(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182664
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜
(51)【国際特許分類】
H01G 2/10 20060101AFI20221201BHJP
H01H 33/53 20060101ALI20221201BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01G2/10 J
H01H33/53 U
H01G2/02 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090351
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003171
【氏名又は名称】株式会社戸上電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】丸井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】吉原 昭治郎
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA08
(57)【要約】
【課題】部品点数を少なくして組み付けを簡略化することにより製造コストを低減することができる電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜を提供することを目的とする。
【解決手段】電圧検出用コンデンサ71は、コンデンサ素子72を内部に装填する絶縁被膜73から構成されている。絶縁被膜73は蛇腹状の弾性材料からなる本体部731、及び本体部と同材質の基端部732が一体成型されている。基端部732は内側フランジ部732b、及び外側フランジ部732cを有し、内側フランジ部732bと外側フランジ部732cの間には周方向に沿って嵌合溝732aが形成されている。取付板74の挿通孔741に絶縁被膜73の本体部731側から通し、嵌合溝732aに挿通孔741の縁部742を嵌合させることで、簡単な作業により接地面である取付板74と電圧検出用コンデンサ71を組み付けることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側端子、及び低圧側端子を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子を装填する収容部が内部に形成された弾性部材からなる絶縁被膜と、を備える電圧検出用コンデンサにおいて、
前記絶縁被膜は、
一端に前記コンデンサ素子の高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部と、
周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され、該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接された内側フランジ部、前記嵌合溝を挟んで他方側が前記低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を有し、前記本体部の外周面よりも径方向外側に幅広な形状の基端部と、を備える
電圧検出用コンデンサ。
【請求項2】
前記内側フランジ部は前記本体部との連接部分から前記嵌合溝に向けて径方向外側に傾斜する傾斜面を有する
請求項1に記載の電圧検出用コンデンサ。
【請求項3】
前記嵌合溝には、径方向外側に向けて凸設されたストッパー部を有する
請求項1または請求項2に記載の電圧検出用コンデンサ。
【請求項4】
前記外側フランジ部には、開放端の一部が側面に沿って切り欠かれた切欠部が形成された
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電圧検出用コンデンサ。
【請求項5】
高圧側端子、及び低圧側端子を有するコンデンサ素子と、
一端に前記コンデンサ素子の前記高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部、周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接された内側フランジ部及び前記嵌合溝を挟んで他方側が前記低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を含み前記本体部よりも径方向外側に幅広な形状の基端部を有し、前記コンデンサ素子を装填する収容部が内部に形成された絶縁被膜と、
該絶縁被膜の前記本体部が挿通可能であり、内径が前記嵌合溝の外径と略一致する挿通孔が形成された取付板と、を備える
電圧検出用コンデンサユニット。
【請求項6】
前記基端部に形成された前記嵌合溝には、径方向外側に向けて凸設されたストッパー部を有し、
前記取付板の前記挿通孔の縁部には、前記取付板の平面に沿って切り欠かれ、前記ストッパー部と嵌合する嵌合部が形成された
請求項5に記載の電圧検出用コンデンサユニット。
【請求項7】
内部にコンデンサ素子が装填される絶縁被膜において、
該絶縁被膜は、
