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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182671
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/34 20060101AFI20221201BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20221201BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20221201BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60R19/34
F16F7/00 C
F16F7/00 K
F16F7/12
F16F15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090358
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 邦芳
(72)【発明者】
【氏名】黒田 一平
(72)【発明者】
【氏名】木戸 啓人
(72)【発明者】
【氏名】福田 綾香
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048DA04
3J048EA36
3J066AA23
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD07
3J066BE01
3J066BF01
3J066BG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両がフルラップ衝突及びオフセット衝突したときの衝突荷重のエネルギーを吸収できるようにする。
【解決手段】車両の左右両側夫々に設けられた車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム1と、フロントサイドフレーム夫々よりも車両前方側に設けられ、車幅方向両端部に車幅方向外側に延び且つ車両後方に向かって傾斜する傾斜部71を有するバンパビーム7と、を備える。フロントサイドフレーム夫々の前端部には、車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜するクラッシュカン5が設けられ、クラッシュカン夫々の前端部は、バンパビームの傾斜部夫々に連結され、クラッシュカン夫々の車幅方向内側には、バンパビームへ入力される衝突荷重に対して強度を低くした脆弱部が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側夫々に設けられた車両前後方向に延びるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレーム夫々よりも車両前方側に設けられ、車幅方向両端部に車幅方向外側に延び且つ車両後方に向かって傾斜する傾斜部を有するバンパビームと、を備える車両の前部車体構造において、
前記フロントサイドフレーム夫々の前端部には、車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜するクラッシュカンが設けられ、
前記クラッシュカン夫々の前端部は、前記バンパビームの前記傾斜部夫々に連結され、
前記クラッシュカン夫々の車幅方向内側には、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした脆弱部が設けられていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカン夫々の後端部における断面の輪郭と、前記フロントサイドフレーム夫々の前端部における断面の輪郭と、が略同一形状であることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカン夫々は、
車幅方向内側に面する側面部と、
車両上方に面する上面部と、
車両下方に面する下面部と、を有し、
前記脆弱部は、前記側面部と前記上面部及び前記下面部とがなす稜線部の少なくとも一方を切り欠く稜線ノッチによって形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカン夫々の内部には、車両前後方向に延びる水平リブが形成され、
前記脆弱部は、前記クラッシュカンの車幅方向内側の側面部と前記水平リブとが部分的に切り離し状態になるように車幅方向内側に開口した側面ノッチによって形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントサイドフレーム夫々の車両前後方向の中間部にはサスペンションハウジングが結合されており、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側には、前記サスペンションハウジングよりも車両前方に、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした外側脆弱部が設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側には、前記サスペンションハウジングよりも車両前方に、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした内側脆弱部が設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の前記外側脆弱部は前記内側脆弱部よりも強度が高いことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向両側面には車両前後方向に延びる前後方向凹凸ビードが設