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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018268
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121258
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悟己
(72)【発明者】
【氏名】大井 光
(72)【発明者】
【氏名】神徳 智広
(72)【発明者】
【氏名】木村 奏仁
(72)【発明者】
【氏名】山岸 雅治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和廣
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM08
5E087MM12
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】嵌合部間への液体の流入量を減少させること。
【解決手段】相手方嵌合部521に挿入嵌合させる嵌合部21が設けられたハウジング20と、相手方壁体502の壁面502aに間隔を空けて対向配置させるシェルフランジ部32を有するシールドシェル30と、嵌合部と相手方嵌合部との間の第1止水部材42と、シェルフランジ部と相手方壁体の壁面との間で押し潰される第2止水部材43と、を備え、ハウジングは、その間で外周面24aがシェルフランジ部の外周縁よりも内側で且つ内周縁よりも外側に配置され、環状の当接面24bを相手方壁体の壁面に当接させるハウジングフランジ部24を有し、第2止水部材は、ハウジングフランジ部の外周面に対向配置される内周面43aと、ハウジングフランジ部の当接面よりも挿入方向側に突出させ、嵌合状態のときに相手方壁体の壁面から押圧力を受ける環状の被押圧面43bと、を有すること。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に取り付けられた端子金具と、
前記端子金具を内方に収容させ、かつ、相手方壁体の孔状の相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させる嵌合部が設けられたハウジングと、
前記相手方嵌合部に対する前記嵌合部の挿入方向とは逆側での前記ハウジングにおける前記相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆う筒部、及び、前記筒部の外周面よりも外方に突出させ、かつ、前記相手方壁体の壁面に間隔を空けて対向配置させるシェルフランジ部を有するシールドシェルと、
前記嵌合部の外周壁面に取り付けられ、前記嵌合部を前記相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させた嵌合状態で、前記嵌合部と前記相手方嵌合部との間の筒状の隙間を塞ぐ環状の第1止水部材と、
前記嵌合状態のときに前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間で押し潰される環状の第2止水部材と、
を備え、
前記ハウジングは、前記嵌合状態のときに前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間に介在させ、外周面が前記シェルフランジ部の外周縁よりも内側で且つ前記シェルフランジ部の内周縁よりも外側に配置されるハウジングフランジ部を有し、
前記ハウジングフランジ部は、前記嵌合状態のときに前記相手方壁体の前記壁面に当接させる環状の当接面を有し、
前記第2止水部材は、前記ハウジングフランジ部の外側に配置されており、かつ、前記ハウジングフランジ部の前記外周面に対向配置される内周面と、前記ハウジングフランジ部の前記当接面よりも前記挿入方向側に突出させ、前記嵌合状態のときに前記相手方壁体の前記壁面から押圧力を受ける環状の被押圧面と、を有することを特徴としたコネクタ。
【請求項2】
前記第2止水部材における前記ハウジングフランジ部の前記当接面からの突出量は、前記シールドシェルと前記相手方壁体との間の前記挿入方向における相対移動量の最大値及び前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間の前記挿入方向における隙間の累積公差の総和よりも大きくすることを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シールドシェルは、前記シェルフランジ部の前記外周縁側の端部から折り曲げられ、前記相手方壁体の端面に固定される被固定部を有することを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2止水部材は、前記シェルフランジ部に取り付けることを特徴とした請求項1,2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第2止水部材は、エチレンプロピレンジエンゴムから成ることを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとしては、相手方壁体に設けられた孔状の相手方嵌合部に嵌合部が挿入嵌合されるハウジングと、このハウジングにおける相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆うシールドシェルと、を備えたシールドコネクタが知られている。