(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182650
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法および予測装置、並びに非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法および予測装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20221201BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02M37/00 H
F02D45/00 360A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090334
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】515068834
【氏名又は名称】安富 祐二
(71)【出願人】
【識別番号】502384440
【氏名又は名称】佐藤 善隆
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】安富 祐二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善隆
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA03
3G384AA22
3G384BA13
3G384DA04
3G384DA61
3G384FA14Z
3G384FA20Z
(57)【要約】
【課題】非常用発電機を駆動するエンジンの経年変化に基づいて将来の燃料消費量を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮して精度よく予測する。
【解決手段】非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われた際、燃料供給流路4内を流れる供給燃料の流量V1、温度T1、リターン流路5内を流れるリターン燃料の流量V2、温度T2を計測して記憶し、流量V1を所定温度Taにおける流量V1aに補正し、流量V2を所定温度Taにおける流量V2aに補正し、流量V1aから流量V2aを減じて所定温度Taにおいてエンジン3で消費された燃料流量Vaを算出し、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから非常用発電機駆動用のエンジンへと燃料を供給する燃料供給流路と、前記エンジンで消費されなかった燃料を前記燃料タンクへと戻すリターン流路を備えた非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量を予測する方法であって、
前記非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時に前記エンジンが駆動された際、前記燃料供給流路内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測して記憶し、前記リターン流路内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2を計測して記憶するステップと、
前記流量V1を、前記温度T1と前記エンジンの燃料消費量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、その所定温度Taにおける流量V1aに補正し、前記流量V2を、前記温度T2と前記所定温度Taとの差に基づいて、前記所定温度Taにおける流量V2aに補正するステップと、
前記流量V1aから前記流量V2aを減じて前記所定温度Taにおいて前記エンジンで消費された燃料流量Vaを算出するステップと、
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaの変化に基づいて、前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測するステップと、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法。
【請求項2】
前記流量V1を、前記温度T1と前記所定温度Taとの差に基づいて前記所定温度Taにおける流量V1aに補正する際、次式を用いて流量V1aを求め、
V1a=V1/(1+β(T1-Ta)) β:燃料の体積膨張率
前記流量V2を、前記温度T2と前記所定温度Taとの差に基づいて前記所定温度Taにおける流量V2aに補正する際、次式を用いて流量V2aを求める、
V2a=V2/(1+β(T2-Ta)) β:燃料の体積膨張率
ことを特徴とする請求項1に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法。
【請求項3】
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaの変化に基づいて、前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する際、
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaから最小二乗法を用いて回帰直線を求め、該回帰直線を延長することで前記所定温度Taにおける将来の前記燃料流量Vaxを予測する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法を用いて非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間を予測する方法であって、
前記燃料タンクに貯留されている燃料量Vtを求めるステップと、
