IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空調制御システムおよび推論装置 図1
  • 特開-空調制御システムおよび推論装置 図2
  • 特開-空調制御システムおよび推論装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182719
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】空調制御システムおよび推論装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20221201BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20221201BHJP
   F24F 11/59 20180101ALI20221201BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20221201BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221201BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20221201BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20221201BHJP
   F24F 120/10 20180101ALN20221201BHJP
   F24F 120/20 20180101ALN20221201BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/64
F24F11/59
F24F110:20
F24F110:10
F24F110:70
F24F110:30
F24F120:10
F24F120:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090426
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】折戸 真理
(72)【発明者】
【氏名】服巻 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】峯澤 聡司
(72)【発明者】
【氏名】古橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伏江 遼
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB02
3L260AB13
3L260AB14
3L260AB15
3L260BA02
3L260BA05
3L260BA09
3L260BA41
3L260CA02
3L260CA03
3L260CA04
3L260CA08
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260CA28
3L260CA29
3L260CB63
3L260CB64
3L260EA07
3L260EA22
3L260EA28
3L260FB01
3L260GA02
3L260HA01
3L260JA18
(57)【要約】
【課題】ユーザの生活シーンにより適切に対応した空調制御を支援可能な空調制御システムを提供する。
【解決手段】本開示に係る空調制御システムは、予め設定された複数の生活シーンの情報を記憶する生活シーン記憶部11と、上記の複数の生活シーンのそれぞれに対応した環境状態の情報を記憶する環境状態記憶部12と、上記の複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを選択して同一の対象空間に対して同時に設定する生活シーン選択部40と、生活シーン選択部40によって設定された複数の生活シーンに対応した環境状態の全てが同時に実現可能な場合に、当該環境状態を実現する制御内容に基づいて空調機器100を制御する空調機器制御部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された複数の生活シーンの情報を記憶する生活シーン記憶手段と、
前記複数の生活シーンのそれぞれに対応した環境状態の情報を記憶する環境状態記憶手段と、
前記複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを選択して同一の対象空間に対して同時に設定する選択手段と、
前記選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した前記環境状態の全てが同時に実現可能な場合に、当該環境状態を実現する制御内容に基づいて空調機器を制御する空調機器制御手段と、
を備える空調制御システム。
【請求項2】
前記選択手段は、ユーザからの操作に応じて前記複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを選択する請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記対象空間の空間環境情報を取得する環境情報取得手段を備え、
前記選択手段は、前記空間環境情報に応じて前記複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを推定して選択する請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記複数の生活シーンには優先順位が設定され、