このコネクタにおいては、シールドシェルが相手方壁体に固定される。例えば、そのシールドシェルとしては、ハウジングの突出部分を外方から覆う筒部と、相手方壁体の壁面に対向配置させるフランジ部と、このフランジ部の端部から折り曲げられ、相手方壁体の端面に固定される被固定部と、を有するものが知られている。この種のコネクタについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-71982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、そのような従来のコネクタにおいては、シールドシェルのフランジ部と相手方壁体の壁面との間に水等の液体が入り込んでしまうと、その間を介して嵌合部と相手方嵌合部との間に液体が伝わり、その液体が端子金具にまで到達してしまう可能性がある。このため、従来のコネクタには、その嵌合部と相手方嵌合部との間の筒状の隙間を塞ぐ環状の止水部材が設けられている。従来のコネクタは、その止水部材によって、嵌合部と相手方嵌合部との間に入り込んできた液体の端子金具側への流出を抑えている。しかしながら、コネクタにおいては、嵌合部と相手方嵌合部との間での液密性を考えるのであれば、その間に入り込む液体の流入量を減少させることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、嵌合部間への液体の流入量を減少させることが可能なコネクタを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、電線の端末に取り付けられた端子金具と、前記端子金具を内方に収容させ、かつ、相手方壁体の孔状の相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させる嵌合部が設けられたハウジングと、前記相手方嵌合部に対する前記嵌合部の挿入方向とは逆側での前記ハウジングにおける前記相手方嵌合部からの突出部分を外方から覆う筒部、及び、前記筒部の外周面よりも外方に突出させ、かつ、前記相手方壁体の壁面に間隔を空けて対向配置させるシェルフランジ部を有するシールドシェルと、前記嵌合部の外周壁面に取り付けられ、前記嵌合部を前記相手方嵌合部の内方に挿入嵌合させた嵌合状態で、前記嵌合部と前記相手方嵌合部との間の筒状の隙間を塞ぐ環状の第1止水部材と、前記嵌合状態のときに前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間で押し潰される環状の第2止水部材と、を備える。そして、前記ハウジングは、前記嵌合状態のときに前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間に介在させ、外周面が前記シェルフランジ部の外周縁よりも内側で且つ前記シェルフランジ部の内周縁よりも外側に配置されるハウジングフランジ部を有し、前記ハウジングフランジ部は、前記嵌合状態のときに前記相手方壁体の前記壁面に当接させる環状の当接面を有し、前記第2止水部材は、前記ハウジングフランジ部の外側に配置されており、かつ、前記ハウジングフランジ部の前記外周面に対向配置される内周面と、前記ハウジングフランジ部の前記当接面よりも前記挿入方向側に突出させ、前記嵌合状態のときに前記相手方壁体の前記壁面から押圧力を受ける環状の被押圧面と、を有することを特徴としている。
【0007】
ここで、前記第2止水部材における前記ハウジングフランジ部の前記当接面からの突出量は、前記シールドシェルと前記相手方壁体との間の前記挿入方向における相対移動量の最大値及び前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間の前記挿入方向における隙間の累積公差の総和よりも大きくすることが望ましい。
【0008】
また、前記第2止水部材は、前記シェルフランジ部に取り付けることが望ましい。
【0009】
また、前記第2止水部材における前記ハウジングフランジ部の前記当接面からの突出量は、前記シェルフランジ部と前記相手方壁体の前記壁面との間の前記挿入方向における隙間の累積公差よりも大きくすることが望ましい。
【0010】
また、前記第2止水部材は、エチレンプロピレンジエンゴムから成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコネクタにおいては、嵌合部を相手方嵌合部に挿入嵌合していくことによって、第2止水部材の被押圧面が相手方壁体の壁面に当接し、その挿入嵌合を続けることで、その被押圧面に相手方壁体の壁面から押圧力が加えられながら、第2止水部材が押し潰されていく。そして、このコネクタにおいては、その挿入嵌合を更に続けていくことによって、ハウジングフランジ部の当接面が相手方壁体の壁面に当接する。このコネクタにおいては、その当接面が相手方壁体の壁面に当接した際に、嵌合部の挿入嵌合を終えた嵌合状態になり、そこで第2止水部材の潰れが止まる。これにより、このコネクタにおいては、シェルフランジ部と相手方壁体の壁面との間で、第2止水部材が挿抜方向に加圧されたまま挟持されることになるので、その間への外方からの液体の浸入を抑えることができる。従って、本発明に係るコネクタは、シェルフランジ部と相手方壁体の壁面との間に第2止水部材を備えることによって、その間を経て嵌合部と相手方嵌合部との間に入り込む液体の流入量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のコネクタを示す嵌合前の斜視図である。
