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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182717
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090424
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 芳紀
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB16
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD12
5E316DD17
5E316DD22
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG25
5E316HH01
5E316HH11
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、粒状の複数のフィラー4を含んでいる絶縁層21と、絶縁層21の厚さ方向において絶縁層21を挟んで対向する上層導体層12及び下層導体層11と、絶縁層21を貫通して上層導体層12と下層導体層11とを接続する貫通導体31aと、を備えている。貫通導体31aは絶縁層21の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅として第1長さL1を有していて第1長さL1は25μm以下であり、複数のフィラー4のうち貫通導体31aから第1長さL1の40%以内の領域Rに存在するフィラー4の最大粒径Pxは、第1長さL1の20%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の複数のフィラーを含んでいる絶縁層と、
前記絶縁層の厚さ方向において前記絶縁層を挟んで対向する上層導体層及び下層導体層と、
前記絶縁層を貫通して前記上層導体層と前記下層導体層とを接続する貫通導体と、
を備える配線基板であって、
前記貫通導体は前記厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅として第1長さを有していて前記第1長さは25μm以下であり、
前記複数のフィラーのうち前記貫通導体から前記第1長さの40%以内の領域に存在するフィラーの最大粒径は、前記第1長さの20%以下である。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記絶縁層における前記貫通導体との界面は、前記複数のフィラー以外の前記絶縁層の構成要素によって構成されている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記絶縁層に含まれている前記複数のフィラー全部の粒径のうちの最大粒径は前記第1長さの20%以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記絶縁層における前記複数のフィラーの体積含有率は、30%以上、80%以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記貫通導体は、前記厚さ方向の一端において前記最大幅を有すると共に、前記一端と反対側の他端における前記厚さ方向と直交する方向に沿う幅として第2長さを有し、
前記絶縁層に含まれている前記複数のフィラー全部の粒径のうちの最大粒径は、前記第2長さの20%以下である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、
前記上層導体層又は前記下層導体層は、前記貫通導体と一体的に形成されている導体パッドを含み、
平面視で前記導体パッドと重なる領域に存在する前記複数のフィラーの最大粒径は、平面視における前記導体パッドの外縁から前記貫通導体の外縁までの距離よりも小さい。
【請求項7】
粒状の複数のフィラーを含む絶縁層を形成することと、
前記絶縁層を挟んで対向する2つの導体層をそれぞれ形成することと、
前記絶縁層を貫通して前記2つの導体層同士を接続する貫通導体を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記貫通導体は、前記絶縁層の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅が25μm以下となるように形成され、
前記絶縁層は、前記複数のフィラーとして前記最大幅の20%を超える粒径を有するフィラーを含まない領域を有するように形成され、
前記貫通導体は前記領域の内部に形成される。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、前記絶縁層は、前記最大幅の20%を超える粒径のフィラーを含まない前記複数のフィラーを含有する樹脂を用いて形成される。
【請求項9】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、前記貫通導体を形成することは、
前記絶縁層を厚さ方向に貫く貫通孔を形成することと、
