(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182643
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両用導風構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B60K11/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090319
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 広明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】森下 大貴
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
(57)【要約】
【課題】例えば、信頼性をより高くすることができたり、設計や製造の手間やコストを抑制することができたりするような、改善された車両用導風構造を得る。
【解決手段】車両用導風構造は、例えば、熱交換器の側部または側方から車両前方に延び、熱交換器と接続された配管が通る開口が設けられたガイドプレートと、開口の縁と配管との間の隙間を覆うカバーと、を備えた、車両用導風構造であって、カバーは、開口の周縁部と固定された第一部位と、配管と固定された第二部位と、少なくとも部分的に第一部位と第二部位との間に介在し、ガイドプレートと配管との相対変位に応じて変形可能な変形部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の側部または側方から車両前方に延び、前記熱交換器と接続された配管が通る開口が設けられたガイドプレートと、
前記開口の縁と前記配管との間の隙間を覆うカバーと、
を備えた、車両用導風構造であって、
前記カバーは、
前記開口の周縁部と固定された第一部位と、
前記配管と固定された第二部位と、
少なくとも部分的に前記第一部位と前記第二部位との間に介在し、前記ガイドプレートと前記配管との相対変位に応じて変形可能な変形部と、
を有した、車両用導風構造。
【請求項2】
熱交換器の側部または側方から車両前方に延び、前記熱交換器と接続された配管が通る開口が設けられたガイドプレートと、
前記開口の縁と前記配管との間の隙間を覆うカバーと、
を備えた、車両用導風構造であって、
前記カバーは、
前記開口の周縁部と固定された第一部位と、
前記配管の外周に沿って当該配管の周方向に延び当該配管を部分的に取り囲むとともに前記外周に沿って当該配管の軸方向に所定区間に渡って延びた第二部位と、
少なくとも部分的に前記第一部位と前記第二部位との間に介在し、前記ガイドプレートと前記配管との相対変位に応じて変形可能な変形部と、
を有した、車両用導風構造。
【請求項3】
前記配管の径方向における前記第二部位の厚さは、前記変形部の厚さより厚い、請求項1または2に記載の車両用導風構造。
【請求項4】
前記変形部は、少なくとも一つの湾曲部を有した、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の車両用導風構造。
【請求項5】
前記変形部と前記第二部位とが、少なくとも部分的に前記配管の軸方向にずれた、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の車両用導風構造。
【請求項6】
前記開口は、前記ガイドプレートの端縁に設けられた切欠であり、
前記カバーには、前記配管から延びて前記切欠の外側に開放されたスリットが設けられた、請求項1~5のうちいずれか一つに記載の車両用導風構造。
【請求項7】
前記カバーは、前記変形部に対して前記切欠の開放側に位置し、当該変形部よりも厚い第三部位を有した、請求項6に記載の車両用導風構造。
【請求項8】
前記第三部位は、前記第一部位から前記スリットに近付くように延びるとともに、
前記第三部位は、前記スリットの延び方向における幅が前記スリットからより遠い位置での当該幅よりも狭い幅狭部を有した、請求項7に記載の車両用導風構造。
【請求項9】
