(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182705
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法、および測位プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/45 20100101AFI20221201BHJP
【FI】
G01S19/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090407
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】野口 聖人
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD22
5J062EE04
5J062FF02
5J062HH05
(57)【要約】
【課題】測位の誤りをより確実に検知可能な測位装置等を提供する。
【解決手段】測位装置としてのロケータECU100は、衛星データに基づく移動体の暫定位置を取得する暫定位置推定部110を備える。ロケータECU100は、衛星データとは異なる情報に基づく移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、概算位置における路面の標高である路面標高を取得する路面標高推定部120を備える。ロケータECU100は、路面から受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定するアンテナ高さ推定部130を備える。ロケータECU100は、路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、暫定位置の正解判定を下し、差分が許容差分範囲よりも大きい場合には、暫定位置の誤り判定を下す判定部140を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定する測位装置であって、
前記衛星データに基づく前記移動体の暫定位置を取得する暫定位置取得部(110)と、
前記衛星データとは異なる情報に基づく前記移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、前記概算位置における路面の標高である路面標高を取得する路面標高取得部(120)と、
前記路面から前記受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定するアンテナ高さ推定部(130)と、
前記路面標高および前記アンテナ高さの和と、前記暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、前記暫定位置の正解判定を下し、前記差分が前記許容差分範囲よりも大きい場合には、前記暫定位置の誤り判定を下す判定部(140)と、
を備える測位装置。
【請求項2】
前記移動体は車両であって、
前記アンテナ高さ推定部は、前記アンテナ高さを、前記車両におけるサスペンションのストローク量と、タイヤ径とに基づき算出する請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記アンテナ高さ推定部は、前記アンテナ高さを、測距センサによる前記路面までの距離の検知量に基づく前記路面から前記測距センサまでの高さと、前記測距センサから前記受信アンテナまでの高さと、に基づき算出する請求項1に記載の測位装置。
【請求項4】
前記アンテナ高さ推定部は、前記測距センサによる前記路面からの高さを、前記測距センサにより検出された前記路面の点群と前記地図情報とのマッチングに基づく高さとする請求項3に記載の測位装置。
【請求項5】
前記誤り判定が下された場合に、前記差分とは異なる情報に基づき前記暫定位置を再検証する検証部(150)を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記アンテナ高さ推定部は、前記正解判定が下された場合に、前記アンテナ高さを補正する請求項5に記載の測位装置。
【請求項7】
前記アンテナ高さ推定部は、前記アンテナ高さを補正する補正量を、前記差分に基づき設定する請求項6に記載の測位装置。
【請求項8】
前記アンテナ高さ推定部は、前記補正量に対する前記差分の寄与度を低減する係数にさらに基づき、前記補正量を設定する請求項7に記載の測位装置。
【請求項9】
測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定するために、プロセッサ(102)によって実行される測位方法であって、
前記衛星データに基づく前記移動体の暫定位置を取得する暫定位置取得工程(S110)と、
前記衛星データとは異なる情報に基づく前記移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、前記概算位置における路面の標高である路面標高を取得する路面標高取得工程(S120)と、
前記路面から前記受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定するアンテナ高さ推定工程(S130)と、
前記路面標高および前記アンテナ高さの和と、前記暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、前記暫定位置の正解判定を下し、前記差分が前記許容差分範囲よりも大きい場合には、前記暫定位置の誤り判定を下す判定工程(S140、S150、S160)と、
を含む測位方法。
【請求項10】
前記移動体は車両であって、
前記アンテナ高さ推定工程では、前記アンテナ高さを、前記車両におけるサスペンションのストローク量と、タイヤ径とに基づき算出する請求項9に記載の測位方法。
【請求項11】
