で形成される。従って、筐体2は、直方体または立方体とすることができる。本実施形態の筐体2は、上述の寸法の一例で示したように、高さ寸法が一番小さく、奥行き寸法が一番大きい、前後に長い扁平な箱体となる。なお、筐体2は、この形状には限定されず、この他、横長であったり、縦長であったりしても勿論よい。
【0022】
本実施形態に係る筐体2は、1つの面7が前面となる。前面は、高さ方向が短辺、左右幅方向が長辺となる矩形状である。ここで、高さ方向の辺部である短辺は、図1に示す左側を左辺部5、右側を右辺部6と称す。この前面は、操作面となる。操作面7には、例えば図1のように、表示画面8、電源スイッチ9、操作ボタン10、カーソルボタン11、テンキー12の他、各種のコネクタ13等が配列される。
【0023】
矩形状の操作面7において、隣接する対の隅部14のそれぞれには、一対の腕部3が固定される。本実施形態において、隣接する対の隅部14とは、左辺部5における上下の隅部14と、右辺部6における上下の隅部14である。腕部3は、基端部15がそれぞれの隅部14に固定される。それぞれの腕部3は、基端部15と反対側の突出先端部16が操作面7の四角形外(四角形の外側)へ突出する。
【0024】
一対の腕部3のそれぞれの突出先端部16には、真直な中実丸棒よりなるグリップ4の長手方向の両端部が固定される。グリップ4は、上下の隅部14間の距離、本実施形態では操作面7の高さに応じた長さに形成されている。
【0025】
図2(a)(b)(c)は、異なる高さ寸法の操作面7に応じ異なる長さのグリップ4が固定される筐体2の分解正面図である。
電子計測器用筐体1は、例えば操作面7の高さ寸法がH1,H2,H3(H1<H2<H3)で異なる場合、操作面7の高さ寸法に応じグリップ4の長さがL1,L2,L3(L1<L2<L3)が設定される。この場合、グリップ4の上下を固定する腕部3は、グリップ4の長さ違いに関わらず同一のものが使用される。つまり、図2(a)に示す高さ寸法H1の短めの操作面7である場合には短めの長さL1のグリップ4を、図2(b)に示す高さ寸法H2の中程度の操作面7である場合には中程度の長さL2のグリップ4を、図2(c)に示す高さ寸法H3の長めの操作面7である場合には長めの長さL3のグリップ4を、とそれぞれに対応させて、グリップ4の長さ(L1~L3)のみを変えれば、高さ寸法(H1~H3)の異なる筐体2へ対応することができる。
【0026】
電子計測器用筐体1は、一対の腕部3とグリップ4とが、図1に示すコ字状の把手17を構成する。つまり、把手17は、3部品からなる。把手17は、操作面7において対となる隅部14(左辺部5上下の隅部14)と、操作面7おいて他の対となる隅部14(右辺部6上下の隅部14)との双方に固定され、左右一対で構成される。
【0027】
図3は、把手17と筐体2の要部分解斜視図である。
把手17は、腕部3を貫通する固定ねじ18が、筐体2の化粧枠19を貫通して、その内側で重なる前枠20の裏側で螺着される。化粧枠19と前枠20とは、額縁状の前面枠21を構成する。そのため、腕部3には、固定ねじ18が貫通する挿通孔22が穿設される。化粧枠19には、固定ねじ18が貫通する貫通孔23が穿設される。前枠20には、固定ねじ18が貫通する透孔24が穿設される。化粧枠19は、前枠20に前方から被せられる。前枠20は、筐体2の上下左右の外側板となる巻胴25の前面開口26(図6参照)に突き当たる。前枠20には、前面開口26と突き当たる縁部分に、所定断面形状のパッキン27が環状に装着される。パッキン27には、例えば導電性ゴム等が用いられている。パッキン27は、巻胴25の縁部分と前枠20とを隙間なく介在することとなり電磁シールドすることができる。そして、筐体2は、電磁シールド的に弱くなるところを、腕部3が覆う構造となっている。
【0028】
図4(a)は電子計測器用筐体1の平面図、(b)は電子計測器用筐体1の正面図である。
