IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-汚れ判定装置 図1
  • 特開-汚れ判定装置 図2
  • 特開-汚れ判定装置 図3
  • 特開-汚れ判定装置 図4
  • 特開-汚れ判定装置 図5
  • 特開-汚れ判定装置 図6
  • 特開-汚れ判定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182659
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】汚れ判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20221201BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20221201BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090346
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD03
5J084BA36
5J084CA03
5J084CA23
5J084EA17
(57)【要約】
【課題】汚れ判定の判定精度を向上させる。
【解決手段】制御部4は、レーザレーダ装置1から測距点情報を取得する。レーザレーダ装置1は、測距点までの距離である測距点距離と、検出したレーザ光の強度である受光強度とを示す測距点情報を生成する。制御部4は、レーザレーダ装置1によるレーザ光の照射に起因してレーザ光が筐体5内で散乱して発生する散乱光を検出するフォトダイオード23から、散乱光の散乱光強度を示す散乱光情報を取得する。制御部4は、散乱光情報が示す散乱光強度に基づいて、光学窓6の汚れの度合いを示す汚れレベルを算出する。制御部4は、受光強度が、受光強度に対応する測距点距離に基づいて設定される強度閾値以上である場合に汚れレベルの算出を禁止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(5)の内部から光学窓(6)を通過させることによって外部へ向けてレーザ光を照射し、測距点で反射した後に前記筐体内に到達した前記レーザ光を検出することによって、前記測距点までの距離である測距点距離と、検出した前記レーザ光の強度である受光強度とを示す測距点情報を生成するように構成されたレーザレーダ装置(1)から、前記測距点情報を取得するように構成された測距点情報取得部(S10)と、
前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の照射に起因して前記レーザ光が前記筐体内で散乱して発生する散乱光を検出するように構成された散乱光センサ(23)から、前記散乱光の散乱光強度を示す散乱光情報を取得するように構成された散乱光情報取得部(S20)と、
前記散乱光情報が示す前記散乱光強度に基づいて、前記光学窓の汚れを判定する汚れ判定を実行するように構成された汚れ判定部(S70)と、
前記受光強度が、前記受光強度に対応する前記測距点距離に基づいて設定される強度閾値以上である場合に、前記汚れ判定部による前記汚れ判定の実行を禁止するように構成された強度禁止部(S40,S60)と
を備える汚れ判定装置(4)。
【請求項2】
筐体(5)の内部から光学窓(6)を通過させることによって外部へ向けてレーザ光を照射し、測距点で反射した後に前記筐体内に到達した前記レーザ光を検出することによって、前記測距点までの距離である測距点距離を示す測距点情報を生成するように構成されたレーザレーダ装置(1)から、前記測距点情報を取得するように構成された測距点情報取得部(S10)と、
前記レーザレーダ装置による前記レーザ光の照射に起因して前記レーザ光が前記筐体内で散乱して発生する散乱光を検出するように構成された散乱光センサ(23)から、前記散乱光の散乱光強度を示す散乱光情報を取得するように構成された散乱光情報取得部(S20)と、
前記散乱光情報が示す前記散乱光強度に基づいて、前記光学窓の汚れを判定する汚れ判定を実行するように構成された汚れ判定部(S70)と、
前記筐体の外部から内部に入射した背景光の光量が多いことを示す予め設定された背景光禁止条件が成立したか否かを判断し、前記背景光禁止条件が成立した場合に、前記汚れ判定部による前記汚れ判定の実行を禁止するように構成された背景光禁止部(S50,S60)と
を備える汚れ判定装置(4)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の汚れ判定装置であって、
