(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182662
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20221201BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20221201BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221201BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J32/00
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090349
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】稻田 成哉
(72)【発明者】
【氏名】大石 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正尚
(72)【発明者】
【氏名】内田 健斗
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】コールド領域におけるNOx吸着量が大きく、コールド領域のNOxエミッションが低減された排ガス浄化触媒を提供すること。
【解決手段】OSC材111及び第1のアルカリ土類金属酸化物112を含む、複合酸化物担体110と、複合酸化物担体110に担持されている第2のアルカリ土類金属酸化物120とを含む、排ガス浄化触媒100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物を含む、複合酸化物担体と、
前記複合酸化物担体に担持されている第2のアルカリ土類金属酸化物と
を含む、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記第1のアルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムである、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記第2のアルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウムより成る群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記OSC材が、セリウム-ジルコニウム複合酸化物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記複合酸化物担体が、更にアルミナを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記第1のアルカリ土類金属酸化物の量が、前記複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項7】
前記第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量が、前記複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.5質量%以上25質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項8】
前記複合酸化物担体に担持されている貴金属を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項9】
前記貴金属が、白金、パラジウム、及びロジウムより成る群から選択される1種又は2種以上である、請求項8に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項10】
前記貴金属の担持量が、前記複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項8又は9に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項11】
基材、及び前記基材上のコート層を含む、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、請求項1~10いずれか一項に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が含まれる。これらの排ガスは、CO及びHCを酸化し、かつNOxを還元する排ガス浄化触媒によって浄化したうえで、大気中に放出されている。
【0003】
排ガス中に含まれる、CO、HC、及びNOxの3成分については、大気汚染緩和等の観点から、各国において、自動車の単位走行距離当たりの排出重量が規制されている。
【0004】
排ガス規制は、年々強化されている。現在、米国ではLEV III規制が、欧州では、Euro 6規制が、それぞれ、適用されている。欧州では、近い将来にEuro 7規制に移行するものと考えられている。
【0005】
