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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018272
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】光量調節装置および携帯端末
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20220120BHJP
   G03B 9/06 20210101ALI20220120BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220120BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220120BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220120BHJP
【FI】
G03B9/02 C
G03B9/06
G03B5/00 J
G02B7/04 E
G02B7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121267
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川久保 直樹
【テーマコード(参考)】
2H044
2H080
2K005
【Fターム(参考)】
2H044AG01
2H044BE02
2H044BE06
2H044BE10
2H080AA21
2H080AA34
2H080AA38
2H080AA54
2H080AA64
2H080AA76
2K005AA04
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA53
(57)【要約】
【課題】小型で、光通過口の面積を多段階に変化させることができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】光通過開口1bを有するベース部材1と、表裏が重なり合うように光通過開口1bの周囲に環状に配置され、光通過開口1b内に進退して絞り開口を形成する複数の絞り羽根9と、光通過開口1bの周囲を回動して絞り羽根9に駆動力を伝達する駆動リング8と、駆動リング8と係合する係合部5aと第1マグネット6とを有する駆動レバー5と、第1マグネット6と対向する第1コイル7を有し、駆動リング8を回動する駆動力を発生する駆動源とを備え、第1コイル7に所定量の通電を行い、第1マグネット6を所望の位置に移動させることで、絞り開口を所望の開口面積に変更することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通過開口を有するベース部材と、
表裏が重なり合うように前記光通過開口の周囲に環状に配置され、前記光通過開口内に進退して絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記光通過開口の周囲を回動して前記絞り羽根に駆動力を伝達する駆動リングと、
前記駆動リングと係合する係合部と第1マグネットとを有する駆動レバーと、
前記第1マグネットと対向する第1コイルを有し、前記駆動リングを回動する駆動力を発生する駆動源と
を備え、
前記第1コイルに所定量の通電を行い、前記第1マグネットを所望の位置に移動させることで、前記絞り開口を所望の開口面積に変更することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記ベース部材の内部には、前記光通過開口を通過する光を透過させるレンズを有するレンズユニットが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、直方体形状であり、
前記ベース部材の内部には、前記絞り羽根、前記駆動リング、前記駆動レバーおよび前記レンズユニットが固定されたレンズ保持部材が設けられ、
前記第1コイルは、前記ベース部材における前記光通過開口と直交する第1の側面に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記ベース部材における、前記光通過開口と直交し、前記第1の側面と異なり互いに隣接する第2の側面と第3の側面との2つの面にそれぞれ設けられた第2コイルおよび第3コイルと、
前記レンズ保持部材に設けられ、前記第2コイルと対向する第2マグネットと、
前記レンズ保持部材に設けられ、前記第3コイルと対向する第3マグネットと
を備え、
前記第2コイルと前記第3コイルとに通電し、前記レンズの光軸に直交する方向に前記レンズ保持部材を移動させることで、手振れ補正動作を行うことを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記ベース部材において、前記光通過開口と直交し、前記第1の側面、前記第2の側面、前記第3の側面のいずれとも異なる第4の側面に設けられた第4コイルと、
前記レンズ保持部材に設けられ、前記第4コイルと対向する第4マグネットと
を備え、