一端にコンデンサ素子の高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部と、
周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され、該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接されるとともに前記嵌合溝に向けて径方向外側に傾斜する傾斜面を有する内側フランジ部、前記嵌合溝を挟んで他方側がコンデンサ素子の低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を有し、前記本体部の外周面よりも径方向外側に幅広な形状の基端部と、を備える
絶縁被膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜に関する。詳しくは、部品点数を少なくして組み付けを簡略化することにより製造コストを低減することができる電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、変電所から引き出される高圧の電力配電線は、市中に立てられた多数の電柱により網目状に張り巡らされ、需要家に電力を供給するようになっている。このような電柱には需要家の入り口に責任分界点用、又は作業区間、事故区間を切り離す配電線路区分用の開閉器が随所に設置され、例えば異常発生時や電気機器類の点検、及び修理作業時等に、この開閉器を操作して電流の流れを一時的に遮断するようになっている。
【0003】
開閉器は金属製の本体ケースと、この本体ケースの開口部を閉塞する蓋ケースが本体ケースに対して着脱可能に設けられている。また、開閉器内には、主に、電気的な接続、及び遮断を可能とする電路開閉機構、開閉器を制御する制御機器に電源を供給する変圧器、雷により生じる過渡的な異常高電圧から各種の電源機器を保護するための避雷器、及び配電経路の電圧検出用センサとしての電圧検出用コンデンサをはじめとする各種の電源機器が収納されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
この電圧検出用コンデンサは、高誘電率のセラミックにエポキシ樹脂などの絶縁皮膜を被せた複数のコンデンサ素子を直列に重ねて接続し、高圧側と低圧側の両端に端子を設けたものである。この電圧検出用コンデンサの開閉器内への従来の設置構造を
図6に示す。
【0005】
電圧検出用コンデンサユニット101は、蛇腹状の絶縁被膜内にコンデンサ素子(図示しない)が装填された電圧検出用コンデンサ102と、電圧検出用コンデンサ102を開閉器内で固定するためのアース面である取付板103から構成されている。電圧検出用コンデンサ102は、
図6の上方が高圧側、下方が低圧側であり、所定の絶縁処理をされた状態で取付板103に固定される。
【0006】
具体的には、電圧検出用コンデンサは台座104に支持され、さらに台座104と取付板103との間には所定のクリアランスが確保されるように絶縁被膜されたボルトナット105で固定される。このように構成された電圧検出用コンデンサユニット101は取付板103を開閉器のケース面に対してボルトナット等の固定手段により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように、電圧検出用コンデンサを開閉器のケース内に設置する場合には、絶縁被膜内にコンデンサ素子を装填した状態で、アース面である取付板に対してボルトナットで強固に固定するが、このときボルトナットが金属製の場合には導体となるため、ボルトナットに対しても絶縁処理を施す必要がある。このように従来の電圧検出用コンデンサの開閉器への設置構造においては、部品点数が多いため組み付けが複雑になることから、組み付けのために多くの工数を要していた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、部品点数を少なくして組み付けを簡略化することにより製造コストを低減することができる絶縁被膜、及び電圧検出用コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の電圧検出用コンデンサは、高圧側端子、及び低圧側端子を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子を装填する収容部が内部に形成された弾性部材からなる絶縁被膜と、を備える電圧検出用コンデンサにおいて、前記絶縁被膜は、一端に前記コンデンサ素子の高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部と、周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され、該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接された内側フランジ部、前記嵌合溝を挟んで他方側が前記低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を有し、前記本体部の外周面よりも径方向外側に幅広な形状の基端部とを備える。
【0011】