Euro 7規制では、例えば、エンジン始動時等のコールド領域におけるNOxエミッションの低減が求められる。エンジン始動時の排ガス雰囲気は、リッチ~ストイキ領域である。そのため、リーンバーンエンジンを前提とした従来技術のNOx浄化技術によって、コールド領域におけるNOxエミッションを低減することは、困難である。
【0006】
従来技術におけるNOxエミッション低減技術として、例えば、特許文献1には、
CeとZrとを含む第一複合酸化物と、該第一複合酸化物に担持されたPdとを含有する下触媒層、及び
CeとZrとを含む第二複合酸化物と、該第二複合酸化物に担持されたRhとを含有する上触媒層
を備え、第一複合酸化物及び第二複合酸化物のうちの少なくとも一方に、Ca、Sr、及びMgから選ばれるアルカリ土類金属が固溶している、排気ガス浄化用触媒が記載されている。
【0007】
特許文献1では、複合酸化物へのアルカリ土類金属の固溶によって、当該複合酸化物のNOx吸着特性が改善されると説明されている。
【0008】
また、特許文献2には、酸素吸蔵放出能を有する酸化物に、パラジウム及びアルカリ土類金属が担持されて成る、酸化還元触媒が記載されている。
【0009】
特許文献2では、触媒を上記の構成とすることにより、アルカリ土類金属が、NOxの吸着又は反応に好ましく関与すると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-119994号公報
【特許文献2】特開2001-198461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献1及び2は、いずれも、従来技術の排ガス浄化触媒に属し、エンジン始動時等のコールド領域におけるNOx吸着量は不足している。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コールド領域におけるNOx吸着量が大きく、コールド領域のNOxエミッションが低減された排ガス浄化触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下のとおりである。
【0014】
《態様1》OSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物を含む、複合酸化物担体と、
前記複合酸化物担体に担持されている第2のアルカリ土類金属酸化物と
を含む、排ガス浄化触媒。
《態様2》前記第1のアルカリ土類金属酸化物が酸化マグネシウムである、態様1に記載の排ガス浄化触媒。
《態様3》前記第2のアルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウムより成る群から選択される1種又は2種以上である、態様1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
《態様4》前記OSC材が、セリウム-ジルコニウム複合酸化物を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
《態様5》前記複合酸化物担体が、更にアルミナを含む、態様1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
《態様6》前記第1のアルカリ土類金属酸化物の量が、前記複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上20質量%以下である、態様1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
《態様7》前記第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量が、前記複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.5質量%以上25質量%以下である、態様1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
《態様8》前記複合酸化物担体に担持されている貴金属を更に含む、態様1~7のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
《態様9》前記貴金属が、白金、パラジウム、及びロジウムより成る群から選択される1種又は2種以上である、態様8に記載の排ガス浄化触媒。
《態様10》前記貴金属の担持量が、前記複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上15質量%以下である、態様8又は9に記載の排ガス浄化触媒。
《態様11》基材、及び前記基材上のコート層を含む、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、態様1~10いずれか一項に記載の排ガス浄化触媒を含む、
排ガス浄化触媒装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排ガス浄化触媒は、コールド領域におけるNOx吸着量が大きく、コールド領域のNOxエミッションが低減されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の排ガス浄化触媒の構成の一例を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は、本発明の排ガス浄化触媒の構成の別の一例を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、従来技術の排ガス浄化触媒の構成の一例を説明するための概念図である。