前記空調機器制御手段は、前記選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した前記環境状態の全てを同時に実現することが不可能な場合に、当該複数の生活シーンのうち前記優先順位の高いものを優先し、優先した生活シーンに対応した前記環境状態を実現する制御内容に基づいて空調機器を制御する請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記空調機器制御手段によって制御される空調機器の位置および運転情報、前記対象空間内における人に関する情報、並びに、前記対象空間の形状および環境情報を含む入力データを取得するデータ取得部と、
前記入力データから前記空調機器制御手段によって制御される空調機器の制御内容を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部が取得した前記入力データから、前記選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した前記環境状態を実現する制御内容を出力する推論部と、
をさらに備え、
前記空調機器制御手段は、前記推論部から出力された制御内容に基づいて空調機器を制御する請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記空調機器制御手段が前記推論部から出力された制御内容に基づいて空調機器を制御した後に、前記データ取得部が取得した前記入力データを用いて、前記学習済モデルを更新するモデル更新部をさらに備えた請求項5に記載の空調制御システム。
【請求項7】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空調制御システムに使用される、前記空調機器制御手段によって制御される空調機器の制御内容を推論する推論装置であって、
前記空調機器制御手段によって制御される空調機器の位置および運転情報、前記対象空間内における人に関する情報、並びに、前記対象空間の形状および環境情報を含む入力データを取得するデータ取得部と、
前記入力データから前記制御内容を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部が取得した前記入力データから、前記選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した制御内容を出力する推論部と、
を備えた推論装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御システムおよび推論装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環境情報に基づいて定義された生活シーンに応じた空調制御を行う空調システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-016045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、ユーザの単一の生活シーンに対応することはできる。しかしながら、実際には、同一空間において、ユーザの生活シーンが複数種類同時に混在することがあり得る。特許文献1に記載の従来技術においては、このようなケースに対応しきれないという課題がる。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、ユーザの生活シーンにより適切に対応した空調制御を支援可能な空調制御システムおよび推論装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調制御システムは、予め設定された複数の生活シーンの情報を記憶する生活シーン記憶手段と、上記の複数の生活シーンのそれぞれに対応した環境状態の情報を記憶する環境状態記憶手段と、上記の複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを選択して同一の対象空間に対して同時に設定する選択手段と、選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した環境状態の全てが同時に実現可能な場合に、当該環境状態を実現する制御内容に基づいて空調機器を制御する空調機器制御手段と、を備える。
本開示に係る推論装置は、上記の空調制御システムに使用される、空調機器制御手段によって制御される空調機器の制御内容を推論する推論装置であって、空調機器制御手段によって制御される空調機器の位置および運転情報、対象空間内における人に関する情報、並びに、対象空間の形状および環境情報を含む入力データを取得するデータ取得部と、入力データから制御内容を推論するための学習済モデルを用いて、データ取得部が取得した入力データから、選択手段によって設定された複数の生活シーンに対応した制御内容を出力する推論部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空調制御システムおよび推論装置であれば、ユーザの生活シーンにより適切に対応した空調制御を支援可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る空調制御システムの動作例を示すフロー図である。