前記複数のフィラーのうちの前記貫通孔の内壁面に露出するフィラーを除去することと、を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貫通導体を含む配線基板が開示されている。貫通導体は、無機絶縁層を貫通する貫通孔の内壁に被着していて、この無機絶縁層上に配された導電層に接続している。無機絶縁層は、無機絶縁粒子及び樹脂部を含む第1部分を含み、この第1部分と貫通導体との間に無機絶縁粒子が介在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/157342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線基板では、第1部分と貫通導体との間に介在する無機絶縁粒子は無機絶縁層の貫通孔の内壁に露出していて、この内壁から貫通導体側に突出している。そのため、貫通導体の電気的特性や、貫通導体と無機絶縁層との密着強度が影響を受けることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、粒状の複数のフィラーを含んでいる絶縁層と、前記絶縁層の厚さ方向において前記絶縁層を挟んで対向する上層導体層及び下層導体層と、前記絶縁層を貫通して前記上層導体層と前記下層導体層とを接続する貫通導体と、を備えている。そして、前記貫通導体は前記厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅として第1長さを有していて前記第1長さは25μm以下であり、前記複数のフィラーのうち前記貫通導体から前記第1長さの40%以内の領域に存在するフィラーの最大粒径は、前記第1長さの20%以下である。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、粒状の複数のフィラーを含む絶縁層を形成することと、前記絶縁層を挟んで対向する2つの導体層をそれぞれ形成することと、前記絶縁層を貫通して前記2つの導体層同士を接続する貫通導体を形成することと、を含んでいる。そして、前記貫通導体は、前記絶縁層の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅が25μm以下となるように形成され、前記絶縁層は、前記複数のフィラーとして前記最大幅の20%を超える粒径を有するフィラーを含まない領域を有するように形成され、前記貫通導体は前記領域の内部に形成される。
【0007】
本発明の実施形態によれば、絶縁層内の貫通導体の電気的特性の低下、及び/又は、貫通導体と絶縁層との密着強度の低下を抑制し得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1のII部の拡大図。
図3図1に例示される配線基板を示す平面図。
図4】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図6A】本発明の一実施例における貫通導体形成用の貫通孔のSEM画像。
図6B】本発明に対する比較例における貫通導体形成用の貫通孔のSEM画像。
図7】従来の配線基板において生じ得る問題を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1には、一実施形態の配線基板の一例である配線基板100の断面図が示されており、図2には、図1のII部の拡大図が示されている。また、図3には、図1の配線基板100の平面図の一例が示されている。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、絶縁層20と、絶縁層20の両面それぞれに交互に積層された導体層及び絶縁層と、を含んでいる。絶縁層20の第1面20a上には、第1面20a側から順に導体層11(第1導体層)、絶縁層21(第1絶縁層)、導体層12(第2導体層)、絶縁層22(第2絶縁層)、及び導体層13(第3導体層)が積層されている。絶縁層20の第2面20b上には導体層15が形成されており、さらに2つの絶縁層23それぞれと、2つの導体層14それぞれとが交互に積層されている。絶縁層20、導体層11、及び導体層15によって配線基板100のコア基板が構成されている。導体層11~14及び絶縁層21~23は、コア基板の両面それぞれに逐次形成されており、配線基板100のビルドアップ部を構成している。なお、図1に示される配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎず、実施形態の配線基板は、任意の層数の導体層及び絶縁層を有し得る。また、実施形態の配線基板は、コア基板を有さない所謂コアレス基板であってもよい。
【0011】
上記及び下記の説明において、配線基板100の厚さ方向において絶縁層20から遠い側は、「上側」、「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層20に近い側は、「下側」、「下方」、又は単に「下」とも称される。配線基板100の各構成要素において絶縁層20側を向く表面は「下面」とも称され、絶縁層20と反対側を向く表面は「上面」とも称される。
【0012】
絶縁層21は、絶縁層20の上面20a上に形成されている導体層11上、及び上面20a上に形成されていて、導体層11及び上面20aを覆っている。絶縁層22は、絶縁層21上に形成されている導体層12上、及び絶縁層21上に形成されていて、導体層12及び絶縁層21を覆っている。導体層13は、絶縁層22上に形成されている。導体層11と導体層12は、絶縁層21の厚さ方向において絶縁層21を挟んで対向している。絶縁層21に関して、導体層11は導体層12の下層導体層であり、導体層12は導体層11の上層導体層である。同様に、導体層12と導体層13は、絶縁層22の厚さ方向において絶縁層22を挟んで対向している。絶縁層22に関して、導体層12は導体層13の下層導体層であり、導体層13は導体層12の上層導体層である。また、絶縁層20の第2面20b側においても、各絶縁層23に関して絶縁層20側の導体層(導体層14又は導体層15)は下層導体層であり、各絶縁層23に関して絶縁層20と反対側の導体層(導体層14)は上層導体層である。さらに、絶縁層20に関して、導体層11と導体層15とが対向しており、導体層11及び導体層15のいずれか一方が上層導体層であり、他方が下層導体層である。
【0013】
配線基板100は、さらに、各絶縁層を貫通する貫通導体31a~31dを備えている。貫通導体31aは絶縁層21を貫通し、導体層11と導体層12とを接続している。同様に、貫通導体31bは絶縁層22を貫通し、導体層12と導体層13とを接続している。各貫通導体31cは、各絶縁層23を貫通し、導体層14と導体層15とを接続するか、導体層14同士を接続している。貫通導体31a~31cは、配線基板100のビルドアップ部を構成する各絶縁層に形成されている貫通導体であり、所謂ビア導体である。一方、貫通導体31dは導体層11と導体層15とを接続している。貫通導体31dは、コア基板の絶縁層20を貫通してその両側の導体層同士を接続する貫通導体であり、所謂スルーホール導体である。
