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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182627
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電子計測器用筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H05K5/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090286
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 友彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
(72)【発明者】
【氏名】深江 友則
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 裕介
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB08
4E360AD01
4E360EA23
4E360ED02
4E360ED28
4E360GA54
4E360GB99
4E360GC04
(57)【要約】
【課題】可搬性に優れた電子計測器用筐体を提供する。
【解決手段】電子計測器用筐体1において、各面が四角形の六面体で形成される筐体2と、筐体2の平行な1つの面7と他の1つの面8との双方の面7,8にそれぞれ一対ずつ固定される4つの把手9と、を備え、把手9は、コ字状に形成され、双方の面7,8における同一方向の4つの辺部5,6の両端に位置する隅部19に渡って固定されるとともに、双方の面7,8の四角形外へ突出しつつ、双方の面7,8を挟んで筐体2と反対側に傾斜して、筐体2から放射方向に配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各面が四角形の六面体で形成される筐体(2)と、前記筐体の平行な1つの面(7)と他の1つの面(8)との双方の面にそれぞれ一対ずつ固定される4つの把手(9)と、を備え、
前記把手は、コ字状に形成され、前記双方の面における同一方向の4つの辺部(5,6)の両端に位置する隅部(19)に渡って固定されるとともに、前記双方の面の四角形外へ突出しつつ、前記双方の面を挟んで前記筐体と反対側に傾斜して、前記筐体から放射方向に配置されることを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の電子計測器用筐体であって、
前記1つの面が、ケーブルの接続されるコネクタ(11)、ソケット等を備える背面であり、
前記他の1つの面が、計測器操作のための各種ボタン(15)、スイッチ(14)等を備える前面であることを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子計測器用筐体であって、
前記把手が、前記隅部に固定される基端部(20)を備え、該基端部にコーナー部(36)を有し、前記コーナー部は、前記隅部の面とそれに隣り合う2つの側面(28,29)とが交わる3面頂角部(31)を覆うことを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体であって、
前記把手は、一対の腕部(3)とグリップ(4)とが、コ字状の把手を構成し、かつ前記対となる隅部をつなぐ辺部と前記グリップとの間に、手指の入る間隙(40)を有することを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項5】
請求項4に記載の電子計測器用筐体であって、
前記1つの面及び前記他の一つの面における対角に固定される前記腕部が同一形状となることを特徴とする電子計測器用筐体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体であって、
前記把手は、前記筐体に対して取り外し自在に固定されることを特徴とする電子計測器用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子計測器用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