該燃料量Vtを、請求項1から3の何れか1項に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法によって予測された前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxで除して、前記所定温度Taにおける前記エンジンの運転時間を算出するステップと、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法。
【請求項5】
燃料タンクから非常用発電機駆動用のエンジンへと燃料を供給する燃料供給流路と、前記エンジンで消費されなかった燃料を前記燃料タンクへと戻すリターン流路を備えた非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量を予測する装置であって、
前記燃料供給流路に設けられ、その燃料供給流路内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測する供給燃料流量温度計測手段と、前記リターン流路に設けられ、そのリターン流路内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2を計測するリターン燃料流量温度計測手段と、該リターン燃料流量温度計測手段および前記供給燃料流量温度計測手段に接続されたコンピュータとを備え、
該コンピュータは、
前記非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時に前記エンジンが駆動された際、前記流量V1、前記温度T1、前記流量V2、前記温度T2を夫々記憶する機能と、
前記流量V1を、前記温度T1と前記エンジンの燃料消費量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、その所定温度Taにおける流量V1aに補正し、前記流量V2を、前記温度T2と前記所定温度Taとの差に基づいて、前記所定温度Taにおける流量V2aに補正する機能と、
前記流量V1aから前記流量V2aを減じて前記所定温度Taにおいて前記エンジンで消費された燃料流量Vaを算出する機能と、
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaの変化に基づいて、前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する機能と、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置。
【請求項6】
前記供給燃料流量温度計測手段が、前記燃料供給流路に取り付けられその燃料供給流路内を流れる燃料の流量V1を計測する供給燃料流量計と、該供給燃料流量計の近傍の前記燃料供給流路に取り付けられその燃料供給流路内を流れる燃料の温度T1を計測する供給燃料温度計とを備え、
前記リターン燃料流量温度計測手段が、前記リターン流路に取り付けられそのリターン流路内を流れる燃料の流量V2を計測するリターン燃料流量計と、該リターン燃料流量計の近傍の前記リターン流路に取り付けられそのリターン流路内を流れる燃料の温度T2を計測するリターン燃料温度計とを備えている、ことを特徴とする請求項5に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置。
【請求項7】
前記コンピュータは、
前記流量V1を、前記温度T1と前記所定温度Taとの差に基づいて前記所定温度Taにおける流量V1aに補正する際、次式を用いて流量V1aを求める機能を有し、
V1a=V1/(1+β(T1-Ta)) β:燃料の体積膨張率
前記流量V2を、前記温度T2と前記所定温度Taとの差に基づいて前記所定温度Taにおける流量V2aに補正する際、次式を用いて流量V2aを求める機能を有する、
V2a=V2/(1+β(T2-Ta)) β:燃料の体積膨張率
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置。
【請求項8】
前記コンピュータは、
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaの変化に基づいて、前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する際、
過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の前記燃料流量Vaから最小二乗法を用いて回帰直線を求め、該回帰直線を延長することで前記所定温度Taにおける将来の前記燃料流量Vaxを予測する機能を有する、ことを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置。
【請求項9】
請求項5から8の何れか1項に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置を用いて非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間を予測する装置であって、
前記燃料タンクに貯留されている燃料量Vtを求めるタンク燃料量測定手段を備え、
前記コンピュータは、
