(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182688
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エキシマランプ、エキシマランプの点灯方法およびエキシマランプの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20221201BHJP
H01J 61/54 20060101ALI20221201BHJP
H01J 9/28 20060101ALI20221201BHJP
H01J 9/26 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01J65/00 A
H01J61/54 N
H01J9/28 B
H01J9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090385
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】藤森 昭芳
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】両角 洋二
(57)【要約】
【課題】ランプの点灯始動性を高めながら、様々な使用環境に適応可能なエキシマランプを提供する。
【解決手段】エキシマランプ10は、ランプ軸Cに沿って外側管20の端部20T2を超えて伸びた部分(以下、延伸部という)52を備える。内側管50と外側管20との間には、主放電空間S1が形成されている。一方、延伸部52には、箔状の内側電極30と内側管50との部分的な封着によって、補助放電空間S2が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ軸方向に沿って配設された箔状電極を覆う誘電体と、
前記誘電体と溶着して主放電空間を形成する放電容器とを備え、
前記誘電体が、前記放電容器の端部から延伸した延伸部を有し、
前記延伸部において、前記箔状電極が、前記誘電体の内側に補助放電空間が形成されるように、前記誘電体と部分的に封着していることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記補助放電空間が、ランプ軸方向およびランプ周方向の少なくとも一方向に沿って電界強度が異なるように、前記箔状電極の表面と前記誘電体の内面との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記箔状電極の縁部が、前記補助放電空間において、前記誘電体の内面から離れていることを特徴とする請求項1または2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記箔状電極の縁部が、前記補助放電空間において、前記誘電体と封着していることを特徴とする請求項1または2に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記箔状電極が、前記放電容器の内側に配設された第1電極部と、前記第1電極部と電気的に接続し、前記延伸部の内側に配設された第2電極部とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記誘電体の先端部の先端位置が、前記放電容器の先端に設けられた小径部に入り込み、
前記箔状電極のランプ軸に沿った先端位置が、前記小径部より後端側にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記補助放電空間が、前記箔状電極の幅方向に沿った前記誘電体と前記箔状電極との距離間隔が、中央部よりも縁部側の方が短くなるように、形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記補助放電空間が、前記箔状電極の長さ方向に沿った前記誘電体と前記箔状電極との距離間隔が、中央部よりも端部側の方が短くなるように、形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載されたエキシマランプ。
【請求項9】
ランプ軸方向に沿って配設された箔状電極を覆う内側管と、前記内側管の拡径部と溶着して前記内側管との間に主放電空間を形成した外側管とを備えたエキシマランプにおいて、
前記拡径部から前記外側管の外部へ延伸した延伸部において、前記内側電極の表面と前記内側管の内面との間に補助放電空間を形成し、