【
図4】
図4は、従来技術の排ガス浄化触媒の構成の別の一例を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、実施例1の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
【
図6】
図6は、比較例1の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
【
図7】
図7は、比較例2の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
【
図8】
図8は、比較例3の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたBaマッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《排ガス浄化触媒》
本発明の排ガス浄化触媒は、
OSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物を含む、複合酸化物担体と、
上記の複合酸化物担体に担持されている第2のアルカリ土類金属酸化物と
を含む。
【0018】
本発明の排ガス浄化触媒では、上記の複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物とともに、貴金属が更に担持されていてもよい。
【0019】
本発明の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体が、OSC材、例えばセリアを含む。エンジン始動時(コールド時)の排ガス雰囲気は、リッチ~ストイキ領域である。そのため、セリア等のOSC材は、エンジン始動時には、還元状態にあり、酸素欠陥を有すると考えられる。本発明の排ガス浄化触媒では、エンジン始動時に酸素欠陥を有するOSC材を含有する、複合酸化物担体が含まれていることにより、コールド時のNOx吸着点数が増加されている。
【0020】
本発明の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体が、更に、第1のアルカリ土類金属酸化物を含む。これにより、複合酸化物担体の塩基点量が増大し、NOxの吸着点数が増大されている。また、複合酸化物担体が、2価のアルカリ土類金属イオンを含むこととなり、OSC材、例えば、セリア(4価のセリウムの酸化物)の酸素欠陥量を増大させ、コールド時のNOx吸着点が更に増加されている。
【0021】
本発明の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物が担持されている。この第2のアルカリ土類金属酸化物は、NOxを吸着して保持(吸蔵)する機能を有する。
【0022】
また、本発明の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体中のNOxの吸着点と、第2のアルカリ土類金属酸化物から成るNOxの吸蔵点とが、近接した位置にある。これによって、本発明の排ガス浄化触媒では、NOxの吸着から吸蔵に至るプロセスが、円滑かつ迅速に進行する。
【0023】
更に、本発明者らの検討によると、複合酸化物担体が第1のアルカリ土類金属酸化物を含むと、第2のアルカリ土類金属酸化物の担持率が向上し、複合酸化物担体表面上における第2のアルカリ土類金属酸化物の分散性が向上することが確認された。これらの現象は、複合酸化物担体中の第1のアルカリ土類金属酸化物と、担持されている第2のアルカリ土類金属酸化物との相互関係によると推察される。しかしながら、驚くべきことに、第1のアルカリ土類金属酸化物の種類と第2のアルカリ土類金属酸化物の種類とが相違する場合でも、これらの現象がみられることが確認された。
【0024】
本発明の排ガス浄化触媒では、上述のことが相俟って、コールド時に向上されたNOx吸着量を示す。
【0025】
〈複合酸化物担体〉
本発明の排ガス浄化触媒における複合酸化物担体は、OSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物を含む。
【0026】
(OSC材)
本発明の排ガス浄化触媒における複合酸化物担体は、OSC材を含む。「OSC」とは、“Oxygen Storage Capacity”又は“Oxygen Storage/release Capacity”の略であり、「酸素吸蔵・放出能」を意味する。「OSC材」は、「酸素吸蔵・放出能を有する材料」の意味である。
【0027】
OSC材は、例えば、セリア(CeO2)である。OSC材としてのセリアは、複合酸化物担体中に単独種のセリアとして存在する場合の他、セリウムと他の金属との複合酸化物を構成している場合を含む概念である。
【0028】