前記燃料量Vtを、請求項5から8の何れか1項に記載の非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置によって予測された前記所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxで除して、前記所定温度Taにおける前記エンジンの運転時間を算出する機能を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用発電機を駆動するエンジンの燃料消費量を予測する方法および装置、並びにそのエンジンの運転時間を予測する方法および装置に係り、特に、エンジンの経年変化に基づいて将来の燃料消費量や運転時間を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮することで精度よく予測できる非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法および予測装置、並びに非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法および予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非常用発電機は、工場、ビル、病院等に設置され、災害等により停電となった場合に発電を行うものであり、エンジン(ディーゼルエンジン等)によって駆動される。非常用発電機は、通常時には使用されず、非常時のみ使用されるものであるため、非常時に確実に作動させるため、消防法に基づいて定期的(例えば1年に1回)に試験が行われている。試験は、非常用発電機に一定の負荷(例えば定格出力の30%の負荷)を掛けた状態で、エンジンを駆動することで行われる(特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、実際に災害等により停電が発生して非常用発電機が作動した場合、非常用発電機による発電可能時間、すなわち非常用発電機を駆動するエンジンの運転可能時間は、ユーザーにとって関心のある事項である。この時間は、燃料タンクに満タンに燃料が貯留されているとすると、燃料タンクのタンク容量をエンジンの単位時間当たりの燃料消費量で除することで算出できる。
【0004】
ここで、燃料タンクのタンク容量は、燃料タンクの仕様書に記載されているタンク容量の数値を用いることができる。他方、エンジンの単位時間当たりの燃料消費量は、発電時に非常用発電機に加わる負荷すなわちエンジンに加わる負荷の大きさによって相違するが、予め負荷の大きさ(例えば定格出力の30%の負荷)が分かっていれば、その負荷の大きさに応じた単位時間当たりの燃料消費量をエンジンの仕様書から求めることができる。従って、これらを用いることで、停電時、非常用発電機を駆動するエンジンの運転可能時間、すなわち非常用発電機の発電可能時間を形式的には算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-205860号公報
【特許文献2】特開2018-91650号公報
【特許文献3】特開2013-24744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし乍ら、非常用発電機やそれを駆動するエンジンは、設置から年月が経過すると、運転の有無に拘わらず劣化するため、上述した負荷の大きさに応じた単位時間当たりの燃料消費量は、仕様書に記載された数値よりも実際には悪化する。従って、設置からの年月の長さ(期間)に応じたエンジンの燃料消費量の経年悪化を考慮して、非常用発電機の発電可能時間を算出する必要がある。
【0007】
そこで、本発明者等は、燃料タンクとエンジンとを接続する燃料流路に、エンジンで消費した燃料量を計測するための燃料流量計を設けておき、過去に複数回行った負荷試験のときに、燃料流量計によって測定された単位時間当たりの燃料流量を夫々記憶し、それらの燃料流量の変化(悪化)に基づいて将来の燃料流量を予測することを考えた。具体的には、過去の複数回の負荷試験時に夫々得られた複数の燃料流量から最小二乗法を用いて回帰直線を求め、その回帰直線を延長することで、将来の燃料流量を予測するシステムを考えた。
【0008】
しかし、このシステムにおいては、過去の複数回の負荷試験時の気温が異なっている場合、気温に応じて燃料が膨張収縮するため、将来の燃料流量を正確に予測することはできない。すなわち、気温が低いとき(例えば冬期)に行った負荷試験においては、燃料流路を流れる燃料の単位重量当たりの体積が収縮し、気温が高いとき(例えば夏期)に行った負荷試験においては、燃料流路を流れる燃料の単位重量当たりに体積が膨張する。このため、気温が低いときの負荷試験において燃料流量計で測定された燃料流量(単位時間当たりに流れる燃料体積)と、気温が高いときの負荷試験において燃料流量計で測定された燃料流量とは、直接対比することが妥当ではなく、これらの燃料流量から最小二乗法を用いて将来の燃料流量を予測しても精度の高い予測とはいえない。
【0009】
なお、特許文献3には、燃料タンクからエンジンへと燃料を供給する燃料供給流路と、エンジンで消費されなかった燃料を燃料タンクへと戻すリターン流路を備えたエンジンの燃費計測装置として、燃料供給流路およびリターン流路の夫々に燃料流量計を取り付け、これら燃料流量計により測定した燃料供給流路の燃料流量とリターン流路の燃料流量との差からエンジンで消費された燃料流量を求める技術が記載されている。しかし、この技術は、エンジンの経年変化に基づいて将来の燃料流量を予測するものではなく、本発明とは技術的な前提が相違する。