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側に設けられた前記前後方向凹凸ビードには、そのビード幅を部分的に大きくしてなる前記外側脆弱部としての外側ビード幅拡大部が形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側に設けられた前記前後方向凹凸ビードには、そのビード幅を部分的に大きくしてなる前記内側脆弱部としての内側ビード幅拡大部が形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の前記外側ビード幅拡大部は、前記内側ビード幅拡大部よりもビード幅が小さいことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の前部車体構造において、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側面には、前記外側脆弱部としての上下方向に延びる上下方向凹凸ビードが形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側面には、前記内側脆弱部としての上下方向に延びる上下方向凹凸ビードが形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側面の前記上下方向凹凸ビードは、車幅方向内側面の前記上下方向凹凸ビードよりも上下方向の寸法が小さいことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカン夫々には、
前記水平リブと前記上面部又は前記下面部とを連結する車両前後方向に延びる縦リブが形成され、
前記クラッシュカン夫々の前記上面部又は前記下面部と前記縦リブとが部分的に切り離し状態になるように、前記上面部又は前記下面部に開口したノッチが形成され、
前記上面部又は前記下面部に開口した前記ノッチは、前記脆弱部よりも車両前方に形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の前部には、車両が衝突した際にその衝突荷重のエネルギーを吸収するためのクラッシュカンが設けられている。このクラッシュカンは、車両の前部における左右両側に配置された車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム夫々の前端部に設けられている。このクラッシュカンの前端部は、車幅方向に延びるバンパビームに連結されている。このため、バンパビームに衝突荷重が入力されたときには、衝突荷重がバンパビームを介してクラッシュカンに入力される。これにより、クラッシュカンが潰れ変形し、衝突荷重のエネルギーがクラッシュカンに吸収される。
【0003】
従来、特許文献1に記載されるようなフロントサイドフレームと同軸で車両前後方向にストレートに延びるクラッシュカンが知られている。バンパビームに衝突荷重が入力されたときに、このクラッシュカンが軸圧縮することによって衝突荷重のエネルギーが吸収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-144578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された車両の前部車体構造では、クラッシュカンはフロントサイドフレームと同軸で車両前後方向にストレートに延びるように配置されている。また、クラッシュカンの前端部に設けられているバンパビームの車幅方向両端部は、車幅方向外側に延び且つ車両後方に向かって傾斜している。
【0006】
このため、車両がスモールオーバーラップ衝突又はフルラップ衝突等のオフセット率の低い衝突をした場合には、クラッシュカンが前端部から潰れることでその衝突荷重のエネルギーは十分に吸収される。一方で、車両がオフセット率の高い衝突、所謂オフセット衝突をした場合には、クラッシュカンには、バンパビームの傾斜している部分の傾斜している部分と直交する方向(傾斜部分が湾曲している場合はその接線と直交する方向、つまり法線方向)の成分を有する衝突荷重が入力される。これにより、クラッシュカンにはクラッシュカンを折れ曲げるような方向に衝突荷重が加わることになり、クラッシュカンが座屈する可能性がある。クラッシュカンが座屈すると、衝突荷重のエネルギーを十分に吸収できない。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フルラップ衝突及びオフセット衝突において、衝突荷重のエネルギーを吸収できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、クラッシュカンを車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜するように配置し、クラッシュカンの車幅方向内側に脆弱部を設けた。
【0009】
具体的に、ここに開示する車両の前部車体構造は、
車両の左右両側夫々に設けられた車両前後方向に延びるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレーム夫々よりも車両前方側に設けられ、車幅方向両端部に車幅方向外側に延び且つ車両後方に向かって傾斜する傾斜部を有するバンパビームと、を備える車両の前部車体構造において、
前記フロントサイドフレーム夫々の前端部には、車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜するクラッシュカンが設けられ、
前記クラッシュカン夫々の前端部は、前記バンパビームの前記傾斜部夫々に連結され、
前記クラッシュカン夫々の車幅方向内側には、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした脆弱部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この車両の前部車体構造によれば、車両がオフセット衝突をした場合、バンパビームの車幅方向両端には傾斜部が設けられているため、クラッシュカンには、バンパビームの傾斜部を介して、傾斜部と直交する方向の成分を有する衝突荷重が入力される。