OSC材がセリアであり、セリウムと他の金属との複合酸化物を構成している場合、複合酸化物は、例えば、セリウム-ジルコニウム複合酸化物であってよい。セリアが、セリウム-ジルコニウム複合酸化物として存在すると、リッチ~ストイキ領域におけるセリアの酸素欠陥量が増大され、これにより、コールド時の複合酸化物担体のNOx吸着点数が、更に増大される。
【0029】
複合酸化物担体の粒径は、使用目的に応じて適宜に設定されてよい。複合酸化物担体の
粒径として、例えば、1μm以上100μm以下の範囲が例示できる。複合酸化物担体の粒径は、触媒断面を電子顕微鏡観察して得られた観察画像を、画像処理によって求められる体積基準の体積頻度分布において、小粒径側から累積50%に相当する粒径である。電子顕微鏡の観察画像の画像処理は、例えば、パブリックドメインの画像解析ソフトウェア「Image J」等によって行ってよい。
【0030】
セリウム-ジルコニウム複合酸化物中のセリア含量は、当該複合酸化物中のセリウム原子量をセリア(Ce2O3)換算で表した質量が、当該複合酸化物の全質量に占める割合として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0031】
複合酸化物担体に含まれるOSC材の量は、コールド時に十分な数のNOx吸着点を確保するために、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、5質量%以上、7.5質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよい。一方、複合酸化物担体に含まれるOSC材の量は、複合酸化物が他の成分を含むことの利益を享受するため、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0032】
OSC材がセリアであり、セリウムと他の金属との複合酸化物を構成している場合のOSC量(セリア量)は、当該複合酸化物中のセリウム原子の量を、セリア(Ce2O3)換算で表した量である。
【0033】
(第1のアルカリ土類金属酸化物)
本発明の排ガス浄化触媒における複合酸化物担体は、第1のアルカリ土類金属酸化物を含む。
【0034】
本明細書において、「アルカリ土類金属」とは、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba),及びラジウム(Ra)の他に、ベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)を含む概念である(後述する第2のアルカリ土類金属も同じ)。
【0035】
本発明の排ガス浄化触媒における複合酸化物担体に含まれる、第1のアルカリ土類金属酸化物は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等から選択される1種又は2種以上であってよく、特に、酸化マグネシウムであってよい。
【0036】
第1のアルカリ土類金属酸化物は、複合酸化物担体中に、単独種のアルカリ土類金属酸化物として存在していてもよいし、又は、OSC材、若しくはOSC材を含む複合酸化物(例えば、セリウム-ジルコニウム複合酸化物)と、固溶体を形成していてもよい。
【0037】
複合酸化物担体に含まれる第1のアルカリ土類金属酸化物の量は、複合酸化物担体のNOxの吸着点数を十分に増大させる観点から、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、又は4.0質量%以上であってよい。一方で、複合酸化物が他の成分を含むことの利益を享受するため、第1のアルカリ土類金属酸化物の量は、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下であってよい。
【0038】
第1のアルカリ土類金属酸化物が、OSC材、又はOSC材を含む複合酸化物と固溶体を形成しているときの第1のアルカリ土類金属酸化物の量は、当該固溶体中の第1のアルカリ土類金属の量を、酸化物換算で表した量である。また、OSC材としてのセリアの量はCeO2として表す。
【0039】
(任意成分)
複合酸化物は、上記のOSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物以外の任意成分を含んでいてもよい。
【0040】
上述したとおり、複合酸化物中のOSC材は、例えば、セリウム-ジルコニウム複合酸化物中のセリアとして存在していてもいいから、複合酸化物はジルコニアを含んでいてよい。また、複合酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア等の他、セリア以外の希土類元素の酸化物から選択される1種又は2種以上を含んでいてよい。複合酸化物が、これらの2種以上を含むとき、これら2種以上の酸化物は、それぞれ単一種の酸化物として存在していてもよく、複合酸化物として存在していてもよい。
【0041】
上述のとおり、複合酸化物はジルコニアを含むことにより、リッチ~ストイキ領域におけるOSC材の酸素欠陥量を増やすことができ、コールド時の複合酸化物担体のNOx吸着点数が、更に増大される。
【0042】