【0014】
図1の配線基板100は、さらに、配線基板100における絶縁層20の第1面20a側及び第2面20b側それぞれにおいて最表層の導体層及び絶縁層を覆うソルダーレジスト層6を備えている。ソルダーレジスト層6には、導体層13及び導体層14の一部を露出させる開口61が設けられている。ソルダーレジスト層6は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などの任意の絶縁性樹脂を用いて形成されている。
【0015】
絶縁層20~23は、それぞれ、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成される。図示されていないが、各絶縁層は、ガラス繊維などの補強材(芯材)及び/又はシリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
【0016】
絶縁層20~23は、それぞれ、絶縁層20~23それぞれの特性を調整する充填剤として粒状の形態を有する複数のフィラー4を含んでいる。フィラー4によって、絶縁層20~23それぞれの、例えば、熱膨張率及び熱伝導率のような熱的特性、及び/又は、弾性率や柔軟性のような機械的特性などが調整され得る。複数のフィラー4としては、二酸化ケイ素(シリカ、SiO2)、アルミナ、又は、ムライトなどの無機物の粒体からなる無機フィラーが例示される。複数のフィラー4は、シリコーン又はポリイミドなどの有機物の粒体からなる有機フィラーであってもよい。
【0017】
導体層11~15及び貫通導体31a~31dは、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され、例えば、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成される。従って導体層11~15及び貫通導体31a~31dは、それぞれ、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。しかし、導体層11~15及び貫通導体31a~31dは、それぞれ、単一の金属層だけを含む単層構造を有していてもよい。
【0018】
導体層11~15それぞれは、所定の導体パッド及び/又は配線パターンを有するようにパターニングされている。例えば、導体層11は導体パッド11aを、導体層12は導体パッド12aを、導体層13は導体パッド13aを、それぞれ含んでいる。導体パッド11a、導体パッド12a、及び導体パッド13aは、それぞれ、貫通導体31d、貫通導体31a、及び貫通導体31bと接続されている。導体パッド11a、導体パッド12a、及び導体パッド13aは、それぞれ、貫通導体31d、貫通導体31a、及び貫通導体31bと一体的に形成されている。導体パッド11aは貫通導体31dの所謂スルーホールパッドであり、導体パッド12a及び導体パッド13aは、それぞれ、貫通導体31a及び貫通導体31bの所謂ビアパッドである。各導体パッドによって各貫通導体と各導体層との接続の確実性が高められている。
【0019】
導体パッド11aは、さらに貫通導体31aと接続されており、導体パッド12aは、さらに貫通導体31bと接続されている。導体パッド11a及び導体パッド12aは、それぞれ、貫通導体31a及び貫通導体31bの所謂受けパッドである。導体パッド11aによって貫通導体31aと導体層11との接続の確実性が高められ、導体パッド12aによって貫通導体31bと導体層12との接続の確実性が高められる。
【0020】
貫通導体31a~31dは、それぞれ、貫通孔32a内に形成されており、配線基板100の厚さ方向(以下、配線基板100の厚さ方向及び配線基板100の厚さ方向と平行な方向は、単に「Z方向」とも称される)に沿って延びている。各貫通導体31a~31dは、Z方向と直交する方向において「幅」を有している。各貫通導体の「幅」は、各貫通導体におけるZ方向と直交する断面又は端面の外周の任意の2点間の距離のうちの最長距離である。各貫通導体は、その断面又は端面として円形状や楕円形状などの任意の形状を有し得る。各貫通導体の断面又は端面の形状が円形状、楕円形状、又は矩形状である場合、その貫通導体の「幅」は、それぞれ、断面形状又は端面形状における直径、長径、又は対角線の長さである。所謂ビア導体である貫通導体31a~31cの幅は「ビア径」とも称され、所謂スルーホール導体である貫通導体31dの幅は「スルーホール径」とも称される。
【0021】
貫通導体31a~31dは、それぞれ、Z方向(各貫通導体の軸方向)全体にわたって略一定の幅を有していてもよいが、図1の例のように、Z方向の一に応じて変化する幅を有していてもよい。各貫通導体の最大の幅は各貫通導体の「第1長さ」とも称される。図1の例では貫通導体31a~31dはテーパー形状を有しているため、それぞれ、Z方向の一端において最大幅を有している。具体的には、貫通導体31a~31cは、それぞれが貫通する絶縁層に対する上層導体層側の端面において最大幅を有している。また、貫通導体31a~31cは、それぞれが貫通する絶縁層に対する下層導体層側の端面において最小幅を有している。貫通導体31dは、Z方向の両端において最大幅を有し、Z方向の略中心部において最小幅を有している。
【0022】
本実施形態では、配線基板100を構成する1以上の絶縁層(図1の例では絶縁層20~23)のうちの少なくとも1つの絶縁層において、その少なくとも1つの絶縁層を貫通する貫通導体は、25μm以下、好ましくは20μm以下の最大幅(第1長さ)を有している。配線基板100の小型化が促進されると考えられる。図1の例では、例えば、貫通導体31a~31cのいずれか1以上が、25μm以下の最大幅を有している。
【0023】