前記第二部位は、前記変形部との境界部分において前記スリットを挟むように配置され、前記配管の径方向外方に向かうにつれて前記配管の周方向に互いに離れる方向に延びた一対の拡開部を有した、請求項6~8のうちいずれか一つに記載の車両用導風構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部のグリル等を介してコンパートメント内に導入された気流をラジエータに導くため、ラジエータの側部から車両前方に延びたガイドプレートを備えた車両用導風構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の車両用導風構造では、ガイドプレートの平板部に配管が貫通する開口部が設けられ、さらに、当該開口部の縁と配管との間の隙間を覆うシール部が設けられている。このような構造により、当該隙間からの気流の漏れに伴うラジエータの空冷性能の低下が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、車体振動等に伴ってシール部と配管とが相対的に変位し、当該相対変位によって、シール部と配管とが摺動し、ひいては、当該シール部および配管のうち少なくとも一方が摩耗したり損傷したりする虞があった。その場合、上記相対変位に伴う摩耗や損傷を防止するため、シール部や配管の材質や、形状、構造等を慎重に選定したり設定したりする必要があり、ひいては、車両用導風構造の設計や製造の手間やコストの増大の一因となる虞があった。
【0006】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、信頼性をより高くすることができたり、設計や製造の手間やコストを抑制することができたりするような、改善された車両用導風構造を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用導風構造は、例えば、熱交換器の側部または側方から車両前方に延び、前記熱交換器と接続された配管が通る開口が設けられたガイドプレートと、前記開口の縁と前記配管との間の隙間を覆うカバーと、を備えた、車両用導風構造であって、前記カバーは、前記開口の周縁部と固定された第一部位と、前記配管と固定された第二部位と、少なくとも部分的に前記第一部位と前記第二部位との間に介在し、前記ガイドプレートと前記配管との相対変位に応じて変形可能な変形部と、を有する。
【0008】
また、本発明の車両用導風構造は、例えば、熱交換器の側部または側方から車両前方に延び、前記熱交換器と接続された配管が通る開口が設けられたガイドプレートと、前記開口の縁と前記配管との間の隙間を覆うカバーと、を備えた、車両用導風構造であって、前記カバーは、前記開口の周縁部と固定された第一部位と、前記配管の外周に沿って当該配管の周方向に延び当該配管を部分的に取り囲むとともに前記外周に沿って当該配管の軸方向に所定区間に渡って延びた第二部位と、少なくとも部分的に前記第一部位と前記第二部位との間に介在し、前記ガイドプレートと前記配管との相対変位に応じて変形可能な変形部と、を有する。
【0009】
前記車両用導風構造では、前記配管の径方向における前記第二部位の厚さは、前記変形部の厚さより厚くてもよい。
【0010】
前記車両用導風構造では、前記変形部は、少なくとも一つの湾曲部を有してもよい。
【0011】
前記車両用導風構造では、前記変形部と前記第二部位とが、少なくとも部分的に前記配管の軸方向にずれてもよい。
【0012】
前記車両用導風構造では、前記開口は、前記ガイドプレートの端縁に設けられた切欠であり、前記カバーには、前記配管から延びて前記切欠の外側に開放されたスリットが設けられてもよい。
【0013】
前記車両用導風構造では、前記カバーは、前記変形部に対して前記切欠の開放側に位置し、当該変形部よりも厚い第三部位を有してもよい。
【0014】
前記車両用導風構造では、前記第三部位は、前記第一部位から前記スリットに近付くように延びるとともに、前記第三部位は、前記スリットの延び方向における幅が前記スリットからより遠い位置での当該幅よりも狭い幅狭部を有してもよい。
【0015】
前記車両用導風構造では、前記第二部位は、前記変形部との境界部分において前記スリットを挟むように配置され、前記配管の径方向外方に向かうにつれて前記配管の周方向に互いに離れる方向に延びた一対の拡開部を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、信頼性をより高くすることができたり、設計や製造の手間やコストを抑制することができたりするような、改善された車両用導風構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車両用導風構造が設けられた車体の一部の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の車両用導風構造の一部の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の車両用導風構造に含まれるカバーの、