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、非常用発電機を駆動するエンジンの経年変化に基づいて将来の燃料消費量や運転時間を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮して精度よく予測する事が可能な非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法および予測装置、並びに非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法および予測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成すべく創案された本発明によれば、燃料タンクから非常用発電機駆動用のエンジンへと燃料を供給する燃料供給流路と、エンジンで消費されなかった燃料を燃料タンクへと戻すリターン流路を備えた非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量を予測する方法であって、非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時にエンジンが駆動された際、燃料供給流路内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測して記憶し、リターン流路内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2を計測して記憶するステップと、流量V1を、温度T1とエンジンの燃料消費量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V1aに補正し、流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V2aに補正するステップと、流量V1aから流量V2aを減じて所定温度Taにおいてエンジンで消費された燃料流量Vaを算出するステップと、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測するステップと、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法が提供される。
【0012】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法においては、流量V1を、温度T1と所定温度Taとの差に基づいて所定温度Taにおける流量V1aに補正する際、次式を用いて流量V1aを求め、
V1a=V1/(1+β(T1-Ta)) β:燃料の体積膨張率
流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて所定温度Taにおける流量V2aに補正する際、次式を用いて流量V2aを求める、ようにしてもよい。
V2a=V2/(1+β(T2-Ta)) β:燃料の体積膨張率
【0013】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法においては、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する際、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaから最小二乗法を用いて回帰直線を求め、回帰直線を延長することで所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明においては、上述した非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法を用いて非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間を予測する方法であって、燃料タンクに貯留されている燃料量Vtを求めるステップと、燃料量Vtを、上述した非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法によって予測された所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxで除して、所定温度Taにおけるエンジンの運転時間を算出するステップと、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法が提供される。
【0015】
また、本発明においては、燃料タンクから非常用発電機駆動用のエンジンへと燃料を供給する燃料供給流路と、エンジンで消費されなかった燃料を燃料タンクへと戻すリターン流路を備えた非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量を予測する装置であって、燃料供給流路に設けられ、その燃料供給流路内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測する供給燃料流量温度計測手段と、リターン流路に設けられ、そのリターン流路内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2を計測するリターン燃料流量温度計測手段と、リターン燃料流量温度計測手段および供給燃料流量温度計測手段に接続されたコンピュータとを備え、コンピュータは、非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時にエンジンが駆動された際、流量V1、温度T1、流量V2、温度T2を夫々記憶する機能と、流量V1を、温度T1とエンジンの燃料消費量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V1aに補正し、流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V2aに補正する機能と、流量V1aから流量V2aを減じて所定温度Taにおいてエンジンで消費された燃料流量Vaを算出する機能と、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する機能と、を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置が提供される。