前記第4コイルに通電し、前記レンズ保持部材を前記光の光軸方向に移動させることで、オートフォーカス動作を行うことを特徴とする請求項4に記載の光量調節装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光量調節装置を有し、
前記第1コイルへの通電量を制御して前記絞り開口の開口面積を変更することを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載されるカメラ等の光学系として設けられる光量調節装置及びそれを備えるスマートフォンなどに代表される携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スマートフォンに代表される携帯端末や電子機器では、写真や動画が撮影できる光学機器が備えられている。また最近のそれらの光学機器では、絞りを備え、光学特性を高めているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-151312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の光通過口を多段階に変化させる絞りは構造が複雑で大型となってしまう。これは電子機器の薄型化を阻害する原因となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を鑑み、本発明の光量調節装置では
光通過開口を有するベース部材と、
表裏が重なり合うように前記光通過開口の周囲に環状に配置され、前記光通過開口内に進退して絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記光通過開口の周囲を回動して前記絞り羽根に駆動力を伝達する駆動リングと、
前記駆動リングと係合する係合部と第1マグネットとを有する駆動レバーと、
前記第1マグネットと対向する第1コイルを有し、前記駆動リングを回動する駆動力を発生する駆動源と
を備え、
前記第1コイルに所定量の通電を行い、前記第1マグネットを所望の位置に移動させることで、前記絞り開口を所望の開口面積に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光通過口の面積を多段階に変化することができる、小型の光量調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る携帯端末の一例。
図2】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの分解斜視図。
図4】本発明の一実施形態に係る絞り羽根の斜視図。
図5】本発明の一実施形態に係るレンズユニットのフォーカス機構動作図。
図6】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの防振機構動作図。
図7】本発明の一実施形態に係る絞りアクチュエータの動作説明図。
図8】本発明の一実施形態に係る絞りの状態図。
図9】本発明の他の実施形態に係るレンズユニットの斜視図。
図10】本発明の他の実施形態に係るレンズユニットの分解斜視図。
図11】本発明の他の実施形態に係る絞り羽根の斜視図。
図12】本発明の他の実施形態に係る絞りの状態図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る携帯端末の斜視図で、携帯端末は一例としてスマートフォンが挙げられる。
【0009】
図1に示すように、レンズモジュール100は、点線で示す携帯端末500における背面側に設けられる。このレンズモジュール100に対し、携帯端末500の正面側には撮像素子としてのカメラモジュールが配置され、レンズモジュール100内部に配置されるレンズによって撮像素子の撮像面に被写体像を結像する。
【0010】
レンズモジュール100について詳述する。図2(a)には本実施形態に係るレンズモジュール100の斜視図を示している。図2(b)は一部部品の表示を消した内部構造を示す斜視図を示している。図2(c)は図2(b)を中心軸に対して180度回転させた方向からの斜視図を示している。図3には本実施形態に係るレンズモジュール100の分解斜視図を示している。
【0011】
レンズモジュール100は、図3に示すようにベース部材1とレンズユニット300と、レンズ保持部材2と、フォーカスベース部材18と、2つの防振コイル3a、3b(以下、まとめて防振コイル3と称す)と、2つの防振マグネット4a(図3では不図示)、4b(以下、まとめて防振マグネット4と称す)と、駆動レバー5と、駆動レバー5に取り付けられた絞りマグネット6と、複数の絞りコイル7と、駆動リング8と、複数の絞り羽根9と、羽根押さえ部材10と、レンズカバー11と、ベースカバー12を有する。
【0012】
このレンズモジュール100の中心軸200が、撮像装置の光軸となっている。ベース部材1は直方体形状で、後述のフォーカスベース部材18およびレンズ保持部材2が配置される空間1aが内部に設けられている。中心軸200周りには光を通す円形の光通過口1bが開いており、中心軸200と平行な側面には図2(b)、(c)に示すように後述の防振コイル3a、3bをそれぞれ取り付ける防振コイル取り付け部1c、1dと絞りコイル7を取り付ける絞りコイル取り付け部1eとフォーカス用コイル16を取り付けるフォーカス用コイル取り付け部1fの穴が開いている。図2(c)は図2(b)を中心軸に対して180度回転させた方向から表した斜視図であり、防振コイル取付部1cは絞りコイル取付部1eと対向する側面に、フォーカス用コイル取り付け部1fは防振コイル取り付け部1dと対向する側面に設けられている。