図2図2は、実施形態のコネクタを示す嵌合後の斜視図である。
図3図3は、図1のX-X線断面図である。
図4図4は、図2のX-X線断面図である。
図5図5は、実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。
図6図6は、ハウジングを示す斜視図である。
図7図7は、第2止水部材が取り付けられたシールドシェルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを図1から図7に基づいて説明する。
【0015】
図1から図5の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、内周壁面521aを有する孔状の相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合されて、相手方端子金具510に電気接続させる(図1及び図2)。コネクタ1は、その孔状の相手方嵌合部521に対して、この相手方嵌合部521の孔軸方向に沿って挿抜させる。相手方嵌合部521は、例えば、孔軸方向に対する直交断面が円形又は長円形を成すものとして形成されている。
【0016】
例えば、このコネクタ1は、相手方機器500の相手方端子金具510に電気接続させることによって、この相手方機器500と電線Weの先の機器(図示略)との間を電気接続させる(図1及び図2)。その相手方機器500は、金属製の筐体501を備えており、この筐体501の壁体(以下、「相手方壁体」という。)502に形成された貫通孔を相手方嵌合部521として利用する。その相手方嵌合部521は、相手方壁体502の平面状の壁面502a(図1から図4)に対する直交方向を孔軸方向とするものであり、その孔軸方向に沿ってコネクタ1を挿抜させる。また、この相手方機器500は、その筐体501の内部に端子台又は相手方コネクタ(図示略)を備えている。相手方端子金具510は、その端子台又は相手方コネクタが備えるものである。よって、コネクタ1は、相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合され、筐体501の内部で端子台又は相手方コネクタの相手方端子金具510に電気接続させる。
【0017】
以下において、特段の言及も無く単に挿入方向と記した場合、その挿入方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の挿入方向のことを示している。また、特段の言及も無く単に抜去方向と記した場合、その抜去方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の抜去方向のことを示している。また、特段の言及も無く単に挿抜方向と記した場合、その挿抜方向は、相手方嵌合部521に対するコネクタ1の挿抜方向のことを示している。
【0018】
このコネクタ1は、端子金具10とハウジング20とシールドシェル30とを備える(図1から図5)。
【0019】
端子金具10は、金属等の導電性材料で成形される。例えば、この端子金具10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。この端子金具10は、電線Weに対して電気接続させるべく、この電線Weの端末に取り付けられる。また、この端子金具10は、相手方端子金具510に電気接続させる。よって、この端子金具10は、相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる端子接続部11と、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続部12と、を有する(図5)。
【0020】
ここで示す端子接続部11は、片体状に形成される(図1から図5)。そして、この端子接続部11には、貫通孔11aが形成されている(図1図2及び図5)。この端子接続部11は、その貫通孔11aを介して相手方端子金具510に例えば螺子止め固定させることによって、この相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる。尚、この端子金具10と相手方端子金具510の接続形態は、必ずしも、そのような螺子止め構造を採らずともよい。例えば、端子金具10と相手方端子金具510は、互いに嵌合接続可能な形状のものであり、その内の一方が雌端子形状に成形され、その内の他方が雄端子形状に成形されたものであってもよい。
【0021】
