(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182698
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】摩擦体及び熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20221201BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20221201BHJP
B43K 24/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B43L19/00 A
B43K29/02 F
B43K24/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090399
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 照隆
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HA07
2C353MA06
(57)【要約】
【課題】摩擦体の摩擦部を選択して使用できるとともに、安定した摩擦操作が可能となる摩擦体及び熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】摩擦体1は、硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなる。硬質摩擦部材2の硬度が軟質摩擦部材3の硬度より高く設定される。硬質摩擦部材2の外側面に軟質摩擦部材3が設けられる。硬質摩擦部材2の上端部が軟質摩擦部材3より上方に設けられる。硬質摩擦部材2の上端部より下方の外側面に凹部または孔部からなる取付部22が形成される。取付部22に軟質摩擦部材3が着脱自在に嵌合される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能な摩擦体であって、
硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材と軟質摩擦部材とからなり、
前記硬質摩擦部材の硬度が前記軟質摩擦部材の硬度より高く設定され、
前記硬質摩擦部材の外側面に前記軟質摩擦部材が設けられ、
前記硬質摩擦部材の上端部が前記軟質摩擦部材より上方に設けられることを特徴とする摩擦体。
【請求項2】
前記硬質摩擦部材の上端部より下方の外側面に凹部または孔部からなる取付部が形成され、
前記取付部に前記軟質摩擦部材が着脱自在に嵌合される請求項1に記載の摩擦体。
【請求項3】
熱変色性インキを内蔵する複数の筆記体が軸方向に移動可能に軸筒内に収容され、前記筆記体の筆記先端部が前記軸筒の先端孔より選択的に出没可能に構成され、前記軸筒の尾端部に、請求項1または請求項2の摩擦体が設けられる熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦体及び熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸筒の後端部に摩擦体を具備し、摩擦体よりも径方向外方に第二摩擦体を着脱自在に装着してなり、第二摩擦体の硬度が摩擦体の硬度より硬い構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の熱変色性筆記具は、摩擦体が過度に軟質の場合、摩擦体を用いた摩擦操作時、摩擦体及び第二摩擦体がぐらついたり、摩擦体が第二摩擦体の中に没入したりするおそれがあり、安定した摩擦操作が困難となる可能性がある。
【0005】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、摩擦体の摩擦部を選択して使用できるとともに、安定した摩擦操作が可能となる摩擦体及び熱変色性筆記具を提供しようとするものである。本発明で、「上」とは摩擦部側(図面で上方)を指し、「下」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能な摩擦体であって、硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材と軟質摩擦部材とからなり、前記硬質摩擦部材の硬度が前記軟質摩擦部材の硬度より高く設定され、前記硬質摩擦部材の外側面に前記軟質摩擦部材が設けられ、前記硬質摩擦部材の上端部が前記軟質摩擦部材より上方に設けられることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の摩擦体は、前記構成により、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材の摩擦部または軟質摩擦部材の摩擦部)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の摩擦体において、前記硬質摩擦部材の上端部より下方の外側面に凹部または孔部からなる取付部が形成され、前記取付部に前記軟質摩擦部材が着脱自在に嵌合されることを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の摩擦体は、前記構成により、軟質摩擦部材が摩耗しても軟質摩擦部材を容易に交換することが可能となる。
【0010】