【0011】
このクラッシュカンは、車両前後方向に対してバンパビームの傾斜部と直交する方向側に傾斜している。このため、オフセット衝突による衝突荷重がバンパビームの傾斜部を介してクラッシュカンに入力されたとき、クラッシュカンに入力される衝突荷重はクラッシュカンの軸方向の荷重成分が大きくなる。これにより、オフセット衝突の衝突荷重によってクラッシュカンが車幅方向内側に折り曲げられることが抑制され、クラッシュカンが潰れ変形しやすくなっている。
【0012】
しかし、クラッシュカンの軸方向をバンパビームの傾斜部に直交する方向に近づくように傾斜させただけでは、クラッシュカンの軸方向への荷重入力をみると、クラッシュカンの車幅方向外側への荷重入力が、車幅方向内側への荷重入力よりも大きい。そのため、クラッシュカンの車幅方向外側は軸方向に塑性歪みしやすくなって衝突エネルギーの吸収に働くものの、車幅方向内側は上記塑性歪みを生じにくい。そこで、クラッシュカンの車幅方向内側に脆弱部を設けて、車幅方向内側も車幅方向外側と同様に塑性歪みを生じるようにして、衝突エネルギーの吸収性を高めた。
【0013】
次に、フルラップ衝突をした場合、バンパビームには車両前方から衝突荷重が入力される。この衝突荷重は、バンパビームを介してクラッシュカンに入力される。クラッシュカンは、上述のように、オフセット衝突の場合での衝突エネルギーの吸収を考慮して傾斜させてある。このため、クラッシュカンはその傾斜により、フルラップ衝突時には根本から外倒れしやすくなる。そこで、クラッシュカンの内側に脆弱部を設けて、外側面の側よりも内側面の側において塑性歪みが生じやすくすることで、クラッシュカンの外倒れを抑制し、フルラップ衝突時にクラッシュカンが潰れ変形するようにすることで、衝突エネルギーの吸収性を高めた。
【0014】
上述のようにして、バンパビームへ入力された衝突荷重のエネルギーがオフセット衝突、フルラップ衝突に関わらずクラッシュカンによって効率よく吸収されるようになっている。
【0015】
一実施形態では、前記クラッシュカン夫々の後端部における断面の輪郭と、前記フロントサイドフレーム夫々の前端部における断面の輪郭と、が略同一形状であることを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、クラッシュカンの後端部をフロントサイドフレームの前端部によって強固に支持することができる。このため、衝突荷重によってクラッシュカンが座屈などの意図しない方向に変位することが抑制され、クラッシュカンが潰れ変形しやすくなる。
【0017】
一実施形態では、前記クラッシュカン夫々は、
車幅方向内側に面する側面部と、
車両上方に面する上面部と、
車両下方に面する下面部と、を有し、
前記脆弱部は、前記側面部と前記上面部及び前記下面部とがなす稜線部の少なくとも一方を切り欠く稜線ノッチによって形成されていることを特徴とする。
【0018】
このようにすれば、側面部と上面部とのなす稜線部及び側面部と下面部とのなす稜線部
の少なくとも一方にノッチを形成するという簡単な方法によって、クラッシュカン夫々に脆弱部を形成することができる。
【0019】
一実施形態では、前記クラッシュカン夫々の内部には、車両前後方向に延びる水平リブが形成され、
前記脆弱部は、前記クラッシュカンの車幅方向内側の側面部と前記水平リブとが部分的に切り離し状態になるように車幅方向内側に開口した側面ノッチによって形成されていることを特徴とする車両の前部車体構造
このようにすれば、水平リブによってクラッシュカンの車両前後方向の荷重衝突に対する強度を、衝突エネルギーの吸収に適した強度に設計しやすくなる。一方で、側面ノッチにより車幅方向内側と水平リブとを部分的に切り離すことにより、部分的に荷重衝突に対する強度を低くすることができる。これにより、側面ノッチが脆弱部として機能する。従って、クラッシュカンの車幅方向内側に開口を形成するという簡単な方法によって、クラッシュカン夫々に脆弱部を形成することができる。
【0020】
一実施形態では、前記フロントサイドフレーム夫々の車両前後方向の中間部にはサスペンションハウジングが結合されており、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側には、前記サスペンションハウジングよりも車両前方に、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした外側脆弱部が設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側には、前記サスペンションハウジングよりも車両前方に、車両前方からの衝突荷重に対して強度を低くした内側脆弱部が設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の前記外側脆弱部は前記内側脆弱部よりも強度が高いことを特徴とする。
【0021】
車両がオフセット衝突したときには、バンパビームの傾斜部と直交する方向の衝突荷重がクラッシュカンに入力される。これにより、クラッシュカンに車幅方向内側に曲げる力が加わり、フロントサイドフレームにも車幅方向内側に曲げる力が加わる。
【0022】
フロントサイドフレームが曲げ変形するとき、フロントサイドフレームの車幅方向外側が引張側、車幅方向内側が圧縮側なる。このため、フロントサイドフレームの外側脆弱部の強度を内側脆弱部よりも高くする、すなわち、フロントサイドフレームの引張側の強度を圧縮側の強度よりも高くすることにより、このモーメントによるフロントサイドフレームの曲げ変形を抑制している。
【0023】