図2のIII-III位置における断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の車両用導風構造に含まれるカバーの一部の模式的かつ例示的な斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の車両用導風構造に含まれるカバーの、
図3と同等位置での断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の車両用導風構造に含まれるカバーの、
図3と同等位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0019】
以下の複数の実施形態は、同様の構成を備えている。以下の複数の実施形態によれば、同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。なお、以下では、同様の構成要素については共通の符号を付与し、重複する説明が省略される。
【0020】
各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに直交している。X方向は、車両前後方向における前方を示し、Y方向は、車両前方を向いた場合の車幅方向における左方を示し、Z方向は、車両上方を示している。
【0021】
また、本明細書において、序数は、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、車両のコンパートメント1内に設けられた車両用導風構造10の斜視図である。
図1に示されるように、実施形態の車両用導風構造10は、車両前部に設けられたグリル2の開口等を介してコンパートメント1内に導入された気流を、熱交換器21,22(20)に導く。
【0023】
熱交換器21,22(20)は、それぞれ、車両前後方向と交差して車両上下方向および車幅方向に延びており、互いに車両前後方向に隙間をあけて配置されている。また、熱交換器20には、それぞれ、冷媒が流れる冷媒管と、熱交換器20の前から後へ気流が通り抜ける空気流路と、冷媒と気流との間で熱を伝達する伝熱部材と(いずれも不図示)が、設けられている。各熱交換器20において、冷媒管内を流れる冷媒と空気流路を流れる気流との間で熱交換が行われ、これにより、冷媒が冷却される。熱交換器20は、例えば、冷媒としての冷却液を冷却する冷却装置のラジエータや、冷媒としての冷媒ガスを冷却する空調装置のコンデンサ等である。
【0024】
車両用導風構造10は、二つのガイドプレート11と、二つのカバー12と、を備えている。
【0025】
ガイドプレート11は、熱交換器20の左右の側部または当該側部に対して隙間をあけて離間した側方から、それぞれ車両前方に延びている。また、ガイドプレート11は、それぞれ車両上方にも延びており、板状の形状を有している。二つのガイドプレート11は、車幅方向に互いに離間しており、これら二つのガイドプレート11の間が、コンパートメント1内に導入され熱交換器20へ向かう気流の通路となっている。
【0026】
熱交換器20に接続される冷媒の複数の配管23のうち一部の配管23は、ガイドプレート11に設けられた開口11aを車幅方向に貫通している。本実施形態では、一例として、二つの熱交換器20のうち前に位置した熱交換器21に接続される二つの配管23が、それぞれ開口11aを貫通している。
【0027】
図2は、車両用導風構造10の一部の側面図であって、左右両側に位置するガイドプレート11およびカバー12のうち右側に位置するガイドプレート11およびカバー12を示す図である。なお、左側に位置するガイドプレート11およびカバー12も、
図2に示される構造と同様の構造を備えている。
【0028】
図2に示されるように、ガイドプレート11には、配管23が貫通する開口11aが設けられている。開口11aは、ガイドプレート11の端縁としての前縁11bから切り欠かれ、車両後方に凹むとともに車両前方に開放された切欠である。
【0029】
カバー12は、配管23の外周23aと開口11aの縁11a1との間の隙間を覆い、当該隙間から気流が漏れるのを抑制している。
【0030】
カバー12は、第一部位12aと、第二部位12bと、第三部位12cと、変形部12dと、を有している。第一部位12aは、開口11aの周縁部11a2と固定されている。第二部位12bは、配管23を部分的に取り囲んでいる。変形部12dは、少なくとも部分的に第一部位12aと第二部位12bとの間に介在している。また、第三部位12cは、変形部12dに対して切欠としての開口11aの開放側に、言い換えると車両前方に、位置している。
【0031】
カバー12は、例えばポリプロピレンや熱可塑性エラストマのような合成樹脂材料で作られており、第一部位12a、第二部位12b、第三部位12c、および変形部12dは、当該合成樹脂材料によって一体成形されている。