前記汚れ判定部による判定結果に基づいて、前記光学窓に汚れが付着している付着状態と、前記光学窓に汚れが付着していない非付着状態との間の遷移を判定するように構成された状態判定部(S90)と、
前記レーザレーダ装置が搭載されている車両の走行速度が予め設定された復帰判定禁止速度以下であるか否かを判断し、前記走行速度が前記復帰判定禁止速度以下である場合に、前記状態判定部による前記非付着状態から前記付着状態への遷移の判定を禁止するように構成された遷移禁止部(S80)と
を備える汚れ判定装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の汚れ判定装置であって、
前記汚れ判定部は、前記汚れ判定として、前記光学窓の汚れの度合いを示す汚れレベルを算出するように構成される汚れ判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の汚れ判定装置であって、
前記汚れレベルが予め設定された付着状態判定値以上である状態が、予め設定された付着状態判定時間以上継続すると、前記光学窓に汚れが付着している付着状態であると判定するように構成された付着状態判定部(S220~S270)を備える汚れ判定装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の汚れ判定装置であって、
前記汚れレベルが予め設定された非付着状態判定値以下である状態が、予め設定された非付着状態判定時間以上継続すると、前記光学窓に汚れが付着していない非付着状態であると判定するように構成された非付着状態判定部(S280~S330)を備える汚れ判定装置。
【請求項7】
請求項4~請求項6の何れか1項に記載の汚れ判定装置であって、
前記汚れ判定部が算出した前記汚れレベルを示す汚れレベル情報を出力するように構成された汚れレベル出力部(S110)を備える汚れ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザレーダ装置への汚れの付着を判定する汚れ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光の照射から反射光の検出までの時間が所定時間より短く、且つ、反射光の強度が所定強度以上である場合に、レーザレーダ装置に汚れが付着していると判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-10094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、レーザレーダ装置に汚れが付着していないにも関わらず汚れが付着していると判定してしまうことがあるという問題があった。
本開示は、汚れ判定の判定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、測距点情報取得部(S10)と、散乱光情報取得部(S20)と、汚れ判定部(S70)と、強度禁止部(S40,S60)とを備える汚れ判定装置(4)である。
【0006】
測距点情報取得部は、レーザレーダ装置(1)から、測距点情報を取得するように構成される。レーザレーダ装置は、筐体(5)の内部から光学窓(6)を通過させることによって外部へ向けてレーザ光を照射し、測距点で反射した後に筐体内に到達したレーザ光を検出することによって、測距点までの距離である測距点距離と、検出したレーザ光の強度である受光強度とを示す測距点情報を生成するように構成される。
【0007】
散乱光情報取得部は、レーザレーダ装置によるレーザ光の照射に起因してレーザ光が筐体内で散乱して発生する散乱光を検出するように構成された散乱光センサ(23)から、散乱光の散乱光強度を示す散乱光情報を取得するように構成される。
【0008】
汚れ判定部は、散乱光情報が示す散乱光強度に基づいて、光学窓の汚れを判定する汚れ判定を実行するように構成される。
強度禁止部は、受光強度が、受光強度に対応する測距点距離に基づいて設定される強度閾値以上である場合に、汚れ判定部による汚れ判定の実行を禁止するように構成される。
【0009】
このように構成された本開示の汚れ判定装置は、レーザレーダ装置の付近に存在する高反射物体で反射したレーザ光が筐体内に入射することに起因して汚れ判定部が誤判定する事態の発生を抑制し、汚れ判定の判定精度を向上させることができる。
【0010】
本開示の別の態様は、測距点情報取得部と、散乱光情報取得部と、汚れ判定部と、背景光禁止部(S50,S60)とを備える汚れ判定装置である。