前記アンテナ高さ推定工程では、前記アンテナ高さを、測距センサによる前記路面までの距離の検知量に基づく前記路面から前記測距センサまでの高さと、前記測距センサから前記受信アンテナまでの高さと、に基づき算出する請求項9に記載の測位方法。
【請求項12】
前記アンテナ高さ推定工程では、前記測距センサによる前記路面からの高さを、前記測距センサにより検出された前記路面の点群と前記地図情報とのマッチングに基づく高さとする請求項11に記載の測位方法。
【請求項13】
前記誤り判定が下された場合に、前記差分とは異なる情報に基づき前記暫定位置を再検証する検証工程(S141,S142,S143)をさらに含む請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の測位方法。
【請求項14】
前記アンテナ高さ推定工程では、前記正解判定が下された場合に、前記アンテナ高さを補正する請求項13に記載の測位方法。
【請求項15】
前記アンテナ高さ推定工程では、前記アンテナ高さを補正する補正量を、前記差分に基づき設定する請求項14に記載の測位方法。
【請求項16】
前記アンテナ高さ推定工程では、前記補正量に対する前記差分の寄与度を低減する係数にさらに基づき、前記補正量を設定する請求項15に記載の測位方法。
【請求項17】
測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む測位プログラムであって、
前記命令は、
前記衛星データに基づく前記移動体の暫定位置を取得させる暫定位置取得工程(S110)と、
前記衛星データとは異なる情報に基づく前記移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、前記概算位置における路面の標高である路面標高を取得させる路面標高取得工程(S120)と、
前記路面から前記受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定させるアンテナ高さ推定工程(S130)と、
前記路面標高および前記アンテナ高さの和と、前記暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、前記暫定位置の正解判定を下させ、前記差分が前記許容差分範囲よりも大きい場合には、前記暫定位置の誤り判定を下させる判定工程(S140、S150、S160)と、
を含む測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、測位の誤りを検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測位衛星からの測位信号に基づいて算出された測位解の誤検知を判定する技術が開示されている。この技術では、標高の変化、方位角の変化または緯度経度の変化の時系列データの連続性の有無に基づいて、測位解の誤検知を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、受信機の起動直後等、時系列データが少ない場合には、誤検知を判定できない場合がある。故に、特許文献1の技術は、測位の誤りの検知における確実性に欠ける虞がある。
【0005】
開示される目的は、測位の誤りをより確実に検知可能な測位装置、測位方法、および測位プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された測位装置のひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定する測位装置であって、
衛星データに基づく移動体の暫定位置を取得する暫定位置取得部(110)と、
衛星データとは異なる情報に基づく移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、概算位置における路面の標高である路面標高を取得する路面標高取得部(120)と、
路面から受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定するアンテナ高さ推定部(130)と、
路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、暫定位置の正解判定を下し、差分が許容差分範囲よりも大きい場合には、暫定位置の誤り判定を下す判定部(140)と、
を備える。
【0008】
開示された測位方法のひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定するために、プロセッサ(102)によって実行される測位方法であって、
衛星データに基づく移動体の暫定位置を取得する暫定位置取得工程(S110)と、
衛星データとは異なる情報に基づく移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、概算位置における路面の標高である路面標高を取得する路面標高取得工程(S120)と、
路面から受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定するアンテナ高さ推定工程(S130)と、
路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、暫定位置の正解判定を下し、差分が許容差分範囲よりも大きい場合には、暫定位置の誤り判定を下す判定工程(S140、S150、S160)と、
を含む。
【0009】
開示された測位プログラムのひとつは、測位衛星からの衛星データを受信する受信アンテナ(11)を搭載した移動体(A)の位置を推定するために、プロセッサ(102)に実行させる複数の命令を含む測位プログラムであって、
命令は、
衛星データに基づく移動体の暫定位置を取得させる暫定位置取得工程(S110)と、
衛星データとは異なる情報に基づく移動体の概算位置と、地図情報と、に基づいて、概算位置における路面の標高である路面標高を取得させる路面標高取得工程(S120)と、
路面から受信アンテナまでの高さであるアンテナ高さを推定させるアンテナ高さ推定工程(S130)と、