図3】実施の形態1の変形例に係る推論装置および空調機器からなる空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る空調制御システムおよび推論装置を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、以下の実施の形態およびその変形例によって開示される任意の構成要素の自由な組み合わせ、任意の構成要素の変形、または、任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る空調制御システムの構成を示すブロック図である。まず、図1を参照して、本実施の形態に係る空調制御システムの構成について説明する。
【0011】
空調制御システムは、ユーザの生活シーンに対応した適切な環境状態を実現するように、空調機器100の制御を行うシステムである。なお、空調制御システムは、複数の空調機器100を連携させてもよいし、単一の空調機器100を動作させてもよい。空調機器100としては、例えば、エアコン101、除湿機または加湿器等の調湿機102、各種の換気機器103、空気清浄機104、扇風機等の各種の送風機105、並びに、脱臭機等のその他の空調機器100等、各種のものが該当する。空調機器100は、ユーザが生活する室内空間等の対象空間の空気調和を行う。
【0012】
本実施の形態に係る空調制御システムは、システム全体の制御をするための制御手段として、システム制御部10を備える。システム制御部10は、生活シーン記憶部11を有する。生活シーン記憶部11には、予め設定された複数の生活シーンの情報が記憶される。生活シーン記憶部11は、本開示に係る生活シーン記憶手段の一例である。
【0013】
生活シーン記憶部11に記憶される複数の生活シーンには、ユーザの活動状態に関する生活シーンが含まれる。ユーザの活動状態に関する生活シーンとしては、例えば、「室内干し」、「運動」、「勉強」および「睡眠」等が挙げられる。また、生活シーン記憶部11に記憶される複数の生活シーンには、実現したいユーザあるいは対象空間の状態に関する生活シーンが含まれてもよい。実現したいユーザあるいは対象空間の状態に関する生活シーンとしては、例えば、「快適」、「消臭」、「脱臭」等が挙げられる。また、その他の生活シーンとして、「省エネ」等の生活シーンの情報が生活シーン記憶部11に記憶されていてもよい。上記の各生活シーンは、あくまで一例を示すものに過ぎない。
【0014】
図1に示すように、システム制御部10は、環境状態記憶部12を有する。環境状態記憶部には、生活シーン記憶部11に記憶された複数の生活シーンのそれぞれに対応した環境状態の情報が記憶される。環境状態記憶部12は、本開示に係る環境状態記憶手段の一例である。なお、本開示における「環境状態」とは、対象空間内に設置されたセンサ等の機器で取得可能な環境情報を含むものである。「環境情報」としては、例えば、温度および湿度等が挙げられる。
【0015】
ここで、各生活シーンに対応した環境状態の設定の具体例を示す。なお、以下の環境状態の設定の具体例は、あくまで一例を示すものであり、本開示においては、その他の各種の例が含まれ得る。
【0016】
まず、上述した、ユーザの活動状態に関する生活シーンに対応する環境状態の具体例を示す。例えば、「室内干し」に対応する環境状態として、「対象物体の表面温度が室温より2℃以上低い状態。湿度を50%RH以下とする。」という環境状態が設定される。例えば、「運動」に対応する環境状態として、「人体の表面温度が平常時より5℃以上高い状態。夏季の場合には、温度が22~26℃で湿度が45~55%RHの状態とする。また、二酸化炭素濃度を、1000ppm以下の状態とし、風速を0.3~0.8m/sとする。」という環境状態が設定される。例えば、「勉強」に対応する環境状態として、「夏季の場合には、温度で26~28℃で湿度が50~60%RHの状態とする。また、二酸化炭素濃度を、1000ppm以下の状態とし、風速を0.5m/sとする。」という環境状態が設定される。例えば、「睡眠」に対応する環境状態として、「夏季の場合には、温度が26~28℃で湿度が40~60%RHの状態とする。また、二酸化炭素濃度を、1000ppm以下の状態とし、風速を0.3m/s以下にする。」という環境状態が設定される。
【0017】
次に、上述した、実現したいユーザあるいは対象空間の状態に関する生活シーンに対応する環境状態の具体例を示す。例えば、「快適」に対応する環境状態として、「ユーザの人体表面温度を33~34℃とし、PMVを±1の範囲にする。夏季の場合には、温度が25~27℃で湿度が50~60%RHの状態とする。また、二酸化炭素濃度を、1000ppm以下の状態とし、風速を0~0.8m/sとする。」という環境状態が設定される。
【0018】
「消臭」という生活シーンは、エアコン101の熱交換器の付着臭の放出を抑制するための生活シーンである。例えば、「消臭」に対応する環境状態として、「夏季で室温が28℃以下の場合には、室温を26℃以下にする。夏季で室温が28℃以上の場合には、湿度を55%RH以下にする。」という環境状態が設定される。また、例えば、室内の匂いを除去するための生活シーンである「脱臭」に対応する環境状態として、「アンモニア濃度を0.1ppm以下にする。」という環境状態が設定される。
【0019】
また、その他の生活シーンである「省エネ」に対応する環境状態として、例えば、「消費電力量を閾値以内に抑える。夏季の場合には、室温を28℃以上とする」という環境状態が設定される。
【0020】