背景光禁止部は、筐体の外部から内部に入射した背景光の光量が多いことを示す予め設定された背景光禁止条件が成立したか否かを判断し、背景光禁止条件が成立した場合に、汚れ判定部による汚れ判定の実行を禁止するように構成される。
【0011】
このように構成された本開示の汚れ判定装置は、筐体の外部から背景光が筐体内に入射することに起因して汚れ判定部が誤判定する事態の発生を抑制し、汚れ判定の判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】レーザレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図2】窓面汚れ判定処理を示すフローチャートである。
図3】強度閾値マップを示す図である。
図4】透過率マップおよび汚れレベルマップを示す図である。
図5】第1領域、第2領域および第3領域を示す図である。
図6】第1汚れ判定処理を示すフローチャートである。
図7】第2汚れ判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のレーザレーダ装置1は、車両に搭載される。そしてレーザレーダ装置1は、例えば車両の前方へ向けてレーザ光を照射し、反射したレーザ光を検出することにより、少なくとも、車両の前方に存在する物体までの距離を検出する。
【0014】
レーザレーダ装置1は、図1に示すように、投光部2と、受光部3と、制御部4と、筐体5と、光学窓6とを備える。
筐体5は、光を通過させる開口部を有した箱体であり、投光部2、受光部3および制御部4を内部に収容する。
【0015】
光学窓6は、光を透過する材料で形成され、筐体5の開口部を塞ぐように設置される。
投光部2は、予め設定された走査角度範囲内でレーザ光を光学窓6へ向けて照射する。投光部2は、レーザダイオード11と、走査部12と、レーザダイオード駆動回路13と、モータ駆動回路14とを備える。
レーザダイオード11は、パルスレーザ光を照射する。
【0016】
走査部12は、不図示のモータが発生させる駆動力によって、レーザ光を反射するミラー16を、ミラー16に設けられた回転軸17を中心にして振動させることにより、レーザ光の走査を上記の走査角度範囲で行う。
【0017】
レーザダイオード駆動回路13は、制御部4からの指示に従って、レーザダイオード11を発光させるための駆動信号をレーザダイオード11へ出力する。
モータ駆動回路14は、制御部4からの指示に従って、ミラー16を回転させる駆動力を発生させるための駆動信号をモータへ出力する。
【0018】
受光部3は、アバランシェフォトダイオード21と、ADコンバータ22と、フォトダイオード23とを備える。
アバランシェフォトダイオード21は、光学窓6から入射してミラー16で反射したレーザ光を検出する。
【0019】
ADコンバータ22は、アバランシェフォトダイオード21から入力されたアナログ信号の電圧値をデジタル値に変換し、変換したデジタル値を示す変換信号を制御部4へ出力する。
フォトダイオード23は、光学窓6の付近に設置される。これにより、フォトダイオード23は、ミラー16から光学窓6へ向けて照射されて光学窓6で反射したレーザ光を検出する。フォトダイオード23は、レーザ光を検出することによって得られた光検出信号を制御部4へ出力する。
【0020】
制御部4は、CPU31、ROM32およびRAM33等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU31が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM32が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU31が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部4を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0021】
制御部4は、レーザダイオード11がパルスレーザ光を照射した時刻と、アバランシェフォトダイオード21がパルスレーザ光を検出した時刻との差に基づいて、パルスレーザ光を反射した箇所(以下、測距点)までの距離を計測する。また制御部4は、パルスレーザ光を照射したときにおけるミラー16の走査角度に基づいて、測距点の方位角度を計測する。
【0022】