前記補助放電空間からランプ軸方向に向けて放射された光の一部を、前記内側管の主放電空間側の先端部および前記拡径部を通じて、前記主放電空間に照射することを特徴とするエキシマランプの点灯方法。
【請求項10】
内側管となるガラス管内に、箔状の内側電極を挿入する工程と、
前記内側管内を、減圧状態にして封止する、または、前記内側管内に希ガスを大気圧以下で封入する工程と、
前記内側管内の管軸方向に沿って少なくとも一部に補助放電空間が形成されるように、前記内側管を加熱、縮径して、内側電極と部分的に溶着させる工程と、
放電管となるガラス管内に前記内側管を挿入し、前記内側管の一部が前記放電管から延伸し、前記補助放電空間が前記放電管の外部に位置するように前記外側管を前記内側管と溶着させる工程と
を含むことを特徴とするエキシマランプの製造方法。
【請求項11】
前記放電容器を前記内側管の拡径部と一体的に加熱溶着することで、前記主放電空間を形成することを特徴とする請求項10に記載のエキシマランプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプに関し、特に、放電空間の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプでは、二重管構造ランプが知られている(特許文献1参照)。そこでは、箔状の内側電極を被覆する誘電体を放電管内に配置し、放電管の外表面に設けられた外側電極と内側電極との間に電圧を印加する。これによって、誘電体と放電管との間に形成された放電空間から紫外線などのエキシマ光が放射される。
【0003】
また、高出力のエキシマランプを確実に点灯するため、放電開始電圧よりも低い電圧で放電する始動補助機能を備えたエキシマランプが知られている(特許文献2参照)。そこでは、二重管構造ランプの内側管内に、始動電圧の低いガスを封入した始動補助用の放電空間が、ランプ軸方向に沿って形成されている。始動補助用の放電空間から放射された紫外光が主放電空間のガスに照射することで、主放電空間での放電が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-38658号公報
【特許文献2】特開2017-4702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
始動補助用の放電空間が内側管全体に渡って形成するランプ構成の場合、主放電空間と始動補助用放電空間が同心円状に形成されるため、放電管サイズなどに制限が生じる。その結果、例えば、ジャケット管内へエキシマランプを、僅かな隙間間隔で管内配置することが困難になる恐れがある。
【0006】
したがって、ランプの点灯始動性を高めながら、様々な使用環境に適応可能なエキシマランプを提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様であるエキシマランプは、ランプ軸方向に沿って配設された箔状電極を覆う誘電体と、誘電体と溶着して主放電空間を形成する放電容器とを備え、誘電体が、放電容器の端部から延伸した延伸部を有する。そして、延伸部において、箔状電極が、誘電体の内側に補助放電空間が形成されるように、誘電体と部分的に封着している。ここで、「封着」とは、箔状電極が封止(密閉)されるように誘電体と溶着することを示す。
【0008】
補助放電空間は、ランプ軸方向およびランプ周方向の少なくとも一方向に沿って電界強度が異なるように、内側電極の表面と誘電体の内面との間に形成することが可能である。例えば、箔状電極の断面形状、箔状電極と誘電体との封着された部分と補助放電空間との境界付近での空間領域の変化の仕方などによって電界強度を異なるようにすることができる。
【0009】
例えば、箔状電極は、その幅方向に関し、中央部よりも縁部の幅が狭い(ナイフエッジ形状など)に形成することが可能である。この場合、箔状電極の縁部が、補助放電空間において、誘電体の内面から離れるように構成することができ、ランプ周方向に沿って電界強度を相違させることができる。あるいは、箔状電極の縁部は、補助放電空間において、誘電体と封着することも可能であり、上記境界付近においてランプ軸方向に沿った電界強度を相違させることも可能である。
【0010】
箔状電極は単体で構成することも可能であり、複数の箔状電極で構成することも可能である。例えば、箔状電極は、放電容器の内側に配設された第1電極部と、第1箔状電極部と給電線などで電気的に接続し、延伸部の内側に配設された第2電極部で構成することができる。
【0011】