電子計測器用筐体1において、左右双方の把手17は、それぞれの腕部3が操作面7の四角形外へ突出しつつ、操作面7を挟んで筐体2と反対側となる手前(矢印a方向)に傾斜して突出する。これにより、把手17のグリップ4と、対となる隅部14をつなぐ辺部、すなわち、左辺部5,右辺部6とグリップ4との間には、手指の入る間隙28が形成されている。グリップ4と筐体2とは、筐体2の幅がW、左右のグリップ4の間隔がGであるとき、G>Wであり、グリップ4と筐体2との間隙28は、正面視で(G-W)/2となる。少なくともこの間隙28は、手指から掌の入る大きさ、すなわちグリップ4を握ることのできる間隔を備えた長さとなっている。
【0029】
電子計測器用筐体1は、操作面7の対角に固定される腕部3が同一形状となる。操作面7に固定される4つの腕部3は、左上と右下が同じ形状の腕部である第1腕部29、右上と左下が同じ形状の腕部である第2腕部30となっている。すなわち、操作面7に固定される4つの腕部3は、形状として2種類となっている。なお、本明細書中、把手17は、第1腕部29及び第2腕部30と、グリップ4とで構成される総称、すなわち第1腕部29と第2腕部30とを含めた上位概念の名称として用いている。
【0030】
図5は、把手17の分解斜視図である。
腕部3は、基端部15が、操作面7と直交する筐体2の巻胴側板部31と平行になって固定ねじ18により固定される。基端部15には、基端部15に対して折れ曲がり、操作面7よりも手前に延出する傾斜腕部32が形成される。傾斜腕部32は、巻胴側板部31に対して操作面7の四角形外となるように図4に示す傾斜角θで傾斜する。
左右に配置される腕部3は、この傾斜腕部32同士の左右対向面に、締結ねじ33の挿入される締結孔34が穿設されている。上下に配置される腕部3は、傾斜腕部同士の上下対向面に、グリップ4の両端から小径で突出する角軸部35が挿入される角穴となったグリップ孔36が穿設される。グリップ4は、両端部の角軸部35がグリップ孔36に挿入され平坦面同士が接することにより回転が規制される。グリップ孔36に挿入された角軸部35は、締結孔34に挿入された締結ねじ33が側方に螺合して腕部3と一体に固定される。なお、角軸部35は、グリップ4の両端部において、周面の一部に平らな面を切削などで形成した構造とし、回転しないようにしてもよい。
また、角軸部35がグリップ孔36に圧入で固定されていれば、締結ねじ33や締結孔34は必須ではない。
【0031】
電子計測器用筐体1は、操作面7と、それに隣り合う2つの側面、本実施形態においては筐体2の巻胴側板部31と巻胴上下板部46との2つの面とが交わる3面頂角部37を操作面7の4つの角に有する。すなわち、3面頂角部37は、三角錐における3つの側面(7,31,46)を有する。操作面7の4つの隅部14は、それぞれが、3面頂角部37の一側面となる。3面頂角部37は、奥行き方向に延在する稜線38と、幅方向に延在する稜線39と、高さ方向に延在する稜線40の交点41を頂点とする。腕部3は、基端部15と傾斜腕部32との境界近傍の左右対向面に、3面内隅形状となったコーナー部42を有する。腕部3は、このコーナー部42により3面頂角部37を覆う。
【0032】
コーナー部42の3面内隅形状は、左右挟持面43と、上下挟持面44と、段差面45と、からなる。左右挟持面43は、筐体2の巻胴側板部31と平行となる。上下挟持面44は、筐体2の巻胴上下板部46と平行となる。段差面45は、操作面7と平行となる。左右挟持面43と、上下挟持面44と、段差面45とは、互いに直交する。互いに直交する3つの平面から形成された3面内隅形状の凹部であるコーナー部42は、3面頂角部37の外形に一致して覆うことができる。
【0033】
図6は、筐体2に固定された腕部3を平断面として見た斜視図である。
本実施形態は、上述の通り、化粧枠19と前枠20とで額縁状の前面枠21を構成する。化粧枠19は、図3に示すように、巻胴25の巻胴側板部31と略面一となる化粧枠側板部53と、巻胴上下板部46と略面一となる化粧枠上下板部52とを有するとともに、前面となり操作面7の周囲部分を兼ねる前面板部57とを有する断面L字形状が連続する額縁状となって構成されている。
本実施形態における操作面7は、この化粧枠19の前面板部57よりなる中空矩形な外枠状部分、すなわち図1に示す電源スイッチ9が配置される矩形枠状の面と、この前面板部57を周囲に配置して面一に位置する上述した表示画面8、各ボタン10等を備えた面とで構成される。化粧枠19の内側には、前枠20が、化粧枠19に覆われて配置される。