そして制御部4は、検出した測距点のそれぞれについて、測距点の距離と、方位角度と、受光強度(すなわち、アバランシェフォトダイオード21で検出したレーザ光の強度)とを示す測距点情報を生成し、生成した測距点情報をRAM33に記憶する。また制御部4は、生成した測距点情報を、例えば、運転支援を行う運転支援装置50へ出力する。
【0023】
また制御部4は、レーザダイオード11がパルスレーザ光を照射する毎に、フォトダイオード23の光検出信号を取得し、光検出信号の電圧の最大値(以下、散乱光電圧値)と、フォトダイオード23の光検出信号を取得したときの走査角度とを、散乱光情報としてRAM33に記憶する。
【0024】
また制御部4は、レーザダイオード11がパルスレーザ光を照射していない期間(以下、非発光期間)においてADコンバータ22から変換信号を継続して取得し、アバランシェフォトダイオード21の検出電圧の平均値を算出する。そして制御部4は、この平均値を非発光時電圧情報としてRAM33に記憶する。
【0025】
レーザレーダ装置1を搭載する車両は、この車両の走行速度(以下、車速)を検出する車速センサ40を備える。車速センサ40は、検出した車速を示す車速検出信号を制御部4へ出力する。
【0026】
次に、制御部4が実行する窓面汚れ判定処理の手順を説明する。窓面汚れ判定処理は、レーザレーダ装置1の動作中において繰り返し実行される処理である。
窓面汚れ判定処理が実行されると、制御部4のCPU31は、図2に示すように、まずS10にて、前回の窓面汚れ判定処理におけるS10の処理の終了時から現時点までの間に制御部4によって新たに生成された1または複数の測距点情報をRAM33から取得する。
【0027】
さらにCPU31は、S20にて、前回の窓面汚れ判定処理におけるS20の処理の終了時から現時点までの間に制御部4によって新たに生成された散乱光情報をRAM33から取得する。
【0028】
またCPU31は、S30にて、RAM33に設けられた高反射物判定許可フラグF1および背景光判定許可フラグF2をクリアする。以下の説明において、フラグをセットするとは、そのフラグの値を1にすることを示し、フラグをクリアするとは、そのフラグの値を0にすることを示す。
【0029】
そしてCPU31は、S40にて、高反射物判定を行う。具体的には、CPU31は、まず、S10で取得した1または複数の測距点情報のそれぞれについて、測距点の距離を示す情報を抽出し、ROM32に記憶されている強度閾値マップM1を参照して、強度閾値を設定する。閾値マップM1は、図3に示すように、距離と強度閾値との対応関係を設定している。図3に示す閾値マップM1では、距離が0~L1であるときに強度閾値がTH1に設定されている。また、距離がL1~L3であるときには、距離が長くなるにつれて強度閾値が徐々に大きくなり、距離がL3であるときに強度閾値が最大値になるように設定されている。例えば、距離がL2であるときの強度閾値はTH2である。
【0030】
そしてCPU31は、複数の測距点情報のそれぞれについて、受光強度を抽出し、抽出した受光強度が、対応する測距点情報で設定された強度閾値以下であるか否かを判断する。さらにCPU31は、測距点情報の全てについて受光強度が強度閾値未満である場合に、高反射物判定許可フラグF1をセットする。一方、少なくとも1つの測距点情報について受光強度が強度閾値以上である場合に、高反射物判定許可フラグF1をクリアする。
【0031】
S40の処理が終了すると、CPU31は、図2に示すように、S50にて、背景光判定を行う。具体的には、CPU31は、まず、RAM33に記憶されている1または複数の非発光時電圧情報の中から最新の非発光時電圧情報を取得する。そしてCPU31は、取得した非発光時電圧情報が示す電圧値が予め設定された背景光判定値以上であるか否かを判断する。
【0032】
ここで、非発光時電圧情報が示す電圧値が背景光判定値未満である場合には、CPU31は、背景光判定許可フラグF2をセットする。一方、非発光時電圧情報が示す電圧値が背景光判定値以上である場合には、CPU31は、背景光判定許可フラグF2をクリアする。
【0033】
S50の処理が終了すると、CPU31は、S60にて、高反射物判定許可フラグF1がセットされ、且つ、背景光判定許可フラグF2がセットされているか否かを判断する。ここで、高反射物判定許可フラグF1および背景光判定許可フラグF2の少なくとも一方がクリアされている場合には、CPU31は、S80に移行する。
【0034】
一方、高反射物判定許可フラグF1がセットされ、且つ、背景光判定許可フラグF2がセットされている場合には、CPU31は、S70にて、汚れレベルLを算出し、S80に移行する。