放電容器の構成としては、例えば、誘電体の先端部の先端位置が、放電容器の先端に設けられた小径部に入り込み、箔状電極のランプ軸に沿った先端位置が、小径部より後端側にあるように構成することができる。
【0012】
補助放電空間は、箔状電極の幅方向に沿った誘電体と箔状電極との距離間隔が、中央部よりも縁部側の方が短くなるように、形成することが可能である。また、補助放電空間が、箔状電極の長さ方向に沿った誘電体と箔状電極との距離間隔が、中央部よりも端部側の方が短くなるように、形成することができる。
【0013】
本発明の一態様であるエキシマランプの点灯方法は、内側管の拡径部から外側管の外部へ延伸した延伸部において、内側電極の表面と内側管の内面との間に補助放電空間を形成し、補助放電空間からランプ軸方向に向けて放射された光の一部を、内側管の主放電空間側の先端部および拡径部を通じて、主放電空間に照射する。
【0014】
本発明の一態様であるエキシマランプの製造方法は、内側管となるガラス管内に、箔状の内側電極を挿入する工程と、内側管内を、減圧状態にして封止する、または、内側管内に希ガスを大気圧以下で封入する工程と、内側管内の管軸方向に沿って少なくとも一部に補助放電空間が形成されるように、内側管を加熱、縮径し、内側管を内側電極と部分的に溶着させる工程と、放電管となるガラス管内に内側管を挿入し、内側管の一部が放電管から延伸するように外側管を内側管と溶着させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ランプの点灯始動性を高めながら、様々な使用環境に適応可能なエキシマランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態であるエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。
【
図2】本実施形態であるエキシマランプの軸方向側から見た概略的断面図である。
【
図3】本実施形態のエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態であるエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。
図1は、本実施形態であるエキシマランプの軸方向側から見た概略的断面図である。
図2は、
図1のラインB-Bに沿った断面図に相当する。また、
図1の断面図は、
図2のランプ中心軸を通るラインに沿った断面図に相当する。
【0019】
エキシマランプ10は、石英ガラスなどの誘電材料から成る断面略円筒状の外側管20と内側管50とにより形成された放電容器10Tを備える。管径方向(以下、ランプ径方向ともいう)に沿った幅を有する帯状に延びる箔状電極(以下、内側電極という)30が、管軸(以下、ランプ軸ともいう)Cに沿った柱状の誘電体(以下では、内側管という)50に被覆されている。内側電極30は、外側管20と内側管50との間に形成された環状の放電空間(以下、主放電空間という)S1に露出していない。内側管50は、ここでは断面が略円状に形成されている。
【0020】
エキシマランプ10は、ランプ軸Cに沿って放電容器10T(外側管20)の端部20T2を超えて延びた外側管20に覆われていない部分(以下、延伸部という)52有し、その端部50T2の内部を給電線70が貫通している。ただし、内側管50とは異なる別部材を溶着することで延伸部52を構成してもよい。ランプ製造の過程で形成される小径部22は、ランプ軸Cに沿って、放電容器10T(外側管20)からランプ先端側に向けて突出している。
【0021】
小径部22の径は、放電容器10Tの径、すなわちランプ軸方向範囲の一部の区間であって、外側電極40が配設されたランプ軸方向に沿った範囲(ここでは、軸方向配設範囲という)の径よりもが小さい。ここでは、外側管20の先端側を加熱変形して縮径し、外側管20よりも小径のチップ管を溶着させることによって、小径部22が放電容器10Tに対して一体的に成形されている。なお、ランプ製造に用いるチップ管を小径部とは別の位置に設けてもよい。
【0022】
本実施形態では、内側管50の端部50T1は、小径部22に入り込み、内側管50の端部50T1が小径部22と接触する。そのため、内側管50は、外側管20内で安定して同軸状に保持される。また、内側管50の端部50T1の外面は、先細くなる凸状曲面を有し、小径部22の内面は先細くなる凹状曲面を有する。
【0023】