【0016】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置においては、供給燃料流量温度計測手段が、燃料供給流路に取り付けられその燃料供給流路内を流れる燃料の流量V1を計測する供給燃料流量計と、供給燃料流量計の近傍の燃料供給流路に取り付けられその燃料供給流路内を流れる燃料の温度T1を計測する供給燃料温度計とを備え、リターン燃料流量温度計測手段が、リターン流路に取り付けられそのリターン流路内を流れる燃料の流量V2を計測するリターン燃料流量計と、リターン燃料流量計の近傍のリターン流路に取り付けられそのリターン流路内を流れる燃料の温度T2を計測するリターン燃料温度計とを備えていてもよい。
【0017】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置においては、コンピュータは、流量V1を、温度T1と前記所定温度Taとの差に基づいて所定温度Taにおける流量V1aに補正する際、次式を用いて流量V1aを求める機能を有し、
V1a=V1/(1+β(T1-Ta)) β:燃料の体積膨張率
流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて所定温度Taにおける流量V2aに補正する際、次式を用いて流量V2aを求める機能を有していてもよい。
V2a=V2/(1+β(T2-Ta)) β:燃料の体積膨張率
【0018】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置においては、コンピュータは、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する際、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaから最小二乗法を用いて回帰直線を求め、回帰直線を延長することで所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する機能を有していてもよい。
【0019】
また、本発明においては、上述した非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置を用いて非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間を予測する装置であって、燃料タンクに貯留されている燃料量Vtを求めるタンク燃料量測定手段を備え、コンピュータは、燃料量Vtを、上述した非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置によって予測された所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxで除して、所定温度Taにおけるエンジンの運転時間を算出する機能を有する、ことを特徴とする非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法および予測装置、並びに非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法および予測装置によれば、エンジンの経年変化に基づいて将来の燃料消費量や運転時間を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮して精度よく予測する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置、および非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測装置の概要を示す説明図である。
【
図2】上記実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法、および非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法の概要を示す説明図である。
【
図3】上記実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法において、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1の概要)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置1は、燃料タンク2から非常用発電機駆動用のエンジン3へと燃料を供給する燃料供給流路4と、エンジン3で消費されなかった燃料を燃料タンク2へと戻すリターン流路5を備えたシステムに適用される。この燃料消費量予測装置1は、燃料供給流路4に設けられ、その燃料供給流路4内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測する供給燃料流量温度計測手段と6、リターン流路5に設けられ、そのリターン流路5内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2を計測するリターン燃料流量温度計測手段7と、リターン燃料流量温度計測手段7および供給燃料流量温度計測手段6に接続されたコンピュータ8とを備えている。以下各構成要素について説明する。
【0024】
(燃料供給流路4、リターン流路5)
図1に示すように、燃料供給流路4の一端4aは、燃料タンク2の下部に、タンク底面2aから多少高い位置に接続されている。タンク底面2aに沈殿したセジメント(錆、水、不純物等の異物)をエンジン3に供給しないようにするためである。燃料供給路4の他端4bは、非常用発電機駆動用のエンジン(ディーゼルエンジン)3に接続されている。エンジン3には、燃料供給路4から供給された燃料を圧送する高圧供給ポンプ9、高圧供給ポンプ9から圧送された燃料を高圧状態で蓄えるコモンレール10、コモンレール10内の燃料をエンジン3のシリンダ内に噴射するインジェクタ11、インジェクタ11から噴射されなかった燃料が流れる排出流路12などが設けられている。排出通路12には,リターン通路5の一端5aが接続されている。リターン通路5の他端5bは、燃料タンク2の上部に接続されている。