【0032】
第一部位12aは、開口11aの縁11a1に沿って略一定の厚さで略U字状に延びた板状の形状を有している。第一部位12aには、例えばねじのような固定具(不図示)が貫通する貫通孔12a1が設けられている。この場合、第一部位12aは、貫通孔12a1を貫通しガイドプレート11に固定された固定具のヘッド(不図示)とガイドプレート11との間に挟まれることにより、当該ガイドプレート11に固定される。
【0033】
第二部位12bは、配管23の外周23aに沿って周方向に、例えば円弧状に延び、当該配管23を部分的に取り囲んでいる。
図2に示されるように、第二部位12bは、配管23の軸方向に見た場合において、車両前方に開放された略C字状の外観を呈しており、配管23の外周23aの前部を除く大半、具体的には9割程度を、取り囲んでいる。なお、以下の説明において、軸方向とは、配管23の中心軸Cの軸方向を示し、径方向とは、当該中心軸Cの径方向を示し、周方向とは、当該中心軸Cの周方向を示すものとする。
【0034】
第二部位12bは、弾性的に径方向に拡がった状態で配管23の外周23aを取り囲んでいる。すなわち、第二部位12bは、取付状態において、配管23の外周23aを径方向内方へ弾性的に押圧している。このように、第二部位12bと、配管23とは、弾性的に嵌合している。第二部位12bおよび配管23は、車両の走行中に第二部位12bおよび配管23に作用する荷重の差等によって軸方向、周方向、および径方向に互いにずれることなく相対的に固定された状態が維持されるよう、構成されている。
【0035】
図3は、
図2のIII-III線におけるカバー12の断面図である。
図3に示されるように、第二部位12bは、配管23の外周23aに沿って、軸方向に所定区間に渡って、すなわち所定長さで延びている。
【0036】
変形部12dは、板状または膜状の形状を有し、第二部位12bから径方向外方に広がっている。変形部12dは、当該径方向外方に向かうにつれて同心円状の山部12d1と谷部12d2とが交互に出現する蛇腹状の形状を有している。変形部12dの厚さtdは、ガイドプレート11の厚さ方向(Y方向)における第一部位12aの厚さtaよりも薄く、さらに径方向における第二部位12bの厚さtbよりも薄い。このような構成により、変形部12dは、第一部位12aおよび第二部位12bよりも変形し易くなり、ガイドプレート11と配管23との相対変位に応じて変形する。変形部12dは、易変形部とも称されうる。また、山部12d1および谷部12d2は、湾曲部の一例であり、屈曲部とも称されうる。本実施形態では、変形部12dは、複数の湾曲部を有していることになる。
【0037】
また、言い換えると、径方向における第二部位12bの厚さtbは、変形部12dの厚さtdよりも厚い。このような構成により、ガイドプレート11と配管23との相対変位が生じた場合において、第二部位12bは、変形部12dよりも変形し難く、配管23に対して相対的に固定された状態が維持されやすい。
【0038】
また、
図2に示されるように、カバー12は、車両上下方向に互いに離間した二つの第三部位12cを有している。二つの第三部位12cのうち上側の第三部位12cは、第一部位12aの上部から下方に延びている。また、二つの第三部位12cのうち下側の第三部位12cは、第一部位12aの下部から上方に延びている。ここで、第三部位12cは、板状の形状を有しており、ガイドプレート11の厚さ方向(Y方向)における第三部位12cの厚さ(不図示)は、当該ガイドプレート11の厚さ方向における第一部位12aの厚さtaと略同じである。また、上述したように、変形部12dの厚さtdは、第一部位12aの厚さtaよりも薄く、言い換えると、第一部位12aの厚さtaは、変形部12dの厚さtdよりも厚い。したがって、第三部位12cの厚さは、変形部12dの厚さtdよりも厚くなっている。
【0039】
また、カバー12には、スリットSが設けられている。スリットSは、配管23と、切欠である開口11aの外側、すなわち車両前方と、の間で、第二部位12b、変形部12d、および第三部位12cにかけて、X方向に略沿って延びており、車両前方に開放されている。X方向は、スリットSの延び方向の一例である。なお、スリットSは、径方向に延びているとも言える。ここで、スリットSの幅は、配管23の直径よりも狭くなっている。このように、スリットSの幅を狭くすることにより、当該スリットSからの気流の漏れが抑制されている。また、第二部位12bにおいてスリットSの開放側に位置する壁部12b1は、第二部位12bに収容された配管23が当該第二部位12bに対して相対的にスリットSの開放方向である車両前方へ移動して第二部位12bから外れるのを、抑制している。
【0040】