【0035】
具体的には、CPU31は、まず、S20で取得した1または複数の散乱光情報のそれぞれについて、散乱光電圧値を抽出し、ROM32に記憶されている透過率マップM2を参照して、推定透過率を設定する。透過率マップM2は、図4に示すように、散乱光電圧値と推定透過率との対応関係を設定している。透過率マップM2は、散乱光電圧値と推定透過率との間で負の相関を有するように設定される。透過率マップM2は、複数の既知の汚れをそれぞれ光学窓6に付着させて光学窓6の透過率と散乱光電圧値とを計測することによって作成される。
【0036】
次にCPU31は、設定された推定透過率のそれぞれについて、ROM32に記憶されている汚れレベルマップM3を参照して、個別汚れレベルを設定する。汚れレベルマップM3は、推定透過率と個別汚れレベルとの対応関係を設定している。図4に示す汚れレベルマップM3では、推定透過率が0~0.5であるときに個別汚れレベルが50に設定されている。また、推定透過率が0.5~1.0であるときには、推定透過率が大きくなるにつれて個別汚れレベルが徐々に小さくなり、推定透過率が1.0であるときに個別汚れレベルが0になるように設定されている。
【0037】
そしてCPU31は、図5に示すように、走査角度範囲を3分割することによって設定された第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3のそれぞれで、第1領域汚れレベル平均μ1、第2領域汚れレベル平均μ2および第3領域汚れレベル平均μ3を算出して、RAM33に記憶する。第1領域R1は、走査角度が例えば0°~30°の領域である。第2領域R2は、走査角度が例えば30°~90°の領域である。第3領域R3は、走査角度が例えば90°~120°の領域である。
【0038】
第1領域汚れレベル平均μ1は、S20で取得した1または複数の散乱光情報に基づいて設定された1または複数の個別汚れレベルのうち、対応する走査角度が第1領域R1に含まれる個別汚れレベルの平均値である。
【0039】
第2領域汚れレベル平均μ2は、S20で取得した1または複数の散乱光情報に基づいて設定された1または複数の個別汚れレベルのうち、対応する走査角度が第2領域R2に含まれる個別汚れレベルの平均値である。
【0040】
第3領域汚れレベル平均μ3は、S20で取得した1または複数の散乱光情報に基づいて設定された1または複数の個別汚れレベルのうち、対応する走査角度が第3領域R3に含まれる個別汚れレベルの平均値である。
【0041】
さらにCPU31は、第1領域汚れレベルL1、第2領域汚れレベルL2および第3領域汚れレベルL3を算出する。
第1領域汚れレベルL1は、直近の5秒間で算出された複数の第1領域汚れレベル平均μ1の平均値である。第2領域汚れレベルL2は、直近の5秒間で算出された複数の第2領域汚れレベル平均μ2の平均値である。第3領域汚れレベルL3は、直近の5秒間で算出された複数の第3領域汚れレベル平均μ3の平均値である。
【0042】
そしてCPU31は、算出された第1領域汚れレベルL1、第2領域汚れレベルL2および第3領域汚れレベルL3の最大値を、汚れレベルLとして、RAM33に記憶する。
図2に示すように、S80に移行すると、CPU31は、車速センサ40から車速検出信号を取得し、車速検出信号が示す車速(以下、自車速)が予め設定された判定車速(例えば、5km/h)を超えているか否かを判断する。
【0043】
ここで、自車速が判定車速を超えている場合には、CPU31は、S90にて、後述する第1汚れ判定処理を実行し、S110に移行する。一方、自車速が判定車速以下である場合には、CPU31は、S100にて、後述する第2汚れ判定処理を実行し、S110に移行する。
【0044】
S110に移行すると、汚れレベルLを示す汚れレベル情報と、後述する汚れ判定フラグF3がセットされているかクリアされているかを示す汚れ判定情報とを運転支援装置50へ出力して、窓面汚れ判定処理を終了する。
【0045】
次に、S90で実行される第1汚れ判定処理の手順を説明する。
第1汚れ判定処理が実行されると、制御部4のCPU31は、図6に示すように、まずS210にて、RAM33に設けられた汚れ判定フラグF3がクリアされているか否かを判断する。ここで、汚れ判定フラグF3がクリアされている場合には、CPU31は、S220にて、汚れレベルLが予め設定された汚れ付着レベルla(例えば、30)以上であるか否かを判断する。
【0046】