例えば、生活シーン記憶部11に記憶される生活シーンは、ユーザによって追加可能であってもよい。生活シーンの名称および対応する環境状態は、ユーザが任意に設定可能であってもよい。また、生活シーンおよび対応する環境状態の情報は、例えば、インターネット等を利用して、サーバあるいはデータベース等からダウンロードしてもよい。
【0021】
本実施の形態に係る空調制御システムは、生活シーン記憶部11に記憶された複数の生活シーンから任意の複数の生活シーンを選択して同一の対象空間に対して同時に設定する選択手段の一例として、生活シーン選択部40を備える。生活シーン選択部40は、ユーザからの操作に応じて任意の複数の生活シーンを選択し、選択した複数の生活シーンを同一の対象空間に対して同時に設定する。
【0022】
生活シーン選択部40は、例えば、各種の音声操作デバイスあるいはリモコンとして構成され得る。また、生活シーン選択部40は、スマートフォンあるいはタブレット端末として構成されてもよい。生活シーン選択部40は、空調機器100あるいはシステム制御部10を通信可能な機器として構成され得る。また、生活シーン選択部40は、例えば、システム制御部10に組み込まれた機器であってもよい。
【0023】
また、システム制御部10は、空調機器100を制御する空調機器制御手段の一例として空調機器制御部13を有する。空調機器制御部13は、生活シーン選択部40によって選択された設定された複数の生活シーンに対応した環境状態の全てが同時に実現可能な場合に、当該環境状態を実現する制御内容に基づいて空調機器100の制御を行う。
【0024】
以上のように構成された空調制御システムによれば、ユーザの生活シーンにより適切に対応した空調制御を支援することが可能となる。ここで、具体的な空調制御の実施例について説明する。
【0025】
例えば、「室内干し」と「快適」とが同時に選択されて設定されている場合には、「温度が25~27℃で湿度が45~50%RHとなる環境状態」を実現するように、エアコン101を制御する。また、例えば、対象空間内にユーザが不在の状態で「室内干し」と「省エネ」とが同時に選択されて設定されている場合には、「湿度を50%RH以下となる環境状態」を実現するように、再熱処理なしの除湿モードでの運転をエアコン101に実行させる。なお、エアコン101による除湿動作は、対象物体の表面温度を検出する赤外線センサの検出結果に応じて制御されてもよい。
【0026】
例えば、対象空間内に複数のユーザが同時に存在し、「勉強」と「運動」とが同時に選択されている場合には、「湿度が26℃で湿度が50~55%RHとなる環境状態」を実現させつつ、風速が0.5m/sと0.8m/sとの吹き分けをするように、エアコン101を制御する。
【0027】
なお、複数の生活シーンに同時に対応する環境状態の実現のためには、エアコン101等の単一の空調機器100だけでなく、複数の空調機器100を連携させてもよい。
【0028】
本実施の形態に係る空調制御システムによる空調機器100の制御は、例えば、環境情報取得手段の一例である情報取得部50が取得する空間環境情報51に基づいて行われる。情報取得部50は、各種のセンサ等から構成される。本実施の形態における空間環境情報51には、在室者情報52、空間情報53、環境情報54、並びに、空調機情報55が含まれる。
【0029】
在室者情報52とは、対象空間内における人に関する情報である。在室者情報52には、例えば、対象空間内における人の在不在、人数または在室率、人の配置、行動状態、心理状態、運動量およびバイタル情報等が含まれ得る。バイタル情報としては、例えば、心拍数、LF/HF、脳波、代謝量および加速度等が該当する。在室者情報52は、例えば、熱画像または実画像を撮像することによって取得することができる。また、在室者情報52は、例えば、音を検出することによっても取得することができる。在室者情報52は、例えば、ビーコン、人感センサ、オフィス什器に設置された加速度センサ、並びに、接触式あるいは非接触式の生体センサ等の機器を用いることで取得することができる。また、在室者の操作によるチェックイン情報あるいはユーザが登録する申告データ等を用いて、在室者情報52を取得してもよい。
【0030】
空間情報53とは、対象空間の形状の情報である。ここでいう「形状」には、「大きさ」も含まれる。空間情報53は、例えば、熱画像または実画像を撮像することによって取得することができる。また、空間情報53は、予め登録されていてもよいし、あるいは、空調機器100の台数等から推定してもよい。
【0031】
環境情報54には、例えば、温度、二酸化炭素濃度、臭気の有無または濃度、湿度、粉塵量、風速、並びに、風向等が含まれ得る。環境情報54は、温度センサ、カメラ、二酸化炭素濃度センサ、臭気センサ、湿度センサ、粉塵センサおよび風速センサ等のセンサ機器を用いることで取得することができる。また、環境情報54は、シミュレーション結果から取得してもよいし、推定算出値であってもよい。
【0032】
空調機情報55には、空調機器100の位置および運転情報が含まれる。空調機情報55は、例えば、無線または有線による任意のネットワークを介して、空調機器100から取得する。なお、空調機情報55は、空調機器100から取得せずに、予め設定されていてもよい。また、対象空間の図面等から、空調機情報55を登録可能としてもよい。
【0033】
また、図1に示すように、本実施の形態に係る空調制御システムは、生活シーンに対応した環境状態を実現するための空調機器100の制御内容を記憶する制御内容記憶手段として、制御内容記憶部14を備えていてもよい。
【0034】