計測器等の電子計測器の設置位置の変更などの際には電子計測器を移動させるために運搬しなくてはならない。また、測定対象物が重量物であったり、固定され移動させることができない場合に、この測定対象物を計測するためには、計測器等の電子計測器を測定対象物の傍まで運搬しなくてはならない。そのため、下記非特許文献1に示すような電子計測器用筐体の正面である操作面には、左右一対の把手が備えられる。把手は、落下時の操作面のボタン、コネクタおよび液晶画面の保護を兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アンリツ株式会社、RF/Microwave Signal Generator「MG3690C」(カタログNo.11410-01119,Rev.B Printed in United States 2019-06)https://dl.cdn-anritsu.com/en-us/test-measurement/files/Brochures-Datasheets-Catalogs/Brochure/11410-01119B.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電子計測器は、奥行き450mm以下、重量35kg以下と比較的、小型,軽量であったため、正面部の把手だけで持ち上げることができたが、近年、機能・性能拡充のため大型化し、例えば奥行き寸法が600mm、重量は50kgと大型化し、移動や設置する際の可搬性がよくない。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、可搬性に優れた電子計測器用筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の電子計測器用筐体1は、各面が四角形の六面体で形成される筐体2と、前記筐体2の平行な1つの面7と他の1つの面8との双方の面にそれぞれ一対ずつ固定される4つの把手9と、を備え、
前記把手9は、コ字状に形成され、前記双方の面7,8における同一方向の4つの辺部5,6の両端に位置する隅部19に渡って固定されるとともに、前記双方の面7,8の四角形外へ突出しつつ、前記双方の面7,8を挟んで前記筐体2と反対側に傾斜して、前記筐体2から放射方向に配置されることを特徴とする。
【0007】
この電子計測器用筐体1では、例えば筐体2の高さ寸法が一番小さく、奥行き寸法が一番大きい、前後に長い扁平な箱体である場合、1つの面が背面7となれば、他の1つの面が前面8となる。この場合、筐体2は、背面7の左右に一対の把手9が固定され、前面8の左右にも一対の把手9が固定される。それぞれの把手9は、背面7と前面8の四角形外へ突出しつつ、筐体2と反対側に傾斜する。つまり、4つの把手9は、筐体2を中心とした放射方向に突出する。
このため、電子計測器用筐体1は、例えば、前面8から見て左側の把手9と、背面7から見て右側の把手9を両手、若しくは2人で片側ずつ持つことができる。つまり、前面8の把手9と、背面7の把手9を持って持ち上げることができる。電子計測器用筐体1は、筐体2が、上述したように、奥行き(前後)寸法が一番大きい場合、横向きで持ち上げることができ、奥行長さに比べて短い横幅の長さ方向を垂直にして持ち上げることができ、床面から引き上げられ、引きずらない。
また、電子計測器用筐体1では、4つの把手9が、放射方向に突出するので、前面8を上面とし、背面7の一対の把手9を脚部として縦置きできる。すなわち、電子計測器用筐体1は、背面7に脚部があることになる。もちろん、その逆の背面7を上面とし、前面8の一対の把手9を脚部として縦置きもできる。また、電子計測器用筐体1は、前面8から見て右側の把手9と、背面7から見て左側の把手9を脚部としたり、前面8から見て左側の把手9と、背面7から見て右側の把手9を脚部としたりすることで、横置き、すなわち横幅方向を縦置きにできる。
さらに、電子計測器用筐体1では、把手9がコ字状となっており、すなわち、一対の脚となる腕部3の間に、横棒としてのグリップ4が掛け渡された構造とされる。このため、従来のような4本の棒構造の脚を備えたものではないことから、前面8を上向きに使用するような場合に、設置される床面の状態が例えばメッシュなど網目や溝を有する際であっても、このような網目に脚が落ちたり、溝に嵌まるようなことがなく、コ字状の把手9によって安定した使用状態を得ることが可能となる。
【0008】
本発明の請求項2記載の電子計測器用筐体1は、請求項1に記載の電子計測器用筐体1であって、
前記1つの面が、ケーブルの接続されるコネクタ11,ソケット等を備える背面7であり、
前記他の1つの面が、計測器操作のための各種ボタン,スイッチ等を備える前面8であることを特徴とする。