また、フロントサイドフレームの車幅方向外側の強度を車幅方向内側の強度よりも高くするだけなら、フロントサイドフレームには内側脆弱部を設けるだけでもよい。しかし、フロントサイドフレームのサスペンションハウジングよりも車両前方側に外側脆弱部も設けることで、フロントサイドフレームは、車両後方側の強度が車両前方側の強度よりも高くなっている。このため、フロントサイドフレームに車両の衝突による衝突荷重が入力されたときに、フロントサイドフレームは車両前方から順次車両後方に向けて潰れ変形するようになる。
【0024】
一実施形態では、前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向両側面には車両前後方向に延びる前後方向凹凸ビードが設けられ、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側に設けられた前記前後方向凹凸ビードには、そのビード幅を部分的に大きくしてなる前記外側脆弱部としての外側ビード幅拡大部が形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側に設けられた前記前後方向凹凸ビードには、そのビード幅を部分的に大きくしてなる前記内側脆弱部としての内側ビード幅拡大部が形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の前記外側ビード幅拡大部は、前記内側ビード幅拡大部よりもビード幅が小さいことを特徴とする。
【0025】
このようにすれば、フロントサイドフレーム夫々に前後方向凹凸ビードを設けることで、フロントサイドフレームを荷重衝突に対する強度を、衝突エネルギーの吸収に適した強度に設計しやすくなる。また、前後方向凹凸ビードの形状の上下方向の寸法を部分的に大きくするという簡単な加工によって、サイドフレームに外側ビード幅拡大部及び内側ビード幅拡大部を形成することができる。さらに、外側ビード幅拡大部夫々の上下寸法を内側ビード幅拡大部夫々よりも小さくするという簡単な加工により、外側ビード幅拡大部夫々の強度を内側ビード幅拡大部夫々の強度よりも高くすることができる。
【0026】
一実施形態では、前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側面には、前記外側脆弱部としての上下方向に延びる上下方向凹凸ビードが形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向内側面には、前記内側脆弱部としての上下方向に延びる上下方向凹凸ビードが形成され、
前記フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側面の前記上下方向凹凸ビードは、車幅方向内側面の前記上下方向凹凸ビードよりも上下方向の寸法が小さいことを特徴とする。
【0027】
このようにすれば、外側脆弱部及び内側脆弱部を、サイドフレームに上下に延びるビードを形成するという簡単な加工により形成することができる。また、フロントサイドフレーム夫々の車幅方向外側面の上下方向凹凸ビードを、車幅方向内側面の上下方向凹凸ビード法よりも上下方向の寸法を小さくするという簡単な加工により、車幅方向外側面の上下方向凹凸ビードの強度を車幅方向内側面の上下方向凹凸ビードの強度よりも高くすることができる。
【0028】
一実施形態では、前記クラッシュカン夫々には、前記水平リブと前記上面部又は前記下面部とを連結する車両前後方向に延びる縦リブが形成され、
前記クラッシュカン夫々の前記上面部又は前記下面部と前記縦リブとが部分的に切り離し状態になるように、前記上面部又は前記下面部に開口したノッチが形成され、
前記上面部又は前記下面部に開口した前記ノッチは、前記脆弱部よりも車両前方に形成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、クラッシュカン夫々には、応力が集中しやすい下面ノッチ及び上面ノッチと脆弱部とが形成されている。車両がオフセット衝突した際には、バンパビームの傾斜部の一方側からクラッシュカンに衝突荷重が入力される。脆弱部よりも上面ノッチ及び下面ノッチは脆弱部よりも車両前方に形成されているため、まず上面ノッチ及び下面ノッチに衝突荷重が伝達し応力が集中する。これにより、まず上面ノッチ及び下面ノッチが潰れ変形する。その後、上面ノッチ及び下面ノッチに伝達された衝突荷重は、応力が集中しやすい脆弱部に伝達される。これにより、脆弱部が潰れ変形する。
【0030】
このように、クラッシュカンに上面ノッチ及び下面ノッチが形成されることにより、オフセット衝突による衝突荷重が、上面ノッチ及び下面ノッチの潰れ変形を介して脆弱部に伝達されるようになっている。これにより、脆弱部の潰れ変形が促進され、クラッシュカンによる衝突荷重のエネルギーの吸収が促進される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、フルラップ衝突による衝突荷重のエネルギー吸収とオフセット衝突による衝突荷重のエネルギー吸収とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、車両の前部車体構造を示す上面図である。
図2図2は、車両の前部車体構造を示す下面図である。
図3図3は、車両の前部車体構造を示す斜視図である。
図4図4は、クラッシュカンの上面図である。
図5図5は、図4のV-V線におけるクラッシュカンの断面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線におけるクラッシュカンの断面図である。
図7図7は、図4のVII―VII線におけるクラッシュカンの断面図である。
図8図8は、図4のVIII-VIII線におけるクラッシュカン及びフロントサイドフレームの断面図である。
図9図9は、図4図11及び図12のIX-IX線における断面図である。
図10図10は、図9の概略図である。