これによって、それぞれの加熱成形による寸法誤差に対しても破損させないように、安定して同軸状に保持することができる。このような嵌合状態を形成する一方、内側電極30の先端部30T1のランプ軸Cに沿った位置は、小径部22の内部空間にまで入り込むことなく、小径部22よりも後端(放電容器中央)側にある。
【0024】
外側管20の外表面20Sには、電極(以下、外側電極という)40が配設されている。外側電極40は、ここでは、導電性の金属からなる線状の電極部を外側管20の表面に沿って巻き付けて配設した構成であり、管軸Cに沿って螺旋状に所定間隔で離間して巻かれて配置されている。
【0025】
外側電極40の軸方向配設範囲Lは、外側管20の先細くなる両端部20T1、20T2間の内径一定部分である(以下、筒状部という)20T0に定められている。内側電極30の軸方向長さは、ここでは外側電極40の軸方向配設範囲Lに対応している。内側電極30の端部に接続される給電線70は、外部に設置された電源部(図示せず)と接続し、電力が給電線70を介してエキシマランプ10に供給される。
【0026】
高周波(例えば、数kHz~数十MHzの範囲)高電圧(例えば、数kV~十数kVの範囲)が内側電極、外側電極に印加されることにより、エキシマ光が放電空間S1から放射される。ここでは紫外線(例えば、波長172nm)が放電容器外へ放射される。したがって、エキシマランプ10は、オゾン発生による除菌、消臭などを行うオゾン発生装置へ適用することが可能であり、また、対象物に紫外線を直接照射する紫外線照射装置にも適用することができる。
【0027】
延伸部52には、点灯始動補助用の放電空間(以下、補助放電空間という)S2が形成されている。
図1に示すように、内側管50の延伸部52のランプ軸Cに沿った一部が、内側電極30の周方向回り全体に渡って部分的に溶着(封着)しない。その一方、内側電極30の軸方向両端部30T1、30T2側では、その全周に渡って内側管50と封着している。これによって、補助放電空間S2が形成される。
【0028】
ここでは、補助放電空間S2のランプ軸Cに沿った範囲(補助放電空間範囲)Mが、外側電極40の軸方向配設範囲Lに対応する内側電極30の軸方向配設範囲外の区間となるように、定められている。すなわち、外側電極40の軸方向配設範囲Lでは、内側電極30の両端部30T1、30T2の範囲において、内側電極30は、内側管50に周方向周り全体で封着されている。それに対し、内側管50の延伸部52の中間部分では、内側電極30の外周面全体が露出し、それを囲むように補助放電空間S2が形成されている。また、補助放電空間範囲Mでは、他の範囲と比較して内側管50の外径が大きい。
【0029】
また、内側電極30が補助放電空間S2に露出した内表面の両端部(補助放電空間範囲Mの両端部)ST1、ST2では、内側電極30と内側管50との距離間隔が徐々に短くなり、放電空間領域が内側管50の両端50T1、50T2側に向けて空間領域が狭まっている。そして、内側管50の内表面と内側電極30の外表面との距離間隔が徐々に小さくなりながら、内側電極30が内側管50と封着している。内側管50の外径も同様に徐々に小さくなり、外表面は滑らかな曲面を形成している。
【0030】
補助放電空間S2の空間形状は、ランプ(補助放電空間範囲M)中央部ほど径方向断面領域が広く、放電容器10Tの両端の小径部22、延伸部52側に近づくほど空間領域が狭まっている。したがって、補助放電空間S2のランプ軸Cに沿った中央部分における内側管50の外周面と内側管50の内周面とのランプ径方向に沿った距離間隔L1は、内側管50が補助放電空間S2に露出した内表面の両端部ST1、ST2における距離間隔L2よりも長い。
【0031】
また、箔状の内側電極30の両縁部30T3、30T4は、ナイフエッジ形状であり、内側電極30は幅方向の中心から縁(端部)に向けて先鋭化し、その厚さは幅方向の中心部の厚さに比べて薄くなり、両縁部30T3、30T4は尖っている。
【0032】
そのため、補助放電空間S2は、内側電極30の幅方向(ランプ径方向)の中央部ほど径方向断面領域が広くなっている(
図2参照)。したがって、そのランプ径方向に沿った内側電極30の内表面と内側管50の外表面との離間距離の長さは、内側電極30の両縁部30T3、30T4付近における幅方向に沿った離間距離の長さT2(
図1のL1に相当する)よりも、中心部(ランプ中心軸)付近における厚さ方向に沿った離間距離の長さT1の方が長く、内側電極30の両縁部30T3、30T4に向けて狭まっている。
【0033】