複合酸化物中のジルコニアの量は、上記の効果を十分に発揮させる観点から、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよい。一方で、複合酸化物が他の成分を含むことの利益を享受するため、第1のアルカリ土類金属酸化物の量は、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0043】
ジルコニウムが他の金属との複合酸化物を構成している場合のジルコニア量は、当該複合酸化物中のジルコニウム原子の量を、ジルコニア(ZrO2)換算で表した量である。
【0044】
複合酸化物は、アルミナを含んでいてよい。複合酸化物が、耐熱性の高いアルミナを含むことにより、複合酸化物の熱による劣化を防ぐ効果が得られる。アルミナは、単独種のアルミナとして存在していてもよく、他の金属酸化物、例えば、セリア以外の希土類元素の酸化物との複合酸化物として存在していてもよい。
【0045】
複合酸化物中のアルミナの量は、上記の効果を十分に発揮させる観点から、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよい。一方で、複合酸化物が他の成分を含むことの利益を享受するため、第1のアルカリ土類金属酸化物の量は、複合酸化物担体の全質量を100質量%としたときに、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、若しくは5質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0046】
アルミナが他の金属との複合酸化物を構成している場合のアルミナ量は、当該複合酸化物中のアルミニウム原子の量を、アルミナ(Al2O3)換算で表した量である。
【0047】
〈第2のアルカリ土類金属酸化物〉
本発明の排ガス浄化触媒では、上記のような複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物が担持されている。この第2のアルカリ土類金属酸化物は、NOxの吸蔵点として機能すると考えられる。
【0048】
第2のアルカリ土類金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウムより成る群から選択される1種又は2種以上であってよい。第2のアルカリ土類金属酸化物は、特に、酸化バリウム又は酸化ストロンチウムであってよい。
【0049】
第2のアルカリ土類金属酸化物は、粒子上で担持されていてよい。第2のアルカリ土類金属酸化物粒子の粒径は、XRDから算出された1次粒径の数平均値として、10nm以上、15nm以上、20nm以上、又は25nm以上であってよく、50nm以下、45nm以下、40nm以下、又は35nm以下であってよい。
【0050】
第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量は、十分なNOxの吸着量を確保する観点から、複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、又は6.0質量%以上であってよい。
【0051】
しかしながら、第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量を多くしていっても、NOxの吸着量が無制限に増えるわけではない。その理由は明らかではないが、第2のアルカリ土類金属酸化物の量が過度に多くなると、複合酸化物担体に担持されずに遊離している第2のアルカリ土類金属酸化物が増加することに関係すると考えられる。すわなち、吸着点数が増大された複合酸化物担体に、NOxが吸着しても、これを遊離の第2のアルカリ土類金属酸化物には引き渡せないから、NOxの吸着量に限界があると考えられる。
【0052】
また、第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量を過度に多くすると、NOxの吸着量をかえって損なう場合がある。これは、第2のアルカリ土類金属酸化物が過度に増加すると、第2のアルカリ土類金属酸化物が複合酸化物の表面の多くの部分を被覆して、複合酸化物とNOxとの接触が妨害されることにより、材料全体としてのNOx吸着量が低下するものと推察される。
【0053】
更に、第2のアルカリ土類金属の担持量が過度に増加することにより、複合酸化物の耐熱性が損なわれる場合がある。
【0054】
上記の観点から、第2のアルカリ土類金属酸化物の担持量は、複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0055】
〈貴金属〉
本発明の排ガス浄化触媒では、上記の複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物とともに、貴金属が更に担持されていてもよい。複合酸化物担体に貴金属が担持されていると、NOxの吸着量が更に増大する効果が得られる。これは、貴金属が、NOxの吸蔵点として機能するためと考えられる。
【0056】
貴金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)より成る群から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0057】