路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置に基づく高さと、の差分が許容差分範囲に収まる場合には、暫定位置の正解判定を下させ、差分が許容差分範囲よりも大きい場合には、暫定位置の誤り判定を下させる判定工程(S140、S150、S160)と、
を含む。
【0010】
これらの開示によれば、路面標高とアンテナ高さとの和と、暫定位置の高さ座標とを比較することで、暫定位置の正誤判定を実行できる。故に、時系列データの連続性に依ることなく、測位された暫定位置の正誤判定が実行され得る。したがって、測位の誤りをより確実に検知可能な測位装置、測位方法、および測位プログラムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】ロケータECUが実行する測位方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態におけるロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】第2実施形態においてロケータECUが実行する測位方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図6】第5実施形態におけるロケータECUを含むシステムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の一実施形態による測位装置は、ロケータECU100により提供される。ロケータECU100は、移動体である車両Aに搭載される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。
【0013】
ロケータECU100は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネスおよび内部バス等のうち少なくとも一種類を含む車載ネットワークを介して、他の車載構成と通信可能である。ここでの車載構成には、GNSS受信機10、車載通信器20、地図データベース(以下、「地
図DB」)30、外界センサ40およびストロークセンサ50が少なくとも含まれている。
【0014】
GNSS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される測位信号(衛星データ)を受信する受信アンテナ11および図示しない制御回路を備えている。受信アンテナ11は、車両Aのダッシュボード内、フロントガラスまたはルーフ等に設置されている。GNSS受信機10の制御回路は、受信アンテナ11にて受信された衛星データに基づき、観測情報を生成する。一例として、観測情報は、擬似距離、搬送波位相、ドップラー周波数、搬送波対雑音比およびサイクルスリップの発生有無を含む。GNSS受信機10は、観測情報をロケータECU100へと逐次提供する。
【0015】
車載通信器20は、車両Aに搭載される通信モジュールである。車載通信器20は、LTE(Long Term Evolution)および5G等の通信規格に沿ったV2N(Vehicle to cellular Network)通信の機能を少なくとも有しており、車両Aの周囲の基準局からRTK測位にて使用される補正情報を受信可能である。車載通信器20は、取得した補正情報をロケータECU100へと逐次提供する。
【0016】
地
図DB30は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。地図データは、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる三次元地図であってもよい。なお、3次元地図は、REM(登録商標)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。また、地図データには、交通規制情報、道路工事情報、気象情報、および信号情報等が含まれていてもよい。地
図DB30に格納された地図データは、車両Aの外部に設置されたサーバから配信される最新の情報に基づいて、定期的または随時に更新されてよい。
【0017】
外界センサ40は、車両Aの外界を監視する自律センサである。外界センサ40は、後述する概算位置の推定において使用される外界情報を検出可能である。一例として、外界センサ40は、外界情報として地物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、および車両Aの前方を含んだ所定範囲の撮像画像を外界情報として検出する周辺監視カメラの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0018】
ストロークセンサ50は、車両Aのサスペンションの高さ方向のストローク量を検出するセンサである。ストロークセンサ50は、検出したストローク量をロケータECU100へと逐次提供する。
【0019】
ロケータECU100は、メモリ101およびプロセッサ102を、少なくとも1つずつ含んで構成されるコンピュータである。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納又は記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。メモリ101は、後述の測位プログラム等、プロセッサ102によって実行される種々のプログラムを格納している。
【0020】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)およびRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち少なくとも一種類を、コアとして含む。プロセッサ102は、メモリ101に記憶された測位プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これによりロケータECU100は、車両Aの現在位置を推定するための複数の機能部を、構築する。このようにロケータECU100では、メモリ101に格納された測位プログラムが複数の命令をプロセッサ102に実行させることで、複数の機能部が構築される。具体的に、ロケータECU100には、