ここで、汚れレベルLが汚れ付着レベルla未満である場合には、CPU31は、S230にて、RAM33に設けられた継続時間カウンタTの値を0に設定し、第1汚れ判定処理を終了する。
【0047】
一方、汚れレベルLが汚れ付着レベルla以上である場合には、CPU31は、S240にて、継続時間カウンタTをインクリメント(すなわち、1加算)する。そしてCPU31は、S250にて、継続時間カウンタTの値が予め設定された付着確定判定値ta(例えば、10秒に相当する値)以上であるか否かを判断する。
【0048】
ここで、継続時間カウンタTの値が付着確定判定値ta未満である場合には、CPU31は、第1汚れ判定処理を終了する。一方、継続時間カウンタTの値が付着確定判定値ta以上である場合には、CPU31は、S260にて、汚れ判定フラグF3をセットする。さらにCPU31は、S270にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第1汚れ判定処理を終了する。
【0049】
またS210にて、汚れ判定フラグF3がセットされている場合には、CPU31は、S280にて、汚れレベルLが予め設定された汚れ無しレベルlb(例えば、5)以下であるか否かを判断する。
【0050】
ここで、汚れレベルLが汚れ無しレベルlbを超えている場合には、CPU31は、S290にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第1汚れ判定処理を終了する。
一方、汚れレベルLが汚れ無しレベルlb以下である場合には、CPU31は、S300にて、継続時間カウンタTをインクリメントする。そしてCPU31は、S310にて、継続時間カウンタTの値が予め設定された解除確定判定値tb(例えば、20秒に相当する値)以上であるか否かを判断する。
【0051】
ここで、継続時間カウンタTの値が解除確定判定値tb未満である場合には、CPU31は、第1汚れ判定処理を終了する。一方、継続時間カウンタTの値が解除確定判定値tb以上である場合には、CPU31は、S320にて、汚れ判定フラグF3をクリアする。さらにCPU31は、S330にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第1汚れ判定処理を終了する。
【0052】
次に、S100で実行される第2汚れ判定処理の手順を説明する。
第2汚れ判定処理が実行されると、制御部4のCPU31は、図7に示すように、まずS410にて、RAM33に設けられた汚れ判定フラグF3がクリアされているか否かを判断する。ここで、汚れ判定フラグF3がクリアされている場合には、CPU31は、S420にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第2汚れ判定処理を終了する。
【0053】
一方、汚れ判定フラグF3がセットされている場合には、CPU31は、S430にて、汚れレベルLが汚れ無しレベルlb以下であるか否かを判断する。
ここで、汚れレベルLが汚れ無しレベルlbを超えている場合には、CPU31は、S440にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第2汚れ判定処理を終了する。
【0054】
一方、汚れレベルLが汚れ無しレベルlb以下である場合には、CPU31は、S450にて、継続時間カウンタTをインクリメントする。そしてCPU31は、S460にて、継続時間カウンタTの値が解除確定判定値tb以上であるか否かを判断する。
【0055】
ここで、継続時間カウンタTの値が解除確定判定値tb未満である場合には、CPU31は、第2汚れ判定処理を終了する。一方、継続時間カウンタTの値が解除確定判定値tb以上である場合には、CPU31は、S470にて、汚れ判定フラグF3をクリアする。さらにCPU31は、S480にて、継続時間カウンタTの値を0に設定し、第2汚れ判定処理を終了する。
【0056】
このように構成された制御部4は、レーザレーダ装置1から、測距点情報を取得する。レーザレーダ装置1は、筐体5の内部から光学窓6を通過させることによって外部へ向けてレーザ光を照射し、測距点で反射した後に筐体5内に到達したレーザ光を検出することによって、測距点までの距離である測距点距離と、検出したレーザ光の強度である受光強度とを示す測距点情報を生成する。
【0057】
また制御部4は、レーザレーダ装置1によるレーザ光の照射に起因してレーザ光が筐体5内で散乱して発生する散乱光を検出するフォトダイオード23から、散乱光の散乱光強度を示す散乱光情報を取得する。