ここで、電圧検出用コンデンサは、主に高圧側端子、及び低圧側端子を有するコンデンサ素子と、コンデンサ素子を装填する収容部が内部に形成された弾性部材からなる絶縁被膜から構成されていることにより、コンデンサ素子の全体を絶縁被膜により絶縁することができるため、高圧側端子に入力された高電圧を低圧側端子から出力することが可能となる。
【0012】
また、絶縁被膜は、一端にコンデンサ素子の高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部を備えることにより、コンデンサ素子を絶縁被膜の内部に装填した状態で、高電圧の入力側である高電圧側端子と所定の機器とをリード線で接続することができる。
【0013】
また、本体部と連接され、周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成された基端部を備えることにより、接地面である取付板に電圧検出用コンデンサを固定する際に、取付板に形成された挿通孔の縁部を該嵌合溝と嵌合させて弾性的に狭持することで、ボルトナット等を用いずに電圧検出用コンデンサを取付板に対して容易に組み付けることができる。
【0014】
また、基端部は、嵌合溝を挟んで一方側が本体部の他端に連接された内側フランジ部、嵌合溝を挟んで他方側が低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を有することにより、基端部の剛性を確保することができるとともに、コンデンサ素子の低圧側端子に接続された電気的に接続されるリード線を外側フランジ部の開放端から外部に向けて配線することができる。
【0015】
また、基端部は、本体部の外周面よりも径方向外側に幅広な形状であることにより、例えば取付板の挿通孔の内径に対して嵌合溝の外径を略一致させた形状とすることができる。このような構成とすることで、取付板の挿通孔を基端部の嵌合溝に嵌合する際には、まず絶縁被膜の本体部側から取付板の挿通孔に挿通させ、続いて基端部を弾性変形させながら挿通孔の縁部を嵌合溝に嵌合させることができるため、電圧検出用コンデンサを取付板に対して容易に組み付けることができる。
【0016】
また、内側フランジ部は本体部との連接部分から嵌合溝に向けて径方向外側に傾斜する傾斜面を有する場合には、前記したように、絶縁被膜の基端部を弾性変形させながら取付板の挿通孔の縁部を嵌合溝に嵌合させる際に、取付板の挿通孔の縁部を傾斜面に沿って移動させることができるため、作業性をより高めることができる。
【0017】
また、嵌合溝には、径方向外側に向けて凸設されたストッパー部を有する場合には、ストッパー部が周り止めとして機能するため、電圧検出用コンデンサに外力や振動が加わったとしても、電圧検出用コンデンサと取付板の位置関係がずれたり、或いは電圧検出用コンデンサの取付板からの脱落を防止することができる。
【0018】
また、外側フランジ部には、開放端の一部が側面に沿って切り欠かれた切欠部が形成されている場合には、外側フランジの底面を設置面に設置した状態においても、該切欠部からリード線を通して外部に向けて配線することができる。
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明の電圧検出用コンデンサユニットは、高圧側端子、及び低圧側端子を有するコンデンサ素子と、一端に前記コンデンサ素子の前記高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部、周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接された内側フランジ部及び前記嵌合溝を挟んで他方側が前記低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を含み前記本体部よりも径方向外側に幅広な形状の基端部を有し、前記コンデンサ素子を装填する収容部が内部に形成された絶縁被膜と、該絶縁被膜の前記本体部が挿通可能であり、内径が前記嵌合溝の外径と略一致する挿通孔が形成された取付板とを備える。
【0020】
以上のような構成により、コンデンサ素子が内部に装填された絶縁被膜を取付板に対して特定の工具等を用いることなく容易に組み付けることができる。そして、取付板と絶縁被膜は、取付板に形成された挿通孔の縁部が絶縁被膜の基端部に形成された嵌合溝で嵌合した状態で強固に固定されるため、外力や振動が加わったとしても一定の取付強度を確保することができる。
【0021】
また、基端部に形成された嵌合溝には、径方向外側に向けて凸設されたストッパー部を有し、取付板の挿通孔の縁部には、取付板の平面に沿って切り欠かれ、ストッパー部と嵌合する嵌合部が形成されている場合には、取付板の挿通孔の縁部が基端部に形成された嵌合溝に嵌合している状態において、ストッパー部と嵌合部が嵌合し、ストッパー部が周り止めとして機能することができる。従って、電圧検出用コンデンサに外力や振動が加わったとしても、電圧検出用コンデンサと取付板の位置関係がずれたり、或いは電圧検出用コンデンサが取付板からの脱落を防止することができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の絶縁被膜は、内部にコンデンサ素子が装填される絶縁被膜において、該絶縁被膜は、一端にコンデンサ素子の高圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された筒状の本体部と、周方向に沿って径方向内側に凹設された嵌合溝が形成され、該嵌合溝を挟んで一方側が前記本体部の他端に連接されるとともに前記嵌合溝に向けて径方向外側に傾斜する傾斜面を有する内側フランジ部、前記嵌合溝を挟んで他方側がコンデンサ素子の低圧側端子に接続されるリード線が挿通可能な開放端が形成された外側フランジ部を有し、前記本体部の外周面よりも径方向外側に幅広な形状の基端部とを備える。