貴金属粒子の粒径は、COパルス法から算出された貴金属粒子の粒径の平均値として、0.7nm以上又は3nm以上であってよく、100nm以下又は50nm以下であってよい。
【0058】
貴金属の担持量は、NOx吸着量の増大効果を十分に発揮させるため、複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、又は1.0質量%以上であってよい。一方で、貴金属の担持量を過度に多くしても、担持量に比例してNOxの吸着量が増加するわけではない。したがって、得られる排ガス浄化触媒の製造コスト対効果を考慮すると、貴金属の担持量は、複合酸化物担体の質量を100質量%としたときに、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0059】
《排ガス浄化触媒の製造方法》
本発明の排ガス浄化触媒は、上記の構成を有している限り、その製造方法は問わない。
【0060】
本発明の排ガス浄化触媒は、例えば、
OSC材及び第1のアルカリ土類金属酸化物を含む、複合酸化物担体を製造すること、並びに
得られた複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物を担持させること
を含む方法により、製造されてよい。
【0061】
本発明の排ガス浄化触媒において、複合酸化物担体に、第2のアルカリ土類金属酸化物とともに貴金属が担持されている場合、排ガス浄化触媒の製造方法は、複合酸化物担体に、貴金属を担持させることを更に含む方法であってよい。
【0062】
複合酸化物担体の製造は、例えば、共沈法によって行われてよい。具体的には、OSC材の前駆体、及び第1のアルカリ土類金属酸化物の前駆体、並びに必要に応じて任意成分の前駆体を含む、液状混合物(好ましくは水溶液)に、適当な沈殿剤を加えて得られた沈殿物を乾燥及び焼成し、次いで粉砕及び分級することにより、行われてよい。
【0063】
OSC材の前駆体、第1のアルカリ土類金属酸化物の前駆体、及び任意成分の前駆体としては、それぞれ、所望の金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化水素酸塩、酢酸塩等を使用してよい。沈殿剤は、アルカリであってよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等であってよく、これらの溶液、好ましくは水溶液として使用されてよい。
【0064】
沈殿物の乾燥及び焼成、並びに焼成物の粉砕及び分級は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、行われてよい。
【0065】
複合酸化物担体への、第2のアルカリ土類金属酸化物の担持は、適当な液状媒体、好ましくは水中で、複合酸化物担体と第2のアルカリ土類金属酸化物の前駆体とを接触させた後、回収した固形分を、乾燥及び焼成することにより行われてよい。第2のアルカリ土類金属酸化物の前駆体としては、所望のアルカリ土類金属酸化物の硝酸塩、硫酸塩、塩化水素酸塩、酢酸塩等を使用してよい。
【0066】
複合酸化物担体への、貴金属の担持は、適当な液状媒体、好ましくは水中で、複合酸化物担体と貴金属の前駆体とを接触させた後、回収した固形分を、乾燥及び焼成することにより行われてよい。貴金属の前駆体としては、所望の貴金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化水素酸塩、酢酸塩等を使用してよい。
【0067】
複合酸化物担体への貴金属の担持は、複合酸化物担体への第2のアルカリ土類金属酸化物の担持よりも、先に若しくは後に行われてよく、又は複合酸化物担体への第2のアルカリ土類金属酸化物の担持と同時に行われてよい。
【0068】
複合酸化物担体への貴金属の担持と第2のアルカリ土類金属酸化物の担持とを同時に行う場合、以下の方法によってよい。例えば、適当な液状媒体、好ましくは水中で、複合酸化物担体と、第2のアルカリ土類金属酸化物の前駆体と、貴金属の前駆体とを接触させた後、回収した固形分を、乾燥及び焼成することにより行われてよい。
【0069】
上記において、固形分の乾燥及び焼成は、それぞれ、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を施した方法により、行われてよい。
【0070】
《排ガス浄化触媒装置》
本発明は、別の観点では、排ガス浄化触媒装置を提供する。
【0071】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、
基材、及び前記基材上のコート層を含む、排ガス浄化触媒装置であって、
前記コート層が、上記に説明した本発明の排ガス浄化触媒を含む。
【0072】
〈基材〉
基材は、所望の排ガス浄化触媒装置における基材の種類に応じて、適宜に選択されてよい。例えば、コージェライト、SiC、ステンレス鋼、無機酸化物粒子等の材料から構成されている、例えば、ストレートフロー型又はウォールフロー型のモノリスハニカム基材を用いてよい。
【0073】
〈コート層〉