【0013】
レンズユニット300は1つまたは複数のレンズとそれらのレンズを保持するレンズ枠から成り、被写体の光を透過させて撮像素子に導く。
【0014】
レンズ保持部材2はレンズユニット300を保持し、フォーカスベース部材18の中央部の空間18aに配置される。フォーカスベース部材18の中央部の空間18aはレンズ保持部材2よりも大きく、空間18a内において、レンズモジュール100の中心軸200に直交する平面上でレンズ保持部材2が移動可能となっている。詳しくは後述するが、本実施形態においてレンズモジュール100の中心軸200に直交する平面上での移動とは、防振コイル3a、3bが設けられたベース部材1の二側面に直交する二方向に移動することを意味する。レンズ保持部材2の一側面で、防振コイル3aと近接する面には防振マグネット4aが取り付けられ、その面と直交する他側面で、防振コイル3bと近接する面には別の防振マグネット4bが取り付けられている。
【0015】
レンズ保持部材2は後述の光量調節装置のベースの部材となり、レンズモジュール100の被写体側の面には、後述の絞り羽根9の回転中心となる羽根回転軸2aと、後述の駆動リング8をラジアル方向に保持するラジアル支持凸部2bと、スラスト方向に保持するスラスト受け部2cとを備える。なお、図3においては、羽根回転軸2a、スラスト受け部2cに対しそれぞれ1つずつにのみ符号を付しているが、図3に示すように同様の構成のものを絞り羽根9の枚数や駆動リング8の支持に必要な数だけ複数ずつ有している。
【0016】
上述したように、フォーカスベース部材18はレンズ保持部材2が配置される空間18aが内部に設けられている。中心軸200周りには光を通す円形の光通過口18bが開いている。フォーカスベース部材18はベース部材1の中央部の空間1aに配置され、ベース部材1に対して中心軸200の方向になめらかに動くことが可能で、動作時はフォーカスベース部材18の内部の空間18aに配置されるレンズ保持部材2と共に中心軸200の方向に移動する。
【0017】
防振コイル3は、導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、2つの防振コイル3a、3bがレンズモジュール100のベース部材1に取り付けられている。2つの防振コイル3a、3bは互いに直交するベース部材1の側面に配置されている。
【0018】
防振マグネット4は角型の永久磁石であり、両面4極に着磁されている。2つの防振マグネット4a、4bがレンズ保持部材2に取り付けられ、一方の防振マグネット4aは防振コイル3aに対向するよう配置され、もう一方の防振マグネット4bは防振コイル3aとは異なるもう一方の防振コイル3bに対向するよう配置されている。対になる防振コイル3と防振マグネット4は、防振コイル3のコイル中心軸上に、防振マグネット4の着磁境界線が略一致するよう配置されている。
【0019】
フォーカス用コイル16は、導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、レンズモジュール100のベース部材1に取り付けられている。フォーカス用コイル16は防振コイル3bに対向するベース部材1の側面に配置されている。
【0020】
フォーカス用コイル16に対向するよう配置されたフォーカス用マグネット17(図5参照)は角型の永久磁石であり、両面4極に着磁されている。フォーカスベース部材18に取り付けられる。フォーカス用コイル16のコイル中心軸上に、フォーカス用マグネット17の着磁境界線が略一致するよう配置されている。
【0021】
駆動レバー5はレンズ保持部材2の側面に配置され、かつ、絞りコイル7に対向するように配置される。駆動レバー5の中央部には後述の絞りマグネット6が固定されている。駆動レバー5の被写体側には駆動リング8の接続部8cに挿通される駆動軸5a(係合部)を備えており、駆動レバー5の移動を駆動軸5aと接続部8cとの係合を介して駆動リング8に伝え、駆動リング8を回転運動させる。
【0022】
絞りマグネット6は角型の永久磁石であり、板圧方向に着磁されている。一方の面が駆動レバー5に固定され、もう一方の面が絞りコイル7に面対向するよう配置される。
【0023】
絞りコイル7は導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、3つの絞りコイル7a、7b、7cがレンズモジュール100のベース部材1に、2つの防振コイル3が取り付けられた2つの面とは異なる面に設けられた絞りコイル取り付け部1eに取り付けられている。なお、本実施形態の絞りコイル7は3つ配置されているが、2つであっても4つ以上であってもよい。
【0024】
レンズ保持部材2、駆動リング8、複数の絞り羽根9、羽根押さえ部材10およびレンズカバー11が、この順でスラスト方向において積層される絞り装置の中心軸は、レンズモジュール100の中心軸200と一致しており、以下の説明では、この中心軸200に平行な方向をスラスト方向、直交する方向をラジアル方向という。