図1図3に例示の配線基板100では、図2に示されるように、導体層11は、金属箔10a、金属膜10b、及びめっき膜10cを含む3層構造を有している。一方、導体層12、並びに貫通導体31a、31b、31dは、金属膜10b及びめっき膜10cを含む2層構造を有している。図示されていないが、導体層15は導体層11と同様の3層構造を、導体層13及び導体層14は導体層12と同様の2層構造を、貫通導体31cは貫通導体31bと同様の2層構造を、それぞれ有し得る。金属箔10aは、例えば銅箔又はニッケル箔などであり、絶縁層20の表面上に形成されている。金属膜10bは、金属箔10a上、又は各絶縁層の表面上に無電解めっき又はスパッタリングによって形成されている。めっき膜10cは、例えば、金属膜10b上を給電層として用いる電解めっきによって形成されている。
【0024】
本実施形態における各貫通導体の最大幅と、各絶縁層に含まれるフィラー4の粒径との関係が、絶縁層21、貫通導体31a、並びに、絶縁層21を挟んで対向する導体層12(上層導体層)及び導体層11(下層導体層)を例に、さらに説明される。図2が主に参照される。図2に示されるように、貫通導体31aは、導体層12側の一端である導体層12との界面において最大幅である第1長さL1を有している。図2の例の貫通導体31aは、25μm以下の第1長さL1を有している。貫通導体31aは、導体層12側の一端と反対側に位置する他端(導体層11との界面)における幅として第2長さL2を有している。
【0025】
図2に示されるように、絶縁層21に含まれる複数のフィラー4を構成する各フィラー41~44は任意の粒径を有している。複数のフィラー4それぞれの「粒径」は、複数のフィラー4それぞれの外表面における任意の2点間の距離のうちの最長距離である。
【0026】
本実施形態では、図2に示される絶縁層21のように25μm以下の第1長さL1を有する貫通導体によって貫通される絶縁層に含まれる複数のフィラー4は、第1長さL1の20%以下の粒径を有するフィラーを含んでいる。「25μm以下の第1長さL1を有する貫通導体によって貫通される絶縁層」は、以下では単に「対象絶縁層」とも称される。
【0027】
本実施形態では、さらに、対象絶縁層に含まれる複数のフィラー4のうち少なくとも各貫通導体(図2の例では貫通導体31a)から第1長さL1の40%以内の領域に存在するフィラーの最大粒径Pxは、第1長さL1の20%以下である。すなわち、対象絶縁層は、各貫通導体から第1長さL1の40%以内の領域には、第1長さL1の20%を超えるフィラー41~44を含んでいない。「各貫通導体から第1長さL1の40%以内の領域」は、以下では単に、各貫通導体の「近傍領域R」とも称される。
【0028】
好ましくは、対象絶縁層に含まれる複数のフィラー4のうち少なくとも各貫通導体から第1長さL1の60%以内の領域に存在するフィラーの最大粒径は、第1長さL1の20%以下である。また好ましくは、対象絶縁層に含まれる複数のフィラー4のうち少なくとも各貫通導体の近傍領域Rに存在するフィラーの最大粒径は、第1長さL1の10%以下である。さらに好ましくは、対象絶縁層に含まれる複数のフィラー4のうち少なくとも各貫通導体から第1長さL1の60%以内の領域に存在するフィラーの最大粒径は、第1長さL1の10%以下であってもよい。
【0029】
本実施形態では、このように少なくとも対象絶縁層において、貫通導体31aのような貫通導体の近傍には、比較的小さな粒径を有するフィラー41~44だけが存在する。従って、例えば絶縁層21において、貫通孔32a内にフィラー41~44が突出し難い。また、製造工程において貫通孔32aの内壁に一旦複数のフィラー4のいずれかが露出しても、貫通導体31aの形成まで残存し難い。すなわち、後述されるように、貫通導体31aの形成では、絶縁層21に貫通孔32aが形成され、例えばめっき処理によって貫通孔32a内に貫通導体31aが形成される。このめっき処理の前に、好ましくは、デスミア処理などの薬液処理が実施される。デスミア処理によって、貫通孔32aの穿孔時に生じた樹脂残渣が除去される。比較的小径のフィラー41~44は、貫通孔32a内に露出しても、このデスミア処理によって剥離する。結果として、貫通導体31aの形成のためのめっき時には、フィラー41~44が内部に突出していない貫通孔32aが得られる。
【0030】
貫通導体31aの最大幅が大きいほど、すなわち貫通孔32aの開口径が大きいほど、貫通孔32a内にデスミア処理などで用いられる薬液が入り込み易い。そのため、貫通孔32aに露出するフィラーが剥離され易い。換言すると、貫通導体31aの最大幅が小さいほど、貫通孔32aに露出するフィラーに対するデスミア処理による剥離力は低下する。しかし貫通導体31aの最大幅の20%以下の粒径のフィラー41~44であれば、例えばデスミア処理のような薬液処理によって十分に剥離され得ると考えられる。
【0031】
フィラー41~44のようなフィラーが内部に突出している貫通孔内に貫通導体が形成されると、後に図7を参照して詳述されるように、貫通導体の電気抵抗の増大や、絶縁層と貫通導体との不十分な密着強度による界面剥離などの問題が生じることがある。このような問題は、貫通導体が比較的大きい場合は顕在化し難い。しかし、貫通導体が狭小であると、貫通導体の断面の面積や、絶縁層と貫通導体との接触面積が小さくなるため、具体的な問題が生じ易い。
【0032】
本実施形態において対象絶縁層は、25μm以下の最大幅を有する貫通導体を含んでおり、比較的狭小な貫通導体を含んでいる。しかし本実施形態では、例えば貫通導体31aの近傍領域Rには、貫通導体31aの最大幅(第1長さL1)の20%以下の粒径を有するフィラー41~44しか存在していない。そのため、そもそも、貫通孔32a内にフィラー41~44が突出し難い。例えばフィラー41~44の粒径に100%のばらつきが生じても、すなわち、最大で第1長さL1の40%の粒径のフィラー41~44が存在しても、フィラー41~44は貫通孔32a内に露出し難い。
【0033】