【0009】
この電子計測器用筐体1では、1つの面が筐体2の背面7となり、他の1つの面が筐体2の前面8となる。背面7には、ケーブルの接続されるコネクタ11、ソケット等が設けられる。前面8には、計測器操作のための各種ボタン、スイッチ、ディスプレイ等が設けられる。電子計測器用筐体1では、前面8を上向きにして縦置きされる場合、背面7が一対の把手9により床面から離間する。これにより、背面7のコネクタ11等が保護され、これらに接続されたケーブルが折れたり、曲がったりすることをも抑制できる。また、メッシュ等に脚が落ちるようなことがなく、コネクタ11等を保護しケーブルを折ってしまうことも防止できる。
【0010】
本発明の請求項3記載の電子計測器用筐体1は、請求項1または2記載の電子計測器用筐体1であって、
前記把手9が、前記隅部19に固定される基端部20を備え、該基端部20にコーナー部36を有し、前記コーナー部36は、前記隅部19の面7(8)とそれに隣り合う2つの側面28,29とが交わる3面頂角部31を覆うことを特徴とする。
【0011】
この電子計測器用筐体1では、1つの面7および他の1つの面8の各4つの隅部19に、把手9を構成する一対の基端部20が固定される。4つの隅部19は、それぞれが、1つの面7または他の1つの面8とそれに隣り合う2つの側面28,29とが交わる3面頂角部31の一側面となる。把手9の基端部20に形成されるコーナー部36には、3面頂角部31に外側から嵌合する3面内隅形状の凹部が形成される。把手9は、隅部19に固定することにより、1つの面の隅部19を含む3面頂角部31を3面内隅形状の凹部であるコーナー部36にて覆うことができる。
【0012】
本発明の請求項4記載の電子計測器用筐体1は、請求項1~3のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体1であって、
前記把手9は、一対の腕部3とグリップ4とが、コ字状の把手9を構成し、かつ前記対となる隅部19をつなぐ辺部5,6と前記グリップ4との間に、手指の入る間隙40を有することを特徴とする。
【0013】
この電子計測器用筐体1では、一対の腕部3とグリップ4との3つの部品がコ字状の把手9を構成する。この把手9は、1つの面7及び他の1つの面8において対となる隅部19と、1つの面7及び他の1つの面8において他の対となる隅部19との双方に固定される。双方の面7,8の各左右に配置された把手9は、それぞれが、双方の面7,8における四角形外へ突出しつつ、これら面7,8を挟んで筐体2と反対側となる手前に傾斜する。つまり、左右一対の把手9は、グリップ4が1つの面7及び他の1つの面8の左右外側に配置されて、各面7,8から見て外側に開いている。これにより、1つの面が背面7であれば、コネクタ11,ソケット等が配置される面の全体が見え、これらコネクタ11等へケーブルの接続を支障なく行うことが可能となる。また他の1つの面が操作面となる前面8であれば、ボタン,スイッチなどを配置した操作面全体が見え、容易な操作が可能となる。そして、例えば前面(操作面)8の操作時に、把手9に指を掛けながら安定したボタン操作を行える。例えば、小指や薬指、中指を掛けた状態で、親指で操作が可能となる等、操作する指以外の指をグリップ4または腕部3で支えながら親指で操作が可能となり、その操作を安定させる。そして、把手9を、双方の面7,8の左右共通で使いながら、筐体2のデザインに合わせ、高さや幅,形状,デザインを、少ない部品の変更で容易に対応が可能となる。
【0014】
本発明の請求項5記載の電子計測器用筐体1は、請求項4に記載の電子計測器用筐体1であって、
前記1つの面7及び前記他の一つの面8における対角に固定される前記腕部3が同一形状となることを特徴とする。
【0015】
この電子計測器用筐体1では、1つの面7と他の1つの面8に、合計8つの腕部3が固定されることになる。このうち、1つの面7と他の1つの面8の対角の位置に固定される2つの腕部3は、同一形状となる。例えば、背面7に固定される4つの腕部3は、左上と右下が同じ腕部である第1腕部25、右上と左下が同じ腕部である第2腕部26とすることができる。このため、8つの腕部3は、2種類の部品とすることができる。すなわち、成形型を共通化することができ、部品種別を削減できる。
【0016】
本発明の請求項6記載の電子計測器用筐体1は、請求項1~5のいずれか1つに記載の電子計測器用筐体1であって、
前記把手9は、前記筐体2に対して取り外し自在に固定されることを特徴とする。