【0025】
絞り羽根9は、ベース部材1に形成された光通過口1bの周方向に複数配置されている。本実施形態では6つの絞り羽根9が用いられている。なお、絞り羽根の数は6つに限らず、複数であってもよい。図4には1つの絞り羽根9を拡大して示している。絞り羽根9は、絞り装置のラジアル方向にほぼ平行になるよう、隣接する絞り羽根9同士の表裏が重なり合うように環状に配置され、遮光機能を有する平板形状の遮光部9aと、レンズ保持部材2の羽根回転軸2aが挿通され嵌合する回転軸穴9bと、後述の駆動リング8に備えられた駆動軸8bが挿通されるカム溝9cを有する。絞り羽根9は、駆動レバー5による駆動力が伝達された駆動リング8の回動に伴い光通過口1b内に進退し、絞り開口を形成する。
【0026】
駆動リング8は、中心に開口部8aを形成したリング形状をしており、複数の絞り羽根9のカム溝9cと嵌合する羽根駆動軸8bを有している。外周部の一部には、駆動レバー5の駆動軸5aが挿通する接続部8cが形成されている。また、駆動リング8の内周部は、レンズ保持部材2に形成されたラジアル支持凸部2bに当接することで、駆動リング8がレンズ保持部材2と嵌合し、中心軸200周りで回転可能に支持される。
【0027】
羽根押さえ部材10はその中央に光通過開口となる開口部10aを有する板状に形成されている。図2に示すように、カバー板10は、カバー板10とレンズ保持部材2との間に配置された絞り羽根9および駆動リング8を覆うように配置され、レンズ保持部材2に接着固定されることにより、駆動リング8とカバー板10の間に絞り羽根9が走行するスペースを形成する。また、羽根押さえ部材10には、レンズ保持部材2の羽根回転軸2aおよび駆動リング8の羽根駆動軸8bの動作軌跡を避ける穴が開いており、それ以外の部分においては絞り羽根9がこれらの軸から抜けることの無いようスラスト方向で押さえる羽根押さえ部が形成されている。
【0028】
レンズカバー11は、羽根押さえ部材10に固定され、中央に設けられた光通過開口の周囲の部分がレンズモジュール100の外観の一部となる部品である。被写体側の面にメッキや塗装を施すと美観を有する面にすることができる。
【0029】
ベースカバー12は、レンズモジュールの外装部品であり、ベース部材1の外周に配置される部品で、防振コイル3、絞りコイル7を保持している。
【0030】
以上のように構成されたレンズモジュール100においては、2つの防振コイル3へ通電することによって、手振れを補正するためにレンズ(レンズ保持部材2)を中心軸200に直交する平面方向に移動させる手振れ補正動作を行うことができ、フォーカス用コイル16へ通電することによって、合焦のためにレンズ(レンズ保持部材2)を中心軸200の方向(光軸方向)に移動させるオートフォーカス動作を行うことができる。また、後述するように3つの絞りコイル7へ所定の組み合わせで通電することによって絞り開口面積を変えて光量を調整することができる。
【0031】
合焦動作について図5を用いて説明する。フォーカス用コイル16に通電することにより磁界が発生し、両面4極に着磁されフォーカス用コイル16に対向して配置されたフォーカス用マグネット17が、例えば図5(a)に示す位置から図5(b)に示す位置に向けて、中心軸200方向に移動する。通電の電圧と移動量には相関があり、また通電の向きを逆方向とすると移動する方向も逆方向となる、これによりフォーカス用マグネット17と一体となっているレンズ保持部材2は中心軸200の方向に移動が可能で、レンズと撮像素子の距離を調整することにより合焦する。
【0032】
防振機構の動作について図6を用いて説明する。図6(a)はレンズモジュール100の中心軸200とレンズユニット300の中心軸が一致している状態を示している。
【0033】
図6(b)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の右方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3bに通電することにより、板厚方向に着磁された防振マグネット4bが吸着された結果の一例である。また、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の左方向に移動する。
【0034】
図6(c)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の上方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3aに通電することにより、着磁された防振マグネット4aが吸着された結果の一例である。また、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の下方向に移動する。
【0035】