本発明の排ガス浄化触媒装置のコート層は、本発明の排ガス浄化触媒を含む。
【0074】
〈任意成分〉
本発明の排ガス浄化触媒装置のコート層は、本発明の排ガス浄化触媒の他に、必要に応じて、これ以外の任意成分を含んでいてよい。この任意成分は、例えば、無機酸化物、貴金属、バインダー等であってよい。
【0075】
《排ガス浄化触媒装置の製造方法》
本発明の排ガス浄化触媒装置は、コート層に本発明の排ガス浄化触媒を含有させる他は、公知の方法により、又はこれに当業者による適宜の変更を加えた方法により、製造されてよい。
【0076】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、例えば、基材上に、本発明の排ガス浄化触媒と、任意成分又はその前駆体と、を含む塗工液をコートし、次いで焼成することにより、製造されてよい。
【実施例0077】
《実施例1》
1.排ガス浄化触媒の調製
1-1.複合酸化物担体の調製
複合酸化物担体の原料として、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸アルミニウム、硝酸ネオジム、硝酸ランタン、及び酢酸マグネシウム(第1のアルカリ金属酸化物の前駆体)を用い、酸化物換算の質量割合がそれぞれ表3に記載の値となるように純水に溶解して、酸性の混合溶液を得た。この混合溶液に、pHが7になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えて、共沈操作を行って、沈殿物を得た。沈殿物を濾取し、純水で十分に洗浄した後、空気中、250℃にて8時間乾燥した後、空気中、500℃にて2時間焼成して、焼成物を得た。得られた焼成物をメノウ乳鉢で粉砕して分級することにより、粒径範囲2~10μmの粉体状の複合酸化物担体を得た。
【0078】
1-2.第2のアルカリ土類金属酸化物の担持(排ガス浄化触媒の調製)
第2のアルカリ土類金属酸化物の原料化合物としての酢酸マグネシウムを純水に溶解して得た水溶液に、上記で得られた粉体状の複合酸化物担体を投入し、よく撹拌して懸濁液とした。ここで、酢酸マグネシウムの使用量は、酸化物換算の質量が、複合酸化物担体100質量部に対して、4質部となる量とした(担持量4質量%)。得られた懸濁液を、空気中、250℃にて8時間乾燥した後、空気中、500℃にて2時間焼成して、焼成物を得た。得られた焼成物をメノウ乳鉢で粉砕して、500μmメッシュを通過させることにより、排ガス浄化触媒を調製した。
【0079】
得られた排ガス浄化触媒のXRDから算出された、担持された第2のアルカリ土類金属酸化物(MgO)粒子の1次粒径は、10~40nmであった。
【0080】
2.NO吸着試験
上記で調製した排ガス浄化触媒約2gを精秤したうえで、固定床流通式の吸着実験装置に装填し、モデルガスを用いて200℃におけるNO吸着試験を行った。
【0081】
NO吸着試験は、表1及び2に示した触媒床温度及びガス組成のシーケンスにて行い、最終の脱離ステップで回収されたNH3の積算量をNO2に換算して、使用触媒の単位質量当たりのNO2吸着量(mg/g-cat)を算出した。表3に結果を示す。
【0082】
《実施例2~6及び比較例1~3》
1.排ガス浄化触媒の調製
1-1.複合酸化物担体の調製
複合酸化物担体の組成が、それぞれ、表3に記載のとおりとなるように、原料の配合量を調節した他は、実施例1と同様にして、複合酸化物担体を調製した。
【0083】
1-2.第2のアルカリ土類金属の担持(排ガス浄化触媒の調製)
酢酸マグネシウムの代わりに、表3に示したアルカリ土類金属酸化物の原料化合物を使用した他は、実施例1と同様にして、複合酸化物担体上に第2のアルカリ土類金属酸化物を担持して、排ガス浄化触媒を、それぞれ調製した。ここで、第2のアルカリ土類金属酸化物の原料化合物の使用量は、酸化物換算の担持量が、表3に示した値となる量とし、原料化合物としては、アルカリ土類金属の種類に応じて、以下のものを使用した。
Mg:酢酸マグネシウム
Ba:酢酸バリウム
Sr:硝酸ストロンチウム
【0084】
2.NO吸着試験
上記で調製した排ガス浄化触媒をそれぞれ用いて、実施例1と同様にして、NO吸着試験を行った。表3に結果を示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表3に示した結果から、以下のことが理解される。
【0089】
複合酸化物担体中にアルカリ土類金属を含有させ、かつ、当該複合酸化物担体にアルカリ土類金属を担持させていない比較例1、並びに複合酸化物担体中にアルカリ土類金属を含有させず、かつ、当該複合酸化物担体にアルカリ土類金属を担持させた比較例2及び3の排ガス浄化触媒では、NO吸着量は少なかった。
【0090】
これらに対して、複合酸化物担体中に第1のアルカリ土類金属を含有させ、かつ、当該複合酸化物担体に第2のアルカリ土類金属を担持させた実施例1~6の排ガス浄化触媒では、増大されたNO吸着量を示した。
【0091】
これは、複合酸化物担体中に存在する第1のアルカリ土類金属酸化物と、複合酸化物担体に担持された第2のアルカリ土類金属酸化物との協働により、NOがNO2及び/又はNO3に酸化された状態で排ガス浄化触媒に吸着されることによると考えられる。