【0017】
この電子計測器用筐体1では、把手9が筐体2から容易に取り外し可能となる。例えば、移動時に使用した把手9は、設置後に不要となる場合がある。この場合、不要となった把手9が筐体2から取り外される。また、把手9が取り外された筐体2を移動する際に、把手9を筐体に取り付けることができ、持ち運びを容易なものとする。さらに、製品の仕様により、価格が優先される場合がある。この場合、把手9の取り付けが省略された組立が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載の電子計測器用筐体によれば、筐体の1つの面と他の1つの面とに把手を備えたことで、いずれの方向からも筐体を持ち上げ可能となり、移動や設置する際の可搬性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る請求項2記載の電子計測器用筐体によれば、移動時や設置時に、背面に設けられるコネクタ,ソケットに接続されたケーブルや、前面に設けられる各種ボタン、スイッチ、ディスプレイ等の両方を把手により保護できる。
【0020】
本発明に係る請求項3記載の電子計測器用筐体によれば、3面頂角部を覆えるので、3面頂角部の仕上がり精度を緩和することができるとともに、3面頂角部の電磁シールド性能を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る請求項4記載の電子計測器用筐体によれば、把手が、前面側のボタン、コネクタおよび液晶画面、背面側のケーブルの保護を兼ね、筐体の重量、高さにあわせた最適なデザインへ容易に変更可能となる。
【0022】
本発明に係る請求項5記載の電子計測器用筐体によれば、成形型の種類を減らせるので、成形型の製作コスト、成形型のメンテナンス費用を低減でき、部品種別を削減でき、製品コストも安価にできる。
【0023】
本発明に係る請求項6記載の電子計測器用筐体によれば、設置後に把手が不要になる場合や、低コスト仕様にも容易に対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る電子計測器用筐体を背面側から見た斜視図である。
図2】背面の一方の辺部に把手が固定された筐体の要部拡大図である。
図3】(a)は背面の右辺部上側の3面頂角部と腕部の分解斜視図、(b)は巻胴の背面側隅部における展開図である。
図4】背面の右辺部下側の3面頂角部と腕部の分解斜視図である。
図5】腕部のコーナー部により覆われた3面頂角部の平断面斜視図である。
図6】(a)は電子計測器用筐体の平面図、(b)は電子計測器用筐体の正面図である。
図7】一体に成形された把手が固定された筐体の斜視図である。
図8】筐体搬送時の状況を表す正面図である。
図9】縦置きされた電子計測器用筐体の斜視図である。
図10】(a)は縦置きされた電子計測器用筐体の側面図、(b)は横置きされた電子計測器用筐体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電子計測器用筐体1を背面側から見た斜視図である。
本実施形態に係る電子計測器用筐体1は、光パルス試験機やスペクトラムアナライザ等の測定器を収容する。これらの測定器を電子計測器用筐体1に収容した電子計測器10は、突起物を除き、一例として幅が426mm、高さが265mm、奥行きが578mmとなる。重量は、最大で50kg程度となる。
【0026】
電子計測器用筐体1は、筐体2と、把手9と、を有する。
【0027】
筐体2は、各面が四角形の六面体で形成される。従って、筐体2は、直方体または立方体とすることができる。本実施形態の筐体2は、上述の寸法の一例で示したように、高さ寸法が一番小さく、奥行き寸法が一番大きい、前後に長い扁平な箱体となる。なお、筐体2は、この形状には限定されず、この他、横長であったり、縦長であったりしても勿論よい。
【0028】
本実施形態に係る筐体2は、1つの面が背面7となる。背面7は、高さ方向が短辺、幅方向が長辺となる横長の矩形状である。ここで、高さ方向の短辺は、背面7に向かって左側となる図1に示す左側を左辺部5、右側を右辺部6と称す。筐体2は、1つの面である背面7と平行な他の1つの面が前面となる。前面8は、背面7と同様に、高さ方向が短辺、幅方向が長辺となる矩形状である。筐体2は、上下左右の外側板となる略角筒状の巻胴27を有する。巻胴27の一方の開口部分に前面8を配置し、他方の開口部分に背面7を配置する。
【0029】