本願の第3の発明は、熱変色性インキを内蔵する複数の筆記体が軸方向に移動可能に軸筒内に収容され、前記筆記体の筆記先端部が前記軸筒の先端孔より選択的に出没可能に構成された熱変色性筆記具であって、前記軸筒の尾端部に、第1の発明または第2の発明の摩擦体が設けられることを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の熱変色性筆記具は、前記構成により、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材の摩擦部または軟質摩擦部材の摩擦部)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0012】
尚、本発明の硬質摩擦部材及び軟質摩擦部材は、ゴム弾性を有する材料から形成され、例えば、ゴム弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。本発明の硬質摩擦部材及び軟質摩擦部材は、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー)の射出成形により得ることが好ましい。本発明の硬質摩擦部材の硬度及び軟質摩擦部材の硬度は、JISK6253に規定されたデュロメータ硬さ(タイプA)またはデュロメータ硬さ(タイプD)にて測定される。本発明の硬質摩擦部材及び軟質摩擦部材を構成する材料は、硬度が異なるものであれば、同種の材料であってもよいし、異種の材料であってもよい。本発明の摩擦体(硬質摩擦部材及び軟質摩擦部材)は、熱変色性の像または筆跡を熱変色させる以外に、鉛芯(鉛筆芯)による筆跡を消去させる摩擦体として用いることもできる。
【0013】
尚、本発明で、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
【0014】
本発明における熱変色性インキは、熱変色性マイクロカプセル顔料を用いたものであり、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む水性インキ組成物が採用される。
【0015】
さらに、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いはインキ中には、非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成とすることもできる。前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、蛍光染料が全て使用可能である。前記顔料としては、一般顔料、特殊顔料が挙げられる。前記一般顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料、銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に媒体中に分散された分散顔料製品等が用いられる。前記特殊顔料としては、金属粉やパール顔料等の金属光沢顔料、蛍光顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン等が挙げれれる。尚、これらの着色剤は前述のマイクロカプセル顔料と併用されてもよいし、前述のマイクロカプセル顔料中に内包させることもできる。
【0016】
特に、金属光沢顔料を熱変色性インキに添加した場合、メタリック調のインキが構成できるため、筆記時には光沢感を備えた装飾性に富んだ筆跡が形成され、より有用なものとなる。また、前述の熱変色性マイクロカプセル顔料を着色剤として使用した際には、前記熱変色性マイクロカプセル顔料が透明化した際に得られる白紙上の筆跡が、光輝性もなく完全に消去したように視覚されることから、透明性金属光沢顔料が有用である。
【0017】
金属光沢顔料を含有した熱変色性インキの場合、紙面上のその筆跡を摩擦体により消去するには、摩擦熱による熱変色と、金属光沢顔料の剥離除去の必要がある。そのため、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有した熱変色性インキの場合、摩擦体として軟質摩擦部材を使用することが好ましい。一方、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキの場合、摩擦体として硬質摩擦部材を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の摩擦体は、摩擦体の摩擦部を選択して使用できるとともに、安定した摩擦操作が可能となる。
【0019】
本発明の熱変色性筆記具は、摩擦体の摩擦部を選択して使用できるとともに、安定した摩擦操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明摩擦体の第1の実施の形態の斜視図である。
【
図3】
図2の硬質摩擦部材と軟質摩擦部材とを分離した状態の縦断面図である。
【
図4】
図1の摩擦体を軸筒の尾端部に取り付けた状態の熱変色性筆記具の要部縦断面図である。
【
図5】
図4の軸筒を備えた熱変色性筆記具の正面図である。
【
図6】本発明摩擦体の第2の実施の形態の斜視図である。
【
図8】
図7の硬質摩擦部材と軟質摩擦部材とを分離した状態の縦断面図である。
【
図9】
図6の摩擦体を軸筒の尾端部に取り付けた状態の熱変色性筆記具の要部縦断面図である。
【
図10】
図9の軸筒を備えた熱変色性筆記具の正面図である。
【
図11】本発明摩擦体の第3の実施の形態の斜視図である。
【
図13】
図12の硬質摩擦部材と軟質摩擦部材とを分離した状態の縦断面図である。
【
図14】
図11の摩擦体を軸筒の尾端部に取り付けた状態の熱変色性筆記具の要部縦断面図である。
【
図15】
図14の軸筒を備えた熱変色性筆記具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を