【0025】
(供給燃料流量温度計測手段6)
図1に示すように、燃料供給流路4には、燃料供給流路4内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を計測する供給燃料流量温度計測手段6が設けられている。供給燃料流量温度計測手段6は、燃料供給流路4に取り付けられその燃料供給流路4内を流れる燃料の流量V1を計測する供給燃料流量計6Vと、供給燃料流量計6Vの近傍の燃料供給流路4に取り付けられその燃料供給流路4内を流れる燃料の温度T1を計測する供給燃料温度計6Tとを備えている。
【0026】
供給燃料温度計6Tは、エンジン3で発生する熱による影響を低減するため、燃料タンク2とエンジン3とを接続する燃料供給流路4の長さの半分よりも燃料タンク2に近い位置、好ましくは1/3よりも燃料タンク2に近い位置に配設される。これに伴って、供給燃料温度計6Tの近傍に設けられる供給燃料流量計6Vも、燃料供給流路4の長さに対して同様の関係の配置となる。
【0027】
供給燃料温度計6Tには、燃料供給流路4の外面に装着された熱電対などが用いられる。他方、供給燃料流量計6Vには、燃料供給流路4の外部にクランプされて流路内部を流れる流体の流速を計測できる公知の非接触型の流量計(例えば、超音波流量計や電波流量計などのドップラー式非接触型流量計)が用いられる。
【0028】
(リターン燃料流量温度計測手段7)
図2に示すように、リターン流路5には、リターン流路5内を流れるリターン燃料の流量V1および温度T1を計測するリターン燃料流量温度計測手段7が設けられている。リターン燃料流量温度計測手段7は、リターン流路5に取り付けられそのリターン流路5内を流れる燃料の流量V2を計測するリターン燃料流量計7Vと、リターン燃料流量計7Vの近傍のリターン流路5に取り付けられそのリターン流路5内を流れる燃料の温度T2を計測するリターン燃料温度計7Tとを備えている。
【0029】
リターン温度計7Tは、エンジン3で発生する熱による影響を低減するため、エンジン3と燃料タンク2とを接続するリターン流路5の長さの半分よりも燃料タンク2に近い位置、好ましくは1/3よりも燃料タンク2に近い位置に配設される。これに伴って、リターン燃料温度計7Tの近傍に設けられるリターン燃料流量計7Vも、リターン流路5の長さに対して同様の関係の配置となる。
【0030】
リターン燃料温度計7Tには、リターン流路5の外面に装着された熱電対などが用いられる。他方、リターン燃料流量計7Vには、リターン流路5の外部にクランプされて流路内部を流れる流体の流速を計測できる公知の非接触型の流量計(例えば、超音波流量計や電波流量計などのドップラー式非接触型流量計)が用いられる。
【0031】
(コンピュータ8)
図1に示すコンピュータ8は、非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時にエンジン3が駆動された際、
図2に示すように、流量V1、温度T1、流量V2、温度T2を夫々記憶する機能(ステップ1)と、流量V1を、温度T1とエンジン3の燃料噴射量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、その所定温度Taにおける流量V1aに補正し、流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V2aに補正する機能(ステップ2)と、流量V1aから流量V2aを減じて所定温度Taにおいてエンジン3で消費された燃料流量Vaを算出する機能(ステップ3)とを有する。また、コンピュータ8は、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する機能(ステップ4)を有する。以下各機能(ステップ)について説明する
【0032】
(ステップ1)
図2のステップ1(S1)に示すように、
図1のコンピュータ8は、非常用発電機の負荷試験が所定期間を隔てて複数回行われ、夫々の負荷試験時にエンジン3が駆動された際、燃料供給流路4内を流れる供給燃料の流量V1および温度T1を供給燃料流量温度計測手段6で計測して記憶し、リターン流路5内を流れるリターン燃料の流量V2および温度T2をリターン燃料流量温度計測手段7で計測して記憶する。非常用発電機の負荷試験が行われる間隔(上記所定期間)は、消防法の要請によって定められており、例えば1年毎、6ヶ月毎などに行われる。
【0033】
(ステップ2)
図2のステップ2(S2)に示すように、コンピュータ8は、記憶した流量V1を、温度T1とエンジンの燃料噴射量を予測するときの所定温度Taとの差に基づいて、その所定温度Taにおける流量V1aに補正する。この補正には、次式を用いる。
V1a=V1/(1+β(T1-Ta))…(1)
β:燃料の体積膨張率(0.00116/K)
【0034】
(1)式は、液体の体積膨張率についての次の関係式を基準温度Voについて展開することで得られる。
V=Vo(1+βt)
Vo:基準温度における液体の体積
β:液体の体積膨張率
t:基準温度からの温度変化
【0035】
同様に、コンピュータ8は、記憶した流量V2を、温度T2と所定温度Taとの差に基づいて、所定温度Taにおける流量V2aに、次式を用いて補正する。
V2a=V2/(1+β(T2-Ta))…(2)
β:燃料の体積膨張率(0.00116/K)
【0036】
(第1回目の負荷試験)
具体的には、第1回目の負荷試験時(夏期)に、
V1(ml/min)=101.16
T1(℃)=30
が計測された場合、エンジン3の燃料噴射量を予測するときの所定温度Taを例えば
Ta(℃)=20…(春秋期)
とすると、
Ta=20℃のときの流量V1aは、(1)式を用いて、
V1a=101.16/(1+0.00116(30-20))=100…(3)