図11図11は、フロントサイドフレームの側面図である。
図12図12は、フロントサイドフレームの側面図である。
図13図13は、オフセット衝突により潰れたクラッシュカンを示す図である。
図14図10は、実施例及び比較例のSS線図である。
図15図15は、実施形態2に係る図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0034】
(実施形態1)
図1図3には、本発明の実施形態に係る車両の前部車体構造が示されている。この車両の前部は、フロントサイドフレーム1とクラッシュカン5とバンパビーム7とを備えている。フロントサイドフレーム1及びクラッシュカン5は車幅方向両側に夫々設けられている。クラッシュカン5夫々は、フロントサイドフレーム1夫々の前端部に取り付けられている。クラッシュカン5夫々の前端部は、バンパビーム7に連結されている。
【0035】
この車両の前部の車幅方向両側には、前後方向に延びるフロントサイドフレーム1が設けられている。このフロントサイドフレーム1夫々は、車両を駆動するためのエンジン(図示せず)及びトランスミッション(図示せず)を設けるためのエンジンルーム4の車幅方向両側の端部に設けられている。フロントサイドフレーム1夫々よりも上側(図1で紙面手前側)且つ、車幅方向外側には、略車両前後方向に延びるエプロンメンバ3が設けられている。エプロンメンバ3の前端部同士はシュラウドアッパメンバ31により連結されている。
【0036】
このフロントサイドフレーム1夫々の後端部は、車両後方に向かって延び且つ下側に傾斜するように形成されている。このフロントサイドフレーム1夫々の後端部と略同じ車両前後位置には、エンジンルーム4と車室とを区画するダッシュパネル41が設けられている。
【0037】
フロントサイドフレーム1夫々の車両前後方向の中間部には、サスペンションハウジング2が結合されている。このサスペンションハウジング2は、フロントサイドフレーム1夫々の車幅方向外側に、車両の前輪(図示せず)が配置されるホイールハウスを形成する。車幅方向両側に設けられたサスペンションハウジング2は、その下端部がフロントサイドフレーム1夫々に結合され、その上端部がエプロンメンバ3に結合されている
フロントサイドフレーム1夫々の、サスペンションハウジング2よりも前側部分は、車体中心線と並行に車両前後方向に延びている。このフロントサイドフレーム1夫々の先端部には、フレーム側セットプレートが固定されている。フレーム側セットプレート12には、クラッシュカン5の後端部に設けられたクラッシュカン側セットプレート50が締結されている。これにより、クラッシュカン5は、フロントサイドフレーム1の前端部に設けられる。このクラッシュカン5は、車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜している。
クラッシュカン5夫々は、車両前方に向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜している。
【0038】
クラッシュカン5夫々の後端部における上下方向の寸法と、フロントサイドフレーム1夫々の前端部における上下方向の寸法とが略同じになっている。また、クラッシュカン5夫々の後端部における車幅方向の寸法と、フロントサイドフレーム1夫々の前端部における車幅方向の寸法とが略同じになっている。このため、クラッシュカン側セットプレート50とフレーム側セットプレート12とを挟んで、クラッシュカン5夫々の後端部の輪郭と、フロントサイドフレーム1の前端部の輪郭とが略同一形状になっている。
【0039】
これらのクラッシュカン5の前方には、車幅方向に延びるバンパビーム7が設けられている。このバンパビーム7の車幅方向両端部には、車幅方向外側に延び且つ車両後方に向かって傾斜する傾斜部71が設けられている。この車幅方向両端部に設けられた傾斜部71夫々には、上述のクラッシュカン5夫々の前端部が連結されている。このクラッシュカン5夫々の車両前後方向に対する傾斜角度は、バンパビーム7の傾斜部71と直交する方向の車両前後方向に対する傾斜角度よりも小さくなっている。
【0040】
<クラッシュカンの構成>
車幅方向両側に設けられたクラッシュカン5夫々は左右対称の構造になっている。このため、車幅方向右側(図1で右側)のクラッシュカン5の構造について詳細に説明する。図5図7に示すように、クラッシュカン5は、その断面が上下方向に長い矩形状になっている。クラッシュカン5は、車幅方向内側に面する側面部としての内側面部51と、車幅方向外側に面する外側面部52と、車両上方に面する上面部53と、車両下方に面する下面部54と、を有している。クラッシュカンは、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金等の材料を押し出すことによって形成された押出形成部材である。
【0041】
図5に示すように、このクラッシュカン5の内部には、内側面部51から外側面部52に亘って水平方向(図5で左右方向)に延びる2つの水平リブ55が上下方向(図5で上下方向)に間隔をあけて形成されている。この水平リブ55は、図8に示すように、クラッシュカン5の前端部から後端部まで車両前後方向(図8で左右方向)に延びるように形成されている。これらの水平リブ55は、クラッシュカン5の上面部53及び下面部54と略平行に形成されている。
【0042】
図5に示すように、上側に位置する水平リブ55の車幅方向(図5で左右方向)における略中央部には、水平リブ55とクラッシュカン5の上面部53とを連結する上下方向に延びる縦リブ56が設けられている。また、図5で下側に位置する水平リブ55の車幅方向中央部には、水平リブ55とクラッシュカン5の下面部54とを連結する上下方向に延びる縦リブ56が設けられている。これらの縦リブ56は、図8に示すように、クラッシュカン5の前端部から後端部まで車両前後方向に延びるように形成されている。これらの縦リブ56は、クラッシュカン5の内側面部51及び外側面部52と略並行に形成されている。