電線接続部12は、電線Weの端末の芯線に対して、例えば、圧着又は溶着させることによって、この電線Weに対して物理的且つ電気的に接続させる。ここで示す電線接続部12は、2枚のバレル片を剥き出しの芯線に加締め接続させることによって、その芯線に圧着させている。
【0022】
この例示の端子金具10は、その端子接続部11と電線接続部12を直線上に配置したストレート形状のものとして成形されている。よって、電線Weは、その直線に沿う端子金具10の延在方向に電線接続部12から引き出される。但し、この端子金具10は、端子接続部11と電線接続部12を直交配置させるなど、これらを交差させて配置したものであってもよい。
【0023】
ここで示すコネクタ1は、その対になる端子金具10と電線Weの組み合わせを2組備えている。
【0024】
ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング20は、端子金具10と電線Weを内方に収容させる。そして、このハウジング20においては、その端子金具10が収容状態のまま保持され、かつ、その電線Weが内方から外方に引き出される。
【0025】
このハウジング20は、端子金具10を内方に収容させ、かつ、相手方壁体502の孔状の相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させる嵌合部21を有する(図1から図6)。その嵌合部21は、挿入方向に沿って相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させ、これとは逆向きの抜去方向に沿って相手方嵌合部521の内方から抜き取られる。この嵌合部21は、相手方嵌合部521に対する挿抜方向(挿入方向、挿抜方向)を筒軸方向とする筒状に形成される。よって、以下においては、挿抜方向に替えて筒軸方向と記すことがある。ここで示す嵌合部21は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成され、その長円の長手方向に沿って2つの端子金具10を並列に配置させる。また、ここで示す嵌合部21は、その内方で端子接続部11を保持し、この端子接続部11における貫通孔11a側の端部を内方から外方に突出させる。そして、ここで示す嵌合部21は、その内方に、端子接続部11における電線接続部12側と電線接続部12における端子接続部11側を収容させる。この嵌合部21の内方には、隣り合う端子金具10の間に間仕切り壁(図示略)が設けられている。
【0026】
このハウジング20は、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態(以下、「嵌合状態」という。)で、この嵌合部21よりも抜去方向側を相手方嵌合部521から突出させている。このハウジング20は、その抜去方向側での相手方嵌合部521からの突出部分として、電線Weを内方に収容させる筒状の電線収容部22を有する(図1図2図5及び図6)。ここで示す電線収容部22は、円筒状に形成され、かつ、電線We毎に設けられている。それぞれの電線収容部22は、2つの端子金具の配列方向に並べられている。このハウジング20は、嵌合部21とそれぞれの電線収容部22の間に、嵌合部21の筒軸と同軸で、かつ、この嵌合部21の外周壁面21aよりも外側に設けた筒部23を有する(図1及び図3から図6)。ここで示す筒部23は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されており、嵌合部21の外周壁面21aに対して環状の隙間を空けて配置されている。
【0027】
このハウジング20においては、その電線収容部22の開口22aから端子金具10付きの電線Weが挿入されていく(図5)。よって、電線Weは、その開口22aから外方に引き出されている。ここで、この電線収容部22と電線Weとの間には、円環状の隙間が形成される。そこで、このコネクタ1においては、円環状の止水部材(以下、「内側止水部材」という。)41(図5)に電線Weを先通ししておき、電線Weと共に内側止水部材41を電線収容部22に挿入していくことによって、電線収容部22と電線Weとの間の円環状の隙間を塞いでいる。その内側止水部材41とは、所謂ゴム栓のことである。
【0028】
また、このハウジング20は、抜去方向側での相手方嵌合部521からの突出部分として、筒部23とそれぞれの電線収容部22の間に、嵌合部21の筒軸と同軸の環状のフランジ部(以下、「ハウジングフランジ部」という。)24を有する(図1及び図3から図6)。そのハウジングフランジ部24は、嵌合部21の外周壁面21aよりも外側で、かつ、それぞれの電線収容部22の外周壁面22bよりも外側に外周面24aが設けられている(図3図4及び図6)。ここで示すハウジングフランジ部24の外周面24aは、筒部23よりも外側に設けられている。更に、このハウジングフランジ部24は、嵌合状態のときに相手方壁体502の壁面502aに当接させる環状の当接面24bを有する(図1図3図4及び図6)。その当接面24bは、ハウジングフランジ部24における挿入方向側の壁面であり、相手方壁体502の壁面502aにおける相手方嵌合部521の周縁部分に当接させる。
【0029】