図2に示すように、暫定位置推定部110、路面標高推定部120、アンテナ高さ推定部130および判定部140等の機能部が構築される。
【0021】
暫定位置推定部110は、GNSS受信機10にて受信された新たな衛星データを取得する。暫定位置推定部110は、当該衛星データと、車載通信器20から取得された基準局からの補正情報とに基づいて、RTK測位によりGNSS受信機10の現在位置を、暫定位置として推定する。暫定位置推定部110は、「暫定位置取得部」の一例である。
【0022】
路面標高推定部120は、車両Aの現在位置における路面標高を推定する。路面標高推定部120は、暫定位置推定部110における衛星測位、すなわちRTK測位とは異なる手法により推定した車両Aの現在位置に基づいて、路面標高を推定する。以下において、暫定位置推定部110と異なる手法により推定された現在位置を、区別のために概算位置と表記する。
【0023】
概算位置の推定手法の一例として、路面標高推定部120は、地
図DB30の地図データ(地図情報)と、外界センサ40による外界情報とのマッチングにより、概算位置を推定する。具体的には、路面標高推定部120は、点群地図と、LiDARにより検出された点群データとのマッチングにより、概算位置を推定してよい。または、路面標高推定部120は、地図データにおける地物の特徴点と、周辺監視カメラによる撮像画像における地物の特徴点とのマッチングにより、概算位置を推定してもよい。路面標高推定部120は、地図データ上での概算位置における標高を、路面標高とする。路面標高推定部120は、「路面標高取得部」の一例である。
【0024】
アンテナ高さ推定部130は、GNSS受信機10のアンテナ高さを推定する。ここでのアンテナ高さは、路面から受信アンテナ11の設置位置までの高さであるとする。アンテナ高さ推定部130は、サスペンションの上端(本実施形態では車体底面)から受信アンテナ11までの高さ、車両Aにおけるサスペンションのストローク高さおよびタイヤ半径に基づき、アンテナ高さを算出する。サスペンションの上端から受信アンテナ11までの高さは、予めメモリ101等の記憶媒体に格納されている。アンテナ高さ推定部130は、ストローク高さを、ストロークセンサ50から取得すればよい。また、アンテナ高さ推定部130は、予めメモリ101等に記憶されたタイヤ半径を取得すればよい。
【0025】
一例として、アンテナ高さ推定部130は、以下の数式(1)に示すように、各パラメータの和をアンテナ高さして算出する。なお、数式(1)において、h_aがアンテナ高さ、h_baがサスペンションの上端から受信アンテナまでの高さ、h_sがストローク高さ、h_tがタイヤ半径である。
【0026】
(数1)
h_a=h_ba+h_s+h_t ・・・(1)
判定部140は、路面標高およびアンテナ高さに基づき、暫定位置の正誤判定を実施する。例えば、判定部140は、路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置における高さ(暫定高さ)との差の絶対値(差分指標)が、許容差分範囲内である場合に、暫定位置が正しいとの判定(正解判定)を下す。具体的には、以下の数式に基づいて、差分指標diffが算出される。なお、以下の数式において、h_mは路面標高、h_aはアンテナ高さ、h_rは暫定高さを表しており、absは括弧内の絶対値を取ることを意味している。
【0027】
(数2)
diff=abs((h_m+h_a)-h_r) ・・・(2)
一方で、判定部140は、差分指標が許容差分範囲内ではない場合、暫定位置が誤っているとの判定(誤り判定)を下す。なお、ここでの許容差分範囲は、暫定位置を車両Aの位置の正解として許容できる数値範囲であり、差分指標が閾値未満または閾値以下となる数値範囲である。なお、正解判定が下された場合には、判定部140が、暫定位置を車両Aの測位位置として確定し、位置情報を必要とする車載装置90に送信すればよい。なお、位置情報は、車載装置90ではなく、車両Aの外部サーバ等へ送信されてもよい。また、誤り判定が下された場合には、暫定位置推定部110が、暫定位置の測位をやり直してよい。または、誤り判定が下された場合には、測位により暫定位置が確定できない旨を車載装置90に通知してもよい。
【0028】
次に、機能ブロックの共同により、ロケータECU100が実行する測位方法のフローを、
図2に従って以下に説明する。なお、後述するフローにおいて「S」とは、プログラムに含まれた複数命令によって実行される、フローの複数ステップを意味する。
【0029】
まず、S100では、暫定位置推定部110が、GNSS受信機10にて受信された最新の衛星データを取得する。次に、S110では、暫定位置推定部110が、衛星データに基づいてRTKによる暫定位置を推定する。
【0030】
S110の処理の後、S120にて、路面標高推定部120が、路面標高を推定する。次に、S130では、アンテナ高さ推定部130が、アンテナ高さを推定する。続くS140では、判定部140が、地図標高とアンテナ高さとに基づき、暫定位置の誤りが検知されるか否かを判定する。暫定位置が誤っていると判定すると、S150にて、判定部140が、今回測位した暫定位置の誤りを確定する。一方で、暫定位置が正しいと判定すると、S160にて、判定部140が、今回の暫定位置の正解を確定する。以上において、S110が「暫定位置取得工程」、S120が「路面標高取得工程」、S130が「アンテナ高さ推定工程」、S140,S150,S160が「判定工程」の一例である。
【0031】