【0043】
図4に示すように、クラッシュカン5には、内側面部51と上面部53とがなす稜線部を切り欠いた稜線ノッチ60が3つ車両前後方向(図4で左右方向)に間隔をあけて形成されている。この稜線ノッチ60を通過する断面図が、図6に示されている。
【0044】
図6に示すように、クラッシュカン5には、内側面部51と上面部53とがなす稜線部を切り欠いた稜線ノッチ60が形成されている。また、クラッシュカン5には、内側面部51と下面部54とがなす稜線部を切り欠いた稜線ノッチ60が形成されている。クラッシュカン5の稜線ノッチ60が形成された箇所が、車両前方からの衝突荷重に対する強度が低くなる脆弱部となっている。
【0045】
また、図6に示すように、クラッシュカン5の内側面部51には、内側面部51と水平リブ55とが部分的に切り離し状態になるように、内側面部51に開口した側面ノッチ61が形成されている。クラッシュカン5の側面ノッチ61が形成された箇所は、バンパビーム7へ入力される衝突荷重に対する強度が低くなる脆弱部となっている。
【0046】
このように、脆弱部としての稜線ノッチ60及び側面ノッチ61は、クラッシュカン5の車幅方向内側に設けられている。このため、クラッシュカン5の車両前方からの衝突荷重に対する強度は、車幅方向外側よりも車幅方向内側が低くなる。
【0047】
本実施形態においては、図4及び図6に示すように、稜線ノッチ60と側面ノッチ61とは、クラッシュカン5の後端部からの距離が略同一となるように形成されている。しかし、稜線ノッチ60と側面ノッチ61とは、クラッシュカン5の後端部からの距離が夫々異なるように形成されていても構わない。
【0048】
図4に示すように、クラッシュカン5の上面部53の上述の稜線ノッチ60よりも車両前方側には、上面部53に開口した上面ノッチ62が形成されている。この上面ノッチ62を通過する断面図が、図7に示されている。
【0049】
図7に示すように、クラッシュカン5の上面部53には、上側(図7で上側)の縦リブ56と上面部53とが部分的に切り離し状態になるように、上面ノッチ62が設けられている。また、クラッシュカン5の下面部54には、下側(図7で下側)の縦リブ56と下面部54とが部分的に切り離し状態になるように、下面ノッチ63が設けられている。
【0050】
<フロントサイドフレームの構成>
車幅方向両側に設けられたフロントサイドフレーム1夫々は左右対称の構造になっている。このため、車幅方向右側(図1で右側)のフロントサイドフレーム1の構造について詳細に説明する。図9及び図10に示すように、このフロントサイドフレーム1は、車幅方向外側に配置されるアウタパネル13と車幅方向内側に配置されるインナパネル14とを接合することによって構成されている。アウタパネル13及びインナパネル14は、例えば鋼板等をプレス形成したものである。アウタパネル13の上部及び下部には接合用のアウタフランジ131が形成されている。また、インナパネル14の上部及び下部には接合用のインナフランジ141が形成されている。これらのアウタフランジ131夫々とインナフランジ141夫々とがスポット溶接等により接合されている。アウタパネル13とインナパネル14との接合位置は、フロントサイドフレーム1の車幅方向中央部よりも内側である。
【0051】
図11はフロントサイドフレーム1を車幅方向外側から見た図である。図11に示すように、フロントサイドフレーム1のアウタパネル13には、車両前後方向(図11で左右方向)に延びる前後方向凹凸ビードとしての外側前後凹凸ビード132が設けられている。外側前後凹凸ビード132のサスペンションハウジング2よりも車両前方側(図11で右側)には、そのビード幅を部分的に大きくした外側ビード幅拡大部133が形成されている。フロントサイドフレーム1の外側ビード幅拡大部133が設けられた箇所は、車両前方からの衝突荷重に対して強度が低くなる外側脆弱部となっている。
【0052】
図12はフロントサイドフレーム1を車幅方向内側から見た図である。図12に示すように、フロントサイドフレーム1のインナパネル14には、車両前後方向(図12で左右方向)に延びる前後方向凹凸ビードとしての内側前後凹凸ビード142が設けられている。内側前後凹凸ビード142のサスペンションハウジング2よりも車両前方側(図12で左側)には、そのビード幅を部分的に大きくした内側ビード幅拡大部143が形成されている。フロントサイドフレーム1の内側ビード幅拡大部143がもうけられた箇所は、車両前方からの衝突荷重に対して強度が低くなる内側脆弱部となっている。
【0053】
図9は、上述の外側ビード幅拡大部133及び内側ビード幅拡大部143を通るフロントサイドフレーム1の断面を示す。図9に示す断面の輪郭形状を示したものが図10である。図10に示すように、外側ビード幅拡大部133の上下寸法は、内側ビード幅拡大部143の上下寸法よりも小さくなっている。このため、外側ビード幅拡大部133は、内側ビード幅拡大部143よりも、車両前方からの衝突荷重に対する強度が高くなる。
【0054】
<オフセット衝突時の作用効果>
まず、オフセット衝突時の作用・効果について説明する。本発明に係る車両がオフセット衝突をしたとき、この衝突荷重は、フロントバンパ等を介してバンパビーム7に入力される。バンパビーム7の車幅方向外側の端部には傾斜部71が設けられている。この傾斜部71を介してクラッシュカン5には、オフセット衝突の衝突荷重が入力される。このため、クラッシュカン5には、バンパビーム7の傾斜部71と直交する方向の成分を有する衝突荷重が入力されることになる。
【0055】