コネクタ1は、このハウジング20の嵌合部21の先端(挿入方向側の端部)が内方に挿入されるフロントホルダ51を備える(図1から図5)。このフロントホルダ51は、その嵌合部21等と共に収容された端子金具10のハウジング20における保持状態を維持させるものである。このフロントホルダ51は、挿抜方向を筒軸方向とする筒部51aを有しており、この筒部51aの内方に嵌合部21の先端を挿入させる(図3及び図4)。ここで示す筒部51aは、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されている。
【0030】
このコネクタ1においては、そのフロントホルダ51の筒部51aにおける抜去方向側の環状の端面とハウジング20の筒部23における挿入方向側の端面とを挿抜方向で間隔を空けて対向配置させる。よって、このコネクタ1においては、そのそれぞれの筒部23,51aの端面の間に、嵌合部21の外周壁面21aを溝底とする環状溝が形成される。このコネクタ1においては、その環状溝に環状の第1止水部材(以下、「第1外側止水部材」という。)42を設けている(図1及び図3から図5)。この第1外側止水部材42は、嵌合部21の外周壁面21aに取り付けられ。嵌合状態のときに嵌合部21と相手方嵌合部521との間の筒状の隙間を塞ぐ。ここで示す第1外側止水部材42は、その筒状の隙間における筒軸方向の一部分を塞ぐものとして成形されている。
【0031】
第1外側止水部材42は、その環状溝の溝底に内周面側を密着させ、かつ、相手方嵌合部521の内周壁面521aに外周面側を密着させ、その環状溝の溝底と相手方嵌合部521の内周壁面521aとの間の環状の隙間を塞ぐことによって、嵌合部21と相手方嵌合部521との間から筐体501の内方への水等の液体の浸入を抑える。そこで、この第1外側止水部材42は、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で成形される。
【0032】
この第1外側止水部材42は、筒状の基部42aと、この基部42aの内周面から突出させた同軸の環状のリップ(以下、「内周リップ」という。)42bと、この基部42aの外周面から突出させた同軸の環状のリップ(以下、「外周リップ」という。)42cと、を有する(図5)。この第1外側止水部材42においては、基部42aの筒軸方向に、内周リップ42bと外周リップ42cが各々複数並べられている。ここで示す第1外側止水部材42は、その内周リップ42bと外周リップ42cが2つずつ設けられている。また、ここで示す基部42aは、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成されている。そして、ここで示す内周リップ42bと外周リップ42cは、その基部42aの筒軸に対する直交断面が長円形の環状に形成されている。
【0033】
また、このコネクタ1においては、電線収容部22の開口22aと内側止水部材41との間に、電線Weの屈曲を抑えつつ当該電線Weを保持するリアホルダ52が組み付けられている(図5)。この例示のリアホルダ52は、第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bの二分割構造を採っており、この第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bとでそれぞれの電線Weを挟み込んで保持する。それぞれの電線Weは、このリアホルダ52を介して開口22aから外方に引き出される。このリアホルダ52は、詳述はしないが、電線収容部22に設けた爪部に第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bに各々設けた係止部を引っ掛けることによって、それぞれの電線収容部22に保持される。第1ホルダ部材52Aと第2ホルダ部材52Bは、例えば、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。
【0034】
シールドシェル30は、抜去方向側でのハウジング20における相手方嵌合部521からの突出部分(それぞれの電線収容部22とハウジングフランジ部24)を外方から覆うことによって、内方の電線Weに対する外部からのノイズの侵入を抑える。よって、このシールドシェル30は、金属材料(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)で成形されている。ここで示すシールドシェル30は、金属板を母材にしてプレス成形されている。
【0035】
このシールドシェル30は、それぞれの電線収容部22を外方から覆う筒部31を有する(図1から図5及び図7)。その筒部31は、筒軸に対する直交断面が長円形の筒状に形成され、その長円の長手方向に沿って2つの電線収容部22を並列に配置させる。
【0036】
また、このシールドシェル30は、その筒部31の外周面よりも外方に突出させ、かつ、嵌合状態のときに相手方壁体502の壁面502aに間隔を空けて対向配置させるフランジ部(以下、「シェルフランジ部」という。)32を有する(図1から図5及び図7)。このシェルフランジ部32は、筒部31の筒軸と同軸で、かつ、この筒部31の外周面よりも外側に突出させた環状で且つ平板状に形成される。このシェルフランジ部32は、嵌合状態のときに、一方の平面32aを相手方壁体502の壁面502aに間隔を空けて対向配置させる(図4)。