図1乃至
図5に示す。
【0022】
・摩擦体
摩擦体1は、硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなる。硬質摩擦部材2を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が81~95の範囲に設定される。軟質摩擦部材3を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が70~80の範囲に設定される。硬質摩擦部材2の硬度は、軟質摩擦部材3の硬度より高く設定される。軟質摩擦部材3の硬度は、硬質摩擦部材2の硬度より低く設定される。硬質摩擦部材2はスチレン系エラストマーから構成される。軟質摩擦部材3はポリエステル系エラストマーから構成される。
【0023】
・硬質摩擦部材
硬質摩擦部材2は、上端が閉鎖され且つ下端が開口された有底筒状体であり、上端に凸曲面状の摩擦部21が形成される。摩擦部21の下方の外側面(外周面)に環状の凹部よりなる取付部22が形成される。取付部22の後方に、軸筒5の取付孔51に嵌合可能な挿入部23が形成される。挿入部23の外面には外向突起23aが一体に形成される。外向突起23aが軸筒5の取付孔51内面の内向突起51aと軸方向に乗り越えて抜け止め係合される。外向突起23aは、環状突起または周状に分散配置された複数の突起よりなる。取付部22の下方且つ挿入部23の上方に、環状の鍔部24が一体に形成される。硬質摩擦部材2の取付部22の下方且つ鍔部24の上方に、円筒状外面よりなる被装着部25が形成される。
【0024】
・軟質摩擦部材
軟質摩擦部材3は、軸方向に貫通された内孔32を備えた円筒体よりなる。内孔32の内面に環状の凸部32aが一体に形成される。凸部32aの下方の円筒体の内面には、円筒状の装着部33が形成される。環状の凸部32aが、硬質摩擦部材2の取付部22(環状の凹部)に着脱自在に嵌合されるとともに、装着部33が、硬質摩擦部材2の被装着部25(円筒状外面)に着脱自在に装着される。軟質摩擦部材3が硬質摩擦部材2の外側面に取り付けられた状態において、軟質摩擦部材3の下端部が硬質摩擦部材2の鍔部24に当接される。軟質摩擦部材3の上端縁部に凸曲面状の摩擦部31が形成される。軟質摩擦部材3の環状の凸部32a(即ち凹部との嵌合部)の径方向外方に摩擦部31が位置される。軟質摩擦部材3の摩擦部31は、硬質摩擦部材2の摩擦部21より径方向外方に突出される。
【0025】
・熱変色性筆記具
熱変色性筆記具4は、軸筒5と、該軸筒5内に、軸方向に移動可能に収容される複数の筆記体とを備え、各々の筆記体の筆記先端部が軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成される多芯タイプの筆記具である。各々の筆記体は、熱変色性インキが内蔵され、該熱変色性インキが筆記先端部より吐出可能である。多芯タイプの熱変色性筆記具4において、出没機構は、各々の筆記体に取り付けられた操作部6を軸方向下方にスライド操作するスライド式が採用されるが、これ以外にも操作部を回転操作する回転式を採用してもよい。
【0026】
熱変色性インキは、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しないタイプと、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有するタイプとが採用される。即ち、軸筒5内には、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキを内蔵した筆記体と、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキを内蔵した筆記体とを備える。金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキの筆跡は、硬質摩擦部材2の摩擦部21を用いて適正に消去でき、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキの筆跡は、軟質摩擦部材3の摩擦部31を用いて適正に消去できる。
【0027】
・軸筒
軸筒5の尾端部には、軸方向上方に開口する取付孔51が形成される。取付孔51の内面に内向突起51aが形成される。内向突起51aは、環状突起よりなる構成、または周方向に分散配置される複数の突起よりなる構成が挙げられる。取付孔51に硬質摩擦部材2の挿入部23が挿入され、取付孔51の内向突起51aと挿入部23の外向突起23aとが軸方向に乗り越えた後に抜け止め係合される。それと同時に、鍔部24の下端が軸筒5の上端に当接される。
【0028】
・摩擦部材の着脱
ゴム弾性材料は、硬質材料より軟質材料の方が摩耗しやすい。そのため、硬質摩擦部材2より軟質摩擦部材3の方が摩耗しやすい。軟質摩擦部材3の摩擦部31が摩耗した場合、摩耗した軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2から取り外し、新たな軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2に取り付け、軟質摩擦部材3が交換可能である。軟質摩擦部材3の凸部32aの径方向外方に摩擦部31が位置しているため、磨耗により摩擦部31が薄肉になることにより、凸部32aと取付部22(環状の凹部)との嵌合を容易に解除でき、軟質摩擦部材3の容易な取り外しが可能となる。また、硬質摩擦部材2に軟質摩擦部材3を取り付ける際または硬質摩擦部材2から軟質摩擦部材3を取り外す際、弾性変形が容易な軟質摩擦部材3の一部または全体が径方向に弾性変形するため、軟質摩擦部材3の容易な着脱が可能となる。