そして、万一貫通孔32aの形成直後にその内部に露出しているフィラー41~44が存在していても、その後のデスミア処理などの薬液処理によって、粒径の小さいフィラー41~44は容易に除去され得る。図2の例においても、貫通孔32aの壁面に露出してその後剥離した複数のフィラー4のいずれかの痕跡からなる凹部4aが、貫通孔32aの内壁に存在する。このように貫通孔32a内にフィラー41~44が露出してもそのフィラーは除去され易いので、貫通孔32a内に適切に形成された貫通導体31aが得られる。貫通導体31aの電気抵抗の増大や、絶縁層21と貫通導体31aとの剥離などの問題の発生が抑制されると考えられる。
【0034】
さらに、貫通導体31aの近傍に大きな粒径を有するフィラー41~44が存在しないので、フィラー41~44と周囲の樹脂材料との間の熱膨張率の違いに因る貫通孔32aの内壁面のうねりが生じ難いと考えられる。この点からも、絶縁層21と貫通導体31aとの剥離が抑制されると考えられる。
【0035】
本実施形態では、対象絶縁層に含まれている複数のフィラー4全部の粒径のうちの最大粒径が、第1長さL1の20%以下であってもよく、第1長さL1の10%以下であってもよい。すなわち対象絶縁層は、その全体にわたって、第1長さL1の20%を超える粒径を有するフィラーを含んでいなくてもよく、さらに、第1長さL1の10%を超える粒径を有するフィラーを含んでいなくてもよい。その場合、近傍領域Rに存在する複数のフィラー4の最大粒径Pxが、略確実に第1長さL1の20%以下となり、より確実に、貫通孔32aの内部へのフィラー41~44の突出を防ぐことができる。
【0036】
本実施形態では、このように貫通導体の近傍領域Rに比較的大きな粒径のフィラーが存在しないので、フィラーが存在しない絶縁層と貫通導体との界面が得られやすい。図2の例においても、複数のフィラー4は、絶縁層21と貫通導体31aとの界面には存在しない。すなわち、絶縁層21における貫通導体31aとの界面は、複数のフィラー4以外の構成要素、例えば、エポキシ樹脂又はBT樹脂などの樹脂成分によって構成されている。従って、貫通導体31aの電気抵抗の低下や、貫通導体31aと絶縁層21との剥離などの問題が生じ難いと考えられる。
【0037】
図2の例の貫通導体31aが導体層11との界面における幅として有する第2長さL2は、第1長さL1よりも短い。例えば、第2長さL2は第1長さL1の50%以上、80%以下である。複数のフィラー4の全部の粒径のうちの最大粒径は、この第1長さL1よりも短い第2長さL2の20%以下であってもよい。フィラー41~44の貫通孔32aの内部への突出が一層確実に防止されると考えられる。
【0038】
本実施形態では、対象絶縁層における複数のフィラー4の含有率は特に限定されず、含有率は、対象絶縁層に所望される特性に応じて選択され得る。例えば、対象絶縁層における複数のフィラー4の体積含有率としては、30%以上、80%以下が例示される。この範囲の含有率で複数のフィラー4が対象絶縁層に含まれていると、比較的高い含有率を要する所望の特性を達成しながら、貫通孔32aへのフィラー41~44の突出を抑制し得ると考えられる。
【0039】
図2の例では、複数のフィラー4の最大粒径Pxは、絶縁層21の厚さTの20%以上、40%以下である。絶縁層21の厚さTは第1長さL1の50%以上、100%以下である。複数のフィラー4の最大粒径Pxが絶縁層21の厚さTの40%以下であれば、フィラー41~44と周囲の樹脂材料との間の熱膨張率の違いに因る、絶縁層21と導体層11又は導体層12との界面におけるうねりが生じ難いと考えられる。また、第1長さL1の50%以上、100%以下の厚さTを有する絶縁層21には、第1長さL1を有する貫通導体31aが容易、且つ適切に形成されると考えられる。なお、対象絶縁層の厚さは、図2において厚さTで示されるように、対象絶縁層を挟む導体層間の距離である。
【0040】
図2の例では、導体パッド12aは、導体層12と貫通導体31aとの界面の面積よりも大きい面積を有している。そして、導体パッド12aと平面視で重なる領域に存在する複数のフィラー4の最大粒径Pxは、平面視における導体パッド12aの外縁から貫通導体31aの外縁までの距離Dよりも小さい。なお「平面視」は、Z方向に沿う視線で実施形態の配線基板を見ることを意味している。すなわち導体パッド12aに少なくとも一部が覆われているフィラー41~44の粒径のうちの最大粒径Pxは距離Dよりも小さい。このように、対象絶縁層を貫通する貫通導体と一体的に形成されている導体パッドに平面視で少なくとも一部が覆われている複数のフィラー4の最大粒径Pxは、その導体パッドの所謂アニュラリング幅よりも小さくてもよい。複数のフィラー4の膨張又は収縮による、導体パッド12aのような導体パッドと対象絶縁層との界面の平坦性への影響が少ないと考えられる。なお、距離Dは、導体パッド12aのような導体パッド(ビアパッド又はスルーホールパッド)のアニュラリング幅の設計値である。
【0041】
本実施形態の配線基板では、対象絶縁層における複数のフィラー4の粒径に関する平面視での任意の領域間でのばらつきは小さいほど好ましい。このばらつきが小さいと、各貫通導体の近傍領域Rにおける複数のフィラー4の最大粒径の適正さが、少ない箇所の抜き取り検査で十分な信頼性を備えて確認され得るからである。
【0042】
例えば、図3が示す配線基板100の平面図に示される隅部C1、隅部C2、隅部C3、隅部C4、及び中央部C5の間での複数のフィラー4の最大粒径のばらつきは、好ましくは、対象絶縁層を貫通する貫通導体の第1長さL1の5%以下である。複数のフィラー4の最大粒径がこの程度のばらつきであれば、対象絶縁層を貫通する貫通導体の幅に対する複数のフィラーの粒径の適正さが、対象絶縁層全体にわたって、少ない箇所での抜き取り検査で過剰に厳しい判定閾値を用いずに確認され得ると考えられる。
【0043】
図3における隅部C1~C4及び中央部C5は、対象絶縁層の厚さ(例えば図2に示される厚さT)を一辺の長さとして有する単位立方体を平面視で示している。対象絶縁層に含まれる複数のフィラーの粒径のばらつきは、図3に示されるような対象絶縁層の4隅及び中央それぞれで画定される単位立方体中のフィラーの最大粒径間のばらつきを用いて代替され、確認されてもよい。
【0044】