電子計測器用筐体1は、筐体2の平行な1つの面(背面7)と、他の1つの面(前面8)との双方の面に、それぞれ一対ずつ合計4つの把手9が固定される。把手9は、コ字状に形成され、双方の面である背面7と前面8における同一方向となる高さ方向の4つの辺部5,6の両端に位置する隅部19に渡って固定される。それぞれの把手9は、双方の面7,8の四角形外へ突出しつつ、双方の面7,8を挟んで筐体2と反対側に傾斜して、筐体2から放射方向に突出するように配置されている。
【0030】
筐体2の背面7には、複数のコネクタ11や複数のソケット,接続端子12等が配列される。これらコネクタ11やソケット,接続端子12等には、各種ケーブルが接続可能となる。一方、筐体2の前面は、操作面8(図9参照)となる。操作面8には、表示画面13,電源スイッチ14,計測器操作のための操作ボタン15,カーソルボタン16,テンキー17の他、各種の調整ダイヤルや各種の前面コネクタ18等が配列される。
【0031】
図2は、背面7の一方の辺部(右辺部6)に把手9が固定された筐体2の要部拡大図である。
把手9は、一対の腕部3と、グリップ4とが、コ字状となって構成される。腕部3、グリップ4は、例えばアルミ等の金属からなる。把手9は、上下で対となる隅部19をつなぐ辺部5,6と、グリップ4との間に、手指の入る間隙40を有する。
【0032】
把手9は、矩形状の背面7において、隣接する対の隅部19のそれぞれに、一対の腕部3が固定される。本実施形態において、隣接する対の隅部19とは、左辺部5(図1参照)における上下の隅部19と、右辺部6(図1,2参照)における上下の隅部19である。腕部3は、基端部20がそれぞれの隅部19に固定される。基端部20には、腕部3を背面7に固定するための固定突部21が背面7と平行に突設される。腕部3は、この固定突部21を貫通する固定ねじ23が、背面7に垂直な方向から挿入され、背面7の裏側で締結される。それぞれの腕部3は、基端部20と反対側の突出先端部22が背面7の四角形外(四角形の外側)へ突出する。この腕部3の固定構造は、その他の隅部19においても同様である。
【0033】
電子計測器用筐体1は、背面7の対角に固定される腕部3が同一形状となる。背面7に固定される4つの腕部3は、左上と右下が同じ腕部である第1腕部25、右上と左下が同じ腕部である第2腕部26となっている。すなわち、背面7に固定される4つの腕部3は、形状として2種類となっている。この腕部3の配置は、操作面8においても同様である。従って、電子計測器用筐体1では、1つの面(背面7)及び他の一つの面(操作面8)における対角に固定される腕部3が同一形状となる。なお、本明細書中、把手9は、第1腕部25及び第2腕部26と、グリップ4とで構成される総称、すなわち第1腕部25と第2腕部26とを含めた上位概念の名称として用いている。
【0034】
図3は、背面7の右辺部6上側の3面頂角部31と腕部3の分解斜視図を(a)に、巻胴27の背面側隅部における展開図を(b)に示した図である。
把手9は、腕部3の基端部20に、コーナー部36を有する。筐体2は、背面7とそれに隣り合う2つの側面、本実施形態においては筐体2の巻胴側板部28と巻胴上下板部29との2つの面とが交わる3面頂角部31を背面7の4つの角に有する。すなわち、3面頂角部31は、三角錐における3つの側面(7,28,29)を有する。背面7の4つの隅部19は、それぞれが、3面頂角部31の一側面となる。3面頂角部31は、奥行き方向に延在する稜線32と、幅方向に延在する稜線33と、高さ方向に延在する稜線34の交点35を頂点とする。腕部3は、基端部20と傾斜腕部30(図2参照)との境界近傍の左右対向面に、3面内隅形状となったコーナー部36を有する。腕部3は、このコーナー部36により3面頂角部31を覆う。
【0035】
コーナー部36の3面内隅形状は、左右挟持面37と、上下挟持面38と、背面当接面39と、からなる。左右挟持面37は、筐体2の巻胴側板部28と平行となる。上下挟持面38は、筐体2の巻胴上下板部29と平行となる。背面当接面39は、背面7と平行となる。左右挟持面37と、上下挟持面38と、背面当接面39とは、互いに直交する。互いに直交する3つの平面から形成された3面内隅形状の凹部であるコーナー部36は、3面頂角部31の外形に一致して覆うことができる。
【0036】
図4は、背面7の右辺部6下側の3面頂角部31と腕部3の分解斜視図である。
把手9は、背面7の右辺部6下側の腕部3(第1腕部25)が、右辺部6の中央を垂直に横切る水平線41(図2参照)を境に右上側の腕部3(第1腕部26)(図3(a)参照)と線対称に形成される。把手9は、背面7の右辺部6下側の腕部3も、背面7の右辺部6上側の腕部3と同様に、3面内隅形状の凹部よりなるコーナー部36が3面頂角部31を覆う。