【0029】
本願の第1の実施の形態の摩擦体1は、被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能である摩擦体であって、硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなり、前記硬質摩擦部材2の硬度が前記軟質摩擦部材3の硬度より高く設定され、前記硬質摩擦部材2の外側面に前記軟質摩擦部材3が設けられ、前記硬質摩擦部材2の上端部が前記軟質摩擦部材3より上方に設けられる。それにより、前記第1の実施の形態の摩擦体1は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部31)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0030】
本願の第1の実施の形態の摩擦体1は、前記硬質摩擦部材2の上端部より下方の外側面に凹部からなる取付部22が形成され、前記取付部22に前記軟質摩擦部材3が着脱自在に嵌合される。それにより、前記第1の実施の形態の摩擦体1は、軟質摩擦部材3が摩耗しても軟質摩擦部材3を容易に交換することが可能となる。
【0031】
本願の第1の実施の形態の熱変色性筆記具4は、熱変色性インキを内蔵する複数の筆記体が軸方向に移動可能に軸筒5内に収容され、前記筆記体の筆記先端部が前記軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成され、前記軸筒5の尾端部に前述の摩擦体1が設けられる。それにより、前記第1の実施の形態の熱変色性筆記具4は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部31)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0032】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図6乃至
図10に示す。
【0033】
・摩擦体
摩擦体1は、硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなる。硬質摩擦部材2を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が81~95の範囲に設定される。軟質摩擦部材3を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が70~80の範囲に設定される。硬質摩擦部材2の硬度は、軟質摩擦部材3の硬度より高く設定される。軟質摩擦部材3の硬度は、硬質摩擦部材2の硬度より低く設定される。硬質摩擦部材2はスチレン系エラストマーから構成される。軟質摩擦部材3はポリエステル系エラストマーから構成される。
【0034】
・硬質摩擦部材
硬質摩擦部材2は、上端が閉鎖され且つ下端が開口された有底筒状体であり、上端に凸曲面状の摩擦部21が形成される。摩擦部21の下方の外側面(外周面)に環状の凹部よりなる取付部22が形成される。取付部22の内面は、環状の凹曲面部22aを備える。取付部22の後方に、軸筒5の取付孔51に嵌合可能な挿入部23が一体に形成される。挿入部23の外面には外向突起23aが一体に形成される。外向突起23aが軸筒5の取付孔51内面の内向突起51aと軸方向に乗り越えて抜け止め係合される。外向突起23aは、環状突起または周状に分散配置された複数の突起よりなる。取付部22の下方且つ挿入部23の上方に、環状の下向きの段部26が形成される。硬質摩擦部材2の取付部22の下方且つ下向きの段部26の上方に、円錐面状外面が形成される。
【0035】
・軟質摩擦部材
軟質摩擦部材3は、軸方向に貫通された内孔32を備えた環状体(Oリング状の環状体)よりなる。軟質摩擦部材3の外面に環状の凸曲面部31aが形成される。軟質摩擦部材3の内面に環状の凸曲面部32aが形成される。軟質摩擦部材3の内面(環状の凸曲面部32a)が硬質摩擦部材2の外面の取付部22(環状の凹曲面部22a)に着脱自在に嵌合される。軟質摩擦部材3が硬質摩擦部材2の外側面に取り付けられた状態において、軟質摩擦部材3外面の環状の凸曲面部31aが摩擦部31となる。軟質摩擦部材3の内面の環状の凸曲面部32a(即ち凹部との嵌合部)の径方向外方に摩擦部31が位置される。軟質摩擦部材3の摩擦部31は、硬質摩擦部材2の摩擦部21より径方向外方に突出される。
【0036】
・熱変色性筆記具
熱変色性筆記具4は、軸筒5と、該軸筒5内に、軸方向に移動可能に収容される複数の筆記体とを備え、各々の筆記体の筆記先端部が軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成される多芯タイプの筆記具である。各々の筆記体は、熱変色性インキが内蔵され、該熱変色性インキが筆記先端部より吐出可能である。多芯タイプの熱変色性筆記具4において、出没機構は、各々の筆記体に取り付けられた操作部6を軸方向下方にスライド操作するスライド式が採用されるが、これ以外にも操作部を回転操作する回転式を採用してもよい。
【0037】