図4には、図1の配線基板100の他の例が示されている。図4は、配線基板100の他の例における図2に示される部分に対応する部分の断面図を示している。前述したように、実施形態の配線基板100では、対象絶縁層に含まれる複数のフィラー4のうち少なくとも近傍領域Rに存在するフィラーの最大粒径Pxが、第1長さL1の20%以下である。換言すると、近傍領域R以外では、対象絶縁層は、第1長さL1の20%を超える粒径を有するフィラーを含み得る。図4に示される実施形態の配線基板100の他の例では、絶縁層21は、フィラー41~45を含む複数のフィラー4を含み、近傍領域R以外の領域に、第1長さL1の20%を超える粒径Pyを有するフィラー45を含んでいる。近傍領域Rよりも、貫通導体31から離れた位置に比較的大きな粒径のフィラー45が存在していても、貫通孔32aの内部に突出するフィラーは生じ難いと考えられる。従って実施形態の配線基板100では、対象絶縁層は、近傍領域R以外の領域において、第1長さL1の20%を超える粒径を有するフィラーを含んでいてもよい。
【0045】
図2及び図4を参照してなされた説明は、絶縁層21、導体層11、導体層12、及び貫通導体31aを、それぞれ、絶縁層22、導体層12、導体層13、及び貫通導体31bと読み替えることによって、絶縁層22、導体層12、導体層13、及び貫通導体31bにも適用され得る。同様に、図2及び図4を参照してなされた説明は、絶縁層20の第2面20b側の各絶縁層、各導体層、及び各貫通導体についても適用され得る。
【0046】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、図1の配線基板100を例に用いて図5A図5Hを参照して説明される。
【0047】
図5Aに示されるように、コア基板10が用意される。例えば複数のフィラー4を含んでいて両面に金属箔(図示せず)が積層された絶縁層20を含む両面銅張積層板101が用意され、絶縁層20の第1面20aに導体層11が形成されると共に、第2面20bに導体層15が形成される。絶縁層20には貫通導体31dが形成される。例えばパネルめっきを含むサブトラクティブ法によって、導体層11、15、及び貫通導体31dが形成される。導体層11及び導体層15は、導体層11の導体パッド11aのような所定の導体パターンを含むようにパターニングされる。
【0048】
図5Bに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、粒状の複数のフィラー4を含む絶縁層21を形成することを含んでいる。図5Bの例では、絶縁層21は、絶縁層20の第1面20a上に形成されている。絶縁層20の第2面20b上には、絶縁層21と同様に粒状の複数のフィラー4を含む絶縁層23が形成されている。例えば、複数のフィラー4を含むフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板10の両面それぞれに積層され、加熱及び加圧される。その結果、絶縁層21及び絶縁層23それぞれが形成される。絶縁層21及び絶縁層23は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。
【0049】
絶縁層21は、所定の長さの20%を超える粒径を有するフィラーを複数のフィラー4に含まない領域R1を有するように形成される。「所定の長さ」は、後工程で形成される貫通導体31a(図5G参照)における絶縁層21の厚さ方向と直交する方向に沿う幅のうちの最大値(最大幅)である。例えば絶縁層21は、所定の長さの20%を超える粒径のフィラーを含まない複数のフィラー4を含有する樹脂を用いて形成される。その場合、所定の長さの20%を超える粒径を有するフィラーを含まない領域R1を絶縁層21に容易に設けることができる。所定の長さの20%を超える粒径のフィラーを含まない複数のフィラー4を含有する樹脂は、前述したようにフィルム状に成形された、エポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂であってもよく、シート状に成形されていてもよい。
【0050】
絶縁層23も、後工程で形成される貫通導体31c(図5G参照)における絶縁層23の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅の20%を超える粒径を有するフィラーを複数のフィラー4に含まない領域R2を含むように形成されてもよい。
【0051】
図5Cに示されるように、絶縁層21及び絶縁層23に、絶縁層21及び絶縁層23それぞれを厚さ方向に貫く貫通孔32aが形成される。貫通孔32aは、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。貫通孔32aは、貫通導体31a又は貫通導体31c(図5G参照)を形成すべく形成される。絶縁層21を貫通する貫通孔32aは、領域R1内に形成される。図5Cの例では、絶縁層23を貫通する貫通孔32aは、領域R2内に形成されている。そのため、貫通孔32aの開口径に対して一定以上の大きさ(前述した「所定の長さ」の20%を超える大きさ)の粒径を有するフィラーは、貫通孔32aに露出し難い。
【0052】
図5Dには、図5CのVD部の拡大図が示されている(後に参照される図5E及び図5Fにも、図5CのVD部における各工程後の状態が示されている)。図5Dに示されるように、貫通孔32a内には、複数のフィラー4のうちの比較的小径の一部のフィラー4xが露出することがある。好ましくは、貫通孔32a内に露出するフィラー4xが除去される。例えば、アルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔32aの内壁を晒すデスミア処理が行われる。デスミア処理によって、貫通孔32aの形成時に生じた樹脂残渣(スミア)と共に、貫通孔32a内に露出するフィラー4xが除去される。貫通孔32aの周囲には比較的小径のフィラーしか存在しないので、貫通孔32a内に露出するフィラー4xは容易に除去され得る。
【0053】