【0037】
図1図2に示すように、背面7の周辺部分には、巻胴上下板部29と巻胴側板部28とから延出し折り曲げ形成された畦状部分を有し額縁部42を構成し、背面7となる背面板48の板面よりも突出する。図3(a),図4に示すように、3面頂角部31を構成する背面7の隅部19には、巻胴上下板部29の額縁部42を構成する折曲片43と背面7、巻胴側板部28の額縁部42を構成する折曲片44と背面7、折曲片44から背面7と平行に延出して固定ねじ23が貫通する折曲片45との重ね部に、複数のスリット状の隙間46が生まれる。これら隙間46は、それぞれ巻胴27が板金折曲形成とされることで、板の端縁同士によって微小ながら生じてしまうもので、これら隙間46は、測定器の電子部品から放射される電磁波(ノイズ)の通過する空間となりうる。また、隙間46は、外部磁界からの電磁波が通過する空間ともなる。これら隙間46は、コーナー部36により覆われる腕部被着領域47の内側に位置する。
【0038】
図5は、腕部3のコーナー部36により覆われた3面頂角部31の平断面斜視図である。
背面7となる背面板48には、隅部19の位置にて、巻胴側板部28から延出する矩形状の折曲片45,巻胴上下板部29から延出する矩形板状の折曲片51が重ねられる。図3(b)に示す巻胴27の折曲展開図のように、巻胴27の背面側隅部の構造は、巻胴上下板部29の背面7側の縁部分である稜線33の位置で折り曲げられて帯状の折曲片43となり、巻胴側板部28の背面7側の縁部分である稜線34の位置で折り曲げられて帯状の折曲片44となって、これら折曲片43,44で額縁部42を構成し、これら折曲片43,44にZ字状のクランク曲げ部49を介して矩形状の折曲片45,51が延設される。折曲片45と折曲片51は、図5に示すように折曲片51を背面板48側に重ねられて折曲片45と背面板48との間に折曲片51が挟まれて、背面板48に接し、各貫通穴が連通する。背面板48を挟んでこの折曲片43の反対側には、シャーシ50が重なる。そして折曲形成にて近接する各端縁には上記隙間46が生じる。腕部3は、固定突部21の挿通孔24に挿通された固定ねじ23が、折曲片45,折曲片51,背面板48,シャーシ50を貫通し、シャーシ50の裏側に配置された雌ねじ部52に螺合される。従って、腕部3は、巻胴側板部28の折曲片45,折曲片51,背面板48,シャーシ50を共締めして筐体2に強固に固定される。また、コーナー部36にて隙間46が全て覆われる。
【0039】
額縁部42と背面板48との間隙部分となるクランク曲げ部49と背面板48との間には、パッキン53が装着される。パッキン53には、例えば導電性ゴム等が用いられている。パッキン53は、本実施形態では断面略V字状に形成され、背面板48と折曲片43および折曲片44とのクリアランスを電磁シールドすることができる。
【0040】
腕部3は、コーナー部36の3面内隅形状が、筐体2の3面頂角部31を外側から覆うことにより、上述した腕部被着領域47に生じる全ての隙間46を覆うことができる。すなわち、電子計測器用筐体1は、筐体2の構造的に電磁シールド的に弱くなるところ、つまり板素材を折曲成形することで生じてしまう端縁同士の隙間46部分を含むことになる3面頂角部31を、腕部3が覆う構造となっている。
【0041】
図6(a)は電子計測器用筐体1の平面図、(b)は電子計測器用筐体1の正面図である。
電子計測器用筐体1において、4つの把手9は、それぞれが背面7,操作面8の四角形外へ突出しつつ、筐体2と反対側となる方向(図中矢印a方向)に傾斜して突出する。これにより、把手9のグリップ4と、対となる隅部19をつなぐ辺部、すなわち、高さ方向4つの左辺部5,右辺部6とグリップ4との間には、手指の入る間隙40が形成されている。グリップ4と筐体2との間隙40は、筐体2の幅がW、左右のグリップ4の間隔がGであるとき、G>Wであり、グリップ4と筐体2との間隙40は、正面視で(G-W)/2となる。少なくともこの間隙40は、手指から掌の入る大きさ、すなわちグリップ4を握ることのできる間隔を備えた長さとなっている。
【0042】
電子計測器用筐体1は、固定ねじ23の締結を解除することにより、筐体2に対して把手9が取り外し自在に固定されている。
【0043】
図7は、一体に成形された把手61が固定された筐体2の斜視図である。