熱変色性インキは、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しないタイプと、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有するタイプとが採用される。即ち、軸筒5内には、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキを内蔵した筆記体と、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキを内蔵した筆記体とを備える。金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキの筆跡は、硬質摩擦部材2の摩擦部21を用いて適正に消去でき、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキの筆跡は、軟質摩擦部材3の摩擦部31を用いて適正に消去できる。
【0038】
・軸筒
軸筒5の尾端部には、軸方向上方に開口する取付孔51が形成される。取付孔51の内面に内向突起51aが形成される。内向突起51aは、環状突起よりなる構成、または周方向に分散配置される複数の突起よりなる構成が挙げられる。取付孔51に硬質摩擦部材2の挿入部23が挿入され、取付孔51の内向突起51aと挿入部23の外向突起23aとが軸方向に乗り越えた後に抜け止め係合される。それと同時に、下向きの段部26の下端が軸筒5の上端に当接される。
【0039】
・摩擦部材の着脱
ゴム弾性材料は、硬質材料より軟質材料の方が摩耗しやすい。そのため、硬質摩擦部材2より軟質摩擦部材3の方が摩耗しやすい。軟質摩擦部材3の摩擦部31が摩耗した場合、摩耗した軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2から取り外し、新たな軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2に取り付け、軟質摩擦部材3が交換可能である。軟質摩擦部材3の内面の凸曲面部32a(即ち凹部との嵌合部)の径方向外方に摩擦部31が位置しているため、磨耗により摩擦部31が薄肉になることにより、凸曲面部32aと取付部22(環状の凹部)との嵌合を容易に解除でき、軟質摩擦部材3の容易な取り外しが可能となる。また、硬質摩擦部材2に軟質摩擦部材3を取り付ける際または硬質摩擦部材2から軟質摩擦部材3を取り外す際、弾性変形が容易な軟質摩擦部材3全体が径方向に弾性変形するため、軟質摩擦部材3の容易な着脱が可能となる。
【0040】
本願の第2の実施の形態の摩擦体1は、被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能である摩擦体であって、硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなり、前記硬質摩擦部材2の硬度が前記軟質摩擦部材3の硬度より高く設定され、前記硬質摩擦部材2の外側面に前記軟質摩擦部材3が設けられ、前記硬質摩擦部材2の上端部が前記軟質摩擦部材3より上方に設けられる。それにより、前記第2の実施の形態の摩擦体1は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0041】
本願の第2の実施の形態の摩擦体1は、前記硬質摩擦部材2の上端部より下方の外側面に凹部からなる取付部22が形成され、前記取付部22に前記軟質摩擦部材3が着脱自在に嵌合される。それにより、前記第2の実施の形態の摩擦体1は、軟質摩擦部材3が摩耗しても軟質摩擦部材3を容易に交換することが可能となる。
【0042】
本願の第2の実施の形態の熱変色性筆記具4は、熱変色性インキを内蔵する複数の筆記体が軸方向に移動可能に軸筒5内に収容され、前記筆記体の筆記先端部が前記軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成され、前記軸筒5の尾端部に前述の摩擦体1が設けられる。それにより、前記第2の実施の形態の熱変色性筆記具4は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0043】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図11乃至
図15に示す。
【0044】
・摩擦体
摩擦体1は、硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなる。硬質摩擦部材2を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が81~95の範囲に設定される。軟質摩擦部材3を構成するゴム弾性材料は、デュロメータ硬さ(タイプA)が70~80の範囲に設定される。硬質摩擦部材2の硬度は、軟質摩擦部材3の硬度より高く設定される。軟質摩擦部材3の硬度は、硬質摩擦部材2の硬度より低く設定される。硬質摩擦部材2はスチレン系エラストマーから構成される。軟質摩擦部材3はポリエステル系エラストマーから構成される。
【0045】
・硬質摩擦部材
硬質摩擦部材2は、上端が閉鎖され且つ下端が開口された有底筒状体であり、上端に凸曲面状の摩擦部21が形成される。摩擦部21の下方の外側面に径方向に貫通された孔部よりなる取付部22が形成される。取付部22の後方に、軸筒5の取付孔51に嵌合可能な挿入部23が一体に形成される。挿入部23の外面には外向突起23aが一体に形成される。外向突起23aが軸筒5の取付孔51内面の内向突起51aと軸方向に乗り越えて抜け止め係合される。外向突起23aは、環状突起または周状に分散配置された複数の突起よりなる。取付部22の下方且つ挿入部23の上方に、環状の下向きの段部26が形成される。硬質摩擦部材2の取付部22の下方且つ下向きの段部26の上方に、円錐面状外面が形成される。
【0046】
・軟質摩擦部材