【0092】
すなわち、複合酸化物担体中の第1のアルカリ土類金属酸化物により、複合酸化物担体中のOSC材(セリア)の酸素放出が促され、NOがNO2及び/又はNO3
-へと酸化され易くなるものと考えられる。そして、この酸化されたNO(NO2及び/又はNO3
-)を、複合酸化物担体に担持された第2のアルカリ土類金属が高効率で吸着できるものと考えられる。
【0093】
比較例1の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体中のアルカリ土類金属酸化物により、NOのNO2及び/又はNO3への酸化は促進される。しかし、複合酸化物担体に担持されたアルカリ土類金属酸化物を持たないため、酸化されたNOの吸着量は少なくとなったと考えられる。
【0094】
また、比較例2及び3の排ガス浄化触媒では、複合酸化物担体に担持されたアルカリ土類金属酸化物を有するため、酸化されたNOの吸着能を潜在的に有する。しかし、複合酸化物担体中にアルカリ土類金属酸化物を持たないため、NOの酸化が促進されず、したがって、NOの吸着量は少なくなったと考えられる。
【0095】
《実施例7~9及び比較例4》
1.排ガス浄化触媒の調製
1-1.複合酸化物担体の調製
複合酸化物担体の組成が、それぞれ、表4に記載のとおりとなるように、原料の配合量を調節した他は、実施例1と同様にして、複合酸化物担体を調製した。なお、実施例10では、複合酸化物担体の原料として、硝酸アルミニウムを合わせて使用した。
【0096】
1-2.貴金属、及び第2のアルカリ土類金属酸化物の担持(排ガス浄化触媒の調製)
酢酸マグネシウムに加えて、表4に示した貴金属(PGM)の原料化合物を合わせて使用した他は、実施例1と同様にして、複合酸化物担体上に、貴金属及び第2のアルカリ土類金属酸化物を担持して、排ガス浄化触媒を、それぞれ調製した。ここで、貴金属の原料化合物の使用量は、金属換算の担持量が、表4に示した値となる量とし、原料化合物としては、貴金属の種類に応じて、以下のものを使用した。
Pd:硝酸パラジウム
Rh:硝酸ロジウム
Pt:硝酸白金(II)
【0097】
2.NO吸着試験
上記で調製した排ガス浄化触媒をそれぞれ用いて、実施例1と同様にして、NO吸着試験を行った。表4に結果を示す。
【0098】
【0099】
表4に示した結果から、以下のことが理解される。
【0100】
一般に、複合酸化物担体に触媒貴金属粒子を担持させると、NOの吸着量は増大することが知られている。実際、複合酸化物担体に触媒貴金属粒子を担持させた比較例4の排ガス浄化触媒は、比較的大きなNO吸着量を示した。
【0101】
しかしながら、複合酸化物担体中に第1のアルカリ土類金属を含有させ、かつ、当該複合酸化物担体に、触媒貴金属とともに第2のアルカリ土類金属を担持させた実施例7~10の排ガス浄化触媒では、比較例の排ガス浄化触媒よりも顕著に増大されたNO吸着量を示した。
【0102】
《分析例》
実施例1、及び比較例1~3でそれぞれ得られた排ガス浄化触媒について、触媒中のアルカリ土類金属の分布を、電子線マイクロアナリシス(EPMA)による元素分析によって調べた。測定条件は、以下のとおりである。
加速電圧:20kV
プローブ電流:100nA
収集時間:20m秒
解像度:256×256ピクセル
試料熱履歴:なし(調製直後のフレッシュ品を測定)
観察倍率:500倍
【0103】
得られたアルカリ土類金属元素マッピングを、
図5~
図8に示す。
【0104】
図5は、実施例1の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
図5を参照すると、Mgは、複合酸化物担体の内部及び表面上の双方に存在していることが分かる。ここで、複合酸化物担体表面のMgは、分散性が非常によい状態で、複合酸化物担体の表面に満遍なく担持されており、複合酸化物担体から遊離しているMgはほとんど存在しないことが確認できる、
【0105】
図6は、比較例1の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
図6では、Mgは、複合酸化物担体の内部のみに存在している。
【0106】
図7は、比較例2の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたMgマッピングである。
図7では、Mgは、複合酸化物担体の外部のみに存在している。ここで、Mgは、凝集した状態で複合酸化物担体の表面に偏析しているもの、及び複合酸化物担体から遊離して存在しているものが確認できる。
【0107】
図8は、比較例3の排ガス浄化触媒のEPMA分析で得られたBaマッピングである。
図8では、Baは、複合酸化物担体の外部のみに存在している。ここで、Baは、凝集した状態で複合酸化物担体の表面に偏析しているもの、及び複合酸化物担体から遊離して存在しているものが確認できる。
【0108】
実施例1の排ガス浄化触媒についての
図5と、比較例2及び3の排ガス浄化触媒についての
図7及び8との比較から、複合酸化物担体中にアルカリ土類金属が存在していると、担持アルカリ土類金属の分散性が向上し、かつ、遊離のアルカリ土類金属の生成を抑制できることが確認された。