クラッシュカン5は、オフセット衝突の衝突荷重により、バンパビーム7の傾斜部71とフロントサイドフレーム1との間で圧縮力を受ける。このクラッシュカン5は、車両前方へ向かって延び且つ車幅方向外側に傾斜している。換言すれば、クラッシュカン5の軸方向が、車両前後方向に対してバンパビーム7の傾斜部71と直交する方向側に傾斜している。このため、クラッシュカン5に傾斜部71と直交する方向の衝突荷重が入力されたとき、クラッシュカン5に入力される衝突荷重は、クラッシュカンの軸方向の荷重成分が大きくなる。これにより、オフセット衝突の衝突荷重によってクラッシュカン5が根元から内側に折り曲げられることが抑制され、クラッシュカン5は軸方向(長手方向)に潰れ変形しやすくなる。
【0056】
オフセット衝突の衝突荷重により潰れ変形し始めたクラッシュカン5が図13である。クラッシュカン5には、応力が集中しやすい上面ノッチ62及び下面ノッチ63と、車幅方向内側の稜線ノッチ60及び側面ノッチ61とが設けられている。上面ノッチ及び下面ノッチ63は、稜線ノッチ60及び側面ノッチ61よりも車両前方側且つ車幅方向外側に形成されている。このため、オフセット衝突による衝突荷重は、まず上面ノッチ62及び下面ノッチ63に伝達され、応力が上面ノッチ62及び下面ノッチ63に集中する。そして、上面ノッチ62及び下面ノッチ63が潰れ変形する。その後、上面ノッチ62及び下面ノッチ63に伝達された衝突荷重は、応力が集中しやすい車幅方向内側の稜線ノッチ60及び側面ノッチ61に伝達される。これにより、稜線ノッチ60及び側面ノッチ61には応力が集中し、稜線ノッチ60及び側面ノッチ61が潰れ変形する。
【0057】
このように、クラッシュカン5に上面ノッチ62及び下面ノッチ63が設けられていることにより、バンパビーム7にオフセット衝突の衝突荷重が入力されたとき、稜線ノッチ60及び側面ノッチ61に応力が集中する。これにより、クラッシュカン5の後端部(付け根部分)に応力が集中することが抑制される。このため、クラッシュカン5が座屈等の意図しない方向に変位することが抑制され、クラッシュカン5が潰れ変形しやすくなる。
【0058】
また、クラッシュカン5の後端部の輪郭形状と、フロントサイドフレーム1の前端部の輪郭形状とが略同一になっている。このため、バンパビーム7の傾斜部71を介してクラッシュカン5にオフセット衝突の衝突荷重が入力した際には、クラッシュカン5の後端部をフロントサイドフレーム1の前端部によって強固に支持することが可能となる。このため、衝突荷重によってクラッシュカン5が座屈等の意図しない方向に変位することが抑制され、クラッシュカン5が潰れ変形しやすくなる。
【0059】
クラッシュカン5の軸方向への荷重入力をみると、クラッシュカン5の外側面部52への荷重入力が、内側面部51への荷重入力よりも大きい。そのため、外側面部52は軸方向に塑性歪みしやすくなって衝突エネルギーの吸入に働くものの、内側面部51は上記塑性歪みを生じにくい。そこで、内側面部51に脆弱部としての稜線ノッチ60及び側面ノッチ61を設けて、内側面部51も外側面部52と同様に塑性歪みを生じるようにして、衝突エネルギーの吸収性を高めた。
【0060】
また、このオフセット衝突の衝突荷重によりクラッシュカン5には、車幅方向内側に曲げる力が加わる。そして、クラッシュカン5を介してフロントサイドフレーム1にも車幅方向内側に曲げる力が加わる。
【0061】
この車幅方向内側に曲げる力によってフロントサイドフレームが曲げ変形するとき、フロントサイドフレームの車幅方向外側が引張側、車幅方向内側が圧縮側になる。このため、フロントサイドフレーム1の外側ビード幅拡大部133のビード幅よりも内側ビード幅拡大部143のビード幅を広くすることで、フロントサイドフレーム1の車幅方向外側の強度を車幅方向内側の強度よりも強くし、このモーメントによるフロントサイドフレーム1の曲げ変形を抑制している。
【0062】
このように、フロントサイドフレーム1がオフセット衝突の衝突荷重の入力によって曲げ変形することなく、クラッシュカン5の後端部がフロントサイドフレーム1の前端部によって強固に支持されている。このため、オフセット衝突の衝突荷重によってクラッシュカン5が座屈等の意図しない方向に変位することが抑制され、クラッシュカン5が潰れ変形しやすくなる。
【0063】
また、フロントサイドフレーム1の車幅方向外側の強度を車幅方向内側の強度よりも高くするだけなら、内側ビード幅拡大部143のみを設け、外側ビード幅拡大部133を設けなくてもよい。しかし、フロントサイドフレーム1に外側ビード幅拡大部133を設けることで、フロントサイドフレーム1は、車両後方側の強度が車両前方側の強度よりも高くなる。このため、フロントサイドフレーム1に車両の衝突による衝突荷重が入力されたとき、フロントサイドフレーム1が車両前方から順次車両後方に向けて潰れ変形するようになっている。
【0064】
上述のように、クラッシュカン5が、バンパビーム7とフロントサイドフレーム1との間で座屈等することなく潰れ変形するため、オフセット衝突の衝突荷重に対してエネルギー吸収性能が発揮される。
【0065】
<フルラップ衝突時の作用効果>
次に、フルラップ衝突時の作用効果について説明する。本発明に係る車両がフルラップ衝突をしたとき、車両には前方からの衝突荷重が入力される。この衝突荷重は、フロントバンパ等(図示せず)を介してバンパビーム7に入力される。バンパビーム7に入力された衝突荷重により、車幅方向両側のクラッシュカン5夫々には圧縮力が作用する。
【0066】
クラッシュカン5夫々は、フロントサイドフレーム1夫々に取り付けられている。このため、クラッシュカン5夫々は、バンパビーム7とフロントサイドフレーム1との間で圧縮力を受ける。
【0067】
クラッシュカン5は、上述のように、オフセット衝突の場合での衝突エネルギーの吸収を考慮して傾斜させてある。このため、クラッシュカン5はその傾斜により、フルラップ衝自には根本から外倒れしやすくなる。そこで、クラッシュカン5の内側面部51に脆弱部としての稜線ノッチ60及び側面ノッチ61が形成されている。このため上述の圧縮力が作用したときには、クラッシュカン5は、稜線ノッチ60及び側面ノッチ61に応力が集中する。これにより、クラッシュカン5は外側面部52の側よりも内側面部51の側において塑性歪み変形しやすくなる。こうすることで、フルラップ衝突時におけるクラッシュカンの外倒れを抑制し、クラッシュカン5が潰れ変形するようにすることで、衝突エネルギーの吸収性が高まる。