図5Eには、デスミア処理後の貫通孔32aが示されている。図5Eに示されるように貫通孔32aの内壁には、剥離したフィラーの痕跡からなる凹部4aが形成されている。このように、複数のフィラー4のうちの一部の小径のフィラーが貫通孔32a内に一旦露出しても、小径のフィラーは、剥離し易く、また除去され易いので、貫通孔32aの内部にフィラーが残存し難い。従って、後工程において貫通導体31a(図5G参照)を適切に形成することができる。
【0054】
図5Fに示されるように、絶縁層21の表面上、貫通孔32aの内壁上、及び貫通孔32aに露出する導体パッド11a上に、例えば無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜10bが形成される。図5Fの例では、貫通孔32aの内壁の凹部4aの内部にも金属膜10bが形成されている。複数のフィラー4のうち、貫通孔32aの内壁から貫通孔32aの内部に向かって突出するフィラーが存在し難く、現に図5Fの例では存在しないので、貫通孔32aの内壁においてめっき金属などの未析出箇所などが生じ難い。従って、金属膜10bの未着部分が生じ難いと考えられる。
【0055】
図5Gに示されるように、絶縁層21上に導体層12が形成されると共に、貫通孔32a内に貫通導体31aが形成される。貫通導体31aによって導体層12と導体層11とが接続される。絶縁層20の第2面20b側では、絶縁層23上に導体層14が形成されると共に、導体層14と導体層15とを接続する貫通導体31cが形成される。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、複数のフィラー4を含む絶縁層(絶縁層21、23)を挟んで対向する2つの導体層それぞれ(導体層11、12、14、15)を形成することを含んでいる。さらに、本実施形態の配線基板の製造方法は、複数のフィラー4を含む絶縁層を貫通してその絶縁層を挟む2つの導体層同士を接続する貫通導体(貫通導体31a、31c)を形成することを含んでいる。
【0056】
また貫通導体31aを形成することは、前述したように、絶縁層21を厚さ方向に貫く貫通孔32aを形成することと、複数のフィラー4のうちの貫通孔32aの内壁面に露出するフィラーを除去することとを含み得る。同様に、貫通導体31cを形成することも、絶縁層23を厚さ方向に貫く貫通孔32aを形成することと、複数のフィラー4のうちの貫通孔32aの内壁面に露出するフィラーを除去することとを含み得る。
【0057】
貫通導体31aは、絶縁層21の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅が、25μm以下となるように、好ましくは20μm以下となるように形成される。ファインピッチで並ぶ配線パターンを導体層12及び導体層11に形成し得ることがある。同様に貫通導体31cも、絶縁層23の厚さ方向と直交する方向に沿う最大幅が、25μm以下となるように、好ましくは20μm以下となるように形成されてもよい。
【0058】
貫通導体31a、31cは、それぞれ、貫通孔32a内に形成される。絶縁層21を貫通する貫通孔32aは、貫通導体31aの最大幅の20%を超える粒径を有するフィラーを含まない領域R1内に形成されている。従って、貫通導体31aも領域R1の内部に形成される。領域R1内に貫通導体31aが形成されるので、複数のフィラー4のうちの比較的粒径の大きなフィラーは、貫通導体31aの内部に向かって突出し難い。図5Gの例では、貫通導体31cも、貫通導体31cの最大幅の20%を超える粒径を有するフィラーを含まない領域R2の内部に形成されている。貫通導体31cの内部へのフィラーの突出が抑制されるとか考えられる。
【0059】
貫通導体31aは、好ましくは、領域R1の外縁との間に、貫通導体31aの最大幅の40%を超える間隔を有するように形成される。換言すると、絶縁層21は、好ましくは、領域R1の外縁と、後工程で形成される貫通導体31aとの間に、貫通導体31aの最大幅の40%を超える間隔が確保されるように形成される。このような間隔が確保されることによって、貫通孔32aの開口径がばらついても、及び/又は、複数のフィラー4の粒径がばらついても、貫通孔32aの内部に比較的大きな粒径のフィラーが露出し難いと考えられる。結果として、貫通導体31aの内部へのフィラーの突出が抑制されると考えられる。なお、貫通導体31cも、好ましくは、領域R2の外縁との間に、貫通導体31cの最大幅の40%を超える間隔を有するように形成される。
【0060】
導体層12、14及び貫通導体31a、31cは、例えば電解めっきを用いるパターンめっきによって形成される。導体層12、14は、前述した金属膜10b(図5F参照)の不要部分を除去することによって、導体パッド12aのような所定の導体パターンを含むようにパターニングされる。すなわち、図5F及び図5Gの例では、導体層12、14及び貫通導体31a、31cは、金属膜10bの形成を含むセミアディティブ法によって形成されている。前述したように金属膜10bの形成時には貫通孔32aの内部に突出する複数のフィラー4が存在し難い。そのため、貫通孔32aの内壁との未着部分が少なく、また貫通孔32aの内壁との界面剥離などが生じ難い、貫通導体31a、31cが形成されると考えられる。
【0061】
図5Hに示されるように、さらに、絶縁層22、導体層13、及び貫通導体31bが形成され、絶縁層20の第2面20b側では、さらに、絶縁層23、導体層14、及び貫通導体31cが形成される。絶縁層22、及びさらに形成される絶縁層23は、それぞれ、例えば絶縁層21の形成方法と同様の方法で形成される。導体層13、及びさらに形成される導体層14は、それぞれ、例えば導体層12の形成方法と同様の方法で形成される。また貫通導体31b、及びさらに形成される貫通導体31cは、それぞれ、例えば貫通導体31aの形成方法と同様の方法で形成される。そのため、貫通導体31b、及び、さらに形成される貫通導体31cにおいても、各貫通導体の内部へのフィラーの突出が抑制される。
【0062】