【0023】
以上のような構成により、コンデンサ素子が内部に装填される絶縁被膜を取付板に対して特定の工具等を用いることなく容易に組み付けることができる。そして、取付板と絶縁被膜は、取付板に形成された挿通孔の縁部が絶縁被膜の基端部に形成された嵌合溝で嵌合した状態で強固に固定されるため、外力や振動が加わったとしても一定の取付強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜は、部品点数を少なくして組み付けを簡略化することにより製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る開閉器の斜視図である。
【
図3】電圧検出用コンデンサユニットの断面図である。
【
図4】絶縁被膜の外観図であり、(a)は前方斜視図、(b)は後方斜視図である。
【
図5】電圧検出用コンデンサユニットの全体外観図であり、(a)は要部拡大分解図、(b)は組み付け状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0027】
なお、各図においては、説明の便宜上、開閉器を設置した状態において、底面から上面に向かう方向を上方向と定義し、上方向の反対方向を下方向と定義し、上方向、及び下方向により表される軸方向を鉛直方向と定義し、配電線に接続される一方側ブッシング、他方側ブッシングの電気的な接続方向を短手方向と定義し、電路開閉機構の回転軸と平行な方向を長手方向と定義する。
【0028】
まず、本発明が適用される開閉器1の全体構成について、
図1、及び
図2を用いて説明する。開閉器1は、例えば需要家の入り口に責任分界点用として電柱に設置される柱上開閉器であり、各種の電源機器を収納する金属製のケース2を備えている。
【0029】
ここで、必ずしも、開閉器1は柱上開閉器である必要はない。例えば、平常時の負荷電流を開閉でき、かつ電路の短絡状態における異常電流も投入できる開閉器であれば、どのような用途に使用される開閉器であってもよい。
【0030】
開閉器1は、電柱に設置した状態において、下方向に向けて開口する開口部を有する本体ケース21と、本体ケース21の開口部を閉塞するように、本体ケース21に対して着脱可能な蓋ケース22から構成され、ケース2の内部には種々の電源機器等が収納されている。
【0031】
ここで、必ずしも、蓋ケース22は本体ケース21の下方向に向けて開口する開口部を閉塞する形式である必要はない。例えば、本体ケース21の上部に開口部が形成されており、蓋ケース22が本体ケース21の上部開口部を閉塞する形式のものであってもよい。なお、本発明においては便宜上、蓋ケース22が本体ケース21の下部開口部を閉塞するタイプのものについて説明する。
【0032】
本体ケース21には、ブッシング3として配電系統内の配電線に接続される一方側ブッシング31、及び配電線に接続される他方側ブッシング32が相毎に互いに対向するように設けられている。なお、本実施形態では、U、V、W三相の一方側ブッシング31とU、V、W三相の他方側ブッシング32との合計6本のブッシング3が長手方向に沿って設けられている。この一方側ブッシング31と他方側ブッシング32を通じて、配電線の電気的な接続、及び遮断が行われる。そして、一方側ブッシング31と他方側ブッシング32との電気的な接続、及び遮断は可動接触部41と固定接触部42から構成される電路開閉機構4の入、切操作により制御される。
【0033】
具体的には、可動接触部41は、負荷側端子43に軸部が回動可能に取り付けられており、可動接触部41の一部はリンク装置44により本体ケース21に支持されている。そして、可動接触部41とリンク装置44の接続部分には本体ケース21の外側から操作可能な操作ハンドル45が接続されており、操作ハンドル45を所定の回転方向に回転させることで、固定接触部42と可動接触部41の入、切操作が可能となる。即ち、固定接触部42と可動接触部41が接触(入操作)されることで、一方側ブッシング31と他方側ブッシング32が電気的に接続される。一方で、固定接触部42と可動接触部41が開放(切操作)されることで、一方側ブッシング31と他方側ブッシング32の電気的な接続が遮断される。
【0034】
ここで、必ずしも、開閉器1は三相式である必要はなく、単相式であってもよい。その場合には、開閉器1内に収納される固定接触部42、可動接触部41、及びリンク装置44は一組のみ設置されることになる。
【0035】
また、必ずしも、固定接触部42と可動接触部41の入、切操作は操作ハンドル45により手動で行われる必要はない。例えば、開閉器1内の電源機器について短絡等の異常を検出した際に、自動で固定接触部42と可動接触部41を開放するように構成されていてもよい。
【0036】