また制御部4は、散乱光情報が示す散乱光強度に基づいて、光学窓6の汚れの度合いを示す汚れレベルLを算出する。
【0058】
また制御部4は、受光強度が、受光強度に対応する測距点距離に基づいて設定される強度閾値以上である場合に、汚れレベルLの算出を禁止する。
また制御部4は、非発光時電圧情報が示す電圧値が予め設定された背景光判定値以上である場合に、汚れレベルLの算出を禁止する。
【0059】
このような制御部4は、レーザレーダ装置1の付近に存在する高反射物体で反射したレーザ光が筐体5内に入射することに起因して汚れレベルLを誤算出する事態の発生を抑制し、汚れ判定の判定精度を向上させることができる。
【0060】
また制御部4は、筐体5の外部から背景光が筐体5内に入射することに起因して汚れレベルLを誤算出する事態の発生を抑制し、汚れ判定の判定精度を向上させることができる。
【0061】
また制御部4は、汚れレベルLに基づいて、光学窓6に汚れが付着している付着状態(すなわち、汚れ判定フラグF3がセットされている状態)と、光学窓6に汚れが付着していない非付着状態(すなわち、汚れ判定フラグF3がクリアされている状態)との間の遷移を判定する。そして制御部4は、自車速が予め設定された判定車速以下であるか否かを判断し、自車速が判定車速以下である場合に、非付着状態から付着状態への遷移の判定を禁止する。
【0062】
これにより、制御部4は、レーザレーダ装置1が搭載されている車両の停車時においてレーザレーダ装置1の付近に障害物が存在していることに起因して、付着状態であると誤判定してしまう事態の発生を抑制することができる。
【0063】
以上説明した実施形態において、制御部4は汚れ判定装置に相当し、S10は測距点情報取得部としての処理に相当し、フォトダイオード23は散乱光センサに相当し、S20は散乱光情報取得部としての処理に相当する。
【0064】
また、S70は汚れ判定部としての処理に相当し、S40,S60は強度禁止部としての処理に相当する。
また、非発光時電圧情報が示す電圧値が背景光判定値以上であることは背景光禁止条件に相当し、S50,S60は背景光禁止部としての処理に相当する。
【0065】
また、S90は状態判定部としての処理に相当し、S80は遷移禁止部としての処理に相当し、判定車速は復帰判定禁止速度に相当する。
また、S220~S270は付着状態判定部としての処理に相当し、汚れ付着レベルlaは付着状態判定値に相当し、付着確定判定値taは付着状態判定時間に相当する。
【0066】
また、S280~S330は非付着状態判定部としての処理に相当し、汚れ無しレベルlbは非付着状態判定値に相当し、解除確定判定値tbは非付着状態判定時間に相当し、S110は汚れレベル出力部としての処理に相当する。
【0067】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
例えば上記実施形態では、汚れレベルLを算出する形態を示したが、光学窓6が汚れているか否かを判定する形態であってもよい。
【0068】
[変形例2]
上記実施形態では、非発光期間におけるアバランシェフォトダイオード21の検出電圧の値に基づいて背景光判定を行う形態を示した。しかし、アバランシェフォトダイオード21で検出したパルスレーザ光の立上り前または立下り後の電圧(すなわち、ベース電圧)の値に基づいて背景光判定を行うようにしてもよい。
【0069】
本開示に記載の制御部4およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部4およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部4およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部4に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0070】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0071】
上述した制御部4の他、当該制御部4を構成要素とするシステム、当該制御部4としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、汚れ判定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1…レーザレーダ装置、4…制御部、5…筐体、6…光学窓、23…フォトダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7