図1の配線基板100が製造される図5Hの例では、ソルダーレジスト層6が形成されている。ソルダーレジスト層6には導体層13又は導体層14の一部を露出させる開口61が設けられる。ソルダーレジスト6及び開口61は、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成される。
【0063】
以上の工程を経る事によって、図1の例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト層6の開口61内に露出する導体層13又は導体層14の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0064】
図6Aには、実施形態の配線基板の製造方法の一実施例における、先に参照した図5Eに示されるデスミア処理後の貫通孔32aの平面視でのSEM画像が示されている。図6Bには、図6Aの一実施例に対する比較例における、デスミア処理後の貫通孔132aの平面視でのSEM画像が示されている。
【0065】
図6Aに示される実施例では、1μmの最大粒径を有する複数のフィラーを含む絶縁層21に、10μmの最大幅を有する貫通導体の形成のために10μmの開口径を有する貫通孔32aが形成されている。すなわち、複数のフィラーの最大粒径は、貫通導体の最大幅の10%程度である。一方、図6Bの比較例では、5μmの最大粒径を有する複数のフィラーを含む絶縁層121に、15μmの最大幅を有する貫通導体の形成のために15μmの開口径を有する貫通孔132が形成されている。すなわち、複数のフィラーの最大粒径は、貫通導体の最大幅の33%程度である。
【0066】
図6Aに示されるように、一実施例では、貫通孔32aの内部にフィラーは露出していない。一方、図6Bの比較例では、貫通孔132の内部にフィラー104が露出しており、貫通孔132の内壁からフィラー104が突出している。図6A及び図6Bに示される実施例及び比較例から、貫通導体の幅(最大幅)に対して、少なくとも30%以上の粒径のフィラーを絶縁層に含めないことによって、貫通孔32aの内部へのフィラーの突出を抑制し得ることが解る。また、複数のフィラーは絶縁層21内に略一様に分散されていると考えられるので、図6Aの実施例においても、貫通孔32aの形成直後には、貫通孔32aの内部に露出するフィラーが存在していたものと考えられる。しかし、その露出するフィラーの粒径は1μm以下と小さいため、そのフィラーと貫通孔32aの内壁との付着力は比較的小さいと考えられる。そのため、露出していたフィラーがデスミア処理によって剥離したと推定される。このように、形成される貫通導体の幅に対して一定以上の比率で小さい粒径を有するフィラーだけを(特に貫通導体近傍の領域の)絶縁層に含めることによって、貫通導体の内部へのフィラーの突出を抑制し得ることがある。
【0067】
図6Bの例のように、貫通孔132内にフィラー104が露出し、結果として貫通導体の内部にフィラーが突出する場合に生じ得る問題が、図7を参照して説明される。図7には、絶縁層121を貫通する貫通孔132の内部に形成された貫通導体131が示されている。貫通孔132の内壁からは貫通導体131の内部に向かってフィラー104が突出している。
【0068】
図7に示されるようにフィラー104が貫通孔132の内壁から突出していると、金属膜110を形成する際の無電解めっきのめっき液がフィラー104の下側まで回り込み難く、金属膜110の未着部分F1が生じることがある。また、例えば電解めっきによるめっき膜111の形成においても、フィラー104の下側などでのめっき液の循環性が低下してめっき膜111内にボイドF2が生じることがある。
【0069】
貫通導体131の形成後においても、フィラー104とめっき膜111との密着力不足などに起因して、フィラー104を起点とするクラックF3が発生することがある。さらに、配線基板の使用時においても、図7において導電路幅Cで示されるように、貫通導体131において通電方向に交差する方向の実質的な幅が狭くなるため、貫通導体131の電気抵抗が上昇し、配線基板の電気的特性が低下することがある。
【0070】
先に説明された実施形態の配線基板、及びその製造方法によれば、貫通孔の内部や貫通導体の内部へのフィラーの突出が抑制される。そのため、図7に示されるような不具合が抑制され、結果として、貫通導体の電気的特性の低下、及び/又は、貫通導体と絶縁層との密着強度の低下などの問題が抑制されると考えられる。
【0071】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。実施形態の配線基板では、一部の絶縁層だけが、粒状の複数のフィラーを含んでいてもよい。その粒状の複数のフィラーを含む絶縁層は、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る
【0072】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば各導体層は、フルアディティブ法によって形成されてもよい。また、小径のフィラーは自然落下などによっても貫通孔の内壁から剥離し得るので、デスミア処理は必ずしも実行されなくてもよい。各絶縁層の貫通孔は、レーザー光の照射以外の方法で行われてもよい。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 配線基板
11 導体層(下層導体層)
12 導体層(上層導体層)
12a 導体パッド
13~15 導体層
20~23 絶縁層
31a~31c 貫通導体(ビア導体)
31d 貫通導体(スルーホール導体)
32a 貫通孔
4 複数のフィラー
41~45 各フィラー
4x 露出するフィラー
D 導体パッドの外縁から貫通導体の外縁までの距離
L1 貫通導体の最大幅(第1長さ)
L2 貫通導体の幅(第2長さ)
Px 近傍領域内のフィラーの最大粒径
R 貫通導体から第1長さの40%以内の領域(近傍領域)
T 絶縁層の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図7