本発明においては、一方側ブッシング31、及び他方側ブッシング32の数に応じて、前記のような固定接触部42、可動接触部41、及びリンク装置44を一組として、三相分(即ち計三組)設けられており、各組には上方向に向けて開口した図示しない有底のカバーがそれらを覆うように取り付けられている。
【0037】
本体ケース21の他方側ブッシング32が接続されている近傍には、過剰な電流が流れたことを検知する変流器46が設置されている。
【0038】
蓋ケース22の内側には、開閉器を制御する制御機器に電源を供給する変圧器5が載置されている。この変圧器5は、公知の構造であり、例えば図示しない磁気回路を構成する鉄心と、電気回路を構成し、絶縁のために有機樹脂で周囲を被覆された電気巻線で構成されている。また、この変圧器5には、雷により生じる過渡的な異常高電圧から各種の電源機器を保護するための避雷器6が接続されている。
【0039】
本体ケース21において、固定接触部42、及び可動接触部41の斜め上方には相毎に複数の電圧検出用コンデンサ(PD)71が本体ケース21の長手方向に沿って設置されている。電圧検出用コンデンサ71は、その先端が本体ケース21内の所定位置を指向するように各相において一方側ブッシング31、及び他方側ブッシング32にそれぞれ対応して設けられている。各電圧検出用コンデンサ71の先端側は、図示しない導体を介して電源側、及び負荷側の充電部にそれぞれ接続されており、基端側は接地されて本体ケース21に接続されている。
【0040】
ここで、必ずしも、電圧検出用コンデンサ71は、本体ケース21の上方に設置されている必要はない。本体ケース21内に配置されている他の機器とのレイアウトを考慮して適宜設置位置を変更することができる。
【0041】
図3、及び
図4に示すように、電圧検出用コンデンサ71は、コンデンサ素子72、及び該コンデンサ素子72の外周を被覆する絶縁被膜73から構成されている。そして、絶縁被膜73により絶縁された電圧検出用コンデンサ71は、接地面である取付板74に組み付けられた状態で本体ケース21に対してボルトナット等の公知の固定手段により固定されている。なお、電圧検出用コンデンサ71が接地面である取付板74に組み付けられた状態のものを電圧検出用コンデンサユニット7と呼ぶ。
【0042】
絶縁被膜73は、例えば合成樹脂などの絶縁材料から構成されており、内部にコンデンサ素子72を装填するための内部空間が形成され、コンデンサ素子72を全周に亘って密着状態で被覆している。絶縁被膜73の具体的な構造として、全体として長尺の筒状からなる本体部731と、本体部731に連接し、本体部731の外周面よりも幅広な形状である基端部732から構成されている。
【0043】
本体部731の一端側には、内部に装填されたコンデンサ素子72の高圧側端子に接続されるリード線(図示しない)が挿通可能なように開放端731aが形成されている。また、本体部731の側面外周には環状に凸部731bと凹部731cが交互に配置された蛇腹構造となっている。
【0044】
本体部731の開放端731aの反対側には、取付板74に固定するための基端部732が連接されて、本体部731と一体化されている。基端部732は本体部731と同一の材質(例えば合成樹脂)から構成されており、側面の全周に亘って取付板74に形成された挿通孔741の縁部が嵌合する嵌合溝732aが凹設されている。そして、この嵌合溝732aを挟んで、一方側には本体部731と連接する内側フランジ部732b、他方側には外側フランジ部732cを有している。
【0045】
嵌合溝732aは、基端部732の径方向内側に向けて凹設された断面略矩形状であって、基端部732の高さ方向の略中心位置に周方向に沿って形成されている。また、嵌合溝732aの所定の位置には、径方向外側に向けて凸設された一対のストッパー部732dが基端部732と一体成型されている。ストッパー部732dは、後記する通り、接地面である取付板74に形成されている嵌合部743に嵌合して絶縁被膜73の取付板74に対する周り止めとして機能するものである。
【0046】
ここで、必ずしも、嵌合溝732aは断面略矩形状である必要はない。後記する取付板74に形成された挿入孔の縁部が嵌合可能であり、弾性的に狭持することができるものであれば、V字状、或いはU字状に形成されていてもよく、嵌合溝732aの形状は特に限定されるものではない。
【0047】
また、必ずしも、嵌合溝732aは基端部732の側面に沿って全周に亘って形成されている必要はなく、径方向内側に向けて凹設された嵌合溝を一定の間隔で形成するようにしてもよい。
【0048】
また、ストッパー部732dの数、或いは設置間隔は適宜変更することができるが、電圧検出用コンデンサ71に外力や振動が加わったとしても、電圧検出用コンデンサ71と取付板74の位置関係がずれたり、或いは電圧検出用コンデンサ71が取付板74から外れたりすることを防止するという観点では、少なくとも嵌合溝732aの周囲に対角線上に2つ以上を設定することが好ましい。
【0049】
内側フランジ部732bは一端が本体部731の他端に連接されており、側面には本体部731から嵌合溝732aにかけて径方向外側に向けて徐々に幅広となるように傾斜面を有する形状となっている。
【0050】
ここで、必ずしも、内側フランジ部732bの側面には傾斜面が形成されている必要はない。但し、傾斜面が形成されていることにより、後記する取付板74に対する組み付けが容易となる。従って、組み付け工数の削減という観点では、内側フランジ部732bの側面形状は傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0051】