すなわち、補助放電空間S2(放電空間領域S2A、S2B)は、箔状の内側電極30の表面に沿った長さ方向(ランプ軸方向)の端部30T1、30T2および幅方向(ランプ径方向)の縁部30T3、30T4に向けて、空間領域が狭まっている。
【0034】
補助放電空間S2は、大気圧より低い減圧状態になっている、あるいは、点灯始動時の電圧を低くする希ガス(大気圧以下)が補助放電空間S2に封入されている。内側電極30と外側電極40との間に高周波高電圧を印加すると、補助放電空間S2が減圧状態にあるため、主放電空間S1よりも低い点灯始動電圧によって、補助放電空間S2において先に放電が生じる。そして、補助放電空間S2からランプ軸方向に向けて放射された光(ここでは紫外線)の一部が、内側管50を通じて主放電空間S1に照射される。
【0035】
また、内側電極30の両端部30T1、30T2の間の大部分は内側管50に埋設した状態で接し、内側電極30の両縁部30T3、30T4の一部が補助放電空間S2に露出することで、減圧状態とした補助放電空間S2において、電界強度が高い空間領域が形成される。これにより、主放電空間S1よりも低い点灯始動電圧によって、補助放電空間S2に放電を確実に生じさせることができる。また、ランプ点灯中の必要な電力を抑制し、内側電極30(特に、縁部)の放電による消耗を抑制することができる。
【0036】
補助放電空間S2で生じた放電からランプ軸方向に向けて放射された光の一部は、内側管50の管壁内(管壁の境界面)での反射を繰り返す、いわゆるファイバー効果によって内側管50の端部50T1側に向けて伝わる。ファイバー効果により伝わった紫外線の一部は、内側管50の拡径部51を通じて、外側管20の端部20T2側から主放電空間S1に照射される。
【0037】
また、ランプ軸方向に向けて放射された光の一部は、内側管50の端部50T1が部分的に小径部22に入り込んで接触しているため、内側管50の端部50T1を通じて、外側管20の端部20T1側から主放電空間S1に照射される。これらファイバー効果により伝わった紫外線が主放電空間S1に照射されることにより、主放電空間S1において放電が生じる。このように、内側管50の延伸部52の一部に補助放電空間S2を形成することによって、点灯始動性能が高まる。
【0038】
ここでは、補助放電空間S2は、放射光が主放電空間S1に届く程度の微小な放電空間領域として形成されており、内側管50の延伸部52の大部分を占有するようなスペースをもつ放電空間領域として形成されていない。しかしながら、補助放電空間S2が、放電容器10Tの外部でランプ軸方向に沿って隣り合う位置に形成されているため、ランプ点灯中(主放電が生じている間)、内側電極30と外側電極40との間の印加電圧は抑えられる。必要な電力が抑制されることで、ランプ耐久性、ランプ寿命を高めることができる。
【0039】
また、補助放電空間S2が内側管50に対して同軸的に形成されるため、補助放電空間S2から主放電空間S1に向けて光が内側管50の端部50T1、50T2の両側から照射される。これにより、主放電空間S1において主放電が安定して生じる。
【0040】
放電容器の外周面に沿った照度分布(配光分布)は、放電容器の形状や、その内部で発生させた放電の位置によって異なる。さらに、放電状態は、電極(陽極と陰極)の位置関係や、内側管や補助放電空間の形状によって定まる電界強度分布に影響を受ける。しかしながら、上述したエキシマランプ10は、従来の2重管構造のエキシマランプの外形や放電状態を変更することがないので、紫外線照射装置やオゾン発生装置において、放電維持電圧や照度分布などのランプ特性や、それに適した電源特性に影響を与えることなく、点灯始動性を高めることができる。
【0041】
点灯始動性は、エキシマランプに電圧を印加して、放電容器内の放電から所望な放射スペクトルが得られる安定点灯状態に至る確実さ(確率[%])により把握することができる。エキシマランプは、低温状態や暗黒状態や長時間の休止状態後でも、点灯始動性の確実性(100%の信頼性)が必要とされるが、本実施形態においては、大型の点灯用電源や点灯始動補助用光源を用いることなく、確実に安定点灯状態に至らせることができる、すなわち、実質的に100%の点灯始動の確実性をもたせることができる。
【0042】
延伸部52における補助放電空間S2の形成空間領域、また、ランプ軸Cに沿った形成区間Mは、適宜調整することが可能である。例えば、内側電極30の両縁部30T3、30T4のみ内側管50と露出しないように溶着させることで、箔状の内側電極30を間にして空間的に隔てられた2つの放電空間領域S2A、S2Bを補助放電空間S2として形成することができる。また、定められた補助放電空間範囲Mに対して内側電極の表面に誘電体をコーティングする(被覆する)ことで、内側電極30の両縁部30T3、30T4を補助放電空間S2に露出しないように構成してもよい。