図6(d)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の右上方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3aおよび3bに通電することにより、着磁された防振マグネット4a、4bが吸着された結果の一例である。また、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の左下方向に移動する。
【0036】
本実施形態に係るレンズモジュール100が搭載されるカメラユニットが撮影状態にある場合、レンズモジュール100に加わる振れの方向と大きさに応じて、防振コイル3と防振マグネット4からなる防振機構の防振アクチュエータによってレンズ保持部材2を光軸直交平面内で移動させることでレンズユニット300を中心軸200に対してシフトさせ、結像面上での被写体像の像振れを抑制することができる。
【0037】
携帯端末500に内蔵した不図示のジャイロセンサによって移動角速度を検出し、その振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から結像面上での像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするためのレンズ保持部材2の駆動量を演算する。そして、この演算値に基づいて防振コイル3aと3bの通電制御を行う。
【0038】
次に、絞り装置の動作について図7、8を用いて説明する。本実施形態のレンズモジュール100は、3つの絞りコイル7と駆動レバー5と絞りマグネット6で絞りアクチュエータを構成する。絞りコイル7に通電、励磁させ、マグネット6との間に吸着力、反発力を発生させて駆動レバー5を動作させる。
【0039】
図7(a)に示すように、左側の絞りコイル7aに通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は左側のコイル7aに面対向する位置まで移動する。
【0040】
図7(b)に示すように、中央の絞りコイル7bに通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は中央のコイル7bに面対向する位置まで移動する。
【0041】
図7(d)に示すように、右側の絞りコイル7に通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は右側のコイル7cに面対向する位置まで移動する。
【0042】
さらに、図7(c)に示すように、中央と右側の絞りコイル7に通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は中央と右側のコイル7b、7cの間の位置まで移動し停止する。さらに2つのコイル7b、7cの電圧のバランスを変えることで2つのコイル7b、7cに対向する任意の位置にマグネット6および駆動レバー5を移動させることができる。コイル7a、7bに対しても同様である。
【0043】
このように、駆動リング8を回動する駆動力を発生する駆動源として3つの絞りコイル7への通電を制御することにより、マグネット6および駆動レバー5は直線運動が可能で、作動範囲内の任意の位置に停止することができる。これによって、予め絞り開口径(絞り値)に対応付けて設定された所定量に通電を制御し、駆動レバー5を所望の位置に移動させることで、所望の絞り開口の開口面積が得られるように絞り開口を変更することができる。
【0044】
コイル7への通電は、上述したような吸着方向とは逆向きの電流を流してマグネット6と反発する磁界を発生させても良い。吸着と反発を組み合わせて動作することで、マグネット6および駆動レバー5の急加速、急減速が可能となり、絞り装置を高速に動作させることが可能となる。なお、このコイル7などへの通電量の制御は、レンズモジュール100が搭載される携帯端末500の制御装置(CPUなど)によって行われる。また、通電量の制御とは、3つの絞りコイル7に対し、どのコイルに通電するか、それぞれどの程度の電流を供給するか、のいずれの場合も含む。
【0045】
このように駆動レバー5が直進動作を行うと、駆動レバー5の駆動軸5aと駆動リング8の接続部8cを介して、駆動リング8がレンズ保持部材2に対して中心軸200の周方向に回転する。駆動リング8は、6つの絞り羽根9に駆動ピン8bを介して駆動レバー5からの駆動力を伝達する。これにより、各絞り羽根9は、駆動リング8の駆動ピン8bが絞り羽根のカム溝9cに沿って移動することで、羽根回転軸2aを中心として回動する。
【0046】
図8には、レンズモジュール100の上面図を示している。図8(a)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を開いている状態、図8(b)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を絞っている状態、図8(c)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を図8(b)よりもさらに絞っている状態を示す。駆動レバー5の停止位置を制御することで、駆動リング8の回転位置を制御することができ、複数の絞り羽根9の回動位置、つまりは該複数の絞り羽根9の遮光部9aによって形成される絞り開口のサイズ(径)が制御される。絞り開口径を調整することによって、レンズモジュール100を通過する光量を調節することができる。