軟質摩擦部材3は、対向する一対の台形状の側面を有する板状体からなる。各々の台形状の側面は、上側の底辺と、上側の底辺より長い下側の底辺とを備える。各々の台形状の側面の間に、対向する一対の長方形状の側面を有する。軟質摩擦部材3は、側面と側面との間の稜線部、上面と側面との間の稜線部、及び下面と側面との間の稜線部に、凸曲面部が形成される。軟質摩擦部材3は、硬質摩擦部材2の孔部よりなる取付部22に着脱自在に嵌入される。軟質摩擦部材3が硬質摩擦部材2の外側面に嵌入された状態において、軟質摩擦部材3の長方形状の両側面が径方向外方に突出され、その突出部分が摩擦部31となる。軟質摩擦部材3の各々の摩擦部31(両側の突出部分)は、取付部22の開口縁部に係合可能な膨出部34を備える。各々の膨出部34が取付部22の開口縁部に係合されることにより、軟質摩擦部材3の脱落が防止される。
【0047】
・熱変色性筆記具
熱変色性筆記具4は、軸筒5と、該軸筒5内に、軸方向に移動可能に収容される複数の筆記体とを備え、各々の筆記体の筆記先端部が軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成される多芯タイプの筆記具である。各々の筆記体は、熱変色性インキが内蔵され、該熱変色性インキが筆記先端部より吐出可能である。多芯タイプの熱変色性筆記具4において、出没機構は、各々の筆記体に取り付けられた操作部6を軸方向下方にスライド操作するスライド式が採用されるが、これ以外にも操作部を回転操作する回転式を採用してもよい。
【0048】
熱変色性インキは、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しないタイプと、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有するタイプとが採用される。即ち、軸筒5内には、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキを内蔵した筆記体と、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキを内蔵した筆記体とを備える。金属光沢顔料等の特殊顔料を含有しない熱変色性インキの筆跡は、硬質摩擦部材2の摩擦部21を用いて適正に消去でき、金属光沢顔料等の特殊顔料を含有する熱変色性インキの筆跡は、軟質摩擦部材3の摩擦部31を用いて適正に消去できる。
【0049】
・軸筒
軸筒5の尾端部には、軸方向上方に開口する取付孔51が形成される。取付孔51の内面に内向突起51aが形成される。内向突起51aは、環状突起よりなる構成、または周方向に分散配置される複数の突起よりなる構成が挙げられる。取付孔51に硬質摩擦部材2の挿入部23が挿入され、取付孔51の内向突起51aと挿入部23の外向突起23aとが軸方向に乗り越えた後に抜け止め係合される。それと同時に、下向きの段部26の下端が軸筒5の上端に当接される。
【0050】
・摩擦部材の着脱
ゴム弾性材料は、硬質材料より軟質材料の方が摩耗しやすい。そのため、硬質摩擦部材2より軟質摩擦部材3の方が摩耗しやすい。軟質摩擦部材3の摩擦部31が摩耗した場合、摩耗した軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2から取り外し、新たな軟質摩擦部材3を硬質摩擦部材2に取り付け、軟質摩擦部材3が交換可能である。
【0051】
本願の第3の実施の形態の摩擦体1は、被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能である摩擦体であって、硬度の異なるゴム弾性材料からなる硬質摩擦部材2と軟質摩擦部材3とからなり、前記硬質摩擦部材2の硬度が前記軟質摩擦部材3の硬度より高く設定され、前記硬質摩擦部材2の外側面に前記軟質摩擦部材3が設けられ、前記硬質摩擦部材2の上端部が前記軟質摩擦部材3より上方に設けられる。それにより、前記第3の実施の形態の摩擦体1は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部31)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【0052】
本願の第3の実施の形態の摩擦体1は、前記硬質摩擦部材2の上端部より下方の外側面に孔部からなる取付部22が形成され、前記取付部22に前記軟質摩擦部材3が着脱自在に嵌合される。それにより、前記第3の実施の形態の摩擦体1は、軟質摩擦部材3が摩耗しても軟質摩擦部材3を容易に交換することが可能となる。
【0053】
本願の第3の実施の形態の熱変色性筆記具4は、熱変色性インキを内蔵する複数の筆記体が軸方向に移動可能に軸筒5内に収容され、前記筆記体の筆記先端部が前記軸筒5の先端孔より選択的に出没可能に構成され、前記軸筒5の尾端部に前述の摩擦体1が設けられる。それにより、前記第3の実施の形態の熱変色性筆記具4は、筆跡に応じてまたはユーザーの好みに応じて、摩擦体1の摩擦部(即ち、硬質摩擦部材2の摩擦部21または軟質摩擦部材3の摩擦部31)を選択して使用できるとともに、何れの摩擦部21・31を使用しても安定した摩擦操作が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 摩擦体
2 硬質摩擦部材
21 摩擦部
22 取付部(凹部、孔部)
22a 凹曲面部
23 挿入部
23a 外向突起
24 鍔部
25 被装着部
26 下向きの段部
3 軟質摩擦部材
31 摩擦部
31a 凸曲面部
32 内孔
32a 凸曲面部
32a 凸部
33 装着部
34 膨出部
4 熱変色性筆記具
5 軸筒
51 取付孔
51a 内向突起
6 操作部