【0043】
このようなエキシマランプ10は、例えば、以下のような製造方法によって製造可能である。
【0044】
補助放電空間に形成された放電から放射される光に対する透過性を有する誘電体材料により、箔状電極(内側電極)の被覆材となる断面円筒状のガラス管(内側管)を形成する。内側管を形成後、箔状電極に給電線を抵抗溶接などによって接続し、有底筒状のガラス管に箔状電極を挿入する。
【0045】
内側電極となる箔状電極を、内側管となるガラス管に挿入した後、ガラス管内を減圧状態(真空)にして、封止する。このとき、ガラス管内に大気圧以下で希ガスを封入してもよい。そして、ガラス管を回転させながら、ガラス管端部側において部分的に補助放電空間が形成されるように、加熱してガラス管が軟化して収縮(縮径)するように変形させ、部分的にガラス管と内側電極を溶着させる。
【0046】
このとき、ガラス管の内周面と箔状電極の幅方向(管径方向)に沿った縁部のみを密着させることで、箔状電極の縁部が露出せず、ガラス管と箔状電極とが接していない空間を補助放電空間として形成してもよい。
【0047】
また、内側管となるガラス管の一端に対して鍔状(いわゆるそろばん珠形状)の拡径部を形成するように加熱する。なお、ガラス管を回転させず、内側内周面と箔状電極の縁部に対向するガラス管部分だけを軸方向に沿って加熱して密着させるようにしてもよい。箔状電極の長さ方向(管軸方向)に沿った端部は、周方向全体が封着させることで、箔状電極の端部がガラス管に埋設し、箔状電極は補助放電空間に露出しない。
【0048】
外側管に関しては、主放電空間に形成された放電から放射される紫外線の波長における透過性を有する石英管の一端を縮径するとともに開口した導入管(チップ管)を設ける一方、内側管の拡径部との封止部を開口させた外側管を形成する。
【0049】
そして、内側管を外側管に挿入して同軸配置させ、放電管と内側管の拡径部とを加熱溶着し、放電容器を形成する。その後、導入管を通じて真空引きして不純物を除去し、放電容器内に放電ガスを封入して、導入管を加熱溶融により気密封止する。その後、外側電極を外側管の外表面に配設する。
【0050】
本実施形態では、内側電極30が放電容器10T内および延伸部52にまで渡って延びている構成であるが、放電容器10Tと延伸部52とにおいて異なる内側電極を配置してもよい。
【0051】
図3は、本実施形態の変形例のエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。ここでは、2つの箔状の内側電極30A、30Bが、内部給電線71によって接続されている。そして、内側電極30Bは、外側管20外部に位置する内側管50の延伸部52内に設けられている。内側電極30A、30Bは、互いに向かい合い、径方向断面の位置(延びる方向)は一致する。
【0052】
本実施形態と同様、内側管50の延伸部52に補助放電空間S2が形成されている。このように2つの内側電極30A、30Bを設けた場合でも、本実施形態と同様、点灯し同性能を高めることができる。また、内部給電線71を用いることによって、ランプ点灯中の電力をより抑えることができる。
【0053】
拡径部51は、内側管50の他の部分よりも外径(肉厚)が大きく、加熱によって縮径させることが難しい。そのため、拡径部51に内部給電線71を配設することで、拡径部51における内部給電線71に対する加熱縮径と、外側管20の端部20T2に対する溶着が両立でき、製造が容易となる。
【0054】
また、内側電極30A、30Bの電界集中する部分、特に、ナイフエッジ形状による両縁部30T3、30T4)が、拡径部51から離れる。このように内側電極30A、30Bが拡径部51から距離を置くことで、外側管の端部20T2付近における異常放電(沿面放電)を確実に防止することができる。
【0055】
外側電極に関しては、互いに向かい合うように放電管内壁に埋設させる、あるいは一方を埋設させて他方を放電管外表面に配置するように構成してもよい。また、補助放電空間から放射される光については、紫外線に限定されず、可視光でもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 エキシマランプ
20 外側管
30 内側電極(箔状電極)
40 外側電極
50 内側管(誘電体)
70 給電線
71 内部給電線