【0047】
(第2実施形態)
以下に、本発明の第2実施形態に係るレンズモジュール400について説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であり、同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0048】
図9は、第2実施形態に係るレンズモジュール400の斜視図である。図10には本実施携帯に係るレンズモジュール400の分解斜視図を示している。図に示すように本実施形態と第1の実施形態では、絞り機構の構成を変えている。
【0049】
レンズ保持部材13が後述の絞り羽根15の回転中心となる羽根回転軸穴13aを備える点で第1実施形態と異なる。
【0050】
絞り羽根15は、ベース部材1に形成された光通過口1bの周方向に複数配置されている。本実施形態では6つの絞り羽根15が用いられている。なお、絞り羽根の数は6に限らず、複数であってもよい。
【0051】
図11には1つの絞り羽根15を拡大して示している。絞り羽根15は、絞り装置のラジアル方向にほぼ平行になるように、隣接する絞り羽根15同士の表裏が重なり合うように環状に配置され、遮光機能を有する平板形状の遮光部15aと、レンズ保持枠の回転軸穴13aに挿通して嵌合する羽根回転軸15bと、後述の駆動リング14に備えられたカム溝14bに挿通される駆動軸15cを有する。
【0052】
この絞り羽根15は樹脂の射出成形によって遮光部15aと回転軸15bと駆動軸15cを一体で成形したり、遮光部15aをシート材から打ち抜き、回転軸15bと駆動軸15cを圧入やアウトサート成形によって別体で作製したりすることもできる。
【0053】
駆動リング14は、中心に開口部14aを形成したリング形状をしており、複数の絞り羽根15の駆動軸15cと嵌合するカム溝14bを有している。外周部の一部には、駆動レバーの駆動軸5aが挿通する接続部14cが形成されている。
【0054】
また、駆動リング14の内周部は、レンズ保持部材13に形成されたラジアル支持凸部13bに当接することで、駆動リング14がレンズ保持部材13と嵌合し、中心軸200周りで回転可能に支持される。
【0055】
第1実施形態と同様に、絞りコイル7への通電によって、駆動レバー5を動作させると、駆動リング14がレンズ保持部材13に対して中心軸200の周方向に回転する。駆動リング14は、カム溝14bと絞り羽根駆動軸15cを介して、駆動レバー5からの駆動力を伝達する。これにより、各絞り羽根15は、駆動軸15cが駆動リング14のカム溝14bに沿って移動することで、羽根回転軸15bを中心として回動する。
【0056】
このように構成された絞り機構を含むレンズモジュール400においては、絞り羽根15の羽根回転軸15bおよび駆動軸15cが、レンズ保持部材13側へ凸となっており、被写体側へ凸とならない。これによりレンズモジュール400全体の厚さを第1実施形態よりもさらに薄くすることが可能となる。
【0057】
本実施形態においては、図10に示すように、第1実施形態における羽根押さえ部材10を廃止することができ、レンズモジュール400全体の厚さを薄くすることができるが、羽根押さえ部材10を設けることを阻害するものではない。また、図12には、レンズモジュール400の上面図を示している。図12(a)に絞り羽根15がレンズモジュール400の光通過開口を開いている状態、図12(b)に絞り羽根15がレンズモジュール400の光通過開口を絞っている状態、図12(c)に絞り羽根15がレンズモジュール400の光通過開口を図12(b)よりもさらに絞っている状態を示している。このように、羽根押さえ部材10を設ける場合であっても、第1実施形態におけるレンズ保持部材2の羽根回転軸2aおよび駆動リング8の羽根駆動軸8bの動作軌跡を避ける穴を廃止することができ、絞り羽根15をスラスト方向で押さえる羽根押さえ部のみで形成することで、レンズモジュール400全体の厚さを薄くすることができる。
【符号の説明】
【0058】
100 レンズモジュール
200 中心軸
300 レンズユニット
500 携帯端末
1 ベース部材
1a 空間
1b 光通過口
1c 防振コイル取り付け部
1d 防振コイル取り付け部
1e 絞りコイル取り付け部
1f フォーカス用コイル取り付け部
2 レンズ保持部材
2a 羽根回転軸
2b ラジアル支持凸部
2c スラスト受け面
3 防振コイル
4 防振マグネット
5 駆動レバー
5a 駆動軸
6 絞りマグネット
7 絞りコイル
8 駆動リング
8a 開口部
8b 羽根駆動軸
8c 接続部
9 絞り羽根
9a 遮光部
9b 回転軸穴
9c カム溝
10 羽根押さえ部材
10a 開口部
11 レンズカバー
12 ベースカバー
13 レンズ保持部材
13a 羽根回転穴
13b ラジアル支持凸部
13c スラスト受け面
14 駆動リング
14a 開口部
14b カム溝
14c 接続部
15 絞り羽根
15a 遮光部
15b 回転軸
15c 駆動軸
16 フォーカス用コイル
17 フォーカス用マグネット
18 フォーカスベース部材
18a 空間
18b 光通過口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12