制御内容記憶部14は、生活シーンに対応した環境状態を実現するために動作させる空調機器100の情報および当該空調機器100に対して行う制御内容の情報が、各生活シーンに紐付けて記憶される。例えば、「室内干し」の生活シーンに対しては、「エアコン101によって温湿度調整を行う。調湿機102によって湿度調整を行う。表面温度センサによって対象物の表面温度の検出を行い、検出結果に基づいた制御を行う。」といった制御内容の情報が紐付けられる。例えば、「運動」、「勉強」、「快適」および「睡眠」という生活シーンに対しては、「人体の表面温度を検出する赤外線センサの検出値をもとに動作する空調機器100を動作させる。」といった制御内容の情報が紐付けられる。また、特定の生活シーンに対して「温湿度調整はエアコン101によって行い、二酸化炭素濃度調整は換気機器103によって行う。」といったような、複数機器を連携させる制御内容の情報が紐付けられてもよい。空調機器制御部13は、制御内容記憶部14に記憶された制御内容から、生活シーンに対応した環境状態を実現可能な制御内容を選択し、当該制御内容に基づいて空調機器100の制御を行ってもよい。
【0035】
上述したように、生活シーン選択部40は、システム制御部10に組み込まれていてもよい。この場合、生活シーン選択部40は、ユーザからの操作に依らず、自動的に生活シーンの選択および設定を行ってもよい。より具体的には、生活シーン選択部40は、対象空間の空間環境情報51に応じて任意の複数の生活シーンを推定して選択してもよい。本例によれば、ユーザによる生活シーンの選択の手間が省略される。
【0036】
ここで、生活シーン選択部40による生活シーンの推定の具体例について示す。例えば、「湿度が所定の感覚で所定値以上上昇する場合」、あるいは、「熱画像分布において周囲に比べて温度が所定位置以上低いエリアが突然出現した場合」には、生活シーンは「室内干し」であると推定することができる。また、「夏季に人として検出された熱画像において表面温度が閾値以上の部分が出現したとき」、あるいは、「冬季に人として検出された熱画像において表面温度が閾値以下の部分が出現したとき」には、生活シーンは「快適」であると推定することができる。また、「特定エリアの表面温度が閾値以上となった場合」には、生活シーンは「勉強」または「運動」であると推定することができる。なお、生活シーン選択部40が生活シーンを自動で推定して選択する場合には、推定結果あるいは推定結果に基づく制御内容の情報をユーザに報知してもよい。
【0037】
また、図2は、実施の形態1に係る空調制御システムの動作例を示すフロー図である。まず、生活シーン選択部40による生活シーンの選択が行われることによって動作が開始する。同一の対象空間に対して同時に複数の生活シーンが選択されていない場合(ステップS01)には、選択された生活シーンに対応した環境状態を実現するための空調機器100の制御内容が決定し(ステップS10)、決定した制御内容に基づいて空調制御が実行される(ステップS11)。
【0038】
ステップS01において、複数の生活シーンが選択されている場合には、複数の生活シーンに対応した環境状態の全てを同時に実現することが可能かの判定がされる(ステップS02)。実現可能な場合には、ステップS10およびステップS11の処理が実行される。
【0039】
実際の場面においては、選択された複数の生活シーンに対応した環境状態のそれぞれが矛盾することがありえる。そこで、生活シーン記憶部11に記憶される複数の生活シーンには、優先順位が設定されてもよい。ステップS02において、複数の生活シーンに対応した環境状態の全てを同時に実現することが不可能であると判定した場合には、優先順位の高い生活シーンを優先し(ステップS03)、優先した生活シーンに対応した環境状態を実現するように、ステップS10で制御内容を決定してもよい。
【0040】
なお、上記のステップS10における制御内容の決定は、例えば、対象空間内の人の在不在の判定、対象空間内の人数の判定、対象空間内における吹き分けが可能であるかの判定、並びに、対象空間における実際の環境状態の判定、等の各種の判定結果に基づいて決定される。
【0041】
選択された複数の生活シーンに対応した環境状態のそれぞれが矛盾する場合における優先順位の具体例を示す。生活シーンの優先順位は、例えば、対象空間に人がいる場合には、人の状態に関わる「運動」、「勉強」、「快適」および「睡眠」等を優先するように設定されてもよい。例えば、「快適」と「省エネ」とが選択された場合には、「快適」を優先する。また、人の状態に関わる複数の矛盾する生活シーンが選択された場合には、人の意識レベルが低い「睡眠」等を優先してもよい。このように、生活シーンの優先順位は、予め定められたルールに基づいて設定されてもよい。また、ユーザが優先順位を自由に設定可能であってもよい。あるいは、矛盾する複数の生活シーンが選択された場合、その旨をユーザに報知してもよい。報知を受けたユーザは、優先する生活シーンを選択してもよい。
【0042】
上述したシステム制御部10の機能は、処理回路によって実現することができる。処理回路には、例えば、図示しないプロセッサ及びメモリが備えられている。システム制御部10は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実行し、空調機器100の動作を制御する。
【0043】