前枠20の枠端面47には、巻胴25の前面開口26の先端面が対向する。巻胴25の先端近傍には、略Z字状のクランク曲げ部48が形成される。巻胴25は、クランク曲げされた先端が前枠20の先端面に対向し当接することで、クランク曲げ部48よりも後方が化粧枠19の外側面と面一となる。つまり、クランク曲げ部48は、化粧枠19の枠端部49を板厚方向で収容する挿入間隙を形成している。この挿入間隙には、上述のパッキン27が装着される。腕部3は、貫通孔23に挿通された固定ねじ18が化粧枠19,前枠20,シャーシ50を貫通してシャーシ50の裏側に配置される雌ねじ部51に螺合される。従って、腕部3は、化粧枠19,前枠20,シャーシ50を共締めして筐体2に強固に固定される。
【0034】
図7は、図6の固定ねじ18の近傍を筐体背面側から見た縦断面図である。
筐体2には、図7及び図3に示すように、化粧枠上下板部52と化粧枠側板部53との境に折り曲げクリアランス54が存在する。また、前枠上下板部55と前枠側板部56との境にも折り曲げクリアランス54が存在する。電子計測器用筐体1は、化粧枠19と前枠20とが折り曲げ成形であることから、いずれも板部の縁同士間にスリット状のクリアランス54が微小ながら生じ、このクリアランス54を介して筐体2内と外部とが通じてしまう。そこで、電子計測器用筐体1は、筐体2の3面頂角部37が、腕部3のコーナー部42に形成された3面内隅形状で覆われることにより、このクリアランス54が閉塞されている。
なお、図7の縦断面図は一例であり、化粧枠上下板部52と化粧枠側板部53との境に折り曲げクリアランス54がない形状とすることもできる。
【0035】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0036】
本実施形態に係る電子計測器用筐体1では、1つの面である操作面7において隣接して対となる隅部14に、一対の腕部3が固定される。この一対の腕部3は、対となる隅部間の距離、例えば筐体2の高さ(H1~H3)に応じた長さ(L1~L3)に形成されるグリップ4により連結される。グリップ4だけは、筐体2の高さに合わせて用意しておく。一対の腕部3は、異なる高さの筐体2の全てに共通して使用可能となる。
【0037】
また、グリップ4は、所望の筐体高さに合わせて切って使うこともでき、或いは、筐体高さが予め複数種でわかっていれば、その高さ違いの長さ(筐体高さ(図2参照H1~H3))で予め複数種の長さ(グリップ長さ(図2参照L1~L3))に作成して、高さに応じて組み替えることができ、この場合、多品種少量生産などの受注生産にも対応が可能となる。つまり、グリップ4は、段階的に予め長さが複数種で決められたものでもなく、段階的に複数種を予め決めておいてもよく、どのような高さ寸法にも応じられるフレキシブルな部材となる。電子計測器用筐体1は、筐体2の一辺の長さ、例えば操作面7における高さ寸法に合わせてグリップ4を作成すれば、腕部3は共通であり、グリップ4の長さ変更のみで、どの大きさの筐体2にも対応することができる。このことは、筐体2の大きさを、予め決められている規格で設計しなくても良いことであり、筐体2の大きさ(寸法)を先行して設定し、それに合わせてグリップ4の長さを対応させればよいこととなり、多品種少量生産などに対応できるものである。
【0038】
また、一対の腕部3は、1つの面である操作面7の四角形外へ突出する。この四角形外へ突出した一対の腕部3の突出先端部16に、グリップ4の両端部が固定される。これにより、グリップ4は、外側に開く位置に配置される。操作面7を正面から見た際、或いは多少の斜めから見た際に、グリップ4が操作面7に重ならず、操作面7の視認性を損ねることがない。
【0039】
また、電子計測器用筐体1では、一対の腕部3とグリップ4との3つの部品がコ字状の把手17を構成する。この把手17は、操作面7において対となる隅部14と、操作面7において他の対となる隅部14との双方、例えば筐体2の操作面7の左右に固定される。操作面7の左右に配置された把手17は、それぞれが、1つの面である操作面7の四角形外へ突出しつつ、操作面7を挟んで筐体2と反対側となる手前に傾斜する。つまり、左右一対の把手17は、両グリップ4が操作面7の左右外側に配置されて、外側に開いている。