【0037】
ここで、ハウジングフランジ部24は、嵌合状態のときにシェルフランジ部32と相手方壁体502の壁面502aとの間に介在させる(図3及び図4)。そして、このハウジングフランジ部24の外周面24aは、シェルフランジ部32の外周縁よりも内側で且つシェルフランジ部32の内周縁よりも外側に配置される。これにより、このハウジングフランジ部24においては、先に示したように、嵌合状態のときに挿入方向側の当接面24bを相手方壁体502の壁面502aにおける相手方嵌合部521の周縁部分に当接させることができる。このハウジングフランジ部24においては、抜去方向側の環状の壁面24cをシェルフランジ部32の一方の平面32aにおける内周縁側に対向配置させる(図3及び図4)。この一方の平面32aにおける内周縁側とハウジングフランジ部24の壁面24cは、互いに間隔を空けて対向配置させてもよく、互いに間隔を空けずに対向配置させてもよい。
【0038】
また、このシールドシェル30は、シェルフランジ部32の外周縁側の端部から折り曲げられ、嵌合状態のときに相手方壁体502の端面502bに固定される被固定部33を有する(図1から図5及び図7)。
【0039】
ここで、相手方壁体502の端面502bは、壁面502aに対して直交状態で連接させた平面であり、嵌合状態のときに平板状の被固定部33における一方の平面33aを対向配置させる(図4)。ここで示す被固定部33は、シェルフランジ部32に対して直交させるべく、このシェルフランジ部32の端部から90度折り曲げられている。また、ここで示す被固定部33は、螺子止め固定によって、相手方壁体502の端面502bに固定される。よって、相手方壁体502の端面502bには、被固定部33を固定させるための雌螺子部としての固定部502cが形成されている(図1)。ここで示す固定部502cは、相手方壁体502の端面502bから突出させた円環状のスペーサ部502dを有している。被固定部33における一方の平面33aは、相手方壁体502の端面502bに対してスペーサ部502dの厚さ分だけオフセットさせられる。その被固定部33には、嵌合部21を相手方嵌合部521の内方に挿入嵌合させた状態で固定部502cに対向配置され、かつ、その固定部502cに螺合させる雄螺子部(図示略)を挿通させる貫通孔33bが形成されている(図1及び図2)。ここでは、その対になる貫通孔33bと固定部502cが2組設けられている。
【0040】
このコネクタ1は、シールドシェル30の筒部31の外周面とそれぞれの電線収容部22の開口22aから外方に引き出された電線Weとを覆う編組(図示略)を備える。その編組は、金属材料で筒状且つ網目状に編み込まれた部材であり、それぞれの開口22aから外方に引き出された電線Weに対するノイズの侵入を抑える。この編組は、筒状の接続部材35(図1図2及び図5)を用いて筒部31の外周面に圧接させる。
【0041】
ところで、このコネクタ1においては、先に示した第1外側止水部材42によって、嵌合部21と相手方嵌合部521との間から筐体501の内方への水等の液体の浸入を抑えている。そして、このコネクタ1においては、その間での液密性を考えるのであれば、嵌合部21と相手方嵌合部521との間に入り込む液体の流入量を減少させることが望ましい。そこで、このコネクタ1は、嵌合状態のときにシェルフランジ部32と相手方壁体502の壁面502aとの間で押し潰される環状の第2止水部材(以下、「第2外側止水部材」という。)43を備えている(図1図3から図5及び図7)。
【0042】
その第2外側止水部材43は、ハウジングフランジ部24の外側に配置される。例えば、第2外側止水部材43は、ハウジングフランジ部24の外周面24a側に、その外周面24aを覆うように配置される。また、第2外側止水部材43は、ハウジングフランジ部24におけるシェルフランジ部32側に、このハウジングフランジ部24とシェルフランジ部32とで挟み込まれるように配置される。この第2外側止水部材43は、ハウジングフランジ部24の外側で如何様に配置されたものであろうと、ハウジングフランジ部24の外周面24aに対向配置される内周面43aと、ハウジングフランジ部24の当接面24bよりも挿入方向側に突出させ、嵌合状態のときに相手方壁体502の壁面502aから押圧力を受ける環状の被押圧面43bと、を有する(図1図3図4及び図7)。
【0043】
ここで示す第2外側止水部材43は、ハウジングフランジ部24の外周面24a側で当該外周面24aを覆う環状体であり、シールドシェル30のシェルフランジ部32に取り付ける。この第2外側止水部材43は、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で成形される。より具体的に、第2外側止水部材43は、スポンジ状のシート部材を利用して成形される。ここで示す第2外側止水部材43は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を用いて、シールドシェル30の筒部31と同軸で、かつ、その筒軸に対する直交断面が長円形の環状に成形されている(図7)。この第2外側止水部材43においては、その長円形の環状体の内周面が上記の内周面43aとなり、この環状体における挿入方向側の環状の壁面が上記の被押圧面43bとなる。この第2外側止水部材43においては、抜去方向側の環状の壁面43cが接着剤又は両面テープを用いてシェルフランジ部32の一方の平面32aに貼り付けられる(図3及び図4)。