と算出される。
【0037】
また、第1回目の負荷試験時(夏期)に、
V2(ml/min)=70.9744
T2(℃)=32
が計測された場合、
Ta(℃)=20(春秋期)のときの流量V2aは、(2)式を用いて、
V2a=70.9744/(1+0.00116(32-20))=70…(4)
と算出される。
【0038】
(ステップ3)
図2のステップ3(S3)に示すように、コンピュータ8は、上記の(3)、(4)を
Va=V1a-V2a…(5)
に代入して、所定温度Ta(20℃)における、エンジンの消費燃料流量Vaを算出する。
Va=V1a-V2a=100-70=30
これにより、第1回目の負荷試験時(夏期)のエンジンの消費燃料流量を、所定温度Ta=20℃(春秋期)のときの消費燃料流量に変換した消費燃料流量Va=30が算出される。
【0039】
このVa=30を
図3のグラフの第1回目の試験のプロット点aとして記入する。所定温度Ta(20℃)は、
図3に示すように、過去の負荷試験の結果に基づいて、次回(本実施形態では第6回)のエンジンの消費燃料流量を予測するときの気温に相当する。なお、Taを計測するための気温センサをコンピュータ8に接続しておいてもよい。これにより、第6回目の負荷試験時に過去の負荷試験のデータに基づいて消費燃料流量Vaを予測する際、その時点(現時点)で気温センサで計測された気温をTaに用いることができる。
【0040】
(第2回目の負荷試験)
同様に、第2回目の負荷試験時(冬期)に、
V1(ml/min)=95.7264
T1(℃)=0
が計測された場合、
Ta(℃)=20(春秋期)のときの流量V1aは、(1)式を用いて、
V1a=95.7264/(1+0.00116(0-20))=98…(6)
と算出される。
【0041】
また、第2回目の負荷試験時(冬期)に、
V2(ml/min)=71.47576
T2(℃)=2
が計測された場合、
Ta(℃)=20(春秋期)のときの流量V2aは、(2)式を用いて、
V2a=71.47576/(1+0.00116(2-20))=73…(7)
と算出される。
【0042】
図2のステップ3(S3)に示すように、コンピュータ8は、(6)、(7)を(5)式に代入して、所定温度Ta(20℃)における、消費燃料流量Vaを算出する。
Va=V1a-V2a=98-73=25
これにより、第2回目の負荷試験時(冬期)のエンジン3の消費燃料流量を、次回(本実施形態では第6回)の消費燃料流量を予測するときの気温である所定温度Ta=20℃(春秋期)に変換した消費燃料流量Va=25が算出される。このVa=25を
図3のグラフの第2回目の試験のプロット点bとして記入する。
【0043】
(第3~5回目の負荷試験)
同様にして、
図3に示すように、第3回目の負荷試験時のエンジン3の消費燃料流量を次回の消費燃料流量を予測するときの気温である所定温度Ta(20℃)に変換した消費燃料流量Va(Va=50)を求めてプロット点cとして記入し、第4回目の負荷試験時のエンジンの消費燃料流量を所定温度Ta(20℃)に変換した消費燃料流量Va(Va=45)を求めてプロット点dとして記入し、第5回目の負荷試験時のエンジンの消費燃料流量を所定温度Ta(20℃)に変換した消費燃料流量Va(Va=50)を求めてプロット点eとして記入する。
【0044】
なお、負荷試験の回数は5回に限られず、2回以上であれば何回でも構わない。また、各負荷試験の間隔(期間)は、等間隔(1年毎、6ヶ月毎等)が好ましいが、不等間隔であっても構わない。
【0045】
(ステップ4)
図2のステップ4(S4)に示すように、コンピュータ8は、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaの変化に基づいて、所定温度Ta(本実施形態では20℃)における将来の燃料流量Vaxを予測する。具体的には、
図3に示すように、コンピュータ8は、過去の複数回の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaのプロット点a~eから最小二乗法を用いて回帰直線Xを求め、回帰直線Xを延長することで所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxを予測する機能を有する。
【0046】
図3において、過去の複数回(本実施形態では5回)の負荷試験によって夫々得られた複数の燃料流量Vaのプロット点a~eから最小二乗法を用いて回帰直線Xを求める手法については、公知の最小二乗法を用いるので詳しい説明を省略する。コンピュータ8は、最小二乗法によって求められた回帰直線Xにその傾きを保持して延長した延長直線Yを繋げることで、所定温度Ta(本実施形態では20℃)における将来(第6回)の燃料流量Vaxを予測する。本実施形態においては、
図3に示すように、所定温度Ta(本実施形態では20℃)における次回(第6回)の燃料流量Vaxは、Vax=58と予測できる。これは、次回、春や秋などの気温20℃のとき、非常用発電機駆動用のエンジンが駆動されると、燃料流量Vax=58(ml/min)と予測できることを示す。
【0047】
なお、本実施形態においては、
図3の横軸(非常用発電機を設置してからの経過期間)に記入された負荷試験の回数の目盛りが等間隔となっているが、これは隣接する負荷試験同士の期間が等間隔(1年毎、6ヶ月毎等)のためであり、隣接する負荷試験同士の期間が不等間隔であればそれに応じて横軸に記入される負荷試験の回数の目盛りは不等間隔になる。
【0048】
本実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1およびそれを用いた予測方法によれば、非常用発電機やエンジン3の経年変化に基づいて将来の燃料消費量を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮して、精度よく燃料噴射量を予測する事ができる。