嵌合溝732aを挟んで内側フランジ部732bと反対側には外側フランジ部732cが連接されている。外側フランジ部732cの端部はコンデンサ素子72の低圧側端子に接続されたリード線(図示しない)が挿通可能なように開放端732eが形成されており、さらに開放端732eの一部には側面方向に沿って切り欠かれた切欠部732fが形成されている。
【0052】
ここで、必ずしも、外側フランジ部732cの開放端732eの一部には切欠部732fが形成されている必要はない。但し、切欠部732fが形成されていることにより、外側フランジ部732cを底面にして本体ケース21に設置した状態であっても、コンデンサ素子72に接続されたリード線を切欠部732fに通して配線することができるため、配線スペースの確保という観点では、切欠部732fは形成されていることが好ましい。
【0053】
図5に示すように、取付板74は電圧検出用コンデンサ71の接地面であるとともに、電圧検出用コンデンサ71を組み付けた状態で本体ケース21に固定するための固定治具として機能する。取付板74は略方形状の平板であって、長手方向の両端が屈曲加工され、平面部分には組み付ける電圧検出用コンデンサ71の数に応じた挿通孔741が形成されている(本発明の実施形態では三相式であるため三つの挿通孔741が形成されている。)。挿通孔741の内径は、絶縁被膜73の嵌合溝732aの外径と略一致する長さに形成されている。
【0054】
挿通孔741の縁部742には、電圧検出用コンデンサ71を組み付けた際に、絶縁被膜73の基端部732のストッパー部732dと嵌合する嵌合部743が、取付板74の平面部745に沿って切り欠き形成されている。前記したように、ストッパー部732dと嵌合部743が嵌合することで周り止めとして機能し、取付板74に対する電圧検出用コンデンサ71の固定が強化される。従って、電圧検出用コンデンサ71に外力や振動が加わったとしても、電圧検出用コンデンサ71が外れたりすることを未然に防止することができる。
【0055】
また、取付板74の各挿通孔741間には、取付板74を本体ケース21に固定するためのボルトナット75が挿通可能な固定孔744が形成されている。そして、電圧検出用コンデンサ71を取付板74に取り付けた状態において、ボルトナット75を固定孔744に挿通することで、電圧検出用コンデンサユニット7を本体ケース21に対して強固に固定することができる。
【0056】
次に、電圧検出用コンデンサ71を取付板74に組み付ける工程について
図5に基づいて説明する。なお、以下の説明における平面部745の表裏面の定義として、電圧検出用コンデンサ71を取付板74に組み付けた状態において、絶縁被膜73の本体部731が露出する側を表面、その反対側を裏面と表現する。
【0057】
まず、絶縁被膜73の基端部732を設置面に設置した状態において、取付板74の裏面側から本体部731の先端を挿通孔741に挿通させる。
【0058】
取付板74の挿通孔741に本体部731を挿通したら、そのまま取付板74を基端部732の内側フランジ部732bに接触する位置まで移動させる。このとき、内側フランジ部732bの外径は嵌合溝732aに向かって傾斜する傾斜面が形成されているため、取付板74は傾斜面に沿ってより円滑に移動させることができる。
【0059】
挿通孔741の縁部742が内側フランジ部732bの傾斜面に接触したら、挿通孔741の縁部742に形成された嵌合部743と、絶縁被膜73のストッパー部732dが嵌合するように取付板74を回転させて位置調整をする。その後、取付板74の表面を設置面に向けて押圧して押し下げると、基端部732が弾性変形することにより、ストッパー部732dと嵌合部743が嵌合し、挿通孔741の縁部742が嵌合溝732aに嵌合する。
【0060】
このとき、挿通孔741の縁部742は嵌合溝732aにより弾性的に狭持され、さらにストッパー部732dと嵌合部743の嵌合状態が維持されることで、電圧検出用コンデンサ71の取付板74に対する組み付けが完了する。
【0061】
以上、本発明を適用した電圧検出用コンデンサ、電圧検出用コンデンサユニット、及び絶縁被膜は、部品点数を少なくして組み付けを簡略化することにより製造コストを低減することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0062】
1 開閉器
2 ケース
21 本体ケース
22 蓋ケース
3 ブッシング
31 一方側ブッシング
32 他方側ブッシング
4 電路開閉機構
41 可動接触部
42 固定接触部
43 負荷側端子
44 リンク装置
45 操作ハンドル
46 変流器
5 変圧器
6 避雷器
7 電圧検出用コンデンサユニット
71 電圧検出用コンデンサ
72 コンデンサ素子
73 絶縁被膜
731 本体部
731a 開放端
731b 凸部
731c 凹部
732 基端部
732a 嵌合溝
732b 内側フランジ部
732c 外側フランジ部
732d ストッパー部
732e 開放端
732f 切欠部
74 取付板
741 挿通孔
742 縁部
743 嵌合部
744 固定孔
745 平面部
75 ボルトナット