なお、電子計測器用筐体1は、上述した通り把手9を、一対の腕部3と、グリップ4とで構成される3つの部品による分割構造としたが、一体に成形されるものであってもよい。一体成形の把手61は、例えばアルミ合金製の鋳造品とすることができる。この場合、1つの面の左右に取り付ける一対の把手61、他の1つの面の左右に取り付ける一対の把手61の合計4つの把手61は、全て同一形状とすることも可能になる。
【0044】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0045】
本実施形態に係る電子計測器用筐体1では、筐体2の1つの面7と、他の1つの面8との双方に、一対ずつ合計4つの把手9が固定される。筐体2は、各面が四角形の六面体であるので、直方体か立方体となる。例えば、筐体2は、高さ寸法が一番小さく、奥行き寸法が一番大きい、前後に長い扁平な箱体である場合、1つの面が背面7となれば、他の1つの面が前面(操作面8)となる。この場合、筐体2は、前面8の左右に一対の把手9が固定され、背面7の左右にも一対の把手9が固定される。
【0046】
それぞれの把手9は、前面8と背面7の四角形外へ突出しつつ、筐体2と反対側に傾斜する。つまり、4つの把手9は、筐体2を中心とした放射方向に突出する。
【0047】
図8は、筐体搬送時の状況を表す正面図である。
このため、電子計測器用筐体1は、前面8から見て左側の把手9と、背面7から見て右側の把手9、すなわち電子計測器用筐体1の側方から前面8と背面7の各一方の把手9を両手、若しくは2人で片側ずつ持つことができる。つまり、前面の把手9と、背面7の把手9を持って巻胴側板部28を上向きとした横臥状態で持ち上げることができる。電子計測器用筐体1は、筐体2が、上述したように、奥行き(前後)寸法が一番大きい場合、横向きで持ち上げることができ、奥行長さに比べて短い横幅の長さW方向を垂直にして持ち上げることができ、床面から十分に引き上げて引きずることがない。
【0048】
図9は、縦置きされた電子計測器用筐体1の斜視図である。
また、電子計測器用筐体1では、4つの把手9が、筐体2を中心とした放射方向に突出する。このため、電子計測器用筐体1は、前面8を上向きに上面とし、背面7を下向きに一対の把手9を脚部として縦置きできる。すなわち、電子計測器用筐体1は、背面7に脚部があることになる。勿論、その逆の背面7を上面とし、前面の一対の把手9を脚部として縦置きもでき、例えば背面7へのケーブル接続を真上から行うことを可能とする。
【0049】
図10(a)は縦置きされた電子計測器用筐体1の側面図、(b)は横置きされた電子計測器用筐体1の側面図である。
また、電子計測器用筐体1は、図10(b)に示すように、前面から見て右側の把手9と、背面7から見て左側の把手9を脚部としたり、前面から見て左側の把手9と、背面7から見て右側の把手9を脚部としたりすることで横置きもできる。
【0050】
把手9は、背面7及び前面8において、左右方向の横幅よりも外側に把手9が向いているため、筐体側面(巻胴側板部28)を、床面に触れさせずに、空間を設けて、横幅を垂直にして横置きできる。これにより、側面となる巻胴側板部28に給排気口(図示せず)が設けられている場合に、この給排気口を塞がず、床面から離間させることができ、良好な放熱性・排気性が確保可能となる。
【0051】
また、電子計測器用筐体1を持ち運び設置される例えば電波塔の上などは、狭く、風を通すため足場がメッシュとなっている。そこに、電子計測器用筐体1に測定装置を収容したスペクトルアナライザなどの電子計測器10を持ち込む際、前面8を上向きにして使うことが想定される。すなわち、図9,10(a)に示すように、縦置きされる。従来、計測器背面に設けられていた脚は、4本の細い棒構造であったため、これら脚がメッシュの網目に落ちたり、溝に嵌ったりして、垂直に立てられなかった。
【0052】
これに対し、本発明の電子計測器用筐体1では、図9に示すように、把手9がコ字状となっている。すなわち、一対の脚となる腕部3の間に、グリップ4が掛け渡されている。このため、電子計測器用筐体1は、把手9のグリップ4をメッシュ上に載置できるので、網目に落ちたり、溝に嵌ったりすることがなく、使用時の不具合が発生しない。
【0053】
そして、電子計測器用筐体1では、背面7に、ケーブルの接続されるコネクタ11やソケット等が設けられる。前面8には、計測器操作のための各種ボタン、スイッチ等が設けられる。電子計測器用筐体1では、前面に設けられる操作面8を上向きにして縦置きされる場合、図10(a)に示すように、背面7が一対の把手9により床面から離間する。これにより、コネクタ11等が床面から離間し、コネクタ11等を保護することが可能となり、また、ここに接続されたケーブルが折れたり、曲がったりすることを抑制できる。また、上記のような使用時にメッシュの網目に脚が落ちることによりケーブルを折ってしまうことも防止できる。その結果、移動時や設置時に、背面7に設けられるコネクタ11,ソケットや、操作面8に設けられる各種ボタン,スイッチ等の両方を把手9により保護できる。