【0049】
(非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間予測装置1aの概要)
次に、本発明の一実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間予測装置1aについて説明する。この非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間予測装置1aは、上述した非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1を用いて非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間Tを予測する装置である。
【0050】
図1に示すように、本実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間予測装置1aは、上述した非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1の構成要素に加えて、燃料タンク2に貯留されている燃料量Vtを求めるタンク燃料量測定手段13を備えている。また、本装置1aのコンピュータ8は、タンク燃料量測定手段13で求めた燃料量Vtを、上述した非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1によって予測された所定温度Taにおける将来の燃料流量Vaxで除して、所定温度Taにおけるエンジン3の運転時間Tを算出する機能を有している。以下各構成要素について説明する。
【0051】
(タンク燃料量測定手段13)
図1に示すように、タンク燃料量測定手段13は、燃料タンク2内に貯留されてい燃料量Vtを測定するものであり、燃料タンク2の頂板2bに取り付けられ頂板2bから燃料タンク2内の燃料の液面2cまでの距離Lを計測する距離センサ14を有する。距離センサ14には、例えば超音波距離センサ、光学距離センサ、電波距離センサ等が用いられる。距離センサ14は、コンピュータ8に接続されている。
【0052】
コンピュータ8は、
図2にステップ5(S5)に示すように、距離センサ13で計測された距離Lを次の(8)式に代入し、燃料タンク2内に貯留されている燃料量Vtを算出する機能を有する。
Vt=(H-L)S…(8)
【0053】
ここで、Hは燃料タンク2の頂板2bから燃料タンク2の仮想下限液位2dまでの距離である。仮想下限液位2dは、燃料タンク2に接続された燃料供給流路4の接続高さよりも多少高く設定される。燃料タンク2内の空気が燃料供給流路4に吸い込まれると、エンジン(ディーゼルエンジン)3に所謂エア噛みが生じ、エア抜き作業が必要となってしまうため、燃料タンク2内の燃料が減っていったとき、燃料タンク2内の空気が燃料供給流路4から吸い込まれないように、仮想下限液位2dが設定されている。
【0054】
また、Sは、燃料タンク2の断面積である。この燃料タンク2は、断面積Sが高さ方向に一定の四角筒または円筒からなっている。よって、燃料タンク2内の燃料量Vtは、(8)式に示すように、(H-L)Sにより算出される。
【0055】
(コンピュータ8)
コンピュータ8は、
図2にステップ6(S6)に示すように、ステップ5(S5)で算出された燃料タンク2内の燃料量Vtを、上述した非常用発電機駆動用のエンジン3の燃料消費量予測装置1のステップ4(S4)によって算出された所定温度Ta(例えば20℃)における将来の燃料流量Vaxで除すことで、所定温度Ta(例えば20℃)におけるエンジン3の運転時間Tを算出する機能を有する。
T=Vt/ Vax…(9)
【0056】
本実施形態に係る非常用発電機駆動用のエンジン3の運転時間予測装置1aおよびそれを用いた運転時間予測方法によれば、非常用発電機やエンジン3の経年変化に基づいて将来の運転時間Tを予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮して、精度よくエンジン3の運転時間を予測する事ができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、非常用発電機やエンジンの経年変化に基づいて将来の燃料消費量や運転時間を予測する際、気温による燃料の膨張収縮を考慮することで精度よく予測できる非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測方法および予測装置、並びに非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測方法および予測装置に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 非常用発電機駆動用のエンジンの燃料消費量予測装置
1a 非常用発電機駆動用のエンジンの運転時間予測装置
2 燃料タンク
3 非常用発電機駆動用のエンジン
4 燃料供給流路
5 リターン流路
6 供給燃料流量温度計測手段
6V 供給燃料流量計
6T 供給燃料温度計
7 リターン燃料流量温度計測手段
7V リターン燃料流量計
7T リターン燃料温度計
8 コンピュータ
V1 供給燃料の流量
T1 供給燃料の温度
V2 リターン燃料の流量
T2 リターン燃料の温度
Ta 燃料消費量を予測するときの所定温度
V1a V1を、T1とTaとの差に基づいて、Taにおける流量に補正した流量
V2a V2を、T2とTaとの差に基づいて、Taにおける流量に補正した流量
Va Taにおいてエンジンで消費された燃料流量
Vax Taにおける将来の燃料流量
β 燃料の体積膨張率
X 回帰直線
Y 延長直線
13 タンク燃料量測定手段
T Taにおけるエンジンの運転時間