【0040】
これにより、1つの面が操作面7であれば、ボタンやスイッチなどを配置した操作面全体が見え、且つ容易な操作が可能となる。また、例えば操作面7の操作時に、把手17に指を掛けながらボタン操作を行える。小指や薬指、中指を掛けた状態で、親指で操作が可能となる。操作する指以外の指をグリップ4または腕部3で支えながら親指で操作が可能となる。
【0041】
そして、3分割される把手17のうち中央の部材となるグリップ4の長さを変えることにより、種々のサイズの筐体2に把手17を対応させることができる。把手17を、1つの面(操作面7)の左右共通で使いながら、筐体2のデザインに合わせ、高さ,幅,形状、さらには部品ごとの着色等のデザインを、少ない部品の変更で容易に対応が可能となる。なお、グリップ4は、長さだけではなく、太さや外形、例えば弓なりに湾曲した形状や、表面の処理、素材など、所望の形,デザインでもよい。また、腕部3の傾斜角度についても、上述の突出方向(図4中矢印a方向),傾斜角θに限定することなく、所望の角度や、デザイン,素材など筐体2に合わせて対応できる。その結果、正面(操作面7)側のスイッチ9やボタン10,11,コネクタ13および表示画面8の保護を兼ねながら、筐体2の重量,高さにあわせた最適なデザインへ容易に変更が可能となる。また、把手17を容易に取り外すことにより、低コスト仕様にも容易に対応が可能となる。
グリップ4は、中実丸棒の他、中空丸棒や角材も利用可能である。
【0042】
また、電子計測器用筐体1では、1つの面である操作面7の左右に、把手17が固定される。把手17は、隣接する隅部14のそれぞれに腕部3が固定される。従って、操作面7には、4つの隅部14のそれぞれに合計4つの腕部3が固定されることになる。このうち、操作面7の対角の位置に固定される2つの腕部3は、同一形状となる。このため、4つの腕部3は、2種類の部品とすることができる。すなわち、複数使用される部品の半分を同一形状として、成形型を共通化することができる。その結果、成形型の種類を減らせるので、成形型の製作コスト、成形型のメンテナンス費用を低減でき、製品コストも安価にできる。
【0043】
また、電子計測器用筐体1では、1つの面である操作面7の4つの隅部14に、腕部3が固定される。4つの隅部14は、それぞれが、操作面7とそれに隣り合う2つの側面(31,46)とが交わる3面頂角部37の一側面となる。腕部3の基端部15に形成されるコーナー部42には、3面頂角部37に外側から嵌合する3面内隅形状の凹部が形成される。腕部3は、基端部15を隅部14に固定することにより、操作面7の隅部14を含む3面頂角部37を3面内隅形状の凹部であるコーナー部42で覆うことができる。その結果、3面頂角部37を覆えるので、3面頂角部37の仕上がり精度を緩和、つまり、上述した折り曲げ成形の精度を厳格にしてクリアランス54を無くす高精度の加工や、クリアランス54を埋めるための後加工等を不要とすることができる。このことからも、把手17の部品点数の削減による低コスト化と合わせ、筐体2の製造コストを抑えることが可能となる。
また、3面頂角部37を覆うことが可能となることで、上記したクリアランス54が覆われ、この3面頂角部31の電磁シールド性能を向上させることができる。
【0044】
従って、本実施形態に係る電子計測器用筐体1によれば、正面側のボタン,電源スイッチ9,操作ボタン10,カーソルボタン11,テンキー12,各種の調整ダイヤル等、コネクタ13および液晶画面(表示画面8)の保護を兼ね、筐体2への固定部品、すなわち、腕部3は変更せずに、異なる筐体サイズに対応する長さのグリップ4へ代えるのみでフレキシブルに対応させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…電子計測器用筐体
2…筐体
3…腕部
4…グリップ
5…辺部(左辺部)
6…辺部(右辺部)
7…1つの面(操作面,前面)
14…隅部
15…基端部
16…突出先端部
17…把手
28…間隙
31…側面(巻胴側板部)
37…3面頂角部
42…コーナー部
46…側面(巻胴上下板部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7