【0054】
また、電子計測器用筐体1では、1つの面(背面7)の4つの隅部19に、把手9の腕部3が固定される。4つの隅部19は、それぞれが、1つの面7とそれに隣り合う2つの側面28,29とが交わる3面頂角部31の一側面となる。把手9に形成されるコーナー部36には、3面頂角部31に外側から嵌合する3面内隅形状の凹部が形成される。把手9は、隅部19に固定することにより、1つの面の隅部19を含む3面頂角部31を3面内隅形状の凹部で覆うことができる。その結果、3面頂角部31を覆えるので、3面頂角部31の仕上がり精度を緩和、つまり、上述した折り曲げ成形の精度を厳格にして隙間46を無くす高精度の加工や、隙間46を埋めるための後加工等を不要とすることができるとともに、3面頂角部31の電磁シールド性能を向上させることができる。
【0055】
さらに、電子計測器用筐体1では、一対の腕部3とグリップ4との3つの部品がコ字状の把手9を構成する。この把手9は、1つの面7および他の1つの面8において対となる隅部19と、1つの面7および他の1つの面8において他の対となる隅部19との双方に固定される。1つの面7および他の1つの面8の左右に配置された把手9は、それぞれが、1つの面7および他の1つの面8の四角形外へ突出しつつ、1つの面7および他の1つの面8を挟んで筐体2と反対側となる手前に傾斜する。つまり、左右一対の把手9は、グリップ4が1つの面7および他の1つの面8の左右外側に配置されて、外側に開いている。これにより、1つの面が背面7であれば、コネクタ11,ソケット等が配置される面の全体が見え、これらコネクタ11等へケーブルの接続を行うことが支障なく可能となる。また、他の1つの面が前面(操作面)8であれば、ボタン,スイッチなどを配置した操作面全体が見え、容易な操作が可能となる。そして、例えば操作面8の操作時に、把手9に指を掛けながら安定したボタン操作を行える。小指や薬指、中指を掛けた状態で、親指で操作が可能となる。操作する指以外の指をグリップ4または腕部3で支えながら親指で操作が可能となる。そして、把手9を、背面7及び前面8の左右共通で使いながら、筐体2のデザインに合わせ、高さ、幅、形状、デザインを、少ない部品の変更で容易に対応が可能となる。その結果、電子計測器用筐体1は、把手9が、前面8側のボタン,コネクタ11および画面、背面7側のケーブルの保護を兼ね、筐体2の重量、高さにあわせた最適なデザインへ容易に変更可能となる。
【0056】
また、電子計測器用筐体1では、1つの面7と他の1つの面8に、合計8つの腕部3が固定されることになる。このうち、1つの面7と他の1つの面8の対角の位置に固定される2つの腕部3は、同一形状とすることができ、8つの腕部3は、2種類の部品とすることができる。すなわち、成形型を共通化することができる。その結果、成形型の種類を減らせるので、成形型の製作コスト、成形型のメンテナンス費用を低減でき、部品種別も削減できて、製品コストも安価にできる。
【0057】
また、電子計測器用筐体1では、把手9が筐体2から容易に取り外し可能となる。例えば、移動時に使用した把手9は、設置後に不要となる場合がある。この場合、不要となった把手9が筐体2から取り外される。また、把手9が取り外された筐体2を移動する際に、把手9を筐体2に取り付けることができ、持ち運びを容易なものとする。また、製品の仕様により、価格が優先される場合がある。この場合、把手9の取り付けが省略された組立が可能となる。その結果、設置後に把手9が不要になる場合や、低コスト仕様にも容易に対応が可能となる。
【0058】
従って、本実施形態に係る電子計測器用筐体1によれば、移動や設置する際の可搬性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…電子計測器用筐体
2…筐体
3…腕部
4…グリップ
5…辺部(左辺部)
6…辺部(右辺部)
7…1つの面(背面)
8…他の1つの面(操作面,前面)
9…把手
11…コネクタ
19…隅部
20…基端部
31…3面頂角部
36…コーナー部
40…間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10