配管23とカバー12との一体化に際し、配管23は、切欠である開口11aおよびスリットSの開放側、言い換えるとスリットSに対して第二部位12bの反対側から、スリットS内へ相対的に挿入され、スリットS内を第二部位12bへ向けて相対的に移動し、当該第二部位12b内にセットされる。配管23がスリットS内を相対的に移動する際、カバー12は弾性変形し、少なくとも配管23が位置する部位において、スリットSの幅は一時的に弾性的に拡大する。
【0041】
なお、配管23とカバー12とは、当該カバー12が予めガイドプレート11に取り付けられた状態で一体化されてもよいし、カバー12がガイドプレート11に取り付けられる前に一体化されてもよい。また、後者の場合、カバー12は、配管23に仮支持された状態でガイドプレート11に固定されるとともに、第一部位12aがガイドプレート11に固定される際あるいは固定された後に、配管23に対する第二部位12bの位置調整や固定が行われてもよい。
【0042】
また、
図2に示されるように、二つの第三部位12cは、スリットSを上下に挟むように配置されており、それぞれ、第一部位12aからスリットSに近付くように延びている。ここで、第三部位12cのそれぞれにおいて、X方向、すなわちスリットSの延び方向における第三部位12cの幅W3は、第一部位12aから離れるにつれて、言い換えるとスリットSに近付くにつれて狭くなっている。すなわち、第三部位12cは、第一部位12aと隣接した根元部分からスリットSと隣接した先端部分に近付くにつれてX方向における幅W3が徐々に狭くなる、所謂先細り形状を有している。このように、第三部位12cは、その先端部分において、X方向における幅W31(W3)が第三部位12cの根元部分の幅W32(W3)よりも狭い幅狭部12c1を、有している。なお、幅W32は、第三部位12cの、幅狭部12c1よりもスリットSからより遠い位置でのX方向における幅である。
【0043】
図4は、カバー12の斜視図である。
図4および
図2に示されるように、第二部位12bには、当該第二部位12bと変形部12d(スリットS)との境界部分において、一対の拡開部12b2が設けられている。一対の拡開部12b2は、スリットSを周方向に挟むように配置され、それぞれ、第二部位12bから、径方向外方に向かうにつれて周方向に互いに離れる方向に延びている。よって、スリットSから第二部位12bに向けて周方向内方(
図2,4中のD1方向)に相対的に移動する配管23は、一対の拡開部12b2の間を通る際に、当該一対の拡開部12b2ひいては第二部位12bを、周方向に弾性的に押し広げる。これにより、配管23は、より円滑に相対移動することができる。配管23が一対の拡開部12b2の間を通過して第二部位12b内に収容された後、一対の拡開部12b2および第二部位12bは拡開する前の状態に戻り、第二部位12bの壁部12b1が配管23の第二部位12bからの離脱を抑制する状態、言い換えると、第二部位12bが配管23を抱え込む状態になる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態では、カバー12は、第一部位12aと、第二部位12bと、少なくとも一部が第一部位12aと第二部位12bとの間に位置する変形部12dと、を有している。第一部位12aは、ガイドプレート11と固定され、第二部位12bは、配管23と固定され、変形部12dが、ガイドプレート11と配管23との相対変位に応じて変形する。
【0045】
また、本実施形態では、第二部位12bは、配管23の外周23aに沿って周方向に延び、配管23を部分的に取り囲むとともに、外周23aに沿って軸方向に所定区間に渡って延びている。
【0046】
このような構成によれば、第二部位12bと配管23との相対変位を抑制することができるため、当該相対変位に伴う第二部位12bおよび配管23のうち少なくとも一方の摩耗や損傷を抑制することができる。これにより、例えば、車両用導風構造10の信頼性をより向上することができたり、カバー12と配管23との間の摩耗や損傷を考慮する必要が無くなる分、設計の手間が減ったり、といった効果が得られる。
【0047】
また、本実施形態では、第二部位12bと配管23とが弾性的に嵌合している。このような構成によれば、例えば、比較的簡素な構成によって第二部位12bと配管23との相対変位を抑制できる構造を得ることができ、信頼性の高い車両用導風構造10の製造に要する手間やコストを、より低減することができる、という効果が得られる。
【0048】
また、本実施形態では、径方向における第二部位12bの厚さtbは、変形部12dの厚さtdよりも厚い。このような構成によれば、例えば、第二部位12bが変形部12dよりも変形し難く、第二部位12bと配管23との相対変位が抑制された状態が維持され易くなり、ひいては、車両用導風構造10の信頼性をより向上し易くなる。