【0044】
このコネクタ1においては、嵌合部21を相手方嵌合部521に挿入嵌合していくことによって、第2外側止水部材43の被押圧面43bが相手方壁体502の壁面502aに当接し、その挿入嵌合を続けることで、その被押圧面43bに相手方壁体502の壁面502aから押圧力が加えられながら、第2外側止水部材43が押し潰されていく。そして、このコネクタ1においては、その挿入嵌合を更に続けていくことによって、ハウジングフランジ部24の当接面24bが相手方壁体502の壁面502aに当接する。このコネクタ1においては、その当接面24bが相手方壁体502の壁面502aに当接した際に、嵌合部21の挿入嵌合を終えた嵌合状態になり、そこで第2外側止水部材43の潰れが止まる。これにより、このコネクタ1においては、シェルフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間で、第2外側止水部材43が挿抜方向に加圧されたまま挟持されることになるので、その間への外方からの液体の浸入を抑えることができる。
【0045】
ここで、第2外側止水部材43におけるハウジングフランジ部24の当接面24bからの突出量は、嵌合状態のときにシールドシェル30が相手方壁体502に対して相対的に移動してしまう可能性がある場合、例えば、シールドシェル30と相手方壁体502との間の挿抜方向(挿入方向、抜去方向)における相対移動量の最大値及びシェルフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間の挿抜方向(挿入方向、抜去方向)における隙間の累積公差の総和よりも大きくすることが望ましい。その累積公差とは、その隙間に関わるそれぞれの部品の寸法公差に基づき算出される周知のものである。これにより、このコネクタ1においては、例えば、嵌合状態のときに、車両走行時の外部入力等でシールドシェル30と相手方壁体502との間が挿抜方向で最も大きく相対移動したとしても、被押圧面43bに対して相手方壁体502の壁面502aから押圧力を加えておくことができ、第2外側止水部材43が潰されたままになっているので、シェルフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間への外方からの液体の浸入を抑えることができる。尚、このコネクタ1においては、その累積公差に替えて、隙間に関わるそれぞれの部品の寸法公差を積み上げた積み上げ公差を用いて、第2外側止水部材43の突出量を決めてもよい。
【0046】
また、このコネクタ1においては、嵌合状態のときに、シールドシェル30の被固定部33を相手方壁体502の端面502bに固定している。このため、そのシールドシェル30と相手方壁体502との間で相対移動が発生しない場合、第2外側止水部材43におけるハウジングフランジ部24の当接面24bからの突出量は、シェルフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間の挿抜方向(挿入方向、抜去方向)における隙間の累積公差よりも大きくすればよい。これにより、このコネクタ1においては、それぞれの部品の寸法に公差の範囲内でばらつきが生じていたとしても、嵌合状態のときに、被押圧面43bに対して相手方壁体502の壁面502aから押圧力を加えておくことができ、第2外側止水部材43が潰されたままになっているので、シェルフランジ部32の一方の平面32aと相手方壁体502の壁面502aとの間への外方からの液体の浸入を抑えることができる。
【0047】
以上示したように、本実施形態のコネクタ1は、シェルフランジ部32と相手方壁体502の壁面502aとの間に第2外側止水部材43を備えることによって、その間を経て嵌合部21と相手方嵌合部521との間に入り込む液体の流入量を減少させることができる。特に、このコネクタ1は、嵌合部21と相手方嵌合部521との間に第1外側止水部材42を設けているので、その間への液体の流入量を抑えることによって、第1外側止水部材42による嵌合部21と相手方嵌合部521との間の液密性を保つことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 コネクタ
10 端子金具
20 ハウジング
21 嵌合部
21a 外周壁面
24 ハウジングフランジ部
24a 外周面
24b 当接面
30 シールドシェル
31 筒部
32 シェルフランジ部
33 被固定部
42 第1外側止水部材(第1止水部材)
43 第2外側止水部材(第2止水部材)
43a 内周面
43b 被押圧面
502 相手方壁体
502a 壁面
502b 端面
521 相手方嵌合部
We 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7