以上の第1実施形態によれば、路面標高とアンテナ高さとの和と、暫定位置の高さ座標とを比較することで、暫定位置の正誤判定が実行される。故に、時系列データの連続性に依ることなく、測位された暫定位置の正誤判定が実行され得る。したがって、測位の誤りがより確実に検知可能となり得る。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。
図3~5において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0033】
第2実施形態において、判定部140は、差分指標dの算出に、後述の高さ補正値h_eをさらに利用する。具体的には、判定部140は、以下の数式に基づいて差分指標dを算出する。
【0034】
(数3)
diff=abs((h_m+h_a)-h_r-h_e) ・・・(3)
第2実施形態において、ロケータECU100は、第1実施形態にて説明した機能部に加えて、検証部150を備える。検証部150は、暫定位置が誤っているとの判定が下された場合に、暫定位置を再検証する。検証部150は、再検証において、アンビギュイティの連続性に基づいて暫定位置の正誤を判断してよい。または、検証部150は、スキャンマッチングに基づいて暫定位置の正誤を判断してもよい。または、検証部150は、時系列のデータ飛びの有無に基づいて暫定位置の正誤を判断してもよい。
【0035】
検証部150は、暫定位置が正しいと判断した場合には、アンテナ高さの補正量を更新する。加えて、検証部150は、地図標高データの更新情報を、車載通信器20を介してサーバへとアップロードする。更新情報には、例えば、測位時刻、車両Aの固有ID、推定位置、RTK測位に基づく路面高さ、路面からアンテナまでの高さ、使用した地図のバージョンID、使用した地図における現在位置の路面IDが含まれる。更新情報は、サーバにて地図の標高データの更新に利用される。更新された地図データは、サーバから各車両Aへと配信される。
【0036】
検証部150は、アンテナ高さの補正を実行する。なお、検証部150は、車両Aの走行速度が補正処理の中止範囲外であるかを判定し、中止範囲外であると判定した場合に、当該補正を実行する。一方で、検証部150は、走行速度が中止範囲内であると判定した場合には、補正を中断する。ここで、中止範囲とは、走行速度が閾値(例えば3m/s)未満または閾値以下となる数値範囲である。検証部150は、走行速度が中止範囲内である場合に補正を中止することで、実質的に同じ場所で高さ補正値を更新することを回避可能とする。検証部150は、周辺監視カメラの撮像画像等、外界センサ40の検出情報に基づく走行速度を取得してもよいし、GNSS受信機10の観測情報に基づく走行速度を取得してもよい。または、検証部150は、車輪速センサから走行速度を取得してもよい。
【0037】
補正を実行する場合、検証部150は、高さ補正値h_eを算出する。高さ補正値h_eは、路面標高およびアンテナ高さの和と、暫定位置に基づく高さと、の差分に応じた今回の高さ誤差h_ecに基づき、算出される。具体的には、検証部150は、まず以下の式に基づいて今回の高さ誤差を算出する。
【0038】
(数4)
h_e=h_r-(h_a+h_m) ・・・(4)
そして、検証部150は、今回の高さ誤差h_ecと、前回の高さ補正値h_epに基づき、高さ補正値h_eを算出する。具体的には、検証部150は、以下の式に基づいて、高さ補正値h_eを算出する。なお、以下においてgは、ゲインである。ゲインは、1未満の数値(例えば0.01)とされる。ゲインは、高さ補正値に対する今回高さ誤差の寄与度を低減する係数である。換言すれば、ゲインは、高さ補正値の急激な変化を抑制するために、今回の高さ誤差に掛けられる係数である。また、前回の高さ補正値には、1からゲインを引いた係数が掛けられる。
【0039】
(数5)
h_e=(1-g)h_ep+g×h_ec ・・・(5)
次に、機能ブロックの共同により、第2実施形態のロケータECU100が実行する測位方法のフローを、
図4に従って以下に説明する。
図2のフローと同様の符号を付したステップについては、第1実施形態の説明を援用する。
【0040】
S140にて、暫定位置が誤っていると判定されると、本フローがS150へと移行する。S141では、検証部150が、暫定位置を再検証する。暫定位置が正しいと判定されると、S142にて、検証部150が、アンテナ高さの補正量を更新する。続くS143では、検証部150が、地図標高データの更新情報をアップロードする。S143の処理の後、S150の処理が実行される。
【0041】
S142にて検証部150の実行する処理の詳細について、
図5のフローチャートを参照して説明する。まず、S142aにて、検証部150は、車両Aの走行速度が補正処理の中止範囲外であるか否かを判定する。中止範囲外であると判定されると、S142bにて、検証部150は、今回の高さ誤差h_ecを算出する。次に、S142cにて、検証部150は、上述の式(5)に基づいて高さ補正値h_eを更新する。一方で、S142aにて走行速度が中止範囲内であると判定すると、検証部142は、高さ補正値h_eの更新を中止し、フローを終了する。以上において、S141,S142,S143が「検証工程」の一例である。
【0042】
以上の実施形態によれば、誤り判定が下された場合に、差分指標とは異なる情報に基づき暫定位置が再検証される。これによれば、差分指標に基づく誤り判定が下された場合にも、その判定結果が正しいか否かを検証できる。故に、暫定位置の正誤判定の確実性が向上され得る。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。以下において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0044】