【0049】
また、本実施形態では、変形部12dは、山部12d1および谷部12d2(湾曲部)を有している。
【0050】
また、本実施形態では、変形部12dは、蛇腹状の形状を有している。
【0051】
このような構成によれば、例えば、変形部12dが、山部12d1および谷部12d2において変形し易くなる分、第二部位12bは、変形部12dよりも変形し難くなる。よって、第二部位12bと配管23との相対変位が抑制された状態がさらに維持され易くなり、ひいては、車両用導風構造10の信頼性をさらに向上し易くなる。
【0052】
また、本実施形態では、開口11aは、ガイドプレート11の前縁11b(端縁)に設けられた切欠であり、カバー12には、配管23から切欠の外側に向けて延びたスリットSが設けられている。このような構成によれば、例えば、配管23を、スリットSに沿って切欠外から第二部位12b内へカバー12を弾性変形させながら相対移動させ、より容易に第二部位12b内に装着することができる。
【0053】
また、本実施形態では、カバー12は、第三部位12cを有している。当該第三部位12cは、変形部12dに対して切欠としての開口11aの開放側に位置するとともに、当該変形部12dよりも厚い。よって、第三部位12cは、変形部12dよりも変形し難い。仮に、第三部位12cが無い場合、走行中の車両の振動や気流の圧力等によって変形部12dが変形してスリットSの隙間がより拡がり易くなり、当該スリットSの隙間を介した気流の漏れが増大する虞がある。この点、本実施形態では、第三部位12cを有している分、スリットSの隙間が拡がり難くなるため、当該スリットSを介して気流の漏れが増大するのを、抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、第三部位12cは、X方向(スリットSの延び方向)における幅がスリットSからより遠い位置での当該幅よりも狭い幅狭部12c1を有している。このような構成によれば、例えば、組立作業時に配管23がスリットSを相対的に移動する際には、第三部位12cがより変形し易くなり、その分、組立作業をより容易にあるいはより迅速に実行することが可能となる。
【0055】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態のカバー12Aの
図3と同等位置での断面図である。
図5に示されるように、本実施形態では、第一部位12aと第二部位12bとが軸方向にずれている点が、上記第1実施形態と相違している。本実施形態によっても、第二部位12bと配管23との相対移動が抑制されているため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態のカバー12Bの
図3と同等位置での断面図である。
図6に示されるように、本実施形態では、変形部12dの形状が、上記第1および第2実施形態と相違している。すなわち、変形部12dは、蛇腹形状を有さず、一つの湾曲部12d3を有した、立体的な湾曲形状を有している。変形部12dは、前方に凸のU字断面を配管23の中心軸回りに回転した回転体形状を有し、言い換えると、中心軸と交差した面で切断されたトーラス形状の前半分、すなわち前方に突出した半トーラス形状を有している。本実施形態によっても、第二部位12bと配管23との相対移動が抑制されているため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0058】
例えば、配管と第二部位とは、例えば、熱溶着や、爪締結、接着等で固定されてもよいし、クリップやホースバンドのような固定具を介して固定されてもよいし、いくつかの固定手段が併用されて固定されてもよい。また、変形部は、上記実施形態には限定されず、種々の構造や形状により実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…コンパートメント
2…グリル
10…車両用導風構造
11…ガイドプレート
11a…開口
11a1…縁
11a2…周縁部
11b…前縁
12,12A,12B…カバー
12a…第一部位
12a1…貫通孔
12b…第二部位
12b1…壁部
12b2…拡開部
12c…第三部位
12c1…幅狭部
12d…変形部
12d1…山部(湾曲部)
12d2…谷部(湾曲部)
12d3…湾曲部
20,21,22…熱交換器
23…配管
23a…外周
C…中心軸
D1…方向
S…スリット
ta,tb,td…厚さ
W3,W31,W32…幅
X…方向(車両前方)
Y…方向(車両左方)
Z…方向(車両上方)