【0068】
また、クラッシュカン5夫々の後端部の輪郭形状と、フロントサイドフレーム1夫々の前端部の輪郭形状とが略同一になっている。このため、バンパビーム7を介してクラッシュカン5に衝突荷重が入力した際には、クラッシュカン5の後端部をフロントサイドフレーム1の前端部によって強固に支持することが可能となる。このため、衝突荷重によってクラッシュカン5が座屈等の意図しない方向に変位することが抑制され、クラッシュカン5が潰れ変形しやすくなる。
【0069】
このように、クラッシュカン5が、バンパビーム7とフロントサイドフレーム1との間で座屈等することなく潰れ変形するため、フルラップ衝突の衝突荷重に対してエネルギー吸収性能が発揮される。
【0070】
また、フロントサイドフレーム1には外側ビード幅拡大部133及び内側ビード幅拡大部143が設けられている。これにより、フロントサイドフレーム1は、車両後方側の強度が車両前方側の強度よりも高くなる。このため、フロントサイドフレーム1に車両の衝突による衝突荷重が入力されたとき、フロントサイドフレーム1が車両前方から順次車両後方に向けて潰れ変形するようになっている。
【0071】
<実施形態と比較例>
図14は、本発明の実施形態に係る実施例としてのクラッシュカン5、比較例1としてのストレートクラッシュカン及び比較例2としての傾斜クラッシュカンのFS線図を示す。このFS線図は、オフセット衝突によるクラッシュカンの座屈荷重と、その衝突荷重により潰れたクラッシュカンの潰れ量とを示すものである。このFS線図の縦軸は、オフセット衝突によるクラッシュカンの座屈荷重(kN)である。このFS線図の良く軸は、クラッシュカンの潰れ量(mm)である。このグラフにより、各クラッシュカンの特性が示されている。各グラフと縦軸と横軸とに囲まれた領域の面積が、各クラッシュカンがオフセット衝突時に吸収するエネルギーの総量になる。
【0072】
比較例1は、フロントサイドフレームの前端部から車両前方へ延びる従来のストレートクラッシュカンである。比較例1のストレートクラッシュカンには、脆弱部は設けられていない。
【0073】
比較例2は、フロントサイドフレームの前端部からから車両前方へ延び且つ車幅方向外側に傾斜する傾斜クラッシュカンである。比較例2の傾斜クラッシュカンには、比較例1と同様に脆弱部は設けられていない。
【0074】
実施例は、フロントサイドフレームの前端部からから車両前方へ延び且つ車幅方向外側に傾斜する傾斜クラッシュカンである。また、バンパビームへ入力される衝突荷重に対して強度を低くした内側脆弱部が形成されている。
【0075】
図14に示すように、比較例1の場合、オフセット衝突によってクラッシュカンがその付け根から早々に内側に倒れる(座屈する)ため、荷重の立上りが低く、潰れ量も小さい。比較例2のように、クラッシュカンを傾斜させると、衝突荷重の入力方向がクラッシュカンの軸方向に近づくため、荷重レベルが高くなり、荷重持続も改善される。しかし、クラッシュカンへの軸方向の荷重入力をみると、車幅方向外側の稜線の方の入力が内側稜線の方よりも大きいので、クラッシュカンが内側に倒れる挙動をとりやすい。そのため、荷重持続があまり伸びない。
【0076】
これに対して、実施例の場合、内側脆弱部によって、クラッシュカンに対する車幅方向の内側と外側の荷重入力差が低減し、内側の稜線と外側の稜線が同様の変形挙動を示すようになる。その結果、荷重持続(潰れ量)が伸びることになり、全体的な衝突エネルギー吸収量を大幅に改善することができる。
【0077】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳しく説明する。尚、以下の説明において上述の実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施形態2では、車幅方向両側に設けられたフロントサイドフレーム1に形成された外側脆弱部及び内側脆弱部の形状が異なる。具体的には、実施形態2では、図15に示すように、フロントサイドフレーム1の車幅方向外側面に、外側脆弱部として上下に延びる外側上下方向凹凸ビード134が形成されている。また、フロントサイドフレーム1の車幅方向内側面に、内側脆弱部として上下に延びる内側上下方向凹凸ビード144が形成されている。この外側上下方向凹凸ビード134の上下寸法は、内側上下方向凹凸ビード144の上下寸法よりも小さくなっている。これにより、外側上下方向凹凸ビード134の強度が内側上下方向凹凸ビード144の強度よりも高くなっている。
【0079】
このようにすれば、外側脆弱部及び内側脆弱部を、フロントサイドフレーム1に上下に延びる凹凸ビードを設けるという簡単な加工により形成することができる。また、外側上下方向凹凸ビード134の上下寸法を内側上下方向凹凸ビード144の上下寸法よりも小さくするという簡単な加工により、外側上下方向凹凸ビード134の強度を内側上下方向凹凸ビード144の強度よりも高くすることができる。
【0080】
尚、実施形態2において外側脆弱部及び内側脆弱部以外の構成は実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0081】
1 フロントサイドフレーム
2 サスペンションハウジング
5 クラッシュカン
7 バンパビーム
60 稜線ノッチ
61 側面ノッチ
62 上面ノッチ
63 下面ノッチ
71 傾斜部
132 外側前後凹凸ビード
133 外側ビード幅拡大部
134 外側上下方向凹凸ビード
142 内側前後凹凸ビード
143 内側ビード幅拡大部
144 内側上下方向凹凸ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15