第3実施形態では、ロケータECU100は、測定対象までの距離を測定する測距センサによる路面までの距離の検知量に基づく路面から測距センサまでの高さと、測距センサから受信アンテナ11までの高さと、に基づいて、アンテナ高さを算出する。測距センサは、例えば、LiDARや周辺監視カメラ等の外界センサ40により提供されればよい。具体的には、アンテナ高さ推定部130は、以下の式に基づいて、路面から測距センサまでの高さを算出する。なお、以下の式において、dが測距した路面までの距離、θが測距方向の水平方向に対する角度である。
【0045】
(数6)
h_gs=d×sinθ ・・・(6)
そして、アンテナ高さ推定部130は、以下の式に基づき、アンテナ高さを算出する。以下の式において、h_saは、測距センサから受信アンテナ11までの高さである。h_saは、メモリ101等の記憶媒体に予め格納されている情報である。
【0046】
(数7)
h_a=h_gs+h_sa ・・・(7)
【0047】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。以下において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0048】
第4実施形態では、ロケータECU100は、測距センサに基づいて、スキャンマッチングにより、アンテナ高さを算出する。路面標高推定部120は、測距センサと地図データを用いた測位によって、路面から測距センサまでの高さを取得する。例えば、路面標高推定部120は、LiDAR装置と点群地図によるスキャンマッチングを実行することで、当該高さを取得すればよい。
【0049】
第4実施形態によれば、測距センサが車両Aの近傍を測距範囲に含まない場合、または坂路等の平坦でない道を走行中の場合等に、測距センサまでの高さをより正確に計測できる。これにより、概算位置の精度が向上し、暫定位置のより確実な正誤判定が可能となり得る。なお、路面標高推定部120は、平坦な道を走行中である場合には第3実施形態のように測距センサにより路面からの高さを直接算出し、平坦でない道を走行中である場合にスキャンマッチングにより路面からの高さを算出してもよい。
【0050】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態におけるロケータECU100の変形例について説明する。
図6において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0051】
第5実施形態において、判定部140は、暫定位置が誤っていると判定した場合、暫定位置の推定回数が上限に到達したか否かを判定する。到達したと判定すると、判定部140は、暫定位置の誤りを確定する。一方で、判定部140にて上限に到達していないと判定された場合、暫定位置推定部110は、暫定位置の推定に利用する衛星データを再選択し、暫定位置を再度推定する。
【0052】
次に、機能ブロックの共同により、第3実施形態のロケータECU100が実行する測位方法のフローを、
図6に従って以下に説明する。S140にて、暫定位置が誤っていると判定されると、本フローがS141へと移行する。S141では、判定部140が、暫定位置の推定回数が上限に到達したか否かを判定する。到達したと判定すると、本フローがS150へと移行する。一方で、S141にて上限に到達していないと判定されると、S142へと進む。S142では、暫定位置推定部110が、衛星データを再選択し、S110へと戻る。
【0053】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0054】
上述の実施形態において、測位装置を構成する専用コンピュータは、ロケータECU100であるとした。これに代えて、測位装置を構成する専用コンピュータは、車両Aに搭載された運転制御ECUであってもよいし、車両Aの走行アクチュエータを個別制御するアクチュエータECUであってもよい。または、測位装置を構成する専用コンピュータは、ナビゲーションECUであってもよい。または、測位装置を構成する専用コンピュータは、情報表示系の情報表示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。また、測位装置を構成する専用コンピュータは、車両Aの外部に設けられたサーバ装置であってもよい。また、測位装置を構成する専用コンピュータは、GNSS受信機10の制御回路であってもよい。
【0055】
上述の実施形態の変形例として、サスペンションの下方端に取り付けられた部材に受信アンテナ11が取り付けられている場合、ロケータECU100は、予めメモリ101等に記憶されたアンテナ高さを使用してよい。この場合、受信アンテナ11は、サスペンション下に取り付けられているため、タイヤ径やアンテナの取り付け位置が変動しなければ変化しない。そのため、出荷時の計測データなどが利用可能である。例えば、移動ロボット等、車両A以外の移動体にロケータECU100が搭載されていた場合、このような構成が実現され得る。
【0056】
ロケータECU100は、デジタル回路およびアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサとして含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、およびCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0057】
ロケータECU100は、1つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態におけるロケータECU100の提供する機能の一部は、他のECUまたはサーバ装置によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
11 受信アンテナ、 100 ロケータECU(測位装置)、 102 プロセッサ、 110 暫定位置推定部(暫定位置取得部)、 120 路面標高推定部(路面標高取得部)、 130 アンテナ高さ推定部、 140 判定部、 150 検証部、 A 車両(移動体)。