また、図3は、実施の形態1の変形例に係る推論装置30および空調機器100からなる空調制御システムの構成を示すブロック図である。空調制御システムの機能の一部は、推論装置30を用いることで実現可能である。推論装置30を用いることで、より適切な空調制御を自動的に実行することが可能となる。推論装置30は、空調機器制御部13によって制御される空調機器100の制御内容を推論するものである。なお、生活シーン選択部40が生活シーンの推定を行う場合においては、推論装置30によって当該推定機能を実現してもよい。
【0044】
推論装置30は、データ取得部31および推論部32を備えている。推論装置30の処理回路には、例えば、図示しないプロセッサ及びメモリが備えられている。推論装置30は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって予め設定された処理を実行し、推論装置30の動作を制御する。すなわち、推論装置30においてメモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行し、推論装置30のハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、推論装置30が備えるデータ取得部31および推論部32の機能が実現される。
【0045】
プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリには、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0046】
なお、システム制御部10の処理回路および推論装置30の処理回路のそれぞれは、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。処理回路のそれぞれの一部が専用のハードウェアとして形成され、かつ、これらの処理回路にプロセッサ及びメモリが備えられていてもよい。一部が専用のハードウェアとして形成される処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0047】
空調機器制御部13と推論装置30とは、通信可能に接続されている。また、推論装置30と空調機器100とは、空調機器制御部13を介して通信可能に接続されている。
【0048】
学習済モデル記憶部20には、学習済モデルが記憶されている。学習済モデル記憶部20に記憶される学習済モデルは、データ取得部31への入力データから制御内容を推論するためのものである。学習済モデル記憶部20に記憶される学習済モデルは、例えば、学習装置により生成される。学習済モデル記憶部20は、例えば、推論装置30と通信可能に設けられたサーバ装置等に備えられる。また、学習済モデル記憶部20を推論装置30に設けてもよい。
【0049】
推論装置30のデータ取得部31は、推論装置30への入力データを取得する。入力データには、上述した在室者情報52、空間情報53、環境情報54、並びに、空調機情報55が含まれている。データ取得部31は、上述した情報取得部50から、各入力データとして取得する。なお、対象空間の形状は、基本的に不変である。このため、データ取得部31は、推論の都度、対象空間の形状を取得するのではなく、予めこれらのデータを記憶する記憶装置から対象空間の形状を取得してもよい。同様に、データ取得部31は、推論の都度、空調機器100の位置を取得するのではなく、予めこれらのデータを記憶する記憶装置から空調機器100の位置を取得してもよい。
【0050】
推論装置30の推論部32は、学習済モデル記憶部20に記憶されている学習済モデルを用いて、データ取得部31が取得した入力データから、制御内容を推論する。推論部32は、データ取得部31が取得した入力データを、学習済モデルに入力することで、入力データから推論される制御内容を出力することができる。このようにして、推論部32は、入力データから制御内容を推論するための学習済モデルを用いて、データ取得部31が取得した入力データから制御内容を出力する。
【0051】
また、推論装置30は、モデル更新部33をさらに備えていてもよい。推論装置30のモデル更新部33は、推論部32から出力された制御内容に基づいて空調機器制御部13が空調機器100を制御した後に、学習済モデルを更新する。このモデルの更新する際、データ取得部31は、推論部32から出力された運転内容に基づいて制御部41が空調手段を制御した後に、入力データを再度取得する。そして、モデル更新部33は、データ取得部31により再度取得された入力データを用いて、学習済モデル記憶部20に記憶されている学習済モデルを更新する。モデル更新部33は、学習装置による学習済モデルの生成と同様の処理により、学習済モデルを更新できる。モデル更新部33により更新された学習済モデルは、学習済モデル記憶部20に記憶され、次回の推論部32による推論に利用される。
【0052】
学習済モデルの更新にあたっては、想定した環境状態が再現できたかの評価が行われる。この評価結果に応じて、学習済モデルの更新が行われる。評価は、環境制御システム自体が自動で行ってもよいし、ユーザによって入力される主観の評価情報を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 システム制御部
11 生活シーン記憶部
12 環境状態記憶部
13 空調機器制御部
14 制御内容記憶部
20 学習済モデル記憶部
30 推論装置
31 データ取得部
32 推論部
33 モデル更新部
40 生活シーン選択部
50 情報取得部
51 空間環境情報
52 在室者情報
53 空間情報
54 環境情報
55 空調機情報
100 空調機器
101 エアコン
102 調湿機
103 換気機器
104 空気清浄機
105 送風機
図1
図2
図3